(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049319
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】騒音予測装置、騒音予測方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240402BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240402BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
G09B9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107130
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022154457
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】住永 光
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146BA01
5B146DJ01
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果を適切に認識するための騒音予測装置、及び騒音予測方法を提供する。
【解決手段】騒音予測装置10が、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を、建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報に基づいて予測する予測部22と、試験音をスピーカ18から出力させる制御部24と、を備える。制御部24が試験音を音出力器から出力させるモードには、予測部により予測された強度に基づく第1試験音を出力させる第1モードと、予め設定された設定強度に基づく第2試験音を出力させる第2モードと、が含まれる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を、前記建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報に基づいて予測する予測部と、
試験音を音出力器から出力させる制御部と、を備え、
前記制御部が前記試験音を前記音出力器から出力させるモードには、
前記予測部により予測された前記強度に基づく第1試験音を出力させる第1モードと、
予め設定された設定強度に基づく第2試験音を出力させる第2モードと、が含まれる、騒音予測装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記地域内に存在する騒音源の種類、前記地域内における前記騒音源の位置、及び、前記位置における前記騒音源からの騒音の大きさの少なくとも一つを含む前記情報に基づいて、前記強度を予測する、請求項1に記載の騒音予測装置。
【請求項3】
前記地域内に複数種類の騒音源が存在する場合、前記予測部は、前記複数種類の騒音源のうち、選択された種類の騒音源から発生して前記建物内にて聞こえる騒音の強度を予測する、請求項2に記載の騒音予測装置。
【請求項4】
前記設定強度は、騒音の強度に関する基準において推奨値として設定された第1設定強度を含む、請求項1に記載の騒音予測装置。
【請求項5】
前記設定強度は、前記第1設定強度よりも大きい第2設定強度を含み、
前記第2モードでは、前記制御部が、前記第1設定強度及び前記第2設定強度のうち、指定された設定強度に基づく前記第2試験音を前記音出力器から出力させる、請求項4に記載の騒音予測装置。
【請求項6】
前記予測部は、設定された条件に従って前記建設予定地に建てられる前記建物内にて聞こえる騒音の強度を予測する、請求項1に記載の騒音予測装置。
【請求項7】
前記予測部は、前記地域にて発生する騒音に関する情報、及び前記建物内の部屋の利用条件に関する情報に基づいて、前記強度として、前記部屋内にて聞こえる騒音の強度を予測する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の騒音予測装置。
【請求項8】
前記利用条件に関する情報は、前記部屋内の物品の特性に関する情報を含み、
前記予測部は、前記特性に関する情報に基づき、前記部屋内にて聞こえる騒音について、強度以外の音響学的特徴をさらに予測し、
前記第1モードでは、予測された前記強度、及び前記強度以外の音響学的特徴に基づく前記第1試験音を出力させる、請求項7に記載の騒音予測装置。
【請求項9】
前記強度以外の音響学的特徴は、前記部屋内にて聞こえる騒音の残響時間である、請求項8に記載の騒音予測装置。
【請求項10】
前記制御部が前記試験音を前記音出力器から出力させるモードには、前記予測部により予測された前記強度に応じた音と、マスキング用の制御音とに基づいて生成される第3試験音を出力する第3モードがさらに含まれる、請求項1に記載の騒音予測装置。
【請求項11】
コンピュータが、
建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を、前記建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報に基づいて予測する予測処理と、
試験音を音出力器から出力させる制御処理と、を実行し、
前記制御処理にて前記試験音を前記音出力器から出力させるモードには、
前記予測処理にて予測された前記強度に基づく第1試験音を出力させる第1モードと、
予め設定された設定強度に基づく第2試験音を出力させる第2モードと、が含まれる、騒音予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音予測装置、及び騒音予測方法に係り、特に、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測する騒音予測装置及び騒音予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の利用環境として、建物周辺から建物内に伝播する騒音は、重要な内容である。そのため、住宅等の建物を新たに建設することを検討する場合には、その建物内で聞こえる騒音の強度(騒音量や音圧)を予測し、その予測結果に応じて建物の仕様等を決める必要がある。建設予定の建物内で聞こえる騒音の強度を予測する手法は、これまでに既に開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、所定領域に建設される新規構造物や、当該新規構造物を騒音源とする騒音によって変動する上記の所定領域内の騒音環境の予測解析を行う予測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の予測システムでは、騒音の強度(パワーレベル)の予測結果がディスプレイに表示され、あるいはプリンタ等によってプリントアウトされる。ただし、このような出力方式では、実際に騒音がどのように聞こえるかが分からず、人の聴覚によって騒音の強度を認識することができない。この結果、上記の予測システムを用いたとしても、騒音に対する建物の仕様、例えば建物における防音構造の適否を正しく評価することが困難である。
【0005】
