(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049318
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光伝送システム、光伝送装置および光伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/296 20130101AFI20240402BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04B10/296
H04J14/02 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105527
(22)【出願日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】17/954,985
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】向井 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】歩行田 祥人
(72)【発明者】
【氏名】ファラ デイビッド ダル
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA53
5K102AD01
5K102MA03
5K102MB09
5K102MC11
5K102MD02
5K102MD04
5K102MD07
5K102PH11
5K102PH31
5K102PH47
5K102PH48
5K102RB12
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】伝送経路上で信号断が生じても挿入された信号光のレベルを安定して伝送できること。
【解決手段】光伝送装置100には、伝送経路101上の信号光の信号断を検出した上流側の他の光伝送装置100からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力される。光伝送装置100は、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチ121を有する。光伝送装置100の制御部130は、上流の他の光伝送装置100から信号断の情報の入力に基づき、波長選択光スイッチ121の出力を、信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替える。制御部130は、ASE光の入力後には、減衰量一定制御を出力一定制御に戻す制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送経路上の信号光の信号断を検出した他の光伝送装置からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力され、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチを有する光伝送装置において、
前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、前記信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、
前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、
制御を行う制御部を有する、
ことを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記信号断時の前記信号光の波長数の変化を所定の閾値と比較し、前記信号断時の前記信号光の波長数の変化が前記閾値を超える場合、
自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項4】
前記他の光伝送装置は、前記信号光の信号断復旧時に、前記ASE光の接続断の情報の後、前記信号光の信号復旧の情報を出力し、
前記制御部は、
前記他の光伝送装置から信号断復旧時、はじめに入力される前記ASE光の接続断の情報に基づき、自装置から挿入した前記信号光および前記ASE光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記他の光伝送装置から信号断復旧時、次に入力される前記信号光の信号断復旧の情報に基づき、前記伝送経路上の前記信号光、および自装置から挿入した前記信号光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項5】
伝送経路上に複数の光伝送装置が配置され、前記伝送経路の上流側で信号光の信号断を検出する第1の光伝送装置と、
前記伝送経路の下流側に配置された一つまたは複数の第2の光伝送装置と、を含む光伝送システムにおいて、
前記第1の光伝送装置は、
ASE光源と、
第1の制御部と、を含み、
前記第1の制御部は、
前記伝送経路から入力される信号光の信号断の検出時、
前記信号光の信号断の情報を下流に出力後、前記ASE光源から前記信号光と同じ波長数のASE光を下流に出力し、
前記第2の光伝送装置は、
信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチと、
第2の制御部と、を含み、
前記第2の制御部は、
前記第1の光伝送装置が出力する前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、挿入された信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、
前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、
制御を行う、
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項6】
前記第2の制御部は、
前記信号断時の前記信号光の波長数の変化を所定の閾値と比較し、前記信号断時の前記信号光の波長数の変化が前記閾値を超える場合、
自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光伝送システム。
【請求項7】
伝送経路上の信号光の信号断を検出した他の光伝送装置からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力され、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチを有する光伝送装置の光伝送方法において、
前記光伝送装置は、
前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、前記信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、
前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、
制御を行うことを特徴とする光伝送方法。
【請求項8】
前記光伝送装置は、
前記信号断時の前記信号光の波長数の変化を所定の閾値と比較し、前記信号断時の前記信号光の波長数の変化が前記閾値を超える場合、
