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特開2024-49226床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049226
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240402BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240402BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240402BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04G23/02 H
E04B1/70 C
E04B1/76 500K
E04B1/76 400H
E04B1/76 500D
E04B5/43 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155567
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 美和子
【テーマコード(参考)】
2E001
2E176
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DD01
2E001FA12
2E001FA21
2E001GA06
2E001HD03
2E001LA04
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC01
2E001ND01
2E176AA03
2E176AA21
2E176BB25
(57)【要約】
【課題】建物の床下空間に断熱改修部を好適に設けることができる床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法を提供する。
【解決手段】建物の床下空間を規定する床部40と、床下空間と屋外空間との間の換気経路50(既存換気経路)を規定する換気経路規定部と、床下空間に設けられる断熱改修部100と、を具備する床下断熱改修構造であって、断熱改修部100は、床部40の下側面に吹き付けられて形成される新規主断熱部130(第一新規断熱部)と、新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受ける受け材120と、を具備し、受け材120は、床部40の下側面に取り付けられ、新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受ける一側部と新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受けない他側部とを区画すると共に、他側部において換気経路50(既存換気経路)の少なくとも一部を確保する第三部分(区画部)を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下空間を規定する床部と、
前記床下空間と屋外空間との間の既存換気経路を規定する換気経路規定部と、
前記床下空間に設けられる断熱改修部と、
を具備する床下断熱改修構造であって、
前記断熱改修部は、
前記床部の下側面に吹き付けられて形成される第一新規断熱部と、
前記第一新規断熱部を受ける受け材と、
を具備し、
前記受け材は、
前記床部の下側面に取り付けられ、前記第一新規断熱部を受ける一側部と前記第一新規断熱部を受けない他側部とを区画すると共に、前記他側部において前記既存換気経路の少なくとも一部を確保する区画部を有する、
床下断熱改修構造。
【請求項2】
前記断熱改修部は、
前記受け材の前記他側部において、前記区画部を介して前記第一新規断熱部と屋内外方向に連続するように設けられた第二新規断熱部を具備する、
請求項1に記載の床下断熱改修構造。
【請求項3】
前記受け材は、
前記第二新規断熱部を載置可能な載置部を有する、
請求項2に記載の床下断熱改修構造。
【請求項4】
前記受け材は、
前記床部の下側面と前記第一新規断熱部との間に挟持される挟持部を有する、
請求項1に記載の床下断熱改修構造。
【請求項5】
前記床下空間を規定すると共に、前記換気経路規定部に含まれる基礎をさらに具備し、
前記区画部は、
少なくとも一部分が前記基礎の天端の上方に設けられる、
請求項1に記載の床下断熱改修構造。
【請求項6】
建物の床下空間を規定する床部と、
前記床下空間と屋外空間との間の既存換気経路を規定する換気経路規定部と、
を有する建物において、
前記床下空間に断熱改修部を設ける床下断熱改修方法であって、
前記床部の下側面に吹き付けて第一新規断熱部を形成する第一工程と、
前記第一新規断熱部を受ける受け材を前記第一工程の前に取り付ける第二工程と、
を具備し、
前記受け材は、
