(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049222
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】油脂含有食品用起泡剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20240402BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240402BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240402BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20240402BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20240402BHJP
A21D 2/26 20060101ALN20240402BHJP
A23L 27/60 20160101ALN20240402BHJP
【FI】
A23L29/00
A23J3/14
A23L9/20
A23D7/00 508
A21D13/80
A21D2/26
A23L27/60 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155563
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油グループ本社株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 弘志
(72)【発明者】
【氏名】金谷 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】上山 知樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 量太
【テーマコード(参考)】
4B025
4B026
4B032
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B025LB21
4B025LG14
4B025LG32
4B025LG42
4B025LK07
4B025LP11
4B026DC06
4B026DG04
4B026DL04
4B026DL05
4B026DP01
4B026DX04
4B032DB05
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK33
4B032DL02
4B035LC16
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG33
4B035LK05
4B035LP21
4B047LB09
4B047LE03
4B047LG11
4B047LG18
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、油が入った食品において、優れた起泡性を付与する起泡剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)粗蛋白質量 20質量%の水溶液を80℃,30分加熱後、25℃で測定時の粘度が10,000mPa・s以下、及び(B)0.22MのTCA可溶化率が30%~95%という特定の性質を有した蛋白素材が油脂含有食品に優れた起泡性を付与することを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び(B)の性質を有する蛋白素材を含有する油脂含有食品用起泡剤。
(A)粗蛋白質量 20質量%の水溶液を80℃,30分加熱後、25℃で測定時の粘度が10,000mPa・s以下。
(B)0.22MのTCA可溶化率が30%~95%。
【請求項2】