自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システム、光伝送装置および光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重Wavelength Division Multiplexing(WDM)の光伝送システムでは、ネットワーク上の各ノード(局)にReconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer(ROADM)あるいはOptical Cross Connect(OXC)を配置することで、各局のROADM間で複数の波長の信号光を挿入および分岐することができる。ROADMおよびOXCは、光アンプ、Wavelength Selective Switch波長選択光スイッチ(WSS)等を含む。
【0003】
各局は、装置内部にAmplified Spontaneous Emission(ASE)光源を有し、伝送路の信号光の信号断時には、ASE光を挿入する。信号断は、例えば、自然あるいは故意のファイバ切断やファイバ抜き作業等により生じる。信号断が生じた障害箇所より下流局では、信号光の波長数減少が生じ、Stimulated Raman Scattering(SRS)やSpectral Hole Burning(SHB)等の変化により、下流局間で伝送状態の信号光に対するチルトやレベル変動が生じる。これら信号光に対するチルトやレベル変動を抑えるため、例えば、障害検出した局は、信号断のチャネル(CH)に変えてASE光を挿入する。障害検出した局は、信号光のCH断を検出すると、内蔵されたASE光源に切り替えを行い、下流局は、そのASE光に対して信号光と同じレベルで制御を行う。
【0004】
先行技術として、例えば、一部の波長のみの断または変動を検出すると、自動レベル一定制御を停止させ、光アンプの利得を固定し、断になった波長が復旧するまで、固定利得制御にしておき、他の波長の信号エラーを起こすことを防ぐ技術がある。また、ある波長の信号光の光入力断による波長数が変化した場合、光アンプをAutomatic Level Control(ALC)からAutomatic Gain Control(AGC)に切り替え、光入力断となった波長に対応する光減衰量を最大値に設定し、復旧の待機状態にし、安定した光伝送を行う技術がある。
【0005】
また、信号光の入力断以前では光減衰量を出力一定制御し、信号光が入力断すると減衰量を一定制御に変更し、信号光が復旧した場合に出力一定制御に戻すことで、信号光の復旧直後でも光出力を目標値に一致させる技術がある。また、伝送路や局内ファイバ抜きでの波長数減少により、SRSやSHBなどが変化することによるチルトやレベル変動を抑えるために、信号が抜けたCHにASE光を挿入する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-244411号公報
【特許文献2】特開2000-236301号公報
【特許文献3】国際公開第2004/057778号(特許3954072号)
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0076499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、ファイバ抜きによるあるCHの信号断後、ASE光が挿入されるまでには、Photo Diode(PD)やOptical Channel Monitor(OCM)等の検出部による信号断の検出時間と、WSSによるASE挿入への切り替え時間とが必要となり、例えば、信号断後、合計10秒程度の挿入遅延が発生する。加えて、障害箇所より下流局では、10秒程度の挿入遅延の期間中に、全CHに対する出力一定制御を行うと、波長数が減少した残CHを目標レベルに収束させるWSS制御に時間を要した。この後、ASE光が入力されると、再度SRSの変化により、WSSの制御が収束するまでにさらに時間を要した。このため、障害箇所より下流局で挿入された信号光は、信号断時、信号レベルの収束に時間を要し、安定した伝送が行えなかった。
【0008】
一つの側面では、本発明は、伝送経路上で信号断が生じても挿入された信号光のレベルを安定して伝送できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、伝送経路上の信号光の信号断を検出した他の光伝送装置からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力され、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチを有する光伝送装置において、前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、前記信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、制御を行う制御部を有する、ことを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、伝送経路上で信号断が生じても挿入された信号光のレベルを安定して伝送できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる光伝送装置の構成図である。
【
図2】
図2は、実施の形態にかかる光伝送システムの構成例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、2つの光伝送装置の接続構成例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、光伝送装置の制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、正常時の信号光の伝送経路を示す説明図である。
【
図4B】
図4Bは、信号断時の信号光の伝送経路を示す説明図である。
【
図5】
図5は、信号断発生時の光伝送装置の伝送制御例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、信号断復旧時の光伝送装置の伝送制御例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、従来技術の光伝送システムの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、従来技術と実施の形態における信号断時の信号光のレベル変化の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、開示の光伝送システム、光伝送装置および光伝送方法の実施の形態を詳細に説明する。光伝送装置は、例えば、所定のネットワークの各局(ノード)にそれぞれ配置されるROADMあるいはOXCである。複数の局をネットワーク接続することで、各局間で任意の波長の信号光を分岐、挿入および通過可能な光伝送システムが構築される。
【0013】
実施の形態の光伝送装置は、ファイバ抜き等による伝送路の信号断の障害発生時、障害箇所より下流局から挿入される信号光のレベル変動を抑え、安定した伝送を行うようにする。以下の説明では、障害発生個所より下流局が挿入する信号光を挿入光とも言う。
【0014】
(実施の形態の光伝送装置の概要)
図1は、実施の形態にかかる光伝送装置の構成図である。はじめに、実施の形態にかかる光伝送装置の概要について説明する。
図1は、例えば、ROADMからなる光伝送装置100を示している。
【0015】
