(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004925
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20240110BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240110BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20240110BHJP
B24B 5/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B49/04 B
B24B5/04
B24B5/06
B24B49/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104831
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間元 崇
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034AA05
3C034BB77
3C034BB92
3C034CA02
3C034DD01
3C034DD07
3C043AA08
3C043AB07
3C043CC03
3C043DD05
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】ワークの外径又は内径を精度よく且つ効率的に測定する。
【解決手段】測定装置1は、環状のワークWの内径dを測定する内径測定部10と、ワークWの半径方向Rの肉厚tを測定する肉厚測定部30と、内径測定部10により測定されたワークWの内径dの測定値及び肉厚測定部30により測定されるワークWの肉厚tの測定値に基づいて、ワークWの外径Dを算出する外径算出部40と、を備える。内径測定部10は、ワークWの中心軸Waに関して互いに反対側に配置され且つワークWの内径dに臨む第1ゲージ51及び第2ゲージ52で構成されている。肉厚測定部30は、第1ゲージ51と、ワークWの半径方向RにおいてワークWの肉厚tを介して第1ゲージ51に対向し且つワークWの外径Dに臨む第3ゲージ53と、で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のワークにおける外径及び内径のうちの一方の径を測定する一方径測定部と、
前記ワークの半径方向の肉厚を測定する肉厚測定部と、
前記一方径測定部による前記一方の径の測定値及び前記肉厚測定部による前記肉厚の測定値に基づいて、前記ワークにおける外径及び内径のうちの他方の径を算出する他方径算出部と、を備え、
前記一方径測定部は、前記ワークの中心に関して互いに反対側に配置され且つ前記一方の径に臨む第1ゲージ及び第2ゲージで構成されており、
前記肉厚測定部は、前記第1ゲージと、前記半径方向において前記ワークの前記肉厚を介して前記第1ゲージに対向し且つ前記他方の径に臨む第3ゲージと、で構成されている、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記他方の径を測定する他方径測定部をさらに備え、
前記他方径測定部は、前記第3ゲージと、前記半径方向において前記ワークの前記肉厚を介して前記第2ゲージに対向し且つ前記他方の径に臨む第4ゲージと、で構成されている、測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記一方の径は、内径であり、
前記他方の径は、外径であり、
前記第1ゲージ、前記第2ゲージ及び前記第3ゲージは、前記ワークの前記外径に対する工具の押圧方向と交差する方向に沿って、並んで配置されている、測定装置。
【請求項4】
環状のワークにおける外径及び内径のうちの一方の径を前記ワークの加工前に測定する一方径測定工程と、
前記ワークの半径方向の肉厚を前記ワークの加工中に測定する肉厚測定工程と、
前記一方径測定工程で前記加工前に測定された前記一方の径の測定値及び前記肉厚測定工程で前記加工中に測定される前記肉厚の測定値に基づいて、前記ワークにおける外径及び内径のうちの他方の径を算出する他方径算出工程と、を備え、
