(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049216
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コネクタセット及び第一コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20240402BHJP
H01R 12/91 20110101ALI20240402BHJP
【FI】
H01R13/533 D
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155541
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝正
(72)【発明者】
【氏名】小椋 由幸
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087FF03
5E087RR15
5E087RR49
5E223AA21
5E223AB20
5E223AB26
5E223AC05
5E223AC50
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB31
5E223CB38
5E223CB46
5E223CD01
(57)【要約】
【課題】接点摺動を抑制するコネクタセット及び第一コネクタを提供する。
【解決手段】第一コネクタ100は、可動ハウジング30を有する。第二コネクタ200は支持部材70Bを有する。接続状態では、可動ハウジング30が支持部材70Bと接続方向に垂直な方向で当接することにより、可動ハウジング30が支持部材70Bに支持された状態となる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタセットであって、
第一コネクタと第二コネクタとを備え、
前記第一コネクタは、
第一取付対象物に対して移動可能な可動部であって第一接触部が形成された前記可動部を有する一又は複数の第一端子と、
前記第一取付対象物に対して前記可動部と共に移動可能な可動ハウジングを有する第一ハウジングと、
を備え、
前記第二コネクタは、前記第一接触部と接触する第二接触部を有する一又は複数の第二端子を備え、
前記第二コネクタは、支持部材を有し、
接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材と接続方向に垂直な方向で当接することにより、前記可動ハウジングが前記支持部材に支持された状態となる、
コネクタセット。
【請求項2】
前記可動ハウジングと前記支持部材との前記当接は、電気的接続のための接触ではない、
請求項1に記載のコネクタセット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記一又は複数の第二端子のうち少なくとも一部を含んで構成される、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項4】
前記支持部材として機能する前記第二端子について、当該第二端子に対して前記可動ハウジングが当接する方向は、当該第二端子に対する前記第一端子の接触圧を低下させない方向である、
請求項3に記載のコネクタセット。
【請求項5】
接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材を接続方向に垂直な方向である挟持方向から挟み込む状態となり、又は、前記可動ハウジングが前記支持部材によって前記挟持方向から挟みこまれる状態となる、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項6】
前記支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を複数備え、
前記複数の当接部材は、一対の当接部材であって、当該一対の当接部材が前記可動ハウジングに当接する方向が当該一対の当接部材が互いに接近する方向又は互いに離間する方向である前記一対の当接部材を備える、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項7】
前記支持部材は、接続状態において前記可動ハウジングに当接する当接部材を複数備え、
前記第二コネクタは、接続方向に垂直な方向である配列方向に並ぶ複数の配列部材を備え、
前記複数の配列部材のうち一部又は全部が前記第二端子として機能し、
前記複数の配列部材のうち配列方向両端に位置する2つの配列部材が前記当接部材として機能する、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項8】
前記第一端子は、前記可動部を弾性的に支持する中間弾性部を有し、
前記中間弾性部は、その全体又は大部分の板厚方向を接続方向に垂直な一方向に向け、
接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材を接続方向に垂直な方向である挟持方向から挟み込む状態となり、又は、前記可動ハウジングが前記支持部材によって前記挟持方向から挟みこまれる状態となり、
前記挟持方向は、前記中間弾性部の全体又は大部分の板厚方向と平行な方向である、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項9】
前記支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を一又は複数備え、
前記当接部材は、片持ち支持されて接続方向手前側に延びる部材であり、
前記可動ハウジングのうち前記当接部材に当接する部分は、接続方向において、前記第一端子の前記第一接触部よりも手前側に位置する、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項10】
前記支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を一又は複数備え、
前記第二コネクタは、一又は複数の挿入部材を備え、
前記可動ハウジングには、前記一又は複数の挿入部材が挿入される一又は複数の挿入孔が形成され、
前記一又は複数の挿入部材の一部又は全部は、前記当接部材として機能し、
前記一又は複数の挿入部材のうち前記当接部材として機能する挿入部材は、接続状態で前記挿入孔の内壁に当接する、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項11】
前記挿入孔の内部には、前記可動ハウジングに当接することにより変形した前記挿入部材との接触を避けるための退避空間が形成される、
請求項10に記載のコネクタセット。
【請求項12】
前記可動ハウジングには、接続方向に垂直な方向である配列方向に並ぶ複数の挿入孔が形成され、
前記複数の挿入孔は、一又は複数の一般挿入孔と、形状、大きさ又は配置規則が前記一般挿入孔とは異なる一又は複数の特殊挿入孔と、を備え、
接続状態では、前記特殊挿入孔の内壁に前記支持部材が当接した状態となる、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項13】
前記一又は複数の第一端子は、複数の第一端子を備え、
前記複数の第一端子は、前記第二端子に対する接触方向が互いに反対方向である一対の第一端子を備える、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタセット。
