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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004928
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒用粒子
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240110BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240110BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J37/08
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104834
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】松枝 悟司
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148BA03X
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08Y
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA41X
4D148BB01
4D148BB16
4D148BB17
4D148DA03
4D148DA20
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA18
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169FA02
4G169FB13
4G169FB30
4G169FC07
(57)【要約】
【課題】コールドスタート領域における排ガス浄化性能を向上させ得る、排ガス浄化触媒材料を提供すること。
【解決手段】結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子を含む、排ガス浄化触媒用粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子を含む、排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子についてBET法によって測定された比表面積が75m/g以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子について窒素吸着法によって測定された細孔容積が0.35cm/g以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子の嵩密度が0.80g/cm以上である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項5】
前記無機酸化物粒子についてBET法によって測定された比表面積が75m/g以下であり、
前記無機酸化物粒子について窒素吸着法によって測定された細孔容積が0.35cm/g以下であり、かつ、
前記無機酸化物粒子の嵩密度が0.80g/cm以上である、
請求項1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項6】
前記無機酸化物粒子が、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ複合酸化物、セリア、ジルコニア、及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される1種以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項7】
前記無機酸化物粒子が、アルミナを含む、請求項6に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項8】
前記無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子を被覆している無機被覆層とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項9】
前記無機被覆層がセリアを含む、請求項8に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子の製造方法であって、
結晶子径が90nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、及び
前記無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成すること
を含む、排ガス浄化触媒用粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の排ガス浄化触媒用粒子の製造方法であって、
結晶子径が90nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、
前記無機酸化物粒子前駆体を、前記無機被覆層の前駆体で被覆すること、及び
前記無機被覆層の前駆体で被覆された前記無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成すること
を含む、排ガス浄化触媒用粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子と、
触媒貴金属と
を含み、
前記触媒貴金属が、前記排ガス浄化触媒用粒子に担持されている、
排ガス浄化触媒。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子と、
無機酸化物粒子から構成され、ただし前記排ガス浄化触媒用粒子とは異なる、担持用粒子と、
触媒貴金属と
を含み、
前記触媒貴金属が、前記排ガス浄化触媒用粒子及び前記担持用粒子のうちの少なくとも一方に担持されている、
排ガス浄化触媒。
【請求項14】
基材と、前記基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子を含む、
排ガス浄化触媒装置。
【請求項15】
