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  • 特開-電動式建設機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049237
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電動式建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240402BHJP
   E02F 9/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155580
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】堀田 海斗
(72)【発明者】
【氏名】今村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】津村 浩志
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015EC02
2D015FA02
(57)【要約】
【課題】電動ファンの騒音が運転室に伝わるのを低減でき、且つ、電動ファンを保護できる電動式建設機械を提供する。
【解決手段】電動式ショベルの旋回体2は、旋回フレーム10の前部に配置された運転室11と、旋回フレーム10の後部に配置されたカウンタウエイト12と、旋回フレーム10における運転室11とカウンタウエイト12の間に配置されたバッテリ13と、バッテリ13の電力によって駆動される電動ファン26a,26bと、電動ファン26aで生起された冷却風によって作動油を冷却する熱交換器27aと、電動ファン26bで生起された冷却風によって冷却水を冷却する熱交換器27bとを備える。電動ファン26a,26bは、運転室11との間にバッテリ13が介在するように配置され、例えば左側及び右側がカウンタウエイト12で覆われる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体の前側に連結された作業装置とを備え、
前記旋回体は、旋回フレームと、前記旋回フレームの前部に配置された運転室と、前記旋回フレームの後部に配置されたカウンタウエイトと、前記旋回フレームにおける前記運転室と前記カウンタウエイトの間に配置されたバッテリと、前記バッテリの電力によって駆動される電動モータと、前記電動モータで駆動され、作動油を加圧する油圧ポンプと、前記バッテリの電力によって駆動される電動ファンと、前記電動ファンで生起された冷却風によって作動油又は冷却水を冷却する熱交換器とを備えた、電動式建設機械において、
前記電動ファンは、前記運転室との間に前記バッテリが介在するように配置され、上側、下側、左側、及び右側のうちの少なくとも1つが前記カウンタウエイトで覆われたことを特徴とする電動式建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式建設機械において、
前記電動ファンは、左側及び右側が前記カウンタウエイトで覆われたことを特徴とする電動式建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の電動式建設機械において、
前記カウンタウエイトは、上方から見て全体の形状が弓形であることを特徴とする電動式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動式の建設機械は、エンジンと、エンジンで駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプで加圧された作動油によって駆動する油圧アクチュエータと、エンジンの出力軸に連結されたファンと、ファンで生起された冷却風によって作動油又は冷却水を冷却する熱交換器とを備える。一方、電動式建設機械は、エンジンに代えて、電動モータを備え、エンジンの出力軸に連結されたファンに代えて、電動ファンを備える。電動ファンは、エンジンの出力軸に連結されたファンと比べ、レイアウトの自由度が大きく、速度制御が行いやすい。
【0003】
特許文献1は、電動式建設機械の一つである電動式ショベルを開示する。この電動式ショベルは、走行体と、走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前側に連結された作業装置とを備える。旋回体は、旋回フレームと、旋回フレームの前部に配置されたキャブタイプの運転室と、旋回フレームの後部に配置されたバッテリと、旋回フレームにおける運転室とバッテリの間に形成されたメイン収納室と、メイン収納室に配置された電動モータ、油圧ポンプ、作動油タンク、及び熱交換器と、メイン収納室の開口部を開閉する開閉カバーと、開閉カバーに取付けられた電動ファンとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-063339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動式建設機械では、エンジンが搭載されないので、電動ファンの騒音が目立ちやすい。