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特開2024-49223バスバー及びその製造方法、並びに蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049223
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】バスバー及びその製造方法、並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/591 20210101AFI20240402BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20240402BHJP
【FI】
H01M50/591 101
H01M50/507
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155564
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119552
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 公秀
(72)【発明者】
【氏名】川崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真之助
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA04
5H043CA05
5H043GA25
5H043LA02
(57)【要約】
【課題】電池の異常時における電池セルからの高温や火炎、更には破損物の衝突から保護できるバスバーを提供する。また、雲母シートのような巻き付け作業が不要で、巻きムラやシートの隙間を生じることや、シートの剥がれの問題もなく、複雑な形状にも容易に対応可能に製造できるバスバーの製造方法を提供する。
【解決手段】電池セル110を含む蓄電装置に用いられるバスバー1は、導電性材料を含むバスバー本体5が、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む絶縁被膜により被覆されてなる。また、バスバー1の製造方法は、導電性材料を含むバスバー本体5に、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む塗布液を塗布した後、乾燥させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルを含む蓄電装置に用いられるバスバーであって、
導電性材料を含むバスバー本体が、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む絶縁被膜により被覆されてなることを特徴とする、バスバー。
【請求項2】
前記絶縁材料は、発泡剤及び結合剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記発泡剤は、アンモニウム塩、アミノ化合物及び塩素化パラフィンのうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載のバスバー。
【請求項4】
前記結合剤は、合成樹脂エマルジョン、アルキッド、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載のバスバー。
【請求項5】
前記絶縁材料は、更に炭化剤を含むことを特徴とする、請求項2に記載のバスバー。
【請求項6】
前記炭化剤は、炭水化物及び多価アルコールのうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項5に記載のバスバー。
【請求項7】
前記発泡剤がポリリン酸アンモニウムであり、前記結合剤がウレタン樹脂であり、前記炭化剤が多価アルコールであることを特徴とする、請求項5に記載のバスバー。
【請求項8】
前記絶縁被膜の厚さが、0.3mm以上であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項9】
前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項10】
前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、請求項8に記載のバスバー。
【請求項11】
電池セルを含む蓄電装置に用いられるバスバーの製造方法であって、
導電性材料を含むバスバー本体に、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む塗布液を塗布した後、乾燥させることを特徴とする、バスバーの製造方法。
【請求項12】
前記絶縁材料は、発泡剤及び結合剤を含むことを特徴とする、請求項11に記載のバスバーの製造方法。
【請求項13】
前記絶縁材料は、更に炭化剤を含むことを特徴とする、請求項12に記載のバスバーの製造方法。