基材と、前記基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、請求項12に記載の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置。
【請求項16】
基材と、前記基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、請求項13に記載の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒用粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中には、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が含まれる。このような排ガスは、排ガス浄化触媒によって、CO及びHCが酸化浄化され、NOxが還元浄化された後に、大気中に放出されている。
【0003】
排ガス浄化触媒は、例えばハニカム状の基材と、この基材上に形成された触媒コート層を有する、排ガス浄化触媒装置の形態で使用されることが多い。排ガス浄化触媒装置の触媒コート層は、一般に、触媒貴金属粒子、及び無機酸化物粒子、並びに任意的にその他の成分を含み、触媒貴金属粒子は、無機酸化物粒子のうちの少なくとも一部に担持されている。
【0004】
排ガス浄化触媒は、一般に、高温では高い排ガス浄化活性を示すが、低温では、活性が低い。したがって、例えば、エンジン停止状態から自動車を発車した場合等の、「コールドスタート」と呼ばれる状態の排ガス中のNO、CO、及びHCの排出量(エミッション)が問題となる。
【0005】
ところで、近年では、自動車の燃費測定方法が、WLTC(Worldwide harmonized Light duty driving Test Cycle)と呼ばれる国際基準に切り替わっている。
【0006】
この点、燃費測定方法として、わが国では、従来、例えば、コールドスタート25%、ホットスタート75%の配分で燃費を測定する、JC08モードが採用されていた。しかし、近年のWLTCモードでは、コールドスタート100%にて燃費測定が行われる。
【0007】
このように、近年では、コールドスタート領域の重要性が増大してきており、これに伴って、コールドスタート領域における排ガス浄化の重要性が増大しているのである。
【0008】
そのため、当業界では、コールドスタート領域における排ガス浄化性能を向上させようとして、種々の検討が行われている。
【0009】
例えば、特許文献1では、ウォッシュコート層を、排ガス流入口側のフロント部と排ガス流出口側のリア部とに分け、フロント部のコート量を少なくして、フロント部の熱容量を小さくするとともに、ここにパラジウムを高濃度で担持した排ガス浄化用触媒が提案されている。特許文献1には、この構成によると、フロント部のウォッシュコート層が、排ガスの熱によって昇温し易くなるため、パラジウムが触媒活性を発揮する温度まで速やかに昇温されて、低温領域の活性が向上すると説明されている。
【0010】
また、特許文献2では、基材、及び基材にコートされているコート層を有し、コート層が貴金属担持触媒及びマイクロ波吸収剤を含む、排ガス浄化触媒と、マイクロ波発生装置とを備える、車両用排ガス浄化装置が記載されている。この排ガス浄化装置は、コールドスタート直後、マイクロ波を照射して、コート層の温度を強制的に上昇させて、所望の排ガス浄化触媒活性を得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001-162166号公報
【特許文献2】特開2019-048268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、コールドスタート領域における排ガス浄化性能を向上させ得る、排ガス浄化触媒材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下のとおりである。
【0014】
《態様1》結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子を含む、排ガス浄化触媒用粒子。
《態様2》前記無機酸化物粒子についてBET法によって測定された比表面積が75m/g以下である、態様1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様3》前記無機酸化物粒子について窒素吸着法によって測定された細孔容積が0.35cm/g以下である、態様1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様4》前記無機酸化物粒子の嵩密度が0.80g/cm以上である、態様1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様5》前記無機酸化物粒子についてBET法によって測定された比表面積が75m/g以下であり、
前記無機酸化物粒子について窒素吸着法によって測定された細孔容積が0.35cm/g以下であり、かつ、
前記無機酸化物粒子の嵩密度が0.80g/cm以上である、
態様1に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様6》前記無機酸化物粒子が、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ複合酸化物、セリア、ジルコニア、及びセリア-ジルコニア複合酸化物から選択される1種以上を含む、態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様7》前記無機酸化物粒子が、アルミナを含む、態様6に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様8》前記無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子を被覆している無機被覆層とを含む、態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様9》前記無機被覆層がセリアを含む、態様8に記載の排ガス浄化触媒用粒子。
《態様10》態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子の製造方法であって、