また、予測された騒音の強度が許容し得る範囲内にあるか否かを判定する場合があり、その判定を行うにあたり、所定レベルまで低減された騒音の強度を判定基準として把握しておく必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果を適切に認識するための騒音予測装置、及び騒音予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の騒音予測装置は、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を、建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報に基づいて予測する予測部と、試験音を音出力器から出力させる制御部と、を備える。また、制御部が試験音を音出力器から出力させるモードには、予測部により予測された強度に基づく第1試験音を出力させる第1モードと、予め設定された設定強度に基づく第2試験音を出力させる第2モードと、が含まれる。
以上のように構成された本発明の騒音予測装置によれば、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく第1試験音を出力することにより、騒音の強度の予測結果を、人の感覚(聴覚)によって認識することができる。また、予め設定された設定強度に基づく第2試験音を出力することで、第1試験音と第2試験音とを聞き比べることができる。これにより、例えば、試験音を聞く者が、第2試験音を比較基準として第1試験音の大きさ(強度)を評価することができるようになる。
【0008】
また、上記の騒音予測装置において、予測部は、地域内に存在する騒音源の種類、地域内における騒音源の位置、及び、位置における騒音源からの騒音の大きさの少なくとも一つを含む情報に基づいて、強度を予測してもよい。
上記の構成によれば、建物の建設予定地周辺の地域における騒音源に関する情報に基づいて、建物内にて聞こえる騒音の強度を、より高精度に予測することができる。
【0009】
また、上記の騒音予測装置において、地域内に複数種類の騒音源が存在する場合、予測部は、複数種類の騒音源のうち、選択された種類の騒音源から発生して建物内にて聞こえる騒音の強度を予測してもよい。
上記の構成によれば、複数種類の騒音源のうち、注目する種類の騒音源から発生して建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく試験音(第1試験音)を出力することができる。
【0010】
また、上記の騒音予測装置において、設定強度は、騒音の強度に関する基準において推奨値として設定された第1設定強度を含んでもよい。
上記の構成によれば、第2モードにおいて、騒音の強度に関する推奨値として設定された第1設定強度に基づく試験音(第2試験音)を出力することができ、この第2試験音と第1試験音とを聞き比べることができる。
【0011】
また、上記の騒音予測装置において、設定強度は、第1設定強度よりも大きい第2設定強度を含み、第2モードでは、制御部が、第1設定強度及び第2設定強度のうち、指定された設定強度に基づく第2試験音を音出力器から出力させてもよい。
上記の構成によれば、第2モードにおいて、第1設定強度より大きい第2設定強度に基づく試験音(第2試験音)を出力することができる。これにより、第2試験音の強度を段階的に変化させて、それぞれの第2試験音と第1試験音とを聞き比べることができる。
【0012】
また、上記の騒音予測装置において、予測部は、設定された条件に従って建設予定地に建てられる建物にて聞こえる騒音の強度を予測してもよい。
上記の構成によれば、設定された条件に従って建設される建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく試験音(第1試験音)を出力することができる。これにより、例えば、商品として販売される建物の仕様(詳しくは、標準的な仕様)が決められている場合、その仕様で建設される建物内で聞こえる騒音を体験することができる。
【0013】
また、上記の騒音予測装置において、予測部は、上記の地域にて発生する騒音に関する情報、及び建物内の部屋の利用条件に関する情報に基づいて、強度として、部屋内にて聞こえる騒音の強度を予測してもよい。
上記の構成によれば、建物内の部屋の利用条件を踏まえて、その部屋内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく試験音(第1試験音)を出力することができる。これにより、設定された利用条件の下で部屋を利用する場合を想定し、その部屋内にて聞こえる騒音を体験することができる。
【0014】
また、上記の騒音予測装置において、上記の利用条件に関する情報は、部屋内の物品の特性に関する情報を含んでもよい。この場合において、予測部は、当該特性に関する情報に基づき、部屋内にて聞こえる騒音について、強度以外の音響学的特徴をさらに予測し、第1モードでは、予測された強度、及び強度以外の音響学的特徴に基づく第1試験音を出力させてもよい。
上記の構成によれば、部屋内の物品の特性に基づいて、部屋にて聞こえる騒音の強度、及び強度以外の音響学的特徴を予測し、その予測結果に基づく試験音(第1試験音)を出力することができる。これにより、建物の部屋内にて聞こえる騒音として、強度以外の音響学的特徴を反映させた音を体験することができる。
【0015】
また、上記の構成において、強度以外の音響学的特徴は、部屋内にて聞こえる騒音の残響時間であると、好適である。
上記の構成によれば、建物の部屋内にて聞こえる騒音として、残響時間(音の響き方)を反映させた音を体験することができる。
【0016】
また、上記の騒音予測装置において、制御部が試験音を音出力器から出力させるモードには、予測部により予測された強度に応じた音と、マスキング用の制御音とに基づいて生成される第3試験音を出力する第3モードがさらに含まれてもよい。
上記の構成によれば、建物内にてマスキング用の制御音が利用される状況を想定し、そのような状況で聞こえる音を試験音(第3試験音)として出力する。これにより、建物内で聞こえる騒音に対する上記の制御音の効果、すなわちサウンドマスキング効果を体験することができる。
【0017】
また、前述の課題を解決するために、本発明の騒音予測方法は、コンピュータが、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を、建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報に基づいて予測する予測処理と、試験音を音出力器から出力させる制御処理と、を実行し、制御処理にて試験音を音出力器から出力させるモードには、予測処理にて予測された強度に基づく第1試験音を出力させる第1モードと、予め設定された設定強度に基づく第2試験音を出力させる第2モードと、が含まれる騒音予測方法である。
上記の方法によれば、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果を適切に認識することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく第1試験音を出力することで、予測された強度の騒音を人の感覚(聴覚)によって認識することができる。また、第1試験音と、予め設定された強度の第2試験音とを聞き比べることができるため、第1試験音の大きさ、すなわち、予測された騒音の強度を、第2試験音を基準にして評価することができる。