前記一方径測定工程において、前記一方の径は、前記ワークの中心に関して互いに反対側に配置され且つ前記一方の径に臨む第1ゲージ及び第2ゲージによって測定されており、
前記肉厚測定工程において、前記肉厚は、前記第1ゲージと、前記半径方向において前記ワークの前記肉厚を介して前記第1ゲージに対向し且つ前記他方の径に臨む第3ゲージと、によって測定される、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状のワークにおける外径又は内径の測定に関して、種々の技術が知られている。例えば特許文献1には、環状工作物(ワーク)の内径又は外径を機械加工する際のインプロセス定寸制御方法が開示されている。この方法では、機械加工開始前に標準状態における非加工面の直径としての外径を予め測定して、加工中は肉厚寸法をインプロセスゲージで測定して、両測定値に基づいて被加工面の直径としての内径を刻々に計算する。
【0003】
環状工作物の非加工面の直径としての外径は、予め標準状態において測定室で正確に精密測定されて、外径寸法記憶器に記憶されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-171260公報(特に、第3及び4頁並びに
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ワークの被加工面の直径(内径)を、直接的に測定するのではなく、ワークの非加工面(外径)の直径寸法及びワークの肉厚寸法に基づいて測定する。これにより、ワークの加工時におけるワークの歪みに起因する測定誤差を低減して、ワークの被加工面の直径(内径)を、より精度よく測定することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ワークの非加工面の直径(外径)を、標準状態において測定室で精密測定する必要がある。すなわち、ワークの非加工面の直径(外径)を測定する前に、ワークを工作機械から取り外すとともに、当該直径(外径)を測定した後に、ワークを工作機械に再び取り付ける必要がある。
【0007】
そして、ワークを工作機械に取り付けると、ワークの加工を再開する。ワークの加工中に、ワークの肉厚寸法を測定しながら、ワークの非加工面の直径(外径)寸法及びワークの肉厚寸法に基づいてワークの被加工面の直径(内径)を測定する。
【0008】
特許文献1では、ワークの非加工面の直径(外径)を測定する前後において、工作機械に対してワークを着脱する作業が発生するので、ワークの加工及びワークの寸法測定に時間及び手間がかかってしまい、非効率である。
【0009】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークの外径又は内径を精度よく且つ効率的に測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る測定装置は、環状のワークにおける外径及び内径のうちの一方の径を測定する一方径測定部と、上記ワークの半径方向の肉厚を測定する肉厚測定部と、上記一方径測定部による上記一方の径の測定値及び上記肉厚測定部による上記肉厚の測定値に基づいて、上記ワークにおける外径及び内径のうちの他方の径を算出する他方径算出部と、を備え、上記一方径測定部は、上記ワークの中心に関して互いに反対側に配置され且つ上記一方の径に臨む第1ゲージ及び第2ゲージで構成されており、上記肉厚測定部は、上記第1ゲージと、上記半径方向において上記ワークの上記肉厚を介して上記第1ゲージに対向し且つ上記他方の径に臨む第3ゲージと、で構成されている。
【0011】
ワークの加工中に、工具をワークに押し当てるので、特にワークが薄肉で変形しやすい場合には、ワークが撓んでしまう。このため、ワークの加工中に、ワークにおける外径又は内径を直接的に測定しようとしても、ワークの外径又は内径を正確に測定することができない。一方、工具をワークに押し当てても、ワークの肉厚は、ほとんど変化しない。
【0012】
かかる構成によれば、加工前に測定されたワークの一方の径及び加工中に測定されるワークの肉厚に基づいて、ワークの他方の径を算出する。これにより、ワークの加工中にワークの他方の径を精度よく測定することができる。
【0013】