【請求項14】
前記塗布液を、乾燥後の膜厚が0.3mm以上となるように塗布することを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載のバスバーの製造方法。
【請求項15】
前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載のバスバーの製造方法。
【請求項16】
前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、請求項14に記載のバスバーの製造方法。
【請求項17】
複数の電池セル又は電池モジュールを、請求項1~7のいずれか1項に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
【請求項18】
複数の電池セル又は電池モジュールを、請求項8に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
【請求項19】
複数の電池セル又は電池モジュールを、請求項9に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
【請求項20】
複数の電池セル又は電池モジュールを、請求項10に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー及びその製造方法、並びに複数の電池セル又は電池モジュールをバスバーで接続した蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器や、電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車、蓄電池などには、複数の電池セルを、バスバーにて直列又は並列に接続した蓄電装置が搭載されている。また、電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。
【0003】
しかし、充放電時に、電池セルに過電流が通電されると、接続に使用されているバスバーが発熱することがあり、場合によっては火炎を発することがある。このような電池の異常時には、バスバーも同様の高温や火炎に晒され、バスバー自体が損傷したり、バスバーを介して隣接する電池セルが高熱になる。そこで、特許文献1では、雲母シートでバスバーを被覆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-528650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、バスバー自身の発熱を抑えるための対策であり、電池の異常時における電池セルからの高温や火炎に対してバスバーを保護することに着目していない。しかも、雲母は、結晶水を含むため、電池の異常時に高温や火炎に晒された場合に、膨張したり、結晶水を放出したりして、構造的に不安定になる。
【0006】
また、特許文献1では、雲母シートをバスバーに巻き付ける作業が必要になる。電池セルの設置個所の空間的制限などにより、バスバーが複雑な形状を呈することもあるが、バスバーが複雑な形状になると、雲母シートをバスバーの隅々まで巻き付けるのが困難である。雲母シートに、巻きムラや隙間があると、目的とする上記効果が十分に得られない。更には、高温時に雲母シートの粘着面が剥がれることも想定される。
【0007】
さらには、電池の異常時において、電池セルからは、火炎の他にも破損物が飛散し、バスバーに衝突して損傷を与えることがある。しかしながら、特許文献1のバスバーでは、表面が雲母シートのみであり、破損物の衝突に対する耐衝性が十分とはいえない。
【0008】
そこで本発明は、電池の異常時における電池セルからの高温や火炎、更には破損物の衝突から保護できるバスバーを提供することを目的とする。また、雲母シートのような巻き付け作業が不要で、巻きムラやシートの隙間を生じることや、シートの剥がれの問題もなく、複雑な形状にも容易に対応可能に製造できるバスバーの製造方法を提供することを目的とする。更には、このようなバスバーにより複数の電池セル又は電池モジュール同士を接続し、異常時においても高い安全性を示す蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、バスバーに係る下記[1]の構成により達成される。
【0010】
[1] 電池セルを含む蓄電装置に用いられるバスバーであって、
導電性材料を含むバスバー本体が、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む絶縁被膜により被覆されてなることを特徴とする、バスバー。
【0011】
また、バスバーに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[10]に関する。
【0012】
[2] 前記絶縁材料は、発泡剤及び結合剤を含むことを特徴とする、[1]に記載のバスバー。
