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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049329
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】介助リフト
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/14 20060101AFI20240402BHJP
   A61G 7/12 20060101ALI20240402BHJP
   A61G 5/00 20060101ALI20240402BHJP
   A61G 5/14 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
A61G7/14
A61G7/12
A61G5/00 701
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122316
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022154445
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試験日:令和5年5月29日 試験場所:美須賀病院(愛媛県今治市黄金町3丁目4番地8)
(71)【出願人】
【識別番号】394006129
【氏名又は名称】株式会社いうら
(72)【発明者】
【氏名】永田 修二
(72)【発明者】
【氏名】大貫 千夏
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040EE03
4C040HH02
4C040JJ03
4C040JJ08
(57)【要約】
【課題】端座位姿勢で搭乗した利用者を移送姿勢にする際、利用者に局所的な負荷がかからず姿勢を安定させることができる介助リフトを提供すること。
【解決手段】床面を走行可能なベースと、ベース先端に立設され上下伸縮可能な支柱と、支柱から延設され利用者の太腿を支持する太腿受部と、支柱と利用者間に配設して一端を取着された第一支持部材の先端に第二支持部材を前後方向に回動可能に軸着して構成する回動機構と、第二支持部材に利用者の胸部から腹部近傍を支持する上半身支持部と脇を支持する脇支持部を取着して構成するとともに、端座位姿勢で搭乗した利用者の略膝窩近傍を通過する鉛直線と利用者の略丹田近傍を通過する水平線の交点に第二支持部材の回動中心を設定することで、上半身支持部前傾時に利用者の身体重心が太腿受部の略鉛直線上に位置するように構成した。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪が付設されて床面を走行可能なベースと、該ベースの先端に立設され上下伸縮可能な支柱と、該支柱に延設され利用者の太腿を支持する太腿受部と、該支柱に固着された第一支持部材の先端に第二支持部材を前後方向に回動可能に軸着してなる回動機構と、該利用者の胸部から腹部近傍を支持する上半身支持部及び該利用者の脇を支持する一対の脇支持部を該回動機構の該第二支持部材にそれぞれ取着して構成され、現在地から目的地まで該利用者を移送可能な介助リフトであって、側面視において該介助リフトに端座位姿勢で搭乗した該利用者の略膝窩近傍を通過する鉛直線と該利用者の略丹田近傍を通過する水平線の交点に該第二支持部材の回動中心を設定し、該第二支持部材を前方回動しつつ該上半身支持部を前傾させた時に該利用者の身体重心が該太腿受部の略鉛直線上に位置するように移送姿勢をとることで、該利用者の身体に局所的な負荷がかからないようにしたことを特徴とする介助リフト。
【請求項2】
側面視において前記支柱から前記利用者側に水平方向に軸承され、且つ、平面視において並設される回動軸と、該回動軸の先端に取着される前記固定部と、該固定部に前後回動自在に軸着した該回動部と、該回動軸にリンク機構によって係着した少なくとも一つ以上のレバー部材で構成した前記太腿受部であり、該レバー部材を操作することで該回動軸を回動させて、該利用者の矢状面に対して該太腿受部の上面が略垂直になる使用状態と、略平行になる収納状態に適宜姿勢変更可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の介助リフト。
【請求項3】
移送目的地の側縁に沿うように前記太腿受部に調節部を具備したことを特徴とする請求項2に記載の介助リフト。
【請求項4】
前記回動機構の前記第二支持部材の軸心に対して床面方向にわずかに略ハ字状に傾斜し、且つ、左右対称に垂下して配設される一対の支軸と、該支軸に回動自在に軸着され前記利用者の脇から背中までを挟持可能に屈曲しつつ側面視において略L字状に形成した一対の前記脇支持部であり、前記介助リフトに搭乗した該利用者の脇から受ける負荷を該脇支持部が受けて該利用者の脇から背中を該脇支持部で狭持するとともに、該利用者の腕が該脇支持部の外側から矢状面に向かうことを不可能にしたことを特徴とする請求項3に記載の介助リフト。
【請求項5】
前記脇支持部の前記支軸側に一端を取着しつつ他端を該脇支持部の脇支持部本体側に取着して張設される弾性体であって、該脇支持部が前記利用者から負荷を受けない場合には、該弾性体の弾性力によって該脇支持部の該利用者の搭乗側が開くことを特徴とする請求項4に記載の介助リフト。
【請求項6】
一対の前記脇支持部を接続する調節ベルトであって、該調節ベルトの長さを調節することで、該脇支持部が前記弾性体の弾性力に抗って前記利用者の搭乗側が閉じることを特徴とする請求項5に記載の介助リフト。
【請求項7】
前記介助リフトに搭乗した前記利用者が前記脇支持部に脇を支持されつつ、腕を曲げて脇を締めた状態で把持できるように、前記上半身支持部の前方に利用者用ハンドルを具備したことを特徴とする請求項6に記載の介助リフト。
【請求項8】
前記太腿受部の下方に前記支柱より水平方向に延設させるか、あるいは、前記車輪が当接可能に目的地の床面に敷設させることで該太腿受部と該目的地の前後方向の位置合わせを容易にするストッパを具備したことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の介助リフト。
【請求項9】
前記支柱から前記利用者側に延設された固定部と、該固定部に回動部を前後回動自在に軸着することで、該利用者が移送姿勢あるいは端座位姿勢になった際に、該利用者の太腿の前後の動きに連動して該回動部が同じ方向に回動するように前記太腿受部を構成したことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の介助リフト。
【請求項10】
前記回動機構の前記第二支持部材に前記上半身支持部を回動自在に軸着することで、前記利用者が姿勢変更する際、該利用者の体型に合わせて該上半身支持部が前後回動するように構成したことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の介助リフト。
【請求項11】
前記上半身支持部の上下方向の長さより、前記第二支持部材の上下方向の長さを長くすることによって、前記利用者が移送姿勢あるいは端座位姿勢になった際に、該上半身支持部の上端及び下端が該第二支持部材に当接して停止可能に構成したことを特徴とする請求項10に記載の介助リフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の不自由な利用者を現在地から目的地に移送するための介助リフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、身体の不自由な利用者(被介助者)をベッドからトイレなど目的地に移送するための介助リフトが種々提案されており、介助者の腰痛予防や作業効率向上など介助負担軽減に寄与している。
特に、利用者を搭乗させて床面を走行する床走行式リフトであれば、介助者の介助負担軽減に加えて、吊下げ式リフトに比べて住宅への設置工事が不要であり導入コストも抑えられ経済的である。
【0003】
例えば、特許文献1で示す移乗装置は、移乗装置の上に利用者の足底を着けつつ、端座位姿勢になった利用者の膝を膝受けに当てて支点にし、上半身を前傾させて持ち上げるとともに床面と利用者の胸部を平行にして胸部及び足で体重を支えて移送できる。
この移乗装置など立位式の介助リフトは利用者の足を本体に乗せて使用するので支持基底面を広くとることができ、利用者の姿勢を安定させやすい。また、上半身の前傾に併せて臀部が持ち上がるため、排泄後の臀部清拭がしやすい。
【0004】
また、特許文献2で示す移乗装置は、ベッドなどで端座位姿勢になった利用者の太腿の下に座部を敷き込み、座部を昇降させて利用者が端座位姿勢のまま目的地に移送できる。
この移乗装置など端座位式の介助リフトは端座位姿勢が取れる利用者であれば前述した立位式の介助リフトのように体位変換する必要が無く自然な姿勢で移送できるため身体的負担が少ない。また、利用者の太腿から臀部にかけて座部を広く設定することでより安定した姿勢で利用者を支持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-154773号
【特許文献2】実用新案登録3202436号
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1で示す移乗装置は、利用者が膝や股関節の曲げ伸ばしが可能でなければ使用できない。例えば、下肢に拘縮がみられる場合には特許文献1に記載の移乗装置を使用できない。
また、保持部材(中央部材)で胸部を支えて身体を保持するため、利用者の胸部に局所的に負荷がかかるものであり、例えば胸部に病気を抱える利用者は使用が困難である。
さらに、ベッドなどで端座位姿勢になった利用者が下肢を降ろした時に介助リフトに足を乗せられる高さに移乗装置やベッドなどの高さを合わせなければならない煩わしさもある。
【0007】
そして、特許文献2で示す移乗装置は、利用者の臀部とベッド上面の間に座部を入れようとすると利用者の皮膚を挟み込んだり、シーツがずれたりする恐れがあるため、介助者が太腿や臀部を持ち上げる必要があり介助負担が増える。
また、座面が広いことで臀部の支持面積が広がり利用者をより安定して支持できるが、排泄介助に使用する場合には利用者のズボンなどを脱がし難くなる。特に、常に端座位姿勢なので臀部清拭が困難となり、介助者が利用者の太腿や臀部を持ち上げる必要があり、身体的負担がかかってしまう。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、利用者が端座位姿勢から移送姿勢に姿勢を変えた際、利用者が局所的に受ける負荷が少なく搭乗姿勢を安定させられる介助リフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施例の介助リフトは、複数の車輪が付設されて床面を走行可能なベースと、該ベースの先端に立設され上下伸縮可能な支柱と、該支柱に延設され利用者の太腿を支持する太腿受部と、該支柱に固着された第一支持部材の先端に第二支持部材を前後方向に回動可能に軸着してなる回動機構と、該利用者の胸部から腹部近傍を支持する上半身支持部及び該利用者の脇を支持する一対の脇支持部を該回動機構の該第二支持部材にそれぞれ取着して構成され、現在地から目的地まで該利用者を移送可能な介助リフトであって、側面視において該介助リフトに端座位姿勢で搭乗した該利用者の略膝窩近傍を通過する鉛直線と該利用者の略丹田近傍を通過する水平線の交点に該第二支持部材の回動中心を設定し、該第二支持部材を前方回動しつつ該上半身支持部を前傾させた時に該利用者の身体重心が該太腿受部の略鉛直線上に位置するように移送姿勢をとることで、該利用者の身体に局所的な負荷がかからないようにしたことを特徴としている。