さらに、本発明によれば、騒音の強度以外の音響学的特徴、例えば騒音の残響時間を予測し、その予測結果に基づく第1試験音を出力することができる。これにより、第1試験音が、建物内にて聞こえる騒音(より詳しくは、建物の部屋内にて聞こえる騒音)をより適切に再現したものとなる。その結果、実際に建物内にて聞こえる騒音をより忠実に再現された音(試験音)を、体験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る騒音予測装置の利用例を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る騒音予測装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】騒音源周辺での騒音の強度を示す騒音マップの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る騒音予測装置の機能についての説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る騒音予測装置を用いたデータ処理のフローを示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態において表示される選択画面の遷移を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る騒音予測装置を用いたデータ処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の幾つかの実施形態(具体的には、後述の第1実施形態及び第2実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書に記載する「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置の組み合わせも含まれることとする。
また、本明細書において「地域」とは、例えば、行政区画の単位であり、具体的には、日本であれば地方区分、都道府県、市区町村、若しくは丁目又は番地等によって区画されるエリアである。
【0021】
<<第1実施形態に係る騒音予測装置の概要>>
本発明の第1実施形態(以下、単に第1実施形態という)に係る騒音予測装置10について、その概要を説明する。
騒音予測装置10は、建設予定地に建てられる建物内にて聞こえる騒音の強度を予測し、予測された強度の騒音を出力(再現)するために用いられる。ここで、建物とは、内部で人が生活をする建物、例えば住宅、特に戸建住宅であり、厳密には、将来的に建設予定の住宅である。以下、特に断る場合を除き、住宅は、将来的に建設予定の住宅であることとする。
【0022】
騒音予測装置10の用途としては、特に限定されないが、例えば、住宅販売会社が商談用のツールとして用いてもよく、その場合の騒音予測装置10のユーザは、住宅販売会社、詳しくは、商談時に騒音予測装置10を操作する従業員である。あるいは、住宅設計者が設計支援用のツールとして騒音予測装置10を用いてもよく、その場合の騒音予測装置10のユーザは、住宅設計者となる。あるいは、研究者が研究又は調査用のツールとして騒音予測装置10を用いてもよく、その場合の騒音予測装置10のユーザは、研究者となる。
以下では、住宅販売会社が商談用ツールとして騒音予測装置10を利用する場合を例に挙げて説明することとする。
【0023】
騒音予測装置10の具体的な利用例について
図1を参照しながら説明すると、ユーザである住宅販売会社の従業員は、商談相手である顧客とのコミュニケーションを通じて、顧客が希望する住宅の種類、及び、その住宅の建設予定地を聴取する。ユーザは、これらの情報を騒音予測装置10に入力し、騒音予測装置10は、入力された情報に基づいて、住宅内で聞こえる騒音の強度を予測する一連のデータ処理を実行する。ここで、住宅内で聞こえる騒音とは、その住宅の建設予定地を含む地域にて発生して住宅内に進入(伝播)してくる騒音である。
【0024】
第1実施形態において、騒音予測装置10は、顧客が希望する住宅が標準仕様にて建設された場合を想定して、当該住宅内で聞こえる騒音の強度を予測する。標準仕様とは、住宅に関する条件として、住宅商品の種類毎に設定された初期設定(デフォルト)の条件である。住宅に関する条件には、住宅の建築工法、住宅の構造(間取りや階数等)、使用建材、防音設備等の付帯設備の有無、並びに、その他の住宅の性能(特に、防音性能)に関する項目が含まれる。
【0025】
さらに、騒音予測装置10は、予測された騒音の強度に基づく試験音をスピーカ等の音出力器から出力させる。音出力器は、騒音予測装置10を構成するコンピュータに搭載されたスピーカであってもよく、あるいは、騒音予測装置10とは別機器であるスピーカ、具体的には、商談が行われる部屋に据え付けられたオーディオスピーカであってもよい。また、騒音予測装置10に接続されたヘッドフォンを音出力器として用いてもよい。
【0026】
試験音は、
図1に示すように、被験者である顧客に向けて音出力器から出力される。この試験音は、顧客が希望する住宅内で聞こえる騒音の強度を再現したものであり、顧客は、その試験音を聞くことで、当該住宅内で聞こえる騒音を、商談時に体験することができる。ユーザは、試験音に対する顧客の反応等から、販売対象の住宅の性能、特に防音性能に対する顧客の評価を取得し、その評価に基づく提案を顧客に対して行う。例えば、顧客が試験音を不快と感じた場合、ユーザは、住宅の防音性能を上げるための提案、具体的には、住宅における防音設備の導入又は追加等を提案する。
【0027】
また、騒音予測装置10は、予測された騒音の強度に基づく試験音の他に、予め設定された設定強度に基づく試験音を出力することができる。すなわち、第1実施形態では、試験音を出力するモードが切り替え可能であり、具体的には、予測された騒音の強度に基づく第1試験音を出力する第1モードと、設定強度に基づく第2試験音を出力する第2モードとの間で切り替え可能である。
【0028】
第2モードにおける設定強度は、騒音の強度に関する基準に基づいて設定され、より詳しくは、当該基準において定められた推奨値に基づいて設定される。ここで、基準とは、例えば、世界保健機関(WHO)により規定された、寝室で聞こえる騒音に関するガイドラインであり、このガイドラインでは、騒音の強度の推奨値が、安眠を確保するための値(例えば、40dB)に定められている。なお、以下では、上記推奨値を第1設定強度ともいう。
【0029】
以上のように、第1実施形態では、試験音の出力モードを切り替えることにより、顧客に対して、第1試験音及び第2試験音のそれぞれを出力することができ、顧客は、それぞれの試験音を聞き比べることができる。これにより、顧客は、第1試験音が第2試験音と比べて大きいか小さいか、2つの試験音の間の差がどの程度であるか、つまり、住宅内で聞こえる騒音の強度が上記の推奨値からどの程度乖離しているかを、聴覚を通じて認識することができる。
【0030】
また、第1実施形態では、設定強度を段階的に変化させて複数設定しており、第2モードにて第2試験音を出力する際には、複数の設定強度のうち、ユーザ又は顧客によって指定された設定強度に基づいて第2試験音を出力することができる。すなわち、顧客は、第2試験音の強度を段階的に大きくし、それぞれの第2試験音と第1試験音とを聞き比べることができる。これにより、ユーザ及び顧客は、建物内で聞こえる騒音の強度に対する顧客の受忍限度(許容限界)を把握することができ、その値を反映して商談を進めることができる。
なお、複数の設定強度の数、及び、それぞれの設定強度の大きさは、特に限定されないが、例えば、上記の推奨値としての第1設定強度をベースとして、所定値ずつ大きくなった設定強度(以下、第2設定強度ともいう)を複数設定してもよい。
【0031】
<<第1実施形態に係る騒音予測装置の構成について>>
次に、騒音予測装置10の構成例について説明する。騒音予測装置10は、プロセッサを備えるコンピュータからなり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション又はサーバコンピュータ等によって構成される。また、スマートフォン又はタブレット端末のような情報処理端末によって騒音予測装置10が構成されてもよい。
【0032】
