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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049215
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/08 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A61B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155540
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA13
4C316AA16
4C316AA27
4C316AB16
4C316FA01
4C316FA04
4C316FA06
4C316FB13
(57)【要約】
【課題】被験者が顔をヘッド部に宛がう状態であっても、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握することのできる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置10は、両被検眼Eの眼情報の取得のための一対の取得光学系(測定光学系20)と、一対の取得光学系(測定光学系20)の位置または向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構(測定ヘッド駆動部15)と、光学系変更機構(測定ヘッド駆動部15)により設定された一対の取得光学系(測定光学系20)の位置や向きを示す光学姿勢情報と、被検眼Eの位置を示す被検眼位置情報と、に基づいて一対の被検眼Eに対する一対の取得光学系(測定光学系20)の位置関係を示す位置関係画像Ipを生成して、位置関係画像Ipを表示部34に表示させる制御部27と、を備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両被検眼の眼情報の取得のための一対の取得光学系と、
一対の前記取得光学系の位置または向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構と、
前記光学系変更機構により設定された一対の前記取得光学系の位置や向きを示す光学姿勢情報と、前記被検眼の位置を示す被検眼位置情報と、に基づいて一対の前記被検眼に対する一対の前記取得光学系の位置関係を示す位置関係画像を生成して、前記位置関係画像を表示部に表示させる制御部と、を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記位置関係画像は、一対の前記取得光学系における測定光軸の情報を有することを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記被検眼位置情報は、前記取得光学系におけるアライメント情報であることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記位置関係画像は、一対の前記取得光学系から対応する前記被検眼までの接近度合を示す接近度合情報を有することを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記位置関係画像は、一対の前記被検眼に対して一対の前記取得光学系が水平方向に変位した様子の把握を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記位置関係画像は、一対の前記被検眼に対して一対の前記取得光学系が上下方向に変位した様子の把握を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記位置関係画像は、一対の前記被検眼の間隔を示す間隔情報と、一対の前記取得光学系が呈示する視標画像の合焦距離を示す合焦距離情報と、一対の前記取得光学系の回旋角を示す回旋角情報と、の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定光学系で両被検眼の情報を同時に取得したり、両被検眼に呈示した視標の見え方に関する被検者からの応答に基づいたりして、両眼視の状態での被検眼の視機能を検査(検眼)することのできる眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この眼科装置では、測定光学系が設けられたヘッド部に被験者の顔を宛がう状態とすることにより、被検者が適切な姿勢とされて被検眼の情報を適切に取得できるとともに、呈示した視標の見え方による検査を適切なものにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/041571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、眼科装置では、被検者の適切な姿勢が顔をヘッド部に宛がう状態であるとともに、そのヘッド部に測定光学系が設けられているので、被検眼や測定光学系を目視することが困難である。このため、眼科装置では、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握することができず、どのような状態で被検眼の視機能を検査(検眼)しているのかを確認することが困難となる。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、被験者が顔をヘッド部に宛がう状態であっても、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握することのできる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本開示の眼科装置は、両被検眼の眼情報の取得のための一対の取得光学系と、一対の前記取得光学系の位置または向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構と、前記光学系変更機構により設定された一対の前記取得光学系の位置や向きを示す光学姿勢情報と、前記被検眼の位置を示す被検眼位置情報と、に基づいて一対の前記被検眼に対する一対の前記取得光学系の位置関係を示す位置関係画像を生成して、前記位置関係画像を表示部に表示させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の眼科装置によれば、被験者が顔をヘッド部に宛がう状態であっても、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る眼科装置の一例としての実施例1の眼科装置の全体構成を示す説明図である。
図2】眼科装置において駆動機構を介して一対の測定ヘッドが移動可能とされた構成を模式的に示す説明図である。
図3】眼科装置の測定光学系の概略的な構成を示す説明図である。
図4】眼科装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】測定光学系の構成を示す説明図である。
図6】実施例1の眼科装置に用いられる円錐プリズムの構成例を示す概略図である。
図7】眼科装置に用いられるフィールドレンズの構成例を示す概略図である。
図8】呈示位置の変化に対する、合焦距離と、回旋角と、ディスプレイ上の視標画像の大きさと、の関係を示す説明図である。
図9】呈示位置と合焦距離と回旋角との関係を示す説明図である。
図10】眼科装置の表示部に表示される調節力測定画面の一例を示す図である。
図11】光軸と瞳孔軸とのなす角度を説明するための図である。
図12】位置関係画像を示す説明図である。
図13図12とは異なる例の位置関係画像を示す説明図である。
図14】変形例の眼科装置の特徴的な構成を示す説明図である。
図15】変形例の眼科装置において測定ヘッドの配置の例を示す説明図である。
図16】遠近両用レンズにおける遠用位置と近用位置とを示す説明図である。
図17】変形例の眼科装置における位置関係画像を示す説明図である。
図18】実施例2の眼科装置の全体構成を示す説明図である。
図19図12図13とは異なる例の位置関係画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る眼科装置の一実施形態について図1から図19を参照しつつ説明する。なお、図5は、示す構成や内容の理解を容易とするために、偏向部材26を省略して示している。
【実施例0011】
本開示に係る眼科装置10は、被検者S(図12図13参照)の被検眼Eの眼情報を取得するものである。実施例1の眼科装置10は、被検者Sが両眼を開放した状態で、被検眼Eの特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、実施例1の眼科装置10は、片眼を遮蔽したり、固視標を消灯したりすることで、片眼ずつ検査等することもできる。
【0012】
この眼科装置10は、任意の自覚検査を行うことができるとともに、任意の他覚検査を行うことができる。この自覚検査には、遠用検査、中用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、赤緑検査、視野検査等がある。また、他覚検査では、眼科装置10は、被検眼Eに光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼Eに関する情報(眼特性)を測定(取得)する。この他覚検査には、被検眼Eの特性を取得するための測定と、被検眼Eの画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚検査には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
【0013】
眼科装置10は、図1に示すように、基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、支持腕14と、一対の測定ヘッド駆動部15と、一対の測定ヘッド16と、を備える。眼科装置10は、検眼用テーブル12と正対する被検者Sが、両測定ヘッド16の間に設けられた額当部17に額を当てた状態で、被検者Sの被検眼Eの情報を取得する。以下では、眼科装置10に対峙する被検者Sから見て、左右方向を矢印Xで示し、上下方向(鉛直方向)を矢印Yで示し、左右方向および上下方向と直交する方向(眼科装置10の奥行き方向)を前後方向として矢印Zで示す。
【0014】
検眼用テーブル12は、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、上下方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。この検眼用テーブル12は、後述する検者用コントローラ31や被検者用コントローラ32(図4参照)を置いたり検眼に用いるものを置いたりすることができる。
【0015】
支柱13は、検眼用テーブル12の前後方向の後端部で上下方向に延びるように基台11により支持されており、上端に梁状の支持腕14が設けられている。支持腕14は、測定ヘッド駆動部15を介して両測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱13から前後方向の手前側に延びている。支持腕14は、支柱13に対して上下方向に移動可能とされていてもよいし、支柱13に対して左右方向および前後方向に移動可能とされていてもよい。支持腕14は、支柱13の上端から前後方向の前側に伸びており、一対の測定ヘッド駆動部15を検眼用テーブル12上に位置させるように、前端で一対の測定ヘッド駆動部15を吊り下げている。その各測定ヘッド駆動部15には、測定ヘッド16が各々移動可能に吊り下げられている。このため、支持腕14は、一対の測定ヘッド駆動部15および一対の測定ヘッド16を吊り下げて支持している。
【0016】
測定ヘッド駆動部15および測定ヘッド16は、被検者Sの左右の被検眼Eに個別に対応するように、左右方向で対を為して設けられている。測定ヘッド駆動部15は、個別に述べる際には、左眼用測定ヘッド駆動部15Lおよび右眼用測定ヘッド駆動部15Rとし、測定ヘッド16は、左眼用測定ヘッド16Lおよび右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被験者の左側の被検眼Eの情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被験者の右側の被検眼Eの情報を取得する。左眼用測定ヘッド駆動部15Lおよび右眼用測定ヘッド駆動部15Rと、左眼用測定ヘッド16Lおよび右眼用測定ヘッド16Rと、は、左右方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。
【0017】
両測定ヘッド16は、図2に示すように、支持腕14の先端に設けられた取付ベース部18を介して測定ヘッド駆動部15により移動可能に吊り下げられている。測定ヘッド駆動部15は、実施例1では、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左鉛直駆動部22Lと左水平駆動部23Lと左Y軸回旋駆動部24Lと左X軸回旋駆動部25Lと、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右鉛直駆動部22Rと右水平駆動部23Rと右Y軸回旋駆動部24Rと右X軸回旋駆動部25Rと、を有する。この左眼用測定ヘッド16Lに対応する各駆動部の構成と、右眼用測定ヘッド16Rに対応する各駆動部の構成と、は、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされており、個別に述べる時を除くと単に鉛直駆動部22と水平駆動部23とY軸回旋駆動部24とX軸回旋駆動部25と記す。測定ヘッド駆動部15は、支持腕14側から鉛直駆動部22、水平駆動部23、Y軸回旋駆動部24、X軸回旋駆動部25の順に設けられている。
【0018】