電動ファンの騒音が電動式建設機械を構成する構造体を伝搬して運転室に到達すれば、運転室内の運転者を阻害する。電動ファンと運転室の間に介在する構造体は、音の減衰度を高めるため、振動が発生しにくい構造、すなわち重量物であることが好ましい。特許文献1の電動式ショベルでは、電動ファンと運転室の間に作動油タンク等が介在する。しかし、作動油タンクは、振動が発生しにくい構造、あるいは重量物であるとは言いきれない。そのため、電動ファンの騒音が運転室に伝わるのを低減する点で改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献1の電動式ショベルでは、電動ファンが開閉カバーで覆われている。そのため、物体が飛来して衝突する場合や、旋回体の旋回によって周囲の物体と衝突する場合を考慮すれば、電動ファンを保護する点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動ファンの騒音が運転室に伝わるのを低減でき、且つ、電動ファンを保護できる電動式建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、走行体と、前記走行体の上側に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体の前側に連結された作業装置とを備え、前記旋回体は、旋回フレームと、前記旋回フレームの前部に配置された運転室と、前記旋回フレームの後部に配置されたカウンタウエイトと、前記旋回フレームにおける前記運転室と前記カウンタウエイトの間に配置されたバッテリと、前記バッテリの電力によって駆動される電動モータと、前記電動モータで駆動され、作動油を加圧する油圧ポンプと、前記バッテリの電力によって駆動される電動ファンと、前記電動ファンで生起された冷却風によって作動油又は冷却水を冷却する熱交換器とを備えた、電動式建設機械において、前記電動ファンは、前記運転室との間に前記バッテリが介在するように配置され、上側、下側、左側、及び右側のうちの少なくとも1つが前記カウンタウエイトで覆われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動ファンの騒音が運転室に伝わるのを低減でき、且つ、電動ファンを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における電動式ショベルの全体構造を表す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における電動式ショベルの旋回体の機器配置を表す上面図である。
図3】本発明の一実施形態における電動式ショベルの旋回体の機器配置を表す側面図である。
図4】本発明の一実施形態における電動式ショベルの旋回体の機器配置を表す後面図である。
図5】本発明の一実施形態における電動式ショベルの駆動装置の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における電動式ショベルの全体構造を表す斜視図である。図2図4は、本実施形態における電動式ショベルの旋回体の機器配置を表す上面図、側面図、及び後面図である。なお、図2においては、便宜上、幾つかの機器の図示を省略している。
【0013】
本実施形態の電動式ショベルは、走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2と、旋回体2の前側に連結された作業装置3とを備える。走行体1は、走行モータ(図示せず)の回転によって走行し、旋回体2は、旋回モータ(図示せず)の回転によって旋回する。
【0014】
作業装置3は、旋回体2の前部に上下方向に回動可能に連結されたブーム4と、ブーム4の先端部に上下方向に回動可能に連結されたアーム5と、アーム5の先端部に上下方向に回動可能に連結されたバケット6(作業具)とを備える。ブーム4は、ブームシリンダ7の伸縮によって回動し、アームは、アームシリンダ8の伸縮によって回動し、バケット6は、バケットシリンダ9(作業具シリンダ)の伸縮によって回動する。バケット6は、他の作業具と交換可能である。
【0015】
旋回体2は、下部基礎構造をなす旋回フレーム10と、旋回フレーム10の前部に配置されキャブタイプの運転室11と、旋回フレーム10の後部に配置されたカウンタウエイト12と、旋回フレーム10における運転室11とカウンタウエイト12の間に配置されたバッテリ(例えばリチウムイオンバッテリ)13とを備える。運転室11内には、運転者が操作可能な複数の操作装置(図示せず)が設けられている。
【0016】
電動式ショベルは、複数の操作装置の操作に応じて複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)を駆動する駆動装置を備える。図5は、本実施形態における電動式ショベルの駆動装置の構成のうち、ブームシリンダ7に係わる構成を表す図である。