【請求項14】
支持部材を有する第二コネクタと接続可能な第一コネクタであって、
前記第一コネクタは、
第一取付対象物に対して移動可能な可動部であって第一接触部が形成された前記可動部を有する一又は複数の第一端子と、
前記第一取付対象物に対して前記可動部と共に移動可能な可動ハウジングを有する第一ハウジングと、
を備え、
接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材と接続方向に垂直な方向で当接することにより、前記可動ハウジングが前記支持部材に支持された状態となる、
第一コネクタ。
【請求項15】
前記可動ハウジングのうち前記支持部材と当接する部分は、絶縁体で形成される、
請求項14に記載の第一コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタセット及び第一コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、複数の端子と、ハウジングと、を備える。端子は、取付対象物(基板)に対して移動可能な可動部を有する。可動部には、接続対象物(ピン端子)と接触する接触部が形成されている。ハウジングは、取付対象物(基板)に対して可動部と共に移動可能な可動ハウジングを有する。
これにより、接続対象物の位置ずれを吸収することができる構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなコネクタが振動環境下(例えば車載環境下)で使用されると、接点摺動が起こる可能性がある。
【0005】
本開示は、接点摺動を抑制するコネクタセット及び第一コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(コネクタセット)
第1の態様に係るコネクタセットは、コネクタセットであって、第一コネクタと第二コネクタとを備え、前記第一コネクタは、第一取付対象物に対して移動可能な可動部であって第一接触部が形成された前記可動部を有する一又は複数の第一端子と、前記第一取付対象物に対して前記可動部と共に移動可能な可動ハウジングを有する第一ハウジングと、を備え、前記第二コネクタは、前記第一接触部と接触する第二接触部を有する一又は複数の第二端子を備え、前記第二コネクタは、支持部材を有し、接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材と接続方向に垂直な方向で当接することにより、前記可動ハウジングが前記支持部材に支持された状態となる。
【0007】
本態様では、コネクタセットは、第一コネクタと第二コネクタとを備える。
第一コネクタは、一又は複数の第一端子と、第一ハウジングと、を備える。第一端子は、第一取付対象物に対して移動可能な可動部を有する。可動部には、第一接触部が形成されている。第一ハウジングは、第一取付対象物に対して可動部と共に移動可能な可動ハウジングを有する。
第二コネクタは、一又は複数の第二端子を備える。第二端子は、第一接触部と接触する第二接触部を有する。
【0008】
ここで、本態様では、第二コネクタは支持部材を有する。そして、第一コネクタと第二コネクタとが接続した状態(接続状態)では、可動ハウジングが支持部材と接続方向に垂直な方向で当接することにより、可動ハウジングが支持部材に支持された状態となる。
このため、可動ハウジングと第二コネクタとの相対変位が抑制される結果、接点摺動が抑制される。また、第二コネクタが固定される場合には、第一コネクタのうち変位可能な部分(可動ハウジング及び第一端子の可動部など)の固有振動数が上昇することで、第一コネクタのうち変位可能な部分の共振の発生が抑制される。これによっても、接点摺動が抑制される。
以上より、本態様によれば、接点摺動を抑制することができる。
【0009】
補足すると、コネクタセットが使用される環境における振動の周波数が、接続状態での第一コネクタのうち変位可能な部分(可動ハウジング及び一又は複数の第一端子の可動部)の固有振動数と一致すると、共振が起こって第一コネクタのうち変位可能な部分が大きく振動してしまう。
ここで、固有振動数Fnは、
Fn=(√k/m)/2π
という式で表される。なお、kはバネ定数であり、mは質量である。理論上、kを大きくするかmを小さくすることで、固有振動数を高めることができる。
第二コネクタが固定されている場合において、本態様によれば、kを大きくすることができ、固有振動数を高めることができる。固有振動数を高めることで、使用環境下における振動の周波数が固有振動数と一致することを抑制できる。
【0010】
なお、後述する実施形態では、可動ハウジングが樹脂のみで構成される例を説明する。しかし、本態様の可動ハウジングは、これに限定されず、樹脂部分と他の部分(例えば金属部分)から構成されてもよい。そして、可動ハウジングのうち支持部材に当接する部分は、当該他の部分であってもよい。
また、後述する実施形態では、第一端子が、可動部を弾性的に支持する中間弾性部を有する例を説明する。しかし、本態様の第一端子は、これに限定されない。つまり、第一端子の可動部を移動可能に構成する第一端子の構造は、中間弾性部を有する構造に限定されない。
また、後述する実施形態では、支持部材が、複数の第二端子の一部で構成される例を説明する。しかし、本態様の支持部材は、これに限定されず、例えば第二ハウジングの一部で構成されてもよいし、それ以外の部材で構成されてもよい。例えば、後述する実施形態において、複数(4つ)の第二端子70Bに対応する複数(4つ)の第一端子40のうち一部又は全部を省略してもよい。この場合でも、第二端子70Bは、支持部材として機能するが、本態様における「第二端子」(第一端子と接触する第二端子)ではなくなる。
また、後述する実施形態では、主に、第二コネクタが取り付けられる第二取付対象物と第一取付対象物とが互いの相対位置を変えないように配置されている例、つまり第二コネクタが固定される例を説明する。しかし、本態様は、これに限定されない。第二コネクタが取り付けられる第二取付対象物は、電線等の可撓性のあるものであってもよい。
また、本態様の「第二コネクタ」は、特に限定的な意味を有さず、第一コネクタと電気的に接続可能なものを広く包含する。
【0011】
第2の態様に係るコネクタセットは、第1の態様において、前記可動ハウジングと前記支持部材との前記当接は、電気的接続のための接触ではない。
【0012】
本態様では、可動ハウジングと支持部材との当接は、電気的接続のための接触ではない。
このため、電気的接続のための接触箇所(第一端子と第二端子との接触箇所)以外の接触箇所を介して可動ハウジングが第二コネクタに支持される構造を有しないコネクタセットと比較して、接点摺動をより抑制することができる。
【0013】
第3の態様に係るコネクタセットは、第1又は請求項2において、前記支持部材は、前記一又は複数の第二端子のうち少なくとも一部を含んで構成される。
【0014】
本態様では、支持部材は、第二コネクタが備える一又は複数の第二端子のうち少なくとも一部を含んで構成される。
このため、支持部材が第二端子を含まないで構成される態様と比較して、部品点数を低減できる。
【0015】
第4の態様に係るコネクタセットは、第3の態様において、前記支持部材として機能する前記第二端子について、当該第二端子に対して前記可動ハウジングが当接する方向は、当該第二端子に対する前記第一端子の接触圧を低下させない方向である。