取付ベース部18は、支持腕14の先端に固定され、X方向に延びるともに、一方の端部に左鉛直駆動部22Lと左水平駆動部23Lと左Y軸回旋駆動部24Lと左X軸回旋駆動部25Lとが吊り下げられ、他方の端部に右鉛直駆動部22Rと右水平駆動部23Rと右Y軸回旋駆動部24Rと右X軸回旋駆動部25Rとが吊り下げられている。また、この取付ベース部18の中央部に、額当部17が設けられている。
【0019】
鉛直駆動部22は、取付ベース部18と水平駆動部23との間に設けられ、取付ベース部18に対して水平駆動部23をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は、鉛直駆動部22とY軸回旋駆動部24との間に設けられ、鉛直駆動部22に対してY軸回旋駆動部24をX方向およびZ方向(水平方向)に移動させる。この鉛直駆動部22および水平駆動部23は、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構と、を設けて構成する。水平駆動部23は、例えば、X方向とZ方向とで個別にアクチュエータおよび伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
【0020】
Y軸回旋駆動部24は、水平駆動部23とX軸回旋駆動部25との間に設けられ、水平駆動部23に対してX軸回旋駆動部25を、対応する被検眼Eの眼球回旋点を通りY方向に延びるY軸眼球回旋軸を中心に回転させる。X軸回旋駆動部25は、Y軸回旋駆動部24と対応する測定ヘッド16との間に設けられ、Y軸回旋駆動部24に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼Eの眼球回旋点を通りX方向に延びるX軸眼球回旋軸を中心に回転させる。このY軸回旋駆動部24およびX軸回旋駆動部25は、例えば、鉛直駆動部22や水平駆動部23と同様にアクチュエータと伝達機構とを有するものとし、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構が円弧状の案内溝に沿って移動する構成とする。Y軸回旋駆動部24は、案内溝の中心位置がY軸眼球回旋軸と一致されることで、被検眼EのY軸眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回転させることができる。また、X軸回旋駆動部25は、案内溝の中心位置がX軸眼球回旋軸と一致されることで、被検眼EのX軸眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回転させることができる。すなわち、測定ヘッド16は、Y軸回旋駆動部24およびX軸回旋駆動部25の各々の案内溝の中心位置が被検眼Eの眼球回旋点と一致されることで、被検眼Eの眼球回旋点を中心に左右方向(Y方向を中心とする回転方向)および上下方向(X方向を中心とする回転方向)に回転可能とされている。
【0021】
なお、Y軸回旋駆動部24は、自らに設けたY軸回転軸線回りに回転可能に測定ヘッド16を支持するとともに水平駆動部23と協働してX軸回旋駆動部25を介して測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回転させることで、被検眼EのY軸眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回転させるものでもよい。また、X軸回旋駆動部25は、自らに設けたX軸回転軸線回りに回転可能に測定ヘッド16を支持するとともに鉛直駆動部22と協働して測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回転させることで、被検眼EのX軸眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回転させるものでもよい。
【0022】
これにより、測定ヘッド駆動部15は、各測定ヘッド16を個別にまたは連動させて、X方向、Y方向およびZ方向に移動させることができるとともに、それぞれが対応する被検眼Eの眼球回旋点(図5等の符号O参照)を中心に上下左右に回転させることができ、各測定ヘッド16を対応する被検眼Eの回旋に対応する位置(姿勢)に移動させることができる。測定ヘッド駆動部15は、各測定ヘッド16の位置を調整することで、対応する被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりできる。これにより、眼科装置10では、開散運動および輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠点距離での遠用検査から近点距離での近用検査まで様々な検査距離での検査を行って両被検眼Eの各種特性を測定できる。
【0023】
各測定ヘッド16では、偏向部材26(ミラー)(個別に述べる際には左眼用偏向部材26Lおよび右眼用偏向部材26Rとする)が設けられている。各測定ヘッド16は、偏向部材26を通じて後述する測定光学系20(個別に述べる際には右眼用測定光学系20Rおよび左眼用測定光学系20Lとする)により対応する被検眼Eの情報の取得を可能とする。偏向部材26を通じて測定光学系20により対応する被検眼Eの情報が取得される。眼科装置10は、図3に示すように、各偏向部材26が被験者の左右の被検眼Eにそれぞれ対応する位置となるように各測定ヘッド16の位置を調整することで、被検者が左右の両眼を開放した状態(両眼視の状態)で、被検眼Eの情報を両眼同時に取得できる。また、眼科装置10は、X軸回旋駆動部25によりX軸眼球回旋軸を中心に各測定ヘッド16の回転姿勢を変化させることで、対応する被検眼Eを下方視や上方視させた状態で被検眼Eの情報を取得できる。そして、眼科装置10は、Y軸回旋駆動部24によりY軸眼球回旋軸を中心に各測定ヘッド16の回転姿勢を変化させることで、対応する被検眼Eを左右視させた状態で被検眼Eの情報を取得できる。
【0024】
また、各測定ヘッド16は、対応する被検眼EのY軸眼球回旋軸を中心に左右対称に同時に回転姿勢を変化させることで、対応する被検眼Eが両眼視の状態で開散や輻輳により変化する視軸(視線方向)に合わせて測定光学系20の光学系の測定光軸Lの向きを変化させることができる。図3の上側は、両被検眼Eから各偏向部材26に至るまでの測定光軸Lが平行となるように、両測定光学系20の回転姿勢が調節されている状態を示す。この図3の上側の状態では、各測定光学系20が対応する被検眼Eに後述するように視標画像Sf等を呈示すると、被検者を両眼視の状態で無限遠を見ている状態と同様の視軸とすることができる。また、図3の下側は、両被検眼Eから各偏向部材26に至るまでの測定光軸Lが、それぞれ延長させた先が所定の呈示位置Ppに向かうように、両測定光学系20の回転姿勢が調節されている状態を示す。この図3の下側の状態では、各測定光学系20が対応する被検眼Eに視標画像Sf等を呈示すると、被検者を両眼視の状態で呈示位置Ppを見ている状態と同様の視軸とすることができる。このように、眼科装置10は、各測定ヘッド16の回転姿勢を左右対称に同時に変化させることで、輻輳または開散させるように両被検眼Eの視軸を変化させた位置に視標画像Sfを呈示できる。
【0025】
このため、各測定光学系20は、両被検眼Eの眼情報の取得のための取得光学系として機能する。また、一対の測定ヘッド駆動部15、すなわち一対の鉛直駆動部22と水平駆動部23とY軸回旋駆動部24とX軸回旋駆動部25とは、取得光学系としての各測定光学系20の位置または向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構として機能する。そして、一対の測定ヘッド駆動部15による各測定光学系20(各測定ヘッド16)の回転姿勢の情報が取得光学系の位置や向きを示す光学姿勢情報となる。加えて、その各測定光学系20のZアライメント系110とXYアライメント系120とで取得したアライメント情報が、被検眼Eの位置や向きを示す被検眼位置情報となる。
【0026】
基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部27が、制御ボックスに収納されて設けられる(図1参照)。制御部27は、図4に示すように、上記した各測定光学系20と、測定ヘッド駆動部15としての各鉛直駆動部22、各水平駆動部23、各Y軸回旋駆動部24および各X軸回旋駆動部25に加えて、検者用コントローラ31と被検者用コントローラ32と記憶部33と、が接続されている。眼科装置10は、ケーブル28(図1図2参照)を介して商用電源から制御部27に電力が供給され、制御部27が測定ヘッド駆動部15および両測定ヘッド16(両測定光学系20)に電力を供給する。制御部27は、測定ヘッド駆動部15や両測定ヘッド16(両測定光学系20)と情報の遣り取りが可能とされ、それらの動作を制御するとともにそれらから適宜情報を取得する。
【0027】
検者用コントローラ31は、検者が眼科装置10を操作するために用いられる。検者用コントローラ31は、制御部27と近距離無線通信によって、互いに通信可能に接続されている。なお、検者用コントローラ31は、制御部27と有線または無線の通信路を介して接続されていればよく、実施例1の構成に限定されない。実施例1の検者用コントローラ31は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)が用いられている。このため、検者用コントローラ31は、検者が手に持って操作することや検眼用テーブル12に置いて操作することができ、被検者や眼科装置10の位置に拘わらず、いずれの位置からでも操作することができ、測定時の検者の自由度を高めることができる。なお、検者用コントローラ31は、携帯端末に限定されることはなく、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等でもよく、眼科装置10に固定されて構成されていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0028】
検者用コントローラ31は、液晶モニタからなる表示部34を備える。この表示部34は、画像等が表示される表示面34a(図1等参照)と、そこに重畳して配置されたタッチパネル式の入力部34bと、を有する。検者用コントローラ31は、制御部27の制御下で、後述する前眼部観察系150に設けられた撮像素子159からの画像信号に基づく前眼部像I(図5等参照)や後述する測定リング像や眼底画像等を、適宜表示面34aに表示させる。また、検者用コントローラ31は、制御部27の制御下で入力部34b表示され、そこに入力されたアライメントの指示や測定の指示等の操作情報を制御部27に出力する。
【0029】
被検者用コントローラ32は、被検眼Eの各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。被検者用コントローラ32は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置とされる。被検者用コントローラ32は、有線または無線の通信路を介して制御部27と接続されている。
【0030】
制御部27は、接続された記憶部33または内蔵する内部メモリ27aに記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、適宜検者用コントローラ31や被検者用コントローラ32に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ27aは、RAM等で構成され、記憶部33は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。眼科装置10では、上記した構成の他に、測定完了信号や測定者からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタや、測定結果を外部メモリやサーバーに出力する出力部が適宜設けられる。
【0031】
次に、測定光学系20の一例としての光学的な構成を、図5を用いて説明する。上述したように、右眼用測定光学系20Rおよび左眼用測定光学系20Lの構成は、基本的に同一であるので、単に測定光学系20として説明する。各測定光学系20は、それぞれ呈示する視標を切り替えながら視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切換え配置しつつ被検眼Eの適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独または複数組み合わされて構成されている。
【0032】
なお、以下の説明では、「眼底共役位置P」は、アライメントが完了した状態での被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置であり、被検眼Eの眼底Efと光学的に共役な位置またはその近傍を意味するものとする。また、「瞳孔共役位置Q」は、アライメントが完了した状態での被検眼Eの瞳孔と光学的に略共役な位置であり、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置またはその近傍を意味するものとする。各測定光学系20は、図5に示すように、Zアライメント系110とXYアライメント系120とケラト測定系130と視標投影系140と前眼部観察系150とレフ測定投射系160とレフ測定受光系170とを有する。
【0033】
(前眼部観察系150)
