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特開2024-49264輝度一定環境における瞳孔径測定による注目の度合を計測する情感判定装置
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  • 特開-輝度一定環境における瞳孔径測定による注目の度合を計測する情感判定装置 図1
  • 特開-輝度一定環境における瞳孔径測定による注目の度合を計測する情感判定装置 図2
  • 特開-輝度一定環境における瞳孔径測定による注目の度合を計測する情感判定装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049264
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】輝度一定環境における瞳孔径測定による注目の度合を計測する情感判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240402BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61B5/16 120
A61B3/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022165854
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】317013555
【氏名又は名称】KIKURA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021751
【氏名又は名称】株式会社ナックイメージテクノロジー
(72)【発明者】
【氏名】倉島 渡
(72)【発明者】
【氏名】菊池 光一
【テーマコード(参考)】
4C038
4C316
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PR01
4C038VA17
4C038VB04
4C316AA21
4C316AA28
4C316AA30
4C316AB16
4C316FA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】視認対象に注目すると瞳孔径が拡大することが知られていたが、瞳孔径は輝度によって影響を受けるので、輝度の影響を削除する方法が提案されている。基準の輝度と視認者の瞳孔径の関係を基に基本瞳孔径に対する瞳孔径との比を注目度とする技術がある。しかし、輝度と瞳孔径測定による注目度の測定は煩わしく、時間もかかるので、輝度一定の環境において簡単な測定方法が必要である。
【解決手段】輝度一定のディスプレイコンテンツ、曇天下環境の街、商店等室内の輝度が一定の陳列棚等は輝度による瞳孔の変化はほとんどなく、視認対象への注目度合により瞳孔径が変化するので、視認者の瞳孔径変化により視認対象への注目度合を判定できることを特徴とする視認者情感判定装置である。この視認者情感判定装置により、ディスプレイコンテンツの評価、建設工事や機械操作等への労働安全の評価、商品や看板、モニュメント等の注目度合、目立ち度が判定できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者の瞳孔径は視認対象の輝度とその視認対象への注目度により変化するが、輝度の変化のない環境で対象物を見た場合は、輝度による瞳孔径の変化はなく、瞳孔径は主にその対象物への視認者の注目の度合により変化する。そこで、輝度変化のない環境において視認者が視認対象を視認した時、前記視認者の瞳孔径の変化が、視認者の視認対象への注目度合を判定できることを特徴とする情感判定装置。
【請求項2】
輝度の変化のない環境において視認者の動き回る範囲で、注目しないある物を視認した時の瞳孔径を基本瞳孔径(Ps)とする。実際に前記視認者が視認対象を視認した時の瞳孔径Pから、視認対象への注目度合は注目比(Q)として、瞳孔径Pの比(=P/Ps)で表されるものとする。そこで、視認対象を注目して見ていたら Q>1となり、視認対象を注目しないで見ていたらQ≦1と判定する。また、他の注目度の表現に、注目に相当する瞳孔径拡大部分Pw(=P―Ps)として基本瞳孔径(Ps)との比(=Pw/Ps)として注目比(Qb)を表現しても良い。
この場合は、Qb>0は視認対象を注目して見ている。Qb≦0は視認対象を注目して見ていないと判定できる。
【請求項3】
請求項1の情感判定装置において、ディスプレイの場合は、輝度一定のコンテンツを作成して、注目度合の判定ができる。その他、雑誌、本などの印刷物の注目度合いの判定に利用可能である。
また、輝度の変化のない曇天下の街を移動する時の看板、立て札、ビル、モニュメントなどの注目度合を判定できる。輝度変化のない屋内の陳列棚にある商品の注目度合を判定できる。
さらに、労働安全作業において、作業中に必ず見るべき部分を見て注意している(Q>1)ことの判定ができる。注目もせず(Q<1)に作業をしていたらその時の作業動作は危険状態か、製品品質が落ちる可能性があると判定できる。