【0016】
ところで、支持部材として機能する第二端子に可動ハウジングが当接することで、第二端子が変形して第二接触部が変位し、この変位の方向によっては第二端子に対する第一端子の接触圧が当該変位がない場合よりも低下してしまう可能性がある。
そこで、本態様では、支持部材として機能する第二端子について、可動ハウジングの第一側当接部が第二端子に対して当接する方向は、第二端子に対する第一端子の接触圧を低下させない方向である。
このため、支持部材として機能する第二端子に対する第一端子の接触圧の低下が防止される。
【0017】
なお、後述する実施形態では、「当該第二端子に対する前記第一端子の接触圧を低下させない方向」が、第二端子に対する第一端子の接触方向に対して垂直な方向である例を説明する。しかし、本態様の「当該第二端子に対する前記第一端子の接触圧を低下させない方向」は、これに限定されず、例えば、第二端子に対する第一端子の接触方向に対向する方向であってもよい。
【0018】
第5の態様に係るコネクタセットは、第1~第4の何れかの態様において、接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材を接続方向に垂直な方向である挟持方向から挟み込む状態となり、又は、前記可動ハウジングが前記支持部材によって前記挟持方向から挟みこまれる状態となる。
【0019】
本態様では、接続状態で、可動ハウジングが支持部材を接続方向に垂直な方向である挟持方向から挟み込む状態となり、又は、可動ハウジングが支持部材によって挟持方向から挟みこまれる状態となる。
つまり、可動ハウジング及び支持部材のうち一方が他方を挟持する状態となる。
このため、支持部材によって可動ハウジングが適切に支持される。
【0020】
なお、後述する実施形態では、支持部材が一対の当接部材を備え、可動ハウジングが当該一対の当接部材を挟持方向から挟み込む例を説明する。しかし、本態様の支持部材は、これに限定されず、1つの当接部材で構成され、当該1つの当接部材が可動ハウジングに挟持されるものであってもよい。
【0021】
第6の態様に係るコネクタセットは、第1~第5の何れかの態様において、前記支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を複数備え、前記複数の当接部材は、一対の当接部材であって、当該一対の当接部材が前記可動ハウジングに当接する方向が当該一対の当接部材が互いに接近する方向又は互いに離間する方向である前記一対の当接部材を備える。
【0022】
本態様では、支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を複数備える。複数の当接部材は、一対の当接部材を備える。当該一対の当接部材が可動ハウジングに当接する方向は、当該一対の当接部材が互いに接近する方向又は互いに離間する方向である。
このため、例えば、支持部材が1つの当接部材で構成され、当該当接部材が可動ハウジングに挟持される態様と比較して、接続時の作業性が向上する。
【0023】
なお、後述する実施形態では、一対の当接部材が2組設けられる例を説明する。しかし、本態様は、これに限定されない。
また、後述する実施形態では、一対の当接部材の両方が第二端子として機能する例を説明する。しかし、本態様の一対の当接部材は、これに限定されず、一方のみが第二端子として機能してもよいし、いずれもが第二端子として機能しなくてもよい。
【0024】
第7の態様に係るコネクタセットは、第1~第6の何れかの態様において、前記支持部材は、接続状態において前記可動ハウジングに当接する当接部材を複数備え、前記第二コネクタは、接続方向に垂直な方向である配列方向に並ぶ複数の配列部材を備え、前記複数の配列部材のうち一部又は全部が前記第二端子として機能し、前記複数の配列部材のうち配列方向両端に位置する2つの配列部材が前記当接部材として機能する。
【0025】
本態様では、第二コネクタは、接続方向に垂直な方向である配列方向に並ぶ複数の配列部材を備える。複数の配列部材のうち一部又は全部が第二端子として機能する。
ここで、複数の配列部材のうち配列方向両端に位置する2つの配列部材が支持部材として機能する。
このため、配列方向一方側の端に位置する配列部材と他方側の端に位置する配列部材とにより、大きく距離が離れた2箇所で可動ハウジングと当接することができるので、可動ハウジングの支持が安定する。
【0026】
なお、後述する実施形態では、配列部材が、可動ハウジングの挿入孔に挿入される挿入部材である例を説明する。しかし、本態様の配列部材は、これに限定されず、挿入部材でなくてもよい。
【0027】
第8の態様に係るコネクタセットは、第1~第7の何れかの態様において、前記第一端子は、前記可動部を弾性的に支持する中間弾性部を有し、前記中間弾性部は、その全体又は大部分の板厚方向を接続方向に垂直な一方向に向け、接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材を接続方向に垂直な方向である挟持方向から挟み込む状態となり、又は、前記可動ハウジングが前記支持部材によって前記挟持方向から挟みこまれる状態となり、前記挟持方向は、前記中間弾性部の全体又は大部分の板厚方向と平行な方向である。
【0028】
本態様では、第一端子は、可動部を弾性的に支持する中間弾性部を有する。中間弾性部は、その全体又は大部分の板厚方向を接続方向に垂直な一方向に向ける。このため、当該一方向において、固有振動数が小さくなり共振が発生しやすくなる。
ここで、本態様では、可動ハウジングと支持部材のうち一方が他方を挟持する挟持方向は、中間弾性部の全体又は大部分の板厚方向と平行な方向である。
このため、共振が発生しやすい方向と同じ方向で、可動ハウジングと支持部材とのうち一方が他方を挟持することとなり、共振を効果的に抑制できる。
【0029】
後述する実施形態では、第一端子の全体が、板厚方向をY方向に向ける例を説明する。しかし、本態様の第一端子は、これに限定されず、中間弾性部が板厚方向を特定の一方向に向けており、第一端子の中間弾性部以外の部分は他の方向に板厚方向を向けていてもよい。
また、後述する実施形態では、中間弾性部の全体が板厚方向をある特定の一方向に向ける例を説明する。しかし、本態様はこれに限定されず、中間弾性部の大部分が板厚方向をある特定の一方向に向けていてもよい。
【0030】
第9の態様に係るコネクタセットは、第1~第8の何れかの態様において、前記支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を一又は複数備え、前記当接部材は、片持ち支持されて接続方向手前側に延びる部材であり、前記可動ハウジングのうち前記当接部材に当接する部分は、接続方向において、前記第一端子の前記第一接触部よりも手前側に位置する。
【0031】
本態様では、支持部材は、接続状態で可動ハウジングに当接する当接部材を一又は複数備える。当接部材は、片持ち支持されて接続方向手前側に延びる部材である。
ここで、可動ハウジングのうち当接部材に当接する部分(第一側当接部)は、接続方向において、第一端子の第一接触部よりも手前側に位置する。
このため、第一側当接部が接続方向において第一接触部よりも奥側に位置する態様と比較して、当接部材の固定端から、当接部材の第一側当接部に当接する部分(第二側当接部)までの長さが短くなり、可動ハウジングの支持に寄与するバネ定数が大きくなる。よって、共振をより一層抑制することができる。