騒音予測装置10は、1台のコンピュータによって構成されてもよく、あるいは並列分散された複数台のコンピュータによって構成されてもよい。また、騒音予測装置10を構成するコンピュータがサーバコンピュータである場合、ASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)又はIaaS(Infrastructure as a Service)用のサーバコンピュータであってもよい。この場合、PC等のクライアント端末にて必要な情報を入力すると、上記のサーバコンピュータが入力情報に基づいて各種の情報処理(演算)を実施し、その演算結果がクライアント端末側で出力される。つまり、騒音予測装置10であるサーバコンピュータの機能をクライアント端末側で利用することができる。
【0033】
騒音予測装置10を構成するコンピュータは、
図2に示すように、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、通信用インタフェース14、入力装置15及び出力装置16を有する。
【0034】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。
メモリ12は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
【0035】
ストレージ13は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等によって構成される。なお、ストレージ13は、騒音予測装置10を構成するコンピュータ本体内に内蔵されてもよく、外付け形式でコンピュータ本体に取り付けてもよく、あるいは、ネットワーク上に存在する外部サーバ(例えば、データベースサーバやファイルサーバ)によって構成されてもよい。
【0036】
通信用インタフェース14は、例えばネットワークインターフェースカード、又は通信インタフェースボード等によって構成されるとよい。騒音予測装置10を構成するコンピュータは、通信用インタフェース14を介して、インターネット又はモバイル通信回線等に接続された他の機器とデータ通信することが可能である。
【0037】
入力装置15は、例えばキーボード、マウス又はタッチパネル等によって構成される。また、入力装置15は、音声入力を受け付ける機器であってもよい。
出力装置16は、例えばディスプレイ17及びスピーカ18等によって構成される。ディスプレイ17には、後述する騒音予測フローにおいて各種の入力画面が表示される。スピーカ18は、音出力器として、試験音を出力する。なお、試験音を出力する機器は、スピーカ18に限定されず、例えば、ヘッドフォンであってもよい。
【0038】
また、騒音予測装置10を構成するコンピュータには、ソフトウェアとして、オペレーティングシステム(OS)用のプログラム、及び、騒音予測用のアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0039】
また、ストレージ13には、騒音予測フローの実行に必要な各種の情報が格納されている。具体的には、各地域の騒音に関する情報、住宅の防音性能に関する情報、及び、騒音の音声信号(騒音信号)等がデータベース化されてストレージ13に蓄積されている。以下、それぞれの情報について説明する。
【0040】
(各地域の騒音に関する情報)
各地域の騒音に関する情報は、各地域内で発生する騒音に関する情報であり、具体的には、各地域内に存在する騒音源の種類、各地域内における騒音源の位置、及び、その位置における騒音源からの騒音の大きさの少なくとも一つを含み、第1実施形態では、これらを全て含んでいる。各地域の騒音に関する情報は、住宅の建設地又は建設予定地に該当する地域について取得される。また、各地域の騒音に関する情報は、文献から取得してもよく、実測によって取得してもよく、国又は地方自治体が提供する情報伝達媒体(例えば、統計調査の報告書又はWebサイト)から入手してもよく、あるいは、公的機関又は民間機関が提供する情報伝達媒体(例えば、新聞、機関紙又はWebサイト)から入手してもよい。
【0041】
そして、各地域の騒音に関する情報からは、
図3に示すような騒音マップに表される内容、具体的には、騒音の発生位置、騒音が発生する時間帯、騒音の伝播範囲、当該範囲内における各位置での騒音の強度(騒音量や音圧)等を特定することができる。
また、ある地域の騒音に関する情報を参照すれば、その地域内における各地点に到達する騒音の種類(騒音源の種類)、その地点での騒音の大きさ、及び、その地点で騒音を受信(受音)する時間帯等を特定することができる。
【0042】
(住宅の防音性能に関する情報)
住宅の防音性能に関する情報は、住宅内で聞こえる騒音の強度を予測するために必要な情報であり、具体的には、住宅の種類及び仕様(例えば、住宅の構造、並びに使用建材の種類及び配置位置等)に基づいて決まる遮音性能である。住宅の遮音性能は、例えば、住宅各部(特に外壁等)の音響透過損失及び遮音性等から算出される。住宅の防音性能に関する情報は、ストレージ13において、住宅の仕様と対応付けられた状態で、住宅の種類毎に記憶されている。したがって、住宅の種類及び仕様を指定することで、その種類及び仕様と対応する防音性能(遮音性能)を特定することができる。
【0043】
(騒音信号)
騒音信号は、試験音を出力するために必要な情報であり、各種の騒音を実際に収音(録音)したり、既存の騒音情報を外部から入手したり、あるいは、サンプル音源のデータを加工処理等して再現したりすることで取得される。第1実施形態において、騒音信号は、騒音源が存在する位置で受信(受音)した場合の音声信号を表しており、騒音源の種類毎に取得される。
なお、騒音(騒音源)の種類としては、例えば、鉄道、車及び飛行機等からの交通騒音、近隣住居からの生活騒音、工場や事業場等からの騒音、繁華街等からの営業騒音、並びに、建設現場等からの作業騒音等が挙げられる。
【0044】
<<第1実施形態に係る騒音予測装置の機能について>>
騒音予測装置10の構成について機能面から改めて説明する。騒音予測装置10は、
図4に示すように、入力受付部21、予測部22、音加工部23、及び制御部24を有する。これらの機能部は、騒音予測装置10を構成するコンピュータが備えるハードウェア機器と、そのコンピュータに搭載された各種プログラム等のソフトウェアとの協働によって実現される。
以下、それぞれの機能部について説明する。
【0045】
(入力受付部)
入力受付部21は、騒音予測フローを実行する上で必要となる情報の入力をユーザから受け付ける。ユーザからの入力情報には、顧客が希望する住宅の種類及び建設予定地、試験音の出力モード、試験音として想定する騒音の種類、及び、第2モードを選択した場合の設定強度等が含まれる。
【0046】
具体的に説明すると、ユーザは、商談時において、顧客とのコミュニケーションを通じて、顧客が希望する住宅の仕様及び建設予定地を聴取し、聴取した内容を、入力装置15を通じて入力する。その後、ユーザは、ディスプレイ17に
図5に示す選択画面を表示させ、例えば、試験音として想定する騒音(騒音源)の種類を選び、その選択結果を入力する。具体的には、騒音源の種類のリストがプルダウン形式で表示され、そのリストの中から選択された騒音源の種類をクリックする。
なお、騒音源の種類を入力する別の方法として、
図5に示す選択画面では、建設予定地における騒音の発生時間帯(例えば、昼間又は夜間)を指定することで、指定された発生時間帯と対応する騒音源の種類を入力することができる。指定された発生時間帯と対応する騒音源の種類とは、その時間帯に主として騒音を発生する騒音源のことであり、ストレージ13に記憶された各地域の騒音に関する情報から特定することができる。
【0047】
また、ユーザは、
