IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

特開2024-49283ステレオカメラの校正装置及び校正方法
<>
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図1
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図2A
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図2B
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図3
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図4A
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図4B
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図5
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図6
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図7
  • 特開-ステレオカメラの校正装置及び校正方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049283
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ステレオカメラの校正装置及び校正方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/80 20170101AFI20240402BHJP
   G01C 3/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G06T7/80
G01C3/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024293
(22)【出願日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022154895
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小甲 啓隆
【テーマコード(参考)】
2F112
5L096
【Fターム(参考)】
2F112AC03
2F112AC06
2F112CA12
2F112DA01
2F112FA03
2F112FA23
2F112FA39
2F112FA45
5L096AA06
5L096CA05
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】ステレオカメラの光軸を一対のコリメータから出射されるコリメータ光に基づいて校正するに際し、両コリメータの光軸の平行度がずれた場合でも調整を不要とする。
【解決手段】ステレオカメラ校正装置は、カメラ5a,5bを有するステレオカメラユニット5と、コリメータ2a,2bを有するコリメータユニット2と、リファレンスカメラ2a,2bを有するリファレンスカメラユニット2と、制御部4とを備え、制御部4は、コリメータ2a,2bから出射されるコリメート光を受光したリファレンスカメラ3a,3bの撮像面の座標を求め、両座標の差分からコリメータ2a,2bの光軸の変位量を算出し、コリメータ2a,2bから出射されるコリメート光を受光したカメラ5a,5bの撮像面の座標を求め、両座標の差分からカメラ5a,5bの光軸の変位量を算出し、両変位量の差分からカメラ5a,5bの校正値を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基線長で配置された第1カメラ及び第2カメラを有するステレオカメラユニットと、
前記基線長と同一の距離を隔ててアームに固定されている第1コリメータ及び第2コリメータを有するコリメータユニットと、
前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの撮像面の座標を求め、該両座標の差分から前記第1カメラと前記第2カメラとの光軸の変位量を算出するカメラ変位量算出部を有する制御部と
を備えるステレオカメラの校正装置において、
前記基線長と同一の基線長で固定されている第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラを有するリファレンスカメラユニットを更に備え、
前記制御部は、
前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記リファレンスカメラユニットの第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラとの撮像面の座標を求め、該両座標の差分から前記第1コリメータと前記第2コリメータとの光軸の変位量を算出するコリメータ変位量算出部と、
前記コリメータ変位量算出部で算出した前記変位量と前記カメラ変位量算出部で算出した前記変位量との差分から前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの校正値を算出する校正値算出部と
を更に備えることを特徴とするステレオカメラの校正装置。
【請求項2】
前記コリメータユニットは前記アームを変位させる駆動部を有し、