前眼部観察系150は、被検眼Eの前眼部を観察するために、被検眼Eの前眼部の動画像や静止画像を画撮影する。前眼部観察系150は、対物レンズ152と第1ダイクロイックミラー153とハーフミラー154と第1リレーレンズ155と第2リレーレンズ156と第2ダイクロイックミラー157と第1結像レンズ158と撮像素子159(エリアセンサ)とを有する。その撮像素子159は、前眼部観察系150を経由する光学系において、撮像面が瞳孔共役位置Qに位置するように配置されている。前眼部照明光源151は、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。前眼部観察系150では、被検眼Eの前眼部により反射された光が、対物レンズ152を通過し、第1ダイクロイックミラー153を透過し、ハーフミラー154を透過し、第1リレーレンズ155、第2リレーレンズ156を順に通過し、第2ダイクロイックミラー157を透過する。第2ダイクロイックミラー157を透過した光は、第1結像レンズ158により撮像素子159の撮像面に結像される。撮像素子159は、所定のレートで撮像および信号出力を行う。撮像素子159の出力(映像信号)は、制御部27に入力される。制御部27は、入力された映像信号に基づく前眼部像Iを検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。前眼部像Iは、例えば赤外動画像である。
【0034】
(Zアライメント系110)
Zアライメント系110は、前眼部観察系150の光軸方向(前後方向、Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに投射する。Zアライメント系110は、Zアライメント光源111と第2結像レンズ112とラインセンサ113とを有する。Zアライメント系110では、Zアライメント光源111から光が出力されて被検眼Eの角膜に投射され、その光が角膜により反射されて第2結像レンズ112によりラインセンサ113のセンサ面に結像される。Zアライメント系110では、角膜頂点の位置が前眼部観察系150の光軸方向に変化すると、ラインセンサ113のセンサ面における光の投射位置が変化する。制御部27は、ラインセンサ113のセンサ面における光の投射位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき測定ヘッド駆動部15を制御してZアライメントを実行する。
【0035】
(XYアライメント系120)
XYアライメント系120は、前眼部観察系150の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。このXYアライメント系120は、前眼部観察系150の対物レンズ152と第1ダイクロイックミラー153とハーフミラー154とを共用するとともに、XYアライメント光源121を有する。XYアライメント系120では、XYアライメント光源121から出力された光が、ハーフミラー154により反射されて、前眼部観察系150を通じて被検眼Eに投射させる。その被検眼Eの角膜による反射光は、前眼部観察系150を通じて撮像素子159に導かれ、この反射光に基づく像(輝点像)が前眼部像Iに含まれることとなる。制御部27は、輝点像を含む前眼部像Iとアライメントマークとを表示部34に表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマーク内に輝点像を誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、制御部27は、アライメントマークに対する輝点像の変位がキャンセルされるように、測定ヘッド駆動部15を制御する。
【0036】
(ケラト測定系130)
ケラト測定系130は、被検眼Eの角膜の形状を測定するための赤外光のリング状光束(ケラトリング光束)を角膜に投射する。このケラト測定系130は、対物レンズ152と被検眼Eとの間に配置されたケラト板131を有する。また、ケラト測定系130では、図示は略すが、ケラト板131の背面側(対物レンズ152側)にケラトリング光源が設けられている。ケラト測定系130は、ケラトリング光源からの光でケラト板131を照明することにより、被検眼Eの角膜にリング状光束が投射される。被検眼Eの角膜からの反射光(ケラトリング像)は、撮像素子159により前眼部像Iとともに検出される。制御部27は、ケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜の形状を表す角膜形状パラメータを算出する。このとき、制御部27は、測定パターンの像やケラトリング光束が反射された画像を、検者用コントローラ31の表示部34に適宜表示させることができる。
【0037】
(視標投影系140)
視標投影系140は、他覚検査を行う際等に被検眼Eの視線を固定する視標としての固視標や点状視標を呈示したり、被検眼Eの特性(視力値や矯正度数(遠用度数、近用度数)等)を自覚的に検査するための自覚検査視標を所定の呈示条件で呈示したりする。その呈示条件は、視力値、検査距離、検査の種類、視標の種類、視標の拡大倍率、視標の表示態様(視標の形状、形態、大きさ、数、色、コントラスト等)等があげられる。この視標投影系140は、光源141とコリメートレンズ142と視標チャート143と第3リレーレンズ144と第4リレーレンズ145と第1反射ミラー146とを有するとともに、前眼部観察系150の対物レンズ152と第1ダイクロイックミラー153とハーフミラー154とを共用する。視標投影系140では、光源141から出力された光(可視光)をコリメートレンズ142で平行光束とし、視標チャート143を照射する。視標チャート143は、例えば透過型の液晶パネルを含み、視標を表す視標画像Sfを表示する。この光源141とコリメートレンズ142と視標チャート143とは、視標ユニット147を構成しており、一体的に光軸方向に移動可能とされている。視標チャート143を透過した光は、第3リレーレンズ144、第4リレーレンズ145を順に通過し、第1反射ミラー146により反射され、後述する第3ダイクロイックミラー168を透過し、第1ダイクロイックミラー153により反射される。その第1ダイクロイックミラー153により反射された光は、対物レンズ152を通過して眼底Efに投射される。
【0038】
この視標投影系140では、自覚検査を行う場合、制御部27の制御下で、他覚測定の結果に基づき視標ユニット147が光軸方向に移動される。このとき、制御部27は、視標チャート143の表示を制御し、検者または制御部27により選択された視標を視標チャート143に表示させる。これにより、視標投影系140は、被検者に対し、検者または制御部27により選択された視標を、所定の呈示位置Ppに呈示する。制御部27は、視標に対する被検者の応答内容の入力を受けて、更なる制御や、自覚検査値の算出を行う。このことは、例えば、視力測定において、制御部27は、ランドルト環等に対する応答に基づいて、次の視標を選択して呈示し、これを繰り返し行うことで視力値を決定する。
【0039】
この視標投影系140では、視標ユニット147を光軸に沿って移動させることで、そこで呈示する視標の位置となる呈示位置Ppを遠用検査距離から近用検査距離まで任意に変更可能となっている。一般的には、遠用検査距離は5.0m、近用検査距離は30cm或いは50cmであるが、実施例1の眼科装置10では、視標投影系140が、10cm~6.0mまでの間で検査距離を任意に変更可能としている。また、ここでは、1.0m以上の検査距離を遠用検査距離とし、1.0m未満の検査距離を近用検査距離としている。なお、実施例1の眼科装置10における検査距離は、被検者S(被検眼E)と視標との実際の距離ではなく、あたかもこの距離の位置に視標が呈示されているように、視標投影系140が作り出す見かけの距離である。
【0040】
ここで、視標チャート143が表示する視標を表す視標画像Sfは、自覚検査等で検眼に用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、視力検査視標、赤緑検査視標、乱視検査視標、両眼視機能検眼視標、ランドルト環、スネレン視標、Eチャート等が好適に挙げられる。また、視標画像Sfは、ひらがなやカタカナ等の文字、動物や指等の絵等からなる視標、十字視標等の両眼視機能検眼用の特定の図形や風景画や風景写真等からなる視標等、様々な視標とすることもできる。さらに、視標画像Sfは、静止画であってもよいし、動画であってもよい。視標チャート143は、液晶パネルを含むため、所望の形状、形態およびコントラストの視標画像Sfを表示することができ、多角的で綿密な検眼が可能である。また、実施例1の眼科装置10は、左右の被検眼Eにそれぞれ対応する各測定ヘッド16のそれぞれに視標ユニット147を設けている。このため、眼科装置10は、一対の視標ユニット147により視差を与える視標を所定の呈示位置Ppに対応して表示することができ、立体視検査も自然な視軸の向きで、容易かつ精密に行うことが可能となる。
【0041】
(レフ測定投射系160、レフ測定受光系170)
レフ測定投射系160およびレフ測定受光系170は他覚屈折測定(レフ測定)に用いられる他覚測定光学系である。レフ測定投射系160は、他覚測定用のリング状光束(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系170は、リング状光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。
【0042】
レフ測定投射系160は、レフ測定光源161と第5リレーレンズ162と円錐プリズム163とフィールドレンズ164とリング絞り165と孔開きプリズム166とロータリープリズム167と第3ダイクロイックミラー168とを有する。また、レフ測定投射系160は、前眼部観察系150の対物レンズ152と第1ダイクロイックミラー153とを共用する。レフ測定光源161は、発光径が所定のサイズ以下の高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源であってよい。レフ測定光源161は、光軸方向に移動可能であり、眼底共役位置Pに配置される。リング絞り165は、その透光部が瞳孔共役位置Qに配置されている。また、円錐プリズム163は、瞳孔共役位置Qに可能な限り近い位置に配置されることが望ましい。
【0043】
レフ測定投射系160では、レフ測定光源161から出力された光が、第5リレーレンズ162を通過し、円錐プリズム163の円錐面163a(図6参照)に入射する。円錐面163aに入射した光は偏向され、円錐プリズム163の底面163b(図6参照)から出射する。その出射された光は、フィールドレンズ164を通過し、リング絞り165にリング状に形成された透光部を通過する。その通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム166の反射面により反射され、ロータリープリズム167を通過し、第3ダイクロイックミラー168により反射される。その反射された光は、第1ダイクロイックミラー153により反射され、対物レンズ152を通過し、被検眼Eに投射される。ロータリープリズム167は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
【0044】
ここで、フィールドレンズ164は、例えば、図7に示すように、被検眼Eの側のレンズ面にリング絞り165が貼り付けられていてもよい。この場合、例えば、フィールドレンズ164のレンズ面には、リング状の透光部が形成されるように遮光膜が蒸着される。また、レフ測定投射系160は、フィールドレンズ164が省略された構成を有していてもよい。さらに、円錐プリズム163は、例えば、図6に示すように、第5リレーレンズ162を通過して円錐面163aに入射した光を出射する底面163bにリング絞り165が貼り付けられていてもよい。この場合、例えば、円錐プリズム163の底面163bには、リング状の透光部が形成されるように遮光膜が蒸着される。
【0045】
リング絞り165は、円錐プリズム163の円錐面163aの側にあってもよい。また、リング絞り165は、所定の測定パターンに対応した形状を有する透光部が形成された絞りであってよい。さらに、リング絞り165は、レフ測定投射系160の光軸に対して偏心した位置に透光部が形成されていてよい。そして、リング絞り165は、2以上の透光部が形成されていてもよい。
【0046】
レフ測定受光系170は、前眼部観察系150の対物レンズ152と第1ダイクロイックミラー153と第2ダイクロイックミラー157と第1結像レンズ158と撮像素子159とを共用する。また、レフ測定受光系170は、レフ測定投射系160の第3ダイクロイックミラー168とロータリープリズム167と孔開きプリズム166とを共用する。そして、レフ測定受光系170は、第6リレーレンズ171と第2反射ミラー172と第7リレーレンズ173と合焦レンズ174と第3反射ミラー175とを有する。その合焦レンズ174は、光軸方向に移動可能とされている。合焦レンズ174は、制御部27の制御下で焦点位置を変更可能な公知の焦点可変レンズであってもよい。撮像素子159は、レフ測定受光系170を経由する光学系において、撮像面が眼底共役位置Pに位置するように配置されている。孔開きプリズム166と第6リレーレンズ171との間には、瞳孔上の光束径を制限する絞り(図示せず)が配置されている。この絞りの透光部は、瞳孔共役位置に配置される。
【0047】
レフ測定受光系170では、レフ測定投射系160により眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光が、対物レンズ152を通過し、第1ダイクロイックミラー153および第3ダイクロイックミラー168により反射される。その反射された戻り光は、ロータリープリズム167を通過し、孔開きプリズム166の孔部を通過し、第6リレーレンズ171を通過する。その通過した戻り光は、第2反射ミラー172により反射され、第7リレーレンズ173および合焦レンズ174を通過する。その通過した戻り光は、第3反射ミラー175により反射され、第2ダイクロイックミラー157により反射され、第1結像レンズ158により撮像素子159の撮像面に結像される。制御部27は、撮像素子159からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数および乱視軸角度を含む。
【0048】
制御部27は、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源161と撮像素子159の撮像面とが光学的に共役になるように、レフ測定光源161と合焦レンズ174とをそれぞれ光軸方向に移動させる。さらに、制御部27は、レフ測定光源161および合焦レンズ174の移動に連動して視標ユニット147をその光軸方向に移動させる。光源141、コリメートレンズ142および視標チャート143を含む視標ユニット147と、レフ測定光源161と、合焦レンズ174とは、連動してそれぞれの光軸方向に移動可能であってよい。