瞳孔径は視覚の刺激の他、味覚・嗅覚・聴覚・触覚の刺激の大きさや脳活動の大きさにより変化するので、味覚・嗅覚・聴覚・触覚の刺激に対する反応の評価や脳活動の評価などに利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は瞳孔径の変化による情感判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人は視認対象を見て、注目すると瞳孔径が拡大することは知られていた。しかし、瞳孔径は輝度によって影響を受けるので、輝度の影響を削除する方法が提案されている。
その際、基準の輝度と視認者の瞳孔径を測定して、基準輝度と視認者の基本瞳孔径の関係をリストにして置き、それを基に、視認者が視認対象を視認した時の輝度と瞳孔径を測定して、その時の輝度に相当する基本瞳孔径に対する瞳孔径との比を注目度とする技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5445981号
【発明の概要】
【0004】
従来の輝度の測定と瞳孔径測定による注目度の測定は煩わしく、時間もかかる。
そこで、輝度が一定の環境においては、輝度の変化を考慮しなくても良い簡単な測定方法が必要である。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、視認者の瞳孔径は視認対象の輝度とその視認対象への注目度により変化するが、輝度の変化のない環境で対象物を見た場合は、輝度による瞳孔径の変化はなく、視認対象物への視認者の注目の度合により瞳孔径が変化することに基づいて注目度合を判定できる装置とプログラムに関する情感判定装置を提案するものである。
【0006】
具体的には、最初、輝度変化のない環境における、何気ない対象物(注目しない物)を見た時の瞳孔径を基本瞳孔径(Ps)とし、同じ輝度環境において視認者が視認対象を視認した時の瞳孔径(P)のPsとの比で注目度合を表すことができる。これを「注目比(Q)」とする。
これは複数の視認者でも比較できる普遍的な数字である。
【0007】
輝度変化のない環境は、輝度一定のコンテンツ映像を作成してディスプレイに表示することで得られるので、視認者がディスプレイ上にコンテンツを視認した時の視点と瞳孔径を測定することにより視点位置の視認対象とそれへの注目度合を判定できる。
その他の輝度変化のない代表的な環境は、曇天下の街中の景観、商店などの輝度変化のない屋内等々であり、この環境下で視認者が測定器を身に着けて移動することにより、視認対象を視認した時の注目度合(注目比)が判定できる。
【0008】
瞳孔径は呼吸と脈拍による影響がある。呼吸と脈拍は周期的な動きを示す。そこで瞳孔径の時間経過測定データから、その呼吸と脈拍の影響を削除する必要がある場合は、視認者または一般の人の呼吸周期以下の周波数で瞳孔径の変化を低周波濾波(Low Pass Filter)の計算処理をすることで、瞳孔径の時間経過測定データの呼吸の影響を削除できる。この処理を視認者の基本瞳孔径測定データと視認対象視認時の瞳孔径測定データの時間経過データの双方に処理を行うことにより、視認者の瞳孔径変化の呼吸の影響を除去できる。呼吸より周波数の高い脈拍による瞳孔径への影響は、呼吸周波数以下による低周波ろ過処理により、同時に削除できる。
【発明の効果】
【0009】
この視認者情感判定装置により、ディスプレイ上の輝度一定のコンテンツの評価、建設工事や機械操作等への労働安全の評価、商品や看板、モニュメント等の注目度合、目立ち度が簡単に判定できる。また、瞳孔径は視覚の刺激の他、味覚・嗅覚・聴覚・触覚の刺激の大きさや脳活動の大きさにより変化するので、味覚・嗅覚・聴覚・触覚の刺激の反応の評価や脳活動の評価のなどに利用できる。
【発明の詳細】
【0010】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
図1の注目比測定システム概念図は、頭に視点位置と瞳孔径測定器を備えた装置を装着して歩きまわることを前提にした情感判定装置である。
【0011】
視認者1の目11は同一輝度環境の中で視認対象4を視認した時にアイカメラ2による視認者の目11眼球映像bを計測できる。
視認者1に装着した視認者1の音声cと周りの音声を収録するマイクロフォン13は音声による情報を参考に必要となる時に利用できるものとする。
【0012】
前記視認者1の視認情景撮影カメラ3による視認映像aとアイカメラ2による視認者1の目11の眼球映像b、音声cを時間経過とともに計測・収録する。
【0013】
視認情景撮影カメラ3による視認映像aとアイカメラ4による視認者の眼球映像データb、音声データcを時間経過とともに計測した全計測データをデータ蓄積装置5に蓄積し、データ転送装置6を通して受信装置7に送る。この転送方法は有線式であっても無線式であってもよい。
【0014】
図2の注目比測定装置機能図に示すように、データ解析装置8で、前記視認映像aと前記眼球映像データbから前記視認映像aにおける視点eを算出する。視点e算出方法は既知の技術による。例えばアイカメラ2に近赤外LED光源があり、このLEDの角膜での反射点と瞳孔の位置関係から視線角度を算出する角膜反射法等により視線方向を算出し、視認映像a内の視点eを算出する方法がある。