前記制御部は、前記駆動部を駆動させて前記コリメータユニットの第1コリメートと第2コリメートとから出射されるコリメート光の一方が、該コリメート光を受光する前記リファレンスカメラユニットの前記第1リファレンスカメラと前記第2リファレンスカメラとの一方の撮像面の予め設定した所定範囲の座標で受光するように調整する
ことを特徴とする請求項1記載のステレオカメラの校正装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記駆動部を駆動させて前記コリメータユニットの第1コリメートと第2コリメートとから出射されるコリメート光の一方が、該コリメート光を受光する前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの一方の撮像面に対し、前記リファレンスカメラユニットの前記第1リファレンスカメラと前記第2リファレンスカメラとの一方の撮像面に受光した座標に一致する座標で受光するように調整する
ことを特徴とする請求項2記載のステレオカメラの校正装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記校正値算出部で算出した前記校正値を0にする画像オフセット量を算出する画像オフセット量算出部を更に有する
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のステレオカメラの校正装置。
【請求項5】
所定の基線長で配置された第1カメラ及び第2カメラを有するステレオカメラユニットと、
前記基線長と同一の距離を隔ててアームに固定されている第1コリメータ及び第2コリメータを有するコリメータユニットと、
前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの撮像面の座標を求め、前記両座標の差分から前記第1カメラと前記第2カメラとの光軸の変位量を算出する制御部と
を備えるステレオカメラの校正方法において、
前記基線長と同一の基線長で固定されている第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラを有するリファレンスカメラユニットを更に備え、
前記制御部は、
前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記リファレンスカメラユニットの第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラとの撮像面の座標を求め、該両座標の差分から前記第1コリメータと前記第2コリメータとの光軸の変位量を算出し、
前記両変位量の差分から前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの校正値を算出する
ことを特徴とするステレオカメラの校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラユニットを構成する第1カメラと第2カメラ間の光軸の変位量を算出するステレオカメラの校正装置及び校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間を3次元的に認識する技術として、いわゆるステレオ法による画像処理が知られている。このステレオ法による画像処理は、所定の基線長を有して配置された2台のカメラを備えるステレオカメラユニットで同一対象物を撮像した際の視差から三角測量の原理を利用して距離を求めるものである。
【0003】
ステレオ法による画像処理では、ステレオカメラユニットからの2つの画像信号を順次シフトしながら重ね合わせて2つの画像信号が一致した位置を求めるようにしている。そのため、本来、2つの画像間には、視差から生じる対応位置のズレのみが存在することが望ましい。そのため、ステレオカメラユニットにて対象物の三次元的位置を精度良く算出するには、少なくとも2台のカメラ間の位置関係を示すパラメータ(以下、「外部パラメータ」と称する)の校正(キャリブレーション)を行う必要がある。
【0004】
左右カメラ間の外部パラメータを校正(「較正」と称する場合もある)するに際しては、図8に示すように、先ず、左右カメラC1,C2に対し、奥行き(z)方向の基準となる距離Lだけ離れた位置の正面にキャリブレーションボードCbを提示する。そして、2台の左右カメラC1,C2にてキャリブレーションボードCbを撮影し、その画像に基づいて左右カメラC1,C2間の外部パラメータ、特に、視差(x)方向に関わるパラメータを校正する。
【0005】
左右カメラC1,C2の外部パラメータの校正を精度良く行うには、奥行き(z)方向の距離Lを数~数十[m]確保する必要がある。しかし、カメラの校正(キャリブレーション)工程において、そのような充分なスペースを確保することは困難である。
【0006】
その対策として、例えば特許文献1(特開2019-90755号公報)には、ステレオカメラの奥行き方向に、キャリブレーションボードを無限遠に配置したと同様の光学条件を提供するコリメータを、ステレオカメラに設けた2台のカメラに対応して一対配設した技術が開示されている。この文献に開示されている技術では、各コリメータから出射されるコリメート光(平行光)を、ステレオカメラの各カメラで撮像することで、無限遠に相当する視差を測定し、その測定データに基づき、省スペースで効率的なステレオカメラの校正を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-90755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1に開示されている技術は、各コリメータから出射されるコリメート光は常に平行であるということが前提となっている。支持体に支持されている一対のコリメータの平行度は、経時的にずれが生じやすいため、定期的に検査し、調整する必要がある。