そして、側面視において前記支柱から前記利用者側に水平方向に軸承され、且つ、平面視において並設される回動軸と、該回動軸の先端に取着される前記固定部と、該固定部に前後回動自在に軸着した該回動部と、該回動軸にリンク機構によって係着した少なくとも一つ以上のレバー部材で構成した前記太腿受部であり、該レバー部材を操作することで該回動軸を回動させて、該利用者の矢状面に対して該太腿受部の上面が略垂直になる使用状態と、略平行になる収納状態に適宜姿勢変更可能にしたことを特徴としている。
そして、移送目的地の側縁に沿うように前記太腿受部に該調節部を具備したことを特徴としている。
そして、前記回動機構の前記第二支持部材の軸心に対して床面方向にわずかに略ハ字状に傾斜し、且つ、左右対称に垂下して配設される一対の支軸と、該支軸に回動自在に軸着され前記利用者の脇から背中までを挟持可能に屈曲しつつ側面視において略L字状に形成した一対の前記脇支持部であり、前記介助リフトに搭乗した該利用者の脇から受ける負荷を該脇支持部が受けて該利用者の脇から背中を該脇支持部で狭持するとともに、該利用者の腕が該脇支持部の外側から矢状面に向かうことを不可能にしたことを特徴としている。
そして、前記脇支持部の前記支軸側に一端を取着しつつ他端を該脇支持部の脇支持部本体側に取着して張設される弾性体であって、該脇支持部が前記利用者から負荷を受けない場合には、該弾性体の弾性力によって該脇支持部の該利用者の搭乗側が開くことを特徴としている。
そして、一対の該脇支持部を接続する調節ベルトであって、該調節ベルトの長さを調節することで、該脇支持部が前記弾性体の弾性力に抗って前記利用者の搭乗側が閉じることを特徴としている。
そして、前記介助リフトに搭乗した前記利用者が前記脇支持部に脇を支持されつつ、腕を曲げて脇を締めた状態で把持できるように、前記上半身支持部の前方に利用者用ハンドルを具備したことを特徴としている。
そして、前記太腿受部の下方に前記支柱より水平方向に延設させるか、あるいは、前記車輪が当接可能に目的地の床面に敷設させることで該太腿受部と該目的地の前後方向の位置合わせを容易にするストッパを具備したことを特徴としている。
そして、前記支柱から前記利用者側に延設された固定部と、該固定部に回動部を前後回動自在に軸着することで、該利用者が移送姿勢あるいは端座位姿勢になった際に、該利用者の太腿の前後の動きに連動して該回動部が同じ方向に回動するように前記太腿受部を構成したことを特徴としている。
そして、前記回動機構の前記第二支持部材に前記上半身支持部を回動自在に軸着することで、前記利用者が姿勢変更する際、該利用者の体型に合わせて該上半身支持部が前後回動するように構成したことを特徴としている。
そして、前記上半身支持部の上下方向の長さより、前記第二支持部材の上下方向の長さを長くすることによって、前記利用者が移送姿勢あるいは端座位姿勢になった際に、該上半身支持部の上端及び下端が該第二支持部材に当接して停止可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の介助リフトは、端座位姿勢で介助リフトに搭乗した利用者を移送姿勢(前傾姿勢)に姿勢変更する際、利用者は上半身の屈曲のみで身体重心を利用者の太腿を支えている太腿受部の上方に配置することで姿勢を安定させることができる。よって、先行技術で挙げた移乗装置のように利用者の足を本体に乗せて使用する必要がないため下肢の曲げ伸ばしができない利用者でも本実施例における介助リフトを使用できる。また、回動機構の回動中心を太腿受部に着座した利用者の略膝窩近傍を通過する垂直線と略丹田近傍を通過する水平線の交点に設定したことで、回動機構の回動に合わせて必要最小限の移動量で太腿受部の上方に身体重心を移動させ、利用者の臀部を持ち上げることができるため利用者の太腿を支持する太腿受部の面積を小さくすることができる。つまり、排泄介助などで利用者のズボンなどを脱がす際、介助者が太腿を持ち上げることなくしっかりと下まで降ろすことができる。また、太腿受部の上方に身体重心を位置させることで、介助リフトに搭乗した利用者の上半身(胸部や腹部、脇など)と接する上半身支持部及び脇支持部で必要以上に重心バランスを取る必要が無いため局所的な身体的負担を軽減できる。さらに、先行技術で挙げた移乗装置は搭乗時に足を本体に乗せられる高さにベッドなど現在地の高さを調節する必要があったが、足を本体に乗せなくても使用できるためベッドなど現在地との組み合わせを自由に設定できる。
そして、太腿受部を収納状態と使用状態に姿勢変更できるため、収納状態においては利用者が後方から介助リフトに搭乗する際、スムーズに本体を利用者に近づけることができる。また、使用状態においては、太腿受部に外力が加わってもリンク機構が簡単に解除されないため、走行中に不意に太腿受部が収納状態に姿勢変更して利用者の足が落ちる心配がない。
そして、ベッドなどから目的地に利用者を移送する場合、目的地の側縁に沿うように太腿受部に調節部を設けたことで、利用者の身体状況に関わらず、最適な位置に臀部を降ろすことができる。また、男性の利用者をトイレに移送する場合、身体状況に関わらず、男性器を便座の内側に確実に配置して排泄(排尿)できる。
そして、回動機構の第二支持部材先端から斜め下方に回動自在に脇支持部を軸着し、利用者の体重の分力によって脇腹から背中を挟持することで、必要以上に身体が締め付けられるなど利用者が痛みや不快感を覚えることが無い。また、脇支持部が側面視において略L字状に形成され、介助リフトLに搭乗して移送姿勢になった利用者の腕を矢状面に向かって動かせないようにしたことで、利用者の腕が脇支持部から脱落しないため不意に脇支持部が開いて利用者が転落する心配が無い。
そして、利用者が介助リフトに搭乗していない時には弾性体の弾性力によって脇支持部本体が開く方向に付勢されるため、介助リフトに利用者を搭乗させる前に介助者が脇支持部を開く操作をする必要が無く、介助時間の短縮など作業性を向上できる。
そして、左右の脇支持部が調節ベルトを介して接続されるとともに、調節ベルトの長さを調節して脇支持部の位置を利用者の体型に合わせて固定することで、弾性体の弾性力にや利用者の僅かな上半身の姿勢の変化によって脇支持部が開くことが無いため、利用者の脇が受ける痛みや不快感を軽減できる。また、上半身支持部を含めて脇支持部と調節ベルトでループ状に形成されるため、何らかの理由により不意に利用者が後傾しても後方に転落する危険を回避できる。
そして、介助リフトに搭乗した利用者の上腕に対して前腕が屈曲した状態、つまり、腕を曲げて脇を締めた状態で利用者用ハンドルを把持することで、大胸筋や広背筋など脇周辺の筋肉を上手く使い体幹を安定させた状態で介助リフトに搭乗でき、脇や上腕に伴う不快感を軽減させるとともに、移送時の姿勢も安定させることができる。
そして、トイレなどの目的地に到着した際、利用者の臀部を降ろす位置にあらかじめ設定した対象物とストッパを当接させることで、前後方向の位置合わせが簡単にでき、介助者が位置を微調節する介助負担を軽減できる。なお、ストッパは介助リフト本体に付設して対象物とストッパを当接させて位置合わせしても良いし、目的地にストッパを敷設して介助リフトの車輪を当接させて位置合わせしても良い。目的地にストッパを敷設する場合は、下肢周辺にストッパが構成されないため利用者が介助リフトにより搭乗しやすくなる利点もある。
そして、端座位姿勢から移送姿勢に姿勢変更するのに合わせて、太腿受部の固定部に対して回動部が前後方向に回動するため、太腿受部の角に利用者の太腿が当たるのを防ぎ、不快感を与えないようにしている。また、回動部の上部にはクッション材を取着しているため利用者がより不快感を覚えることなく快適に使用できる。
そして、移送姿勢時に上半身支持部が利用者の体型に合わせて前後方向に回動するため、下腹部に上半身支持部の下端部による腹部近傍の圧迫を軽減でき、利用者は快適に介助リフトに搭乗できる。さらに、利用者の上半身を支持する支持部本体が下方に向かうにつれて厚みが増えるように形成しているため、より腹部近傍の圧迫感を軽減できる。
そして、上下方向において回動機構の第二支持部材を上半身支持部より長く設定して上半身支持部の回転止めの役割を与えることで、上半身支持部の回転止めのための部品を用意する必要が無く、部品構成を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】介助リフトLの全体斜視図
図2】介助リフトLの全体側面図
図3】介助リフトLの全体背面図
図4】太腿受部3とストッパ7の分解図
図5】太腿受部3の(a)部分側面図(b)部分背面図(c)A-A断面部分背面図
図6】回動機構4と上半身支持部5と脇支持部6,6の分解図
図7】(a)利用者Mが介助リフトLに搭乗していない時の上半身支持部5を示す部分側面図(b)利用者Mが介助リフトLに搭乗している時の上半身支持部5を示す部分側面図
図8】(a)利用者Mが介助リフトLに搭乗していない時の脇支持部6,6を示す部分側面図(b)利用者Mが介助リフトLに搭乗している時の脇支持部6,6を示す部分側面図
図9】リモコン8の説明図
図10】(a)利用者MがベッドBに端座位で座った状態の利用者Mの支持基底面BOS1と身体重心G1の位置関係を示す側面図(b)利用者Mが介助リフトLに移送姿勢で搭乗した状態で利用者Mの支持基底面BOS2と身体重心G2の位置関係を示す側面図
図11】介助リフトの回動中心Xを示す側面図
図12】(a)回動機構4の回動中心Xに対して領域A1に回動中心X1を設定した時の仮想線VLと仮想線VL1の軌跡の比較をする模式図(b)回動機構4の回動中心Xに対して領域A2に回動中心X2を設定した時の仮想線VLと仮想線VL2の軌跡の比較をする模式図(c)回動機構4の回動中心Xに対して領域A3に回動中心X3を設定した時の仮想線VLと仮想線VL3の軌跡の比較をする模式図(d)回動機構4の回動中心Xに対して領域A4に回動中心X4を設定した時の仮想線VLと仮想線VL4の軌跡の比較をする模式図
図13】(a)ベッドBで端座位姿勢になった利用者Mに太腿受部3が収納状態の介助リフトLが近づいた状態を示す側面図(b)使用状態にした太腿受部3を上昇させ介助リフトLに利用者Mが搭乗して上半身支持部5及び脇支持部6,6に上半身が支持された状態を示す側面図
図14】(a)介助リフトLを移送姿勢に姿勢変更した状態を示す側面図(b)介助リフトLに搭乗した利用者MのズボンUをトイレで脱がした状態を示す側面図
図15】(a)介助リフトLの支柱2を昇降してストッパ7と便器Tの便座の高さ合わせをした状態を示す側面図(b)介助リフトLの支柱を昇降して太腿受部3と便器Tの便座の高さを略同じにするとともに上半身支持部5と脇支持部6,6を後傾させて利用者Mの臀部を便器Tの便座に乗せた状態を示す側面図