さらに、第1ゲージ及び第2ゲージによってワークの一方の径を測定するとともに、第1ゲージ及び第3ゲージによってワークの肉厚を測定する。すなわち、ゲージの組み合せを変更するだけで、ワークの一方の径の測定と、ワークの肉厚の測定と、を切り換えることができる。このため、ワークにおける一方の径及び肉厚を、(工作機械に対してワークを着脱する等の無駄な作業なく、)加工サイクルの中で効率的に測定することができる。
【0014】
以上、ワークの外径又は内径を精度よく且つ効率的に測定することができる。
【0015】
一実施形態では、上記他方の径を測定する他方径測定部をさらに備え、上記他方径測定部は、上記第3ゲージと、上記半径方向において上記ワークの上記肉厚を介して上記第2ゲージに対向し且つ上記他方の径に臨む第4ゲージと、で構成されている。
【0016】
かかる構成によれば、例えばワークが厚肉で変形しにくい場合に、第3ゲージ及び第4ゲージによって、ワークの他方の径を直接的に測定することによって、ワークの他方の径を簡単に測定することができる。
【0017】
一実施形態では、上記一方の径は、内径であり、上記他方の径は、外径であり、上記第1ゲージ、上記第2ゲージ及び上記第3ゲージは、上記ワークの上記外径に対する工具の押圧方向と交差する方向に沿って、並んで配置されている。
【0018】
工具をワークの外径に対して押圧すると、ワークは、当該押圧方向と交差する方向に伸びる。すなわち、第1ゲージ、第2ゲージ及び第3ゲージは、ワークの伸び方向に沿って配置されている。仮に、ワークの外径を伸び方向に沿って直接的に測定しようとした場合、ワークの伸びに起因する測定誤差が大きくなってしまう。一方、ワークの肉厚は、ワークの伸びの影響をほとんど受けない。
【0019】
かかる構成によれば、ワークの内径及びワークの肉厚に基づいて、ワークの外径を算出するので、第1ゲージ、第2ゲージ及び第3ゲージがワークの伸び方向に沿って並んで配置されていたとしても、ワークの外径を、ワークの伸びの影響をほとんど受けずに、精度よく測定することができる。すなわち、ゲージの配置自由度を高めることができる。
【0020】
本開示に係る測定方法は、環状のワークにおける外径及び内径のうちの一方の径を上記ワークの加工前に測定する一方径測定工程と、上記ワークの半径方向の肉厚を上記ワークの加工中に測定する肉厚測定工程と、上記一方径測定工程で上記加工前に測定された上記一方の径の測定値及び上記肉厚測定工程で上記加工中に測定される上記肉厚の測定値に基づいて、上記ワークにおける外径及び内径のうちの他方の径を算出する他方径算出工程と、を備え、上記一方径測定工程において、上記一方の径は、上記ワークの中心に関して互いに反対側に配置され且つ上記一方の径に臨む第1ゲージ及び第2ゲージによって測定されており、上記肉厚測定工程において、上記肉厚は、上記第1ゲージと、上記半径方向において上記ワークの上記肉厚を介して上記第1ゲージに対向し且つ上記他方の径に臨む第3ゲージと、によって測定される。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、ワークの外径又は内径を精度よく且つ効率的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る測定装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
<第1実施形態>
(測定装置)
図1は、測定装置1を示す概略構成図である。測定装置1は、工作機械としての研削盤(図示せず)に導入されている。測定装置1は、主に、環状(リング状)のワークWの外径Dを測定するためにある。ワークWは、例えば円環状である。
【0025】
ワークWは、軸方向一端部において、研削盤のチャック(図示せず)によって、把持されている。チャックに把持されたワークWは、主軸(図示せず)の駆動によって、中心軸Wa回りに回転する。ワークWの外径Dは、2つのシュー2,3によって支持されている。研削盤は、所謂シューセンタレス型である。研削盤は、ワークWの複合加工が可能である。
【0026】
ワークWの外径Dには、工具としての外径側研削砥石4が押し当てられる。外径側研削砥石4は、ワークWの外周側に配置されている。外径側研削砥石4は、中心軸4a回りに回転する。ワークWの回転方向Wbと外径側研削砥石4の回転方向4bとは、互いに反対である。