図5に示す選択画面にて、試験音の出力モードとしての第1モード及び第2モードのうち、一方のモードを選び、その選択結果を入力する。具体的には、第1モードを選択する場合には、画面上の「標準仕様の住宅での聞こえ方」と書かれたボタンをクリックする。第2モードを選択する場合には、画面上の「設定強度での聞こえ方」と書かれたボタンをクリックする。
【0048】
また、第2モードを選択した場合には、ディスプレイに
図6の指定画面が表示され、ユーザは、指定画面にて設定強度を指定し、その指定結果を入力する。具体的には、設定強度として、推奨値である第1設定強度を指定する場合には、画面上の「推奨値」と書かれたボタンをクリックする。また、第1設定強度よりも大きい第2設定強度を指定する場合には、画面上の「推奨値+5dB」、「推奨値+10dB」、「推奨値+15dB」と書かれたボタンのうちのいずれか一つをクリックする。
なお、
図6の指定画面では、複数の第2設定強度が選択可能に表示されているが、第2設定強度の数は、任意に決められてもよい。また、第1設定強度と第2設定強度との差分に相当する値(所定値)は、上記の値に限定されず、任意に決められてもよい。
【0049】
(予測部)
予測部22は、ユーザにより入力された建設予定地に建てられる住宅内にて聞こえる騒音の強度を、当該建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報に基づいて予測する。このとき、予測部22は、ユーザにより入力された種類の住宅が標準仕様(設定された条件)に従って建設予定地に建てられる場合に、その住宅内に聞こえる騒音の強度を予測する。
【0050】
具体的に説明すると、予測部22は、ユーザにより入力された建設予定地と、その建設予定地を含む地域とを特定し、特定された地域にて発生する騒音に関する情報をストレージ13から読み出す。予測部22は、読み出した情報から、建設予定地に到達する騒音の種類(騒音源の種類)、その地点での騒音の大きさ、及び、その地点で騒音を受信(受音)する時間帯等を特定する。
【0051】
次に、予測部22は、ユーザにより入力された種類の住宅の防音性能に関する情報、より詳しくは、その住宅の標準仕様と対応付けられた情報をストレージ13から読み出す。そして、予測部22は、読み出した防音性能に関する情報と、建設予定地に到達する騒音について特定した内容とに基づいて、住宅内にて聞こえる騒音の強度(音圧又は騒音量)を予測する。騒音の強度を予測する手法としては、一般的な公知の音響解析手法が利用可能であり、具体的には、騒音が住宅内に伝播する際に住宅の遮音性能によって騒音が減衰する度合い、つまり距離減衰による騒音低減量を計算(シミュレーション)する。このとき、住宅における窓等の開口部の数及び大きさ、開口部が設置された方角、並びに、開口部と騒音源との位置関係が計算パラメータとして用いられ、これらの内容を反映して騒音の強度が予測される。
【0052】
また、建設予定地を含む地域内に複数種類の騒音源が存在する場合、予測部22は、複数種類の騒音源のうち、ユーザにより選択された種類の騒音源について、当該騒音源から発生して住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測する。例えば、ユーザが騒音源のリストの中から一つの騒音源を選択した場合、予測部22は、選択された一つの騒音源から発生して住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測する。また、ユーザが騒音の発生時間帯を指定することで騒音源を選択した場合、予測部22は、指定された時間帯と対応する騒音源から発生して住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測する。
【0053】
(音加工部)
音加工部23は、建設予定地に到達する騒音の音声信号(騒音信号)をストレージ13から読み出して、その騒音信号に対して音加工、詳しくは減衰加工等を実施して試験音を生成する。減衰加工において、音加工部23は、ユーザにより入力された試験音の出力モードに応じて騒音信号を減衰させる。
【0054】
具体的に説明すると、ユーザが第1モードを入力した場合、音加工部23は、予測部22により予測された騒音の強度に基づいて、騒音信号を減衰させる。つまり、第1モードが入力された場合、音加工部23は、住宅内にて聞こえる騒音の強度を再現した試験音(第1試験音)を生成する。他方、ユーザが第2モードを入力した場合、音加工部23は、設定強度、詳しくは第1設定強度又は第2設定強度のうち、ユーザにより指定された強度に基づいて騒音信号を減衰させ、その設定強度を再現した試験音(第2試験音)を生成する。
【0055】
また、建設予定地を含む地域内に複数種類の騒音源が存在する場合、音加工部23は、複数種類の騒音源のうち、ユーザにより選択された種類の騒音源と対応する騒音信号をストレージ13から読み出して、その騒音に対して減衰加工を実施して試験音を生成する。
【0056】
なお、減衰加工にて騒音信号を減衰させる際に、ユーザが入力装置15を通じて調整操作を行ってもよい。この場合、入力受付部21が、ユーザによる調整操作を受け付け、音加工部23は、受け付けられた調整操作に応じた調整量にて、処理対象の騒音信号を減衰させてもよい。
【0057】
(制御部)
制御部24は、音加工部23により生成された試験音をスピーカ18から出力させる。第1実施形態において、制御部24は、ユーザにより入力されたモードに従って試験音を出力させる。具体的には、ユーザが第1モードを入力した場合、制御部24は、住宅内にて聞こえる騒音の強度(すなわち、予測部22により予測された強度)を再現した第1試験音を出力させる。他方、ユーザが第2モードを入力した場合、制御部24は、設定強度に基づく第2試験音を出力させる。より詳しく説明すると、第2モードでは、制御部24が、第1設定強度及び2以上の第2設定強度のうち、指定された一つの設定強度に基づく第2試験音をスピーカ18から出力させる。
【0058】
<<第1実施形態に係る騒音予測フローについて>>
以下では、上述した騒音予測装置10を用いた情報処理フロー、すなわち騒音予測フローについて説明する。騒音予測フローは、本発明の騒音予測方法を採用しており、
図7に示す流れに沿って進行する。つまり、
図7に図示のフロー中の各ステップは、本発明の騒音予測方法を構成する各要素に該当する。
なお、
図7に示す騒音予測フローは、あくまでも一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、ステップの実施順序を入れ替えてもよい。
【0059】
騒音予測フローの各ステップでは、騒音予測装置10を構成するコンピュータのプロセッサ11が各ステップと対応する処理を実行する。具体的に説明すると、騒音予測フローでは、先ず、プロセッサ11が、入力受付処理を実行する(S001)。入力受付処理では、ユーザからの入力情報として、顧客が希望する住宅の種類及び建設予定地、試験音の出力モード、試験音として想定する騒音の種類、及び、第2モードを選択した場合の設定強度等を受け付ける。
【0060】
次に、プロセッサ11が、予測処理を実行する(S002)。予測処理では、ユーザにより入力された建設予定地に、ユーザにより入力された種類の住宅が標準仕様に従って建てられる場合を想定し、その住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測する。このとき、プロセッサ11は、ユーザにより入力された建設予定地を含む地域を特定し、特定された地域にて発生する騒音に関する情報と、ユーザにより入力された種類の住宅の防音性能に関する情報とをストレージ13から読み出す。そして、読み出した情報に基づいて、住宅内にて聞こえる騒音の強度(音圧又は騒音量)を予測する。