結晶子径が90nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、及び
前記無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成すること
を含む、排ガス浄化触媒用粒子の製造方法。
《態様11》態様8に記載の排ガス浄化触媒用粒子の製造方法であって、
結晶子径が90nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、
前記無機酸化物粒子前駆体を、前記無機被覆層の前駆体で被覆すること、及び
前記無機被覆層の前駆体で被覆された前記無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成すること
を含む、排ガス浄化触媒用粒子の製造方法。
《態様12》態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子と、
触媒貴金属と
を含み、
前記触媒貴金属が、前記排ガス浄化触媒用粒子に担持されている、
排ガス浄化触媒。
《態様13》態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子と、
無機酸化物粒子から構成され、ただし前記排ガス浄化触媒用粒子とは異なる、担持用粒子と、
触媒貴金属と
を含み、
前記触媒貴金属が、前記排ガス浄化触媒用粒子及び前記担持用粒子のうちの少なくとも一方に担持されている、
排ガス浄化触媒。
《態様14》基材と、前記基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒用粒子を含む、
排ガス浄化触媒装置。
《態様15》基材と、前記基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、態様12に記載の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置。
《態様16》基材と、前記基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、態様13に記載の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、コールドスタート領域における排ガス浄化性能を向上させ得る、排ガス浄化触媒材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《排ガス浄化触媒用粒子》
本発明の排ガス浄化触媒用粒子は、結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子を含む、排ガス浄化触媒用粒子である。
【0017】
従来技術においても、コールドスタート領域における排ガス浄化性能の向上を目的とした改良技術は存在した。それらの技術としては、例えば、触媒貴金属の配置を工夫するもの、触媒貴金属を担持するための担体粒子の組成を工夫するもの、排ガス成分を吸脱着する吸着材を利用するもの、電熱線等によって排ガス浄化装置を強制的に加温するもの等が例示される。
【0018】
これらに対して、本発明は、コート層に、熱伝導率が高められた成分(排ガス浄化触媒用粒子)を配合して、コート層の昇温速度を速めることによって、コールドスタート領域における排ガス浄化性能を向上させようとの発想に基づくものである。
【0019】
本発明の排ガス浄化触媒用粒子では、無機酸化物粒子の結晶子径を所定のサイズ以上のものとし、粒子の緻密性を高めることにより、熱伝導率を高くしたものである。
【0020】
本発明の排ガス浄化触媒用粒子は、触媒貴金属を担持するための担体として用いてもよいし、触媒貴金属を担持しない成分として用いてもよい。
【0021】
〈無機酸化物粒子〉
本発明の排ガス浄化触媒用粒子における無機酸化物粒子は、排ガス浄化触媒装置の触媒コート層に通常用いられる無機酸化物粒子から、適宜に選択されてよい。例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ce等から選択される、1種、又は2種以上の元素の酸化物であってよい。無機残化物が2種以上の元素の酸化物であるとき、複数種の無機酸化物の混合物であっても、複数種の元素を含む複合酸化物であっても、これらの双方を含む形態の無機酸化物であってもよい。
【0022】
本発明における無機酸化物粒子は、具体的には、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ複合酸化物、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ)等であってよい。また、これらに、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Ce以外の希土類元素等が配合されたものも、本発明における無機酸化物粒子に包含される。
【0023】
本発明における無機酸化物粒子は、アルミナを含んでいてよく、アルミナであってよい。
【0024】
上述したとおり、本発明は、多孔性の無機酸化物粒子の結晶子径を所定のサイズ以上のものとして、粒子の緻密性を高めることにより、熱伝導率を高くするとの思想に基づく。この観点から、本発明の排ガス浄化触媒用粒子における無機酸化物粒子は、結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子を含み、結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子から成っていてよい。無機酸化物粒子の結晶子径は、90nm以上、100nm以上、110nm以上、又は120nm以上であってよい。一方、無機酸化物粒子の結晶子径は、過度に大きい必要はなく、本発明の目的との関係では、200nm以下、180nm以下、150nm以下、又は130nm以下で十分である。
【0025】
本明細書における無機酸化物粒子の結晶子径は、当該無機酸化物粒子について測定されたXRDにおける、結晶ピークの半値幅を用い、シェラー(Scherrer)式によって算出される値である。
【0026】