図16】(a)介助リフトLの太腿受部3を上昇させて利用者Mの足を床面から浮かせた状態を示す側面図(b)介助リフトLの支柱2を上昇させるとともに移送姿勢に姿勢変更しつつ利用者MにズボンUを履かせた状態を示す側面図
図17】介助リフトL1のホルダ2f’にリモコン8を収納した状態を示す(a)部分斜視図(b)部分平面図
図18】介助リフトL2のストッパ7’の(a)分解斜視図(b)収納状態を示す斜視図(c)仕様状態を示す斜視図
図19】介助リフトL2のストッパ73を示す模式図
図20】(a)介助リフトLの太腿受部3と便器Tと利用者Mの着座位置関係を示す模式図(b)介助リフトL3の太腿受部3’と便器Tと利用者Mの着座位置関係を示す模式図
図21】介助リフトL3の全体斜視図
図22】介助リフトL3の全体側面図
図23】介助リフトL3の全体背面図
図24】利用者Mが介助リフトL3に搭乗した状態を示す側面図
図25】調節ベルト9のバックル93の雄部93aと雌部93bが接続する前の状態を示す説明図
図26】調節ベルト9のバックル93の雄部93aと雌部93bが接続した状態を示す説明図
図27】介助リフトL3のリモコン8’の説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
本発明の介助リフトLについて図面を基に説明する。
図1などで示すように、前輪1b,1b及び後輪1c,1cを具備したベース1と、このベース1の前方に立設した支柱2と、この支柱2から水平方向に延設される太腿受部3,3と、支柱2と利用者の間に配設され先端が前後方向に回動自在に取着される回動機構4と、この回動機構4に支持され利用者Mの上半身を支える上半身支持部5と、この上半身支持部5に近接し回動機構4に支持される脇支持部6,6で主に構成している。
なお、本実施例では介助リフトLを用いてベッドBからトイレまで利用者Mを移送する方法を説明するが、ベッドBから椅子、ベッドBからベッドBなど現在地と目的地の組み合わせは適宜設定したので良い。
また、各図中に矢印を用いているが、利用者Mが介助リフトLに搭乗した状態を基準に前後左右上下を設定している。
そして、各構成部品を締結するためにネジやナット、座金などを使用しているが、実施例を説明するために必要な締結部材以外は図示を省略している。
【0013】
次に、ベース1について詳細を説明する。
このベース1は図1及び図3で示すように利用者Mが通行可能な幅、且つ、平面視において略コ字状に複数のフレームを固着して形成されるベース本体1aの四隅に、前輪1b,1b及び後輪1c,1cを取着して床面を走行可能に構成している。なお、該ベース本体1aの平面視における開口部は利用者MがベッドBから介助リフトLに乗り込む側に設けている。
そして、該前輪1b,1b間に配置した連動部材1eによっていずれかのブレーキペダル1f,1fを介助者が踏み込むことで該前輪1b,1bを同時にロック、前方に踏み込むと該前輪1b,1bを同時にロック解除できる。これは、該前輪1b,1bを2輪同時にロックすることで介助者の負担軽減を図っているが、本実施例に限定する必要は無く、それぞれ単独でロックがかかるようにしても良い。
また、図2に示すように該前輪1b,1bに比べて該後輪1c,1cが小径に構成されておりベッドBなどの下のスペースに該ベース本体1aの一端を侵入可能としている。
そして、後述する支柱2を支持可能に該ベース本体1aの平面視における閉口部中央近傍に支柱ブラケット1dを固着している。
なお、本実施例で示したベース1は一例であり、適宜仕様変更して良い。
【0014】
次に、支柱2について説明する。
この支柱2は図1などで示すように前記支柱ブラケット1dの上方に取着可能なブラケットを下端に固着した内マスト2aに、外マスト2bを外挿しつつ内部に配設した伸縮手段2c(図示省略)によって該内マスト2aに対して相対的に該外マスト2bを上下方向に移動可能に構成している。
なお、本実施例では該内マスト2a及び該外マスト2bを平面視において円筒形状としているが矩形形状にしても良く該内マスト2aに該外マスト2bが外挿され上下方向に移動可能な形状であれば良い。
また、本実施例では該外マスト2bを上下に駆動させるために伸縮手段2cにアクチュエータを採用しているが、油圧式ダンパなどでも良く、該外マスト2bを任意の位置まで昇降及び停止できる構成であれば良い。
そして、該外マスト2bの上部はコントロールボックス(図示省略)を載置するための支持板2dを固着し、該支持板2dには介助者が移送時に把持するためのハンドル2eを固着している。なお、該ハンドル2eは図1で示すように丸パイプの両端を略U字状に屈曲形成して両手で握れるようにしているが、本実施例に限定する必要は無く介助者が操作しやすい形状を適宜設定したので良い。
そして、該支持板2dの上部には樹脂製のホルダ2fを取着している。該支持板2dと該ホルダ2f内にはコントロールボックスや各配線を収納している。
また、該支柱2の介助者側に充電式のバッテリー2gを止着している。なお、該バッテリー2gを止着する位置は本実施例に限定する必要は無く、該バッテリー2gの着脱のし易さなど取り扱い易い位置に設定したので良い。
【0015】
次に、太腿受部3について説明する。
この太腿受部3は介助リフトL使用時に利用者Mの太腿を支持するためのものである。
詳述すると、太腿受部3は利用者Mの太腿を支持する太腿受部本体31,31と、該太腿受部本体31,31を使用状態と収納状態に姿勢変更するためのリンク機構32と、カバー33で主に構成している。
【0016】
まず、該太腿受部本体31,31について説明する。
該太腿受部本体31,31は右太腿用と左太腿用で左右対称形状をしており、前記支柱2の側部に構成した後述するリンク機構32,32に支持され、水平方向に延設される回動軸31a,31aと、該回動軸31a,31aの先端に平面視において左右方向に延設して固着される固定部材31b,31bと、該固定部材31b,31bに側面視において前後方向に回動自在に軸着される回動部材31c,31cと、該回動部材31c,31cの上部に取着されるクッション部材31d,31dで構成している。
該クッション部材31d,31dの形状に関する詳細な説明は省略するが利用者Mの太腿の形状に合うように発泡ポリエチレンフォームなどの軟質のクッション性のある材質を用いて形成している。なお、該クッション部材31d,31dの形状や材質は本実施例に限定する必要は無く適宜設定したので良い。
なお、本実施例における該太腿受部本体31,31を構成する該固定部材31b,31b及び該回動部材31c,31c、該クッション部材31d,31dの前後方向の幅は利用者の膝窩(しっか)Pから後方に8cm~10cm程度の幅で、左右方向の幅は13cm~15cm程度の幅で構成され、且つ、左右方向の上面は利用者Mの太腿の形状に沿うように湾曲状に成形して太腿を支持する。つまり、詳細は後述するが利用者Mの太腿の少なくとも膝窩P近傍を支持できる形状をしていれば良い。
このように構成することで、利用者Mの臀部から該クッション部材31d,31dの後端にズボンUなどを降ろせるスペースが確保できるため、排泄介助に介助リフトLを使用する場合にズボンUなどを装着したままトイレまで利用者Mを移送し、トイレに到着してからズボンUなどを脱いで臀部を露出できる。
【0017】
次に、リンク機構32について説明する。
まず、ブラケット32aに前記太腿受部本体31,31を回動自在に軸着するボス部材32b,32bと、側面視において該ブラケット32aと前記支柱2の前記外マスト2b間に配設される支持板32cをそれぞれ固着している。そして、第一リンク部材32d,32dの一端を該支持板32cに回動可能に軸着している。そして、正面視において該ブラケット32aと該支持板32cの両側部近傍に規制ピン32e,32eを横設して固着し、該第一リンク部材32d,32dは該規制ピン32e,32eに当接して回動停止する。そして、該第一リンク部材32d,32dの一端は第二リンク部材32f,32fを軸着し、該第二リンク部材32f,32fの他端はレバー部材32g,32gを固着している。そして、カム部材32h,32hの一端を該第二リンク部材32f,32fに軸着し、他端に該太腿受部本体31,31の前記回動軸31a,31aを挿通している。なお、該回動軸31a,31aの一端近傍には溝部311a,311aを形成しており、該溝部311a,311aと係合するように該カム部材32h,32hに穿設したキー穴321h,321hを形成することで該回動軸31a,31aの回動に合わせて該カム部材32h,32hも連動して回動するように構成している。そして、該外マスト2bにブラケット32iに該回動軸32a,32aの一端を挿通して締結部材(図示省略)により止着することで、該回動軸32a,32aが脱落しないように構成している。
なお、図5(a)で示すように該リンク機構32は右太腿用と左太腿用の部品を前後に連設している。このように配置することで、各構成部材が作動した時に干渉しないため、省スペース化を図ることができ、製品をコンパクトにできる。
【0018】
このように構成した前記太腿受部3は、前記レバー部材32g,32gを操作することで、収納状態と使用状態に前記太腿受部本体31,31を姿勢変更できる。
該太腿受部本体31,31の姿勢変更時の各構成部材の動きについて以下詳述する。
なお、図5などで示すように利用者Mが介助リフトに搭乗した状態の矢状面に対して前記クッション部材31d,31dの上面が略垂直になり利用者Mの太腿を支持する場合が使用状態、略平行になる場合が収納状態である。また、図5では利用者Mの左太腿を支持する該太腿受部3を用いている。(右太腿を支持する該太腿受部3については左右対称であるため動作が反対となる。)
まず、収納状態から使用状態に姿勢変更する場合を説明する。
介助者が該レバー部材32g,32gを把持して上方向に引き上げると、図5(c)で示すように前記回動軸31aが回動中心となり、前記カム部材32hが背面視において時計回りに回動する。
すると、該カム部材32hに軸着された該第二リンク部材32fが背面視において時計回りに回動するとともに、該第二リンク部材32fに軸着されたが前記第一リンク部材32dが背面視において反時計回りに回動する。
一定間隔回動すると、該カム部材32hと該第二リンク部材32fの軸支点と該第二リンク部材32fと該第一リンク部材32dの軸支点を結ぶ線aと、該第二リンク部材32fと該第一リンク部材32の軸支点と該第一リンク部材32dと前記支持板32cの軸支点を結ぶ線bで成す角度cが鋭角から水平になるのを経て鈍角になり、支点越えをした状態になる。そして、支点越えした状態で該第一リンク部材32dを前記規制ピン32eと当接させて停止させている。この時、利用者Mの太腿を該クッション部材31dで支持した時に上方から荷重が加わっても支点越えした状態から戻ることはない。(該第一リンク部材32dが該規制ピン32eに当接する方向に力が加わる。)
また、該リンク機構32の該レバー部材32g,32g以外が露出しないように前記カバー33で覆設されているため、不意に側面から外力が加わることも無い。