【0015】
先ず、視認者1の基本瞳孔径データ(Ps)を測定する必要がある。
視認者1がディスプレイでのコンテンツを視認する場合は、これから視認するコンテンツと同じ輝度の無意味な(注目しない)画面を視認した時の瞳孔径を基本瞳孔径(Ps)とする。
ディスプレイ以外の、一定輝度環境を移動して、ある視認対象の注目度合を測定する場合は、何気ないもの(注目しないもの)を視認して測定した瞳孔径を基本瞳孔径(Ps)とする。
【0016】
図2は、注目比測定装置100における機能概要を示す。
視認者1の視認映像a、眼球映像bをデータ受信部101に受信し、解析部102でデータを解析し、眼球映像bから前記視認者1の瞳孔径pを抽出し、視線方向と視認映像aを合成することで、前期視認者1の視認映像a内の視点eの位置を確定する。
【0017】
最初、視認者1の基本瞳孔径(Ps)をデータ蓄積部103に蓄積する。
【0018】
前記視認者1が視認対象4を視認した時の視認映像a、眼球映像bをデータ受信部101に受信し、解析部102で視認対象4視認時の瞳孔径Pを算出し、瞳孔径データ蓄積部103に送る。診断部104で瞳孔径データ蓄積部103から基本瞳孔径Psと視認対象4を視認した時の瞳孔径pを引き出し、PとPsの比で注目比(Q)が算出できる。それは式1で表される。
Q:視認者の視認対象への注目比、
P:視認者の視認対象視認時の瞳孔径、
Ps:P測定時と同じ輝度の視認者の基本瞳孔径
この場合は
視認対象を注目して見ていたら Q>1となり
視認対象を注目しないで見ていたらQ≦1と
判定できる。
【0019】
注目比の前項の表現の他、注目にだけに相当する瞳孔径拡大部分Pw(=P―Ps)を視認対象視認時の瞳孔径(P)測定時と視認者1の基本瞳孔径(Ps)との比として注目比(Qb)を表現しても良い。
ただし、
Qb:視認者の注目比のもう一つの表現方法、
Pw:視認者の視認対象視認時の注目に相当する瞳孔径拡大部分(=P―Ps)
Ps:P測定時と同じ輝度の視認者の基本瞳孔径
この場合は
Qb>0は視認対象を注目して見ている。
Qb≦0は視認対象を注目して見ていない。
と判定できる。
【0020】
時間tの瞬間における視認者1の瞳孔径をPtとした時の注目比Qtは以下の式で表せる。
ただし、
Qt;時間tの視認者の注目比、
Pt:時間tの視認者の瞳孔径、
Ps:P測定時と同じ輝度の視認者の基本瞳孔径
【0021】
視認者1の視点eが目的の視認対象4内にある時間(taからtb)の平均注目比(Qh)は
ただし、
Qh:視認者1の視点eが目的の視認対象4内にある時間(taからtb)の平均注目比
Qt;時間tの視認者1の注目比、
ta:認者1の視点eが目的の視認対象4内に入った時間、
tb:認者1の視点eが目的の視認対象4内から出た時間
視認者1が視認対象4を視認している間、視認対象を注目する対象ならQh>1
視認者1が視認対象4を視認している間、視認対象を注目しない対象ならQh<1
と判定できる。
taとtbは、測定後に、視認映像aと視認者1の視点eを再生して、視認者1の視点eが目的の視認対象4内にある時間を計測してもできる。
【0022】
注目比として、視認対象の注目の度合を表す方法としては上記の式1、式2,式4のどれでも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
ディスプレイ上の表示コンテンツの注目比を計測する応用としては、文章類、学習教材、アンケート、が考えられる。
【0024】
曇天下での輝度変化のない街中を移動して景観を視認する場合は、たとえば街中の景観で、看板、ビル、モニュメント、信号などを視認した時の注目度合を注目比で表示できる。
【0025】
労働安全作業に応用して、作業中に必ず見るべき部分を見て注意している(Q>1)ことの判定ができる。一方、注目もせず(Q<1)に作業をしていたらその時の作業動作は危険状態か、製品品質が落ちる可能性があると判定できる。
【0026】
瞳孔径は視覚刺激の他、味覚・嗅覚・聴覚・触覚の刺激の大きさや脳活動の大きさにより変化するので、味覚・嗅覚・聴覚・触覚の刺激の反応の評価や脳活動の評価などに利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 視認者
2 アイカメラ
3 視認情景撮影カメラ
4 視認対象
5 データ蓄積装置
6 データ転送装置
7 データ受信装置
8 データ解析装置
9 解析データ蓄積装置
10 解析データ表示装置
11 目
12 視線
13 マイクロフォン
14 通信回線
100 注目比判定装置
101 データ受信部
102 解析部
103 瞳孔径データ蓄積部
104 診断部
105 表示部
201 基本瞳孔径(Ps)測定
202 視認対象視認時の瞳孔径(P)測定
203 注目比(Q)の算出
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】注目比測定による情感判定装置概念図
図2】注目比測定装置機能図
図3】注目比測定フロー
図1
図2
図3