この光伝送装置100では、前段のPRE部110と、後段のPOST部120と、制御部130と、マルチプレクサ(MUX)140と、ASE光源150と、を含む。光伝送装置100は、ネットワーク上で信号光を光伝送する光伝送路等の伝送経路101の一端に、前段のPRE部110が接続され、装置内の内部経路170を介してPOST部120を介して再び伝送経路101の他端に接続される。
【0016】
PRE部110は、内部経路170上に配置された光増幅器(AMP)111、WSS112、光増幅器111の前段の分岐出力に配置されたOptical Supervisory Channel(OSC)113を含む。OSC113は伝送経路101上の信号光に、異なる波長帯のOSC信号(監視信号)を分岐あるいは挿入する。
【0017】
光増幅器111は、内部経路170上の信号光を光増幅する。WSS112は、複数の波長の各信号光を任意に分岐挿入する。WSS112は、WSS制御部133の制御に基づき、正常時の動作では出力一定制御を行う。出力一定制御は、WSS112に入力される複数の波長の信号光の出力レベルが所定のターゲットレベルになるよう増減させる制御を行う。
【0018】
信号光の信号断を検出した局より下流局の光伝送装置100のWSS制御部133は、WSS制御として、正常時には出力一定制御を行い、信号断の際には、ASE光の挿入までの期間は、一時的に減衰量一定制御(ATT一定制御)に切り替える制御を行う。ATT一定制御では、入力される信号光(挿入光)に対する減衰量が一定となるよう保持(固定)する制御を行う。これら出力一定制御とATT一定制御とを切り替えるWSS制御の詳細は後述する。
【0019】
ところで、
図1には、便宜上、WSS121は信号光の分岐を記載していないが、任意の波長の信号光を分岐できる。OSC113は、内部経路170上で伝送される信号光からOSC信号を抽出する。
【0020】
制御部130は、光伝送装置100の全体の制御を統括する。この実施の形態では、主に伝送経路101上で伝送される信号断の発生時に、障害箇所より下流の光伝送装置100において挿入あるいは通過させる信号光を安定した状態で伝送させるための制御を行う例について説明する。
図1中実線は信号光の伝送経路であり、
図1中点線は電気信号の制御経路を示す。
【0021】
光伝送装置100よりもネットワークの上流の他の光伝送装置100が幹線上での信号断を検出したとき、この他の光伝送装置100は、OSC信号に信号断の情報を含ませ、信号光に重畳して出力する。OSC信号は、例えば、信号断を検出した光伝送装置100の識別情報等を含む。そして、
図1に示すPRE部110のOSC113は、ネットワークの上流の他の光伝送装置100が信号断の検出時に出力するOSC信号を受信する。
【0022】
POST部120は、内部経路170上に配置されたWSS121、光増幅器122を含む。また、POST部120は、内部経路170のWSS121の前段の分岐出力に配置された光検出部(PD)123と、内部経路170のWSS121の後段の分岐出力に配置されたOCM(Optical Channel Monitor)124を含む。また、POST部120は、光増幅器122の後段の分岐出力に配置されたOSC125を含む。
【0023】
光検出部(PD)123は、内部経路170上のWSS121の前段の分岐出力に配置され、内部経路170上の信号光の有無を検出する。OCM124は、WSS121の後段の分岐出力に配置され、WSS121が出力する各波長(チャンネル)別の信号光をモニタする。OSC125は、光増幅器122の後段に分岐入力する形で配置され、信号断時に、OSC信号に信号断の情報を含ませ、内部経路170上で信号光に重畳し、外部出力する。
【0024】
図1の構成例では、WSS121にMUX140が接続されている。MUX140は、光伝送装置100が配置された局から挿入する信号光(挿入光)を多重化し、WSS121に出力する。
図1には、不図示であるが、WSS121にデマルチプレクサ(DEMUX)を接続することで、光伝送装置100が受信した信号光のうち分岐する所定の波長の信号光を、DEMUXを介して分岐出力することができる。
【0025】
また、WSS121には、ASE光源150が接続される。信号断を検出した光伝送装置100の制御部130は、この信号断となった信号光に変えて、ASE光を、WSS121を介して内部経路170(伝送経路101)に出力する。
【0026】
ここで、制御部130は、伝送経路101の信号光の信号断を直接、自光伝送装置100で検出したか否かに基づき、複数の内部機能を選択的に動作実行させる。
【0027】
(1)伝送経路101から入力される信号光あるいはOSC信号の信号断を自光伝送装置100で検出した場合、制御部130は、自光伝送装置100に対する信号光の信号断であり、自光伝送装置100が信号断の位置に対して最も上流に位置すると判断する。
【0028】
この上流側の光伝送装置100側の制御部130は、各機能のうち、OSC受信部131、伝送路断検出部132、WSS制御部133、光断検出部134、OSC送信部135の機能を動作実行させる。
【0029】
OSC受信部131は、OSC113でOSC信号を検出できない信号断の場合、この信号断の情報を伝送路断検出部132に出力する。伝送路断検出部132は、OSC受信部131から信号断の情報が入力され、かつ、光検出部123が信号光「無」を検出した場合、この光伝送装置100に対して入力される信号光が信号断であることを検出する。
【0030】
この場合、伝送路断検出部132は、WSS制御部133に対し、信号断した波長に対して、ASE光源150のASE光をWSS121に入力させる。WSS制御部133は、伝送路断検出部132の指示に基づいて、WSSのポートを切り替える制御を行う。また、WSS制御部133は、信号断となった信号光に変えて、ASE光を、伝送経路101を介して下流の局に出力させるようWSS121を制御する。この際、WSS121は、信号断となった複数のCH数の各波長に対応したASE光を出力する。
【0031】
光断検出部134は、OCM124のモニタによる信号断の有無に基づき、信号断時には、OSC送信部135を介して、下流の局に対し、OSC125を介して信号断の情報を載せたOSC信号を送信する。
【0032】
また、光断検出部134は、ASE光を下流の局に出力した以降は、OCM124を介して信号仮復旧の状態を検出することになる。この場合、光断検出部134は、OSC送信部135からOSC125を介して、信号断からの信号仮復旧状態であるOSC信号を下流の局に送信する。
【0033】
(2)信号断の情報が含まれたOSC信号を検出した制御部130は、自光伝送装置100より上流の光伝送装置100が信号断の位置であり、自光伝送装置100が信号断の位置よりも下流側に位置すると判断する。この場合、自光伝送装置100は、伝送経路101から入力される信号光あるいはOSC信号の信号断を自光伝送装置100で検出していない。
【0034】
この下流側に位置する光伝送装置100側の制御部130は、上流の光伝送装置100が送信するOSC信号に含まれる信号断の情報に基づき、制御部130の各機能のうち、下流側の機能を動作実行させる。例えば、制御部130は、OSC受信部131、WSS制御部133、OSC送信部135、波長数判定部136の機能を動作実行させる。
【0035】
OSC受信部131は、OSC113を介して、上流側の光伝送装置100から受信した信号断のOSC信号を波長数判定部136に出力する。波長数判定部136は、波長数の変化、すなわち信号断のCH数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0036】