前記床部の下側面に取り付けられ、前記第一新規断熱部を受ける一側部と前記第一新規断熱部を受けない他側部とを区画すると共に、前記他側部において前記既存換気経路の少なくとも一部を確保する区画部を有する、
床下断熱改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床下空間に断熱改修部を設ける床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物に断熱改修部を設ける断熱改修構造及び断熱改修方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1においては、下地板と、当該下地板の屋外側に配置されたモルタル層と、を有する既存外壁に、平板状の部材である新規断熱部(断熱改修部)を取り付けた断熱改修構造が開示されている。
【0004】
ここで新規断熱部としては、特許文献1に記載のように予め形作られた部材を取り付けるのではなく、例えば泡状の発泡ウレタンフォームを現場で吹き付けて、これを硬化させることにより形成することもできる。これによれば、例えば床下空間のように狭い(比較的施工が難しい)現場であっても、比較的容易に新規断熱部を形成することができる。
【0005】
なお床下空間においては、屋外空間と連通し、床下空間の換気を行う換気経路が設けられる場合がある。例えば、特許文献2に記載の如くである。特許文献2においては、基礎の天端付近の土台部分に、屋外空間と連通した換気経路(空気流路)を設けて、床下空間の換気を行っている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のような床下空間において、発泡ウレタンフォームを基礎際まで吹き付けた場合、換気経路を塞いでしまい床下空間の換気性が損なわれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6-33670号公報
【特許文献2】特開2004-27828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、建物の床下空間に断熱改修部を好適に設ける床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、建物の床下空間を規定する床部と、前記床下空間と屋外空間との間の既存換気経路を規定する換気経路規定部と、前記床下空間に設けられる断熱改修部と、を具備する床下断熱改修構造であって、前記断熱改修部は、前記床部の下側面に吹き付けられて形成される第一新規断熱部と、前記第一新規断熱部を受ける受け材と、を具備し、前記受け材は、前記床部の下側面に取り付けられ、前記第一新規断熱部を受ける一側部と前記第一新規断熱部を受けない他側部とを区画すると共に、前記他側部において前記既存換気経路の少なくとも一部を確保する区画部を有するものである。
【0011】
請求項2においては、前記断熱改修部は、前記受け材の前記他側部において、前記区画部を介して前記第一新規断熱部と屋内外方向に連続するように設けられた第二新規断熱部を具備するものである。
【0012】
請求項3においては、前記受け材は、前記第二新規断熱部を載置可能な載置部を有するものである。
【0013】
請求項4においては、前記受け材は、前記床部の下側面と前記第一新規断熱部との間に挟持される挟持部を有するものである。
【0014】
請求項5においては、前記床下空間を規定すると共に、前記換気経路規定部に含まれる基礎をさらに具備し、前記区画部は、少なくとも一部分が前記基礎の天端の上方に設けられるものである。
【0015】
請求項6においては、建物の床下空間を規定する床部と、前記床下空間と屋外空間との間の既存換気経路を規定する換気経路規定部と、を有する建物において、前記床下空間に断熱改修部を設ける床下断熱改修方法であって、前記床部の下側面に吹き付けて第一新規断熱部を形成する第一工程と、前記第一新規断熱部を受ける受け材を前記第一工程の前に取り付ける第二工程と、を具備し、前記受け材は、前記床部の下側面に取り付けられ、前記第一新規断熱部を受ける一側部と前記第一新規断熱部を受けない他側部とを区画すると共に、前記他側部において前記既存換気経路の少なくとも一部を確保する区画部を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本願発明においては、建物の床下空間に断熱改修部を好適に設けることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態に係る床下断熱改修構造を示した断面模式図。
図2】(a)同じく、第一実施形態に係る受け材の斜視図。(b)同じく、側面図。
図3】第一実施形態に係る受け材を有する場合の、図1の一部拡大図。
図4】床下断熱改修方法を示すフローチャート。
図5】(a)同じく、第二実施形態に係る受け材の斜視図。(b)同じく、側面図。
図6】第二実施形態に係る受け材を有する場合の、図1の一部拡大図。
図7】(a)同じく、第三実施形態に係る受け材の斜視図。(b)同じく、側面図。