なお、建設予定地を含む地域内に複数種類の騒音源が存在する場合には、複数種類の騒音源のうち、ユーザにより選択された種類の騒音源について、当該騒音源から発生して住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測する。
【0061】
また、予測処理において、住宅の建設予定地を含む地域の各箇所での騒音量を算出し、その算出結果を可視化した騒音マップ(
図3参照)を作成し、作成した騒音マップをディスプレイ17に表示させてもよい。
【0062】
以降の流れは、ステップS001で受け付けた試験音の出力モードに応じて変わる(S003)。具体的には、出力モードが第1モードである場合には、プロセッサ11が、建設予定地に到達する騒音の音声信号(騒音信号)をストレージ13から読み出し、騒音信号に対して、予測処理にて予測された騒音の強度に基づく減衰加工を行って第1試験音を生成する(S004)。そして、プロセッサ11は、制御処理を実行し、生成された第1試験音をスピーカ18から出力させる(S005)。
【0063】
他方、出力モードが第2モードである場合には、プロセッサ11が、ストレージ13から読み出した騒音信号に対して、第1設定強度及び2以上の第2設定強度の中からユーザにより指定された設定強度に基づく減衰加工を行って第2試験音を生成する(S006)。そして、プロセッサ11は、制御処理を実行し、生成された第2試験音をスピーカ18から出力させる(S007)。
【0064】
なお、建設予定地を含む地域内に複数種類の騒音源が存在する場合、複数種類の騒音源のうち、ユーザにより選択された種類の騒音源と対応する騒音信号から、第1試験音又は第2試験音が生成される。
【0065】
試験音は、顧客に向けて出力され、顧客は、スピーカ18から出力される試験音を聞く。また、商談中、試験音の出力モードを切り替えることで、顧客に第1試験音及び第2試験音の両方を聞かせることができる。すなわち、騒音予測フローにおいて分岐後のステップ(つまり、S004及びS005の流れと、S006とS007の流れ)をそれぞれ実施することで、顧客は、第1試験音及び第2試験音のそれぞれを聞くことができる。
その後、顧客が、試験音に対する評価等を行い、ユーザが、フロー終了操作を行うと、その時点で騒音予測フローが終了する。
【0066】
以上までに説明してきたように、第1実施形態によれば、建設予定地に建てられる住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく第1試験音を顧客に聞かせることで、予測された強度の騒音を顧客の感覚(聴覚)によって認識させることができる。また、第1実施形態では、第1試験音と、予め設定された設定強度の第2試験音とを聞き比べることができる。これにより、顧客は、第1試験音の大きさ、すなわち、予測された住宅内での騒音の強度を、第2試験音を基準にして評価することができる。
【0067】
以上の効果により、住宅販売会社の従業員であるユーザは、顧客との商談時に、対象物件(住宅)内で聞こえる騒音を顧客に確認してもらうことで、その物件を安心して顧客に勧めることができる。また、顧客は、対象物件内で聞こえる騒音を体験することにより、騒音に対する配慮等について納得した上で、対象物件の取引を行うことができる。
【0068】
<<本発明の第2実施形態について>>
第1実施形態では、建設予定地に建てられる住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測し、その予測結果に基づく第1試験音を顧客に聞かせることとした。また、第1実施形態では、建物の建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報と、住宅の種類及び仕様に基づいて決まる防音性能、具体的には外壁の音響透過損失及び遮音性等に基づいて、住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測することとした。
【0069】
一方、騒音の聞こえ方は、住宅内のどの部屋に居るか、その部屋がどのように利用されているか、及び、その部屋にどんな物品が置かれているか等に応じて変化する。また、騒音の聞こえ方は、強度以外の音響学的特徴、例えば残響時間(音の響き方)等に応じて変わり得る。そのため、住宅内にて聞こえる騒音を再現した第1試験音としては、住宅の室内環境を考慮し、部屋内で聞こえる騒音により近い音を出力することが好ましい。
【0070】
以下では、本発明の第2実施形態(以下、第2実施形態という)として、建設予定地に建てられる住宅内にて聞こえる騒音の強度を予測する際に、住宅内の部屋の利用条件を考慮して、当該部屋内にて聞こえる騒音の強度を予測する実施形態について説明することとする。また、第2実施形態では、部屋内にて聞こえる騒音について、強度、及び、強度以外の音響学的特徴の一例である残響時間を予測し、予測された強度及び残響時間に基づく試験音を出力することができる。
【0071】
先ず、第2実施形態に係る騒音予測装置10の構成について説明する。第2実施形態に係る騒音予測装置10の基本構成は、第1実施形態のものと同様である。一方、第2実施形態では、ストレージ13に格納される情報の中に、住宅内の各部屋の仕様に関する情報、各部屋内の物品の特性に関する情報、及び、各部屋に設けられた窓等の開口部に関する情報等が含まれている。
【0072】
各部屋の仕様に関する情報は、住宅における各部屋の配置位置、方位、設置階数、床面積、構造、壁や天井を構成する材料、並びに、壁や天井の吸音性能等である。第2実施形態では、ストレージ13において、各部屋の仕様に関する情報が、その部屋の用途と対応付けて記憶されている。このため、第2実施形態では、部屋の用途や利用目的を選択することで、その部屋の仕様に関する情報を特定することができる。
【0073】
各部屋内の物品の特性に関する情報は、その部屋に置かれる家具又は据付品等(以下、物品)の特性、具体的には、吸音性能や遮音性能のような防音特性に関する情報である。第2実施形態では、各部屋に対して、物品の設置に関する1つ又は2つ以上のパターンが設定されており、各パターンでは、その部屋における物品の配置数、配置位置、及び、配置される各物品の種類、サイズ及び防音性能等が決められている。つまり、第2実施形態では、ストレージ13において、各部屋内の物品の特性に関する情報が、その部屋に対応付けられて、パターン毎に記憶されている。このため、第2実施形態では、部屋を選択し、選択された部屋と対応付けられたパターンのいずれか一つを選択することで、その部屋の物品の特性に関する情報を特定することができる。
【0074】
各部屋に設けられた窓等の開口部に関する情報は、各部屋に設けられた開口部の数、並びに、各開口部の配置位置、方位、及び、開度に応じた開口面積等である。開度に応じた開口面積とは、例えば、全開状態、全閉状態、及び半開状態のそれぞれの開口面積である。第2実施形態では、ストレージ13において、各部屋に設けられた開口部に関する情報が、部屋毎に記憶されている。このため、第2実施形態では、部屋を選択することで、その部屋に設けられた開口部に関する情報を特定することができ、また、開口部の開度を選択することで、選択された開度にある開口部の開口面積を特定することができる。
【0075】
また、第2実施形態において、ストレージ13には、マスキング用の制御音の信号(制御音信号)がさらに記憶されている。マスキング用の制御音は、サウンドマスキングによって騒音を不明瞭にして聞こえ難くするために出力される音であるが、第2実施形態では、後述の第3試験音を生成する目的で利用される。制御音信号は、例えば、マスキング用の制御音として一般的に使用される音のデータを作成したり、外部から入手したりすることで取得される。