波長数判定部136は、信号断のCH数が所定の閾値以上(例えば5CH以上)の場合、閾値を超えた旨をWSS制御部133に出力する。この場合、WSS制御部133は、WSS121に対し、ASE光の挿入(信号仮復旧)を検出するまでの期間中は、一時的に減衰量一定制御(ATT一定制御)を行う。また、波長数判定部136は、受信した信号断のOSC信号を、OSC送信部135を介して、さらに下流局の光伝送装置100に転送する。波長数判定部136で行う閾値判定は、例えば、閾値未満である場合は、SRSの変動が小さいため、信号レベルの変動等が発生しにくく、プロビジョニングによる波長数減設で、恒久的に減設状態が続く場合を除外することができる。つまり、プロビジョニングによる波長減設後、恒久的に減衰量一定制御に切り替わったままになってしまうことを回避できる。これにより、信号断となった波長数に応じて最適なWSS制御を行うことができるようになる。
【0037】
また、波長数判定部136が上流局の光伝送装置100からOSC113を介してASE光の挿入、すなわち信号仮復旧を検出した場合、WSS制御部133は、WSS121をATT一定制御から正常時の出力一定制御に戻す切り替えを行う。
【0038】
ところで、
図1の構成例では、同一の光伝送装置100内にPRE部110と、POST部120とを有する構成例とした。この場合、PRE部110とPOST部120との間の情報の伝達は、装置内の内部経路170を介さずに、例えば、パケット伝送部同士による電気信号を送受信する。例えば、PRE部110のOSC受信部131と、POST部120の伝送路断検出部132との間、およびPRE部110のOSC受信部131と、POST部120の波長数判定部136との間は、電気信号により情報を直接、送受信する。
【0039】
また、制御部130は、主要因であった信号断が解消された断復旧時には、この断復旧時の制御を行う。詳細は後述するが、制御の概要としては、信号断を検出した上流の光伝送装置100では、伝送する信号光を、信号仮復旧時に用いたASE光から、信号断以前に伝送していた元の信号光に戻す処理を行う。また、下流の光伝送装置100では、ASE光から元の信号光への切り替えに対応し、上記同様にWSS121を出力一定制御→ATT一定制御→出力一定制御、を順次実施する。
【0040】
(光伝送システムの構成例)
図2は、実施の形態にかかる光伝送システムの構成例を示す図である。
図2に示すように、複数の局であるROADM等の光伝送装置100は、例えば、伝送経路101をリング状としたリングネットワークR(R1~R4)により、ネットワーク接続される。
【0041】
伝送経路101上には、In-Line Amplifier(ILA)等の光増幅中継装置201を配置してもよい。ILA201は伝送経路101である光ファイバのファイバ損失を光増幅により補償する。また、伝送経路101aのように、任意の光伝送装置100間を直接接続することもできる。
【0042】
図3Aは、2つの光伝送装置の接続構成例を示す図である。
図3Aは、例えば、
図2の点線で示した2つの局であるROADM等の光伝送装置100同士の接続構成例であり、
図1と同様の構成部には同一の符号を付している。
図3Aでは、上流局側の光伝送装置100-1の入力ポートに対する伝送経路101のファイバ抜き等による信号断が生じた状態を示す(障害箇所X)。また、
図3Aでは、上述した制御部130の各機能について、上流側の光伝送装置100-1で動作する機能と、下流側の光伝送装置100-2で動作する機能をそれぞれ記載してある。
【0043】
図3Aに示すように、上流側の光伝送装置100-1の制御部130は、この光伝送装置100-1自身が障害箇所Xでの信号断を検出する。これにより、制御部130の各機能のうち、OSC受信部131、伝送路断検出部132、WSS制御部133、光断検出部134、OSC送信部135の機能を動作実行させる。
【0044】
一方、下流の光伝送装置100-2側の制御部130では、上流側の光伝送装置100-1から送信されたOSC信号に含まれる信号断の情報に基づき、OSC受信部131、WSS制御部133、OSC送信部135、波長数判定部136の機能を動作実行させる。
【0045】
まず、信号断を検出した上流側の光伝送装置100-1の制御部130が動作実行させる各機能を説明する。OSC受信部131は、OSC113が検出したOSC信号に基づき、OSC信号が信号断の場合、この信号断の情報を伝送路断検出部132に出力する。伝送路断検出部132は、OSC受信部131が出力するOSC信号の信号断の情報、あるいは光検出部123が検出する信号光の信号断の情報、のいずれかに基づき、光伝送装置100-1に対する信号光の入力が信号断と判断する。これに限らず、伝送路断検出部132は、OSC受信部131が出力するOSC信号の信号断の情報、および光検出部123が検出する信号光の信号断の情報と、に基づき、光伝送装置100-1に対する信号光の入力が信号断と判断してもよい。
【0046】
この場合、伝送路断検出部132は、WSS制御部133に対し、ASE光源150のASE光をWSS121に入力させる。また、WSS制御部133は、信号断となった信号光に変えて、ASE光を、下流の局(光伝送装置100-2)に出力させるようWSS121を制御する。
【0047】
この際、WSS制御部133は、WSS121に供給されるASE光について、信号断となった信号光と同じ波長帯、波長数(CH数)、信号帯域幅のASE光を出力するよう制御する。
【0048】
光断検出部134は、OCM124のモニタによる信号断の有無に基づき、信号断時には、OSC送信部135を介して、下流の局に対し、OSC125を介して信号断の情報を送信する。ここで、OSC信号は、例えば、上記の信号断を検出した光伝送装置100-1の識別情報の他、信号断のCH数を含む。
【0049】
また、光断検出部134は、ASE光を下流の局に出力した以降は、OCM124を介して信号仮復旧の状態を検出することになる。この場合、光断検出部134は、OSC送信部135からOSC125を介して、信号断からの信号仮復旧の状態であるOSC信号を下流の局に送信する。
【0050】
次に、下流側の光伝送装置100-2における制御部130が動作実行させる各機能を説明する。OSC受信部131は、OSC113を介して、上流側の光伝送装置100から受信した信号断のOSC信号を波長数判定部136に出力する。波長数判定部136は、波長数の変化、すなわち信号断のCH数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。閾値(信号断のCH数)は、例えば、5波(5CH)であり、SHBやSRSの変動を小さく抑えることができるCH数に設定する。
【0051】
波長数判定部136は、信号断のCH数が所定の閾値以上(例えば5CH以上)の場合、閾値を超えた旨をWSS制御部133に出力する。この場合、WSS制御部133は、WSS121に対し、ASE光の挿入(信号仮復旧)を検出するまでの期間中は、一時的に減衰量一定制御(ATT一定制御)を行う。また、波長数判定部136は、受信した信号断のOSC信号を、OSC送信部135を介して、さらに下流局の光伝送装置100に転送する。
【0052】
また、波長数判定部136が上流局の光伝送装置100からOSC113を介してASE光の挿入、すなわち信号仮復旧を検出した場合、WSS制御部133は、WSS121をATT一定制御から正常時の出力一定制御に戻す切り替えを行う。
【0053】
