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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049240
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】保護素子及び保護素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20240402BHJP
   H01H 69/02 20060101ALI20240402BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H01H37/76 P
H01H69/02
H02H7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155584
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】幸保 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】川津 雅巳
【テーマコード(参考)】
5G053
5G502
【Fターム(参考)】
5G053AA01
5G053BA08
5G053CA01
5G053EA06
5G053EC05
5G502AA02
5G502BA08
5G502BB10
5G502BC07
5G502BD02
5G502CC04
5G502EE06
5G502FF08
5G502JJ01
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの断面積の大型化によっても、速やかに且つ確実に溶断できる保護素子を提供する。
【解決手段】保護素子1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられた発熱体4と、発熱体4を覆う絶縁層5と、絶縁層5上に設けられた中間電極6と、中間電極6に接続されたヒューズエレメント3と、ヒューズエレメント3上に設けられたフラックス7を有し、中間電極6は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、発熱体4と同等以上の長さを有し、且つ先端部が発熱体4より張り出し、フラックス7は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、ヒューズエレメント3を超えて、少なくとも発熱体4と同位置まで塗布されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の表面側に設けられた発熱体と、
上記発熱体を覆う絶縁層と、
上記絶縁層上に設けられた中間電極と、
上記中間電極に接続されたヒューズエレメントと、
上記ヒューズエレメント上に設けられたフラックスを有し、
上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、
上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されている、保護素子。
【請求項2】
上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向において、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されている、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
上記フラックスは、上記ヒューズエレメントを超えて上記中間電極及び/又は上記絶縁層に亘って塗布されている、請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項4】
上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントが搭載された表面を覆うキャップ部材を備え、
上記キャップ部材は、上記フラックスを所定の位置に保持する突起が上記中間電極と対向して立設されている、請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項5】
上記キャップ部材は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向に沿って、複数の上記突起が立設されている、請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
上記中間電極は、上記発熱体と電気的に接続している請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項7】
上記中間電極は、上記発熱体と電気的に独立している請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項8】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の表面側に設けられた中間電極と、
上記中間電極に接続されたヒューズエレメントと、
上記ヒューズエレメント上に設けられたフラックスと、
上記絶縁基板の表面と反対の裏面側に設けられた発熱体と、
上記発熱体を覆う絶縁層とを有し、
上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、
上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されている、保護素子。
【請求項9】
絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に設けられた発熱体と、上記発熱体を覆う絶縁層と、上記絶縁層上に設けられた中間電極を有し、上記中間電極にヒューズエレメントが接続された接続体を形成する工程と、
上記ヒューズエレメント上に、塗布領域に応じた開口部を有するマスクを介してフラックスを塗布する工程と、
上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントが搭載された表面にキャップ部材を接続して基板表面を被覆する工程を有し、
上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、
上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されている、保護素子の製造方法。
【請求項10】
絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に設けられた中間電極と、上記絶縁基板の表面と反対の裏面側に設けられた発熱体と、上記発熱体を覆う絶縁層とを有し、上記中間電極にヒューズエレメントが接続された接続体を形成する工程と、
上記ヒューズエレメント上に、塗布領域に応じた開口部を有するマスクを介してフラックスを塗布する工程と、
上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントが搭載された表面にキャップ部材を接続して基板表面を被覆する工程を有し、
上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、
上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されている、保護素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路上に実装され、発熱体による加熱でヒューズエレメントを溶断し当該電流経路を遮断する保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高出力・高エネルギー密度を有する電池であり、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォンなどの小型モバイル機器において使われており、近年では電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、及び家庭用蓄電池等の大容量で大電流や高電圧が必要な機器での採用が進んでいる。