【0009】
ステレオカメラの校正装置をカメラの校正工程で稼働させようとする場合、支持体に支持されている一対のコリメータの平行度を定期的に検査し、調整するには、連続的にカメラの検査を行つているラインを所定周期毎に一時停止し、一対のコリメータ光軸を調整する作業が必要になる。その結果、生産効率の低下を招くことになる。
【0010】
本発明は、ステレオカメラユニットの光軸を一対のコリメータから出射されるコリメータ光に基づいて校正するに際し、一対のコリメータの光軸の平行度が経時的にずれた場合であっても、カメラの検査ラインを一時停止して一対のコリメータの光軸を調整する必要がなく、高い生産効率を得ることのできるステレオカメラの校正装置及び校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、所定の基線長で配置された第1カメラ及び第2カメラを有するステレオカメラユニットと、前記基線長と同一の距離を隔ててアームに固定されている第1コリメータ及び第2コリメータを有するコリメータユニットと、前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの撮像面の座標を求め、該両座標の差分から前記第1カメラと前記第2カメラとの光軸の変位量を算出するカメラ変位量算出部を有する制御部とを備えるステレオカメラの校正装置において、前記基線長と同一の基線長で固定されている第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラを有するリファレンスカメラユニットを更に備え、前記制御部は、前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記リファレンスカメラユニットの第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラとの撮像面の座標を求め、該両座標の差分から前記第1コリメータと前記第2コリメータとの光軸の変位量を算出するコリメータ変位量算出部と、前記コリメータ変位量算出部で算出した前記変位量と前記カメラ変位量算出部で算出した前記変位量との差分から前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの校正値を算出する校正値算出部とを更に備える。
【0012】
本発明は、所定の基線長で配置された第1カメラ及び第2カメラを有するステレオカメラユニットと、前記基線長と同一の距離を隔ててアームに固定されている第1コリメータ及び第2コリメータを有するコリメータユニットと、前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの撮像面の座標を求め、前記両座標の差分から前記第1カメラと前記第2カメラとの光軸の変位量を算出する制御部とを備えるステレオカメラの校正方法において、前記基線長と同一の基線長で固定されている第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラを有するリファレンスカメラユニットを更に備え、前記制御部は、前記第1コリメータと前記第2コリメータとから出射されるコリメート光を受光した前記リファレンスカメラユニットの第1リファレンスカメラ及び第2リファレンスカメラとの撮像面の座標を求め、該両座標の差分から前記第1コリメータと前記第2コリメータとの光軸の変位量を算出し、前記両変位量の差分から前記ステレオカメラユニットの前記第1カメラと前記第2カメラとの校正値を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コリメータユニットの第1、第2コリメータから出射されるコリメート光を受光したリファレンスカメラユニットの第1、第2リファレンスカメラの撮像面の座標を求め、この両座標の差分から第1、第2コリメータの光軸の変位量を算出し、第1、第2コリメータから出射されるコリメート光を受光したステレオカメラユニットの第1、第2カメラの撮像面の座標を求め、両座標の差分から第1、第2カメラの光軸の変位量を算出し、両変位量の差分からステレオカメラユニットの第1、第2カメラの校正値を算出するようにしたので、第1、第2コリメータの光軸の平行度が経時的にずれた場合であっても、カメラの検査ラインを一時停止して一対のコリメータの光軸を調整する必要がなく、高い生産効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ステレオカメラユニット校正装置の概略構成図
図2A】コリメータユニットの概略平面図
図2B】コリメータユニットからのコリメート光をリファレンスカメラで受光した状態を示す概略平面図
図3】検査ラインでのステレオカメラユニットの校正を示す概略図
図4A】平行な一対のコリメート光をステレオカメラの撮像素子に受光させた状態を示す説明図
図4B】平行な一対のコリメート光を傾斜したステレオカメラの撮像素子に受光させた状態を示す説明図
図5】校正対象ステレオカメラの校正を示す説明図
図6】コリメータ変位量算出ルーチンを示すフローチャート
図7】ステレオカメラ校正処理ルーチンを示すフローチャート
図8】従来のステレオカメラユニットの外部パラメータの校正を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示すように、ステレオカメラユニット校正装置1は、コリメータユニット2とリファレンスカメラユニット3と制御部4とを備えている。又、符号5は校正対象ステレオカメラユニットである。尚、本実施形態においては、校正対象ステレオカメラユニット5に設けられている2台の第1、第2カメラ5a,5bの外部パラメータの基準位置に対するズレを計測することを「校正(較正)」と称する。そして、第1、第2カメラ5a,5bで撮像した画像データを校正の結果に基づいて、画像処理により修正することを「補正」と称する。