ところで、上流側の光伝送装置100-1の制御部130は、主要因であった信号断が解消された断復旧時には、この断復旧時の制御を行う。詳細は後述するが、断復旧時の制御の概要としては、上流側の光伝送装置100-1は、伝送していたASE光を、信号断以前に伝送していた元の信号光に切り替えて戻す処理を行う。また、下流の光伝送装置100-2では、上流の光伝送装置100-1でのASE光から元の信号光への切り替えに基づき、WSS121を出力一定制御→ATT一定制御→出力一定制御、を順次実施する。
【0054】
(光伝送装置の制御部のハードウェア構成例)
図3Bは、光伝送装置の制御部のハードウェア構成例を示す図である。例えば、制御部130は、
図3Bに示すハードウェアにより構成できる。例えば、制御部130は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ301と、メモリ302と、ネットワークIF303と、記録媒体IF304と、記録媒体305とを有する。また、各構成部は、バス300によってそれぞれ接続される。
【0055】
ここで、プロセッサ301は、制御部130全体の制御を司る制御部である。プロセッサ301は、複数のコアを有していてもよい。メモリ302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMが制御プログラムを記憶し、ROMがアプリケーションプログラムを記憶し、RAMがプロセッサ301のワークエリアとして使用される。メモリ302に記憶されるプログラムは、プロセッサ301にロードされることで、コーディングされている処理をプロセッサ301に実行させる。
【0056】
ネットワークIF303は、ネットワークNWと装置内部とのインタフェースを司り、他の光伝送装置100との間で情報の入出力を制御する。
【0057】
記録媒体IF304は、プロセッサ301の制御に従って記録媒体305に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体305は、記録媒体IF304の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0058】
なお、制御部130は、上述した構成部のほかに、例えば、入力装置、ディスプレイなどを、IFを介して接続可能としてもよい。
【0059】
図3Bに記載のプロセッサ301は、プログラム実行により、
図3Aに示した制御部130の伝送路断検出部132、WSS制御部133、光断検出部134、波長数判定部136の機能を実現できる。
【0060】
また、
図3Bに記載のネットワークIF303は、伝送経路101上の光通信による伝送のほか、複数の光伝送装置100間での電気信号による伝送を行う。例えば、
図3Aに示した伝送経路101に分岐接続されたOSC113,OSC125を用いることで、OSC受信部131とOSC送信部135は、互いにOSC情報を送受信する。このほか、ネットワークIF303を介して、制御部130は、外部装置との間で情報を送受信することができる。
【0061】
(正常時と信号断時の信号光の経路切り替え)
次に、実施の形態にかかる正常時と信号断時の信号光の経路切り替えについて説明する。
図4Aは、正常時の信号光の伝送経路を示す説明図である。
図4Aでは、伝送経路101に沿って3つの光伝送装置100が配置された状態を示す。正常時、伝送経路101を介して波長多重された各CH別の各波長λb~λnの信号光S0が、最も上流の光伝送装置100-0から中間の光伝送装置100-1を介し、下流の光伝送装置100-2に伝送される。
【0062】
また、中間の光伝送装置100-1では、ある1波の波長λaの信号光(挿入光)S1を、MUX140を介してWSS121に出力している。WSS121は、信号光S0に加え、挿入された波長λaの信号光(挿入光)S1を伝送経路101上に波長多重して出力する。
図4Aでは、便宜上、信号光S0とS1とを分離して記載したが、WSS121は、これら波長λa~λnの信号光S0とS1とを波長多重して伝送する。
【0063】
図4Bは、信号断時の信号光の伝送経路を示す説明図である。
図4Aに示した正常時の伝送状態の後、最も上流の光伝送装置100-0と、中間の光伝送装置100-1との間の伝送経路101で信号断が生じた状態を示す(障害箇所X)。信号断は、例えば、中間の光伝送装置100-1に対する伝送経路101の光ファイバを所定の作業により抜いた場合や、光ファイバの切断等に起因して生じる。この場合、中間の光伝送装置100-1では、自身に入力する信号光の信号断を検出し、下流の光伝送装置100-2にOSC信号に光伝送装置100-1での信号断の情報を伝送する。
【0064】
この場合、中間の光伝送装置100-1では、自身に入力する信号光の信号断を検出し、下流の光伝送装置100-2にOSC信号に光伝送装置100-1での信号断の情報を伝送する。また、中間の光伝送装置100-1は、ASE光源150から信号光と同一波長および信号幅のASE光SaをWSS121に挿入する。ASE光Saは、信号断となった信号光と同じ波長帯、波長数(CH数)、信号幅を有し、下流の光伝送装置100-2に伝送される。
【0065】
また、信号断以前に中間の光伝送装置100-1が挿入した信号光(挿入光)S1は、そのまま下流の光伝送装置100-2に伝送される。
図4Bの例では、信号光S1の分岐局は、光伝送装置100-2よりも下流であり、光伝送装置100-2は、信号光S1を通過させている。ここで、ASE光Saは信号光S1と同一パスで疎通される。これにより、信号光S1は、信号断の前後において継続して、信号断局である中間の光伝送装置100-1~分岐(Drop)局の間で伝送することができる。
【0066】
(信号断発生時の伝送制御例)
図5は、信号断発生時の光伝送装置の伝送制御例を示すフローチャートである。
図5には、
図3Aに示した上流側の光伝送装置100-1と、下流側の光伝送装置100-2と、がそれぞれ実施する制御手順を示す。
【0067】
上流側の光伝送装置100-1に入力される信号光が障害箇所Xで信号断が発生したとする(ステップS501)。この場合、上流側の光伝送装置100-1では、OSC受信部131がOSC信号の信号断を検出し、光検出部123が信号光の信号断を検出する(ステップS502)。伝送路断検出部132は、OSC受信部131が出力するOSC信号の信号断、あるいは光検出部123による信号光の信号断に基づき、光伝送装置100-1に対する信号光の入力が信号断と判断する。
【0068】
そして、伝送路断検出部132は、WSS制御部133に対し、WSS121のポートを信号入力ポートからASE光源150入力ポートに切り替える(ステップS503)。これにより、ASE光源150のASE光は、WSS121を介して下流の光伝送装置100-2に出力される。
【0069】
また、ステップS501による信号断の発生は、OCM124による信号断として検出される(ステップS505)。OCM124の信号断検出に基づき、光断検出部134は、OSC送信部135からOSC125を介して信号断のOSC信号を、下流の光伝送装置100-2に転送する(ステップS506)。
【0070】
ステップS503による信号光からASE光への切り替えが完了すると(ステップS504)、OCM124は、ASE光による信号仮復旧の状態を検出する(ステップS507)。これにより、光断検出部134は、OSC送信部135からOSC125を介して、信号断からの信号仮復旧の情報を含むOSC信号を下流の光伝送装置100-2に送信する(ステップS508)。