油脂含有食品中の油分が5質量%以上である、請求項1記載の油脂含有食品用起泡剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の油脂含有食品用起泡剤を油脂含有食品に添加する、油脂含有食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の油脂含有食品用起泡剤を油脂含有食品に添加する、油脂含有食品の起泡向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分含有食品用起泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に使用される起泡剤には、グリセリン脂肪酸エステルやシュガーエステルに代表されるような合成乳化剤や卵白、蛋白分解物、サポニンなどの天然物由来の起泡剤などが知られている。起泡剤の市場に関しては、近年の消費者の合成添加物の敬遠により合成乳化剤に代わる天然素材の起泡剤の要望が年々高まっている。一方、前述した天然物由来の起泡剤については、特に卵白が起泡力の点で優れている為、最も多く使用されている。しかし、未殺菌卵白ではサルモネラ菌による衛生面での問題、殺菌卵白では起泡力の低下や泡安定性の低下問題がある。更に、卵白は、油が入った系では起泡力や泡安定性や保型性が著しく低下するなどの問題点を有している。
含油系の食品に対する起泡性を改善する技術として、大豆蛋白を塩水溶液に溶解させた溶液を酸性領域で抽出し、その可溶画分を蛋白分解酵素で加水分解することにより得られる起泡性大豆蛋白に関する技術(特許文献1)、特定の分子量のカゼイン加水分解物及び乳清蛋白加水分解物を起泡剤として焼成食品に使用する技術(特許文献2)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-311354号公報
【特許文献2】特開2000-354980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では起泡性の向上は不十分であり、さらに起泡性を向上できるような技術が求められている。本発明は、油が入った食品において、優れた起泡性を付与する起泡剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題の解決に対し鋭意検討を重ねた結果、特定の性質を有した蛋白素材が油脂含有食品に優れた起泡性を付与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)以下の(A)及び(B)の性質を有する蛋白素材を含有する油脂含有食品用起泡剤、
(A)粗蛋白質量 20質量%の水溶液を80℃,30分加熱後、25℃で測定時の粘度が10,000mPa・s以下、
(B)0.22MのTCA可溶化率が30%~95%、
(2)油脂含有食品中の油分が5質量%以上である、(1)記載の油脂含有食品用起泡剤、
(3)(1)または(2)記載の油脂含有食品用起泡剤を油脂含有食品に添加する、油脂含有食品の製造方法、
(4)(1)または(2)記載の油脂含有食品用起泡剤を油脂含有食品に添加する、油脂含有食品の起泡向上方法、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の起泡剤を用いることにより、油脂含有食品に優れた起泡性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(油脂含有食品用起泡剤)
本発明の飲食品用起泡剤は、以下の(A)及び(B)の性質を有する蛋白素材を含有する。すなわち、(A)粗蛋白質量 20質量%の水溶液を80℃,30分加熱後、25℃で測定時の粘度が10,000mPa・s以下、(B)0.22MのTCA可溶化率が30%~95%、である。
本発明の油脂含有食品は、油脂含有食品中の油分が好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、上限は好ましくは、85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、70質量%以下とすることもできる。
【0009】
(蛋白素材)
本発明に用いる蛋白素材は、加熱後の粘度が低いものである。すなわち、蛋白素材を粗蛋白質量が20質量%となる水溶液を調製し、80℃,30分の加熱の後、25℃にて粘度測定する事により測定できる。加熱後粘度は10,000mPa・s以下であり、より好ましくは5,000mPa・s以下、1,000mPa・s以下、500mPa・s以下であり、更に好ましくは200mPa・s以下、100 mPa・s以下である。
また、本蛋白素材は一定サイズの分子量が必要となる。分子量は、TCA可溶化率で定義される。本発明においてTCA可溶化率は、総粗蛋白質量に対する0.22M TCA中で溶解する粗蛋白質量の比率で定義される。TCA可溶化率は30~95%であり、より好ましくは35~90%、更に好ましくは40~85%、50~80%である。TCA可溶化率が低すぎると加熱後粘度が増加する傾向となり適切ではない、また、透過率が低下する。一方、TCA可溶化率が高すぎると、乳化性に寄与する蛋白質量が低下し、蛋白素材を多く配合する必要が生じるため、配合の自由度が低下し、好ましくない。