【0003】
しかし、この電池は有機溶剤を使用しており、本体温度や出入力電流、充電電圧などの使用範囲を超えた場合に発火、発煙をする危険性があるため、電子回路を用いた保護回路と保護素子が組み込まれることが一般的である。保護回路には保護素子として、電気的にONとOFFを行うFET、温度を感知するサーミスタ、物理的に回路を切断するヒューズが用いられるが、ヒューズには発熱体付きのヒューズが使用されることが多い。
【0004】
発熱体付きヒューズからなる保護素子は、一般的な電流ヒューズのように過電流で切断する機能の他に、電子回路が異常を感知した際に発熱体を発熱させることにより、ヒューズエレメントを溶かして切断することができる。この保護素子は、過電流のみで切れる一般的な電流ヒューズに比べて、異常時に素早く切れること、また電池特性、使用条件等を考慮した安全マージンを回路的に簡易に設定でき、意図するタイミングでヒューズエレメントを溶かして切断することが可能であるといった利点がある。
【0005】
図15は、表面実装タイプの保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。図15に示す保護素子100は、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面上に形成された第1、第2の電極102、103と、絶縁基板101の表面に形成された発熱体104と、発熱体104を被覆する絶縁層105と、絶縁層105上に積層されるとともに発熱体104と接続された中間電極106と、第1の電極102、中間電極106、及び第2の電極103にわたってスズベースの各種ソルダーペーストからなる接続材料110を介して搭載される可溶導体であるヒューズエレメント107と、ヒューズエレメント107上に塗布されたフラックス111とを備える。
【0006】
第1、第2の電極102,103は、保護素子100が接続される外部回路の電流経路上に接続される端子部であり、それぞれ絶縁基板101の裏面に形成された第1、第2の外部接続電極102a,103aとキャスタレーションを介して接続されている。保護素子100は、第1、第2の外部接続電極102a,103aが、保護素子100が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント107が外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0007】
発熱体104は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。また、発熱体104は、絶縁基板101の表面上に形成された発熱体電極108と接続されている。発熱体電極108は、絶縁基板101の裏面に形成された第3の外部接続電極108aとキャスタレーションを介して接続されている。保護素子100は、第3の外部接続電極108aが、保護素子100が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、発熱体104が外部回路に設けられた外部電源と接続されている。そして、発熱体104は、図示しないスイッチ素子等により常時、通電が制御されている。
【0008】
発熱体104は、ガラス層等からなる絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に中間電極106が形成されることにより、絶縁層105を介して中間電極106と重畳されている。また、中間電極106上には第1、第2の電極102,103間にわたって接続されたヒューズエレメント107が接続材料110を介して接続されている。
【0009】
これにより、保護素子100は、発熱体104とヒューズエレメント107が重畳されることにより熱的に接続され、発熱体104が通電によって発熱するとヒューズエレメント107を溶断することができる。
【0010】
ヒューズエレメント107は、第1の電極102から中間電極106を経て第2の電極103にかけて接続されることにより、保護素子100が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント107は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断する。あるいは、ヒューズエレメント107は、発熱体104の発熱により溶融し、その溶融導体が、第1、第2の電極102,103及び中間電極106上に凝集することにより溶断する。これにより、第1、第2の電極102,103間が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5072796号公報
【特許文献2】特許第5876346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、リチウムイオン二次電池が搭載されるアプリケーションの拡大に伴い、大容量且つ大電流や高電圧の機器での採用も始まっている。このため、保護素子も同様に高定格化や高電圧化が求められている。定格電流を上げるために、ヒューズエレメント自体の抵抗値を下げる方法としては、ヒューズエレメントの断面積を大きくすることが一般的である。
【0013】
しかし、ヒューズエレメントの断面積を大きくすることでヒューズの抵抗値は下げられるが、発熱体の加熱によるヒューズエレメントの溶断動作に影響がでる。すなわち、発熱体の加熱によるヒューズエレメントの溶断動作では、溶けたヒューズエレメントが中間電極上に濡れ広がり、凝集することでヒューズエレメントが溶断する。しかし、ヒューズエレメントの断面積を大きくすると、発熱体の加熱により溶融するまの時間が延びてしまい、ヒューズエレメントや中間電極が酸化して溶断しない不具合が発生する。
【0014】
この対策として、ヒューズエレメントの酸化を防止するフラックスの塗布量を増やすと、フラックスによる熱の吸収も大きくなり、溶断に必要な温度まで上昇するのに要する時間が延びてしまい、中間電極が過熱によって酸化して溶融したヒューズエレメントを収容しきれずに、ヒューズエレメントが溶断しない恐れも生じる。
【0015】
また、フラックスの塗布量を過度に制限すると、発熱体の中心から離れた部位ではフラックスが塗布されず、ヒューズエレメントや中間電極が酸化して、所望の時間内に溶断しない恐れも生じる。
【0016】
そこで、本技術は、フラックスを適切に塗布することにより、ヒューズエレメントの断面積の大型化によっても、速やかに且つ確実に溶断することができる保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に設けられた発熱体と、上記発熱体を覆う絶縁層と、上記絶縁層上に設けられた中間電極と、上記中間電極に接続されたヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメント上に設けられたフラックスを有し、上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されているものである。
【0018】
また、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に設けられた中間電極と、上記中間電極に接続されたヒューズエレメントと、上記ヒューズエレメント上に設けられたフラックスと、上記絶縁基板の表面と反対の裏面側に設けられた発熱体と、上記発熱体を覆う絶縁層とを有し、上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されているものである。
【0019】