本発明における無機酸化物粒子は、多孔性の粒子であってもよい。しかしながら、熱伝導率を高くする観点からは、無機酸化物粒子の緻密性が高い方が好適である。この観点から、無機酸化物粒子について窒素吸着法によって測定された細孔容積は、0.50cm/g以下、0.45cm/g以下、0.40cm/g以下、0.35cm/g以下、0.30cm/g以下、又は0.25cm/g以下であってよい。本発明における無機酸化物粒子は、多孔性を有さなくてもよい。
【0027】
本発明における無機酸化物粒子は、高い熱伝導率を確保する目的で、緻密性が高められている。そのため、本発明における無機酸化物粒子は、比表面積が比較的小さい。無機酸化物粒子についてBET法によって測定された比表面積は、75m/g以下、70m/g以下、65m/g以下、60m/g以下、65m/g以下、又は50m/g以下であってよく、10m/g以上、20m/g以上、又は30m/g以上であってよい。
【0028】
本発明における無機酸化物粒子は、嵩密度が比較的高い。無機酸化物粒子の嵩密度は、0.60g/cm以上、0.70g/cm以上、0.80g/cm以上、0.90g/cm以上、又は0.95g/cm以上であってよく、1.5mL/g以下、1.2mL/g以下、1.1mL/g以下、又は1.0mL/g以下であってよい。
【0029】
この嵩密度は、無機酸化物粒子の質量を、見かけ体積(細孔容積を含めた体積)で割り付けた値である。
【0030】
〈無機被覆層〉
本発明の排ガス浄化触媒用粒子は、無機酸化物粒子のみから構成されていてもよいし、無機酸化物粒子が無機被覆層で被覆されて成る複合粒子であってもよい。
【0031】
本発明の排ガス浄化触媒用粒子が、無機被覆層が無機被覆層で被覆されて成る複合粒子である場合、無機被覆層は、無機酸化物粒子の、好ましくは細孔内を含む表面を無機被覆層で被覆して、粒子の緻密性を更に高めることにより、熱伝導率を更に高くする機能を有すると考えられる。
【0032】
無機被覆層は、金属酸化物の層であってよい。無機酸化物粒子と無機被覆層との複合粒子である排ガス浄化触媒用粒子の熱伝導率をより高くするとの観点から、無機被覆層の金属酸化物中の金属元素は、希土類金属元素を含んでいてよい。すなわち、希土類元素は、質量数が大きく、これに伴って自由電子の数が多い。そのため、無機被覆層が、希土類金属の酸化物を含むと、電子の自由運動による熱輸送量が増加して、排ガス浄化触媒用粒子全体の熱伝導率が向上すると考えられる。ただし、本発明は、特定の理論に拘束されるものではない。
【0033】
無機被覆層は、希土類金属元素の酸化物の層であるか、又は、希土類金属元素と、Al、Si、Ti、Zr等から選択される、1種、又は2種以上の元素と、の複合酸化物の層であってよい。
【0034】
元素の質量数及び自由電子の観点から、無機被覆層を構成する金属酸化物中の金属元素は、セリウムを含んでいてよい。すなわち、無機被覆層は、セリアを含む層であってよい。セリウムは、価数変化によって自由電子の増減が可能であるため、電子の自由運動による熱輸送量の観点から、特に有利であると考えられる。
【0035】
無機被覆層中のセリアの含有率は、無機被覆層の質量に対して、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、若しくは95質量%であってよく、又は100質量%であってもよい。しかしながら、無機酸化物層が、セリア以外の金属元素の酸化物、特に後述の酸化プラセオジムを含むことのメリットを享受するとの観点から、無機被覆層中のセリアの含有率は、無機被覆層の質量に対して、99質量%以下、98質量%以下、96質量%以下、94質量%以下、92質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0036】
同様に、元素の質量数及び自由電子の観点から、無機被覆層を構成する金属酸化物中の金属元素は、セリウムとともに、プラセオジムを含んでいてよい。すなわち、本発明の排ガス浄化触媒用粒子における無機被覆層は、セリアとともに、酸化プラセオジムを含む層であってよい。無機被覆層中の酸化プラセオジムの含有率は、無機被覆層の質量に対して、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0037】
無機被覆層は、上記の無機酸化物粒子の、好ましくは細孔内を含む表面を無機被覆層で被覆している。したがって、この無機被覆層は、無機酸化物粒子の細孔内に侵入できる程度の小さい結晶子から構成されていてよい。
【0038】
この場合、無機被覆層を構成する金属酸化物の結晶子径は、例えば、5.0nm以上、5.5nm以上、6.0nm以上、又は6.5nm以上であってよく、例えば、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、12nm以下、10nm以下、9nm以下、又は8nm以下であってよい。
【0039】
この金属酸化物の結晶子径は、XRD測定から求めた値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法によって行われてよい。
【0040】
本発明の排ガス浄化触媒用粒子が無機酸化物粒子と無機被覆層との複合粒子である場合、当該排ガス浄化触媒用粒子中の無機被覆層の存在割合は、無機酸化物粒子の、好ましくは細孔内を含む表面を効果的に被覆して、得られる排ガス浄化触媒用粒子の熱伝導率を高める観点からは、多くてよい。一方で、無機酸化物粒子の細孔を閉塞せず、比表面積を高く維持する観点からは、少なくてよい。
【0041】
これらの観点を合わせて考慮すると、複合粒子である排ガス浄化触媒用粒子における無機被覆層の存在割合は、排ガス浄化触媒用粒子の全質量に占める無機被覆層の質量の割合として、例えば、1質量%以上、3%以上、5%以上、8%以上、又は10%以上であってよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0042】
〈排ガス浄化触媒用粒子〉
上述したとおり、本発明の排ガス浄化触媒用粒子は、結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子を含む粒子であり、
結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子のみから構成されていてもよいし、
結晶子径が80nm以上の無機酸化物粒子が無機被覆層で被覆されて成る複合粒子であってもよい。
【0043】