【0049】
眼科装置10は、制御部27の制御下で、オートアライメント(自動による位置合わせ)を行いつつ測定光学系20を用いて被検眼Eの眼情報を取得する。詳細には、制御部27は、Zアライメント系110、XYアライメント系120からのアライメント情報に基づいて、測定光学系20(その光学系)の測定光軸Lを被検眼Eの軸に合わせつつ被検眼Eに対する測定光学系20の距離が所定の作動距離になる移動量(アライメント情報)を算出する。ここで、作動距離とは、ワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、測定光学系20を用いて特性を適切に測定するための測定光学系20と被検眼Eとの間の距離である。制御部27は、移動量に応じて測定ヘッド駆動部15を駆動して被検眼Eに対して測定光学系20を移動させることで、対応する被検眼Eに対する測定光学系20(測定ヘッド16)のXYZ方向のアライメントを行う。その後、制御部27は、適宜測定光学系20を駆動して、被検眼Eの各種の眼情報を取得させる。眼科装置10では、手動すなわち検者が検者用コントローラ31を操作することで、被検眼Eに対して測定光学系20をアライメントし、レフ測定投射系160とレフ測定受光系170とを駆動して被検眼Eの各種の眼情報を取得することもできる。眼科装置10では、被検眼Eの各種の眼情報を取得する際、被検者が被検者用コントローラ32を操作することで応答することができ、被検眼Eの各種の眼情報の取得を補助する。
【0050】
眼科装置10は、調節力測定工程(調節力測定モード)を行うことが可能とされている。この調節力測定工程は、基本的に近点での眼屈折力(NPA)から遠点での眼屈折力(FPA)を減算して調節力(調節幅)を算出するものである。その遠点は、設定した任意の距離でもよく、無限遠としてもよい。近点は、被検者(被検眼E)が適切に見ることのできる限界まで接近した距離である。調節力測定工程は、両眼視の状態で視標画像Sfを呈示し、その視標画像Sfを呈示する呈示位置Ppを所定の遠方位置から所定の近方位置まで移動させつつ(図8参照)、その移動の際に常にもしくは所定のタイミングで各被検眼Eの眼屈折力をレフ測定投射系160とレフ測定受光系170とにより測定する。
【0051】
その呈示位置Ppは、調節力の測定のために視標画像Sfを呈示する位置を示すもので、図8に示すように、所定の遠方位置から所定の近方位置まで移動させることで、上記した遠点および近点での眼屈折力の測定を可能とする。実施例1の呈示位置Ppは、適宜設定可能とされ、一例として無限遠から0.3mまで移動可能とさせるものとしている。なお、所定の遠方位置および所定の近方位置(移動可能な範囲)は、調節力の測定を可能とするものであれば適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0052】
視標画像Sfは、制御部27の制御下で、視標チャート143に視標画像Sfを表示させることで、視標投影系140を用いて各被検眼Eに呈示される。視標画像Sfは、図8の右側に示すように、呈示位置Ppの変化に合わせて呈示される大きさが変化するものとされており、その大きさの変化により呈示位置Ppが変化したことを認識させるものとしている。視標画像Sfは、無限遠の場合には最も小さなものとされ、近付くに連れて漸次的に大きくされ、0.3mの場合には最も大きなものとされる。この変化は、視標チャート143に表示する視標画像Sfの大きさを変化させることで行う。この変化は、視標画像Sfとして表示されたものが現実世界に存在した状態において、その呈示位置Ppが変化する様子を肉眼で見たときの遠近感に合わせて拡大率(変化の割合)が設定される。
【0053】
また、実施例1の視標画像Sfは、動画とされており、上記したような大きさの変化が連続的なものとされている。これにより、被検者は、視標画像Sfで示されたものが接近(または遠ざかる)していることを、より自然に感じることができる。加えて、実施例1の視標画像Sfは、呈示位置Ppが変化したことの認識をより自然なものとするために、現実世界で接近したり離れていったりする様子を見たことのあるものとしており、一例として自動車としている。ここで、図8に示す例の視標画像Sfは、単に自動車のみの表示としているが、遠近感の把握を容易とするために簡易な背景(例えば直線の道路等)を併せて表示するものでもよい。なお、視標画像Sfは、呈示位置Ppが変化したことを認識させるように大きさが変化されるものであれば、複数の静止画をコマ送りするものでもよく、拡大率等の変化の態様や描画する内容は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0054】
制御部27は、調節力測定工程において、視標チャート143に視標画像Sfを表示させるとともに、呈示位置Ppの変化に合わせて視標チャート143上での視標画像Sfの大きさを変化させる。これにより、両被検眼Eでそれぞれ視標画像Sfを見ただけで、視標画像Sfが近付いてきたり遠ざかっていったりするものと被検者に認識させることができる。
【0055】
加えて、視標画像Sfは、呈示位置Ppの変化に合わせて両眼視差を与えたものとすることができる。この場合、視標画像Sfは、無限遠の呈示位置Ppに合わせて最も小さなものとされた場合には両眼視差が無いものとする。また、視標画像Sfは、呈示位置Ppが無限遠よりも近付くと、右眼用測定ヘッド16R(右眼用測定光学系20R)に表示するものは右側斜め前から見たように、かつ左眼用測定ヘッド16L(左眼用測定光学系20L)に表示するものは左側斜め前から見たように、両眼視差を与える。具体的には、後述する回旋角αに応じた角度から視標画像Sfを見た様子に合わせて、左右の視標画像Sfにそれぞれ視差を与える。そして、視標画像Sfは、呈示位置Ppの変化すなわち回旋角αの変化に応じて、視標画像Sfに与える視差を変化させていく。このようにすると、各被検眼Eに等しい呈示位置Ppの視標画像Sfを見せることで、この視標画像Sfを呈示位置Ppに応じた様子で立体視させることができ、近付いてきたり遠ざかっていったりするものと被検者により明確に認識させることができる。このとき、各被検眼Eに呈示する両視標画像Sfでは、視差および回旋角αの変化に応じて左右で表示する位置を変化させるものとすることもできる。このように表示位置を変化させることで、より容易にかつ適切に立体視させることができる。
【0056】
この視差は、呈示位置Ppが無限遠とされている場合には設ける必要はなく、呈示位置Ppがある程度大きい場合にもあまり有効ではないが、呈示位置Ppが小さくなるほど有効となる。このため、視差を設ける範囲は、適宜設定することができる。これにより、呈示位置Ppの変化可能な範囲であっても、視標画像Sfでは視差を設けていないものと視差を設けているものとが切り替わることとなる。このことは、検者が把握可能とすると使い勝手を向上でき、例えば後述する調節力測定画面Sa(図10参照)に表示するものとしてもよい。このような表示は、例えば、後述する操作表示箇所52の目盛52gの横に視差を設けている箇所(範囲)を示すことで、違和感なく容易に認識させることができる。
【0057】
調節力測定工程では、制御部27が、上記したように呈示位置Ppの変化に合わせて視標画像Sfの大きさを変化させることに加えて、視標投影系140を有する測定光学系20(両測定ヘッド16)の回旋角αと、視標投影系140における視標画像Sfの合焦距離Dfと、を一体に変化させる。回旋角αは、視標投影系140(測定光学系20)の測定光軸Lの方向(被検眼Eから各偏向部材26に至るまでの測定光軸Lの方向)の、無限遠に視標画像Sfを表示する状態(互いに平行な状態)を基準とした角度である。その測定光軸Lの方向は、上述したように両測定ヘッド16を対応する被検眼Eの眼球回旋点を中心に回転させることで調整できる。このため、回旋角αが0(零)度であると、両測定光軸Lの方向が平行となり、被検眼Eの視軸が無限遠とされていることとなる。回旋角αは、図9に示すように、両被検眼Eの間隔となる瞳孔間距離PDと、両被検眼Eから呈示位置Ppまでの間隔となる呈示距離Dpと、から求めることができる。すなわち、回旋角αは、tan-1(PD/2Dp)で求めることができる。その瞳孔間距離PDは、前眼部像Iやアライメントの位置から求めてもよく、一般的な値を用いてもよい。
【0058】
制御部27は、調節力測定工程において、視標チャート143に視標画像Sfを表示させるとともに、それを被検眼Eに呈示する視標投影系140(測定光学系20(両測定ヘッド16))の回旋角αを呈示位置Ppの変化に合わせて変化させる。これにより、両被検眼Eでそれぞれ視標画像Sfを見ると、各被検眼Eの視軸が呈示位置Ppに合わせて輻輳または開散されることとなり、視標画像Sfが近付いてきたり遠ざかっていったりするものと被検者に認識させることができる。
【0059】
合焦距離Dfは、表示された視標画像Sfのピントを呈示位置Ppに合わせた状態とするもので、各被検眼Eから呈示位置Ppまでの距離で示すことができる。この合焦距離Dfは、両被検眼Eの中心位置から呈示位置Ppまでの間隔となる呈示距離Dpと、上記した回旋角αと、から求めることができる。すなわち、合焦距離Dfは、Dp/cosαで求めることができる。
【0060】
制御部27は、調節力測定工程において、視標チャート143に視標画像Sfを表示させるとともに、それを被検眼Eに呈示する視標投影系140(測定光学系20)における合焦距離Dfを呈示位置Ppの変化に合わせて変化させる。この合焦距離Dfは、視標投影系140における視標ユニット147を移動させることで調整できる。これにより、両被検眼Eでそれぞれピントを合わせて視標画像Sfを見ると、呈示位置Ppにピントを合わせた状態となるので、視標画像Sfが近付いてきたり遠ざかっていったりするものと被検者に感じさせることができる。
【0061】
制御部27は、調節力測定工程を開始すると、図8に示すように、最も小さな視標画像Sf0を視標チャート143に表示させ、視標投影系140を無限遠の合焦距離Df0とし、測定光学系20を0(零)度の回旋角α0として、無限遠(呈示距離Dp0)となる呈示位置Pp0に視標画像Sf0を表示させる。その後、制御部27は、視標画像Sf0よりも大きな視標画像Sf1を視標チャート143に表示させ、視標投影系140を合焦距離Df1とし、測定光学系20を回旋角α1として、呈示距離Dp1となる呈示位置Pp1に視標画像Sfを表示させる。そして、制御部27は、視標画像Sf1よりも大きな視標画像Sf2を視標チャート143に表示させ、視標投影系140を合焦距離Df2とし、測定光学系20を回旋角α2として、呈示距離Dp2となる呈示位置Pp2に視標画像Sfを表示させる。その後、制御部27は、視標画像Sf2よりも大きな視標画像Sf3を視標チャート143に表示させ、視標投影系140を合焦距離Df3とし、測定光学系20を回旋角α3として、呈示距離Dp3となる呈示位置Pp3に視標画像Sfを表示させる。
【0062】
このように、制御部27は、呈示位置Ppの変化に合わせて、視標チャート143に表示させる視標画像Sfの大きさと、視標投影系140の合焦距離Dfと、測定光学系20の回旋角αと、を一体(一斉)に変化させる。このため、被検者に、視標画像Sfで示したものが、呈示位置Ppの変化に応じて遠方から近方に近付いてくるように感じさせることができ、両被検眼Eを自然と極めて近い状態で輻輳させて視標画像Sfを見せることができ、両被検眼Eを適切に調節させることができる。同様に、呈示位置Ppを近方から遠方に変化させることで、被検者に、視標画像Sfで示したものが近方から遠方に遠ざかるように感じさせることができ、両被検眼Eを自然と極めて近い状態で開散させて視標画像Sfを見せることができ、両被検眼Eを適切に調節させることができる。加えて、呈示位置Ppの変化に合わせて視標画像Sfに両眼視差を与えるものとすると、立体感を感じさせて視標画像Sfを見せることができ、より適切に両被検眼Eを輻輳または開散させるとともに調節させることができる。
【0063】
ここで、呈示位置Ppの変化は、制御部27が自動で行うものでもよく、検者の指示により行うものでもよい。そして、調節力測定工程では、図10に示すように、そこにおける操作等を行うための調節力測定画面Saを、表示部34の表示面34aに表示させることができる。実施例1の調節力測定画面Saは、2つの視標画像表示箇所51と、その間に設けられた操作表示箇所52と、それらの下に設けられた2つの限界操作釦53と、それらの下に設けられた2つの測定値表示箇所54と、を有する。
【0064】
両視標画像表示箇所51は、現時点で表示させている双方の視標画像Sfを表示させる箇所であり、図10を正面視して右側に左眼に表示した視標画像Sfを表示させるとともに、左側に右眼に表示した視標画像Sfを表示させる。なお、両視標画像表示箇所51は、それぞれが対応する視標画像Sfと合わせて前眼部観察系150で取得した前眼部像I(図5参照)をそれぞれ表示するものとしてもよい。また、前眼部像Iは、各視標画像表示箇所51とは異なる位置に表示するものとしてもよい。
【0065】
操作表示箇所52は、調節力測定工程において呈示位置Ppを変化させる操作のために設けられたものであり、表示面34aに重畳して配置したタッチパネル式の入力部34bを利用して指やタッチペン等で触れることで操作可能とされている。操作表示箇所52は、左上に遠方への移動の操作のための遠方移動記号52aと、その下に近方への移動の操作のための近方移動記号52bと、を有する。この遠方移動記号52aとおよび近方移動記号52bは、検者が手動で呈示位置Ppを変化させるためのものである。また、操作表示箇所52は、近方移動記号52bの下に、呈示位置Ppを自動で変化させるモードとする自動選択記号52cと、その左下に自動での呈示位置Ppの変化を一時停止させる一時停止記号52dと、その右に自動での呈示位置Ppの変化を実行させる実行記号52eと、を有する。さらに、操作表示箇所52は、上記した各記号の右側に、現在の呈示位置Ppを示す呈示位置標示記号52fを有する。この呈示位置標示記号52fは、被検眼Eからの呈示距離Dpを示す目盛52gと、その目盛52g上で呈示位置Ppを示す目印52hと、を有する。