また、本技術に係る保護素子の製造方法は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に設けられた発熱体と、上記発熱体を覆う絶縁層と、上記絶縁層上に設けられた中間電極を有し、上記中間電極にヒューズエレメントが接続された接続体を形成する工程と、上記ヒューズエレメント上に、塗布領域に応じた開口部を有するマスクを介してフラックスを塗布する工程と、上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントが搭載された表面にキャップ部材を接続して基板表面を被覆する工程を有し、上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されているものである。
【0020】
また、本技術に係る保護素子の製造方法は、絶縁基板と、上記絶縁基板の表面側に設けられた中間電極と、上記絶縁基板の表面と反対の裏面側に設けられた発熱体と、上記発熱体を覆う絶縁層とを有し、上記中間電極にヒューズエレメントが接続された接続体を形成する工程と、上記ヒューズエレメント上に、塗布領域に応じた開口部を有するマスクを介してフラックスを塗布する工程と、上記絶縁基板の上記ヒューズエレメントが搭載された表面にキャップ部材を接続して基板表面を被覆する工程を有し、上記中間電極は、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記発熱体と同等以上の長さを有し、且つ先端部が上記発熱体より張り出し、上記フラックスは、上記ヒューズエレメントの通電方向と直交する方向において、上記ヒューズエレメントを超えて、少なくとも上記発熱体と同位置まで塗布されているものである。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、ヒューズエレメントの断面積の大型化によっても、速やかに且つ確実に溶断することができる保護素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、絶縁基板表面に発熱体を設けた保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図であり、(C)はB-B断面図である。
図2図2は、図1に示す保護素子において、ヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はB-B断面図である。
図3図3は、可溶導体の断面図である。
図4図4は、保護素子の製造工程を示す断面図であり、(A)はフラックスを塗布する工程を示し、(B)はフラックスが塗布された接続体を示し、(C)は保護素子を示す。
図5図5は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
図6図6は、保護素子の回路図である。
図7図7は、変形例に係る保護素子を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図である。
図8図8は、変形例に係る保護素子の回路図である。
図9図9は、絶縁基板裏面に発熱体を設けた保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図であり、(C)はB-B断面図であり、(D)は底面図である。
図10図10は、図9に示す保護素子において、ヒューズエレメントが溶断した状態をキャップ部材を省略して示す平面図である。
図11図11は、比較例に係る保護素子を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図である。
図12図12は、実施例1に係る保護素子を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図である。
図13図13は、実施例2に係る保護素子を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図である。
図14図14は、実施例3に係る保護素子を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)はA-A断面図である。
図15図15は、表面実装タイプの保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はキャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術が適用された保護素子及び保護素子の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
本技術が適用された保護素子1は、図1(A)~(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられた発熱体4と、発熱体4を覆う絶縁層5と、絶縁層5上に設けられた中間電極6と、中間電極6に接続されたヒューズエレメント3と、ヒューズエレメント3上に設けられたフラックス7を有する。
【0025】
中間電極6は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、発熱体4と同等以上の長さを有し、且つ先端部が発熱体4より張り出している。フラックス7は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、ヒューズエレメント3を超えて、少なくとも発熱体4と同位置まで塗布されている。
【0026】
これにより、保護素子1は、フラックス7の塗布領域が、平面視において発熱体4と同位置とされ、過度にフラックス量を増やすことなく、ヒューズエレメント3及び中間電極6の酸化を防止することができる。したがって、保護素子1は、発熱体4の発熱により、フラックス7による過度な吸熱を抑えつつ、フラックス7がヒューズエレメント3を溶融させる範囲において効率的に活性化される。このため、ヒューズエレメント3の酸化を防止して溶融を促進するとともに、中間電極6の酸化を防止して濡れ性を維持できる。したがってヒューズエレメント3の断面積が大型化した場合でも、溶断時間が延びることなく、且つ確実にヒューズエレメント3を溶断することができる。また、ヒューズエレメント3が速やかに溶断することで、中間電極6や発熱体4自体の損傷を防止でき、発熱遮断動作を安定化させることができる。
【0027】
このような保護素子1は、リチウムイオン二次電池の保護回路等の外部回路に組み込まれることにより、ヒューズエレメント3が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、発熱体4の発熱、あるいは定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断する(図2参照)。以下、保護素子1の各構成について詳細に説明する。
【0028】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、例えばアルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。なお、本明細書では、絶縁基板2のヒューズエレメント3が搭載される面を表面2aとし、ヒューズエレメント3が搭載される面と反対側の面を裏面2bとする。
【0029】
[第1、第2の電極]
絶縁基板2の表面2aの相対向する両端部には、第1の電極11及び第2の電極12が形成されている。第1の電極11及び第2の電極12は、それぞれ、Ag、Cu又はこれらの合金等の導電パターンによって形成されている。第1の電極11及び第2の電極12は、例えばAgペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで印刷した後、所定の温度で焼成することにより形成することができる。
【0030】
