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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049219
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】熱交換器のヘッダタンク
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F28F9/02 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155555
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】小室 朗
(72)【発明者】
【氏名】久保田 煕
(57)【要約】
【課題】 偏平な開口を有し、その開口端が夫々対向する一対の長辺部と短辺部とで形成されたタンク本体と、タンク本体の開口を閉塞し、内周にシール取付部を有するヘッダプレートと、タンク本体の開口端とヘッダプレートとの間に配置されるシール材と、を具備し、カシメにより締結固定される熱交換器のヘッダタンクにおいて、シール材がタンク本体の短辺部のシール部の範囲から外れることを防止する。
【解決手段】 タンク本体3の短辺部2のシール部である短辺シール部9の幅W9が、長辺部1のシール部である長辺シール部8の幅W8より広く形成されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平な開口を有し、その開口端が夫々対向する一対の長辺部(1)と短辺部(2)とで形成されたタンク本体(3)と、
タンク本体(3)の開口を閉塞し、内周にシール取付部(4)を有するヘッダプレート(5)と、
タンク本体(3)の開口端とヘッダプレート(5)との間に配置されるシール材(6)と、を具備し、
カシメにより締結固定される熱交換器のヘッダタンクにおいて、
タンク本体(3)の前記短辺部(2)のシール部である短辺シール部(9)の幅(W9)が、前記長辺部(1)のシール部である長辺シール部(8)の幅(W8)より広い熱交換器のヘッダタンク。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器のヘッダタンクにおいて、
前記シール材(6)は、その断面が長方形の平角型であり、
前記短辺シール部(9)および前記長辺シール部(8)は、タンク本体(3)の開口端の基面(10)から突出した突条部(11)である熱交換器のヘッダタンク。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器のヘッダタンクにおいて、
短辺シール部(9)の幅(W9)は、短辺部(2)の幅(W2)と同じである熱交換器のヘッダタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のヘッダタンクに関し、特に、ヘッダタンクを構成するタンク本体とヘッダプレートとのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来型熱交換器の一例を示す正面図である。
図7Aは、従来型熱交換器のタンク本体3の開口端側から見た図、およびヘッダプレート5にシール材6を配置した平面図である。
この例の熱交換器は、タンク本体3に仕切部14が設けられており、ヘッダタンク及び偏平チューブ7内部に、複数の流体が流通し、偏平チューブの外部に空気等の流体が流通し、それらの流体間で熱交換が行われるものである。
この熱交換器のヘッダタンクは、図7Aに示す如く、偏平な開口を有し、その開口端が夫々対向する一対の長辺部1と短辺部2とで形成されたタンク本体3と、そのタンク本体3の開口を閉塞し、内周にシール取付部4を有する長方形のヘッダプレート5と、タンク本体3の開口端とヘッダプレート5との間に配置される環状のシール材6と、を具備し、それらの部品が、図6に示す如く、爪部13によりかしめられて、締結固定される。
また、ヘッダプレート5には多数の孔が設けられ、各孔に偏平チューブ7が取付けられると共に、各チューブ間にフィン15が取付けられている。
【0003】
シール材6の外形は、ヘッダプレート5のシール取付部4の形状に合わせて長方形でかつ環状に形成されている。
シール材6の断面の形状としては、長方形の平角型、円形の丸型等が使用されている。
【0004】
上記の平角型のシール材6を使用する場合、シール面圧を確保する為、図7Aに示す如く、タンク本体3の開口端にはシール部として、平坦な基面10から突出した突条部11が形成されている。
なお、シール部とは、シール効果を担う部分であり、それとヘッダプレート5との間に介在するシール材6の圧縮率が所定の範囲となる部分である。
この突条部11がシール材6に接することにより、タンク本体3とヘッダプレート5との間がシールされる。
なお、タンク本体3の短辺部2のシール部である短辺シール部9の突条部11の幅と、長辺部1のシール部である長辺シール部8の突条部11の幅は一定であり、基面10の幅方向の中央位置に形成されている。
また、ヘッダプレート5において短辺部2に対応するシール取付部4の幅は、シール材6取付時の環境温度によるシール材6の熱膨張および熱収縮を考慮して、広く形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7Bは、従来型熱交換器のタンク本体3をヘッダプレート5に組付けた時の不具合を示す説明図である。