図8】第三実施形態に係る受け材を有する場合の、図1の一部拡大図。
図9】(a)同じく、第四実施形態に係る受け材の斜視図。(b)同じく、側面図。
図10】第四実施形態に係る受け材を有する場合の、図1の一部拡大図。
図11】従来の床下構造を示した断面模式図。
図12図11の一部拡大図。
図13図12において、換気経路が塞がれた様子を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の第一実施形態に係る床下断熱改修構造について説明する。
【0020】
本実施形態に係る床下断熱改修構造とは、既存の建物の床下空間に断熱改修を行うことによって新たに形成される構造である。なお断熱改修とは、既存の建物の断熱性能を全体的に又は部分的に向上させるために行われる改修(リフォーム)である。また本実施形態では、建物として、既存の戸建住宅(以下では単に「住宅」と称する)を想定する。また本実施形態に係る断熱改修においては、後述するように、住宅の床下空間において、発泡ウレタンフォームを吹き付けて、これを硬化させることにより新規断熱部(後述する新規主断熱部130)を形成する。
【0021】
ここで、住宅の床下空間には、当該床下空間と屋外空間との換気を行うための換気構造(例えば換気経路50)が設けられる。まず以下では、図11及び図12を用いて、住宅において断熱改修が行われる前の床下空間の構造及び換気構造(以下では、これらを合わせて「床下構造」と称する)について説明する。
【0022】
図11及び図12に示すように、住宅の床下構造は、基礎10、土間スラブ20、壁部30及び床部40を具備する。
【0023】
基礎10は、鉄筋コンクリート製の布基礎である。基礎10は、根切り底に敷設された砂利や砕石等の上方に設けられる。基礎10は、屋内外方向に対して直交する横方向(図11における紙面奥側方向、以下では「横方向」と称する場合がある)の断面視で逆T字状に形成される。
【0024】
土間スラブ20は、床下空間の下部全体を覆うように形成される。土間スラブ20の下側面(土間スラブ20と地面との間)には、地面の湿気が住宅に入り込むのを抑制するため、防湿シート(不図示)が設けられる。
【0025】
壁部30は、住宅の室内空間と屋外空間とを区画する。壁部30は、土台部31、パネルフレーム32、外壁パネル33及び壁板材34を具備する。
【0026】
土台部31は、壁部30の下端部に設けられる。土台部31は、後述するように換気経路50の一部を構成する。土台部31は、土台35及び土台カバー36を具備する。
【0027】
土台35は、基礎10の天端(上側面)に載置され、ボルト等により固定される。土台35は、横方向視で屋内側へ開口を向けた略コの字状に形成される。土台35は、横方向に連続するように複数設けられ(不図示)、互いに間隔をあけて配置される。
【0028】
土台カバー36は、土台35の屋外側に設けられる。土台カバー36は、鋼板を折り曲げて成形することにより形成される。土台カバー36は、土台35の屋外側面に固定される土台第一カバー36aと、前記土台第一カバー36aからスペーサを介して屋外側に離間して設けられる土台第二カバー36bと、を有する。
【0029】
パネルフレーム32は、屋内外方向視で四角枠状の金属製のフレームである。パネルフレーム32は、土台35の上面に載置され、ボルト等により固定される。パネルフレーム32の内側には、グラスウール等の断熱材が設けられる。
【0030】
外壁パネル33は、屋外側へ露出する平板状の部材である。外壁パネル33は、パネルフレーム32から下地材を介して屋外側に設けられる。外壁パネル33の下方には、土台カバー36が配置される。
【0031】
壁板材34は、屋内側(室内)に露出する平板状の部材である。壁板材34の屋内側面には壁紙が貼付される。壁板材34は、その板面を屋内外方向へ向けて設けられ、仕切桟37等にビスにより固定される。
【0032】
床部40は、住宅の屋内空間において、室内空間と床下空間とを上下に区画する。床部40は、大引41及び床パネル部42を具備する。
【0033】
大引41は、鋼製の横架材である。大引41は、長手方向一端部が基礎10の天端に載置され、ボルトや金具44等により固定される。大引41は、鋼製の床束43により土間スラブ20の上方に支持される。大引41は、複数設けられ、横方向に互いに間隔をあけて並設される(不図示)。
【0034】
床パネル部42は、上側面が屋内側(室内)に露出する平板状の部材である。床パネル部42は、大引41に載置される。床パネル部42は、複数の部材(具体的には、カラーフロア、合板、床パネル、根太及び断熱材等)により構成される。
【0035】