【0076】
次に、第2実施形態に係る騒音予測装置10の機能について説明する。第2実施形態に係る騒音予測装置10の機能は、第1実施形態のものと共通しており、すなわち、入力受付部21、予測部22、音加工部23、及び制御部24を有する。各機能部は、第1実施形態と基本的には同様であるが、第2実施形態に特有の機能を有する。
【0077】
具体的に説明すると、第2実施形態に係る入力受付部21は、ユーザからの情報の入力を受け付ける。ユーザから入力される情報には、顧客が希望する住宅の種類及び建設予定地、試験音の出力モード、試験音として想定する騒音の種類、及び、第2モードを選択した場合の設定強度等に加えて、住宅内の部屋の利用条件に関する情報が含まれる。
【0078】
より詳しく説明すると、ユーザは、顧客との商談の際に、上述した項目を聴取する。このとき、ユーザは、
図8中の各図に示す選択画面をディスプレイ17に表示させ、各選択画面にて挙げられた候補に対する顧客の選択結果を入力する。例えば、
図8の左上に示す選択画面には、複数の部屋が候補として表示される。ユーザは、顧客に、「住宅の外から入ってくる騒音を、住宅内のどの部屋で聞くか」を選択してもらい、上記の選択画面を通じて、顧客の選択結果を入力する。なお、以下では、「住宅内の寝室」が選択されたケースを例に挙げて説明することとする。
【0079】
その後、ディスプレイ17の表示画面が、
図8の右上に示す選択画面に遷移する。この選択画面には、顧客が選択した部屋に設置される物品の種類及び配置に関するパターンが複数表示される。ユーザは、顧客に、いずれかのパターンを選択してもらい、上記の選択画面を通じて、顧客の選択結果を入力する。
図8に示す選択画面には、顧客が選択した部屋が寝室である場合のパターン(具体的には、パターンA~C)が選択可能に表示されている。そして、顧客がいずれか一つのパターンを選択することで、寝室に置かれる物品の種類、大きさ、個数、それぞれの配置位置等が決定される。
なお、第2実施形態では、上記のパターンを選択することにより、部屋内に設置される物品の種類及び配置に関する情報が入力されるが、これに限定されるものではない。例えば、ユーザが、部屋に設置される物品の種類及び配置等を任意に選ぶことができ、その選択結果が、部屋内に設置される物品の種類及び配置に関する情報として入力されてもよい。
【0080】
その後、ディスプレイ17の表示画面が、
図8の右下に示す選択画面に遷移する。この選択画面には、顧客が選択した部屋に設けられた窓の開度について、複数の候補が表示される。ユーザは、顧客に、いずれか一つの開度を選択してもらい、上記の選択画面を通じて、顧客の選択結果を入力する。
図8に示す選択画面では、寝室に設けられた窓の開度として、「全開」、「半開」、「全閉」が選択可能に表示されている。そして、顧客がいずれか一つの開度を選択することで、寝室に設けられた窓の開度が決まり、換言すると、その窓の開口面積が決まる。
【0081】
以上に説明した一連の手順により、入力受付部21は、住宅内の部屋の利用条件に関する情報の入力を、ユーザから受け付ける。なお、ユーザから入力される情報のうち、顧客が選択した部屋に設置される物品の種類及び配置に関する情報は、これらの情報に応じて物品の特性(詳しくは、吸音性能のような防音特性)が定まることから、「部屋内の物品の特性に関する情報」に相当すると言える。
【0082】
第2実施形態に係る予測部22は、第1実施形態と同様、入力受付部21が受け付けた情報に基づいて、建設予定地に建てられる住宅内にて聞こえる騒音の強度(詳しくは、音圧又は騒音量)を予測する。特に、第2実施形態では、予測部22が、建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報と、住宅内の部屋の利用条件に関する情報とに基づき、ユーザにより入力された部屋(つまり、顧客が選択した部屋)内にて聞こえる騒音の強度を予測する。
【0083】
具体的に説明すると、予測部22は、住宅の外に存在する騒音源から住宅内の部屋に進入する騒音について、その部屋内で聞いた場合の強度を予測する。このとき、予測部22は、騒音の種類、及び騒音源から発せられた時点での騒音の強度とともに、ユーザにより入力された住宅内の部屋の利用条件に関する情報を参照する。つまり、第2実施形態では、住宅内の部屋にて聞こえる騒音の強度が、当該部屋の種類(用途)及び位置、方位、当該部屋の天井や壁等を構成する材料、当該部屋内に設置される物品の特性(具体的には、吸音性能)、並びに、当該部屋に設けられた窓等の開度、及び開度に応じた開口面積等に基づいて予測される。これにより、第2実施形態では、第1実施形態に比べて、住宅内にて聞こえる騒音の強度をより正確に予測することができる。
【0084】
また、第2実施形態において、予測部22は、ユーザにより入力された部屋内にて聞こえる騒音について、強度とともに、強度以外の音響学的特徴、具体的には残響時間をさらに予測する。残響時間は、部屋内における騒音の響き方を表す指標値であり、残響時間が短い騒音であるほど、人が感じる不快感が少なくなる。第2実施形態では、ユーザにより入力された住宅内の部屋の利用条件に関する情報、特に、部屋の天井や壁等を構成する材料及び部屋内に設置される物品の特性(吸音性能)に基づき、公知の計算式を適用して残響時間が予測される。残響時間の計算式としては、例えば、Eyringの残響式、又はKnudsen-Eyringの残響公式を利用することができる。
【0085】
第2実施形態に係る音加工部23は、第1実施形態と同様、騒音信号に対して音加工を実施して試験音を生成し、第1モードが指定された場合には、予測部22によって予測された強度及び残響時間に基づく第1試験音を生成する。
具体的に説明すると、音加工部23は、ユーザにより入力された騒音の種類と対応する騒音信号を、ストレージ13から読み出し、予測された強度に応じて、その騒音信号を減衰させる。つまり、住宅内の部屋内に設置される物品の吸音性能に応じて低下した騒音の強度を再現するように第1試験音が生成される。
また、音加工部23は、予測された残響時間に基づいて第1試験音を生成する際に、第1試験音を出力する機器(例えば、ヘッドフォン)からの第1試験音の聞こえ方を調整する。例えば、残響時間が基準レベルである場合には、時間経過に対して音量(強度)が一定値に維持されるような第1試験音を生成する。これに対して、残響時間が比較的に短い場合には、残響時間が基準レベルである場合に比べて、出力開始時の音量を小さくし、且つ、出力開始からの経過時間に応じて音量を徐々に小さくし、所定時間が経過した時点で無音状態又は無音に近い状態になるように第1試験音を生成する。反対に、残響時間が比較的に長い場合には、残響時間が基準レベルである場合に比べて、出力開始時の音量を若干小さくし、且つ、残響時間が比較的に短い場合に比べて緩やかな速度で音量が小さくなるように第1試験音を生成する。
以上の要領にて、第2実施形態に係る音加工部23は、第1試験音を生成する。
【0086】
また、第2実施形態において、音加工部23は、後述する第3モードがユーザによって指定された場合に、第3試験音を生成する。第3試験音は、予測部22により予測された強度に応じた音と、ストレージ13に記憶された制御音信号が示すマスキング用の制御音とに基づいて生成される音であり、例えば、双方の音を合成した音である。ここで、予測部22により予測された強度に応じた音とは、第1試験音と同じ要領で生成される音である。
【0087】
第2実施形態に係る制御部24は、第1実施形態と同様、ユーザにより指定されたモードに従って試験音をスピーカ18から出力させ、第1モードが指定された場合には第1試験音を出力させ、第2モードが指定された場合には第2試験音を出力させる。また、第2実施形態において制御部24が試験音をスピーカ18から出力させるモードには、上述の第3試験音を出力する第3モードがさらに含まれる。