第1の電極11は、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第1の外部接続電極15と連続されている。また、第2の電極12は、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第2の外部接続電極16と連続されている。表面実装タイプの保護素子1においては、保護素子1が外部回路基板に実装されると、第1、第2の外部接続電極15,16が、当該外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント3が当該外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0031】
第1、第2の電極11,12は、スズベースの各種ソルダーペーストその他の導電接続材料を介してヒューズエレメント3が搭載されることにより、ヒューズエレメント3を介して電気的に接続されている。また、図2に示すように、第1、第2の電極11,12は、発熱体4が通電に伴って発熱しヒューズエレメント3が溶断することにより、あるいは保護素子1に定格を超える大電流が流れヒューズエレメント3が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、接続遮断される。
【0032】
[発熱体]
発熱体4は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体4は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。一例として、発熱体4は、酸化ルテニウム系ペーストと銀とガラスペーストの混合ペーストを所定の電圧に応じて調整し、絶縁基板2の表面2aの所定の位置に所定の面積で製膜し、その後、適正条件にて焼成処理を行うことにより形成することができる。また、発熱体4の形状は適宜設計できるが、図1に示すように、絶縁基板2の形状に応じて略矩形状とすることが発熱面積を最大化するうえで好ましい。
【0033】
また、発熱体4は、一端部4aが第1の引出電極17と接続され、他端部4bが第2の引出電極18と接続されている。第1の引出電極17は、絶縁基板2の表面2aの一側縁に形成された第1の発熱体電極8から引き出されている。第2の引出電極18は、絶縁基板2の表面2aの他側縁に形成された第2の発熱体電極9から引き出されている。第1の引出電極17は、第1の発熱体電極8から発熱体4の一端部4aに沿って引き出され、図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体4の一側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体4の一側縁が重畳されている。同様に、第2の引出電極18は、第2の発熱体電極9から発熱体4の他端部4bに沿って引き出され、図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体4の他側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体4の他側縁が重畳されている。
【0034】
[絶縁層]
また、発熱体4、第1の引出電極17及び第2の引出電極18は、絶縁層5に被覆されている。また、絶縁層5上には中間電極6が形成されている。
【0035】
絶縁層5は、発熱体4の保護及び絶縁を図るものである。絶縁層5は発熱体4の熱を効率よく中間電極6やヒューズエレメント3へ伝えるために、厚みが例えば10~40μmと薄く形成されている。絶縁層5は、例えばガラス系のペーストを塗布、焼成することにより形成することができる。
【0036】
第1の発熱体電極8及び第2の発熱体電極9は、絶縁基板2の第1、第2の電極11,12が設けられた側縁と異なる相対向する側縁に形成されている。第1の発熱体電極8は、発熱体4への給電端子となる電極であり、第1の引出電極17を介して発熱体4の一端部4aと接続されるとともに、キャスタレーションを介して絶縁基板2の裏面2bに形成された第3の外部接続電極10と連続されている。第2の発熱体電極9は、第2の引出電極18を介して発熱体4の他端部4bと接続されるとともに、中間電極6と接続されている。
【0037】
第1、第2の発熱体電極8,9、第1、第2の引出電極17,18、及び中間電極6は、第1、第2の電極11,12と同様に、AgやCu等の導電ペーストを印刷、焼成することによって形成することができる。また、絶縁基板2の表面2a上に形成されるこれら各電極を同一の材料により構成することで、一又は複数の印刷工程及び焼成工程で形成することができる。
【0038】
なお、第1の発熱体電極8は、第3の外部接続電極10と接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して第1の発熱体電極8上に這い上がり、第1の発熱体電極8上に濡れ拡がることを防止する規制壁(図示せず)を設けてもよい。第1、第2の電極11,12も同様に、規制壁を設けてもよい。規制壁は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、第1の発熱体電極8上や第1、第2の電極11,12上に印刷等により形成することができる。規制壁を設けることにより、溶融した接続用ハンダが第1の発熱体電極8や第1、第2の電極11,12まで濡れ広がることを防止し、保護素子1と外部回路基板との接続性を維持することができる。
【0039】
中間電極6は、第2の発熱体電極9から絶縁層5上にわたって設けられる電極である。中間電極6は、一端側が第2の発熱体電極9及び第2の引出電極18を介して発熱体4の他端部4bと接続されている。また、中間電極6は、他端側が第1の電極11と第2の電極12の間の領域において絶縁層5上に延在され、絶縁層5を介して発熱体4に重畳されている。そして、中間電極6は、接続用ハンダ等の接合材料を介して、ヒューズエレメント3が接続されている。
【0040】
ヒューズエレメント3は、第1及び第2の電極11,12間にわたって実装され、発熱体4の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を遮断するものである。ヒューズエレメント3には、酸化を防止し、濡れ性を向上させて、速溶断を図る目的で、フラックス7が塗布されている。ヒューズエレメント3の構成については、後に詳述する。
【0041】
なお、第1、第2の電極11,12及び中間電極6の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の電極11,12及び中間電極6の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、ヒューズエレメント3を接続する接続用ハンダが溶融することにより第1、第2の電極11,12及び中間電極6を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0042】
[フラックス]
ここで、本技術に係る中間電極6は、平面視において、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向に発熱体4と同等以上の長さを有し、且つ絶縁層5上に延在する先端部が発熱体4よりもヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向に張り出している。そして、フラックス7は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、ヒューズエレメント3を超えて、少なくとも発熱体4と同位置まで塗布されている。
【0043】
ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向は、ヒューズエレメント3の溶断方向であり、ヒューズエレメント3は、当該方向にわたって溶断することにより第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断することができる。そして、当該方向においてヒューズエレメント3を超えて、少なくとも発熱体4と同位置までフラックス7が塗布されることにより、保護素子1は、フラックス7の塗布領域が、平面視において発熱体4と同位置とされ、過度にフラックス量を増やすことなく、ヒューズエレメント3及び中間電極6の酸化を防止することができる。