上述の如く構成された床下構造においては、基礎10、土間スラブ20及び床部40により規定(区画)された空間が、床下空間として形成される。また床下空間は、土台部31等を介して屋外空間と連通される。具体的には、床下空間は、(1)土台カバー36の土台第一カバー36aと土台第二カバー36bとの互いの隙間、(2)横方向において互いに隣接する土台35の隙間、(3)床部40の床パネル部42と基礎10の天端との互いの隙間等を介して、屋外空間と連通される。すなわち、本実施形態においては、少なくとも上記3つの隙間を含む、土台第一カバー36a、土台第二カバー36b、土台35、床パネル部42及び基礎10等により規定された空間が、換気経路50として形成される。図11に示す太い2点鎖線が示す矢印は、換気経路50を通って屋外空間の空気が床下空間に流入する様子を示している。
【0036】
以下では、図1から図4を用いて、第一実施形態に係る床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法について説明する。
【0037】
図1及び図3に示すように、床下断熱改修構造は、上述の如き床下構造に加えて、断熱改修により設けられた断熱改修部100を具備する。断熱改修部100には、新規サブ断熱部110、受け材120及び新規主断熱部130が含まれる。また図4に示すように、床下断熱改修方法は、新規サブ断熱部110を受け材120に設ける第一の工程S11、受け材120を床下構造に設ける第二の工程S12、及び、新規主断熱部130を床下構造に設ける第三の工程S13を具備する。
【0038】
新規サブ断熱部110は、床下空間の従たる断熱材である。新規サブ断熱部110は、ポリスチレンフォーム等により構成された断熱性を有する部材である。新規サブ断熱部110は、ブロック状に形成される。具体的には、新規サブ断熱部110は、長手方向を横方向へ向けた略直方体形状に形成される。新規サブ断熱部110の上下方向の長さは、前記(3)床部40の床パネル部42と基礎10の天端との互いの隙間、の上下方向の長さよりも短く形成される。
【0039】
受け材120は、金属製の薄い平板状の部材により形成される。受け材120は、第一部分121、第二部分122及び第三部分123を具備する。
【0040】
第一部分121は、受け材120の上端部を構成する。第一部分121は、板面を上下方向へ向けて設けられる。第一部分121は、平面視で略矩形状に形成され、長手方向を横方向へ向けて設けられる。
【0041】
第二部分122は、受け材120の下端部を構成する。第二部分122は、板面を上下方向へ向けて設けられる。第二部分122は、平面視で略矩形状に形成され、長手方向を横方向へ向けて設けられる。第二部分122の屋外側端部は、第一部分121の屋内側端部と平面視で重複するように形成される。
【0042】
第三部分123は、板面を屋内外方向へ向けて設けられる。第三部分123は、屋内外方向視で略矩形状に形成され、長手方向を横方向へ向けて設けられる。第三部分123は、第一部分121及び第二部分122を連結する。すなわち、第三部分123の上端部は、第一部分121の屋内側端部と接続される。また第三部分123の下端部は、第二部分122の屋外側端部と接続される。
【0043】
上述の如く構成された新規サブ断熱部110及び受け材120においては、新規サブ断熱部110が、受け材120に設けられる(床下断熱改修方法の第一の工程S11)。具体的には、新規サブ断熱部110の上側面及び屋内側面が、両面テープや接着剤等を用いて受け材120の第一部分121の下側面及び第三部分123の屋外側面にそれぞれ接着される。こうして、新規サブ断熱部110は、上側面及び屋内側面がそれぞれ受け材120に当接した状態で固定される。
【0044】
また受け材120が、床部40の床パネル部42に設けられる(床下断熱改修方法の第二の工程S12)。具体的には、受け材120の第一部分121の上側面が、両面テープや接着剤等を用いて床パネル部42の下側面に接着される。この際、受け材120の第一部分121の屋外側端部は、横方向の断面図において、壁部30の屋内側面(壁板材34)及び基礎10の屋内側面よりも、屋外側の位置に配置される。
【0045】
また受け材120の第三部分123は、基礎10の屋内側面よりも屋内方へ離間した位置に配置される。これにより、受け材120が取り付けられた状態では、基礎10の天端と新規サブ断熱部110との互いの隙間、及び、基礎10の屋内側面と第三部分123との互いの隙間により、換気経路50と床下空間とが連通される。すなわち、受け材120が基礎10際に設けられているが、換気経路50の全てを塞ぐのではなく、当該換気経路50の少なくとも一部を確保している(図3参照)。
【0046】
なお便宜上、図示を省略しているが、受け材120は複数設けられ、床下空間の周囲を略隙間無く取り囲むように設けられる。
【0047】
新規主断熱部130は、床下空間の主たる断熱材である。新規主断熱部130は、発泡ウレタンフォームにより構成された断熱性を有する部材である。新規主断熱部130は、泡状の発泡ウレタンフォームが床部40に下方から吹き付けられると共に、これを硬化させることにより形成される(床下断熱改修方法の第三の工程S13)。吹き付けられた発泡ウレタンフォームは接着性を有するため、新規主断熱部130は、床部40の下側面及び受け材120の第三部分123の屋内側面に略密着した状態で形成される。こうして、新規主断熱部130及び新規サブ断熱部110は、受け材120の第三部分123を介して屋内外方向に互いに連続するように設けられる。