従来型熱交換器の突条部11を有するタンク本体3の場合、図7Bに示す如く、シール取付部4において、シール材6の短辺部の位置が偏り、タンク本体3のシール部から外れるおそれがある。
そこで、本発明は、シール材6の短辺部がタンク本体3のシール部から外れることを防止する構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、偏平な開口を有し、その開口端が夫々対向する一対の長辺部1と短辺部2とで形成されたタンク本体3と、
タンク本体3の開口を閉塞し、内周にシール取付部4を有するヘッダプレート5と、
タンク本体3の開口端とヘッダプレート5との間に配置されるシール材6と、を具備し、
カシメにより締結固定される熱交換器のヘッダタンクにおいて、
タンク本体3の前記短辺部2のシール部である短辺シール部9の幅W9が、前記長辺部1のシール部である長辺シール部8の幅W8より広い熱交換器のヘッダタンクである。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記シール材6は、その断面が長方形の平角型であり、
前記短辺シール部9および前記長辺シール部8は、タンク本体3の開口端の基面10から突出した突条部11とした熱交換器のヘッダタンクである。
【0008】
第3の発明は、上記第2の発明において、短辺シール部9の幅W9は、短辺部2の幅W2と同じとした熱交換器のヘッダタンクである。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明は、タンク本体3の前記短辺部2のシール部である短辺シール部9の幅W9が、前記長辺部1のシール部である長辺シール部8の幅W8より広いものである。
この構成により、短辺シール部9側のシール材6の位置が変化しても、タンク本体3の短辺シール部9から外れることが抑制される。
なお、タンク本体3の長辺シール部8の幅W8は短辺シール部9の幅W9より狭いので、過剰な荷重を要せずにその効果が得られる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、シール材6は、その断面が長方形の平角型であり、前記短辺シール部9および前記長辺シール部8は、タンク本体の開口端の基面10から突出した突条部11とすることができる。
この構成により、タンク本体3の剛性を確保した上で、シール部の幅を適切に調整することが可能となり、平角型のシール材において合理的に第1の発明の効果を得ることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、短辺シール部9の幅W9は、短辺部2の幅W2と同じとすることができる。
この構成により、短辺シール部9の幅W9が最大となり、短辺シール部9側のシール材6の位置が変化しても、タンク本体3の短辺シール部9の範囲から外れることがより確実に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の第1の実施例のヘッダタンクであって、タンク本体3の開口端側から見た図、およびヘッダプレート5にシール材6を配置した平面図。
図1B図1AのB-B矢視断面図。
図1C】同ヘッダタンクの組立て状態における図1AのC-C矢視断面図。
図1D】同ヘッダタンクの組立て状態における図1AのD-D矢視断面図。
図2A】本発明の第2の実施例のヘッダタンクであって、タンク本体3の開口端側から見た図、およびヘッダプレート5にシール材6を配置した平面図。
図2B】同ヘッダタンクの組立て状態における図2AのB-B矢視断面図。
図2C図2BのC部拡大図。
図2D図2BのD部拡大図。
図3A図2Aのタンク本体3の縦断面図。
図3B図3AのB部拡大図。
図4】本発明の第1の実施例の他の例のヘッダタンクであって、タンク本体3の開口端側から見た図、およびヘッダプレート5にシール材6を配置した平面図。
図5A】本発明の第3の実施例のヘッダタンクであって、タンク本体3の開口端側から見た図、およびヘッダプレート5にシール材6を配置した平面図。
図5B図5AのB-B矢視断面図。
図5C】同ヘッダタンクの組立て状態における図5AのC-C矢視断面図。
図5D】同ヘッダタンクの組立て状態における図5AのD-D矢視断面図。
図6】熱交換器のタンク本体3とヘッダプレート5との関係の一例を示す正面図。
図7A】従来型熱交換器のヘッダタンクであって、タンク本体3の開口端側から見た図、およびヘッダプレート5にシール材6を配置した平面図。
図7B】従来型熱交換器のタンク本体3をヘッダプレート5に組付けた時の不具合を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のヘッダタンクは、偏平な開口を有し、その開口端が夫々対向する一対の長辺部1と短辺部2とで形成されたタンク本体3と、そのタンク本体3の開口を閉塞し、内周にシール取付部4を有するヘッダプレート5と、タンク本体3の開口端とヘッダプレート5との間に配置されるシール材6と、を具備し、それらの部品が爪部13によりかしめられて、締結固定される。
【0014】
このヘッダタンクのヘッダプレート5には多数の孔が設けられ、各孔に偏平チューブ7が取付けられると共に、各チューブ間にフィン15が取付けられている。
一対のヘッダタンク及び偏平チューブ7の内部に、単一の(又は複数の)流体が流通し、偏平チューブの外部に空気等の流体が流通し、それらの流体間で熱交換が行われる。
【0015】
次に、図面に基づいて、本発明の各実施の形態につき説明する。
【実施例0016】