【0027】
同様に、ワークWの内径dには、工具としての内径側研削砥石5が押し当てられる。内径側研削砥石5は、ワークWの内周側に配置されている。
【0028】
測定装置1は、内径測定部(一方径測定部)10と、外径測定部(他方径測定部)20と、肉厚測定部30と、外径算出部(他方径算出部)40と、を備える。また、測定装置1は、第1ゲージ51と、第2ゲージ52と、第3ゲージ53と、第4ゲージ54と、を備える。
【0029】
各ゲージ51~54は、例えば、公知の接触式センサである。各ゲージ51~54自体は、基準点(ゼロ点)からの変位量を測定している。基準点は、マスターワークによって、設定(ゼロセット)される。接触式センサには、例えば、伸縮可能なスピンドルが内蔵されている。なお、各ゲージ51~54は、渦電流式、光学式、超音波式又はレーザ式等の非接触式センサでもよい。
【0030】
第1ゲージ51及び第2ゲージ52は、通常、ワークWにおける外径D及び内径dのうちの一方の径である内径dを、測定するためにある。第1ゲージ51及び第2ゲージ52は、ワークWの中心軸Waに関して、互いに反対側に配置されている。第1ゲージ51及び第2ゲージ52は、ワークWの内径(一方の径)dに臨む。
【0031】
第3ゲージ53及び第4ゲージ54は、通常、ワークWにおける外径D及び内径dのうちの他方の径である外径Dを、測定するためにある。第3ゲージ53及び第4ゲージ54は、ワークWの中心軸Waに関して、互いに反対側に配置されている。
【0032】
第3ゲージ53は、ワークWの半径方向Rにおいて、ワークWの肉厚tを介して、第1ゲージ51に対向している。第3ゲージ53は、ワークWの外径(他方の径)Dに臨む。
【0033】
第4ゲージ54は、ワークWの半径方向Rにおいて、ワークWの肉厚tを介して、第2ゲージ52に対向している。第4ゲージ54は、ワークWの外径(他方の径)Dに臨む。
【0034】
第1ゲージ51(第3ゲージ53)及び第2ゲージ52(第4ゲージ54)は、ワークWの中心軸Waに関して、互いに180°正反対側に配置される必要は必ずしもなく、180°から多少ずれてもよい。
【0035】
第1ゲージ51と第2ゲージ52とを組み合わせると、ワークWの内径dを測定可能になる。第3ゲージ53と第4ゲージ54とを組み合わせると、ワークWの外径Dを測定可能になる。第1ゲージ51と第3ゲージ53とを組み合わせると、ワークWの半径方向Rの肉厚tを測定可能になる。第2ゲージ52と第4ゲージ54とを組み合わせると、ワークWの半径方向Rの肉厚tを測定可能になる。
【0036】
ここで、外径側研削砥石4を、ワークWの外径Dに対して押圧方向Aに押圧すると、ワークWは、外径側研削砥石4と2つのシュー2,3とに挟まれて変形する。そして、ワークWは、外径側研削砥石4及び2つのシュー2,3が存在しない方向に、大きく伸びる(以下、「伸び方向B」という)。伸び方向Bは、押圧方向Aと交差する方向であり、例えば押圧方向Aと直交する方向Bである。
【0037】
なお、押圧方向Aは、ワークWの外径Dに対する外径側研削砥石4の移動方向でもある。第1ゲージ51、第2ゲージ52、第3ゲージ53及び第4ゲージ54は、伸び方向Bに沿って、並んで配置されてもよい。
【0038】
内径測定部10は、第1ゲージ51及び第2ゲージ52で構成されており、ワークWの内径dを測定する。外径測定部20は、第3ゲージ53及び第4ゲージ54で構成されており、ワークWの外径Dを測定する。
【0039】
肉厚測定部30は、第1ゲージ51及び第3ゲージ53で構成されており、ワークWの半径方向Rの肉厚tを測定する。なお、肉厚測定部30は、第2ゲージ52及び第4ゲージ54で構成されてもよい。
【0040】
外径算出部40は、マイコン及びプログラムで構成されており、研削盤に内蔵されている。外径算出部40は、各ゲージ51~54に電気的に接続されており、各ゲージ51~54からの信号を受信する。
【0041】
外径算出部40は、内径測定部10(第1ゲージ51及び第2ゲージ52)により測定されたワークWの内径dの測定値及び肉厚測定部30(第1ゲージ51及び第3ゲージ53)により測定されるワークWの肉厚tの測定値に基づいて、ワークWの外径Dを算出する(D=d+2t)。