【0044】
これにより、保護素子1は、発熱体4の発熱により、フラックス7による過度な吸熱を抑えつつ、フラックス7が電流経路を遮断するために必要な範囲においてヒューズエレメント3を溶融させ、且つ中間電極6の酸化を防止する。すなわち、保護素子1は、フラックス7の塗布領域を最適化することで、効率よくヒューズエレメント3の酸化を防止して溶融を促進するとともに、中間電極6の酸化を防止して濡れ性を維持できる。したがって、ヒューズエレメント3の断面積が大型化した場合でも、溶断時間が延びることなく、且つ確実にヒューズエレメント3を溶断することができる。また、ヒューズエレメント3が速やかに溶断することで、中間電極6や発熱体4自体の損傷を防止でき、発熱遮断動作を安定化させることができる。
【0045】
フラックス7は、塗布領域に応じた開口部を有するマスクを介して塗布することにより、所定の範囲に、所定量だけ塗布することができる。この塗布工法では、フラックス7の塗布領域に対応した開口部を有するメタルマスクやスクリーンマスク等のマスクを用意し、このマスクをフラックス7の塗布領域の周囲に配置して、スキージで押圧する。これにより、マスクの開口部領域にマスクの厚み分のフラックス7を印刷することができる。
【0046】
また、図1に示すように、フラックス7は、ヒューズエレメント3の通電方向において、少なくとも発熱体4と同位置まで塗布してもよい。すなわち、保護素子1は、フラックス7がヒューズエレメント3の通電方向及び通電方向と直交する方向において、発熱体4の形成位置まで塗布するようにしてもよい。これにより、フラックス7が塗布される範囲は、発熱体4と重畳する全域となり、より効率的に発熱体4の発熱によるヒューズエレメント3及び中間電極6の酸化を防止し、且つフラックス7の活性化によるヒューズエレメント3の溶融促進を図ることができる。また、フラックス7の塗布領域はヒューズエレメント3の面積よりも狭いため、過度にフラックス量を増やすことによる吸熱、及びこれによる溶断時間の遅延を防止することができる。
【0047】
また、フラックス7は、ヒューズエレメント3を超えて中間電極6及び/又は絶縁層5に亘って塗布してもよい。すなわち、平面視において発熱体4とヒューズエレメント3が重畳しない部位が有る場合でも、当該重畳しない領域を含め、フラックス7を発熱体4と重畳する全域に塗布してもよい。中間電極6にフラックス7が塗布されることにより、中間電極6の酸化を防止するとともに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aがより濡れやすくなり、溶断を促進することができる。また、図1に示すように、矩形状の発熱体4を形成した場合には、マスク31の開口部32も矩形状に形成することができ、フラックス7の印刷品質を向上することができる(図4参照)。
【0048】
また、保護素子1は、絶縁基板2のヒューズエレメント3が搭載された表面2aを覆うキャップ部材19が接着剤を介して取り付けられている。キャップ部材19は、保護素子1の内部を保護するとともに、ヒューズエレメント3が溶断する際に発生する溶融物の飛散を防止するものである。キャップ部材19の材料としては、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する材料を用いることができる。
【0049】
キャップ部材19は、フラックス7を所定の位置に保持する突起19aが中間電極6と対向して立設するようにしてもよい。突起19aの高さは、先端がヒューズエレメント3の表面等に塗布されたフラックス7の表面に接するように決定される。突起19aを設けることにより、先端に接したフラックス7の表面張力によって、フラックス7が引き寄せられ所定の位置にフラックス7を保持することができ、特に低粘度のフラックス7を用いる場合等では、フラックス7の偏りを防止するうえで有利である。
【0050】
突起19aの形状は特に制限はなく、例えば、円筒状、円柱状等の柱状をなす。また、突起19aは、一又は複数設けられる。フラックス7と接する突起19aの表面は、滑らかであってもよく、梨地状でざらざらしていてもよい。
【0051】
突起19aは、配列パターンは特に制限はなく、例えばヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向に沿って、複数立設することが好ましい。また、中間電極6の上方において、発熱体4の長手方向に沿って配列されることで、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、ヒューズエレメント3を超えて、少なくとも発熱体4と同位置までフラックス7を保持することができる。なお、突起19aは、所定の間隔で一列に配列してもよく、複数列で配列してもよい。また、複数列で配列する場合も、突起19aを並列させてもよく、千鳥状に配列してもよい。
【0052】
[ヒューズエレメント]
次いで、ヒューズエレメント3について説明する。ヒューズエレメント3は、第1及び第2の電極11,12間にわたって実装され、発熱体4の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を遮断するものである。
【0053】
ヒューズエレメント3は、発熱体4の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダや、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0054】
また、ヒューズエレメント3は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、図3に示すように、ヒューズエレメント3は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層13、低融点金属層13に積層された外層として高融点金属層14を有する。ヒューズエレメント3は、第1、第2の電極11,12及び中間電極6上に接続ハンダ等の導電接続材料を介して接続される。
【0055】
低融点金属層13は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層13の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層14は、低融点金属層13の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の電極11,12及び中間電極6とヒューズエレメント3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0056】
このようなヒューズエレメント3は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。このとき、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13の全面が高融点金属層14によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、ヒューズエレメント3は、高融点金属層14を内層とし、低融点金属層13を外層として構成してもよく、また低融点金属層13と高融点金属層14とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
【0057】
ヒューズエレメント3は、内層となる低融点金属層13に、外層として高融点金属層14を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層13の溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント3として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の電極11,12及び中間電極6とヒューズエレメント3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによってもヒューズエレメント3の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0058】