【0066】
限界操作釦53は、被検者が近方へと移動する視標画像Sfがボケて見えたり複視を自覚(2つに見える)したりした際に操作するものであり、被検者の自覚により近方の限界となる呈示位置Ppを検出するための操作箇所となる。この限界操作釦53は、被検者が操作してもよく、検者が被検者の反応に基づいて操作してもよい。
【0067】
測定値表示箇所54は、調節力測定工程で測定した各種の数値を表示させる箇所であり、図10を正面視して右側に左眼の測定結果を表示させるとともに、左側に右眼の測定結果を表示させる。実施例1の測定値表示箇所54は、上から眼屈折力としての球面度数S、円柱度数C、軸角度Ax、近点での眼屈折力NPA、遠点での眼屈折力FPA、調節力(NPA-FPA)を表示するものとしている。なお、測定値表示箇所54は、他の測定値を合わせて表示するものでもよく、表示の順番や配置は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0068】
なお、調節力測定画面Saは、調節力測定工程を行うための操作や測定結果の表示等ができるものであれば、他の構成(機能やデザインを含む)でもよく、他の箇所に表示させるものでもよく、実施例1の構成に限定されない。また、上記した各操作は、調節力測定画面Saとは異なる表示のものを用いてもよく、表示部34とは別に操作部を設けるものでもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0069】
この眼科装置10では、例えば、以下の調節力測定工程により、被検眼Eの調節力を測定することができる。先ず、眼科装置10では、前眼部観察系150で取得した前眼部像Iの動画を表示面34aに表示させた状態において、測定光学系20のオートアライメントを行い、測定光学系20の光学系の測定光軸Lを被検眼Eの視軸(視線方向)に一致させる。ここで、眼科装置10では、検者用コントローラ31またはその他の操作部に、下方視や上方視や左右視させた状態で測定を行う旨の操作が為された場合、その設定された方向(下方視、上方視、左右視)に応じて測定光学系20の光学系の測定光軸Lの向きを調整する。なお、眼科装置10では、各測定ヘッド16に設けられた測定光学系20の光学系の測定光軸Lが水平な状態で被検眼Eの調節力を測定する場合には、このような調整は行わない。
【0070】
次に、眼科装置10では、最も小さな視標画像Sf0を視標チャート143に表示させ、視標投影系140を無限遠の合焦距離Df0とし、測定光学系20を0(零)度の回旋角α0として、無限遠(呈示距離Dp0)となる呈示位置Pp0に視標画像Sfを表示させる(図8参照)。その後、眼科装置10では、視標ユニット147を移動させて雲霧状態とし、被検眼Eを調節休止状態とし、レフ測定投射系160とレフ測定受光系170とを用いて測定リング像を検出する。そして、眼科装置10では、その測定リング像に基づいて、眼屈折力としての球面度数、円柱度数、軸角度を周知の手法により算出する。
【0071】
次に、眼科装置10では、上記の測定で求めた眼屈折力に適合するD(ディオプタ)位置に、視標ユニット147、レフ測定光源161および合焦レンズ174を配置して、視標投影系140で無限遠の視標画像Sfを固視させる。そして、眼科装置10では、その状態で、レフ測定投射系160とレフ測定受光系170とを用いて眼屈折力(球面度数、円柱度数、軸角度)を算出し、その値を遠点での眼屈折力FPAとする。なお、眼屈折力FPAは、雲霧を行って強制して眼屈折力を求めるのではなく、無限遠で視標画像Sfを呈示した状態で測定した眼屈折力としてもよい。
【0072】
次に、眼科装置10では、呈示する視標画像Sfの呈示位置Ppの近方への変化を開始し、その変化の際に常にもしくは所定のタイミングで各被検眼Eの眼屈折力をレフ測定投射系160とレフ測定受光系170とにより測定する。このとき、眼科装置10では、呈示位置Ppを無限遠から近方へと変化させ、その変化に合わせて、視標チャート143に表示させる視標画像Sfの大きさを小さくしていき、視標投影系140の合焦距離Dfを短くしていき、測定光学系20の回旋角αを大きくしていくことを一体に行う。そして、眼科装置10では、上記の動作の際に、限界操作釦53が操作されたか否か、すなわち被検者が視標画像Sfがボケて見えたり複視を自覚したりしたか否かを判断する。または、眼科装置10では、呈示位置Ppが設定された所定の近方位置、すなわち設定された移動範囲における最も近方(実施例1では0.3m)まで変化されたか否かを判断するものとしてもよい。すると、眼科装置10では、呈示位置Ppの変化を停止し、それに伴って視標チャート143に表示させる視標画像Sfの大きさの変化、視標投影系140の合焦距離Dfの変化、および測定光学系20の回旋角αの変化も停止する。
【0073】
そして、眼科装置10では、呈示位置Ppを遠方から近方に変化させつつ測定した眼屈折力により取得した近点での眼屈折力NPA、遠点での眼屈折力FPA、調節力(NPA-FPA)を表示面34aにおける調節力測定画面Saの各測定値表示箇所54(図10参照)に適宜表示させる。その近点での眼屈折力NPAは、呈示位置Ppを変化させつつ測定した眼屈折力の推移から求める。なお、近点での眼屈折力NPAは、被検者が近方の限界と自覚した呈示位置Ppの直前の眼屈折力としてもよい。加えて、実施例1では、上記した各ステップで測定した両被検眼Eの眼屈折力(球面度数、円柱度数、軸角度)を各測定値表示箇所54に適宜表示させる。なお、眼科装置10では、往復測定が設定されている場合には、最も近方まで変化された呈示位置Ppを、折り返して無限遠まで変化させて眼屈折力を測定し、この眼屈折力も用いて調節力を求めるものとする。
【0074】
なお、この調節力測定工程は、両眼視の状態で行うものとしているが、被検者では疾病等で両眼視が困難な場合がある。このような場合、制御部27は、測定する被検眼Eに対応する測定ヘッド16および測定光学系20のみを駆動して、片眼視の状態で上記したものと同様に各工程を行うものとする。この片眼視での測定の設定は、検者用コントローラ31またはその他の操作部で行うことができる。
【0075】
次に、被検眼Eに斜視がある場合において、視軸VX(図12参照)の向きについて、図11を用いて説明する。図11の左側は斜視のない被検眼EにおけるXYアライメント光源121の輝点Qの位置を示し、図11の右側は斜視のある被検眼Eの輝点Qの位置を示す。ここで、斜視とは、右被検眼と左被検眼の視線が異なる場所に向かっていることである。斜視のない被検眼E(図11の左側参照)であれば、右被検眼および左被検眼により共通の固視標を固視すると、右被検眼と左被検眼の視線は略前方の共通の場所(固視標)に向かう。しかしながら、斜視のある被検眼E(図11の右側参照)であると、右被検眼または左被検眼の一方の視線は固視標に向かわず、したがって、これら被検眼Eの視線は異なる場所に向かう。
【0076】
先ず、被検眼Eでは、固視標(固視点)と瞳孔の中心(以下では瞳孔中心PCとする)とを結ぶ軸が、被検眼Eがどこを見ているかを示す視軸VXとなる。この視軸VXは、例えば、被検眼Eにおいて、瞳孔中心PCから角膜と垂直方向に出る軸である瞳孔軸PXを用いることができる。この瞳孔軸PX(視軸VX)は、XYアライメント光源121に基づく輝点像Br(以下、これを角膜反射Brともいう)の位置から知ることができる。また、被検眼Eにおける瞳孔軸PXは、瞳孔中心PCの位置から知ることができる。図11の左に示すように、斜視のない被検眼Eでは、前眼部像I中の瞳孔像Epの中心すなわち瞳孔中心PCと角膜反射Brとは同一位置にある。これに対して、図11の右側に示すように、斜視のある被検眼Eでは、角膜反射Brの位置が瞳孔中心PCからずれている。そこで、本実施の形態である眼科装置10では、瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とのずれ量(距離d)を求め、このずれ量から瞳孔軸PXと測定光学系20の光軸とのなす角度θを求める。
【0077】
眼科装置10では、一例として、ヒルシュベルグ(Hirschberg)法に基づいて瞳孔軸PX(視軸VX)と光軸とのずれを求める。ヒルシュベルグ法では、光源を被検者の被検眼Eから33cmの距離に置き、被検者にこの光源を固視するように指示した上で、光源と同軸の位置にある検者が瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置との関係を測定し、他覚的な定量検査を行う。ここで、眼科装置10では、角膜反射BrをもたらすXYアライメント光源121と前眼部観察系150の撮像素子159とは同一光軸上にあるので、この撮像素子159で撮像した前眼部像Iから瞳孔中心PCを求め、また、前眼部像Iにおける角膜反射Brの位置を求めることで、ヒルシュベルグ法に則った他覚的な斜視の定量検査を行うことができる。
【0078】
具体的には、制御部27は、眼科装置10の視標投影系140の視標チャート143に固視標を表示させる。次いで、制御部27は、測定ヘッド駆動部15により両測定ヘッド16を対応する被検眼Eの眼球回旋軸を中心として回転させ、被検眼Eの33cm前方にある所定の呈示位置Pp(図9参照)に表示される固視標を固視するように指示する。これにより、各被検眼Eを輻輳させて固視標を注視させる。この状態において、制御部27は、前眼部像Iにおける瞳孔像Epの瞳孔中心PCと角膜反射Brの位置とをそれぞれ求める。実施例1の眼科装置10では、XYアライメント光源121が赤外光であるので、撮像素子159の出力信号から赤外光領域の信号のみを取り出すことで、XYアライメント光源121からの反射光に基づく角膜反射Brの位置を簡易にかつ正確に求めることができる。そして、制御部27は、求められた瞳孔中心PCの座標および角膜反射Brの位置座標に基づき、瞳孔中心PCの位置に対する角膜反射Brの位置のずれ量(以下では距離dとする)を求める。
【0079】
瞳孔軸PXと測定光学系20の光軸とのなす角度θは、一般的には次式(1)に基づいて、角膜の曲率半径r(つまり角膜曲率中心Roから角膜頂点Eptまでの距離)と、角膜頂点Eptの位置と角膜反射Brの位置との距離dとを用いて算出できる。その距離dは、前眼部像Iに基づいて求めることができる。
sinθ=d/r ・・・(1)
【0080】
また、角度θは、距離d(ずれ量)と、角膜曲率中心Roから瞳孔中心PCまでの距離rと、を用いて、次式(2)に基づいて求めてもよい。これにより、前眼部像Iに基づいて、より効率的に角度θ等を算出できる。
sinθ=d/r ・・・(2)
【0081】
ここで、例えば、距離rは、角膜の曲率半径rから、角膜頂点Eptと瞳孔中心PCとの距離r’を減算して求められる。その曲率半径rは、例えば一般的な平均値7.7mmを用いることができ、距離r’は、例えば一般的な平均値3.6mmを用いることができる。この場合、距離r=(7.7-3.6)mm=4.1mmとなる。なお、瞳孔中心PCと角膜反射Brの各位置は、角膜の屈折作用の影響を受け易く、また、距離rには個人差がある。そのため、図12の左側のような斜視のない被検眼Eの瞳孔軸PXや、他の様々な方向を向いた被検眼Eの瞳孔軸PXに関する、距離d、距離rを収集し、これらの連立方程式に基づいて、距離rを最適化してもよい。または、ケラト測定により取得された角膜の曲率半径rの実測値から、距離rを最適化してもよい。
【0082】
また、上記(1)、(2)を用いた算出手順に代えて、次式(3)によっても、角度θを算出することができる。次式(3)において、Lは角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離を示し、Dは角膜頂点Eptの位置と眼球回旋点Oの位置との距離を示す。なお、角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離Lは予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)を用いてもよい。あるいは、別の機器による測定において、実距離が既知である場合にはこの値を入力可能としてもよい。角膜の曲率半径rは、ケラト測定により取得された実測値を用いることが可能である。また、角膜の曲率半径rは、初期値として平均値(7.7mm)を用いてもよい。またこの場合も、距離Lに代えて瞳孔中心PCから眼球回旋点Oまでの距離を用い、距離Dに代えて、前眼部像Iにおける瞳孔中心PCの位置と眼球回旋点Oの位置との距離を用いて算出してもよい。
sinθ=D/L ・・・(3)
【0083】
さらに異なる角度θの算出手法として、例えば、角膜反射Brの変位Δ(図12の右側参照)を用いることもできる。変位Δは、ずれが検出された被検眼Eのみに固視標を固視させて、図12の左側の状態での各数値を求め、眼球回旋点Oからの角膜反射Brのずれ量として表すことができる。
【0084】
角膜頂点Eptから眼球回旋点Oまでの距離をLとし、角膜の曲率半径をrとすると、図12の右側に示す角膜反射Brの変位Δは、次式(4)のように表される。この場合も、角膜頂点から眼球回旋点Oまでの距離Lは予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)を用いてもよい。あるいは、別の機器による測定において、実距離が既知である場合にはこの値を入力可能としてもよい。角膜の曲率半径rは、ケラト測定により取得された実測値または平均値(7.7mm)を用いることが可能である。
Δ=(L-r)・sinθ・・・(4)
【0085】
そして、制御部27は、上記したように瞳孔軸PX(視軸VX)と光軸とのなす角度θを算出する。この角度θは、被検眼Eの視線(視軸VX)の向きを示す被検眼視線情報となる。
【0086】