【0032】
第10の態様に係るコネクタセットは、第1~第9の何れかの態様において、前記支持部材は、接続状態で前記可動ハウジングに当接する当接部材を一又は複数備え、前記第二コネクタは、一又は複数の挿入部材を備え、前記可動ハウジングには、前記一又は複数の挿入部材が挿入される一又は複数の挿入孔が形成され、前記一又は複数の挿入部材の一部又は全部は、前記当接部材として機能し、前記一又は複数の挿入部材のうち前記当接部材として機能する挿入部材は、接続状態で前記挿入孔の内壁に当接する。
【0033】
本態様では、支持部材は、接続状態で可動ハウジングに当接する当接部材を一又は複数備える。第二コネクタは、一又は複数の挿入部材を備える。可動ハウジングには、一又は複数の挿入部材が挿入される挿入孔が形成される。支持部材は、一又は複数の挿入部材の一部又は全部を含んで構成される。
ここで、一又は複数の挿入部材のうち支持部材として機能する挿入部材は、挿入孔の内壁に当接する。
このため、第二コネクタの挿入部材と可動ハウジングの挿入孔を利用して、効率的に可動ハウジングの支持構造を実現できる。
【0034】
なお、後述の実施形態では、複数の挿入部材のうち全部が第二端子である例を説明する。しかし、本態様の一又は複数の挿入部材は、これに限定されず、一部が第二端子であってもよいし、いずれもが第二端子でなくてもよい。
【0035】
第11の態様に係るコネクタセットは、第10において、前記挿入孔の内部には、前記可動ハウジングに当接することにより変形した前記挿入部材との接触を避けるための退避空間が形成される。
【0036】
本態様では、挿入孔の内部には、可動ハウジングに当接することにより変形した挿入部材との接触を避けるための退避空間が形成される。
このため、接続時の作業性の低下が抑制される。
【0037】
第12の態様に係るコネクタセットは、第1~第11の何れかの態様において、前記可動ハウジングには、接続方向に垂直な方向である配列方向に並ぶ複数の挿入孔が形成され、前記複数の挿入孔は、一又は複数の一般挿入孔と、形状、大きさ又は配置規則が前記一般挿入孔とは異なる一又は複数の特殊挿入孔と、を備え、接続状態では、前記特殊挿入孔の内壁に前記支持部材が当接した状態となる。
【0038】
本態様では、可動ハウジングには、接続方向に垂直な方向である配列方向に並ぶ複数の挿入孔が形成される。複数の挿入孔は、一又は複数の一般挿入孔と、一又は複数の特殊挿入孔と、を備える。特殊挿入孔は、形状、大きさ又は配置規則が一般挿入孔とは異なる挿入孔である。そして、接続状態では、特殊挿入孔の内壁に支持部材が当接した状態となる。
このため、第二コネクタ側に構造的な工夫が無くても、可動ハウジングの支持構造を実現することができる。
【0039】
なお、後述する実施形態では、列間方向に並ぶ複数の挿入孔が複数列(2列)形成されている例を説明する。しかし、本態様の複数の挿入孔は、これに限定されず、1列であってもよいし、3列であってもよい。
【0040】
第13の態様に係るコネクタセットは、第1~第12の何れかの態様において、前記一又は複数の第一端子は、複数の第一端子を備え、前記複数の第一端子は、前記第二端子に対する接触方向が互いに反対方向である一対の第一端子を備える。
【0041】
本態様では、第一コネクタは、複数の第一端子を備える。そして、複数の第一端子は、第二端子に対する接触方向が互いに反対方向である一対の第一端子を備える。
このため、複数の第二端子に対する複数の第一端子の接触圧によって第二コネクタをある特定の一方向に付勢する構造でなっていない。その結果、第一端子と第二端子との接触圧によっては、可動ハウジングと第二コネクタとの相対変位を抑制しにくい。
したがって、支持部材によって可動ハウジングが支持される構造が特に有効になる。
【0042】
(第一コネクタ)
第14の態様に係る第一コネクタは、支持部材を有する第二コネクタと接続可能な第一コネクタであって、前記第一コネクタは、第一取付対象物に対して移動可能な可動部であって第一接触部が形成された前記可動部を有する一又は複数の第一端子と、前記第一取付対象物に対して前記可動部と共に移動可能な可動ハウジングを有する第一ハウジングと、を備え、接続状態では、前記可動ハウジングが前記支持部材と接続方向に垂直な方向で当接することにより、前記可動ハウジングが前記支持部材に支持された状態となる。
【0043】
本態様によれば、接点摺動を抑制することができる。
【0044】
第15の態様に係る第一コネクタは、第14の態様において、前記可動ハウジングのうち前記支持部材と当接する部分は、絶縁体で形成される。
【0045】
第16の態様に係る第一コネクタは、第1~第13の何れかの態様に係るコネクタセットにおける第一コネクタである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】実施形態のコネクタセットを示す斜視図である。
【
図3】コネクタセットを示す断面図(Y方向に垂直な断面図)である。
【
図4】接続状態のコネクタセットを示す断面図(Y方向に垂直な断面図)である。
【
図5】コネクタセットを示す断面図(X方向に垂直な断面図)である。
【
図6】接続状態のコネクタセットを示す断面図(X方向に垂直な断面図)である。
【
図9A】列間方向で最も一方側の開口(特殊開口)及び特殊誘導斜面を拡大して示す図である。
【
図9B】列間方向での中央部の開口(一般開口)及び一般誘導斜面を拡大して示す図である。
【
図9C】列間方向で最も他方側の開口(特殊開口)及び特殊誘導斜面を拡大して示す図である。
【
図10】第二コネクタを-Z方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施形態に係るコネクタセット100,200について説明する。
【0048】
なお、各図の矢印Xはコネクタ前方向、矢印Yはコネクタ幅方向一方側、矢印Zはコネクタ上方向を示す。
【0049】
コネクタセット100,200は、第一コネクタ100と第二コネクタ200とから構成される。
第一コネクタ100は、Z方向を接続方向として第二コネクタ200と接続可能に構成される。以下、+Z方向を接続方向手前側と呼び、-Z方向を接続方向奥側と呼ぶことがある。
第一コネクタ100は、第一取付対象物90に取り付けられて使用される。第一取付対象物90は、例えば、Z方向に板厚方向を向ける基板である。
【0050】
第一コネクタ100は、第一ハウジング20,30と、複数の第一端子40と、を備える。第一ハウジング20,30は、固定ハウジング20と、可動ハウジング30と、を備える。
固定ハウジング20は、第一取付対象物90に固定されるハウジングである。第一取付対象物90に対する固定ハウジング20の固定は、複数の第一端子40及び固定用部材50によって行われる。可動ハウジング30は、固定ハウジング20に対して移動可能に構成されるハウジングである。したがって、可動ハウジング30は、第一取付対象物90に対して移動可能となる。固定ハウジング20及び可動ハウジング30は、合成樹脂等の絶縁体で作られる。第一端子40は、導電性の部材で作られる。
【0051】
第一コネクタ100は、固定用部材50を備える。固定用部材50は、固定ハウジング20を第一取付対象物90に固定するための部材である。固定用部材50は一対設けられる。
【0052】
(第一端子40)