また、ヒューズエレメント3は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。また、発熱体4が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。
【0059】
このとき、ヒューズエレメント3は、溶融した低融点金属層13が高融点金属層14を溶食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層14が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13による高融点金属層14の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、ヒューズエレメント3の溶融導体3aは、中間電極6及び第1、第2の電極11,12の物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断することができる(図2)。
【0060】
また、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13の体積を、高融点金属層14の体積よりも多く形成することが好ましい。ヒューズエレメント3は、過電流による自己発熱又は発熱体4の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層13の体積を高融点金属層14の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の電極11,12間を遮断することができる。
【0061】
また、ヒューズエレメント3は、内層となる低融点金属層13に高融点金属層14が積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0062】
また、ヒューズエレメント3は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント3は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、ヒューズエレメント3は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層14が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0063】
[保護素子の製造工程]
次いで、保護素子1の製造工程について説明する。図4は保護素子1の製造工程を示す断面図であり、(A)はフラックスを塗布する工程を示し、(B)はフラックスが塗布された接続体30を示し、(C)は保護素子1を示す。保護素子1の製造工程は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられた発熱体4と、発熱体4を覆う絶縁層5と、絶縁層5上に設けられた中間電極6を有し、中間電極6にヒューズエレメント3が接続された接続体30を形成する工程と、ヒューズエレメント3上に、塗布領域に対応した開口部を有するマスク31を介してフラックス7を塗布する工程と、絶縁基板2のヒューズエレメント3が搭載された表面2aにキャップ部材19を接続して基板表面を被覆する工程を有する。
【0064】
上述したように、絶縁基板2の表面2a上には、第1、第2の電極11,12、第1、第2の発熱体電極8,9、第1、第2の引出電極17,18が、スクリーン印刷技術等を用いてAgやCu等の導電ペーストを印刷、焼成することによって形成される。
【0065】
また、発熱体4は、ニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなり、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術等を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。発熱体4、第1、第2の引出電極17,18上には、スクリーン印刷技術等を用いてガラス系のペースト等を塗布、焼成することにより絶縁層5が形成される。
【0066】
さらに、スクリーン印刷技術等を用いてAgやCu等の導電ペーストを印刷、焼成することによって、第2の発熱体電極9から絶縁層5上にかけて中間電極6が形成される。第1、第2の電極11,12、及び中間電極6は、接続ハンダ等の導電接続材料が印刷され、ヒューズエレメント3が搭載された後、リフロー工程に付される。これにより、ヒューズエレメント3が接続された接続体30を得る。
【0067】
次いで、ヒューズエレメント3上に、塗布領域に対応した開口部32を有するマスク31(メタルマスクやスクリーンマスク等)を介してフラックス7を塗布する。この塗布工程では、図4(A)に示すように、スクリーン印刷工法においては、フラックス7の印刷部周囲に、印刷部に対応した開口部32を有するマスク31を配置させ、マスク31表面上をスキージ33が摺動することにより、開口部32に応じた位置及び面積で、マスク31の厚み分のフラックス7を塗布することができる。
【0068】
次いで、絶縁基板2のヒューズエレメント3が搭載された表面2aにキャップ部材19を接続して基板表面を被覆し、保護素子1を得る。このとき、キャップ部材19に突起19aを設けることにより、突起19aの先端に接したフラックス7の表面張力によって、フラックス7が引き寄せられ所定の位置にフラックス7を保持することができる。
【0069】
[回路構成例]
このような保護素子1は、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック20内の回路に組み込まれて用いられる。図5に示すように、バッテリパック20は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21a~21dからなるバッテリスタック25を有する。
【0070】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路26と、バッテリスタック25の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル21a~21dの電圧を検出する検出回路27と、検出回路27の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子28とを備える。
【0071】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21a~21dが直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置22に接続され、充電装置22からの充電電圧が印加される。充電装置22により充電されたバッテリパック20は、正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0072】
充放電制御回路26は、バッテリスタック25と充電装置22との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子23a、23bと、これらの電流制御素子23a、23bの動作を制御する制御部24とを備える。電流制御素子23a、23bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部24によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部24は、充電装置22から電力供給を受けて動作し、検出回路27による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子23a、23bの動作を制御する。