本発明の排ガス浄化触媒用粒子は、従来公知の排ガス浄化触媒用粒子よりも熱伝導率が向上されている。本発明の排ガス浄化触媒用粒子の熱伝導率は、室温(24±2℃)における値として、例えば、0.125W/(m・K)以上、0.130W/(m・K)以上、0.140W/(m・K)以上、0.150W/(m・K)以上、又は0.160W/(m・K)以上であってよく、0.250W/(m・K)以下、0.240W/(m・K)以下、0.230W/(m・K)以下、0.220W/(m・K)以下、0.210W/(m・K)以下、又は0.200W/(m・K)以下、であってよい。
【0044】
本明細書における熱伝導率は、ホットディスク法によって測定された値である。熱伝導率の測定は、具体的には、後述の実施例に記載の方法によって行われてよい。
【0045】
《排ガス浄化触媒用粒子の製造方法》
上記に説明したような本発明の排ガス浄化触媒用粒子は、どのような方法によって製造されたものであってもよい。典型的な製造方法として、排ガス浄化触媒用粒子の構成に応じて、以下の方法が例示できる。
【0046】
無機酸化物粒子のみから構成される排ガス浄化触媒用粒子は、例えば、
結晶子径が80nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、及び
この無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成すること
を含む方法により製造されてよい。
【0047】
また、無機酸化物粒子が無機被覆層で被覆されて成る複合粒子である排ガス浄化触媒用粒子は、例えば、
結晶子径が80nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、
この無機酸化物粒子前駆体を、無機被覆層の前駆体で被覆すること、及び
無機被覆層の前駆体で被覆された無機酸化物粒子前駆体を、800℃以上の温度で焼成すること
を含む方法により製造されてよい。
【0048】
以下、無機酸化物粒子のみから構成される排ガス浄化触媒用粒子の製造、及び複合粒子である排ガス浄化触媒用粒子の製造の順に説明する。
【0049】
〈無機酸化物粒子のみから構成される排ガス浄化触媒用粒子の製造〉
上述したとおり、無機酸化物粒子のみから構成される排ガス浄化触媒用粒子は、
結晶子径が80nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、及び
この無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成すること
を含む方法により製造されてよい。
【0050】
結晶子径が80nm未満の無機酸化物粒子前駆体としては、排ガス浄化触媒用粒子として市販されている無機酸化物の粒子を使用してよい。
【0051】
次いでこの無機酸化物粒子前駆体を800℃以上の温度で焼成する。この焼成により、無機酸化物粒子前駆体の結晶子が成長し、粒子の緻密性が増して熱伝導度が向上して、本発明の排ガス浄化触媒用粒子が得られる。
【0052】
焼成温度は、結晶子が十分に成長し、かつ、焼成後の粒子の比表面積が過度に減じない範囲で適宜に設定されてよい。この観点から、焼成温度は、800℃以上であり、900℃以上、950℃以上1,000℃以上、1,050℃以上、又は1,100℃以上であってよく、1,800℃以下、1,500℃以下、1,400℃以下、又は1,300℃以下であってよい。
【0053】
焼成時間は、30分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、又は5時間以上であってよく、24時間以下、12時間以下、8時間以下、6時間以下、又は5時間以下であってよい。
【0054】
焼成の雰囲気は、不活性雰囲気下、酸化雰囲気下、及び還元雰囲気下の何れであってもよい。焼成は、例えば、空気中又は不活性雰囲気下(窒素中、アルゴン中等)で行われてよい。
【0055】
〈複合粒子である排ガス浄化触媒用粒子の製造〉
上述したとおり、複合粒子である排ガス浄化触媒用粒子は、
結晶子径が80nm未満の無機酸化物粒子前駆体を準備すること、
この無機酸化物粒子前駆体を、無機被覆層の前駆体で被覆すること、及び
無機被覆層の前駆体で被覆された無機酸化物粒子前駆体を、800℃以上の温度で焼成すること
を含む方法により製造されてよい。
【0056】
結晶子径が90nm未満の無機酸化物粒子前駆体としては、排ガス浄化触媒用粒子として市販されている無機酸化物の粒子を使用してよい。
【0057】
次いで、この無機酸化物粒子前駆体を、無機被覆層の前駆体で被覆する。
【0058】
無機被覆層の前駆体は、所望の無機被覆層に含まれる金属元素の強酸塩であってよく、例えば、金属の塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩等であってよい。
【0059】
無機酸化物粒子前駆体を無機被覆層の前駆体で被覆する方法としては、例えば、無機酸化物粒子前駆体に、無機被覆層の前駆体を含有する溶液を噴霧すること等の方法が例示できる。この溶液の溶媒は、無機被覆層の前駆体を溶解し得る液体状の化合物であってよく、典型的には、水である。
【0060】
噴霧後、次工程の焼成に供する前に、必要に応じて乾燥が行われてもよい。この乾燥は、例えば、80℃以上300℃以下の温度において、例えば、0.5時間以上48時間以下の時間で行われてよい。
【0061】
そして、無機被覆層の前駆体で被覆された無機酸化物粒子前駆体を、800℃以上の温度で焼成する。この焼成は、無機酸化物粒子のみから構成される排ガス浄化触媒用粒子の製造における焼成と同様に実施されてよい。
【0062】
《排ガス浄化触媒》
本発明の別の観点によると、
上記に説明した本発明の排ガス浄化触媒用粒子と、
触媒貴金属と
を含み、
触媒貴金属が、排ガス浄化触媒用粒子に担持されている、
排ガス浄化触媒(第1の排ガス浄化触媒)が提供される。
【0063】
上記第1の排ガス浄化触媒における、触媒貴金属は、白金族元素から選択される1種又は2種以上の貴金属であってよく、例えば、Pt、Pd、及びRhから選択される、1種、2種、又は3種であってよい。
【0064】
この第1の排ガス浄化触媒は、例えば、本発明の排ガス浄化触媒用粒子を、貴金属前駆体を含有する溶液中に浸漬した後、焼成することによって製造されてよい。
【0065】
貴金属前駆体は、所望の貴金属の強酸塩、又は錯化合物であってよく、例えば、貴金属の塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アンミン錯体等であってよい。