[3] 前記発泡剤は、アンモニウム塩、アミノ化合物及び塩素化パラフィンのうち少なくとも1つであることを特徴とする、[2]に記載のバスバー。
[4] 前記結合剤は、合成樹脂エマルジョン、アルキッド、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂のうち少なくとも1つであることを特徴とする、[2]又は[3]に記載のバスバー。
[5] 前記絶縁材料は、更に炭化剤を含むことを特徴とする、[2]~[4]のいずれか1つに記載のバスバー。
[6] 前記炭化剤は、炭水化物及び多価アルコールのうち少なくとも1つであることを特徴とする、[5]に記載のバスバー。
[7] 前記発泡剤がポリリン酸アンモニウムであり、前記結合剤がウレタン樹脂であり、前記炭化剤が多価アルコールであることを特徴とする、[5]に記載のバスバー。
[8] 前記絶縁被膜の厚さが、0.3mm以上であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1つに記載のバスバー。
[9] 前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1つに記載のバスバー。
[10] 前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、[8]に記載のバスバー。
【0013】
また、本発明の上記目的は、バスバーの製造方法に係る下記[11]の構成により達成される。
【0014】
[11] 電池セルを含む蓄電装置に用いられるバスバーの製造方法であって、
導電性材料を含むバスバー本体に、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む塗布液を塗布した後、乾燥させることを特徴とする、バスバーの製造方法。
【0015】
また、バスバーの製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[12]~[16]に関する。
【0016】
[12] 前記絶縁材料は、発泡剤及び結合剤を含むことを特徴とする、[11]に記載のバスバーの製造方法。
[13] 前記絶縁材料は、更に炭化剤を含むことを特徴とする、[12]に記載のバスバーの製造方法。
[14] 前記塗布液を、乾燥後の膜厚が0.3mm以上となるように塗布することを特徴とする、[11]~[13]のいずれか1つに記載のバスバーの製造方法。
[15] 前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、[11]~[13]のいずれか1つに記載のバスバーの製造方法。
[16] 前記絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることを特徴とする、[14]に記載のバスバーの製造方法。
【0017】
また、本発明の上記目的は、蓄電装置に係る下記[17]~[20]の構成により達成される。
【0018】
[17] 複数の電池セル又は電池モジュールを、[1]~[7]のいずれか1つに記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
[18] 複数の電池セル又は電池モジュールを、[8]に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
[19] 複数の電池セル又は電池モジュールを、[9]に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
[20] 複数の電池セル又は電池モジュールを、[10]に記載のバスバーで接続した、蓄電装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバスバーは、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む絶縁被膜により、導電性材料を含むバスバー本体を被覆したものであり、電池の異常時において、絶縁被膜自身が持つ高い絶縁性能によって、また好ましい態様として絶縁材料が高温により膨張する材料である場合には、その絶縁材料が膨張し、更には炭化するため、熱暴走を起こした電池セルからの高温や火炎から保護される。
また、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方が含まれることにより、破損物が衝突しても、十分な耐衝撃性を発現する。
【0020】
また、本発明のバスバーの製造方法は、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む塗布液をバスバー本体に塗布するだけでよいため、製造工程が簡易であり、バスバー本体の形状に関係なく、隙間なく均一に絶縁被膜を形成することができる。
【0021】
さらに、本発明の蓄電装置は、このようなバスバーにより複数の電池セルや電池モジュールを接続しているため、異常時においても高い安全性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明のバスバーの一例を電池セルに装着した状態を示す分解斜視図である。