【0073】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック25と充放電制御回路26との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子28によって制御される。
【0074】
検出回路27は、各バッテリセル21a~21dと接続され、各バッテリセル21a~21dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路26の制御部24に供給する。また、検出回路27は、バッテリセル21a~21dのいずれか1つが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子28を制御する制御信号を出力する。
【0075】
電流制御素子28は、たとえばFETにより構成され、検出回路27から出力される検出信号によって、バッテリセル21a~21dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子23a、23bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0076】
以上のような構成からなるバッテリパック20に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、図6に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極15がバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極16が正極端子20a側と接続され、これによりヒューズエレメント3がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体4が第1の発熱体電極8及び第3の外部接続電極10を介して電流制御素子28と接続されるとともに、発熱体4がバッテリスタック25と接続される。このように、発熱体4は、一端を中間電極6を介してヒューズエレメント3及びバッテリスタック25の一端側と接続され、他端を第3の外部接続電極10を介して電流制御素子28及びバッテリスタック25の他端側と接続される。これにより電流制御素子28によって通電が制御可能な発熱体4への給電経路が形成される。
【0077】
[保護素子の動作]
検出回路27がバッテリセル21a~21dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子28へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子28は、発熱体4に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック25から、発熱体4に電流が流れ、これにより発熱体4が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体4の発熱によりヒューズエレメント3が溶断し、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。また、保護素子1は、ヒューズエレメント3を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間でヒューズエレメント3を溶解させることができる。
【0078】
保護素子1は、ヒューズエレメント3が溶断することにより、発熱体4への給電経路も遮断されるため、発熱体4の発熱が停止される。
【0079】
なお、保護素子1は、バッテリパック20に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント3が自己発熱により溶融し、バッテリパック20の充放電経路を遮断することができる。
【0080】
このように、保護素子1は、発熱体4の通電による発熱、あるいは過電流によるヒューズエレメント3の自己発熱によってヒューズエレメント3が溶断する。このとき、保護素子1は、回路基板へのリフロー実装時や、保護素子1が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、低融点金属が高融点金属によって被覆された構造を有することにより、ヒューズエレメント3の変形を抑制することができる。したがって、ヒューズエレメント3の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体4の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0081】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0082】
[変形例1]
次いで、本技術が適用された保護素子の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1の構成と同じ構成は同じ符号を付してその詳細を省略することがある。図7に示すように、保護素子は、発熱体4への給電経路とヒューズエレメント3の電流経路を独立して形成してもよい。図7(A)に示す保護素子40は、中間電極6と第2の発熱体電極9とが非接続とされている。また、第2の発熱体電極9は、第1の発熱体電極8と同様に、キャスタレーションを介して絶縁基板2の裏面2bに形成された第4の外部接続電極41と連続されている。第3の外部接続電極10及び第4の外部接続電極41が、保護素子40が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、発熱体4は外部回路に設けられた外部電源と接続される。そのほかの構成は、保護素子1と同様である。
【0083】
図8は、保護素子40の回路構成を示す図である。保護素子40は、外部回路に実装されることにより、第1の外部接続電極15がバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極16が正極端子20a側と接続され、これによりヒューズエレメント3がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。発熱体4は、第1の発熱体電極8及び第3の外部接続電極10を介して電流制御素子28と接続されるとともに、バッテリスタック25と接続される。また、発熱体4は、第2の発熱体電極9及び第4の外部接続電極41を介して図示しないアースと接続される。これにより電流制御素子28によって通電が制御可能な発熱体4への給電経路が形成される。保護素子40は、ヒューズエレメント3が溶断すると、これを検知した検出回路27及び電流制御素子28によって発熱体4への通電が停止される。
【0084】
[変形例2]
次いで、本技術が適用された保護素子の第2の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,40と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。図9は、変形例に係る保護素子50を示す図であり、(A)は、キャップ部材を省略して示す平面図であり、(B)は(A)に示すA-A断面図であり、(C)は(A)に示すB-B断面図であり、(D)は底面図である。
【0085】
図9(A)~(D)に示すように、第2の変形例に係る保護素子50は、絶縁基板2の表面2aと反対側の裏面2bに、発熱体4、第1,第2の引出電極17,18及びこれらを被覆する絶縁層5が形成されている。また、絶縁基板2の裏面2bには、第1、第2の発熱体電極8,9、第1、第2の外部接続電極15,16が形成されている。
【0086】
また、絶縁基板2の表面2aには、第1、第2の電極11,12、及び中間電極6が形成され、これら各電極11,12,6上にヒューズエレメント3が実装されている。