つまり、利用者Mを移送中に何らかの理由で太腿受部3が不意に使用状態から収納状態になることが無いため安全に使用できる。
本実施例における太腿受部3は収納状態にすることで介助リフトLに搭乗する際、前方が開けているので後方から乗り込みやすくなる点や、移送中に太腿受部3が収納状態になる心配がなく安全に使用できる利点があるが、本実施例に限定する必要は無い。例えば、本実施例においては、左右単独操作する構成にしているが左右同時に動作しても良く、リンク機構をレバー部材を操作して動かすのではなく、リモコンによってアクチュエータを駆動しても良く、使用者が適宜設定したので良い。
【0019】
このように構成した前記太腿受部3は使用状態にした時、前記固定部材31b,31bに対して前記回動部材31c,31cが側面視において前後方向に回動する。つまり、詳細は後述するが利用者Mが端座位姿勢で介助リフトLに搭乗してから移送姿勢に姿勢変更した際、利用者Mの太腿の姿勢変更に合わせて該回動部材31c,31cが前方回動するため太腿の局所に負荷が集中することが無く、痛みや不快感を軽減できる。
また、利用者Mの太腿を前記クッション部材31d,31dで支持するため、より不快感を軽減できる。
なお、本実施例では、該固定部材31b,31bに対して該回動部材31c,31cが利用者M前後の動きに合わせて側面視において前後方向に回動するように構成したが、左右や斜め方向に回動するようにしても良い。例えば、図示は省略するが該固定部材31b,31bの上部にボールポイント式の該回動部材31c,31cを取着することで、前後方向だけでなく左右や斜め方向に該回動部材31c,31cを回動させることができる。
【0020】
次に、回動機構4について説明する。
この回動機構4は、前記支柱2の前記外マスト2bに一端を固着して水平方向に一定間隔延設しつつ上方に屈曲形成した第一支持部材4aと、該第一支持部材4aの一端に回動自在に軸着した第二支持部材4bと、該外マスト2bに固着したブラケット4cと該第二支持部材4bの一端に伸縮手段4dを軸着して構成している。
まず、該第一支持部材4aは図7などで示すように側面視において略へ字状に屈曲形成され、先端が上方を向くように該外マスト2bに固着している。
そして、該第二支持部材4bは図7などで示すように側面視において略ヘ字状に屈曲形成され、一端を該第一支持部材4aの先端に回動自在に軸着している。
そして、該第一支持部材4aから上方に一定間隔離間して該ブラケット4cを固着し、該ブラケット4cの一端と該第二支持部材4bの一端を伸縮手段4dで軸着している。
なお、該伸縮手段4dは本実施例においてはアクチュエータを使用しているが、該第二支持部材4bを回動できるものであればアクチュエータに限定する必要は無い。例えば、ウィンチ機構のようにロープやベルトなどで巻き取りながら回動させても良いし、該第二支持部材4bの一端にハンドルを付けて介助者が直接引っ張って操作をしても良い。
【0021】
次に、上半身支持部5について説明する。
この上半身支持部5は、パイプを矩形ループ状に形成した支持枠5aと、該支持枠5a上に止着される支持部本体5bと、該支持枠5aに該支持部本体5bを止着するための支持部材5c,5cと、前記回動機構4の前記第二支持部材4bに左右方向に軸心を配置して固着したボス部材5dで構成され、且つ、該ボス部材5dに該支持部材5c,5cを回動自在に軸着している。
なお、該第二支持部材4b及び該支持枠5aの形状は該支持枠5a回動時に該第二支持部材4bに当接して止まるように、該支持枠5a及び該第二支持部材4bの長さを設定している。
また、該支持部本体5bは利用者Mの上半身、特に胸部から腹部までを支持するためにポリウレタン系樹脂など軟質性の材料で形成された部材である。そして、図7などで示すように該支持部本体5bは側面視において上部51bに比べて下部52bが後方に突出するように前後方向の厚みを形成するとともに、該上部51bから前方に顎受53bを形成している。なお、該下部52bは該支持枠5aよりも下方に突出した状態で該支持枠5aに止着している。
また、利用者Mが介助リフトLに搭乗した際、自ら握るための利用者用ハンドル5eを前記回動機構4の前記ブラケット4cの下方に取着している。なお、該利用者用ハンドル5eは平面視において略へ字状に形成し両手で握れるように形成しているが、本実施例に限定する必要はない。
【0022】
このように構成した前記上半身支持部5は、図10(b)などで示すように、利用者Mの胸部から腹部近傍を支持するものである。
図7(b)は該上半身支持部5が図7(a)の姿勢から下方に回動した状態を示している。
詳述すると、該上半身支持部5は、前記回動機構4を駆動して利用者Mを移送姿勢にした時、つまり該上半身支持部5を前方回動した時に利用者Mの腹部近傍によって該上半身支持部5が前記ボス部材5dを回動中心として側面視において後方に回動する。
このように構成することで、介助リフトLに搭乗した利用者Mの腹部近傍に該上半身支持部5の下端が干渉して負荷が局所に集中するのを防ぐことができ、痛みなどの不快感を軽減できる。
また、腹囲が大きい利用者Mなどにおいては、腹部を基点に該上半身支持部5が利用者Mの胸部方向に回動するため、該上半身支持部5によって利用者Mの上半身をしっかりと支持できる。
このように、該上半身支持部5が利用者Mの体型に合わせて前後方向に回動するため、利用者Mの主に腹部の圧迫を軽減でき、快適に介助リフトLに搭乗できる。
また、前記支持部本体5bに前記顎受53bを設けているため、介助リフトL使用時に利用者M自身の体型の個体差により姿勢変更時に利用者Mの顎が該上半身支持部5の上部と干渉する恐れがあっても保護できたり、最初から上半身をしっかり顎まで該上半身支持部5に預けられたり安全に使用できる。
そして、本実施例においては前述したように該上半身支持部5の回動止めを前記回動機構4の前記第二支持部材4bとすることで部品構成を簡便にしている。
なお、該上半身支持部5の構成は本実施例に限定する必要は無い。例えば、該第二支持部材4bと前記支持枠5aの間にばねなどの弾性体を介設することで該上半身支持部5の回動を滑らかにするとともに、該第二支持部材4b当接時の衝撃を軽減できる。
また、該上半身支持部5の該支持部本体5bが回動しない構成でも良い。
【0023】
次に、脇支持部6,6について説明する。
この脇支持部6,6は利用者Mの両脇を支持しつつ脇腹から背中近傍を狭時することで利用者Mが介助リフトL搭乗時に左右及び後方への転倒を防止するためのものである。
以下詳述すると、該脇支持部6,6は前記回動機構4の前記第二支持部材4bより左右対称にやや傾いて垂下された支軸6a,6aと、該支軸6a,6aに外挿して固着した第一規制ボス6b,6bと、該支軸6a,6aに外挿して該第一規制ボス6b,6bに枢着される第二規制ボス6c,6cと、該第二規制ボス6c,6cに一端を固着して複数回屈曲形成した脇支持部本体6d,6dと、該脇支持部本体6d,6dに外挿されるクッション材6e,6eと、該支軸6a,6aの上部に固着した支持プレート6fと、該脇支持部本体6d,6dの側部に固着したリベット部材6g,6gと、該支持プレート6fの穴と該リベット部材6g,6gに張設した弾性体6h,6hで主に構成している。
このように該脇支持部6,6を構成することで、図8などで示すように、利用者Mが脇を該クッション材6e,6eに乗せた時に利用者Mの脇を含む上半身の体重(荷重)を受けて、該支軸6a,6aを回動中心として利用者Mの脇腹及び背中向けて該クッション材6e,6eが回動する。
つまり、利用者M自身の上半身の体重の分力によって利用者Mの脇腹及び背中を該脇支持部6,6で挟持するため必要以上に締め付けられることが無く、不快感を伴わずに搭乗できる。
なお、図8などで示すように本実施例において該弾性体6h,6hは引っ張りばねを利用しており、利用者Mが介助リフトLに搭乗していない時は該弾性体6h,6hが作用して該脇支持部本体6d,6dが開く方向に回動する。
つまり、利用者Mが介助リフトLに搭乗していない時には脇支持部6,6が開いた状態となり利用者Mが介助リフトLに搭乗しやすくなる。
なお、該脇支持部6,6の構成は本実施例に限定する必要は無い。例えば、前記上半身支持部5の前記支持枠5aに対して垂直方向に延設するように該脇支持部6,6を構成したのでも良く、介助リフトLに搭乗した利用者Mが転落しないように支えられる構成であれば良い。
【0024】
次に、ストッパ7について説明する。
詳細は後述するがこのストッパ7は利用者Mが介助リフトLに搭乗する際、目的地との前後方向の位置合わせを容易にし、臀部を一定の場所に降ろし易くするものである。
例えば、本実施例において図15(a)で示すようにトイレの便器Tの先端に該ストッパ7を当接して介助リフトLの前後方向の位置を決められるようにしている。
以下、構成を詳述すると、前記太腿受部3の前記ブラケット32aに一端を取着し、該太腿受部3の前記回動軸31a,31aの略先端下方に配設されるように屈曲形成された支持パイプ7aと、該支持パイプ7aの一端に固着した補強部材7bと、該補強部材7bに止着されるプレート7cで構成している。
本実施例において該プレート7cはプラスチックなどの樹脂製材料を採用しており、便器Tなど対象物を傷付けることなく使用できる。
なお、図4で示すように該ストッパ7は前記太腿受部3に着脱可能に取着されているので、介助者が目視確認できる場合は取外しても良い。
また、本実施例では便器Tを用いて説明したが、車椅子のレッグサポートに該ストッパ7が当接するようにして車椅子から搭乗できるようにしても良く、対象物は限定されない。また、該支持パイプ7aをリンク式や伸縮式に置き換えて対象物に合わせて調節可能にしても良く、本発明の目的を逸脱しなければ適宜仕様を変えて良い。
【0025】
次に、リモコン8について説明する。
このリモコン8は、前記支柱2の前記伸縮手段2c及び前記回動機構4の前記伸縮手段4dがアクチュエータの時に該アクチュエータを駆動するために用いられる。
該リモコン8は、図9で示すように複数のボタンで構成され、任意の位置まで該支柱2の該伸縮手段2c及び該回動機構4の該伸縮手段4dの伸縮量を調節する調節ボタン81と、該調節ボタン81と組み合わせて該支柱2の該伸縮手段2cの伸縮量を記憶させる記憶ボタン82で主に構成している。
なお、介助者が該リモコン8を使用しない時には、該リモコン8は前記ハンドル2e,2eにフック(図示省略)を引っ掛けて吊下げて保管する。
【0026】
まず、調節ボタン81は、上昇ボタン81aと、下降ボタン81bと、前傾ボタン81cと、後傾ボタン81dで構成される。
そして、該上昇ボタン81aの役割は該上昇ボタン81aを押すことで該伸縮手段2cであるアクチュエータを延伸方向に駆動して前記外マスト2bを前記内マスト2aに対して相対的に上昇させるものである。
そして、該下降ボタン81bの役割は該下降ボタン81bを押すことで該伸縮手段2cであるアクチュエータを短縮方向に駆動して前記外マスト2bを前記内マスト2aに対して相対的に下降させるものである。
そして、該前傾ボタン81cの役割は該前傾ボタン81cを押すことで該伸縮手段4dであるアクチュエータを短縮方向に駆動して前記回動機構4を側面視において前方に回動させるものである。