本蛋白素材は、蛋白質の溶解性の指標として用いられているNSI(Nitrogen Solubility Index:窒素溶解指数)が80以上のものであることが好ましい。より好ましくはNSIが85以上、90以上、95以上、又は97以上のものを用いることができる。蛋白素材のNSIが高いことは、水への分散性が高いことを示す。NSIが低すぎると沈殿が生じやすくなり、好ましくない。
また、蛋白素材中の粗蛋白質含量についても、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が最も好ましい。粗蛋白質含量が多い蛋白素材の方が、より少量で機能を出すことが可能となる。
このような蛋白素材は、一般的に市販されていないが、後述する変性および分子量調整処理等により得ることができる。また、市販の大豆蛋白素材、例えばフジプロR、フジプロF、フジプロ748、フジプロCL、ハイニュートAM(以上、不二製油社製)等は、本要件に該当しない。
【0010】
上記の調製を行う対象の蛋白素材の由来は植物性由来の蛋白質が使用できる。植物性蛋白質としては、大豆、エンドウ、緑豆、ルピン豆、ヒヨコ豆、インゲン豆、ヒラ豆、ササゲ等の豆類、ゴマ、キャノーラ種子、ココナッツ種子、アーモンド種子等の種子類、とうもろこし、そば、麦、米などの穀物類、野菜類、果物類、藻類、微細藻類などに由来する蛋白質が挙げられる。一例として大豆由来のたん白素材の場合、脱脂大豆や丸大豆等の大豆原料からさらに蛋白質を濃縮加工して調製されるものであり、一般には分離大豆たん白質、濃縮大豆蛋白質や粉末豆乳、あるいはそれらを種々加工したものなどが概念的に包含される。
【0011】
(変性および分子量調整処理)
本発明の蛋白素材は、蛋白質を分解及び/又は変性させる「分解/変性処理」と、蛋白質の分子量分布の調整する「分子量分布調整処理」を組み合わせて適用することにより得られ得る。上記「分解/変性処理」の例として、酵素処理、pH調整処理(例えば、酸処理、アルカリ処理)、変性剤処理、加熱処理、冷却処理、高圧処理、有機溶媒処理、ミネラル添加処理、超臨界処理、超音波処理、電気分解処理及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。上記「分子量分布調整処理」の例として、ろ過、ゲルろ過、クロマトグラフィー、遠心分離、電気泳動、透析及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。「分解/変性処理」と「分子量分布調整処理」の順序及び回数は特に限定されず、「分解/変性処理」を行ってから「分子量分布調整処理」を行ってもよいし、「分子量分布調整処理」を行ってから「分解/変性処理」を行ってもよいし、両処理を同時に行ってもよい。また、例えば2回以上の「分子量分布調整処理」の間に「分解/変性処理」を行う、2回以上の「分解/変性処理」の間に「分子量分布調整処理」を行う、各々複数回の処理を任意の順に行う、等も可能である。なお、「分解/変性処理」によって所望の分子量分布が得られる場合は、「分子量分布調整処理」を行わなくてもよい。
これらの処理を組み合わせて、複数回行う際、原料から全ての処理を連続で行ってもよいし、時間をおいてから行ってもよい。例えば、ある処理を経た市販品を原料として他の処理を行ってもよい。なお、上記特性を満たす限り、分子量分布調整処理を経たたん白素材と、分子量分布調整処理を経ていないたん白素材を混合して、特定のたん白素材としてもよい。この場合、両者の比率(処理を経たたん白素材:処理を経ていないたん白素材)は上記特性を満たす範囲で適宜調整可能であるが、質量比で例えば1:99~99:1、例えば50:50~95:5、75:25~90:10等が挙げられる。ある実施形態では、本態様の蛋白素材は、「分解/変性・分子量分布調整処理」を経た蛋白素材からなる。
【0012】