眼科装置10では、制御部27が位置関係画像Ipを作成して、検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。その位置関係画像Ipは、図12に示すように、両被検眼Eの調節力等を測定している際の両被検眼Eに対する測定光学系20(両測定ヘッド16)の位置関係を示すものである。この例の位置関係画像Ipは、少なくとも、一対の測定光学系20を模した一対の測定光学系図柄Dmと、一対の被検眼Eを模した一対の被検眼図柄Deと、を有する。この位置関係画像Ipは、制御部27が、光学系変更機構としての各測定ヘッド駆動部15からの光学姿勢情報と、取得光学系としての各測定光学系20からの被検眼位置情報と、に基づいて生成する。すなわち、制御部27は、光学姿勢情報と被検眼位置情報とに基づいて、各被検眼Eに対する各測定光学系20の位置および向きを把握する。制御部27は、それらに基づいて一対の被検眼図柄Deの位置と、それらに対する一対の測定光学系図柄Dmの位置および向きと、を設定して配置することで位置関係画像Ipを生成する。その各測定光学系図柄Dmでは、それぞれに併せて測定光軸Lを表示することで、向きの把握を容易なものとしている。そして、制御部27は、その生成した位置関係画像Ipを検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。
【0087】
図12の例の位置関係画像Ipでは、各被検眼図柄Deと各測定光学系図柄Dmとに加えて、一対の測定ヘッド16を模した一対の測定ヘッド図柄Dhと、一対の偏向部材26を模した一対の偏向部材図柄Ddと、を有する。この各測定ヘッド図柄Dhと各偏向部材図柄Ddとは、実際の各測定ヘッド16に対して各被検眼Eが対向されている様子を把握することをより容易なものにできる。各測定ヘッド図柄Dhと各偏向部材図柄Ddとは、光学姿勢情報に基づいて位置および向きを設定することができる。このため、位置関係画像Ipでは、測定光軸Lを、両被検眼Eから各偏向部材図柄Ddで反射して各測定光学系図柄Dmに至るものとしている。
【0088】
また、図12の例の位置関係画像Ipでは、各種値表示箇所Vdを設けている。この例の各種値表示箇所Vdでは、呈示距離Dpを示す呈示距離情報I1と、回旋角αを示す回旋角情報I2と、合焦距離Dfを示す合焦距離情報I3と、瞳孔間距離PDを示す瞳孔間距離情報I4と、接近度合を示す接近度合情報I5と、を有している。呈示距離情報I1と回旋角情報I2と合焦距離情報I3とは、上記のように求めた呈示距離Dpと回旋角αと合焦距離Dfとを表示するもので、呈示位置Ppに合わせた各測定光学系20(両測定ヘッド16)の変化に応じて変化される。瞳孔間距離情報I4は、上記のように求めた瞳孔間距離PDを表示するもので、同じ被験者であれば一定の値となる。接近度合情報I5は、各測定光学系20において対応する被検眼Eに最も接近する箇所から被検眼Eまでの間隔Piを示すものであり、実施例1では最も接近する箇所を偏向部材26の先端としている。この接近度合情報I5(間隔Pi)は、各測定光学系20における偏向部材26(その先端)の位置が予め判っていることから、各測定光学系20の光学姿勢情報と、対応する被検眼Eの被検眼位置情報と、から求めることができる。なお、この最も接近する箇所は、適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0089】
ここで、各測定光学系20における偏向部材26(その先端)の位置は、予め判っているものではあるが、組み付け等により各測定ヘッド駆動部15での設定位置からの誤差が生じることが考えられる。このため、眼科装置10では、各測定ヘッド駆動部15による移動のための基準位置と、各測定光学系20における偏向部材26(その先端)の位置と、の誤差の補正作業を出荷時に行うことで、より精度の高い接近度合情報I5(間隔Pi)を求めることができる。なお、眼科装置10では、求めた接近度合情報I5が所定の値よりも小さくなった場合(過度に接近した場合)、接近度合情報I5を点滅させたり色を変化させたりして強調したり、表示部34の色や表示の態様を変化させたり、音等を発生させたりして、注意喚起を促すものとしてもよい。この所定の値は、頬骨や眼窩縁等の被検眼Eの周辺において被検眼Eよりも前側に位置し得る箇所の、被検眼Eに対する一般的な位置関係(距離)を考慮して設定すればよい。これにより、頬骨や眼窩縁等が高い被験者であっても、偏向部材26(その先端)等が被験者に接触することを適切に回避できる。
【0090】
また、図12の例の位置関係画像Ipでは、各被検眼図柄Deに併せて視軸VXを表示することで、各被検眼図柄Deの向きを示すことができる。ここで、視軸VXは、基本的には各測定光学系20(測定光学系図柄Dm)の測定光軸Lと一致する。しかしながら、斜視のある被検眼Eに対しては、測定光軸Lと視軸VXとが上記のように求めた角度θを為すこととなる(図12の左側の被検眼Eから破線で示す視軸VX参照)。これにより、位置関係画像Ipでは、各被検眼図柄Deに併せて視軸VXを表示することで、斜視のある被検眼Eの視軸VXの方向を容易に把握できる。
【0091】
なお、位置関係画像Ipは、図12では表示部34の全域に亘って表示させるもの(いわゆる全画面表示)としているが、図10のように様々な表示の中の1つ(部分表示)としてもよく、図12の例に限定されない。このとき、位置関係画像Ipは、全画面表示と部分表示とを切り替え可能な構成とすることで、使い勝手を向上することができる。
【0092】
また、図12の例の位置関係画像Ipでは、実際の各測定光学系20での光路に合わせて、各測定光学系図柄Dmが偏向部材26に相当する偏向部材図柄Ddを有するものとしている。しかしながら、一対の被検眼Eに対する視標画像Sfの位置関係の把握の観点から向上の余地がある。このため、位置関係画像Ipは、図13に示すように、各測定光学系図柄Dmに変えて視標画像Sfを示すものとしてもよい。この場合、一点鎖線で示すように、各測定光学系図柄Dmを併せて表示させるものとしてもよい。
【0093】
次に、眼科装置の技術の課題について説明する。上記した従来の眼科装置では、眼科装置では、被検者の適切な姿勢が顔をヘッド部に宛がう状態であるとともに、そのヘッド部に測定光学系が設けられているので、被検眼や測定光学系を目視することが困難である。このため、眼科装置では、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握することができず、どのような状態で被検眼の視機能を検査(検眼)しているのかを確認することが困難となる。
【0094】
これに対して、本開示の眼科装置10は、制御部27が、一対の測定光学系20を模した一対の測定光学系図柄Dmと、一対の被検眼Eを模した一対の被検眼図柄Deと、を有する位置関係画像Ipを生成して、検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。このため、眼科装置10は、位置関係画像Ipにより、各被検眼Eに対する各測定光学系20の位置関係を直感的に把握させることができ、どのような状態で被検眼Eの視機能を検査(検眼)しているのかを容易に確認させることができる。特に、眼科装置10は、位置関係画像Ipにおいて、各測定光学系図柄Dmに併せて測定光軸Lを表示させているので、より適切にどのような状態で被検眼の視機能を検査(検眼)しているのかを確認させることができる。
【0095】
また、眼科装置10は、位置関係画像Ipにおいて、一対の測定ヘッド16を模した一対の測定ヘッド図柄Dhと、一対の偏向部材26を模した一対の偏向部材図柄Ddと、を有するものとしている。このため、眼科装置10は、位置関係画像Ipにおいて、実際の各測定ヘッド16と各被検眼Eとの位置関係のように認識させることができ、各測定ヘッド16に対して各被検眼Eが対向されている様子を把握させることができるとともに、各測定光学系20に対する両被検眼Eの位置関係を確認させることができる。
【0096】
さらに、眼科装置10は、位置関係画像Ipにおいて、各種値表示箇所Vdを併せて表示している。このため、眼科装置10は、各被検眼Eに対する各測定光学系20の位置関係を、各種の数値でも把握させることができ、どのような状態で被検眼Eの視機能を検査(検眼)しているのかをより適切に確認させることができる。特に、眼科装置10は、各種値表示箇所Vdとして接近度合情報I5を表示するので、各測定ヘッド16に顔が宛がわれた状態であっても各被検眼Eに各測定光学系20(その偏向部材26)が接触することを抑制できる。
【0097】
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置10は、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置10は、両被検眼Eの眼情報の取得のための一対の取得光学系としての測定光学系20と、その位置または向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構としての測定ヘッド駆動部15と、を備える。また、眼科装置10は、制御部27が、一対の測定光学系20の位置や向きを示す光学姿勢情報と、被検眼Eの位置を示す被検眼位置情報と、に基づいて一対の被検眼Eに対する一対の測定光学系20の位置関係を示す位置関係画像Ipを生成して表示部34に表示させる。このため、眼科装置10は、位置関係画像Ipにより、各被検眼Eに対する各測定光学系20の位置関係を直感的に把握させることができ、どのような状態で被検眼Eの視機能を検査(検眼)しているのかを容易に確認させることができる。
【0098】
また、眼科装置10では、位置関係画像Ipが、一対の測定光学系20における測定光軸Lの情報を有する。このため、眼科装置10は、より適切にどのような状態で被検眼の視機能を検査(検眼)しているのかを確認させることができる。
【0099】
さらに、眼科装置10では、被検眼位置情報を測定光学系20におけるアライメント情報としている。このため、眼科装置10は、各測定光学系20が測定のために取得するアライメント情報を利用するので、簡易な構成で被検眼位置情報を取得できる。
【0100】
眼科装置10では、位置関係画像Ipが、一対の測定光学系20から対応する被検眼Eまでの接近度合を示す接近度合情報I5を有する。このため、眼科装置10は、各測定ヘッド16に顔が宛がわれた状態であっても各被検眼Eに各測定光学系20(その偏向部材26)が接触することを抑制できる。
【0101】
眼科装置10では、位置関係画像Ipを、一対の被検眼Eおよび一対の測定光学系20を上方から見下ろした位置関係で示すことにより、被検眼Eに対して取得光学系が左右方向に変位した様子の把握を可能としている。このため、眼科装置10は、一対の測定光学系20が示す視標画像Sfに対して、被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりしている様子の把握を容易なものにできる。
眼科装置10では、位置関係画像Ipを一対の被検眼Eおよび一対の測定光学系20を上方から見下ろした位置関係としている。このため、眼科装置10は、一対の測定光学系20が示す視標画像Sfに対して、被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりしている様子の把握を容易なものにできる。
【0102】
眼科装置10では、位置関係画像Ipが、一対の被検眼Eの間隔を示す瞳孔間距離情報I4と、一対の取得光学系(測定光学系20)が呈示する視標画像Sfの合焦距離を示す合焦距離情報I3と、一対の取得光学系(測定光学系20)の回旋角αを示す回旋角情報I2と、の少なくとも1つを有している。このため、眼科装置10は、各被検眼Eに対する各測定光学系20の位置関係を、各種の数値でも把握させることができ、どのような状態で被検眼Eの視機能を検査(検眼)しているのかをより適切に確認させることができる。
【0103】
したがって、本開示に係る眼科装置の一実施例としての眼科装置10では、被験者が顔を測定ヘッド16に宛がう状態であっても、被検眼Eと取得光学系としての測定光学系20との位置関係を客観的に把握させることができる。
[変形例]
【0104】
上記した眼科装置10では、両測定ヘッド16の位置を調整することで、対応する被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりできるものとしている。これに加えて、被検眼EのX軸眼球回旋軸を中心に上下方向(X方向を中心とする回転方向)に測定ヘッド16を回転させてもよい。この上下方向に両測定ヘッド16を回転させる構成を、実施例1の変形例の眼科装置10Mとして、図14から図17を用いて説明する。なお、図14図15では、構成の把握を容易とするために、支持腕14を支持する構成等を省略しており、眼科装置10とは異なる構成となる測定ヘッド駆動部40により両測定ヘッド16が移動可能とされた構成のみを示している。
【0105】
この変形例の眼科装置10Mは、基本的に上記した眼科装置10と同様の構成とされており、図14図15に示すように、上記した眼科装置10と同様の構成の両測定ヘッド16を有している。眼科装置10Mは、両測定ヘッド16を移動させる測定ヘッド駆動部40の構成が、上記した眼科装置10の測定ヘッド駆動部15とは異なるものとされている。この測定ヘッド駆動部40は、上記した眼科装置10と同様の構成の支持腕14に設けられている。測定ヘッド駆動部40は、両測定ヘッド16をXYZ方向に三次元で移動させ、被検眼Eに対して、両測定ヘッド16(そこに設けられた測定光学系20)を、所望の位置(検査距離、高さ、左右の位置等)および姿勢(傾き)で配置させるものである。測定ヘッド駆動部40は、対を為す測定ヘッド16に個別に対応して対を為して設けられており、その構成は、左右方向で対称なものとされているので、以下では単に測定ヘッド駆動部40として説明する。
【0106】