【0066】
貴金属前駆体を含有する溶液を含有する溶液の溶媒は、上記の貴金属前駆体を溶解し得る液体状の化合物であってよく、典型的には、水である。
【0067】
排ガス浄化触媒用粒子を貴金属前駆体溶液に浸漬した後、焼成前に、必要に応じて乾燥が行われてもよい。
【0068】
第1の排ガス浄化触媒の製造における、乾燥及び焼成は、それぞれ、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を加えた方法により、行われてよい。
【0069】
本発明の更に別の観点によると、
上記に説明した本発明の排ガス浄化触媒用粒子と、
無機酸化物粒子から構成され、ただし本発明の排ガス浄化触媒用粒子とは異なる、担持用粒子と、
触媒貴金属と
を含み、
触媒貴金属が、排ガス浄化触媒用粒子及び担持用粒子のうちの少なくとも一方に担持されている、
排ガス浄化触媒(第2の排ガス浄化触媒)が提供される。
【0070】
第2の排ガス浄化触媒における担持用粒子は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子から構成されており、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ce等から選択される、1種、又は2種以上の元素の酸化物であってよく、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ複合酸化物、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ)等であってよい。また、これらに、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Ce以外の希土類元素等が配合されたものも、この場合の担持用粒子に包含される。
【0071】
第2の排ガス浄化触媒における触媒貴金属は、第1の排ガス浄化触媒の触媒貴金属として上述した貴金属から選択されてよい。
【0072】
この第2の排ガス浄化触媒は、例えば、本発明の排ガス浄化触媒用粒子及び担持用粒子を、貴金属前駆体を含有する溶液中に浸漬した後、焼成することによって製造されてよい。これらの粒子を貴金属前駆体溶液に浸漬した後、焼成前に、必要に応じて乾燥が行われてもよい。
【0073】
貴金属前駆体を含有する溶液、乾燥、及び焼成については、第1の排ガス浄化触媒の製造についての説明を、そのまま採用してよい。
【0074】
《排ガス浄化触媒装置》
本発明の更に別の観点によると、
基材と、基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
コート層が、上記に説明した本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含む、
排ガス浄化触媒装置(第1の排ガス浄化触媒装置)が提供される。
【0075】
第1の排ガス浄化触媒装置における基材は、公知の排ガス浄化触媒装置における基材として知られているものの中から、適宜に選択されてよい。例えば、コージェライト、メタル等の適宜の材料から構成されたハニカム基材であってよい。このハニカム基材は、ストレートフロー型であってもよく、ウォールフロー型であってもよい。
【0076】
コート層は、基材上に形成されていてよい。
【0077】
このコート層は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含む。第1の排ガス浄化触媒装置における排ガス浄化触媒用粒子は、触媒貴金属が担持されている場合を含まない。
【0078】
コート層は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外に、他の成分を含んでいてよい。他の成分は、例えば、触媒貴金属、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子、バインダー等から選択されてよい。
【0079】
第1の排ガス浄化触媒装置における触媒貴金属は、白金族元素から選択される1種又は2種以上の貴金属であってよく、例えば、Pt、Pd、及びRhから選択される、1種、2種、又は3種であってよい。
【0080】
第1の排ガス浄化触媒装置における、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子は、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ce等から選択される、1種、又は2種以上の元素の酸化物であってよい。
【0081】
第1の排ガス浄化触媒装置のコート層が触媒貴金属を含むとき、当該コート層は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子も含み、触媒貴金属は、この本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子に担持されていてよい。
【0082】
第1の排ガス浄化触媒装置は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含むコート層を、1層のみ有していてもよいし、このコート層を2層以上有していてもよい。また、第1の排ガス浄化触媒装置は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含むコート層以外のコート層を、更に有していてもよい。本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含むコート層以外のコート層は、公知の排ガス浄化触媒装置における任意のコート層であってよい。
【0083】
第1の排ガス浄化触媒装置は、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
【0084】
しかしながら、第1の排ガス浄化触媒装置は、例えば、基材上に、本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含む塗工液をコートした後、焼成する方法によって製造されてよい。この塗工液は、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外に、任意成分又はその前駆体を、更に含んでいてよい。塗工液のコート後、焼成前に、必要に応じて乾燥が行われてもよい。