【0071】
下流側の光伝送装置100-2では、ステップS506の信号断情報をOSC受信部131がOSC113を介して受信する(ステップS510)。これにより、波長数判定部136は、波長数の変化、すなわち信号断のCH数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
図5の例では、波長数判定部136は、信号断のCH数が所定の閾値以上(例えば5CH以上)であることを検出したとする(ステップS511)。
【0072】
なお、波長数判定部136が信号断のCH数が所定の閾値未満である(例えば5CH未満)のときには、ステップS513の処理は実行するが、それ以外の処理は実行せず処理終了してもよい。
【0073】
ステップS511の後、WSS制御部133は、ASE光の挿入(信号仮復旧)を検出するまでの期間中、WSS121をそれまでの出力一定制御から一時的に減衰量一定制御(ATT一定制御)に切り替える(ステップS512)。
【0074】
この際、OSC送信部135は、上流の局から受信した信号断の情報を載せたOSC信号を、さらに下流局の光伝送装置100に転送する(ステップS513)。
【0075】
ステップS512の処理後、OSC受信部131は、ステップS508で上流局の光伝送装置100によるASE光の挿入に伴い、信号仮復旧の情報をOSC信号として受信する。これにより、WSS制御部133は、WSS121をATT一定制御から正常時の出力一定制御に戻す切り替えを行う(ステップS514)。以上により、信号断の発生時における、上流の光伝送装置100-1および下流の光伝送装置100-2の処理は終了する。
【0076】
なお、光伝送装置100-2よりもさらに下流の光伝送装置100は、光伝送装置100-2と同様の下流側の処理を実行する。
【0077】
(信号断復旧時の伝送制御例)
図6は、信号断復旧時の光伝送装置の伝送制御例を示すフローチャートである。
図6には、
図5に示した信号断発生による信号仮復旧後、信号断が復旧した場合の上流側の光伝送装置100-1と、下流側の光伝送装置100-2と、がそれぞれ実施する制御手順を示す。
【0078】
障害箇所Xで発生していた信号断が復旧したとする(ステップS601)。例えば、光伝送装置100-1の入力ポートから抜かれた状態の伝送経路101のファイバを再び挿入すること等により信号断から復旧した状態となる。
【0079】
この場合、上流側の光伝送装置100-1では、OSC受信部131がOSC信号の信号断からの復旧を検出し、光検出部123が信号光の信号断からの復旧を検出する(ステップS602)。伝送路断検出部132は、OSC受信部131が出力するOSC信号の信号断の復旧、あるいは光検出部123による信号光の信号断の復旧に基づき、光伝送装置100-1に対する信号光の入力が信号断からの復旧と判断する。
【0080】
そして、伝送路断検出部132は、WSS制御部133に対し、WSS121のポートをASE光源150入力ポートから信号入力ポートに切り替える(ステップS603)。これにより、復旧した伝送経路101上の信号光は、WSS121を介して下流の光伝送装置100-2に出力される。
【0081】
また、ステップS601による信号断の復旧は、OCM124による信号断の復旧として検出される(ステップS605)。この場合、OCM124のASE光断検出に基づき、光断検出部134は、OSC送信部135に対し、OSC125を介してASE光断情報を含むOSC信号を下流の光伝送装置100-2に転送する(ステップS606)。
【0082】
ステップS603によるASE光から信号光への切り替えが完了すると(ステップS604)、OCM124は、信号断復旧の状態を検出する(ステップS607)。これにより、光断検出部134は、OSC送信部135からOSC125を介して、信号断復旧の情報を含むOSC信号を下流の光伝送装置100-2に送信する(ステップS608)。
【0083】
下流側の光伝送装置100-2では、ステップS606のASE光断情報をOSC受信部131がOSC113を介して受信する(ステップS610)。これにより、波長数判定部136は、波長数の変化、すなわち信号断のCH数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
図6の例では、波長数判定部136は、ASE光の信号断のCH数が所定の閾値以上(例えば5CH以上)であることを検出したとする(ステップS611)。
【0084】
なお、波長数判定部136がASE光の信号断のCH数が所定の閾値未満である(例えば5CH未満)のときには、ステップS613の処理は実行するが、それ以外の処理は実行せず処理終了してもよい。
【0085】
ステップS611の後、WSS制御部133は、信号断復旧を検出するまでの期間中、WSS121をそれまでの出力一定制御から一時的に減衰量一定制御(ATT一定制御)に切り替える(ステップS612)。
【0086】
この際、OSC送信部135は、上流の局から受信したASE光断のOSC信号を、さらに下流局の光伝送装置100に転送する(ステップS613)。
【0087】
ステップS612の処理後、OSC受信部131は、ステップS608で上流局の光伝送装置100による信号断復旧に伴い、信号断復旧の情報をOSC信号として受信する。これにより、WSS制御部133は、WSS121をATT一定制御から正常時の出力一定制御に戻す切り替えを行う(ステップS614)。以上により、信号断復旧時における、上流の光伝送装置100-1および下流の光伝送装置100-2の処理は終了する。
【0088】
なお、光伝送装置100-2よりもさらに下流の光伝送装置100は、光伝送装置100-2と同様の下流側の処理を実行する。
【0089】
(信号断時の信号光のレベル変化)
次に、
図7および
図8を用いて従来技術と実施の形態における信号断時の信号光のレベル変化を説明する。
【0090】
図7は、従来技術の光伝送システムの構成例を示す図である。
図7に示す光伝送装置700は、PRE部とPOST部を有する構成例であり、光増幅器(AMP)711,722、WSS712,721、MUX740、ASE光源750を含む。
【0091】
また、実施の形態で説明したシステム構成例と同様に、伝送経路701上に光伝送装置700-0、光伝送装置700-1、光伝送装置700-3が接続されている。また、光伝送装置700-1には、正常時、複数の波長λb~λnの信号光S0が入力され、また、光伝送装置700-1は、波長λaの信号光(挿入光)S1を挿入しているとする。光伝送装置700-1は、正常時、WSS721により、波長λaの挿入光S1と、複数の波長λb~λnの信号光S0とを合波出力する。
【0092】
図7に対応する実施の形態のシステム構成例は、
図4A相当であり、従来技術同様に、光伝送装置100-1には、正常時、複数の波長λb~λnの信号光S0が入力され、また、光伝送装置100-1は、波長λaの信号光(挿入光)S1を挿入しているとする。光伝送装置100-1は、正常時、WSS121により、波長λaの挿入光S1と、複数の波長λb~λnの信号光S0とを合波出力する。
【0093】
また、
図7に示した従来技術においても、実施の形態と同様に、光伝送装置700-0と、光伝送装置700-1との間の伝送経路701上で信号断が生じるものとする(障害箇所X)。
【0094】
ここで、従来技術および実施の形態の光伝送装置は、いずれも、時期t1での信号断後、ASE光の挿入までには、所定の時間(例えば、10秒間程度)が必要である。
【0095】