【0042】
(測定方法)
測定装置1を用いた測定方法について説明する。測定装置1を用いた測定方法では、内径d及び肉厚tに基づいて外径Dを算出することが可能であり、また通常通りに外径Dを直接的に測定することも可能である。
【0043】
測定方法は、準備工程と、一方径測定工程としての内径測定工程と、肉厚測定工程と、他方径算出工程としての外径算出工程と、完了工程と、を備える。測定方法は、特にワークWが薄肉で変形しやすい場合に、適用される。
【0044】
先ず、準備工程において、ワークWの内径dを測定するための準備が行われる。具体的には、旋盤によるワークWの内径d及び外径Dの旋削、ワークWの熱処理、研削盤によるワークWの端面の研削、研削盤によるワークWの外径Dの粗研削、及び研削盤によるワークWの内径dの粗研削が行われる。
【0045】
次に、内径測定工程において、ワークWの加工としての仕上研削は、まだ行われない。内径測定工程において、内径測定部10(第1ゲージ51及び第2ゲージ52)によって、ワークWの内径dを、ワークWの仕上研削前に、測定する。
【0046】
次に、肉厚測定工程において、外径側研削砥石4によって、ワークWの外径Dの仕上研削が、行われる。肉厚測定工程において、肉厚測定部30(第1ゲージ51及び第3ゲージ53)によって、ワークWの半径方向Rの肉厚tを、ワークWの外径Dの仕上研削中に、測定する。
【0047】
次に、外径算出工程において、外径側研削砥石4によるワークWの外径Dの仕上研削が、継続される。外径算出工程において、内径測定工程で仕上研削前に測定されたワークWの内径dの測定値及び肉厚測定工程で仕上研削中に測定されるワークWの肉厚tの測定値に基づいて、ワークWの外径Dを、ワークWの仕上研削中に、算出する(D=d+2t)。
【0048】
最後に、完了工程において、内径側研削砥石5によって、ワークWの内径dの仕上研削(加工)が、行われる。
【0049】
なお、ワークWが厚肉で変形しにくい場合には、外径測定部20(第3ゲージ53及び第4ゲージ54)によって、ワークWの外径Dを、直接的に測定すればよい。
【0050】
(作用効果)
ワークWの仕上研削中に、外径側研削砥石4をワークWの外径Dに押し当てるので、特にワークWが薄肉で変形しやすい場合には、ワークWが撓んでしまう(
図1の二点鎖線参照)。このため、ワークWの仕上研削中に、ワークWの外径Dを直接的に測定しようとしても、ワークWの外径Dを正確に測定することができない。一方、外径側研削砥石4をワークWの外径Dに押し当てても、ワークWの肉厚tは、ほとんど変化しない。
【0051】
本実施形態によれば、ワークWの仕上研削前に測定されたワークWの内径d及びワークWの仕上研削中に測定されるワークWの肉厚tに基づいて、ワークWの外径Dを算出する(D=d+2t)。これにより、ワークWの仕上研削中にワークWの外径Dを精度よく測定することができる。
【0052】
さらに、第1ゲージ51及び第2ゲージ52(内径測定部10)によってワークWの内径dを測定するとともに、第1ゲージ51及び第3ゲージ53(肉厚測定部30)によってワークWの肉厚tを測定する。すなわち、ゲージ51~54の組み合せを変更するだけで、ワークWの内径dの測定と、ワークWの肉厚tの測定と、を切り換えることができる。
【0053】
このため、ワークWにおける内径d及び肉厚tを、(研削盤に対してワークWを着脱する等の無駄な作業なく、)加工サイクルの中で効率的に測定することができる。
【0054】
以上、ワークWの外径Dを精度よく且つ効率的に測定することができる。
【0055】
ワークWが厚肉で変形しにくい場合に、第3ゲージ53及び第4ゲージ54(外径測定部20)によって、ワークWの外径Dを直接的に測定することによって、ワークWの外径Dを簡単に測定することができる。
【0056】
外径側研削砥石4をワークWの外径Dに対して押圧すると、ワークWは、押圧方向Aと直交する伸び方向Bに伸びる。ここで、第1ゲージ51、第2ゲージ52、第3ゲージ53及び第4ゲージ54は、ワークWの伸び方向Bに沿って配置されている。
【0057】