図2図2は、バスバーの実施形態を、図1のA-A矢視に沿って示す断面図である。
図3図3は、本発明の蓄電装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0024】
[バスバー]
図1は、本実施形態に係るバスバー1を電池セル110に装着した状態を示す分解斜視図である。図1に示されるように、導電性材料からなるバスバー本体5は、例えば、全体がZ字状の金属製の板部材であり、一方の先端の接続孔6aに電池セル110の電極111を挿入し、端子キャップ112を被せて固定される。また、バスバー本体5の他方の先端の接続孔6bには、隣接する電池セル(図示せず)や外部機器(図示せず)が接続される。そして、バスバー本体5の接続孔6a,6bを除く部分(表面)を、後述される絶縁被膜10で覆い、バスバー1が構成される。
【0025】
なお、図示は省略するが、バスバー本体5は、全体をI字状にしたり、湾曲部を有するような不定形など、電池セル110の設置個所に応じて種々の形状とすることができる。
【0026】
バスバー本体5が、図1に示されるZ字状のような屈曲部5aや湾曲部(図示せず)を有する形状であると、上記特許文献1のバスバーのように雲母シートを巻き付ける方式では、屈曲部5aや湾曲部に巻きムラや隙間が生じないようにするために巻き付け作業に手間がかかったり、あるいは振動などにより隙間が生じたり、粘着剤が剥離することなどが想定される。しかし、後述するように、本実施形態では、所定の塗布液を用いた塗布により絶縁被膜10を形成するため、そのような問題は起こらない。
【0027】
続いて、図2は、図1のA-A矢視に沿って示すバスバー1の断面図である。なお、図示は省略するが図2中の下側に電池セル110が存在しており、電池の異常時には、電池セル110からの熱の伝達による高温や火炎が発生し、更には破損物が飛散して衝突する。このため、バスバー本体5を所定の絶縁被膜10で被覆している。なお、この絶縁被膜10は、図示のように、バスバー本体5の全面を覆うように、側面(板厚部分)及び上下面に形成することもできるが、少なくとも電池セル110と対向する面(ここでは下面)のみに形成してもよい。
【0028】
絶縁被膜10は、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む。また、絶縁被膜10中の絶縁材料は、250℃以上で膨張する材料であることが好ましい。バスバー1は、平常時であっても、通電時(電池の通常使用時)には概ね100℃程度になるため、電池の通常使用時に絶縁被膜10が膨張しないように、その膨張温度を250℃以上、又は必要により300℃以上、又は必要により350℃以上とするのがよい。
【0029】
絶縁被膜10は、仮に高温により膨張する材料でないとしても相応の高い絶縁性能を有するものであるが、例えば250℃以上の高温によって膨張するものであることにより、その内部に空気が取り込まれ、空気層が形成されることにより、発生した高熱がバスバー1へ伝達されるのが抑制され、更に断熱性能が高まる。ひいてはバスバー1自体の溶解(すなわち、高熱によるバスバー1の損傷)を効果的に抑制することができる。
なお、断熱性能をより効果的に向上させるためには、絶縁被膜10の膨張率が大きいほど好ましく、その膨張率は、膨張前の体積に対して10%以上であることが好ましく、13%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。
【0030】
本実施形態のバスバー1は、絶縁材料と、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方と、を含む絶縁被膜10により、導電性材料を含むバスバー本体5を被覆したものであることから、電池の通常使用時においては、バスバー1の周囲における他の部品や機器との絶縁性を確保するための絶縁材として機能しつつ、電池の異常時においても、絶縁被膜10自身が持つ高い絶縁性能により、導通部との接触距離が大きくなり、短絡のリスクを下げることができる。
【0031】
そして、絶縁被膜10中に、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方が含まれることにより、破損物が衝突しても、十分な耐衝撃性を発現する。
【0032】
特に、絶縁被膜10中の絶縁材料が250℃以上で膨張する材料である場合には、電池の異常時において、絶縁被膜10中の絶縁材料が膨張することにより、導通部との接触距離が大きくなり、短絡のリスクを更に効果的に下げることができる。
【0033】
また、絶縁性の更なる向上を考慮すれば、絶縁被膜10に用いる絶縁材料が、発泡剤及び結合剤を含むことが好ましく、より具体的には、絶縁被膜10に用いる絶縁材料が、発泡樹脂であることが好ましい。なお、絶縁材料が発泡剤及び結合剤を含むものであると、発泡した泡の中に空気が効果的に取り込まれることから、断熱性が効果的に期待できる。