【0088】
次に、第2実施形態に係る騒音予測装置10を用いた情報処理フロー、すなわち、第2実施形態に係る騒音予測フローについて、
図9を参照しながら説明する。第2実施形態に係る騒音予測フローは、
図9に示すように、基本的には、第1実施形態に係る騒音予測フローと同じである。
【0089】
第2実施形態に係る騒音予測フローでは、先ず、プロセッサ11が、入力受付処理を実行する(S011)。入力受付処理では、第1実施形態と同様、ユーザからの入力情報として、顧客が希望する住宅の種類及び建設予定地、試験音の出力モード、試験音として想定する騒音の種類、及び、第2モードを選択した場合の設定強度等を受け付ける。また、第2実施形態に係る入力受付処理では、住宅内の部屋の利用条件に関する情報、具体的には、騒音を住宅内のどの部屋で聞くか、当該部屋に設置される物品の種類及び配置(換言すると、物品の吸音特性)、並びに、当該寝室に設けられた窓の開度等をさらに受け付ける。
【0090】
次に、プロセッサ11は、予測処理を実行する(S012)。予測処理では、ユーザにより入力された建設予定地に建てられる住宅内にて聞こえる騒音の強度、より詳しくは、ユーザにより入力された部屋内にて聞こえる騒音の強度(音圧又は騒音量)を予測する。このとき、プロセッサ11は、ユーザにより入力された建設予定地を含む地域にて発生する騒音に関する情報と、ユーザにより入力された種類の住宅の防音性能と、ユーザにより入力された部屋の利用条件に関する情報と、部屋の利用条件に応じて決まる情報とに基づいて、部屋内にて聞こえる騒音の強度を予測する。ここで、部屋の利用条件に応じて決まる情報とは、例えば、部屋に設置される家具等の物品によって吸音される音の吸音率、部屋に設けられた窓等の開口部の開度に応じた開口面積等である。
【0091】
また、第2実施形態の予測処理では、部屋内にて聞こえる騒音の強度に加えて、その騒音の残響時間がさらに予測される。残響時間は、前述したように、部屋の壁や天井を構成する材料、及び、部屋に設置される物品のそれぞれの吸音性能に基づいて予測(計算)される。
【0092】
以降の流れは、第1実施形態と同様、ステップS011で受け付けた試験音の出力モードに応じて変わる(S013)。つまり、出力モードが第1モードである場合には、プロセッサ11が、ユーザにより入力された騒音の種類と対応する騒音信号を、予測処理にて予測された騒音の強度及び残響時間に基づいて加工して第1試験音を生成する(S014)。その後、プロセッサ11は、制御処理を実行して、生成された第1試験音をスピーカ18から出力させる(S015)。これにより、ユーザは、住宅の外から部屋内に進入する騒音について、実際にその部屋内にて聞こえる音を、顧客に聞かせる(体験させる)ことができる。このとき、第1試験音には、部屋内にて聞こえる騒音の強度のみではなく、その騒音の残響時間、すなわち部屋内での響き方が反映される。これにより、部屋内にて聞こえる騒音を再現した試験音として、実際の音により近く聞こえる音を、顧客に体験してもらうことができる。
【0093】
出力モードが第2モードである場合、プロセッサ11は、ストレージ13から読み出した騒音信号に対して、ユーザにより指定された設定強度に基づく減衰加工を行って第2試験音を生成する(S016)。その後、プロセッサ11は、制御処理を実行して、生成された第2試験音をスピーカ18から出力させる(S017)。
【0094】
出力モードが第3モードである場合、プロセッサ11は、ストレージ13から読み出した騒音信号に対して、第1モードと同様の要領で、予測処理にて予測された騒音の強度に基づく加工を行う。そして、プロセッサ11は、加工された騒音信号が示す予測騒音と、ストレージ13から読み出した制御音信号が示すマスキング用の制御音とに基づいて、第3試験音を生成する(S018)。その後、プロセッサ11は、制御処理を実行して、生成された第3試験音をスピーカ18から出力させる(S019)。このように第3モードが指定された場合、予測騒音と制御音の両方を出力する(厳密には、両方の音の合成音を出力する)ことで、顧客に、部屋内で聞こえる騒音が制御音によって聞こえ難くなる効果、すなわちサウンドマスキングの効果を体験してもらうことができる。
【0095】
その後、顧客が、試験音に対する評価等を行い、ユーザがフロー終了操作を行うと、その時点で、第2実施形態に係る騒音予測フローが終了する。
なお、フロー終了後、ユーザは、各試験音に対する評価結果を顧客から入手した上で、その評価結果に応じた騒音対策案を顧客に提示してもよい。例えば、顧客が、第1試験音が大きいと評価した場合には、外壁及び部屋の壁等における吸音材の追加(増量)、防音塀の設置、並びに、住宅における間取りの変更等を騒音対策案として提案してもよい。また、顧客が第1試験音を大きいと評価した一方で、第3試験音においてサウンドマスキングの効果を認識できた場合には、マスキング用の制御音を出力可能な装置の設置等を騒音対策案として提案してもよい。また、顧客が、第1試験音が小さいと評価した場合には、特に騒音対策案を顧客に提示しなくてもよい。
【0096】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の騒音予測装置、及び騒音予測方法に関する具体的な実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
また、上記の説明の中で参照した図面が示す画面例も一例に過ぎず、画面の構成例、表示される情報の内容、及びGUI(Graphical User Interface)等は、システム設計の仕様及びユーザの好み等に応じて自由に設計することができ、また適宜変更し得るものである。
【0097】
上記の実施形態では、第2モードにおいて、予め設定された設定強度(詳しくは、第1設定強度又は第2設定強度)に基づく第2試験音を出力させることとした。上記の実施形態において、設定強度は、騒音の強度に関する基準、詳しくは、世界保健機関(WHO)の、寝室で聞こえる騒音に関するガイドラインにて定められた推奨値をベースに設定されることとした。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、ユーザ又は顧客によって設定強度が設定されてもよい。また、設定強度は、設定後に必要に応じて見直されて、適宜変更されてもよい。
【0098】
また、上記の実施形態では、住宅内で聞こえる騒音の強度を再現した試験音を出力することとしたが、それ以外の試験音、例えば、住宅の外で聞こえる騒音の強度を再現した試験音を、リファレンス用の試験音として出力してもよい。
【0099】
また、上記の実施形態では、住宅内で聞こえる騒音の強度及び残響時間を予測することとしたが、これら以外の音響学的特徴、例えば、周波数特性等をさらに予測してもよい。そして、予測された2項目以上の音響学的特徴に基づいて生成される音を試験音(厳密には、第1試験音)として出力するとよい。
【0100】
また、上記の実施形態では、建物の一例として住宅を例に挙げたが、本発明は、住宅以外の建物、例えば店舗、病院等の施設、事業所のビル、及び工場内の建屋等を対象とする場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
10 騒音予測装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 ストレージ
14 通信用インタフェース
15 入力装置
16 出力装置
17 ディスプレイ
18 スピーカ(音出力器)
21 入力受付部
22 予測部
23 音加工部
24 制御部