【0048】
このような構成により、発泡ウレタンフォームが吹き付けられる場合に、換気経路50が塞がれるのを受け材120の第三部分123により規制することができる。すなわち、仮に受け材120が設けられない場合、発泡ウレタンフォームが吹き付けられると、図13に示すように、新規主断熱部130(発泡ウレタンフォーム)により換気経路50が塞がれる場合がある。しかし、受け材120の第三部分123により発泡ウレタンフォームが受けられるため、新規主断熱部130は当該第三部分123よりも屋内側にのみ形成される。このように、発泡ウレタンフォームの吹き付けにもかかわらず、受け材120により換気経路50の少なくとも一部が確保されるため、床下空間の換気が損なわれるのを抑制することができる。
【0049】
また、上述の如く新規サブ断熱部110は、屋内側面が受け材120の第三部分123に当接した状態で固定されるため、発泡ウレタンフォームが吹き付けられる場合、当該第三部分123が変形するのを抑制することができる。
【0050】
また、上述の如く、新規主断熱部130及び新規サブ断熱部110が受け材120の第三部分123を介して屋内外方向に互いに連続するように設けられる。こうして、断熱欠損が発生するのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。また新規サブ断熱部110の屋外側端部は、壁部30の屋内側面及び基礎10の屋内側面よりも屋外側の位置に配置されるため、断熱性能の向上を効果的に図ることができる。
【0051】
次に、図5及び図6を用いて、第二実施形態に係る床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法について説明する。なお以下では、第一実施形態との相違点について説明し、共通する構成及び効果については適宜説明を省略する。
【0052】
第二実施形態に係る床下断熱改修構造は、上述の如き床下構造に加えて、断熱改修により設けられた断熱改修部200を具備する。断熱改修部200には、第一実施形態に係る受け材120に代えて、受け材220が設けられる。
【0053】
図5及び図6に示すように、受け材220は、第一部分221、第二部分222及び第三部分223を具備する。
【0054】
第一部分221及び第二部分222は、互いに受け材220の上端部を構成し、屋内外方向に連続するように(1枚の平板状に)形成される。第一部分221は、受け材220の上端部のうち屋外側の部分を構成する。第二部分222は、受け材220の上端部のうち屋内側の部分を構成する。
【0055】
第三部分223は、板面を屋内外方向へ向けて設けられる。第三部分223は、屋内外方向視で略矩形状に形成され、長手方向を横方向へ向けて設けられる。第三部分223は、第一部分221及び第二部分222の境界部分から下方へ延びるように形成される。こうして、受け材220は、横方向視でT字状に形成される。
【0056】
上述の如く構成された受け材220においては、床部40の床パネル部42に設けられる場合、第一実施形態と同様に、第一部分221及び第二部分222の上側面が床パネル部42の下側面に接着される。さらに第二部分222が屋内側(すなわち、作業者が作業可能な空間側)へ露出するため、作業者がビス等を用いて床パネル部42に固定することができる。
【0057】
さらに、第二部分222は、新規主断熱部130を用いて床パネル部42に取り付けられる。具体的には、受け材220が、床パネル部42に設けられた状態では、第二部分222が、第三部分223よりも屋内側(反屋外側)に設けられる。この状態において、発泡ウレタンフォームが吹き付けられて新規主断熱部130が形成されると(床下断熱改修方法の第三の工程S13)、第二部分222が床パネル部42と新規主断熱部130との間に挟持される。これにより、受け材220をより強固に床部40に取り付けることができる。
【0058】
次に、図7及び図8を用いて、第三実施形態に係る床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法について説明する。なお以下では、第二実施形態との相違点について説明し、共通する構成及び効果については適宜説明を省略する。
【0059】
第三実施形態に係る床下断熱改修構造は、上述の如き床下構造に加えて、断熱改修により設けられた断熱改修部300を具備する。断熱改修部300には、第二実施形態に係る受け材220に代えて、受け材320が設けられる。
【0060】
図7及び図8に示すように、受け材320は、第一部分321、第二部分322及び第三部分323を具備する。第二部分322及び第三部分323は、第二実施形態に係る第二部分222及び第三部分223と略同様の構成を有する。