【0016】
図2Aに示すように、コリメータユニット2は、第1コリメータ2a、第2コリメータ2b、駆動部2cを有し、駆動部2cから図の左右に突出したアーム2dの端部に第1、第2コリメータ2a,2bがマウントベース(図示せず)を介して固設されている。各コリメータ2a,2bは、光源とコリメータレンズとを有し、光源から出射された光線を、コリメータレンズを透過させることで平行光に生成して出射するものである。尚、両コリメータ2a,2bは、校正対象ステレオカメラユニット5の第1カメラ5a、第2カメラ5b(図4参照)の基線長と同じ距離を隔てて固設されており、光軸は平行な状態に初期調整されている。
【0017】
駆動部2cは、制御部4からの駆動信号に従い、アーム2dを、図2Aに示す平面視で回転動作、及び左右へ平行移動させる。アーム2dの回転動作は、例えば内蔵するモータ駆動により行う。又、アーム2dの平行移動は、例えばラック・アンド・ピニオン機構を採用し、アーム2dに形成したラックに噛合するピニオンをモータにて駆動させることで行う。
【0018】
リファレンスカメラユニット3は、第1リファレンスカメラ3aと第2リファレンスカメラ3b(図2B参照)、及び画像処理部3cを備えている。各リファレンスカメラ3a,3bは、CCD,CMOS等の撮像素子と対物レンズとを備え、対物レンズの焦点距離の位置に撮像素子が配置されている。又、この両リファレンスカメラ3a,3bは、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bと同じ基線長を有してアーム(図示せず)に固定されている。尚、図2Bの符号F1は第1カメラ5aに設けられている撮像素子の受光面、F2は第2カメラ5bに設けられている撮像素子の受光面である。画像処理部3cは、第1、第2カメラ5a,5bの撮像素子で受光したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0019】
制御部4は、CPU、RAM、ROM、書き換え可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ又はEEPROM)、及び周辺機器を備えるマイクロコントローラで構成されている。ROMにはCPUにおいて各処理を実行させるために必要なプログラムや固定データ等が記憶されている。又、RAMはCPUのワークエリアとして提供され、CPUでの各種データが一時記憶される。尚、CPUはMPU(Microprocessor)、プロセッサとも呼ばれている。又、CPUに代えてGPU(Graphics Processing Unit)やGSP(Graph Streaming Processor)を用いても良い。或いはCPUとGPUとGSPとを選択的に組み合わせて用いても良い。
【0020】
この制御部4の入力側にリファレンスカメラユニット3の画像処理部3cがバスラインを通じて接続されている。又、制御部の4の出力側にコリメータユニット2の駆動部2c、及び校正対象ステレオカメラユニット5の、後述する画像処理/補正部5cが接続されている。尚、制御部4と校正対象ステレオカメラユニット5の画像処理/補正部5cとは無線によりデータ通信可能であっても良い。
【0021】
図3に示すように、リファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bとは、検査ラインに設定されている校正工程部Pcの天井11に吊下されている。第1、第2リファレンスカメラ3a,3bは、検査ラインに設けたコンベア12の移動方向に指向し、コンベア12に対して、直交し、且つ水平な状態で支持されている。
【0022】
図3に示すように、コリメータユニット2は、天井11から昇降装置14に支持された状態で吊下されている。同図に一点鎖線で示すように、コリメータユニット2が昇降装置14に支持され、上昇端の待機位置で停止している状態では、第1、第2コリメータ2a,2bが、リファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bに対し、コンベア12の移動方向(下流)側にて所定間隔を開けて正対されている。
【0023】
コンベア12には、生産過程にあるステレオカメラユニット5が順次搬送されている。この校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bは、固定治具や別の製品(以下、「カメラ支持機13」と総称する)に固設されている。第1、第2カメラ5a,5bの撮像素子で受光したアナログ信号は、画像処理/補正部5cでデジタル信号に変換される。尚、この画像処理/補正部5cは、後述するように、校正に応じて画像の補正を行う機能を備えている。
【0024】
図3に一点鎖線で示すように、昇降装置14により上昇端へ移動したコリメータ2は待機状態にある。この待機状態においてコリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bは、第1、第2リファレンスカメラ3a,3bに対し、コンベア12の移動方向側から所定間隔を開けて正対される。そして、ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bが校正工程部Pcに接近するに従い昇降装置14が動作してコリメータユニット2を下降させ、ステレオカメラユニット5が校正工程部Pcに到達したとき、下降端で停止する。この状態で、第1、第2コリメータ2a,2bの正面に第1、第2カメラ5a,5bが提示される。