第1の実施例では、タンク本体3の開口端は、図1Aに示す如く、一対の対向する長辺部1と短辺部2とがコーナ部17でつながった平面方形に形成されている。
この実施例においてシール材6は、図1Bに示す如く、その断面が長方形の平角型に形成されている。
そして、タンク本体3の開口端の短辺シール部9および長辺シール部8は、タンク本体3の開口端の基面10から突出した突条部11で形成されており、徐変部12を介して、つながっている。
また、図1C図1Dに示す如く、短辺シール部9における基面10からの突条部11の突出量t9は、長辺シール部8における基面10からの突条部11の突出量t8と同一の高さに形成されており、突条部11とヘッダプレート5との間に介在するシール材6の圧縮率が短辺シール部9と長辺シール部8において同一となるように形成されている。
なお、長辺シール部8の突条部11は、長辺部1の幅W1の中央位置に、長辺部1に沿って形成されている。
また、シール取付部4の形状は、周方向の部位に依らず、図1Cのような平面状でも、図1Dのような溝状でも良い。
【0017】
この実施例では、図1Aに示す如く、タンク本体3の開口端の短辺部2のシール部である短辺シール部9の幅W9が、長辺部1のシール部である長辺シール部8の幅W8より広く形成されている。
この構成により、短辺シール部9側のシール材6の位置が変化しても、タンク本体3の短辺シール部9から外れることが抑制される。
そして、タンク本体3の長辺シール部8の幅W8は短辺シール部9の幅W9より狭いので、過剰な荷重を要せずにその効果が得られる。
その結果、平角型のシール材を利用する場合において、タンク本体3の剛性を確保した上で、シール部の幅を適切に調整することが可能となる。
【実施例0018】
図2A図2D図3A図3Bは、本発明の第2の実施例である。
第2の実施例では、タンク本体3は、図2A図3Aに示す如く、タンク本体3の長辺部1の中間に配置した一対の仕切部14を介して、主タンク部3aと副タンク部3bとを形成している。
一対の仕切部14の間には、図2Bに示す如く、ダミーチューブ7cが配置される。
ヘッダタンクの主タンク部3a及び主タンク部3a側の偏平チューブ7aの内部に、第1の流体が流通し、ヘッダタンクの副タンク部3b及び副タンク部3b側の偏平チューブ7bの内部に、第2の流体が流通するように形成されている。
第1の実施例と同様、この実施例のシール材6は、その断面が長方形の平角型のものである。
図2D図3Bに示す如く、一対の仕切部14の先端に突条部11が形成され、仕切シール部16が形成されている。
各シール部8、9、16の基面10からの突出量t8、t9、t16は、同一に形成されており、突条部11とヘッダプレート5との間に介在するシール材6の圧縮率が各シール部8、9、16において同一となるように形成されている。
【0019】
この第2の実施例では、第1の実施例と同様、タンク本体3の開口端の短辺部2のシール部である短辺シール部9の幅W9が、長辺部1のシール部である長辺シール部8の幅W8より広く形成されている。
さらに、図2Aに記載のように、タンク本体3の開口端の短辺シール部9の幅W9は、短辺部2の幅W2と同じ幅に形成されている。
この構成により、短辺シール部9の突条部11の幅W9が最大となり、短辺シール部9側のシール材6の位置が変化しても、タンク本体3の短辺シール部9の範囲から外れることがより確実に抑制される。
図1Aの場合、短辺シール部9の幅W9は、短辺部2の幅W2より小さいが、図4に示すように、短辺シール部9の幅W9と短辺部2の幅W2とを同じにすることができる。
【実施例0020】
図5A図5Dは、本発明の第3の実施例である。
第3の実施例では、図5Aに示す如く、タンク本体3の開口端の基面10が、そのまま短辺シール部9および長辺シール部8を形成しており、短辺部2のシール部である短辺シール部9の幅W9(短辺部2の幅W2と同一の幅)が、長辺部1のシール部である長辺シール部8の幅W8(長辺部1の幅W1と同一の幅)より広く形成されている。
また、この実施例においてシール材6は、図5Bに示す如く、その断面が円形に形成されている。
【0021】
このような構成においても、短辺シール部9の幅W9が、長辺シール部8の幅W8より広く形成されていることにより、短辺シール部9側のシール材6の位置が変化しても、タンク本体3の短辺シール部9から外れることが抑制される。
なお、この第3の実施例では、仕切部14が形成されていないが、仕切部14が形成されている場合においても、同様の構成を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
熱交換器のヘッダタンクとして利用可能であり、特に、自動車用ラジエータのヘッダタンクに好適である。
【符号の説明】
【0023】
1 長辺部
W1 長辺部1の幅
2 短辺部
W2 短辺部2の幅
3 タンク本体
3a 主タンク部
3b 副タンク部
4 シール取付部
5 ヘッダプレート
6 シール材
7 偏平チューブ
7a 主タンク部側の偏平チューブ
7b 副タンク部側の偏平チューブ
7c ダミーチューブ
【0024】
8 長辺シール部
W8 長辺シール部8の幅
t8 長辺シール部8における基面10からの突出量
9 短辺シール部
W9 短辺シール部9の幅
t9 短辺シール部9における基面10からの突出量
10 基面
11 突条部
12 徐変部
13 爪部
14 仕切部
15 フィン
16 仕切シール部
W16 仕切シール部8の幅
t16 仕切シール部16における基面10からの突出量
17 コーナ部
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B