【0085】
塗工液のコート、乾燥、及び焼成は、それぞれ、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を加えた方法により、行われてよい。
【0086】
本発明の更に別の観点によると、
基材と、基材上のコート層とを有する、排ガス浄化触媒装置であって、
コート層が、上記に説明した本発明の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置(第2の排ガス浄化触媒装置)が提供される。
【0087】
第2の排ガス浄化触媒装置における基材は、第1の排ガス浄化触媒装置における基材と同様であってよい。
【0088】
第2の排ガス浄化触媒装置のコート層は、上記の基材上に形成されていてよい。
【0089】
このコート層は、本発明の排ガス浄化触媒を含む。排ガス浄化触媒は、第1の排ガス浄化触媒及び第2の排ガス浄化触媒から選択される、1種又は2種であってよい。
【0090】
コート層は、本発明の排ガス浄化触媒以外に、他の成分を含んでいてよい。他の成分は、例えば、本発明の排ガス浄化触媒用粒子(触媒貴金属が担持されていないもの)、触媒貴金属、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子、バインダー等から選択されてよい。
【0091】
第2の排ガス浄化触媒装置における触媒貴金属、及び、本発明の排ガス浄化触媒用粒子以外の無機酸化物粒子は、それぞれ、第1の排ガス浄化触媒装置の場合と同様であってよい。
【0092】
第2の排ガス浄化触媒装置は、本発明の排ガス浄化触媒を含むコート層を、1層のみ有していてもよいし、このコート層を2層以上有していてもよい。また、第2の排ガス浄化触媒装置は、本発明の排ガス浄化触媒を含むコート層以外のコート層を、更に有していてもよい。本発明の排ガス浄化触媒を含むコート層以外のコート層は、例えば、本発明の排ガス浄化触媒用粒子を含むコート層、及び公知の排ガス浄化触媒装置における任意のコート層から選択される1層又は2層以上であってよい。
【0093】
第2の排ガス浄化触媒装置は、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
【0094】
しかしながら、第2の排ガス浄化触媒装置は、例えば、基材上に、本発明の排ガス浄化触媒を含む塗工液をコートした後、焼成する方法によって製造されてよい。この塗工液は、本発明の排ガス浄化触媒以外に、任意成分又はその前駆体を、更に含んでいてよい。塗工液のコート後、焼成前に、必要に応じて乾燥が行われてもよい。
【0095】
塗工液のコート、乾燥、及び焼成は、それぞれ、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を加えた方法により、行われてよい。
【実施例0096】
《粒子の分析方法》
1.結晶子径
無機被覆層を有する試料については、無機被覆層を構成する無機酸化物の結晶子径を、XRDから求めた。具体的には、セリアの(3,1,1)面に帰属される2θ=56°のピークの半値幅βを用い、下記のシェラー(Scherrer)式によって算出した。
D=Κ×λ/(β×cosθ)
{式中、Dは結晶子径であり、はΚシェラー定数であり、λはX線の波長であり、βはピークの半値幅であり、θはブラッグ角である。}
【0097】
XRDの測定は、以下の条件にて行った。
検出器:(株)リガク製、試料水平型強力X線回折装置「RINT-TTR III」
管球:CuKα(波長1.5418Å)
出力:40kV-250mA
測定角度範囲(2θ):5~85°
サンプリング間隔:0.02°
【0098】
2.細孔容積及び比表面積
各実験例で得られた試料の細孔容積及び比表面積を、窒素吸着法により測定した。具体的には以下の操作を行った。
【0099】
各実験例で得られた試料約100mgを精秤し、吸着水を除去するため、150℃において3時間加熱する前処理を行った。前処理後の試料を、Micrometrics Instrument社製の表面積・多孔質分析装置、「TriStar II 3020」にセットし、液体窒素温度(77.35K)において、飽和蒸気圧(P)に対する相対圧(P/P)0.01~0.995の範囲で窒素を吸着させて、各相対圧における窒素吸着量を調べ、細孔容積及び比表面積を算出した。比表面積の測定は、BET法によった。
【0100】
3.比表面積
各実験例で得られた試料の比表面積は、吸着室として窒素を用いて、BET法により測定した。
【0101】
3.嵩密度
各実験例で得られた試料約20gを精秤し、メスシリンダーに投入して体積を測定した。得られた試料重量(g)及び体積(mL)を下記式に代入して、嵩密度を算出した。
嵩密度(g/mL)=試料重量(g)/試料体積(mL)
【0102】
4.熱伝導率
各実験例で得られた試料の熱伝導率は、スウェーデン国、Hot Disk AB(aktiebolag)製のホットディスク法熱物性測定装置、形式名「TPS 500S」を用いて、金型サイズ2.4cmΦ、試料充填高さ1.0cm、測定圧力20cmNの条件下、室温(24±2℃)にて測定した。
【0103】
《比較例1》
嵩密度0.40g/cm、細孔径容積が0.96cm/g、比表面積が105m/g、ランタナ含量が1質量%のアルミナ粒子(アルミナ(1))について、評価を行った。
【0104】
《比較例2及び3》
表1に記載の物性を示すアルミナ(2)及びアルミナ(3)について、それぞれ評価を行った。
【0105】
《実施例1~3》
比較例1~3で用いたのと同種のアルミナを、それぞれ、大気中で1,200℃にて5時間焼成することにより、実施例1~3のアルミナ粒子を得た。これらのアルミナ粒子について、評価を行った。
【0106】
比較例1~3及び実施例1~3の結果を、表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1から以下のことが理解される。
【0109】
比較例1~3で評価したアルミナ(1)~(3)は、排ガス浄化触媒装置の触媒層に一般的に用いられている無機酸化物であるが、熱伝導率が不十分であった。しかしながら、これらのアルミナを高温焼成した実施例1~3のアルミナは、いずれも高い熱伝導率を示した。この熱伝導率の向上は、高温焼成によって、アルミナの結晶子が成長して結晶子径が大きくなったことに起因すると考えられる。また、高温焼成後のアルミナは、細孔容積及び比表面積が減少した。これらのことも、熱伝導率の向上に関係していると考えられる。