図8は、従来技術と実施の形態における信号断時の信号光のレベル変化の説明図である。
図8(a)は従来技術による信号断後のレベル変化、
図8(b)は実施の形態による信号断後のレベル変化を示す。これら
図8(a),(b)に示す各図表を用いて、信号断~信号仮復旧までの期間の信号レベルの変化について説明する。各図表の横軸は波長λ、縦軸は光レベルPである。
【0096】
例えば、
図8(a)の従来技術に示す各図表は、
図7に示すWSS721の出力である。例えば、
図8(b)の実施の形態に示す各図表は、例えば、
図4Aに示すWSS121の出力に相当する。
【0097】
図8(a)の従来技術、
図8(b)の実施の形態のいずれにおいても、WSSに対するWSS制御は、信号断が発生していない正常時(時期t0)、各波長λb~λnの信号光S0の光レベルPが所定のターゲットレベルを有するように、出力一定制御を行う。
【0098】
そして、
図8(a)の従来技術において、波長λb~λnの信号断が生じたとする(時期t1)。この場合、複数の波長λb~λnの信号光S0が光伝送装置700-1に入力しなくなる。従来技術の光伝送装置700-1では、波長λb~λnの信号光S0の信号断を要因として、WSS721では、挿入した信号光(挿入光)S1がSRS、SHB等により、出力レベルに変化が生じる。例えば、この時期t1では、信号光S1の光レベルがターゲットレベルを超えている。
【0099】
そして、従来技術の光伝送装置700-1では、WSS721に対する出力一定制御により、信号光S1を所定のターゲットレベルとなるように制御する(時期t2)。
【0100】
この後、従来技術の光伝送装置700-1では、所定時間(例えば、10秒経過後)、信号光S0と同等の複数の波長λb~λnのASE光Saを挿入する(時期t3)。この場合、従来技術の光伝送装置700-1では、複数の波長λb~λnのASE光Saの挿入の影響により再度SRSが変化し、時期t2での信号光S1の制御分、この信号光S1はターゲットレベルからずれる変化が生じる。例えば、この時期t3では、信号光S1の光レベルがターゲットレベルより低いレベルにずれている。
【0101】
このため、従来技術の光伝送装置700-1による出力一定制御の場合、ASE光Saの挿入前後で信号光(挿入光)S1の光レベルがターゲットレベルに収束せず、収束する時期t4までには、ASE光Saの挿入後においても所定の時間がかかった。
【0102】
これに対し、
図8(b)に示す実施の形態において、波長λb~λnの信号断が生じたとする(時期t1)。この場合、実施の形態の光伝送装置100-1においても、多数の波長λb~λnの信号光S0の信号断を要因として、WSS721では、挿入した信号光(挿入光)S1がSRS、SHB等により、出力レベルに変化が生じる。例えば、この時期t1では、従来技術同様に、信号光S1の光レベルがターゲットレベルを超えている。
【0103】
しかし、実施の形態の光伝送装置100-1では、信号断を検出した時期t1において、WSS121に対するWSS制御を出力一定制御からATT一定制御に切り替える。これにより、光伝送装置100-1は、時期t1では、挿入した信号光(挿入光)S1の出力レベルを保持動作する。
【0104】
この後、実施の形態の光伝送装置100-1では、所定時間(例えば、10秒経過後)、信号光S0と同等の複数の波長λb~λnのASE光Saを挿入する(時期t2)。この場合、実施の形態の光伝送装置100-1では、ASE光Saの挿入により、WSS121に対するWSS制御をATT一定制御から出力一定制御に戻す。これにより、時期t3では、信号光S1およびASE光Saに対する出力一定制御を行うことで、信号光S1およびASE光Saを同時にターゲットレベルに収束させることができる。
【0105】
このように、従来の技術の光伝送装置700では、WSS制御を出力一定制御で固定しているため、ASE光Saを挿入するまでの期間中、挿入した信号光(挿入光)S1の出力レベルの変動が生じる。さらに、ASE光Saの挿入によっても、再び信号光S1の出力レベルが変動する。この場合、ASE光Saを挿入するまでの期間中に行った出力一定制御は無駄な制御となる。このように、従来技術では、信号断時、挿入した信号光(挿入光)S1の出力レベルが不要に変動し、ターゲットレベルに収束するまでに時間がかかった。
【0106】
これに対し、実施の形態の光伝送装置100によれば、信号断時には、WSS制御を出力一定制御とATT一定制御で切り替えている。これにより、ASE光Saを挿入するまでの期間は,ATT一定制御を行うことで、挿入した信号光(挿入光)S1の出力レベルの不要な変動を防ぐことができる。さらに、ASE光Saの挿入によってWSS制御を出力一定制御に戻すことで、信号断後の状態に適応したWSS制御により、挿入した信号光(挿入光)S1をASE光Saとともにターゲットレベルに速やかに収束できるようになる。
【0107】
以上説明した実施の形態の光伝送装置100は、伝送経路上の信号光の信号断を検出した他の光伝送装置からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力され、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチ(WSS)を有する。光伝送装置100の制御部は、他の光伝送装置から信号断の情報の入力に基づき、波長選択光スイッチの出力に対するWSS制御を、信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替える。この後、制御部は、ASE光の入力後には、減衰量一定制御を出力一定制御に戻す制御を行う。
【0108】
また、実施の形態の光伝送システムは、伝送経路上に複数の光伝送装置が配置され、伝送経路の上流側で信号光の信号断を検出する第1の光伝送装置と、伝送経路の下流側に配置された一つまたは複数の第2の光伝送装置と、を含み構成できる。このシステム構成において、第1の光伝送装置は、ASE光源と、第1の制御部と、を含む。第1の制御部は、伝送経路から入力される信号光の信号断の検出時、信号光の信号断の情報を下流に出力後、ASE光源から信号光と同じ波長数のASE光を下流に出力する。また、第2の光伝送装置は、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチと、第2の制御部と、を含む。第2の制御部は、第1の光伝送装置が出力する信号断の情報の入力に基づき、波長選択光スイッチの出力を、信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、挿入された信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替える。第2の制御部は、ASE光の入力後には、減衰量一定制御を出力一定制御に戻す制御を行う。
【0109】
これにより、光伝送装置100は、伝送経路上から入力される信号光の信号断が生じてからASE光が入力されるまでの間は、減衰量一定制御を行うことにより、伝送する信号光の出力レベルを固定し、出力一定制御によって不要に変動してしまうことを防ぐことができる。また、ASE光の入力後には、出力一定制御により、ASE光を含む信号光の出力レベルを速やかにターゲットレベルに収束できる。
【0110】