そして、該後傾ボタン81dの役割は該後傾ボタン81dを押すことで該伸縮手段4dであるアクチュエータを延伸方向に駆動して前記回動機構4を側面視において後方に回動させるものである。
なお、該調節ボタン81はいずれも押した状態から手を離すと、手を離した位置で該伸縮手段2cあるいは該伸縮手段4dが停止するように構成している。
【0027】
そして、記憶ボタン82は、前記調節ボタン81の前記上昇ボタン81aと前記下降ボタン81bで設定した上昇位置を記憶して前記外マスト2bの上下方向の高さ調節を簡便にするものである。
該記憶ボタン82は、メモリボタン82aと、第一位置ボタン82bと、第二位置ボタン82cと、移送ボタン82dで構成される。
操作方法としては、該上昇ボタン81aあるいは該下降ボタン81bを押して、現在地であるベッドB上面の高さに前記太腿受部3の上面が合う位置に調節した後、該メモリボタン82aを押しながら該第一位置ボタン82bを押すことで第一位置として現在地を記録する。
そして、該上昇ボタン81aあるいは該下降ボタン81bを押して、目的地である便器Tの便座の高さと前記ストッパ7の該プレート7cが揃う位置に調節した後、該メモリボタン82aを押しながら該第二位置ボタン82cを押すことで第二位置として目的地を記録する。
そして、本実施例においては利用者Mを現在地から目的地に移送する際足は床面から離間した状態で移送するため、移送途中に利用者Mの足が床面に接地しない高さまで該上昇ボタン81aを押して調節した後、該メモリボタン82aを押しながら該移送ボタン82dを押すことで移送状態の高さを記録する。
このように、各場面に応じて必要な高さを記録させることで、伸縮手段2cであるアクチュエータの伸縮を利用者Mが微調整する必要が無くなるため、各場面毎に位置合わせが容易になる。
ここまで、リモコン8の各ボタンの役割について説明したが、図9で示すように各ボタンは2×4(2列×4個)のレイアウトに限定する必要は無い。例えば、円形に配列しても良い。また各ボタンに与える機能も本実施例の位置に限定する必要も無い。
【0028】
次に、介助リフトLに利用者Mが搭乗する前後の利用者Mの身体重心Gについて説明する。
まず、図10(a)で示すように利用者Mが介助リフトLに搭乗する前にベッドBに端座位姿勢で待機している場合の身体重心G1と支持基底面BOS1の関係について説明する。なお、諸説あるが端座位姿勢の該身体重心G1は丹田N(利用者Mの臍から指3本下に位置する腹直筋近傍)にあると考えられており、本実施例においても端座位姿勢の該身体重心G1を該丹田Nとしている。また、該支持基底面BOS1は人や物を支えている底面のことで、図10(a)では利用者Mの太腿から臀部を支えているベッドB上面及び床面に接地している利用者Mの足までの範囲である。
図10(a)の状態では利用者MはベッドB上面で太腿から臀部を支持されており、該身体重心G1から垂下される身体重心線GL1がベッドB上面の該支持基底面BOS1内におさまる。つまり、該支持基底面BOS1の鉛直線上に人や物の身体重心G1が位置していれば釣り合いが取れた状態となり、バランスを崩したり転倒する心配がない。
つまり、利用者Mが介助リフトLに搭乗する直前までは利用者Mの端座位姿勢は安定している。
【0029】
次に、図10(b)で示すように利用者Mが介助リフトLに移送姿勢で支持された場合について説明する。
図10(b)の状態では利用者Mは前記上半身支持部5及び前記脇支持部6,6によって上半身を支持され、下半身を前記太腿受部3の前記太腿受部本体31,31で支持される。
この時、利用者Mの身体重心G2は端座位姿勢時の前記身体重心G1より上半身が前傾した分、前方に移動するが、該身体重心G2から垂下される身体重心線GL2が該太腿受部本体31,31の上面の支持基底面BOS2内におさまる位置で前記回動機構4の回動が停止する。
また、該上半身支持部5は利用者Mの前方への倒れ込みを防止し、該脇支持部6,6は利用者Mの後方や側方への倒れ込みを防止するが、該身体重心G2が該支持基底面BOS2内におさまっているため姿勢を安定させるために胸部や腹部あるいは脇で必要以上に身体を支えることなく保持できる。よって、利用者Mは身体の圧迫感が少なく、楽な姿勢で搭乗できる。
【0030】
次に、介助リフトLを移送姿勢にするための、前記回動機構4の回動中心Xの設定位置について説明する。
図11で示すように、本実施例において該回動機構4の該回動中心Xは利用者Mが端座位姿勢時の前記丹田Nを通過するように引いた床面との水平線と、利用者Mの膝窩Pを通過するように床面から引いた鉛直線の交点を該回動中心Xとしている。
そして、図12で示すように該回動中心Xに対して直交する水平線と鉛直線で仕分けた4つの領域A1~A4を設定して、該領域A1~A4のそれぞれに回動中心X1~X4を設定した場合を用いて説明する。このとき、図11で示すように該回動中心Xから前記上半身支持部5の前記支持部本体5bを結ぶ仮想線VLを回転半径として、図12で示すように該回動中心X1~X4から該上半身支持部5の該支持部本体5bを結ぶ仮想線VL1~VL4を回転半径としてそれぞれ比較して説明する。
また、該仮想線VLの停止位置は前述した利用者Mの該身体重心G2が該支持基底面BOS2の鉛直線上に位置するまで回動機構4が回動する位置とする。
【0031】
まず、図12(a)で示すように前記領域A1に設定された前記回動中心X1は鉛直線が本実施例の前記回動中心Xより前方に位置し、水平線が本実施例の該回動中心Xより上方に位置した場所に設定している。
この場合だと、前記仮想線VL1の長さが前記仮想線VLより長く設定される。よって、利用者Mを移送姿勢にする際、利用者Mの上半身が上方に伸び上がって起立するように姿勢変更する。
すると、上半身と上半身支持部5とのずれが発生して不快感を伴うとともに、下半身も相対的に位置が下方にずれるため前記太腿支持部本体31,31から太腿がすべり落ちる可能性がある。それを防ぐために脇や胸部、腹部で必要以上に身体を支えようとすると、局所的に負荷がかかり痛みを感じる原因になってしまう。
よって、該領域A1内に該回動中心X1を設定すると本実施例の該回動中心Xに比べて利用者Mの姿勢が安定せず不快感を伴うものとなる。
【0032】
次に、図12(b)で示すように前記領域A2に設定された前記回動中心X2は鉛直線が本実施例の前記回動中心Xより前方に位置し、水平線が本実施例の該回動中心Xより下方に位置した場所に設定している。
この場合だと、前記仮想線VL1と同様に前記仮想線VL2が前記仮想線VLより長く設定される。
この時、水平位置が本実施例の該回動中心Xより低い位置にあるため前記領域A1の前記回動中心X1に比べて上方へのずれは少なくなるが、本実施例の仮想線VLに比べてずれが大きくなる。
つまり、該領域A1と同様に該領域A2内に該回動中心X2を設定すると本実施例の該回動中心Xに比べて姿勢が安定せず不快感を伴うものとなる。
【0033】
次に、図12(c)で示すように前記領域A3に設定された前記回動中心X3は鉛直線が本実施例の前記回動中心Xより後方に位置し、水平線が本実施例の該回動中心Xより下方に位置した場所に設定している。
この場合だと、前記仮想線VLに比べて前記仮想線VL3が長く設定される。
この時、本実施例の該回動中心Xより下方に該回動中心X3が設定されているため、下方に上半身のみ前方回動する軌跡となり利用者Mの臀部を持ち上げることができない。
つまり、該領域A3内に該回動中心X3を設定すると、本実施例の該回動中心Xに比べて利用者Mの上半身のみ鋭角に前方回動するため腹部が圧迫されて痛みを感じるなど不快感を伴うものとなる。また、臀部をしっかりと持ち上げられないため、移乗時の位置合わせや、排泄介助時の臀部清拭が困難になる。
【0034】
次に、図12(d)で示すように前記領域A4に設定された前記回動中心X4は鉛直線が本実施例の前記回動中心Xより後方に位置し、水平線が本実施例の該回動中心Xより上方に位置した場所に設定している。
この場合だと、前記仮想線VLに比べて前記仮想線VL4が短く設定される。
すると、該仮想線VL4の軌跡は一度上方に利用者Mの上半身が伸び上がる方向に回動しながら次第に上半身のみ下方へ下がるように前方回動する軌跡となる。
つまり、上半身のずれを感じるとともに上半身が鋭角に折れ曲がるため、より腹部が圧迫されて痛みを感じるなど不快感を伴うものとなる。
【0035】
このように前記領域A1~A4に設定した前記回動中心X1~X4と本実施例の前記回動中心Xを比較したが、本実施例で設定した該回動中心Xは利用者Mの臀部を持ち上げつつ利用者Mの上方へのずれを少なくできる。つまり、介助リフトLに搭乗した利用者Mを移送姿勢(前傾姿勢)に姿勢変更しても端座位姿勢と略同じ姿勢であるため利用者Mの姿勢を安定させやすい。
従来の立位式リフトは端座位姿勢から立位姿勢に姿勢変更すると身体重心の変化が複雑な軌跡を描くため利用者Mが不快感を感じないようにするため、複雑なリンク機構を具備する必要があるが、本実施例に記載の介助リフトLでは利用者M自身の姿勢が搭乗してから移送姿勢に姿勢変更しても前記第二支持部材4bが円弧運動しながら回動するのに合わせて利用者Mの身体重心が移動し、移動した身体重心を支持基底面である前記太腿受部本体31,31の鉛直線上に位置させるだけで良いので利用者Mの不快感を軽減を目的とする複雑な機構を具備する必要が無く構成を簡単にできる。
また、移送姿勢の身体重心位置を膝窩Pの鉛直線上にすることで太腿受部本体31,31が利用者Mの太腿と接する面積を小さくできる。つまり、臀部周辺を支持する必要がないためズボンUが降ろしやすくなると同時に、介助リフトへの搭乗もし易くなる。
そして、本実施例における介助リフトLを使用することで、上半身のずれが少ないため姿勢の安定を図るために必要以上に脇や胸部、腹部に局所的な負荷をかける必要がなく脇や、胸部、腹部に均一に負荷がかかることで、利用者Mはよりリラックスした姿勢で搭乗できる。
なお、上半身のみ前傾させて該太腿受部本体31,31の鉛直線上に身体重心を移動させることも可能であるが、この場合だと上半身と下半身が必要以上に鋭角に屈曲するため、利用者Mがリラックスした姿勢で搭乗できない。
本実施例における介助リフトLを使用することで、利用者Mが介助リフトLに端座位姿勢で搭乗してから移送姿勢に姿勢変更しても利用者M自身の姿勢が略端座位姿勢のままであるため、よりリラックスした姿勢で搭乗できる利点もある。
【0036】
次に、本実施例における介助リフトLを使用した利用者MのベッドBからトイレまでの移送手順を説明する。
使用前の準備として、太腿受部3のクッション部材31d,31d上面とベッドB上面及びストッパ7のプレート7cと便器Tの便座それぞれの高さを記憶ボタン82で記憶させている。なお、この作業は必ず必要では無く、介助者が適宜微調節しながら操作しても良い。
また、ベッドB上面は便器Tの便座より高い位置にあるものとし、ベッドBで端座位になった利用者Mは足が床面に接地していない状態、且つ、介助リフトLは最低位で保管されている状態及び太腿受部本体31,31は収納状態から説明を開始する。なお、この条件は一例であり、使用環境や条件によって適宜移送手順が変わるものである。
(1)ベッドBの側面と利用者Mの膝窩Pとの間に太腿受部3の太腿受部本体31,31のクッション部材31d,31dが入るスペースを確保して利用者Mが端座位姿勢を取る。