【0110】
《比較例4》
比較例2で使用したのと同じアルミナ(2)450gと、セリア粒子50gとを、乾式混合して得た混合粒子について、評価を行った。
【0111】
《比較例5》
比較例2で使用したのと同じアルミナ(2)450gを、CeO換算のCe濃度が4.5質量%の硝酸セリウム水溶液1,111g(CeO換算のCe量50g)中に浸漬し、室温にて1時間撹拌した後、大気中で250℃にて8時間乾燥し、次いで、大気中で500℃にて2時間焼成することにより、比較例5のセリア-アルミナ複合粒子を得た。このセリア-アルミナ複合粒子について、評価を行った。
【0112】
《比較例6》
比較例2で使用したのと同じアルミナ(2)450gに、CeO換算のCe濃度が16.4質量%の硝酸セリウム水溶液304.9g(CeO換算のCe量50g)を噴霧し、大気中で250℃にて8時間乾燥した後、大気中で500℃にて2時間焼成することにより、比較例6のセリア-アルミナ複合粒子を得た。このセリア-アルミナ複合粒子について、評価を行った。
【0113】
《比較例7》
比較例2で使用したのと同じアルミナ(2)400gに、CeO換算のCe濃度が16.4質量%の硝酸セリウム水溶液609.8g(CeO換算のCe量100g)を噴霧し、大気中で250℃にて8時間乾燥した後、大気中で500℃にて2時間焼成することにより、比較例7のセリア-アルミナ複合粒子を得た。このセリア-アルミナ複合粒子について、評価を行った。
【0114】
《実施例4》
比較例6と同様にして得られたセリア-アルミナ複合粒子を、大気中で1,200℃にて5時間焼成することにより、実施例4のセリア-アルミナ複合粒子を得た。このセリア-アルミナ複合粒子について、評価を行った。
【0115】
比較例4~7及び実施例4の、試料調製条件を表2に、評価結果を表3に、それぞれ示す。表2及び表3には、比較例2の結果も合わせて示す。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
比較例4~7及び実施例4では、アルミナ及びセリアから成る粒子についての検討を行った。
【0119】
表2及び表3から、以下のことが理解される。
【0120】
アルミナ(2)とセリアとを乾式混合した比較例4、アルミナ(2)をセリア前駆体含有溶液に浸漬した後に焼成した比較例5、並びにアルミナ(2)にセリア前駆体含有溶液を噴霧した後に焼成した比較例6及び7で得られた粒子は、比較例2の未処理のアルミナ(2)と比較して、熱伝導率が実質的に向上していないか、向上していたとしてもその程度は不足であった。これらの粒子では、セリアの導入によるアルミナの結晶子径の増大の程度は少なかった。
【0121】
これらに対して、比較例6と同様にして得られた粒子を高温焼成した実施例4の粒子は、高い熱伝導率を示した。実施例4の粒子では、比較例2の未処理のアルミナ(2)と比較して、結晶子径が大きくなっており、細孔容積及び比表面積が減少していた。
【0122】
《排ガス浄化触媒装置の排ガス浄化性能の評価》
下記の比較例8及び実施例5でそれぞれ得られた排ガス浄化触媒装置を、常圧固定床式流通反応装置に設置し、ストイキ相当の排ガスモデルガス(下記組成)を流通させながら、ガス温度を100℃から600℃まで20℃/分の昇温速度で昇温して、排ガス浄化触媒装置からの排出ガス中のHC濃度、CO濃度、及びNOx濃度を連続的にモニターした。このとき、HC、CO、及びNOxそれぞれの浄化率が、50%に達したガス温度(50%浄化温度)を調べた。
【0123】
排ガスモデルガスの組成は、以下のとおりとした。以下の濃度は、いずれも、標準状態の質量比である。
HC:1,500ppm
CO:2,600ppm
NO:1,650ppm
:0.27%
CO:7.0%
O:1.5%
;バランス
【0124】
《比較例8》
比較例8では、上記の比較例1で用いたアルミナ(1)を担体粒子として用い、これに触媒貴金属としてのPdを担持して排ガス浄化触媒を調製し、これを用いて排ガス浄化触媒装置を製造して、排ガス浄化性能の評価を行った。
【0125】
アルミナ(1)の450gをイオン交換水1,000mL中に分散し、金属Pd換算のPd含有量が8.44質量%の硝酸パラジウム水溶液26.7g(金属Pd換算のPd量2.25g)を添加して、室温にて1時間撹拌した。吸引ろ過器を用いて、撹拌後の混合物から固形分を回収し、大気中で110℃にて2時間乾燥後、大気中で500℃にて2時間焼成して、排ガス浄化触媒を得た。
【0126】
一方、吸引ろ過時のろ液を、ICP発光分析によって分析したところ、ろ液からPdは検出されず、したがって、上記で得られた排ガス浄化触媒におけるPdの担持効率は、100%であり、そのPd担持率は、アルミナ(1)の質量を100質量%として、0.5質量%であった。
【0127】
上記で得られた排ガス浄化触媒300gを、イオン交換水450mLと混合し、ボールミルにより湿式粉砕することにより、平均粒径が5μmに調整された排ガス浄化触媒のスラリーを得た。
【0128】
基材として、直径30mm、長さ50mm(容積0.035L)のコージェライト製モノリスハニカム担体を用い、この担体に、乾燥後コート量が3.5g(100g/L)となるように、上記のスラリーを塗布した。次いで、大気中で250℃にて2時間乾燥した後に、大気中で500℃にて2時間焼成することにより、排ガス浄化触媒装置を得た。
【0129】
得られた排ガス浄化触媒装置を用いて、上述の手法によって、触媒性能の評価を行った。
【0130】
《実施例5》
担体粒子として、アルミナ(1)の代わりに実施例1で得られた1,200℃焼成後のアルミナ粒子を用いた他は、比較例8と同様にして排ガス浄化触媒装置を製造して、その排ガス浄化性能の評価を行った。
【0131】
比較例8及び実施例5でそれぞれ得られた排ガス浄化触媒装置の排ガス浄化性能を、表4に示す。
【0132】
【表4】
【0133】
実施例5の排ガス浄化触媒装置は、比較例8の排ガス浄化触媒装置と比べて、HC、CO、及びNOxの50%浄化温度が低かった。これは、実施例5の排ガス浄化触媒装置は、結晶子径が大きく、熱伝導率が高い本発明の排ガス浄化触媒用粒子をコート層中に含むため、暖機され易いことによると考えられる。