【0017】
本実施形態の駆動装置は、バッテリ13の直流電力を交流電力に変換するインバータ14と、インバータ14で変換された電力によって駆動される電動モータ15と、電動モータ15で駆動される油圧ポンプ16及びパイロットポンプ17と、油圧ポンプ16からブームシリンダ7への圧油の流れ(詳細には、方向及び流量)を制御する制御弁18と、制御弁18を切換える操作装置19とを備える。操作装置19は、上述した通り、旋回体2の運転室11に搭載され、インバータ14、電動モータ15、油圧ポンプ16、パイロットポンプ17、及び制御弁18は、旋回体2の他の部分に搭載されている。
【0018】
操作装置19は、運転者が操作可能な操作レバー20と、操作レバー20の一方側の操作量に応じてパイロットポンプ17の吐出圧を減圧してパイロット圧を生成するパイロット弁21aと、操作レバー20の反対側の操作量に応じてパイロットポンプ17の吐出圧を減圧してパイロット圧を生成するパイロット弁21bとを有する。
【0019】
運転者が操作レバー20を一方側に操作すると、その操作量に応じてパイロット弁21aで生成されたパイロット圧が制御弁18の受圧部22aへ出力される。これにより、制御弁18が図示右側の切換位置に切換えられ、油圧ポンプ16で加圧された圧油が制御弁18を介しブームシリンダ7のロッド側に供給されて、ブームシリンダ7が縮短する。その結果、ブーム4が下がる。
【0020】
運転者が操作レバー20を反対側に操作すると、その操作量に応じてパイロット弁21bで生成されたパイロット圧が制御弁18の受圧部22bへ出力される。これにより、制御弁18が図示左側の切換位置に切換えられ、油圧ポンプ16で加圧された圧油が制御弁18を介しブームシリンダ7のボトム側に供給されて、ブームシリンダ7が伸長する。その結果、ブーム4が上がる。
【0021】
上述の図2図4に戻り、カウンタウエイト12は、左右方向に分割されたカウンタウエイト分割体23a,23bで構成されており、上方から見て全体の形状が弓形(言い換えれば、円弧とその両端を結ぶ線分とからなる形)である。カウンタウエイト分割体23a,23bは、例えば、鋼鉄製の容器内に重量コンクリート等を充填して構成されている。カウンタウエイト分割体23a,23bの間には収納室24が形成されており、収納室24の上側及び後側を覆うようにカバー(図示せず)が取付けられている。
【0022】
ここで本実施形態の特徴として、カウンタウエイト12の収納室24は、熱交換器ユニット25a,25bを収納する。熱交換器ユニット25aは、バッテリ13の電力によって駆動される電動ファン26aと、電動ファン26aで生起された冷却風によって作動油を冷却する熱交換器(オイルクーラ)27aとで構成されている。熱交換器ユニット25bは、バッテリ13の電力によって駆動される電動ファン26bと、電動ファン26bで生起された冷却風によって冷却水を冷却する熱交換器(ラジエータ)27bとで構成されている。
【0023】
以上のように構成された本実施形態において、電動ファン26a,26bは、運転室11との間にバッテリ13が介在するように配置され、左側及び右側(言い換えれば、旋回体2の幅方向の両側)がカウンタウエイト分割体23a,23bで覆われている(図2図4参照)。バッテリ13は、例えば作動油タンクと比べ、振動が発生しにくい構造、すなわち重量物である。そのため、電動ファン26a,26bの騒音が運転室11に伝わるのを低減できる。また、電動ファン26a,26bの左側及び右側がカウンタウエイト分割体23a,23bで覆われている。そのため、物体が飛来して衝突する場合や、旋回体2の旋回によって周囲の物体と衝突する場合でも、電動ファン26a,26bを保護できる。
【0024】
なお、上記一実施形態において、カウンタウエイト12は、カウンタウエイト分割体23a,23bに分割され、電動ファン26a,26bは、左側及び右側がカウンタウエイト分割体23a,23bで覆われた場合を例にとって説明したが、これに限られない。カウンタウエイト12は、分割されていなくてもよいし、電動ファン26a,26bは、上側、下側、左側、及び右側のうちの少なくとも1つがカウンタウエイト12で覆われていればよい。これにより、保護の程度の違いがあるものの、電動ファン26a,26bを保護できる。
【0025】
なお、以上において、本発明の適用対象として電動式ショベルを例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、電動式ショベル以外の他の電動式建設機械に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
10 旋回フレーム
11 運転室
12 カウンタウエイト
13 バッテリ
15 電動モータ
16 油圧ポンプ
26a,26b 電動ファン
27a,27b 熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5