仮に、ワークWの外径Dを第3ゲージ53及び第4ゲージ54によって伸び方向Bに沿って直接的に測定しようとした場合、ワークWの伸びに起因する測定誤差が大きくなってしまう。一方、ワークWの肉厚tは、ワークWの伸びの影響をほとんど受けない。
【0058】
本実施形態では、ワークWの内径d及びワークWの肉厚tに基づいて、ワークWの外径Dを算出するので、第1ゲージ51、第2ゲージ52、第3ゲージ53及び第4ゲージ54がワークWの伸び方向Bに沿って並んで配置されていたとしても、ワークWの外径Dを、ワークWの伸びの影響をほとんど受けずに、精度よく測定することができる。すなわち、ゲージ51~54の配置自由度を高めることができる。
【0059】
<第2実施形態>
図2に示すように、第2実施形態に係る測定装置1は、第1実施形態に係る測定装置1と実質的に同じ装置であり、ゲージ51~54の組み合せを変更しただけである(符号51~54の配置が
図1と
図2とで異なる)。
【0060】
測定装置1は、環状のワークWの外径Dを測定する外径測定部10と、ワークWの半径方向Rの肉厚tを測定する肉厚測定部30と、外径測定部10によるワークWの外径Dの測定値及び肉厚測定部30によるワークWの肉厚tの測定値に基づいてワークWの内径dを算出する内径算出部40と、を備える。
【0061】
外径測定部10は、ワークWの中心軸Waに関して互いに反対側に配置され且つワークWの外径Dに臨む第1ゲージ51及び第2ゲージ52で、構成されている。
【0062】
肉厚測定部30は、第1ゲージ51と、ワークWの半径方向RにおいてワークWの肉厚tを介して第1ゲージ51に対向し且つワークWの内径dに臨む第3ゲージ53と、で構成されている。
【0063】
測定装置1は、ワークWの内径dを直接的に測定する内径測定部20を、さらに備えてもよい。内径測定部20は、第3ゲージ53と、ワークWの半径方向RにおいてワークWの肉厚tを介して第2ゲージ52に対向し且つワークWの内径dに臨む第4ゲージ54と、で構成されている。
【0064】
その他の実施形態に係る測定方法は、環状のワークWの外径DをワークWの仕上研削前に測定する外径測定工程と、ワークWの半径方向Rの肉厚tをワークWの仕上研削中に測定する肉厚測定工程と、外径測定工程で仕上研削前に測定されたワークWの外径Dの測定値及び肉厚測定工程で仕上研削中に測定されるワークWの肉厚tの測定値に基づいて、ワークWの内径dを算出する内径算出工程と、を備える。
【0065】
外径測定工程において、ワークWの外径Dは、ワークWの中心軸Waに関して互いに反対側に配置され且つワークWの外径Dに臨む第1ゲージ51及び第2ゲージ52によって、測定される。
【0066】
肉厚測定工程において、ワークWの肉厚tは、第1ゲージ51と、ワークWの半径方向RにおいてワークWの肉厚tを介して第1ゲージ51に対向し且つワークWの内径dに臨む第3ゲージ53と、によって測定される。
【0067】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0068】
伸び方向Bは、押圧方向Aと必ずしも直交する必要はなく、斜めに交差してもよい。他方径算出部40は、研削盤に内蔵されるのではなく、研削盤とは独立して設けられてもよい。測定装置1は、研削盤以外の他の工作機械(例えば旋盤)に導入されてもよい。
【0069】
ゲージは、4つある必要はなく、最低限3つあればよい。すなわち、内径側2つ及び外径側1つの計3つのゲージの組合せ、又は、内径側1つ及び外径側2つの計3つのゲージの組合せでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、測定装置及び測定方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0071】
d 内径
D 外径
t 肉厚
W ワーク
Wa 中心軸
Wb 回転方向
R 半径方向
A 押圧方向
B 伸び方向
1 測定装置
2 シュー
3 シュー
4 外径側研削砥石(工具)
4a 中心軸(中心)
4b 回転方向
5 内径側研削砥石(工具)
10 内径測定部(外径測定部、一方径測定部)
20 外径測定部(内径測定部、他方径測定部)
30 肉厚測定部
40 外径算出部(内径算出部、他方径算出部)
51 第1ゲージ
52 第2ゲージ
53 第3ゲージ
54 第4ゲージ