蛋白質を分解又は変性させる処理の条件、例えば酵素、pH、有機溶媒、ミネラル等の種類や濃度、温度、圧力、出力強度、電流、時間等は、当業者が適宜設定できる。酵素の場合、使用される酵素の例として、「金属プロテアーゼ」、「酸性プロテアーゼ」、「チオールプロテアーゼ」、「セリンプロテアーゼ」に分類されるプロテアーゼが挙げられる。反応温度は20~80℃、好ましくは40~60℃で反応を行うことができる。pH調整処理の場合、例えばpH2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12の任意の値を上限、下限とするpH範囲、例えばpH2~12の範囲で処理し得る。酸処理の場合、酸を添加する方法であっても、また、乳酸発酵などの発酵処理を行う方法であってもよい。添加する酸の例として、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。また、レモンなどの果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルト、醸造酢などの酸を含有する飲食品を用いて酸を添加してもよい。アルカリ処理の場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加し得る。変性剤処理の場合、塩酸グアニジン、尿素、アルギニン、PEG等の変性剤を添加し得る。加熱又は冷却処理の場合、加熱温度の例として、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃の任意の温度を上限、下限とする範囲、例えば60℃~150℃が挙げられる。冷却温度の例として、-10℃、-15℃、-20℃、-25℃、-30℃、-35℃、-40℃、-45℃、-50℃、-55℃、-60℃、-65℃、-70℃、-75℃の任意の温度を上限、下限とする範囲、例えば-10℃~-75℃が挙げられる。加熱又は冷却時間の例として、5秒、10秒、30秒、1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、100分、120分、150分、180分、200分の任意の時間を上限、下限とする範囲、例えば5秒間~200分間が挙げられる。高圧処理の場合、圧力の条件の例として、100MPa、200MPa、300MPa、400MPa、500MPa、600MPa、700MPa、800MPa、900MPa、1,000MPaの任意の圧力を上限、下限とする範囲、例えば100MPa~1,000MPaが挙げられる。有機溶媒処理の場合、用いられる溶媒の例として、アルコールやケトン、例えばエタノールやアセトンが挙げられる。ミネラル添加処理の場合、用いられるミネラルの例として、カルシウム、マグネシウムなどの2価金属イオンが挙げられる。超臨界処理の場合、例えば、温度約30℃以上で約7MPa以上の超臨界状態の二酸化炭素を使用して処理できる。超音波処理の場合、例えば100KHz~2MHzの周波数で100~1,000Wの出力で照射して処理し得る。電気分解処理の場合、例えば蛋白質水溶液を100mV~1,000mVの電圧を印加することにより処理し得る。具体的な実施形態において、蛋白質を分解及び/又は変性させる処理は、変性剤処理、加熱処理、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0013】
蛋白質の分子量分布を調整する処理の条件、例えばろ材の種類、ゲルろ過の担体、遠心分離回転数、電流、時間等は、当業者が適宜設定できる。ろ材の例として、ろ紙、ろ布、ケイ藻土、セラミック、ガラス、メンブラン等が挙げられる。ゲルろ過の担体の例として、デキストラン、アガロース等が挙げられる。遠心分離の条件の例として、1,000~3,000×g、5~20分間等が挙げられる。
【0014】
(油脂含有食品)
本発明で用いられる油脂含有食品として、例えば、ホイップクリーム、フォーミングされた牛乳、フォーミングされた植物乳(例えば、豆乳、ココナッツミルク、アーモンドミルク、オーツミルク等)、スポンジケーキ,ロールケーキ,シフォンケーキ,パンケーキ,パウンドケーキ,バウムクーヘン,カステラ等のケーキ類、アイスクリーム、シェイク、ムース、泡立てられたドレッシング、泡立てられたソース、泡立てられた調味料等が挙げられる。
本発明の油脂含有食品には、各種動植物油脂が使用できる。例えば菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、ハイオレイックひまわり油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が例示できる。本発明においては上記で例示した何れの油脂も使用できる。
【0015】
本発明の蛋白素材の油脂含有食品に対する添加量は、蛋白素材として、好ましくは油脂含有食品中、0.05~20質量%であり、より好ましくは0.1~15質量%であり、さらに好ましくは0.3~10質量%、0.5~8質量%、0.8~7質量%、0.9~6質量%、0.9~5質量%とすることもできる。
また、本発明の油脂含有食品において、本発明の効果を妨げない範囲であれば、糖類、多糖類、本発明の蛋白素材以外の蛋白質、塩類、香料、着色料、保存料、甘味料等を適宜使用することができる