この測定ヘッド駆動部40は、2本のアーム部41と6つの回転駆動部42と支持部43とを有し、一方のアーム部41が2つの回転駆動部42を介して支持腕14の上部に取り付けられている。なお、測定ヘッド駆動部40は、検眼用テーブル12(図1参照)に取り付けられていてもよく、他の位置に取り付けられていてもよく、変形例の構成に限定されない。各回転駆動部42は、各アーム部41の両端の位置で対を為して2つずつ設けられ、2つの直交する軸線を回転中心として回転駆動させることができる。各回転駆動部42は、例えば、ベアリング等により軸体を保持する機構と、それぞれに駆動力を発生させるモータと、を組み合わせて構成できる。支持部43は、2つの回転駆動部42を介して両測定ヘッド16を支持している。
【0107】
この眼科装置10Mは、上記した眼科装置10と同様の構成の制御部27(図1等参照)により、各種の情報、例えば、加速度、角速度、方角、位置座標、被検者Sとの距離、被検者Sの顔の角度等に基づいて、両測定ヘッド16(測定光学系20(その測定光軸L))の現在の位置情報および姿勢情報を求め、この位置情報および姿勢情報に基づいて測定ヘッド駆動部40の駆動を制御する。制御部27は、検者用コントローラ31から指定される検査距離や視認対象物に基づいて、測定ヘッド駆動部40を駆動制御する。このため、制御部27は、両測定ヘッド16の測定光学系20(その測定光軸L)の被検眼Eに対する位置および姿勢を所望に変更可能とし、日常生活でその視認対象物が配置されるXYZ方向(左右方向、上下方向および前後方向)の所定の位置に配置できる。
【0108】
なお、測定ヘッド駆動部40は、実施例2では、6軸のロボットアームから構成されるが、5軸、または7軸以上のロボットアームから構成されてもよい。また、測定ヘッド駆動部40は、シリアルリンク型の一つである多関節型(垂直多関節型)のロボットアームから構成されているが、この構成に限定されず、水平関節型のロボットアームでもよいし、座標軸型(直角座標、円筒座標、曲座標等)のロボットアーム、パラレルリンク型のロボットアーム等から構成されてもよい。さらに、測定ヘッド駆動部40は、両測定ヘッド16を三次元で移動させて、所望の位置および姿勢に配置できるものであれば、手動で移動されるものであってもよい。手動で移動される場合には、制御部27は、測定ヘッド駆動部40により移動された両測定ヘッド16の三次元の位置を検出するためのセンサを設けることで、その三次元の位置を取得できる。
【0109】
この眼科装置10Mは、基本的に上記した眼科装置10と同様の検査を行うことができる。これに加えて、眼科装置10Mは、被験者Sが二重焦点レンズや累進レンズ等の遠近両用レンズLbの光学設定および見え方の確認を行うことができる。その遠近両用レンズLbでは、図16に示すように、遠用部と近用部とが設けられており、その遠用部の度数測定位置となる遠用位置Pfと、その近用部の度数測定位置となる近用位置Pnと、が設定されている。眼科装置10Mは、被検眼Eに対して、遠用位置Pfに相当する方向で遠用検査を行うことができるとともに、近用位置Pnに相当する方向で近用検査を行うことができる。
【0110】
先ず、眼科装置10Mでは、図15の上側に示すように、被検眼Eに対して、遠近両用レンズLbの遠用位置Pf(図16参照)に測定光軸Lが位置するように正面で対向する位置および姿勢で両測定ヘッド16を配置する。そして、眼科装置10Mでは、この姿勢において、測定光学系20の視標投影系140により遠用検査距離で視標を呈示して他覚検査を行う。これにより、眼科装置10Mは、遠用位置Pfの方向での被検眼Eの眼情報を取得できる。
【0111】
次に、眼科装置10Mでは、図15の下側に示すように、被検眼Eに対して、遠近両用レンズLbの近用位置Pn(図16参照)に測定光軸Lが位置するように正面で対向する位置および姿勢で両測定ヘッド16を配置する。そして、眼科装置10Mでは、この姿勢において、測定光学系20の視標投影系140により近用検査距離で視標を呈示して他覚検査を行う。これにより、眼科装置10Mは、近用位置Pnの方向での被検眼Eの眼情報を取得できる。なお、眼科装置10Mは、図15の上側に示す位置に両測定ヘッド16を配置した状態で近用検査を行ってもよい。
【0112】
次に、眼科装置10Mでは、上記した眼情報に従って処方した遠近両用レンズLbを装着した状態の被験者Sに対して、遠用位置Pfと近用位置Pnとそれぞれにおける見え方等を確認する。すなわち、眼科装置10Mでは、被験者Sが遠近両用レンズLbを装着した状態において、図15の上側に示すように、被検眼Eに対して、遠近両用レンズLbの遠用位置Pf(図16参照)に測定光軸Lが位置するように正面で対向する位置および姿勢で両測定ヘッド16を配置する。そして、眼科装置10Mでは、この姿勢において、測定光学系20の視標投影系140により遠用検査距離で視標を呈示して自覚検査を行う。これにより、眼科装置10Mは、装着した遠近両用レンズLbにおける遠用位置Pfの方向での見え方を確認できる。
【0113】
次に、眼科装置10Mでは、被験者Sが遠近両用レンズLbを装着した状態において、図15の下側に示すように、被検眼Eに対して、遠近両用レンズLbの近用位置Pn(図16参照)に測定光軸Lが位置するように正面で対向する位置および姿勢で両測定ヘッド16を配置する。そして、眼科装置10Mでは、この姿勢において、測定光学系20の視標投影系140により近用検査距離で視標を呈示して自覚検査を行う。これにより、眼科装置10Mは、装着した遠近両用レンズLbにおける近用位置Pnの方向での見え方を確認できる。
【0114】
このとき、眼科装置10Mでは、制御部27が位置関係画像IpM(図17参照)を作成して、検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。その図17に示す位置関係画像IpMは、左右方向から見た様子で示しており、測定光学系20(測定ヘッド16)が上下方向に変位された様子の把握を容易とする。この図17の位置関係画像IpMでは、図15の下側に示す状態で測定光学系20が配置された様子を実線で示し、図15の上側に示す状態で測定光学系20が配置された様子を二点鎖線で示している。この例の位置関係画像Ipは、一対の測定光学系20を模した一対の測定光学系図柄Dmと、一対の被検眼Eを模した一対の被検眼図柄Deと、を有する。この位置関係画像IpMは、制御部27が、光学系変更機構としての測定ヘッド駆動部40からの光学姿勢情報と、取得光学系としての各測定光学系20からの被検眼位置情報と、に基づいて生成する。すなわち、制御部27は、光学姿勢情報と被検眼位置情報とに基づいて、各被検眼Eに対する各測定光学系20の位置および向きを把握する。制御部27は、それらに基づいて一対の被検眼図柄Deの位置と、それらに対する一対の測定光学系図柄Dmの位置および向きと、を設定して配置することで位置関係画像IpMを生成する。その各測定光学系図柄Dmでは、それぞれに併せて測定光軸Lを表示することで、向きの把握を容易なものとしている。この位置関係画像IpAでは、図12等に示す位置関係画像Ipと同様に各種値表示箇所Vdを設けている。そして、制御部27は、その生成した位置関係画像IpMを検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。
【0115】
なお、位置関係画像IpMでは、図12に示す位置関係画像Ipと同様に、一対の測定ヘッド16を模した一対の測定ヘッド図柄Dhや、一対の偏向部材26を模した一対の偏向部材図柄Ddを、併せて表示するものとしてもよい。この場合、測定ヘッド図柄Dhは、被検眼図柄Deと重なることとなるので、透かしを入れた表示としてもよく、点滅させる等により時間差で被検眼図柄Deを視認可能としてもよい。このため、眼科装置10Mでは、位置関係画像IpMにより、被検眼Eに対する測定光学系20(測定ヘッド16)の位置関係を容易に把握させることができる。
【0116】
この変形例の眼科装置10Mは、位置関係画像IpMを、被検眼Eおよび取得光学系(測定光学系20)を側方から見た位置関係で示すことにより、被検眼Eに対して取得光学系が変位した様子の把握を可能としている。このため、眼科装置10Mは、取得光学系(測定光学系20)が上下方向に変位される様子の把握を容易なものにでき、被検眼Eと取得光学系との位置関係を客観的に把握させることができる。
【実施例0117】
次に、本開示の一実施形態である実施例2の眼科装置10Aについて、図18図19を用いて説明する。眼科装置10Aは、図18に示すように、検眼用テーブル12Aと、制御部27Aと、検者用コントローラ31と、検眼光学系であるレフラクターヘッド60と、被検者Sが遠方の物体を目視するときの視機能を検査(遠用検査)するための遠用視標呈示装置70と、被検者Sが近くの物体を目視するときの視機能を検査(近用検査)のための近用視標呈示装置80と、を備える。制御部27Aは、実施例1の制御部27と同様とされており、眼科装置10Aの動作を統括的に制御する。この制御部27Aは、図18に示す例では検眼用テーブル12Aに設けられているが、他の場所に設けられていてもよく、実施例2の構成に限定されない。検者用コントローラ31は、実施例1の眼科装置10Aと同様とされており、制御部27Aの制御下で、レフラクターヘッド60や遠用視標呈示装置70や近用視標呈示装置80の各種操作を行うことができる。
【0118】
検眼用テーブル12Aは、レフラクターヘッド60や遠用視標呈示装置70や近用視標呈示装置80等が設けられる机である。また、検眼用テーブル12Aは、検査中の姿勢を適切に保つために被検者Sが肘や腕を置くためにも用いられ、上下方向に移動可能とされている。このため、眼科装置10Aでは、被検眼Eの床面からの高さに合わせて、レフラクターヘッド60、遠用視標呈示装置70および近用視標呈示装置80の高さを調整できる。
【0119】
レフラクターヘッド60は、被検眼Eに合うレンズを選択する装置である。このレフラクターヘッド60は、複数の検査用レンズ61を備え、そこから選択された検査用レンズ61を被検眼Eの前方に配置することで、検査用レンズ61を適宜交換しつつ屈折検査やその他の検査を行うことを可能とする。このため、レフラクターヘッド60は、取得光学系が設けられたヘッド部として機能する。レフラクターヘッド60は、検眼用テーブル12Aに設けられた支持機構62と、その先端に固定された左右一対の検眼ユニット63と、とを有する。
【0120】
一対の検眼ユニット63は、被検者Sの左右の被検眼Eに対応するように、左右に一対設けられた左眼用の検眼光学系と、右眼用の検眼光学系と、を各々有する。一対の検眼ユニット63は、公知のスライド機構によって個別に左右方向(X方向)へスライド可能に設けられ、相対的に接近および離反が可能とされている。レフラクターヘッド60は、支持機構62を円周方向へ回転させることで、一対の検眼ユニット63を、被検眼Eの前方に配置したり、被検眼Eの前方から退避させたりすることができる。
【0121】
各検眼ユニット63では、前方および後方のそれぞれに検眼窓が設けられ、内部には複数の検査用レンズ61、偏光フィルタ、遮蔽板等の光学部材が、左右の被検眼Eに対応してそれぞれ配置されている。これらの光学部材は、各検眼窓に対向する位置に、図示しない公知の駆動機構によって選択的に配置することができる。検査用レンズ61は、被検眼Eの視機能を矯正するために用いられるものであり、例えば、球面レンズ、円柱レンズ、プリズム等が挙げられる。また、検査用レンズ61は、裸眼での検査も可能とするために、矯正の機能を持たないレンズ、ガラス板、またはプラスチック板等も選択可能とされている。
【0122】
遠用視標呈示装置70は、レフラクターヘッド60の検査用レンズ61を通して、遠用検査用の視標(以下、「遠用視標」ともいう)を被検眼Eの前方の遠用検査距離に呈示する。遠用視標呈示装置70は、筐体71と、そこの収容された遠用視標呈示光学系72と、を有する。筐体71の前面(被検者S側)には、被検者Sが遠用視標を目視するための窓部71aが設けられている。
【0123】
遠用視標呈示光学系72は、ディスプレイ73とレンズ74と反射ミラー75とを有する。ディスプレイ73は、LCDや有機EL等の電子表示デバイスで構成される。ディスプレイ73は、検者用コントローラ31からの指示信号に基づき、その表示面73aに遠用視標を表示する。遠用視標呈示光学系72は、ディスプレイ73に表示された遠用視標からの光束をレンズ74によって屈折し、被検眼Eから遠用検査距離に視標像(虚像)Pを結像する。また、レンズ74を透過した光束は、反射ミラー75によって反射され、被検眼Eの前方の遠用検査距離に視標像(虚像)Pが呈示される。この反射ミラー75は、その傾斜角度を変更可能とすることで、身長等によって高さにばらつきのある被検眼Eへ向けて遠用視力表を呈示することができる。なお、遠用視標呈示光学系72は、検査距離変更機構として拡大レンズ、その他の光学部材を備えてもよく、この検査距離変更機構により視標像(虚像)Pを呈示する遠用検査距離を、検査目的や検査内容に応じて変更可能とすることもできる。
【0124】
近用視標呈示装置80は、被検者Sが近くの物体を目視するときの視機能を検査(近用検査)したり、遠用検査と近用検査で取得した処方データが適切であるか最終的な確認や微調整をしたりするために用いられる。この近用視標呈示装置80は、視標表示機81と、視標駆動機構82と、を有する。視標表示機81は、視標表示部83と、各種のセンサ84と、視標制御部85と、が一体的に備えられた(内蔵された)タブレット端末とされている。なお、視標表示機81は、少なくとも視標を被検眼Eに呈示でき、視標駆動機構82で自在に移動できればよく、スマートフォン等、タブレット端末以外の携帯情報機器でもよいし、LCDや有機EL等の比較的小型の電子表示デバイスでもよいし、視標が印刷された視標板等でもよい。視標制御部85は、視標表示機81の動作を制御するものであり、制御部27Aと情報の遣り取りが可能とされ、そこからの指示信号に応じて、視標表示部83の表示内容等を制御する。さらに、視標制御部85は、制御部27Aからの指示信号に応じて、各種のセンサ84で取得した検出データを制御部27Aへ出力する。
【0125】
視標表示部83は、表示面83aを有し、視標制御部85の制御下で視標を表示面83aに表示させる。また、視標表示部83は、眼科装置10Aで取得した眼特性の結果等を表示してもよい。視標表示部83は、LCDや有機EL等の電子表示デバイスにより構成できる。各種のセンサ84は、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気センサ、GPS、測距センサ等が挙げられる。