【0034】
なお、250℃以上で膨張する絶縁材料の種類は特に制限はないが、絶縁材料が発泡剤を含む場合において、発泡剤は、アンモニウム塩、アミノ化合物及び塩素化パラフィンのうち少なくとも1つであることが好ましく、これらのうち少なくとも一部の組み合わせであってもよい。なお、アンモニウム塩として、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミンなどが例として挙げられる。また、アミノ化合物として、ジシアンアミド、尿素、メラミンなどが例として挙げられる。
【0035】
また、絶縁材料が結合剤を含む場合において、結合剤は、合成樹脂エマルジョン(水系)、アルキッド(溶剤系)、塩化ビニル樹脂(溶剤系)、ウレタン樹脂(溶剤系)及びエポキシ樹脂(溶剤系)のうち少なくとも1つであることが好ましく、これらのうち少なくとも一部の組み合わせであってもよい。
【0036】
さらに、結合剤としてのウレタン樹脂としては、ウレタンプレポリマーを挙げることができる。ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物とを反応させることによって得られ、分子末端にイソシアネート基を有するものである。
【0037】
ウレタンプレポリマーを構成するポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。これらの重量平均分子量は通常300~5000(好ましくは500~3000)である。
【0038】
また、ポリイソシアネート化合物としては、一般のポリウレタンの製造に用いられる脂肪族、脂環族又は芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応比率は、ポリオール化合物中の水酸基に対して、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基が過剰となる比率に設定すればよく、(NCO/OH)が1.2~2.2程度となるように設定することが好ましい。
【0040】
なお、上記発泡剤は、炭化層形成剤としても機能し得る。ここでいう炭化層形成剤は、炭化成分である上記した発泡樹脂のカーボン化を促進させる成分のことである。発泡樹脂が発泡した後、周囲を不活性ガス雰囲気として樹脂中の炭素を炭化させて炭化層を形成し、それ以上の燃焼を止める作用を有する。このような作用を有する化合物としては、上記したアンモニウム塩の1つであって、不活性ガスの発生作用が大きい、ポリリン酸アンモニウムであることが好ましい。ポリリン酸アンモニウム中のアンモニウム基から窒素ガスが生成し、空気中の酸素との接触を効果的に遮断する。
【0041】
なお、後述するように絶縁被膜10の形成のために塗布液を用いるが、ポリリン酸アンモニウムは、長時間放置しておくと塗布液内で分解が起こり、アンモニアガスを発生し、経時劣化して炭化層の形成性能の低下を起こしてしまうおそれがある。そこで、この経時変化を防ぐために、耐水性を有する樹脂で薄く被覆し、マイクロカプセル化することが好ましい。
【0042】
さらに、絶縁被膜10は、更に炭化剤を含むことが好ましい。なお、炭化剤は、炭水化物及び多価アルコールのうち少なくとも1つであることが好ましく、これらのうち少なくとも一部の組み合わせであってもよい。絶縁被膜10が、上記した発泡剤及び結合剤に加え、更に炭化剤を含むことにより、例えば、発泡剤(兼、炭化形成剤)がポリリン酸アンモニウムであり、炭化剤が多価アルコールである場合に、絶縁被膜10の温度が250~300℃になったタイミングで、反応触媒としてのポリリン酸アンモニウムが分解し、生成したリン酸塩により、炭化剤である多価アルコールが分解し、更に脱水作用によって、より効果的に炭化層を形成し得る。
【0043】
なお、この反応と並行して、発泡剤であるポリリン酸アンモニウムが更に分解することで、アンモニアガス、水蒸気、炭酸ガス等が発生し、形成された炭化層を大幅に膨張させることで、断熱層を形成させる。
【0044】
また、絶縁被膜10は、上記した発泡剤、結合剤(樹脂)、炭化剤、の他にも、従来より耐熱性や難燃性の塗膜に含まれる各種の添加剤(例えば、無機粒子、有機高分子など)を含有してもよく、他の添加剤としては、難燃剤、分散剤、着色顔料(酸化チタンなど)、体質顔料が例として挙げられる。
【0045】
続いて、絶縁被膜10における発泡剤及び結合剤の合計含有量は、被膜全量の0.5~1.8kg/mであることが好ましく、0.5~0.7kg/mであることがより好ましい。発泡剤及び結合剤の合計含有量、及び、炭化剤ともに、上記したそれぞれの下限値未満では、異常時の高温や火炎に対して十分な耐熱性が得られず、上記したそれぞれの上限値を超えたとしても、更なる耐熱性の向上を見込めない。
【0046】