本発明の起泡剤は、上記本発明の蛋白質素材のみからなるものであってもよく、モノグリセリ
ド等の乳化剤、その他の起泡効果や気泡安定効果を有する各種物質または、起泡安定効果を阻害しない各種物質を更に含んでもよい。
起泡剤中の蛋白質素材の含有量は、10~100質量%であってよく、50~100質量%であることが好ましく、90~100重量%であることがより好ましい。
【0016】
本発明の蛋白素材の分析は、以下の手順にてその評価を行う。
<水分>
常圧加熱減量法(105℃、12時間)にて求める。
【0017】
<粗蛋白質含量>
ケルダール法により測定する。具体的には、蛋白素材重量に対して、ケルダール法により測定した窒素の質量を、乾燥物中の粗蛋白質含量として「質量%」で表す。なお、窒素換算係数は6.25とする。基本的に、小数点以下第2桁の数値を四捨五入して求められる。
【0018】
<NSI>
試料3gに60mlの水を加え、37℃で1時間プロペラ攪拌した後、1400×gにて10分間遠心分離し、上澄み液(I)を採取する。次に、残った沈殿に再度水100mlを加え、再度37℃で1時間プロペラ撹拌した後、遠心分離し、上澄み液(II)を採取する。(I)液及び(II)液を合わせ、その混合液に水を加えて250mlとする。これをろ紙(No.5)にてろ過した後、ろ液中の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素量をケルダール法にて測定し、ろ液として回収された窒素量(水溶性窒素)の試料中の全窒素量に対する割合を質量%として表したものをNSIとする。基本的に、小数点以下第2桁の数値を四捨五入して求められる。
【0019】
<TCA可溶率>
蛋白素材の2質量%水溶液に、0.44M トリクロロ酢酸(TCA)を等量加え、0.22M TCA溶液とし、可溶性窒素の割合をケルダール法により測定した値とする。基本的に、小数点以下第2桁の数値を四捨五入して求められる。
【0020】
<粘度(加熱後粘度)>
蛋白素材の粘度は、B型粘度計(東機産業社製、タイプBM)を用い測定する。粗蛋白質量が20質量%となるようにたん白素材水溶液を調製し、測定容器に充填、ロータをセットし、密閉の後、湯浴中にて80℃,30分間の加熱を行う。次いで、25℃にて、任意の回転数で測定し、指針値を読み取り、ロータNo.と回転数に対応した換算乗数を掛けて、粘度を算出する。(単位:Pa・s)1分後の測定値とする。基本的に回転数は60rpmとする。高粘度のサンプルはロータNo.を1→4とし、6rpmまで回転数を低下させる。尚、本測定の測定上限粘度は100,000mPa・sとなる。ロータNo.4と回転数6rpmで測定レンジを超過する場合は、即時に加熱後粘度は100,000mPa・s以上と判定する。
【実施例0021】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。尚、例中の%は特に断らない限り質量基準を意味するものとする。
【0022】
(蛋白素材)
本発明の実施例、比較例に用いた蛋白素材は以下の通りである。
○大豆蛋白素材A:
分離大豆タンパク質の分解/変性・分子量分布調整処理品。(不二製油株式会社テスト製造品、水分 1.2%、粗蛋白含量 79.3%、TCA可溶化率 61.8%、加熱後粘度 28mPa・s、NSI 98.1)原料 分離大豆タンパク質:フジプロR(不二製油社製、粗蛋白質含量 87.2%、TCA可溶化率 3.2%)
○大豆蛋白素材B:フジプロ-F(不二製油株式会社製、粗蛋白質含量 87.2%、TCA可溶化率 3.2%、加熱後粘度 100,000mPa・s以上、NSI 81.2)
○大豆蛋白素材C:フジプロ-CL(不二製油株式会社製、粗蛋白質含量 88.0%、TCA可溶化率 23.0%、加熱後粘度 100,000mPa・s以上、NSI 65.0))
○大豆蛋白素材D:ハイニュートAM(不二製油株式会社製、水分 5.0%、粗蛋白質含量 90.0%、TCA可溶化率 100.0%、NSI 100)
○エンドウ蛋白素材A:
エンドウタンパク質の分解/変性・分子量分布調整処理品。(不二製油株式会社テスト製造品、水分 1.1%、粗蛋白含量 72.4%、TCA可溶化率 45.9%、加熱後粘度 43mPa・s、NSI 98.9)原料 エンドウタンパク質:PP-CS(オルガノフードテック(株)社製、粗蛋白質含量 79.1%)