【0061】
第一部分321は、受け材320の上下中途部を構成する。第一部分321は、板面を上下方向へ向けて設けられる。第一部分321は、平面視で略矩形状に形成され、長手方向を横方向へ向けて設けられる。こうして、第一部分321は、第三部分323の上下中途部から屋外側へ延びるように形成される。
【0062】
上述の如く構成された受け材320においては、新規サブ断熱部110が受け材320に設けられる場合(床下断熱改修方法の第一の工程S11)、当該新規サブ断熱部110は第一部分321に載置した状態で当該第一部分321に接着される。これによれば、仮に新規サブ断熱部110と第一部分321との接着が剥がれた場合であっても、新規サブ断熱部110が換気経路50上に落下するのを抑制することができる。すなわち、新規サブ断熱部110により換気経路50が塞がれるのを抑制することができる。
【0063】
次に、図9及び図10を用いて、第四実施形態に係る床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法について説明する。なお以下では、第二実施形態との相違点について説明し、共通する構成及び効果については適宜説明を省略する。
【0064】
第四実施形態に係る床下断熱改修構造は、上述の如き床下構造に加えて、断熱改修により設けられた断熱改修部400を具備する。断熱改修部400には、第二実施形態に係る受け材220に代えて、受け材420が設けられる。また断熱改修部400には、第二実施形態とは異なり、新規サブ断熱部110が設けられない。
【0065】
図9及び図10に示すように、受け材420は、第一部分421及び第二部分422を具備する。第一部分421は、第二実施形態に係る第二部分222と略同様の構成を有する。
【0066】
第二部分422は、長手方向を横方向へ向けて設けられる。第二部分422は、横方向視で段差状に形成される。より詳細には、第二部分422は、第一部分421の屋外側端部から下方へ延びる部分と、当該下方の端部から屋内側へ延びる部分と、当該屋内側の端部から下方へ延びる部分と、により構成される。こうして、第二部分422は、第一部分421の下側面との間に屋内側へ開放された空間(以下では「空間423」と称する)を形成する。
【0067】
上述の如く構成された受け材420においては、床部40の床パネル部42に設けられる場合、第二実施形態と同様に、第一部分421の上側面が床パネル部42の下側面に接着される。さらに第一部分421が屋内側(すなわち、作業者が作業可能な空間側)へ露出するため、作業者がビス等を用いて床パネル部42に固定することができる。なおこの際、空間423の少なくとも一部(屋外側部分)は、基礎10の天端の上方に位置するように配置される。
【0068】
さらに、第一部分421は、第二実施形態と同様に、新規主断熱部130を用いて床パネル部42に取り付けられる。この場合、発泡ウレタンフォームが空間423の内部へ吹き付けられることにより、当該空間423の内部にも新規主断熱部130を形成することができる(床下断熱改修方法の第三の工程S13)。これによれば、新規主断熱部130の屋外側端部の位置を、第二実施形態の新規サブ断熱部110の屋外側端部の位置と略同一とすることができる。こうして、新規サブ断熱部110を設けなくとも、断熱欠損が発生するのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0069】
以上の如く、本実施形態に係る床下断熱改修構造においては、
建物の床下空間を規定する床部40と、
前記床下空間と屋外空間との間の換気経路50(既存換気経路)を規定する換気経路規定部と、
前記床下空間に設けられる断熱改修部100・200・300・400と、
を具備する床下断熱改修構造であって、
前記断熱改修部100・200・300・400は、
前記床部40の下側面に吹き付けられて形成される新規主断熱部130(第一新規断熱部)と、
前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受ける受け材120・220・320・420と、
を具備し、
前記受け材120・220・320・420は、
前記床部40の下側面に取り付けられ、前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受ける一側部(屋内側)と前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受けない他側部(屋外側)とを区画すると共に、前記他側部において前記換気経路50(既存換気経路)の少なくとも一部を確保する第三部分123・223・323、第二部分422(区画部)を有するものである。
【0070】
また、本実施形態に係る床下断熱改修方法においては、
建物の床下空間を規定する床部40と、
前記床下空間と屋外空間との間の換気経路50(既存換気経路)を規定する換気経路規定部と、
を有する建物において、