また、絶縁被膜10は、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方(有機繊維、無機繊維、更にはこれら繊維からなる織布又は不織布等)を含む。なお、繊維状材料として、繊維片やウィスカーなど、種々の形状のものが使用可能である。また、有機繊維と無機繊維は、それぞれ単独でも、また組み合わせて使用してもよく、本開示でいう「有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方」は、有機質の繊維状材料が単独の場合、無機質の繊維状材料が単独の場合、有機質の繊維状材料と無機質の繊維状材料の併用の場合のいずれも含む意味である。
【0047】
有機繊維には制限はなく、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリアミド系、フッ素系など、種々の合成繊維を使用できる。中でも、耐熱性に優れ、ヤング率が高いものが好ましく、具体的には、ポリフェニレンスルファイド系、ポリアクリロニトリル系を用いることが好ましい。なお、これらの繊維はそれぞれ単独でも、複数種を組みわせてもよい。
【0048】
また、有機繊維としては、高融点の芯部と低融点の鞘部とを有する芯鞘構造のバインダ繊維を用いてもよい。高融点の芯部と低融点の鞘部とを有する芯鞘構造のバインダ繊維を用いることにより、芯部を骨格として高い強度を得ることができるとともに、電池の異常時における高温や火炎に対して鞘部が溶融して軟化することで、ネットワークを形成し、破損物の衝突を緩和する効果が期待される。
【0049】
このような芯鞘構造のバインダ繊維としては、芯鞘構造を有し、芯部を構成する第1の有機材料の融点が、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも高いものであれば、特に限定されない。芯部となる第1の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種を選択することができる。また、鞘部となる第2の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種を選択することができる。
【0050】
なお、上記のような芯鞘構造を有するバインダ繊維は、一般的に市販されており、芯部と鞘部を構成する材質は、同一でも互いに異なっていてもよい。芯部及び鞘部が同一の材質であって、異なる融点を有するバインダ繊維の例としては、例えば、芯部及び鞘部がポリエチレンテレフタレートからなるもの、ポリプロピレンからなるもの、ナイロンからなるもの等が挙げられる。芯部及び鞘部が互いに異なる材質からなるバインダ繊維の例としては、芯部がポリエチレンテレフタレートからなり、鞘部がポリエチレンからなるもの、芯部がポリプロピレンからなり、鞘部がポリエチレンからなるもの等が挙げられる。
【0051】
また、無機繊維にも制限はなく、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、リフラクトリーセラミック繊維、バサルトファイバ、ソルブルファイバなど、種々の無機繊維を使用できる。なお、これらの繊維はそれぞれ単独でも、複数種を組みわせてもよい。中でも、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維を用いることがより好ましい。また、これらの繊維は、結晶質でも、非晶質であってもよいが、柔軟性の観点から非晶質であることが好ましい
なお、これらの繊維は、ガラス転移点が800℃以下であって、上記した高融点の芯部と低融点の鞘部とを有する芯鞘構造のバインダ繊維と同様、電池の異常時における高温や火炎に対して、繊維の表面が溶融して軟化することで、ネットワークを形成し、破損物の衝突を緩和する効果が期待される。
【0052】
なお、上記した有機繊維と無機繊維を組み合わせて用いると、電池の異常時における比較的低温時には、有機繊維の表面の軟化によるネットワークが作用し、電池の異常時における比較的高温時には、無機繊維の表面の軟化によるネットワークが作用して、広範囲の温度領域でのネットワーク形成を確保することが可能となり、更なる破損物の衝突を緩和する効果が期待される。特に、芯鞘構造を有するバインダ繊維、ガラス繊維のような無機繊維を併用することが、上記作用効果を高く期待できる点で好ましい。
【0053】
また、ガラスクロス、シリカクロス、アルミナクロスなどのような織布や、ガラス不織布のような不織布を使用することで、破損物が衝突に対する、更なる十分な耐衝撃性を発現することができる。
【0054】
さらに、上記したガラス転移点が800℃以下のような各繊維に加え、更に高耐熱な繊維、例えば、ガラス転移点が1000℃以上の無機繊維を加えてもよい。このような繊維として、具体的には、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維、鉱物系繊維、ジルコニア繊維を好適に用いることができる。また、これらの繊維はそれぞれ単独でも、複数種を組みわせてもよい。
【0055】