【0025】
製造検査ラインのコンベア12にパレット15が所定間隔を開けて配置されている。このパレット15にカメラ支持機13が載置されている。制御部4は、カメラ支持機13に固定された状態で移動するステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bが校正工程部Pcに近接するタイミングに同期して、コリメータユニット2を支持する昇降装置14の昇降動作を制御する。
【0026】
即ち、制御部4は、ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bが校正工程部Pcに達した際には、昇降装置14を作動させてコリメータユニット2を下降端の校正位置へ移動させる。そして、第1、第2コリメータ2a,2bを、校正対象ステレオカメラユニット5に設けられている第1、第2カメラ5a,5bの前方に提示させる。次いで、制御部4は、昇降装置14を作動させてコリメータユニット2を上昇端の待機位置まで移動させて、第1、第2コリメータ2a,2bを、リファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bに正対させる。
【0027】
制御部4は、コリメータユニット2が上昇端の待機位置で停止している際に、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bから出射されるコリメータ光をリファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bの撮像素子で受光させる。そして、そのときの画像処理部3cからの画像信号に基づいて参照収束座標P1,P2を検出する。
【0028】
又、制御部4は、コリメータユニット2が校正位置まで下降した際に、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bから出射されるコリメータ光を校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの撮像素子で受光させる。そして、そのときの画像処理/補正部5cからの画像信号に基づいて校正収束座標P1',P2'を検出する。
【0029】
ここで、図4A図4Bを参照して、コリメート光の特性を、それを受光する校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bに設けた対物レンズ5aa,5baとその焦点距離の位置に配設した撮像素子5ab,5bbを用いて簡単に説明する。
【0030】
図4Aに示すように、コリメート光(平行光)がカメラの光軸と平行に入射されると、対物レンズ5aa,5baによって、このコリメート光は撮像素子5ab,5bbの光軸上に結像される。従って、校正収束座標P1',P2'は撮像面F1,F2の中心となる。これは、コリメート光を平行に移動させた場合も同様である。
【0031】
一方、図4Bに示すように第1、第2カメラ5a,5b全体を傾斜させた場合、コリメート光の入射角が相対的に変化するため、撮像素子5ab,5bbに対する結像位置は光軸上からずれる。そのため、校正収束座標P1',P2'は撮像面F1,F2の中心とは異なる位置になる。しかし、第1、第2コリメータ2a,2bは常に一定の位置に固定されているとは限らず、連続的な稼働により第1、第2コリメータ2a,2bを支持するマウントベース等の経時的な劣化を原因として傾きが生じ易い。尚、図2A図2Bでは、第2コリメータ2bにのみ傾きが生じた状態が記載されているが、第1コリメータ2aのみに傾きが生じる場合、或いは第1、第2コリメータ2a,2bの双方に傾きが生じる場合もある。
【0032】
その結果、第1、第2コリメータ2a,2bから出射されるコリメート光の平行度が保証されなくなる。しかし、図3に示すように、検査ライン上においてコリメータユニット2は、コンベア12にて搬送されてくる校正対象ステレオカメラユニット5に対し、外部パラメータの校正を逐次連続的に行っている。そのため、第1、第2コリメータ2a,2bから出射されるコリメート光の平行度を、一定周期で調整するには、検査ラインをその都度停止させる必要があり、生産効率の低下を招くことになる。
【0033】
本実施形態は、コリメータユニット2に設けられている第1、第2コリメータ2a,2bから出射されるコリメート光の平行度が劣化により保証されない状態であっても、修正することなく、校正対象ステレオカメラユニット5に設けられている第1、第2カメラ5a,5bの外部パラメータの校正を行うことができるようにしている。
【0034】
制御部4による校正対象ステレオカメラユニット5の校正は、具体的には、図6に示すコリメータ変位量算出ルーチン、図7に示すステレオカメラユニット校正処理ルーチンに従って行われる。尚、図6に示すフローチャートでの処理が、本発明のコリメータ変位量算出部に対応している。
【0035】
図6に示すフローチャートは、校正対象ステレオカメラユニット5が検査ライン上の校正工程部Pcを通過する、予め設定した周期(台数)毎に起動される。先ず、ステップS1で、制御部4は、待機位置で停止しているコリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bから出射されているコリメータ光を、リファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bの撮像素子に受光させる。
【0036】