【0126】
視標駆動機構82は、遠用視標呈示装置70の筐体71の上面に設けられている。視標駆動機構82は、視標表示機81をXYZ方向に三次元で移動させ、被検眼Eに対して、視標表示機81(視標表示部83の表示面83aに表示される視標)を、所望の位置(検査距離、高さ、左右の位置等)および姿勢(傾き)で配置させるものである。視標駆動機構82は、2本のアーム部86と6つの回転駆動部87と支持部88とを有し、一方のアーム部86が2つの回転駆動部87を介して遠用視標呈示装置70の上部に取り付けられている。なお、視標駆動機構82は、検眼用テーブル12Aに取り付けられていてもよく、他の位置に取り付けられていてもよく、実施例2の構成に限定されない。各回転駆動部87は、各アーム部86の両端の位置で対を為して2つずつ設けられ、2つの直交する軸線を回転中心として回転駆動させることができる。各回転駆動部87は、例えば、ベアリング等により軸体を保持する機構と、それぞれに駆動力を発生させるモータと、を組み合わせて構成できる。支持部88は、エンドエフェクタ(ロボットハンド)であり、視標表示機81を支持している。
【0127】
制御部27Aは、視標制御部85を介して各種のセンサ84で取得した情報、例えば、加速度、角速度、方角、位置座標、被検者Sとの距離、被検者Sの顔の角度等に基づいて、視標表示機81(例えば、視標表示部83の視標の表示面83a)の現在の位置情報および姿勢情報を求め、この位置情報および姿勢情報に基づいて視標駆動機構82の駆動を制御する。制御部27Aは、所定の基準点(例えば、表示面83aの中心位置)の初期位置における位置座標を原点とし、検者用コントローラ31から指定される検査距離や視認対象物に基づいて、視標駆動機構82を駆動制御する。このため、制御部27Aは、視標表示機81の視標表示部83の表示面83aに表示される視標の被検眼Eに対する位置および姿勢を所望に変更可能とし、日常生活でその視認対象物が配置されるXYZ方向(左右方向、上下方向および前後方向)の所定の位置に配置できる。
【0128】
これにより、視標駆動機構82は、制御部27Aの制御下で、図18に破線で示すように、被検眼Eに対して所望の位置および姿勢で視標表示機81を適宜配置する。また、視標駆動機構82は、制御部27Aの制御下で、視標表示機81を使用しないときは、図18に実線で示すように、視標表示機81を被検眼Eに対峙しない所定の退避位置に配置する。
【0129】
なお、視標駆動機構82は、実施例2では、6軸のロボットアームから構成されるが、5軸、または7軸以上のロボットアームから構成されてもよい。また、視標駆動機構82は、シリアルリンク型の一つである多関節型(垂直多関節型)のロボットアームから構成されているが、この構成に限定されず、水平関節型のロボットアームでもよいし、座標軸型(直角座標、円筒座標、曲座標等)のロボットアーム、パラレルリンク型のロボットアーム等から構成されてもよい。さらに、視標駆動機構82は、視標表示機81を三次元で移動させて、所望の位置および姿勢に配置できるものであれば、手動で移動されるものであってもよい。手動で移動される場合には、制御部27Aは、視標駆動機構82により移動された視標表示機81の三次元の位置を検出するためのセンサを設けることで、その三次元の位置を取得できる。そのセンサは、上記した各種のセンサ84を用いてもよい。
【0130】
実施例2の眼科装置10Aでは、被検眼Eの遠用検査および近用検査を行うことができる。まず、被検者S(被検眼E)は、遠用視標呈示装置70の手前に配置された一対の検眼ユニット63に対峙する。そのレフラクターヘッド60では、検者用コントローラ31からの指示信号に応じて、検査用レンズ61が入れ替えられて、検眼窓に配置されるレンズの度数やプリズムの度数が変更される。そして、眼科装置10Aでは、制御部27Aの制御下で、検者用コントローラ31からの指示信号に応じて、遠用視標呈示装置70を制御して所定の表示態様で視標を呈示させる。
【0131】
遠用検査を行う際には、検者用コントローラ31を操作して、遠用視標を選択する。この操作により、遠用視標呈示装置70は、遠用視標をディスプレイ73の表示面73aに表示する。被検者Sは、遠用視標呈示光学系72により被検眼Eに呈示された遠用視標を、検眼ユニット63を通して目視することで、自覚の遠用検査を行うことができる。また、眼科装置10Aでは、被検者Sの見え方等に応じて検者用コントローラ31を操作することで、検査用レンズ61を適宜選択して検眼窓(被検眼Eの前方)に配置させ、被検者Sに遠用検査を繰り返させる。この結果、遠方の物体を目視する際の被検眼Eの調節状態や斜位等の矯正を行って、遠用の矯正のための処方を取得できる。
【0132】
次に、近用検査を実行すべく、検者用コントローラ31を操作することで、視標駆動機構82が駆動されて、視標表示機81が被検眼Eの高さに応じた位置に配置されるとともに(例えば、図18に符号81-1で示す位置)、視標表示部83が表示面83aに近用視標を表示する。被検者Sは、被検眼Eに呈示された近用視標を、検眼ユニット63を通して目視することで、自覚の近用検査を行うことができる。このとき、検者用コントローラ31を操作することで視標駆動機構82を駆動して、視標表示機81のZ方向の位置を変更し、近用検査距離を所望に変化させることができる(例えば、図18に符号81-2で示す位置)。
【0133】
さらに、眼科装置10Aでは、被検者Sの見え方等に応じて検者用コントローラ31を操作することで、検査用レンズ61を適宜選択して検眼窓(被検眼Eの前方)に配置させ、被検者Sに近用検査を繰り返させる。この結果、近方の物体を目視する際の被検眼Eの調節状態や斜位等の矯正を行って、近用の矯正のための処方を取得することができる。
【0134】
遠用および引用の処方が決定したら、見え方の最終確認を行うべく、検者用コントローラ31を操作して、検査距離を指定したり、アイコン等を用いて視認対象物を指定したりする。この指定に応じて、視標駆動機構82は、検査距離または視認対象物の位置および姿勢に対応した位置および姿勢で、視標表示機81を配置する(例えば、図18に符号81-3、81-4で示す位置)。被検者Sは、視標表示機81によって呈示された近用視標の方向に対応して、視線を上下左右に移動させつつ、検眼ユニット63を通して近用視標を目視する。これにより、被検者Sは、実生活により近い状況で、見え方の最終確認を行うことができる。なお、最終確認の際には、被検者Sは、レフラクターヘッド60に代えて、検査用レンズを取り付けたトライアルフレームや、仕上がったメガネ、コンタクトレンズを装着して最終確認を行うこともできる。
【0135】
このため、眼科装置10Aでは、レフラクターヘッド60と遠用視標呈示装置70と近用視標呈示装置80とが、両被検眼Eの眼情報の取得のための取得光学系として機能する。また、レフラクターヘッド60と遠用視標呈示装置70と視標駆動機構82とは、取得光学系としてのレフラクターヘッド60の位置や近用視標呈示装置80の位置または向きの少なくとも一つを変更する光学系変更機構として機能する。一対の検眼ユニット63の間隔や近用視標呈示装置80の位置および向きの情報が取得光学系の位置や向きを示す光学姿勢情報となる。加えて、その一対の検眼ユニット63の間隔の情報や、被検眼Eに対する近用視標呈示装置80の位置および向きの情報が、被検眼Eの向きを示す被検眼位置情報となる。
【0136】
実施例2の眼科装置10Aでは、制御部27Aが位置関係画像IpA(図19参照)を作成して、検者用コントローラ31の表示部34に表示させる。その図19に示す位置関係画像IpAは、両被検眼Eに対して上記のように見え方の最終確認を行っている状態を示すものであり、図18に符号81-3で示す状態で視標表示機81が配置された様子を示している。この位置関係画像Ipは、左右方向から見た様子で示しており、視標表示機81が上下方向に変位された様子の把握が容易とされている。図19の位置関係画像IpAは、被検眼Eを模した被検眼図柄Deと、検眼ユニット63を模した検眼ユニット図柄Duと、遠用視標呈示装置70を模した遠用視標呈示図柄Dofと、視標表示機81を模した近用視標呈示図柄Donと、を有する。この位置関係画像IpAは、制御部27が、上記した光学姿勢情報と被検眼位置情報と、に基づいて、被検眼図柄Deの位置と、それらに対する検眼ユニット図柄Duや遠用視標呈示図柄Dofや近用視標呈示図柄Donの位置および向きと、を設定して配置することで位置関係画像IpAを生成する。この位置関係画像IpAでは、実施例1の位置関係画像Ipと同様に各種値表示箇所Vdを設けている。このため、眼科装置10Aでは、位置関係画像IpAにより、被検眼Eに対する検眼ユニット63、遠用視標呈示装置70および視標表示機81の位置関係を容易に把握させることができる。
【0137】
本開示に係る眼科システムの実施例2の眼科装置10Aは、以下の各作用効果を得ることができる。この眼科装置10Aは、基本的に実施例1の眼科装置10と同様の構成であるので、実施例1と同様の効果を得られる。
【0138】
それに加えて、眼科装置10Aは、位置関係画像IpAを、被検眼Eおよび取得光学系(レフラクターヘッド60、遠用視標呈示装置70、近用視標呈示装置80)を側方から見た位置関係で示すことにより、被検眼Eに対して取得光学系が上下方向に変位した様子の把握を可能としている。このため、眼科装置10Aは、取得光学系(近用視標呈示装置80)が上下方向に変位される様子の把握を容易なものにでき、被検眼Eと取得光学系との位置関係を客観的に把握させることができる。
【0139】
したがって、本開示に係る眼科システムの実施例2の眼科装置10Aでは、被験者が顔をヘッド部としてのレフラクターヘッド60に宛がう状態であっても、被検眼Eと取得光学系としてのレフラクターヘッド60や遠用視標呈示装置70や近用視標呈示装置80との位置関係を客観的に把握させることができる。
【0140】
以上、本開示の眼科装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0141】
例えば、各実施例(変形例を含む)では、位置関係画像として、実施例1の図12図13の位置関係画像Ipや変形例の図17の位置関係画像IpMや実施例2の図19の位置関係画像IpAの例を示しているが、被検眼Eに対する一対の取得光学系(測定光学系20)の位置関係を示すものであればよく、各実施例に限定されない。例えば、実施例1の位置関係画像としては、図3に示すように被検眼と光学系とを簡略的に示したものとしてもよく、図8の左側や図9に示すように被検眼に対して取得光学系が表示する位置を模式的に示したものとしてもよい。また、例えば、変形例の図17の位置関係画像としては、図15に示すように測定ヘッド駆動部が測定ヘッドを支持する様子を併せて示すものとしてもよく、被検眼と光学系とをより詳細に示したものとしてもよく、被検眼と光学系とを簡略的に示したものとしてもよい。さらに、例えば、実施例2の位置関係画像としては、図18に示すように被検眼と光学系とをより詳細に示したものとしてもよく、被検眼と光学系とを簡略的に示したものとしてもよく、被検眼に対して取得光学系が表示する位置を模式的に示したものとしてもよい。
【0142】
また、各実施例(変形例を含む)では、位置関係画像として、実施例1の図12図13の位置関係画像Ipや変形例の図17の位置関係画像IpMや実施例2の図19の位置関係画像IpAの例を示している。そして、位置関係画像Ipは、上方から見下ろした位置関係で示し、位置関係画像IpMおよび位置関係画像IpAは、側方から見た位置関係で示している。しかしながら、位置関係画像Ipは、少なくとも被検眼Eに対して一対の取得光学系が水平方向に変位した様子の把握を可能とするものであればよく、実施例1の構成に限定されない。また、位置関係画像IpMおよび位置関係画像IpAは、少なくとも被検眼Eに対して一対の取得光学系が上下方向に変位した様子の把握を可能とするものであればよく、変形例および実施例2の構成に限定されない。この位置関係画像は、例えば、被検眼Eに対して一対の取得光学系の位置関係を示す立体図とすることができる。この立体図は、例えば、第三角法、第一角法、等角投影法、斜投影法、透視投影法で示すものとすることができる。位置関係画像は、このように立体図とすると、被検眼Eに対して一対の取得光学系が水平方向に変位した様子と、被検眼Eに対して一対の取得光学系が上下方向に変位した様子と、の双方を把握可能とすることができる。
【0143】
さらに、各実施例(変形例を含む)では、眼科装置10、10Aが、検者用コントローラ31を被検者Sが操作するものとしている。しかしながら、眼科装置10、10Aが設けられた部屋とは異なる部屋にいる外部検者が外部コントローラを操作して動作させるものでもよく、各実施例の構成に限定されない。この場合、検者用コントローラ31と外部コントローラとの双方を利用可能としてもよい。
【0144】
各実施例(変形例を含む)では、取得光学系として、実施例1として各測定光学系20を示すとともに、実施例2としてレフラクターヘッド60、遠用視標呈示装置70および近用視標呈示装置80を示している。しかしながら、取得光学系は、両被検眼Eの眼情報の取得のために対を為して設けられるものであればよく、各実施例の構成に限定されない。そして、光学系変更機構は、適宜設定された一対の取得光学系の位置または向きの少なくとも一方を変更するものであればよく、各実施例の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0145】
10、10A 眼科装置 15 (光学系変更機構の一例としての)測定ヘッド駆動部 20 (取得光学系の一例としての)測定光学系 27 制御部 34 表示部 Df 合焦距離 E 被検眼 Ip 位置関係画像 I2 回旋角情報 I3 合焦距離情報 I4 瞳孔間距離情報 I5 接近度合情報 L 測定光軸 PD (被検眼の間隔としての)瞳孔間距離 Sf 視標画像 α 回旋角
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