ガラス転移点が1000℃以上の無機繊維は、電池の異常時に、ガラス転移点が800℃以下の無機繊維が軟化や溶融しても、絶縁被膜10内に残存し、絶縁被膜10としての形状を維持し続けることができる。また、ガラス転移点が1000℃以上の無機繊維間の微小な空間、更には溶融せずに残存しているガラス転移点が800℃以下の無機繊維があると、これらとの間の微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた断熱性能を保持することができる。
【0056】
繊維状材料の絶縁被膜10における含有量は、被膜全量の3~20体積%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。含有量が3体積%未満では、電池の異常時の破損物の衝突に対して、十分な耐衝撃性が得られない。一方、含有量が20体積%を超えても、更なる耐衝撃性の向上を見込めないばかりでなく、後述するように絶縁薄膜10の形成のために塗布液を用いるが、塗布液の粘性が高くなりすぎて、絶縁被膜10の形成に支障をきたす。
【0057】
また、絶縁被膜10の膜厚は、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましい。後述する試験例に示すように、膜厚が0.3mm未満では、電池の異常時における高温や火炎に対して十分な耐熱性が得られない。なお、膜厚の上限には制限はなないが、必要以上に厚くなったとしても耐熱性の更なる向上は見込めなくなり、むしろ絶縁被膜10に亀裂が生じるなど膜質に不具合が見られるようになるため、膜厚の上限としては2.0mmが適当である。
【0058】
[バスバーの製造方法]
バスバー1を製造するには、まず、少なくとも絶縁材料、好ましくは発泡剤及び結合剤、更に好ましくは炭化剤、そして、有機質の繊維状材料及び無機質の繊維状材料のうち一方又は両方、更に、必要に応じて、その他の添加剤を秤量し、分散媒としてのシンナーに加え、十分に混合して塗布液を調製する。続いて、バスバー本体5における接続孔6a,6b(図1参照)の周囲をマスキングし、上記塗布液を塗布した後、塗膜を乾燥させて、本実施形態に係る絶縁被膜10を形成する。なお、塗布方法には制限はなく、刷毛やロールコータ、スプレー等を用いて塗布したり、塗布液にバスバー本体5を浸漬するなど種々の方法が可能である。
なお、上記絶縁材料として、250℃以上で膨張する材料を用いることが、上述した理由により好ましい。
【0059】
また、絶縁被膜10を形成する前において、バスバー本体5の表面に、防錆用途向けの下塗り材を所定の厚みになるように刷毛を用いて塗布した後、塗膜を乾燥させて、下塗り塗膜を形成し、その下塗り塗膜の上に、絶縁被膜10を形成するのであってもよい。
【0060】
塗布量としては、乾燥後の膜厚が0.3mm以上、好ましくは0.4mm以上となるように調整する。
【0061】
ここで、上記でいう乾燥とは、加熱処理による塗膜の硬化処理のみならず、常温での自然乾燥による塗膜の硬化処理も含まれる。また、乾燥に際して、絶縁材料が発泡して膨張しない温度、例えば硬化処理を促進させるために100℃程度に加熱してもよい。
【0062】
なお、上記特許文献1のように雲母シートを巻き付ける方法では、巻き付け作業が必要であり、特に屈曲部5aや湾曲部に巻きムラや隙間が生じないようにするには、巻き付け作業に手間がかかる。また、振動などにより隙間が生じたり、粘着剤が剥離することなどが想定される。しかし、本発明では塗布により絶縁被膜10を形成するため、そのような問題は起こらない。
【0063】
なお、バスバー1は、発熱すると導電率が低下するため、それが適用される電池セルや電池パック(電池モジュール)の性能を低下させるおそれがあるが、本実施形態に係るバスバー1の製造方法のような、上記塗布液を塗布することにより絶縁被膜10を形成する方法にあっては、絶縁被膜10を薄く形成することが可能であって、電池の通常使用時におけるバスバー1の効果的な放熱により、電池セルや電池モジュール全体の性能低下を軽減させることができる。
【0064】
また、絶縁被膜10が薄膜化できることにより、バスバー1全体が占める体積が大きくなりすぎず、電池パック内のバッテリースペースを有効に活用でき、電池パックの容量向上にも貢献し得る。
【0065】
[蓄電装置]
図3に示すように、蓄電装置100は、複数の電池セル110を、電池ケース120に収容したものである。そして、隣接する電池セル110と電池セル110とを上記バスバー1で接続している。
【0066】
バスバー1は、上記絶縁被膜10で被覆したものであり、ある電池セル110が熱暴走を起こしても、バスバー1を保護できるとともに、バスバー1を介して隣接する電池セル110への熱暴走の連鎖を防ぐことができる。
よって、本実施形態の蓄電装置は、このようなバスバー1により複数の電池セル110やモジュール(図示せず)を接続しているため、異常時においても高い安全性を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 バスバー
5 バスバー本体
6a,6b 接続孔
10 絶縁被膜
100 蓄電装置
110 電池セル
111 電極
120 電池ケース
図1
図2
図3