複数(16つ)の第一端子40は、列間方向一方側(+X方向側)の複数(8つ)の第一端子40と、列間方向他方側(-X方向側)の複数(8つ)の第一端子40と、から構成される。列間方向一方側の第一端子40と列間方向他方側の第一端子40とが一対の第一端子40を構成し、当該一対の第一端子40が配列方向(Y方向)に複数配列されていると捉えることもできる。列間方向一方側の第一端子40と、列間方向他方側の第一端子40とは、第一コネクタ100のX方向中央位置を通るX方向に垂直な平面に関して対称な形状である。
【0053】
一対の第一端子40を構成する一方の第一端子40と他方の第一端子40とは、Y方向において同じ位置に配置される。一対の第一端子40が配列方向に配列される間隔は、等間隔である。
【0054】
図4に示すように、第一端子40は、接続部41と、固定側被保持部42と、中間弾性部43と、可動側被保持部44と、接触部45(第一接触部)と、を備える。
【0055】
接続部41は、第一取付対象物90と電気的に接続される部分である。接続部41は、第一取付対象物90としての基板の面に半田付け等で固定される。
【0056】
固定側被保持部42は、固定ハウジング20に保持される部分である。固定側被保持部42は、板厚方向をY方向に向け、+Z方向に向かって延びる。固定側被保持部42は、固定ハウジング20に形成された圧入用孔に+Z方向を圧入方向として圧入される。固定側被保持部42は、固定ハウジング20に喰い込む圧入突起を有する。圧入突起は、固定側被保持部42のY方向内側の縁に形成される。
【0057】
中間弾性部43は、固定側被保持部42と可動側被保持部44とを繋ぐ部分であり、その一部又は全体が変形容易に形成された部分である。中間弾性部43は、その全体の板厚方向を端子配列方向(Y方向)に向ける。中間弾性部43は、固定側被保持部42から可動側被保持部44までに、延在方向のZ方向成分を転換する折返部43aを2つ有する。中間弾性部43は、可動側被保持部44側の位置に+Z方向に延在する幅太部43bを有する。幅太部43bは、中間弾性部43のうち幅太部43b以外の部分よりも幅寸法が太く形成される。
【0058】
可動側被保持部44は、可動ハウジング30に保持される部分である。可動側被保持部44は、板厚方向をY方向に向ける。可動側被保持部44は、可動ハウジング30に形成された圧入用孔に+Z方向を圧入方向として圧入される。可動側被保持部44は、可動ハウジング30に喰い込む圧入突起を有する。圧入突起は、可動側被保持部44のY方向内側の縁に形成される。
【0059】
接触部45(第一接触部)は、第二コネクタ200の第二端子70に接触する部分である。接触部45が第二端子70に接触することで、第一端子40と第二端子70とが電気的に接続される。なお、第二端子70について、図では符号70A又は70Bが付されているが、両者を区別しないときは符号70を用いる。
接触部45は、第一接触片45aと、第二接触片45bと、から構成される。
第一接触片45aには第一接点部45cが形成され、第二接触片45bには第二接点部45dが形成される。第一接点部45cは、第二接点部45dよりも+Z方向(接続方向手前側)に位置する。第一接触片45a及び第二接触片45bは、接続状態で、弾性変形した状態となる。
【0060】
図4に示すように、一対の第一端子40の接触部45は、一対の第二端子70に対して列間方向内側から接触する。
具体的には、列間方向一方側(+X方向側)の第一端子40の接触部45は、第二端子70に対して列間方向他方側(-X方向側)から接触する。列間方向他方側(-X方向側)の第一端子40の接触部45は、第二端子70に対して列間方向一方側(+X方向側)から接触する。
このように、列間方向一方側の第一端子40の接触部45が第二端子70に接触する方向と、列間方向他方側の第一端子40の接触部45が第二端子70に接触する方向とは、互いに反対の方向である。つまり、複数の第一端子40の接触部45から第二コネクタ200(の第二端子70)に作用する力は、ある一方向にのみ作用するようになっていない。
そのため、第二コネクタ200の第二端子70が第一コネクタ100の可動ハウジング30の内壁面に対して押し付けられる構造になっていない。なお、
図3に示す長さL1と長さL2の大小関係は、L1<L2となっている。
【0061】
可動側被保持部44及び接触部45は、可動ハウジング30と一体となって移動する可動部44,45を構成する。
【0062】
第一端子40は、板状の部材から作られる。第一端子40は、板状の部材が板厚方向に曲げられた部分を有しない。第一端子40は、その全体の板厚方向をある一方向に向けており、具体的には板厚方向をY方向(第一コネクタ100の長手方向、第一端子40の配列方向)に向けている。第一端子40の中間弾性部43が、その板厚方向をY方向に向けているので、Y方向のバネ定数が小さくなりやすい。
【0063】
(固定ハウジング20)
図2に示すように、固定ハウジング20は、一対の端子保持部21と、一対の連結部22と、を備える。
【0064】
端子保持部21は、第一端子40の固定側被保持部42を保持する。具体的には、一対の端子保持部21のうち、一方の端子保持部21は、列間方向一方の複数の第一端子40の固定側被保持部42を保持し、他方の端子保持部21は、列間方向他方の複数の第一端子40の固定側被保持部42を保持する。端子保持部21には、第一端子40の固定側被保持部42が圧入される圧入用孔が形成される(
図3参照)。
【0065】
一対の連結部22は、一対の端子保持部21をX方向で連結する。具体的には、一対の連結部22のうち、一方の連結部22は、一対の端子保持部21を+Y方向側の端で連結し、他方の連結部22は、一対の連結部22を-Y方向側の端で連結する。一対の連結部22は、互いに略同一の構造及び機能を有する。
【0066】
連結部22は、固定用部材50を保持する固定用部材保持部22aを有する。固定用部材保持部22aは、固定用部材50が-Z方向を圧入方向として圧入可能に構成される。
【0067】
連結部22は、可動ハウジング30の移動範囲を+Z方向で制限する制限部22bを有する。連結部22は、一対の縦壁部22cと、一対の縦壁部22cの+Z方向の端をX方向で連結する上側連結部22bと、を有する。上側連結部22bが制限部22bとして機能する。制限部22bは、端子保持部21の上端よりも上側に位置している。
【0068】
(可動ハウジング30)
可動ハウジング30は、端子保持部31を有する。
端子保持部31は、第一端子40の可動側被保持部44を保持する部分である。
端子保持部31は、直方体の形状を有する。端子保持部31の内部には、第一端子40の可動部44,45が収容される収容空間34が複数形成される。
【0069】
可動ハウジング30は、被制限部32を有する。被制限部32は、固定ハウジング20の制限部22bによって+Z方向の移動が制限される部分である。被制限部32は、2つ形成される。被制限部32は、端子保持部31からY方向外側に突出する。
【0070】
図8等に示すように、可動ハウジング30は、開口33を複数有する。なお、図では、符号33A又は33Bが付されているが、両者を特に区別しないときは符号33を用いる。
複数の開口33は、列間方向一方側の複数の開口33と、列間方向他方側の複数の開口33と、から構成される。列間方向一方側の開口33と列間方向他方側の開口33とで一対の開口33が構成され、当該一対の開口33がY方向(配列方向)に配列されていると捉えることもできる。
【0071】