【0087】
絶縁基板2の表面2aに設けられた第1、第2の電極11,12、及び中間電極6や、絶縁基板2の裏面2bに設けられた発熱体4、第1,第2の引出電極17,18、第1、第2の発熱体電極8,9、及び第1、第2の外部接続電極15,16は、上述した保護素子1と同様の工程によって形成することができる。
【0088】
第2の発熱体電極9と中間電極6は、絶縁基板2の側面に形成されたキャスタレーションや絶縁基板2を貫通する導電スルーホール等により電気的に接続されている。すなわち、中間電極6は、第2の発熱体電極9を介して発熱体4と電気的及び熱的に接続される。これにより、保護素子50は、発熱体4が絶縁基板2を介して中間電極6を加熱するとともに、熱伝導性に優れる第2の発熱体電極9及びキャスタレーションを介して発熱体4の熱が中間電極6に伝わり、ヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる(図10(A)(B))。
【0089】
なお、保護素子50では、第1、第2の発熱体電極8,9が外部回路基板の電極と接続される外部接続電極ともなるため、保護素子1に設けた第3の外部接続電極10や保護素子40に設けた第4の外部接続電極41は設けられていない。
【0090】
保護素子50においても、平面視において、中間電極6は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向に発熱体4と同等以上の長さを有し、且つ先端部が発熱体4より張り出している。そして、フラックス7は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、ヒューズエレメント3を超えて、少なくとも発熱体4と同位置まで塗布されている。
【0091】
これにより、保護素子50においても、フラックス7の塗布領域が、平面視において発熱体4と同位置とされ、過度にフラックス量を増やすことなく、ヒューズエレメント3の酸化を防止することができる。したがって、保護素子50は、発熱体4の発熱により、フラックス7による過度な吸熱を抑えつつ、フラックス7がヒューズエレメント3を溶融させる範囲において効率的に活性化される。このため、ヒューズエレメント3の酸化を防止でき、ヒューズエレメント3の断面積が大型化した場合でも、溶断時間が延びることなく、且つ確実にヒューズエレメント3を溶断することができる。また、ヒューズエレメント3が速やかに溶断することで、中間電極6や発熱体4自体の損傷を防止でき、発熱遮断動作を安定化させることができる。
【0092】
なお、保護素子50においても、保護素子40と同様に、中間電極6と第2の発熱体電極9とを非接続とすることにより、発熱体4への給電経路とヒューズエレメント3の電流経路を独立して形成してもよい。
【実施例0093】
次いで、本技術の実施例について説明する。本実施例では、フラックスの塗布領域を変えた保護素子のサンプルを作製し、高温高湿環境下(60℃95%の環境に300時間)に投入した後、発熱体に100Wの電力を印加し、ヒューズエレメントの溶断試験を行った。
【0094】
実施例及び比較例に係る保護素子サンプルは、フラックスの塗布領域及びキャップ部材に設けた突起を除き、上述した保護素子1と同様の構成を有する。また、実施例及び比較例に係る保護素子のフラックスの塗布領域に応じた開口部を有するマスクを用いて、所定の範囲に、所定量のフラックスを塗布した。
【0095】
[比較例1]
図11に示すように、比較例1に係る保護素子は、ヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、フラックスをヒューズエレメント3上にのみ塗布した。ヒューズエレメント3の通電方向においても、フラックスを中間電極と重畳する位置に塗布したが、発熱体と同位置までは塗布していない。また、キャップ部材の天面に、円柱状の突起をヒューズエレメントの通電方向と直交する幅方向(溶断方向)に沿って3つ並列させ、フラックスを保持させた。
【0096】
[実施例1]
図12に示すように、実施例1に係る保護素子は、ヒューズエレメント3の通電方向及びヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、フラックスを発熱体4と同位置まで塗布した。また、キャップ部材の天面に、円柱状の突起をヒューズエレメントの通電方向と直交する幅方向(溶断方向)に沿って3つ並列させ、フラックスを保持させた。実施例1においてフラックスの塗布に使用したマスクの開口部面積は、比較例1に係るマスクの開口部面積に対して54%広い。すなわち、実施例1は、比較例1に対して54%広いフラックスの塗布面積を有する。
【0097】
[実施例2]
図13に示すように、実施例2に係る保護素子は、ヒューズエレメント3の通電方向及びヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、フラックスを発熱体4と同位置まで塗布した。また、キャップ部材の天面に、ヒューズエレメントの通電方向と直交する幅方向(溶断方向)を長軸とする楕円柱状の突起を形成し、フラックスを保持させた。フラックスの塗布面積は、実施例1と同じである。
【0098】
[実施例3]
図14に示すように、実施例3に係る保護素子は、ヒューズエレメント3の通電方向及びヒューズエレメント3の通電方向と直交する方向において、フラックスを発熱体4と同位置まで塗布した。また、実施例3では、天面に突起が形成されていないキャップ部材を用いた。フラックスの塗布面積は、実施例1と同じである。
【0099】
実施例及び比較例に係る保護素子について、平均溶断時間(秒)、最小・最大溶断時間(秒)、及び未切断発生率(%)を求めた。実施例及び比較例に係る保護素子とも、サンプルの数nは192である。なお、未切断発生率(%)とは、ヒューズエレメントが所定の時間を経過しても溶断しないサンプルの発生率をいい、ヒューズエレメントや中間電極が酸化することにより溶融が阻害され溶断が不可能となることに起因して発生する。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示すように、実施例1~3は、比較例1に比して平均溶断時間(秒)、最小・最大溶断時間(秒)、及び未切断発生率(%)のいずれも有利な結果となった。これは、各実施例においては、ヒューズエレメントを超えて、少なくとも発熱体と同位置までフラックスが塗布されていることから、ヒューズエレメントの通電方向と直交する幅方向(溶断方向)にわたってヒューズエレメント及び中間電極の酸化が防止されるとともに、中間電極の濡れ性が向上され、これにより、ヒューズエレメントの溶融が促進されるとともにヒューズエレメントの溶融導体が濡れ広がり、速やかに且つ確実に溶断されたことによる。
【0102】
一方、比較例1では、フラックスの塗布領域がヒューズエレメント上に留まることから、ヒューズエレメント及び中間電極の酸化防止が不十分となり、実施例に比して溶断時間が長く、また未切断のサンプルが発生した。
【符号の説明】
【0103】
1 保護素子、2 絶縁基板、2a 表面、2b 裏面、3 ヒューズエレメント、3a 溶融導体、4 発熱体、5 絶縁層、6 中間電極、7 フラックス、8 第1の発熱体電極、9 第2の発熱体電極、10 第3の外部接続電極、11 第1の電極、12 第2の電極、13 低融点金属、14 高融点金属、15 第1の外部接続電極、16 第2の外部接続電極、17 第1の引出電極、18 第2の引出電極、19 キャップ部材、19a 突起、20 バッテリパック、21 バッテリセル、22 充電装置、23 電流制御素子、24 制御部、25 バッテリスタック、26 充放電制御回路、27 検出回路、28 電流制御素子、30 接続体、31 マスク、32 開口部、33 スキージ、40 保護素子、41 第4の外部接続電極、50 保護素子
図1
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