前記床下空間に断熱改修部100・200・300・400を設ける床下断熱改修方法であって、
前記床部40の下側面に吹き付けて新規主断熱部130(第一新規断熱部)を形成する第一工程と、
前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受ける受け材120・220・320・420を前記第一工程の前に取り付ける第二工程と、
を具備し、
前記受け材120・220・320・420は、
前記床部40の下側面に取り付けられ、前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受ける一側部と前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)を受けない他側部とを区画すると共に、前記他側部において前記換気経路50(既存換気経路)の少なくとも一部を確保する第三部分123・223・323、第二部分422(区画部)を有するものである。
【0071】
このような構成により、建物の床下空間に断熱改修部100・200・300・400を好適に設けることができる。
すなわち、発泡ウレタンフォームの吹き付けにもかかわらず、受け材120・220・320・420により換気経路50の少なくとも一部が確保されるため、床下空間の換気が損なわれるのを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る床下断熱改修構造においては、
前記断熱改修部100・200・300は、
前記受け材の前記他側部において、前記第三部分123・223・323(区画部)を介して前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)と屋内外方向に連続するように設けられた新規サブ断熱部110(第二新規断熱部)を具備するものである。
【0073】
このような構成により、断熱欠損が発生するのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る床下断熱改修構造においては、
前記受け材320は、
前記新規サブ断熱部110(第二新規断熱部)を載置可能な第一部分321(載置部)を有するものである。
【0075】
このような構成により、新規サブ断熱部110が換気経路50上に落下するのを抑制することができる。すなわち、新規サブ断熱部110により換気経路50が塞がれるのを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る床下断熱改修構造においては、
前記受け材220・320・420は、
前記床部40の下側面と前記新規主断熱部130(第一新規断熱部)との間に挟持される第二部分222・322、第一部分421(挟持部)を有するものである。
【0077】
このような構成により、第二部分222・322、第一部分421(挟持部)が床パネル部42と新規主断熱部130との間に挟持されため、受け材220・320・420をより強固に床部40に取り付けることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る床下断熱改修構造においては、
前記床下空間を規定すると共に、前記換気経路規定部に含まれる基礎10をさらに具備し、
前記第二部分422(区画部)は、
少なくとも一部分が前記基礎10の天端の上方に設けられるものである。
【0079】
このような構成により、新規サブ断熱部110を設けなくとも、断熱欠損が発生するのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0080】
なお、本実施形態に係る換気経路50((1)土台カバー36の土台第一カバー36aと土台第二カバー36bとの互いの隙間、(2)横方向において互いに隣接する土台35の隙間、(3)床部40の床パネル部42と基礎10の上側面との互いの隙間)は、本発明に係る換気経路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る土台第一カバー36a、土台第二カバー36b、土台35、床パネル部42及び基礎10等は、本発明に係る換気経路規定部の実施の一形態である。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、本発明の一実施形態に係る床下断熱改修構造及び床下断熱改修方法が採用される建物は戸建住宅に限定されない。また本実施形態において、断熱材として用いられる材料は任意のものを採用することができる。
【0083】
また、断熱改修部100・200・300においても、新規サブ断熱部110は必ずしも設ける必要は無い。
【符号の説明】
【0084】
40 床部
50 換気経路
100 断熱改修部
120 受け材
123 第三部分
130 新規主断熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13