収容空間34は、第二端子70が挿入される開口33を介して+Z方向に開放されている。このため、可動ハウジング30には、第二端子70が挿入される挿入孔34が複数形成されていると捉えることもできる。
【0072】
可動ハウジング30は、誘導斜面35を複数有する。なお、図では、符号35A又は35Bが付されているが、両者を特に区別しないときは符号35を用いる。
誘導斜面35は、XY平面に対して傾斜した傾斜面であって、第二端子70の先端を挿入孔34に誘導するように機能する面である。
複数の誘導斜面35の各々は、複数の開口33の各々に対応して設けられる。したがって、複数の誘導斜面35は、列間方向一方側の複数の誘導斜面35と、列間方向他方側の複数の誘導斜面35と、を備える。
誘導斜面35は、+Z方向から見て、開口33を囲む領域に形成される。誘導斜面35が形成される領域の形状(+Z方向から見た形状)は、矩形である。誘導斜面35は、法線方向が互いに異なる4つの面から構成される。4つの面の各々の形状は、台形である。
【0073】
(第二コネクタ200)
第二コネクタ200は、第二ハウジング60と、複数の第二端子70と、を備える。
【0074】
第二ハウジング60は、図示しない第二取付対象物に固定されるハウジングである。
第二取付対象物は、例えば、第一取付対象物90としての基板と平行に配置される基板である。
【0075】
複数の第二端子70は、列間方向一方側の複数の第二端子70と、列間方向他方側の複数の第二端子70と、を備える。
列間方向一方側の第二端子70と列間方向他方側の第二端子70とが一対の第二端子70を構成し、当該一対の第二端子70が配列方向に複数配列されていると捉えることもできる。
【0076】
複数の第二端子70の各々は、互いに同一の構造である。
複数の第二端子70が配列方向に配列される間隔は、等間隔である(
図10の間隔L4参照)。具体的には、列間方向一方側の複数の第二端子70は、配列方向に沿って等間隔で配列されており、列間方向他方側の複数の第二端子70も、配列方向に沿って等間隔で配列されている。
列間方向で隣り合う一対の第二端子70の列間方向の間隔は、いずれの一対の第二端子70についても同じである。
【0077】
第二端子70は、-Z方向に向けて直線状に延びている。第二端子70は、+Z方向側の部分で第二ハウジング60に支持されている。つまり、第二端子70は、片持ち支持された直線状の棒状部材である。
【0078】
第二端子70は、矩形(具体的には正方形)の断面形状(Z方向に垂直な断面形状)を有する。第二端子70は、その先端部では-Z方向に向かうに従い断面が小さくなっているが、先端部以外の部分ではZ方向で一様な断面形状を有する。
【0079】
(可動ハウジング30の支持構造について)
次に、可動ハウジング30の支持構造について説明する。
【0080】
可動ハウジング30に形成された複数(16つ)の開口33は、列間方向中央部に位置する複数(12つ)の一般開口33Aと、列間方向外側部に位置する複数(4つ)の特殊開口33Bと、に分けることができる。
【0081】
図9A、
図9B、
図9Cに示すように、特殊開口33Bの形状(+Z方向から見た形状)は、一般開口33Aの形状と異なる。特殊開口33BのX寸法は、一般開口33AのX寸法と同じである。特殊開口33BのY寸法は、一般開口33AのY寸法よりも小さい。より具体的には、特殊開口33Bの形状はX方向を長手とする長方形であるのに対し、一般開口33Aの形状は正方形である。
なお、Z方向の位置に関し、一般開口33Aと特殊開口33Bとは一致する(
図5参照)。
【0082】
図8に示すように、配列方向に並ぶ複数(8つ)の開口のうち、配列方向で隣り合う2つの開口33の間の距離L3は、一般開口33A及び特殊開口33Bを含む全ての開口33について同じである。ここでいう2つの開口33の間の距離とは、配列方向で隣り合う2つの開口33のうち、配列方向一方側の開口33の配列方向他方側の端と、配列方向他方側の開口33の配列方向一方側の端との距離を意味する。
【0083】
図5に示すように、配列方向で最も一方側の開口33(特殊開口33B)の配列方向一方側の端と、配列方向で最も他方側の開口33(特殊開口33B)の配列方向他方側の端との間の距離D2は、配列方向で最も一方側の第二端子70Bの配列方向一方側の端と、配列方向で最も他方側の第二端子70Bの配列方向他方側の端との間の距離D1よりも小さい。
このため、接続状態では、
図6に示すように、配列方向一方側の特殊開口33Bの配列方向一方側の縁部が配列方向で最も一方側に位置する第二端子70Bに当接すると共に、配列方向他方側の特殊開口33Bの配列方向他方側の縁部が配列方向で最も他方側に位置する第二端子70Bに当接する状態となる。このとき、これらの第二端子70Bは、弾性変形した状態となる。
これにより、配列方向で最も一方側の第二端子70B及び配列方向で最も他方側の第二端子70Bは、配列方向で最も一方側の開口33(特殊開口33B)の縁部と配列方向で最も他方側の開口(特殊開口33B)の縁部との間で突っ張った状態となる。これは見方を変えると、可動ハウジング30は、上記2つの縁部の間において、配列方向で最も一方側の第二端子70B及び配列方向で最も他方側の第二端子70Bを挟み込んだ状態といえる。
以上により、4つの第二端子70Bによって、可動ハウジング30が支持された状態となる。よって、本実施形態では、4つの第二端子70Bが「支持部材」に相当する。
【0084】
図5に示すように、可動ハウジング30が有する複数の誘導斜面35は、複数の一般誘導斜面35Aと、複数の特殊誘導斜面35Bと、に分けることができる。
図9A、
図9B、
図9Cに示すように、誘導斜面35が形成される領域の形状(+Z方向から見た形状)及び大きさは、一般誘導斜面35Aと特殊誘導斜面35Bとで一致し、本実施形態では正方向である。
図8に示すように、配列方向で隣り合う2つの誘導斜面35の間の距離は、一般誘導斜面35A及び特殊誘導斜面35Bと含む全ての誘導斜面35について同じである。つまり、配列方向に配列された複数の誘導斜面35の配列間隔は、等間隔である。
【0085】
図9Bに示すように、誘導斜面35が形成される領域における一般開口33Aの位置は、当該領域における中心位置である。一方、
図9A、
図9Cに示すように、誘導斜面35が形成される領域における特殊開口33Bの位置は、当該領域における中心からズレた位置である。
【0086】
一般誘導斜面35Aと特殊誘導斜面35Bとは、構造が異なっている。
一般誘導斜面35Aが備える4つの面は、互いに同じ形状(台形状)及び大きさを有する。一般誘導斜面35Aが備える4つの面の傾斜角度は、互いに同じである。
一方、特殊誘導斜面35Bが備える4つの面のうち3つの面の傾斜角度は、互いに同じである。しかし、残り1つの面(特殊開口33Bに対して配列方向外側に位置する面)の傾斜角度は、3つの面の傾斜角度よりも緩やかである(
図7参照)。なお、これら3つの面の傾斜角度は、一般誘導斜面35Aが備える4つの面の傾斜角度と同じである。
【0087】
複数の挿入孔34(収容空間34)は、複数の一般挿入孔34Aと、複数の特殊挿入孔34Bとに分けることができる。
一般挿入孔34Aは、一般開口33Aに対応する挿入孔34であり、特殊挿入孔34Bは、特殊開口33Bに対応する挿入孔34である。
図7に示すように、特殊挿入孔34Bは、上端付近では、特殊開口33Bと同じ形状の断面形状を有する。一方、特殊挿入孔34Bは、上端付近を除く部分では、配列方向内側及び配列方向外側に拡大されている。