(2)介助者が介助リフトLを利用者Mまで近づけて、利用者Mの太腿の下側に太腿受部3の太腿受部本体31,31を配置する位置で介助リフトLを停車させる。(この時、略コ字状に形成したベース本体1aの開口部の内側に利用者Mが配置される位置で停車させる。)
(3)介助者がレバー部材32g,32gを操作して太腿受部3を使用状態にしてから、リモコン8の第一位置ボタン82bを押して太腿受部3を上昇させて利用者Mの太腿の膝窩Pをクッション部材31d,31dで支持し、介助リフトLのブレーキをかける。(なお、太腿をクッション部材31d,31dで支持する際、介助者が介助リフトLを介助者側に軽く引いて、クッション31d,31dの側部を利用者Mの膝窩Pに当接させるとより確実に位置調節できる。)
(4)上半身支持部5に胸部及び腹部が当接するまで利用者Mが上半身を前傾する。
(5)利用者Mが腕を脇支持部6,6の外側に回して前方の利用者用ハンドル5eを把持する。同時に、腕を楽な姿勢にすることで、自重で脇支持部6,6を付勢して利用者Mの両脇から背中を脇支持部6,6で挟持する。
(6)介助者がリモコン8の前傾ボタン81cを押して回動機構4の伸縮手段4dを駆動して上半身支持部5及び脇支持部6,6を前傾させることで利用者Mの上半身を前傾させる。
(7)介助者がリモコン8の移送ボタン82dを押して支柱2の伸縮手段2cを駆動して外マスト2bを上昇させて利用者Mを移送姿勢にしてから、ブレーキを解除する。
(8)介助者が介助リフトLを操作してトイレまで利用者Mを移送する。
(9)介助者が利用者MのズボンUを降ろし、利用者Mの臀部を露出した状態にする。(この時、利用者Mの安全のためにブレーキをかけて作業しても良い。)
(10)介助者がリモコン8の第二位置ボタン82cを押して支柱2の伸縮手段2cを駆動してストッパ7が便器Tの側面に当接する高さに外マスト2bを下降させる。
(11)介助者が介助リフトLを操作してストッパ7と便器Tの側面を当接させて、ブレーキをかける。
(12)介助者がリモコン8の後傾ボタン81dを押して回動機構4の伸縮手段2cを駆動して上半身支持部5及び脇支持部6,6を後傾させることで利用者Mの上半身を後傾させる。
(13)介助者がリモコン8の下降ボタン81bを押して支柱2の伸縮手段2cを駆動して外マスト2bを下降させて利用者Mの臀部を便器Tの便座に降ろす。(この時、利用者Mの足は床面に接地する。)
(14)介助者がレバー部材32g,32gを操作して太腿受部3を収納状態にして、利用者Mが楽な姿勢で排泄できることを確認してトイレから退出する。
(15)利用者Mが排泄を行う。(なお、排泄行為をし易くするために介助リフトLを利用者Mの身体から離しても良い。この場合は、介助リフトLのブレーキを解除して便器Tから少し介助リフトLを離間させる。)
(16)利用者Mがトイレに備え付けてあるコールボタン(図示省略)を押したり、トイレの外に向けて声を発することで介助者に排泄が終わったことを知らせる。
(17)介助者がトイレに入室し、レバー部材32g,32gを操作して太腿受部3を使用状態にし、リモコン8の上昇ボタン81aを押して支柱2の伸縮手段2cを駆動して外マスト2bを上昇させて太腿受部3の太腿受部本体31,31で利用者Mの太腿を支持しつつ、足が床面から離れる位置で停止させる。(なお、太腿をクッション部材31d,31dで支持する際に介助者が介助リフトLを介助者側に軽く引いて、クッション31d,31dの側部が利用者Mの膝窩Pに当接させると、より確実に位置調節できる。)
(18)介助者がリモコン8の前傾ボタン81cを押して回動機構4の伸縮手段4dを駆動して上半身支持部5及び脇支持部6,6を前傾させることで利用者Mの上半身を前傾させる。
(19)介助者が利用者Mの臀部清拭をして、ズボンUを履かせる。
(20)介助者がリモコン8の移送ボタン82dを押して支柱2の伸縮手段2cを駆動して外マスト2bを上昇させて移送姿勢にしてから、ブレーキを解除する。
(21)介助者が介助リフトLを操作してベッドBまで利用者Mを移送する。
(22)介助者がリモコン8の第一位置ボタン82bを押して設定した高さまで外マスト2bを下降させる。
(23)介助者がリモコン8の後傾ボタン81dを押して回動機構4の伸縮手段4dを駆動して上半身支持部5及び脇支持部6,6を後傾させることで利用者Mの上半身を後傾させて臀部をベッドB上面に降ろす。
(24)介助者がレバー部材32g,32gを操作して太腿受部3を収納状態にして、介助リフトLを利用者Mから離間させる。
なお、本実施例における介助リフトLの操作手順を説明したが、必ずこの手順を遵守する必要は無い。
例えば、本実施例においてはベッドB上面が便器Tの便座より高い場合で説明したが、ベッドB上面が便器Tの便座より低い場合は手順が逆になる。
また、昇降機能付きのベッドを使用する場合は、ベッドBの昇降動作を行うことで太腿受部3と太腿の位置を合わせることができる。
また、図14(b)などではズボンUを利用者Mの膝くらいまで降ろして説明しているが、利用者Mが便器Tの便座に座った後に介助リフトLを移動させても良く、その場合は足首までズボンUを降ろすことができる。つまり、衣服の着替え介助にも使用できる。
このように使用環境や、目的、利用者Mの身体状況に合わせて適宜介助リフトLを使用したので良い。
【0037】
ここまで本実施例における介助リフトLを使用してベッドBからトイレまで利用者Mを移送する手順を説明したが、次の利点がある。
まず、一連の移送動作において、利用者Mが足を介助リフトLや床面に乗せる必要が無い(なお、乗せた場合には支持基底面を広げることができるため、より利用者Mの姿勢を安定させた介助ができる。)。
そして、介助リフトLに搭乗した利用者Mが端座位姿勢から移送姿勢に姿勢変更しても太腿受部本体31,31の鉛直線上に利用者Mの身体重心をおさめているため、利用者Mの太腿から臀部にかけて支持する部材(本実施例においては太腿受部3)の面積を小さくできる。つまり、臀部を支持する必要が無いため、介助者が利用者Mの太腿や臀部を持ち上げることなくズボンUなどをしっかりと脱がして臀部を露出できる。
そして、太腿受部本体31,31が利用者Mの太腿の動きに連動して回動するため、利用者Mを移送姿勢にした時に太腿の一部に応力が集中することが無く、痛みなどの不快感を軽減できる。
そして、太腿受部3を使用状態と収納状態に姿勢変更できるため、利用者Mが介助リフトLに搭乗する際には前方が開けた状態となり、搭乗しやすくなる。
そして、回動機構4の第二支持部材4bを回動中心Xとして上半身支持部5が利用者Mの体型に合わせて回動するため、利用者Mを移送姿勢にした時に利用者Mの胸部や腹部の一部に上半身支持部5の角が当たるなど局所的に負荷が集中することが無いため痛みなどの不快感を軽減できる。
そして、脇支持部6,6が床面に対して略ハ字状に斜め下方向に回動可能に軸着されているため、利用者Mが介助リフトLに搭乗した時に体重の分力によって脇腹から背中を挟持することで、必要以上に身体が締め付けられるなど不快感を伴うことなく搭乗できる。また、利用者Mが搭乗していない時には弾性体6h,6hによって脇支持部本体6d,6dが開く方向に付勢されるため、介助リフトLに搭乗する際には脇支持部6,6を開きながら搭乗する必要が無くスムーズに搭乗できる。
そして、ストッパ7によって便器Tなど目的地に着いた際に、前後方向の位置合わせが容易にできる。
【0038】
次に、介助リフトLの別の実施例L1~L3について説明する。なお、介助リフトLから変更のない部品(軽微な外観変更のみで機能変更が無い部品も含む)については、前述した介助リフトLの符号をそのまま付記する。また、説明を省略している部品に関しては介助リフトLで使用した同名部品と同じ機能を有していることとする。
【0039】
まず、介助リフトL1は、支柱2の支持板2dの上部にホルダ2f’を止着し、該ホルダ2f’の前方に穿設した穴21f’にリモコン8を入れて該ホルダ2f’内に収納するように構成される。
また、該ホルダ2f’の上部に穿設した穴22f’より該リモコン8の任意のボタンが操作できないように該リモコン8を収納する。なお、実施例においてはメモリボタン82aが隠れるように穴22f’を穿設している。
このように構成することで、操作に必要のないボタンを押すことが無くなり介助リフトL1の誤動作を防止できる。(図17においては記憶ボタン82のメモリボタン82aを押せないようにすることで、間違った位置に高さを調節して設定しないようにできる。)
なお、本実施例ではメモリボタン82aが隠れるように該穴22f’を穿設したが、その他の不要なボタンが押せないように構成しても良く、適宜設定したので良い。
また、リモコン8をホルダ2f’内に収納することで、ハンドル2eにフックを引っかけて該リモコン8を保持するのに比べて該リモコン8が揺れ動いて脱落する心配も無く、介助者は両手でしっかりと該ハンドル2eを把持できるため介助リフトL1の移送性も向上できる。
【0040】
次に、介助リフトL2は、第一ストッパ71と第二ストッパ72にロック機構Rを介して二分割に構成されるストッパ7’が支柱2に回動可能に取着される。
詳述すると、該第一ストッパ71は図18(a)で示すように、先端にローラー部材71aを回動可能に軸着し、他端に支点プレート71bを第一ストッパ本体71cに固着して構成される。
そして、該第二ストッパ72は一枚のプレートからなり、一端を該支点プレート71bに回動自在に取着するとともに、図示は省略するが他端を支柱2の外マスト2bに固着している。
そして、該第一ストッパ71の該支点プレート71bには左右方向にツマミ部材R1が配置されるようにロック機構Rを取着している。
該ロック機構Rは、内径が段付形状をしているボス部材R2に弾性体R3を挿通しつつ、外径が段付形状をしているロックピンR4を該弾性体R3を介して該ボス部材R2を挿通し、該ツマミ部材R1を該ロックピンR4の一端に取着している。なお、該弾性体R3は圧縮バネを用いており、該ツマミ部材R1を介助者が引くと、該ロックピンR4が該弾性体R3の弾性力に抗って、該ボス部材R2内に収納される。
このように構成することで、該ストッパ7’を図18(b)で示す収納状態から図18(c)で示す使用状態にする時は、該ツマミ部材R1を介助者が引いて該ロックピンR4の先端を該第二ストッパ72に穿設した穴72aから脱出させ、該第一ストッパ71を側面視において上方に回動させるとともに該ロックピンR4の先端を該第二ストッパ72の切欠部72bに当接させる。そして、使用状態から収納状態にする場合は、前述した手順と逆の手順で操作したので良い。
前述した介助リフトLのストッパ7は使用状態では便器Tの端部に当接するように配置され、最適な位置で利用者Mを便座に簡単に降ろすことができる利点があるが、該ストッパ7が常に使用状態であると、例えば車椅子(図示省略)から利用者Mを介助リフトLに搭乗させる際、車椅子の(座面)シートと引っかかり上手く利用者Mを搭乗させられない可能性がある。
この時、本実施例で示した該ストッパ7’のように使用環境に応じて収納状態にすることで、車椅子のシートと該ストッパ7’が干渉しなくなるため、利用者Mは介助リフトL2に搭乗しやすくなる。
なお、本実施例で示した該ストッパ7’は一例であり、図示省略するが大径のパイプに小径のパイプを収納し、前後方向に伸縮するように構成しても良い。