次いで、ステップS2へ進み、制御部4は、撮像素子で受光した画像を処理した画像処理部3cからの画像信号に基づいて、撮像面F1,F2に結像したコリメータ光の参照収束座標P1,P2を検出する。そして、駆動部2cによりアーム2dを回転移動、及び/又は水平移動させて、参照収束座標P1(又はP2)が、撮像面F1(又はF2)の光軸中心に対して所定範囲内に収まるように調整する。これにより、第1コリメータ2a(第2コリメータ2b)からのコリメート光がリファレンスカメラユニット3の第1リファレンスカメラ3a(第2リファレンスカメラ3b)の光軸とほぼ平行になる。
【0037】
その後、ステップS3へ進み、制御部4は、参照収束座標P1、P2を検出し、光軸の変位量dを算出して、ルーチンを終了する。
【0038】
変位量dは、P1とP2との座標(x,y)の差分である。リファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bの光軸は平行に設定されているため、変位量dが0の場合は、第1、第2コリメータ2a,2bの光軸が平行であることを示している。又、図2Bに示すように、変位量dが0以外の場合は、第1、第2コリメータ2a,2bの光軸がずれていることを示している。
【0039】
この変位量dは、図7に示すステレオカメラユニット校正処理ルーチンを実行する際に読込まれる。このルーチンは、コンベア12によって搬送されるカメラ支持機13に固定されている校正対象ステレオカメラユニット5が、校正工程部Pcに接近するタイミングに同期して実行される。
【0040】
先ず、ステップS11で、制御部4は、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bが校正工程部Pcに接近するタイミングで、昇降装置14を動作させて、コリメータユニット2を校正位置まで下降させる。そして、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bを、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの正面に提示させる。次いで、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bから出射されているコリメータ光を、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの撮像素子に受光させる。
【0041】
次いで、ステップS12へ進み、制御部4は、撮像素子で受光した画像を処理した画像処理/補正部5cからの画像信号に基づいて、撮像面F1',F2'に結像したコリメータ光の校正収束座標P1',P2'を検出する。そして、制御部4は、駆動部2cによりアーム2dを回転移動、及び/又は水平移動させて、収束座標P1,P1'(又はP2,P2')が同じ座標となるように調整する。
【0042】
コンベア12によって搬送される校正対象ステレオカメラユニット5とコリメータユニット2との位置関係は常に同じではなく、校正対象ステレオカメラユニット5が固定されているカメラ支持機13の設置誤差によっても位置関係にズレが生じる。そのため、校正対象ステレオカメラユニット5とコリメータユニット2との位置関係が互いに傾斜する場合がある。従って、第1、第2コリメータ2a,2bの双方を傾斜させたままの状態で、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bに対し、コリメート光を出射すると、第1、第2カメラ5a,5bで撮像した画像に歪みが生じ易い。
【0043】
この場合、図4Aに示すように、第1、第2コリメータ2a,2bを校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bに正対させた状態でコリメート光を出射させれば 、コリメート光は第1、第2カメラ5a,5bの光軸と平行になるため画像の歪みを最小限に抑制することができる。しかし、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bの光軸が平行でない場合、第1、第2コリメータ2a,2bの双方を校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの光軸と平行に設定することは困難である。
【0044】
そのため、本実施形態では、先ず、図6に示すフローチャートのステップS2において、参照収束座標P1(又はP2)が光軸中心で受光するように、コリメータユニット2の傾きを調整する。そして、ステップS12において、収束座標P1,P1'(又はP2,P2')が同じ座標となるように調整し、調整した校正収束座標P1'(又はP2')を基準として、後述するステップS13において変位量d'を算出する。これにより、第1、第2コリメータ2a,2bの第1、第2リファレンスカメラ3a,3bに対する光軸の傾きによる画像の歪みを最小限に抑制することができる。
【0045】
次いで、ステップS13へ進み、制御部4は、校正収束座標P1',P2'を検出し、変位量d'を算出してステップS14へ進む。変位量d'は、P1'とP2'との座標(x,y)の差分である。尚、このステップS13での処理が、本発明のカメラ変位量算出部に対応している。
【0046】
図5に示す校正対象ステレオカメラユニット5に設けた第1、第2カメラ5a,5bの正面に提示されるコリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bは、図2Bに示すリファレンスカメラユニット3に設けた第1、第2リファレンスカメラ3a,3bの正面に提示されたものと同一である。そのため、収束座標P1,P1'(又はP2,P2')が同じ座標となるようにコリメータユニット2の傾きを調整した場合、変位量d'は、座標を調整しなかった側の校正収束座標P2'(又はP1')に表れる。