【0088】
配列方向内側に拡大された空間を退避空間34aと呼ぶ。特殊挿入孔34Bに挿入された第二端子70B(挿入部材、当接部材)は、特殊開口33Bの配列方向外側の縁部及びこれに続く特殊挿入孔34Bの壁面に当接することにより、弾性変形する。(なお、弾性変形した形状の図示は省略している。)この弾性変形により、第二端子70Bの先端側は、弾性変形がない場合と比較して、配列方向内側へ向けて変位する。このため、第二端子70Bの先端が挿入孔34の配列方向内側の壁面に接触してしまうおそれがある。退避空間34aは、これを防止するための空間である。
【0089】
配列方向外側に拡大された空間を復帰空間34bと呼ぶ。接続状態で第二端子70Bは弾性変形するため、仮に復帰空間34bが形成されていなくとも、第二端子70Bの先端側の部分は可動ハウジング30に当接しない。このため、復帰空間34bの有無は、可動ハウジング30の支持構造の強さに影響を与えない。但し、復帰空間34bが形成されることで、可動ハウジング30の質量を低下させることができる。
なお、本実施形態では、復帰空間34bの+Z方向側に開口33を狭める方向に膨出した膨出部(第一側当接部)が形成されており、この膨出部が第二端子70Bに当接する、と把握することもできる。仮に膨出部(第一側当接部)が形成されていないとすると、特殊開口33Bの形状は、一般開口33Aの形状と同じになる。
【0090】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0091】
本実施形態では、
図1に示すように、コネクタセット100,200は、第一コネクタ100と第二コネクタ200とを備える。
図3に示すように、第一コネクタ100は、複数の第一端子40と、第一ハウジング20,30と、を備える。第一端子40は、第一取付対象物90に対して移動可能な可動部44,45を有する。可動部44,45には、第一接触部45が形成されている。第一ハウジング20,30は、第一取付対象物90に対して可動部44,45と共に移動可能な可動ハウジング30を有する。
第二コネクタ200は、複数の第二端子70と、第二ハウジング60と、を備える。第二端子70は、第一接触部45と接触する第二接触部71を有する。第二ハウジング60は、複数の第二端子70を保持する。
【0092】
ここで、本実施形態では、
図5に示すように、第二コネクタ200は支持部材70Bを有する。そして、第一コネクタ100と第二コネクタ200とが接続した状態(接続状態)では、
図6に示すように、可動ハウジング30が支持部材70Bと接続方向に垂直な方向(本実施形態では、Y方向)で当接することにより、可動ハウジング30が支持部材70Bに支持された状態となる。なお、
図6、
図7の矢印Fは、可動ハウジング30が支持部材70Bから受ける力を示す。
このため、可動ハウジング30と第二コネクタ200との相対変位が抑制される結果、接点摺動が抑制される。また、第二コネクタ200が第二取付対象物(不図示)に取り付けられて固定される場合には、第一コネクタ100のうち変位可能な部分(可動ハウジング30及び複数の第一端子40の可動部44,45)の固有振動数が上昇することで、第一コネクタ100のうち変位可能な部分の共振の発生が抑制される。これによっても、接点摺動が抑制される。
【0093】
また、本実施形態では、
図6に示すように、可動ハウジング30と支持部材70Bとの当接は、電気的接続のための接触ではない。
このため、電気的接続のための接触箇所(第一端子40と第二端子70との接触箇所)以外の接触箇所を介して可動ハウジング30が第二コネクタ200に支持される構造を有しないコネクタセットと比較して、接点摺動をより抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態では、
図6に示すように、支持部材70Bは、第二コネクタ200が備える複数の第二端子70のうち少なくとも一部を含んで構成される。
このため、支持部材70Bが第二端子70を含まないで構成される態様と比較して、部品点数を低減できる。
【0095】
ところで、支持部材70Bとして機能する第二端子70Bに可動ハウジング30が当接することで、第二端子70Bが変形して第二接触部71が変位し、この変位の方向によっては第二端子70Bに対する第一端子40の接触圧が当該変位がない場合よりも低下してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、支持部材70Bとして機能する第二端子70Bについて、可動ハウジング30が第二端子70Bに対して当接する方向(本実施形態ではY方向内側)は、第二端子70に対する第一端子40の接触圧を低下させない方向である。
このため、支持部材70Bとして機能する第二端子70Bに対する第一端子40の接触圧の低下が防止される。
【0096】
また、本実施形態では、
図6に示すように、接続状態で、可動ハウジング30が支持部材70Bを接続方向に垂直な方向である挟持方向(Y方向)から挟み込む状態となる。
このため、支持部材70Bによって可動ハウジング30が適切に支持される。
なお、上記構成に代えて、接続状態で、可動ハウジング30が支持部材70Bによって挟持方向から挟み込まれる状態となるようにしてもよい。このような構成は、特殊開口33Bの形状を変更することで実現できる。
【0097】
また、本実施形態では、
図6に示すように、支持部材70Bは、接続状態で可動ハウジング30に当接する当接部材70Bを複数(4つ)備える。複数の当接部材70Bは、一対の当接部材70Bを備える。当該一対の当接部材70Bが可動ハウジング30に当接する方向は、当該一対の当接部材70Bが互いに離間する方向である。
このため、例えば、支持部材が1つの当接部材で構成され、当該当接部材が可動ハウジングに挟持される態様と比較して、接続時の作業性が向上する。
なお、上記構成に代えて、当該一対の当接部材70Bが可動ハウジング30に当接する方向は、当該一対の当接部材70Bが互いに接近する方向としてもよい。但し、互いに離間する方向の場合の方が2箇所の当接箇所の距離が大きくなり可動ハウジング30の支持が安定する。
【0098】
また、本実施形態では、
図5に示すように、第二コネクタ200は、接続方向に垂直な方向である配列方向(Y方向)に並ぶ複数の配列部材70を備える。複数の配列部材70のうち一部又は全部(本実施形態では全部)が第二端子70として機能する。
ここで、
図6に示すように、複数の配列部材70のうち配列方向両端に位置する2つの配列部材70Bが支持部材70Bとして機能する。
このため、配列方向一方側の端に位置する配列部材70と他方側の端に位置する配列部材70とにより、大きく距離が離れた2箇所で可動ハウジング30と当接することができるので、可動ハウジング30の支持が安定する。
【0099】
また、本実施形態では、
図4に示すように、第一端子40は、可動部44,45を弾性的に支持する中間弾性部43を有する。中間弾性部43は、その全体又は大部分(本実施形態では全体)の板厚方向を接続方向に垂直な一方向(Y方向)に向ける。このため、当該一方向(Y方向)の振動について固有振動数が小さくなり、当該一方向(Y方向)で共振が発生しやすくなる。
ここで、本実施形態では、可動ハウジング30と支持部材70Bのうち一方が他方を挟持する挟持方向(Y方向)は、中間弾性部の板厚方向(Y方向)と平行な方向である。