つまり、周囲のものに干渉しない位置に該ストッパ7’が適宜変形するように構成することで、利用者Mをより安全、且つ、素早く介助リフトL2に移乗させることができる。
【0041】
なお、介助リフトL2ではベッドBや車椅子などとの干渉を避けるために折り畳み式のストッパ7’を説明したが、介助リフトL2に直接ストッパ7’を具備しなくても良い。
例えば、図19で示すように、便器Tの横に車輪止め用のストッパ73,73を具備しても良い。該ストッパ73,73は介助リフトL2の後輪1c,1cが乗り越え不可能な厚みを有する板をL字状に形成し、両面接着剤でトイレの床に貼り付けている。そして、貼り付け位置は該後輪1c,1cを該ストッパ73,73に当接させた時に、利用者Mの臀部を便器Tの便座に最適な位置で降ろせるように設定している。
このように構成することで、利用者Mの下肢周辺及び移乗対象であるベッドBや車椅子などの周辺にストッパ7’が配置されないため、利用者Mが介助リフトL2に搭乗しやすい。
また、本実施例における該ストッパ73,73は便器Tの矢状面に対して対象に配置するのではなく、向きを揃えてトイレに配置している。
このように配置することで、介助リフトL3がトイレに侵入した際、斜め方向から後輪1c,1cを該ストッパ73,73に当接させることができる。つまり、前後方向だけでなく、斜め方向からでも介助リフトL3を便器Tに合わせられる。
なお、該ストッパ73,73の形状は本実施例に限定する必要はない。例えば、板ではなくテープを床に貼り付けて目印にして、介助者が介助リフトL2を操作して後輪1c,1cをテープに合わせて停車させても良い。あるいは、L字状ではなく、一本線状にしても良い。
このように、介助リフトL2側にストッパ7’を設けるのではなく、目的地近傍に目印としてストッパ73,73を設定しても良い。
【0042】
次に、図20~27で示すのは介助リフトL3である。
まず、図20で示すのは、介助リフトL3の太腿受部3’であり、該太腿受部3’の太腿受部本体31’,31’のクッション部材31d’,31d’が平面視において右太腿用の該クッション部材31d’と左太腿用の該クッション部材31d’を使用状態にした際、便器Tの楕円状の便座の円弧に沿うように調節部311d’,311d’を設けている。
ところで、一般的に身長が高い人に比べて身長が低い人の方が、膝窩Pから臀部までの距離Sは短くなる。
例えば、前述した介助リフトLを使用する場合、前記クッション部材31,31と便器Tの座面との位置関係は図20(a)で示す位置である。
この時、膝窩Pから臀部までの距離Sが短い男性の利用者Mが介助リフトLを使用する場合、臀部位置が便器Tの便座前方で着座することになるため、男性器Zの位置が便座近傍あるいは上部に位置してしまい排泄(排尿)できない恐れがある。
それに対して、介助リフトL3を使用する場合、クッション部材31’,31’と便器Tの座面との位置関係は図20(b)で示す位置である。
この時、膝窩Pから臀部までの距離Sが短い男性の利用者Mが介助リフトL3を使用する場合、臀部位置が便器Tの適切な位置で着座でき、男性器Zの位置が便座より内側に位置するため身長の高い利用者Mと同じように適切な位置で排泄(排尿)できる。
つまり、該太腿受部3’,3’の該クッション部材31d’,31d’を便器Tの円弧状の側縁に合うように該調節部311d’,311d’を設けることで利用者Mの身体状況に関わらず、介助リフトL3を使用できる。
なお、ここでは目的地を便器Tとして説明したが、椅子やベッドなどが目的地でも使用することができる。つまり、目的地の側縁の形状に合わせて該クッション部材31’,31’を形成したので良い。
【0043】
そして、介助リフトL3は上半身支持部5’を構成する利用者用ハンドル5e’が支持部本体5b’の前方に配置される。
以下説明すると、該上半身支持部5’の上部に固着された支点プレート5c’に介助リフトL3に搭乗した利用者Mの矢状面を基準に左右対象となるように、利用者用ハンドル5e’が固着される。該利用者用ハンドル5e’は正面視において下方が開口した略コ字状に形成されるとともに、側面視において略へ字状に形成される。この時、図24で示すように利用者用ハンドル5e’は介助リフトL3に搭乗した利用者Mの上腕と前腕が屈曲した状態、つまり、腕を曲げた状態で握れる位置に配置される。
つまり、利用者Mの脇が締まった状態(上腕周辺の筋肉が使えて力が入って体幹が安定する状態)で介助リフトL3に搭乗できるため、利用者Mが脇や上腕に受ける痛みなどの不快感を軽減でき、さらなる乗り心地の向上を図ることができる。
なお、該利用者用ハンドル5e’を側面視において略へ字状に構成することで、利用者Mが屈曲点を基準に上側もしくは下側を把持することで、介助リフトL3をトイレに移送する際、間口の広いトイレで側方から介助者が操作できる場合、利用者Mが把持していない側を介助者が把持して操作できる利点もある。
【0044】
また、介助リフトL3は利用者Mの両脇を支持しつつ脇腹から背中近傍を挟持して使用する脇支持部6’,6’を具備している。
詳述すると、該脇支持部本体6d’,6d’は図21で示すように複数回屈曲することで不均一な湾曲形状をしつつ、該脇支持部本体6d’,6d’の上方にガイド部材6i’,6i’を立設して固着している。そして、該脇支持部本体6d’,6d’と該ガイド部材6i’,6i’に該クッション部材6e’,6e’を外挿している。
また、該クッション部材6e’,6e’を取り付けた状態は図22などで示すように、側面視において略L字状に形成され、該ガイド部材6i’,6i’に相当する部分が短辺部6e1’,6e1’を前記支持部本体5b’の横に並列に連設される。
なお、本実施例においてはインサート式成形方式を採用しており、該クッション部材6e’,6e’にポリウレタン系樹脂など軟質性の材料を使用して形成しているが、本実施例に限定する必要は無い。
さらに、該脇支持部本体6d,6dの先端には後述する調節ベルト9を取着するための略U字状の係止部材6j’,6j’を固着している。なお、該係止部材6j’,6j’は該クッション部材6e’,6e’の内部に全てインサートされておらず、一部が外部に突出した状態で配置される。
【0045】
ところで、前述した介助リフトLの脇支持部6,6は、該脇支持部6,6を利用者Mが脇を該クッション材6e,6eに乗せた時に利用者Mの脇を含む上半身の体重(荷重)を受けて、該支軸6a,6aを回動中心として利用者Mの脇腹及び背中向けて該クッション材6e,6eが回動して、利用者M自身の上半身の体重の分力によって利用者Mの脇腹及び背中を該脇支持部6,6で挟持して使用するものである。
しかしながら、図10(b)などで示すように脇支持部6,6は側面視において上面が略平坦に形成されているため、腕(上腕及び前腕)を矢状面に向かって移動させることが容易にできてしまう。すると、該脇支持部6,6にかかる負荷が少なくなり、前記弾性体6h,6hの弾性力によって該脇支持部6,6が開いてしまう。つまり、不意に該脇支持部6,6が開き、利用者Mがバランスを崩して転落してしまう危険がある。
それに対して、介助リフトL3の脇支持部6’,6’も前述した介助リフトL同様、利用者M自身の上半身の体重の分力によって利用者Mの脇腹及び背中を該脇支持部6’,6’で挟持して使用するものであるが、脇支持部6’,6’に短辺部6e1’,6e1’を構成することで簡単に該脇支持部6’,6’が開かないように構成される。
説明すると、図24で示すように、利用者Mは該脇支持部6’,6’の外側から腕を回して前記利用者用ハンドル5e’を把持する。この時、該クッション材6e’,6e’の先方に該短辺部6e1’,6e1’を上方に立設して障害物とすることで、利用者Mの腕(上腕及び前腕)を矢状面に向かって動かすことができない。
つまり、利用者Mの腕を脇支持部6’,6’から乗り越えて動かすことができないように構成されているため、不意に該脇支持部6’,6’が開いて利用者Mが転落する危険が無く安全に使用できる。
さらに、利用者Mが搭乗した状態で介助リフトL3の上半身支持部5’を前傾させた時に、図24で示すように該脇支持部6’,6’の該クッション部材6e’,6e’の該短辺側6e1’,6e1’に利用者Mの上腕及び肩を当てて保持できる。
【0046】
そして、介助リフトL3は前記脇支持部6’,6’の後方に調節ベルト9を具備している。
詳述すると、図25で示すように、該調節ベルト9は第一ベルト本体91と、第二ベルト本体92をバックル93で接続して使用する。
本実施例において、該第一ベルト本体91は、一端をリング状に環部91aを形成して左側の該脇支持部6’の前記脇支持部本体6d’の一端に固着した前記係止部材6j’に挿通して係止するとともに、他端近傍に該バックル93の雄部93aを挿通して取着している。
さらに、該第一ベルト本体91の他端に形成した環部91bにリング状の補助部材94を取着している。
一方、該第二ベルト92は、一端をリング状に環部92aを形成して右側の該脇支持部6’の前記脇支持部本体6d’の一端に固着した係止部材6j’に挿通して係止するとともに、他端には該バックル93の雌部93bを取着している。
そして、該バックル93の該第一ベルト本体91側の該雄部93aと該第二ベルト本体92側の該雌部93bを接続することで該脇支持部6’,6’を接続している。
なお、該第一ベルト本体91及び該第二ベルト本体92を該係止部材6j’,6j’に係止した際の抜け止めとして、該環部91a,91bをリング状にした径よりも大きい形状の抜け止め部材95,95を取着している。
【0047】
このように構成した該調節ベルト9は、図26で示すように、利用者Mを介助リフトL3に搭乗させて利用者Mの上半身の荷重を受けて定まった前記脇支持部6’,6’を任意の位置で固定することができる。
説明すると、該バックル93の該雄部93aと該雌部93bを接続した状態で介助者が該補助部材94を引き絞ると、該調節ベルト9に接続された該脇支持部6’,6’が内側に寄る。そして、該補助部材94を緩める方向に開くと、該調節ベルト9に接続された該脇支持部6’,6’が外側に開く。
ところで、前述したように利用者Mの腕(上半身)の重みで該脇支持部6’,6’の位置は決定されるが、利用者Mが搭乗及び降車しやすいように、図23で示すように該弾性体6h,6hによって該脇支持部6’,6’が開くように構成される。つまり、該脇支持部6’,6’にかかる上半身の重みが変わり、該弾性体6h,6hの弾性力が勝ってしまうと該脇支持部6’,6’が開く。
利用者Mは搭乗時に利用者用ハンドル5e’の握る位置を変えたり、腕を軽く動かしたりする可能性がある。つまり、利用者Mが介助リフトL3に搭乗してずっと該脇支持部6’,6’に負荷を均一にかけ続けられない可能性があるため、僅かな上半身の体重移動によって該脇支持部6’,6’が開くことで介助リフトL3に搭乗した利用者Mの上腕にかかる負荷が大きく、痛みや不快感を伴う原因になる可能性がある。
そこで、該調節ベルト9を使用して、該脇支持部6’,6’を初期調節した状態から利用者Mの姿勢変化によって変わらないように構成することで、利用者Mが不快感をより感じにくくしている。