○カゼインNa :Sodium Caseinate180(フォンテラ社製、水分 6.0%、粗蛋白含量 95.9%、TCA可溶化率 1.2%、加熱後粘度 100,000mPa・s以上、NSI 95.2)
○卵白 :乾燥卵白No5(キューピー株式会社製、水分 5.8%、粗蛋白含量 88.8%、TCA可溶化率 4.3%、加熱後粘度 固化して測定不可。NSI 97.0)
○ひよこ豆蛋白:S930(ChickP Protein Ltd製、水分 6.0%、粗蛋白含量 89.9%、TCA可溶化率 20.0%、加熱後粘度 614,4mPa・s、NSI 33.8)
【0023】
(実施例1~2、比較例1~5)ホイップクリームの調製
表1の配合に基づき、各蛋白素材、水、油脂をボウルに入れ、KENMIX major KM-800(愛工舎製作所製)を目盛り6に設定して3分間攪拌し、油分20%の起泡物を作成した。
【0024】
(評価)
・比重
起泡物を90mlカップに入れ、比重を測定した。
・離水
200mlのビーカーに起泡物を20g入れ、攪拌終了時を0分として、10分後の離水を、液の高さ(mm)を測定することにより評価した。
比重が0.9未満であり、かつ離水評価で液の高さが6.0mm以下の場合、合格と判断した。
評価結果を表1に示した。
【0025】
【0026】
表1の結果の通り、実施例1、2のホイップクリームは比重が小さく、離水の評価も良好であった。
【0027】
(実施例3~17)大豆蛋白素材Aを用いた油分含量の検討
表2の配合に基づき、大豆蛋白素材A、水、油脂をボウルに入れ、KENMIX major KM-800(愛工舎製作所製)を目盛り6に設定して3分間攪拌し、起泡物を作成した。実施例1と同様にして起泡物の評価を行い、結果を表2、表3に示した。
【0028】
【0029】
実施例3~17の結果の通り、本発明の大豆蛋白素材を使用することで、油分1~70%という広い範囲で起泡性が良好な起泡物を製造することができた。
【0030】
(実施例18)
大豆蛋白素材Aを8g、水を52g、油脂(菜種油、不二製油株式会社製)を140gボウルに入れ、KENMIX major KM-800(愛工舎製作所製)を目盛りを最大に設定して2分間攪拌後、さらに油脂(菜種油、不二製油株式会社製)200gを添加し、目盛りを最大に設定して2分間攪拌して油分が85%の起泡物を得た。
起泡物を丸形V式容器(サノヤ製、(外径Φ113mm×内径Φ108mm×高さ66.6mm)に入れ、比重を測定した結果、比重は0.49g/cm3であり、良好な起泡物が得られた。
【0031】
(実施例19~20、比較例6~7)カップケーキ
表4に記載の原料について、大豆蛋白素材、グラニュー糖、水をケンミックスに入れて、ケンミックスのダイヤルを「MAX」に設定し、5分間攪拌後、油脂を添加して30秒間攪拌して混合物を得た。この混合物の攪拌直後の比重を測定した(表4では、「薄力粉添加前の比重」と記載。)。また、この混合物を5分間静置後の比重も測定した(表4では、「薄力粉添加前の比重(5分後)」と記載。)。
上記混合物にさらに薄力粉を加えて、混合し生地を得た。この生地を205ml容の紙コップにタッピングしながら入れ、最終すり切りになるまで入れ、この生地の比重を測定した(表4では、「薄力粉添加後の比重」と記載。)。
この生地を170℃、25分間焼成し、カップケーキを得た。
【0032】
(評価)
焼成直後及び焼成後1時間後のカップケーキの高さを測定し、焼成直後及び焼成後1時間後の高さが乾燥卵白を使用した例よりも高ければ合格と判断した。
【0033】
【0034】
表4に示すように、実施例19、20は良好な起泡性を示し、焼成直後、焼成後1時間後のカップケーキの高さも良好であった。
【0035】
(実施例21~23)起泡性ドレッシング
各市販ドレッシングに大豆蛋白素材Aをドレッシング中、5%となるように添加し、KENMIX major KM-800(愛工舎製作所製)を目盛りを最大に設定して2分間攪拌して、起泡性を評価した。
起泡性は、各ドレッシングを亀甲容器(丸型V式容器、φ113mm×φ108mm×66.6、サノヤ製)に入れ、重量を測定し、比重を測定することにより評価した。比重が0.7以下の場合起泡性が良好と判断した。結果を表5に示した。
なお、使用した市販ドレッシング(いずれもキューピー株式会社製)は以下の通りである。
・市販ドレッシング1:キューピーレモンドレッシング
・市販ドレッシング2:キューピーにんじんドレッシング
・市販ドレッシング3:キューピーテイスティドレッシング和風
【0036】
【0037】
表5に示す結果の通り、実施例21~23の比重は小さく、起泡性が良好なドレッシングを製造することができた。