このため、共振が発生しやすい方向と同じ方向で、可動ハウジング30と支持部材70Bとのうち一方が他方を挟持することとなり、その結果、共振を効果的に抑制できる。
【0100】
また、本実施形態では、支持部材70Bは、接続状態で可動ハウジング30に当接する当接部材70Bを備える。当接部材70Bは、片持ち支持されて接続方向手前側に延びる部材である。
ここで、可動ハウジング30のうち当接部材70Bのうちに当接する部分(第一側当接部)は、接続方向において、第一端子40の第一接触部45よりも手前側に位置する。
このため、可動ハウジング30のうち当接部材70Bのうちに当接する部分(第一側当接部)が接続方向において第一接触部45よりも奥側に位置する態様と比較して、当接部材70Bの固定端から、可動ハウジング30に当接する部分(第二側当接部)までの長さが短くなり、可動ハウジング30の支持に寄与するバネ定数が大きくなる。よって、共振をより一層抑制することができる。
【0101】
また、本実施形態では、支持部材70Bは、接続状態で可動ハウジング30に当接する当接部材70Bを複数備える。第二コネクタ200は、複数の挿入部材70を備える。可動ハウジング30には、複数の挿入部材70が挿入される複数の挿入孔34が形成される。複数の挿入部材70の一部は、当接部材70Bとして機能する。
ここで、複数の挿入部材70のうち当接部材70Bとして機能する挿入部材70Bは、挿入孔34の内壁に当接する。
このため、第二コネクタ200の挿入部材70Bと可動ハウジング30の挿入孔34を利用して、効率的に可動ハウジング30の支持構造を実現できる。
【0102】
また、本実施形態では、
図7に示すように、挿入孔34の内部には、可動ハウジング30に当接することにより変形した挿入部材70との接触を避けるための退避空間34aが形成される。
このため、接続時の作業性の低下が抑制される。
【0103】
また、本実施形態では、
図5に示すように、可動ハウジング30には、接続方向(Z方向)に垂直な方向である配列方向(Y方向)に並ぶ複数の挿入孔34が形成される。複数の挿入孔34は、複数の一般挿入孔34Aと、複数の特殊挿入孔34Bと、を備える。特殊挿入孔34Bは、形状、大きさ又は配置規則が一般挿入孔34Aとは異なる挿入孔34である。そして、接続状態では、特殊挿入孔34Bの内壁に支持部材70Bが当接した状態となる。
このため、第二コネクタ200側に構造的な工夫が無くても、可動ハウジング30の支持構造を実現することができる。
【0104】
また、本実施形態では、
図2に示すように、第一コネクタ100は、複数の第一端子40を備える。そして、
図4に示すように、複数の第一端子40は、第二端子70に対する接触方向が互いに反対方向である一対の第一端子40を備える。
このため、複数の第二端子70に対する複数の第一端子40の接触圧によって第二コネクタ200をある特定の一方向に付勢する構造でなっていない。その結果、第一端子40と第二端子70との接触圧によっては、可動ハウジング30と第二コネクタ200との相対変位を抑制しにくい。
したがって、支持部材70Bによって可動ハウジング30が支持される本実施形態の構造が特に有効になる。
なお、本実施形態では、
図3に示す長さL1と長さL2の大小関係が、L1<L2となっているが、支持部材70Bによって可動ハウジング30が支持される本実施形態の構造が有効になるのは、これに限定されず、L1=L2の場合であっても有効である。
【0105】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、支持部材70Bが、配列方向に対称な構造、形状を有する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。
また、上記実施形態では、支持部材70Bが、列間方向に対称な構造、形状を有する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。
【0106】
また、上記実施形態では、第一端子が、一体的に形成されている例を説明した。しかし、本開示の第一端子は、これに限定されず、互いに分離された複数の部材から構成されてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、端子同士の接触方向(X方向)と、可動ハウジングと支持部材との当接方向(Y方向)とが垂直である例を説明した。しかし、本開示はこれに限定されず、これらの方向が互いに平行であってもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、可動ハウジングと支持部材との当接方向が第一コネクタ100の長手方向(第一端子40の配列方向)である例を説明した。しかし、本開示の当接方向は、これに限定されず、第一コネクタの短手方向であってもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、当接部材(第二端子70B)が直線状の棒状部材である例を説明した。しかし、本開示の当接部材は、これに限定されず、屈曲部を有するバネ部材であってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、複数の挿入部材(第二端子70)のうち、当接部材として機能する挿入部材(第二端子70B)が、当接部材として機能しない挿入部材(第二端子70A)と同一の構造である例を説明した。しかし、本開示は、これに限定されず、両者の構造が異なってもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、複数の挿入部材(第二端子70)のうち、当接部材として機能しない複数の挿入部材(第二端子70A)が一方向(Y方向)に配列されている仮想直線の延長線上に、当接部材として機能する挿入部材(第二端子70B)が位置する例を説明した。しかし、本開示はこれに限定されず、上記仮想直線からズレた位置に当接部材として機能する挿入部材が位置してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、配列方向の並んだ複数の第一端子40が2列設けられる例を説明した。しかし、本開示は、これに限定されず、1列であってもよいし3列以上であってもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、第二コネクタ200が取り付けられる第二取付対象物が、例えば第一取付対象物90としての基板と平行に配置される基板であり、第二コネクタ200が固定される例を説明した。しかし、第二コネクタが取り付けられる第二取付対象物は、電線であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
20 固定ハウジング
20,30 第一ハウジング
30 可動ハウジング
33 開口
33A 一般開口
33B 特殊開口
34 挿入孔(収容空間)
34A 一般挿入孔
34B 特殊挿入孔
34a 退避空間
34b 復帰空間
35 誘導斜面
35A 一般誘導斜面
35B 特殊誘導斜面
40 第一端子
43 中間弾性部
44 可動側被保持部
44,45 可動部
45 接触部(第一接触部)
60 第二ハウジング
70 第二端子(配列部材、挿入部材)
70A 第二端子(配列部材、挿入部材)
70B 第二端子(配列部材、挿入部材、当接部材、支持部材)
71 第二接触部
90 第一取付対象物
100,200 コネクタセット
100 第一コネクタ
200 第二コネクタ