また、前記上半身支持部5’及び該脇支持部6’,6’、該調節ベルト9が連続したループ状態になるため、利用者Mの後方への転落を防ぐことにも繋がる。つまり、調節ベルト9を使用することで、機能面と安全面の両立が可能である。
なお、本実施例で示した調節ベルト9は一例であり、限定するものではない。例えば、本実施例では該バックル93を使用したが、面ファスナーを使用しても良く、該脇支持部6’,6’を任意の位置で固定できる方法であれば適宜設定したので良い。
【0048】
そして、介助リフトL3はリモコン8’を具備している。
このリモコン8’は支柱2の伸縮手段2c及び回動機構4の伸縮手段4dがアクチュエータの時に、該アクチュエータを駆動するために用いられる。
該リモコン8’は、図27で示すように複数のボタンで構成され、任意の位置まで該支柱2の該伸縮手段2c及び該回動機構4の該伸縮手段4dの伸縮量を調節する操作ボタン81’と、該支柱2の該伸縮手段2cの伸縮量を記憶させる記憶ボタン82’で主に構成している。
なお、介助者が該リモコン8’を使用しない時には、該リモコン8’のフック(図示省略)を介助リフトL3の操作に最適な位置に引っ掛けて吊下げて保管するが、前述した介助リフトLのホルダ2fのように収納式にしても良い。
【0049】
操作ボタン81’は、上昇ボタン81a’と、下降ボタン81b’と、抱き上げボタン81c’と、抱き降ろしボタン81d’で構成される。
まず、該上昇ボタン81a’の役割は該上昇ボタン81a’を押すことで該伸縮手段2cであるアクチュエータを延伸方向に駆動して前記外マスト2bを前記内マスト2aに対して相対的に上昇させるものである。
そして、該下降ボタン81b’の役割は該下降ボタン81b’を押すことで該伸縮手段2cであるアクチュエータを短縮方向に駆動して前記外マスト2bを前記内マスト2aに対して相対的に下降させるものである。
そして、抱き上げボタン81c’の役割は該抱き上げボタン81c’を押すことで該伸縮手段4dであるアクチュエータを短縮方向に駆動して前記回動機構4を側面視において前方回動させるとともに、該伸縮手段2cであるアクチュエータを延伸方向に駆動して前記外マスト2bを前記内マスト2aに対して相対的に上昇させるものである。
そして、抱き降ろしボタン81d’の役割は該抱き降ろしボタン81d’を押すことで該伸縮手段4dであるアクチュエータを延伸方向に駆動して前記回動機構4を側面視において後方回動させるとともに、該伸縮手段2cであるアクチュエータを短縮方向に駆動して前記外マスト2bを前記内マスト2aに対して相対的に下降させるものである。
なお、該操作ボタン81’はいずれも押した状態から手を離すと、手を離した位置で該伸縮手段2cあるいは該伸縮手段4dが停止するように構成している。(手を離さない場合はリミットが聞いて停止する。)
このように構成した操作ボタン81’は、利用者Mが介助リフトL3に搭乗して移送姿勢になる際、外マスト2bを上昇させつつ回動機構4を前傾させることができる。
つまり、前傾した後に、上昇させる2ステップの操作に比べて、1ステップで姿勢を変えられるので介助作業の生産性を向上できつつ、利用者Mが長時間介助リフトL3に搭乗するストレスも軽減できる。
【0050】
そして、記憶ボタン82’は、前記操作ボタン81’の前記上昇ボタン81a’と前記下降ボタン81b’で設定した上昇位置を記憶して前記外マスト2bの上下方向の高さ調節を簡便にするものである。
該記憶ボタン82’は、メモリボタン82a’と、第一位置ボタン82b’、第二位置ボタン82c’、第三位置ボタン82d’で構成される。
操作方法は、前記上昇ボタン81a’あるいは前記下降ボタン81b’を押して、、現在地であるベッドB上面の高さに前記太腿受部3’の上面が合う位置に調節した後、該メモリボタン82a’を押しながら該第一位置ボタン82b’を押すことで第一位置として現在地を記録する。
そして、該上昇ボタン81a’あるいは該下降ボタン81b’を押して、目的地である便器Tの便座の高さに利用者Mの臀部を降ろしやすい位置に調節した後、該メモリボタン82a’を押しながら該第二位置ボタン82c’を押すことで第二位置として目的地を記録する。
そして、該上昇ボタン81a’あるいは該下降ボタン81b’を押して、ベッドBとは異なる現在地として車椅子(図示省略)の座面高さに前記太腿受部3’の上面が合う位置に調節した後、該メモリボタン82a’を押しながら該第三位置ボタン82d’を押すことで第三位置として現在地を記録する。
なお、該第一位置ボタン81a’、該第二位置ボタン81b’、該第三位置ボタン81d’は設定位置に対して現在地が高い場合は伸縮手段2cが短縮して外マスト2bが下降し、設定位置に対して現在地が低い場合は伸縮手段2cが延伸して外マスト2bが上昇するように設定される。
このように、各場面に応じて必要な高さを記録させることで、伸縮手段2cであるアクチュエータの伸縮を介助者が微調整する必要が無いため、各場面毎に位置合わせが容易になる。
ここまで、リモコン8’の各ボタンについて説明したが、レイアウトは本実施例に限定する必要は無く、例えば、円形に配列しても良い。また、各ボタンに与える機能も本実施例に限定する必要も無い。
なお、図27で示すイラストは第一位置ボタン82b’に椅子、該第二位置ボタン82c’に便器、該第三位置ボタン82d’に車椅子それぞれのピクトグラムを使用しているが、使用対象を限定するものではなく、あらかじめ、どこの高さに合わせたかを視覚的に認識するためのものであれば、適宜設定したので良い。
【0051】
次に、介助リフトL3を使用した介助手順を説明する。
なお、介助リフトL2で説明したトイレの床面にストッパ73,73を設置する方法を介助リフトL3にも採用して説明する。
(1)ベッドBの側面と利用者Mの膝窩Pとの間に太腿受部3’の太腿受部本体31’,31’のクッション部材31d’,31d’が入るスペースを確保して利用者Mが端座位姿勢を取る。
(2)介助者が介助リフトL3を利用者Mまで近づけて、利用者Mの太腿の下側に太腿受部3’の太腿受部本体31’,31’を配置する位置で介助リフトL3を停車させる。(この時、略コ字状に形成したベース本体1aの開口部の内側に利用者Mが配置される位置で停車させる。)
(3)介助者がレバー部材32g,32gを操作して太腿受部3’を使用状態にしてから、リモコン8’の第一位置ボタン82b’を押して太腿受部3’を上昇させて利用者Mの太腿の膝窩P近傍をクッション部材31d’,31d’で支持し、介助リフトLのブレーキをかける。なお、太腿をクッション部材31d’,31d’で支持する際に介助者が介助リフトL3を介助者側に軽く引いて、クッション31d’,31d’の側部が利用者Mの膝窩Pに当接させるとより確実に重心移動できる。
(4)上半身支持部5’に胸部及び腹部が当接するまで利用者Mが上半身を前傾する。
(5)利用者Mが腕を脇支持部6’,6’の外側に回して前方の利用者用ハンドル5e’を把持する。同時に、腕を楽な姿勢にすることで、自重で脇支持部6’,6’を付勢して利用者Mの両脇から背中を脇支持部6’,6’で挟持する。
(6)介助者が調節ベルト9の第一ベルト本体91と第二ベルト本体92をバックル93で接続させつつ、補助部材94を引き絞り脇支持部6’,6’を固定する。
(7)介助者がリモコン8’の抱き上げボタン81c’を押して支柱2の伸縮手段2c及び回動機構4の伸縮手段4dを駆動して上半身支持部5’及び脇支持部6’,6’を前傾させて利用者Mの上半身を前傾させるとともに、外マスト2bを上昇させて移送姿勢に変更して、ブレーキを解除する。
(8)介助者が介助リフトL3を操作してトイレまで利用者Mを移送する。
(9)介助者がリモコン8’の第二位置ボタン82c’を押して太腿受部3’の上面が便器Tの座面の上面と略同じ高さになるように調節する。
(10)介助者が利用者MのズボンUを降ろし、利用者Mの臀部を露出させる。(この動作は、トイレに入室する前に行っても良い。)
(11)介助者が介助リフト3を操作してストッパ73,73に後輪1c,1cを当接させて前後の位置調節を行い、ブレーキをかける。
(12)介助者がリモコン8’の抱き降ろしボタン81d’を押して支柱2の伸縮手段2c及び回動機構4の伸縮手段4dを駆動して便器Tの便座に利用者Mの臀部を降ろす。
(13)介助者がレバー部材32g,32gを操作して太腿受部3’を収納状態にして、利用者Mが楽な姿勢で排泄できることを確認してトイレから退出する。
(14)利用者Mが排泄を行う。(なお、排泄行為をし易くするために介助リフトLを利用者Mの身体から離しても良い。この場合は、介助リフトLのブレーキを解除して便器Tから少し介助リフトLを離間させる。)
(15)利用者Mがトイレに備え付けてあるコールボタン(図示省略)を押したり、トイレの外に向けて声を発することで介助者に排泄が終わったことを知らせる。
(16)介助者がトイレに入室し、レバー部材32g,32gを操作して太腿受部3’を使用状態にし、リモコン8’の上昇ボタン81a’を押して支柱2の伸縮手段2cを駆動して外マスト2bを上昇させて太腿受部3’の太腿受部本体31’,31’で利用者Mの太腿を支持しつつ、足が床面から離れる位置で停止させる。なお、太腿をクッション部材31d’,31d’で支持する際に介助者が介助リフトLを介助者側に軽く引いて、クッション31d’,31d’の側部が利用者Mの膝窩Pに当接させるとより確実に位置調節できる。
(17)介助者がリモコン8’の抱き上げボタン81c’を押して支柱2の伸縮手段2c及び回動機構4の伸縮手段4dを駆動して上半身支持部5’及び脇支持部6’,6’を前傾させて利用者Mの上半身を前傾させるとともに、外マスト2bを上昇させて臀部清拭をし易くする。(この時、必要以上外マスト2bを上昇させる必要は無い。)
(18)介助者が利用者Mの臀部清拭をして、ズボンUを履かせる。
(19)移送しやすい高さになっていない場合は、介助者がリモコン8’の抱き上げボタン81c’あるいは上昇ボタン81a’を押して支柱2の伸縮手段2c及び回動機構4の伸縮手段4dを駆動して外マスト2bを上昇させて移送姿勢にしてから、ブレーキを解除する。
(20)介助者が介助リフトL3を操作してベッドBまで利用者Mを移送する。
(21)介助者がリモコン8’の第一位置ボタン82b’を押して設定したベッドBの高さまで外マスト2bを上昇あるいは下降させる。
(22)介助者がリモコン8’の抱き降ろしボタン81d’を押して回動機構4の伸縮手段4dを駆動して上半身支持部5’及び脇支持部6’,6’を後傾させることで利用者Mの上半身を後傾させて臀部をベッドB上面に降ろす。
(23)介助者が調節ベルト9の第一ベルト本体91と第二ベルト本体92を接続させたバックル93を外す。
(24)介助者がレバー部材32g,32gを操作して太腿受部3を収納状態にして、介助リフトLを利用者Mから離間させる。
なお、この手順は本実施例に限定するものではなく、利用者Mの身体状況や、使用環境に合わせて適宜手順を変更したので良い。
【符号の説明】
【0052】
1 ベース
2 支柱
3 太腿受部
4 上半身支持部
5 回動機構
6 脇支持部
7 ストッパ
8 リモコン
L 介助リフト
M 利用者
B ベッド
G 身体重心
PL 身体重心線
BOS 支持基底面
VL 仮想線
P 膝窩
N 丹田
図1
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図27