【0047】
その後、ステップS14へ進み、変位量dを読込む。次いで、ステップS15へ進み、変位量d,d'を比較する。校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの光軸が平行であり、且つ、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bの光軸に変化がない場合、変位量d,d'は一致する(d=d')。又、変位量d,d'が一致していない場合(d≠d')、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの光軸はずれていると判定する。
【0048】
そして、変位量d,d'が同じ場合(d=d')、ステップS20へジャンプする。又、変位量d,d'が異なる場合(d≠d')、ステップS16へ進む。ステップS16では、変位量d,d'の差分から校正値εを算出する(ε=d-d')。制御部4は、ステップS12において、収束座標P1,P1'(又はP2,P2')が同じ座標となるように調整している。従って、この校正値εは、ステップS12で座標が調整されていない側の校正収束座標P2'(又はP1')を示す第1カメラ5a(又は第2カメラ5b)の参照位置に対する校正値となる。尚、ステップS16での処理が、本発明の校正値算出部に対応している。
【0049】
次いで、ステップS17へ進み、校正値εが0になる画像オフセット量Δεを求め、ステップS18で、この画像オフセット量Δεを、校正対象ステレオカメラユニット5の不揮発性メモリに保存させる。この画像オフセット量Δεが外部パラメータのズレに対応する補正量となる。尚、このステップS17での処理が、本発明の画像オフセット量算出部に対応している。
【0050】
その後、ステップS19へ進み、不揮発性メモリに記憶されている画像オフセット量Δεに基づいて、校正した第1カメラ5a(又は第2カメラ5b)の画像を補正し、ステップS20へ進む。尚、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bが校正工程部Pcを通過した後におけるステップS19での処理は、校正対象ステレオカメラユニット5の不揮発性メモリに保存されている画像オフセット量Δεに基づき、画像処理/補正部5cが独立して実行する。
【0051】
ステップS15、或いはステップS19からステップS20へ進むと、制御部4は、昇降装置14を作動させてコリメータユニット2を待機位置まで上昇させて、ルーチンを終了する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態は、コリメータユニット2とリファレンスカメラユニット3と制御部4と備え、制御部4は、先ず、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bからのコリメート光をリファレンスカメラユニット3の第1、第2リファレンスカメラ3a,3bで受光させ、その位置座標(参照収束座標)P1,P2の差分から、第1、第2コリメータ2a,2bの位置ずれによって生じるコリメート光の変位量dを算出する。
【0053】
次いで、制御部4は、同じコリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bからのコリメート光を、カメラ支持機13に固定されている校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bに照射して受光させ、その位置座標(校正収束座標)P1',P2'の差分から変位量d'を算出する。
【0054】
この変位量d'には、第1、第2コリメータ2a,2bの光軸ズレによる因子と、外部パラメータによるズレの因子との双方が含まれている。そのため、変位量d,d'の差分を求めて、第1、第2コリメータ2a,2bの光軸ズレによる因子を除き、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの外部パラメータによる校正値εを算出する。
【0055】
従って、コリメータユニット2の第1、第2コリメータ2a,2bに光軸ズレが生じた場合であっても、第1、第2コリメータ2a,2bの光軸を調整する必要が無くなる。その結果、第1、第2コリメータ2a,2bの光軸を調整するために検査ラインを一時停止させること無く、校正対象ステレオカメラユニット5の第1、第2カメラ5a,5bの校正を連続して行える。そのため、高い生産効率を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…ステレオカメラユニット校正装置、
2…コリメータユニット、
2a,2b…第1、第2コリメータ、
2c…駆動部、
2d…アーム、
3…リファレンスカメラユニット、
3a,3b…第1、第2リファレンスカメラ、
3c…画像処理部、
4…制御部、
5…校正対象ステレオカメラユニット、
5aa,5ba…対物レンズ、
5a,5b…第1、第2カメラ、
5ab,5bb…撮像素子、
5c…画像処理/補正部、
11…天井、
12…コンベア、
13…カメラ支持機、
14…昇降装置、
15…パレット、
F1,F2,F1',F2'…撮像面、
L…距離、
P1、P2…参照収束座標、
P1',P2'…校正収束座標、
d,d'…変位量、
Δε…画像オフセット量、
ε…校正値
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8