また、光伝送装置100の制御部は、他の光伝送装置から信号断の情報の入力に基づき、自装置から挿入する信号光に対し、減衰量一定制御を実施し、ASE光の入力後には、挿入した信号光、およびASE光に対し、出力一定制御を実施してもよい。これにより、伝送経路上から入力される信号光の信号断が生じてからASE光が入力されるまでの間は、減衰量一定制御を行うことにより、伝送する信号光、例えば光伝送装置から挿入した信号光(挿入光)の出力レベルを固定し、出力一定制御によって不要に変動してしまうことを防ぐことができる。また、ASE光の入力後には、出力一定制御により、ASE光および挿入光の出力レベルを速やかにターゲットレベルに収束できる。これにより、光伝送装置からの挿入光を信号光の信号断前後において安定して下流に転送できるようになる。
【0111】
また、光伝送装置100の制御部は、信号断時の信号光の波長数を所定の閾値と比較し、信号断時の信号光の波長数が閾値を超える場合、自装置から挿入する信号光に対し、減衰量一定制御を実施する。制御部は、ASE光の入力後には、挿入した信号光、およびASE光に対し、出力一定制御を実施してもよい。このように、信号断時の信号光の波長数を考慮することで、信号断となった波長数に応じて最適なWSS制御を行うことができるようになる。
【0112】
また、光伝送装置100の制御部は、他の光伝送装置が信号光の信号断復旧時に、ASE光の接続断の情報の後、信号光の信号復旧の情報を出力することに対応できる。制御部は、他の光伝送装置から信号断復旧時、はじめに入力されるASE光の接続断の情報に基づき、自装置から挿入した信号光およびASE光に対し、減衰量一定制御を実施する。この後、制御部は、他の光伝送装置から信号断復旧時、次に入力される信号光の信号断復旧の情報に基づき、伝送経路上の信号光、および自装置から挿入した信号光に対し、出力一定制御を実施することとしてもよい。これにより、信号断後の信号断復旧時において、それまで伝送していたASE光から再び信号光へ切り替わる際においても、挿入光を安定して伝送できるようになる。
【0113】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0114】
(付記1)伝送経路上の信号光の信号断を検出した他の光伝送装置からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力され、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチを有する光伝送装置において、
前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、前記信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、
前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、
制御を行う制御部を有する、
ことを特徴とする光伝送装置。
【0115】
(付記2)前記制御部は、
前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする付記1に記載の光伝送装置。
【0116】
(付記3)前記制御部は、
前記信号断時の前記信号光の波長数の変化を所定の閾値と比較し、前記信号断時の前記信号光の波長数の変化が前記閾値を超える場合、
自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする付記1に記載の光伝送装置。
【0117】
(付記4)前記他の光伝送装置は、前記信号光の信号断復旧時に、前記ASE光の接続断の情報の後、前記信号光の信号復旧の情報を出力し、
前記制御部は、
前記他の光伝送装置から信号断復旧時、はじめに入力される前記ASE光の接続断の情報に基づき、自装置から挿入した前記信号光および前記ASE光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記他の光伝送装置から信号断復旧時、次に入力される前記信号光の信号断復旧の情報に基づき、前記伝送経路上の前記信号光、および自装置から挿入した前記信号光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする付記1に記載の光伝送装置。
【0118】
(付記5)伝送経路上に複数の光伝送装置が配置され、前記伝送経路の上流側で信号光の信号断を検出する第1の光伝送装置と、
前記伝送経路の下流側に配置された一つまたは複数の第2の光伝送装置と、を含む光伝送システムにおいて、
前記第1の光伝送装置は、
ASE光源と、
第1の制御部と、を含み、
前記第1の制御部は、
前記伝送経路から入力される信号光の信号断の検出時、
前記信号光の信号断の情報を下流に出力後、前記ASE光源から前記信号光と同じ波長数のASE光を下流に出力し、
前記第2の光伝送装置は、
信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチと、
第2の制御部と、を含み、
前記第2の制御部は、
前記第1の光伝送装置が出力する前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、挿入された信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、
前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、
制御を行う、
ことを特徴とする光伝送システム。
【0119】
(付記6)前記第2の制御部は、
前記信号断時の前記信号光の波長数の変化を所定の閾値と比較し、前記信号断時の前記信号光の波長数の変化が前記閾値を超える場合、
自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする付記5に記載の光伝送システム。
【0120】
(付記7)前記第1の光伝送装置および前記第2の光伝送装置は、
前記信号断の情報をOSC(Optical Supervisory Channel)により送受信することを特徴とする付記5に記載の光伝送システム。
【0121】
(付記8)伝送経路上の信号光の信号断を検出した他の光伝送装置からの信号断の情報、および信号断後のASE光が入力され、信号光を分岐挿入する波長選択光スイッチを有する光伝送装置の光伝送方法において、
前記光伝送装置は、
前記他の光伝送装置から前記信号断の情報の入力に基づき、前記波長選択光スイッチの出力を、前記信号光を所定のターゲットレベルにする出力一定制御から、前記信号光の減衰量を一定に保持する減衰量一定制御に切り替え、
前記ASE光の入力後には、前記減衰量一定制御を前記出力一定制御に戻す、
制御を行うことを特徴とする光伝送方法。
【0122】
(付記9)前記光伝送装置は、
前記信号断時の前記信号光の波長数の変化を所定の閾値と比較し、前記信号断時の前記信号光の波長数の変化が前記閾値を超える場合、
自装置から挿入する信号光に対し、前記減衰量一定制御を実施し、
前記ASE光の入力後には、挿入した前記信号光、および前記ASE光に対し、前記出力一定制御を実施する、
ことを特徴とする付記8に記載の光伝送方法。
【符号の説明】
【0123】
100 光伝送装置
101 伝送経路
111,122 光増幅器
112,121 WSS
113,125 OSC
123 光検出部
124 OCM
130 制御部
131 OSC受信部
132 伝送路断検出部
133 WSS制御部
134 光断検出部
135 OSC送信部
136 波長数判定部
140 MUX
150 ASE光源
170 内部経路
201 光増幅中継装置
S0 信号光
S1 信号光(挿入光)
Sa ASE光
X 障害箇所