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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049341
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】眼科用レーザ治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20240402BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240402BHJP
【FI】
A61F9/008 120E
A61F9/008 130
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141781
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2022154613
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022154614
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023110986
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】津村 高範
(72)【発明者】
【氏名】市川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】益永 康平
(57)【要約】
【課題】反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合の治療レーザ光による治療を適切に補助することが可能な眼科用レーザ治療装置を提供する。
【解決手段】制御部は、照射計画取得ステップと照準ガイド表示ステップを実行する。照射計画取得ステップでは、制御部は、治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズを使用して、患者眼に治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する、治療レーザ光の照射順が定められた照射計画を取得する。照準ガイド表示ステップでは、制御部は、術者によって調整される治療レーザ光の照準位置を適正位置に調整することを補助する照準ガイドを、照射計画の進捗に応じて内部表示部に表示させる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織に治療レーザ光を照射する眼科用レーザ治療装置であって、
前記患者眼に治療レーザ光を照射するレーザ照射光学系と、
前記患者眼の観察像を、接眼レンズを介して術者に観察させる観察光学系と、
前記観察光学系に設けられ、前記接眼レンズを介して術者に画像を表示する内部表示部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズを使用して、前記患者眼に治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する、治療レーザ光の照射順が定められた照射計画を取得する照射計画取得ステップと、
術者によって調整される治療レーザ光の照準位置を適正位置に調整することを補助する照準ガイドを、前記照射計画の進捗に応じて前記内部表示部に表示させる照準ガイド表示ステップと、
を実行することを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記内部表示部における表示領域の中心が、前記観察光学系の光軸と一致していることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記制御部は、
前記観察光学系を介して術者によって観察されている、前記患者眼の弧状または環状の治療対象部位が合わせられる基準となる対象部位ガイドを、前記照準ガイドとして前記内部表示部に表示させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記対象部位ガイドは、前記観察光学系における前記術者の視線方向から見て、弧状または環状の前記治療対象部位のうち、次回の前記照射スポットの適正位置に接する接線方向に平行な直線部分を含むことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記対象部位ガイドは、前記照射計画によって定められた前記複数の照射スポットの弧状の配置に対応する弧状部分を含むことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記制御部は、
前記内部表示部に表示させる前記対象部位ガイドの角度を、前記照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度で前記対象部位ガイドを表示させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記制御部は、
前記照射計画の進捗に適した前記コンタクトレンズの前記反射面の回転角度を示す角度ガイドを、前記照準ガイドとして前記内部表示部に表示させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項8】
請求項7に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記角度ガイドは、次の前記照射スポットが配置される、前記患者眼の弧状または環状の治療対象部位の適正角度に沿った形状、および、前記コンタクトレンズの前記反射面による、次回の前記照射スポットへの治療レーザ光の適切な反射方向に沿った形状の少なくともいずれかを含み、
前記制御部は、
前記内部表示部に表示させる前記角度ガイドの角度を、前記照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度で前記角度ガイドを表示させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記角度ガイドは、治療レーザ光が照射されるスポットの間隔の目安とするために、前記コンタクトレンズの一部に一定の間隔毎に複数配置される間隔指標を模した、間隔指標模式図を含むことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記角度ガイドには、前記照射計画における前記複数の照射スポットのうち、次の前記照射スポットを含む連続した複数の前記照射スポットの配置を示すスポット配置指針図が付加されると共に、
前記制御部は、
前記スポット配置指針図に含まれる複数の前記照射スポットの配置のうち、次の前記照射スポットの表示を、治療レーザ光の照射が実行される毎に、前記照射計画で定められた進行方向に隣接する前記照射スポットに遷移させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記コンタクトレンズの一種として、ユーザの指によって1回操作される毎に、前記反射面を含む部位が、ユーザによって把持される把持部に対して規定角度回転する部分回転型レンズがあり、
前記制御部は、
1つの前記規定角度の範囲内で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、前記コンタクトレンズの前記反射面を前記規定角度だけ回転させることを術者に推奨する処理を、前記照射計画の進捗に応じて実行する回転推奨ステップをさらに実行することを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記制御部は、
前記観察光学系を介した術者による観察視野の外周部に沿って、前記照射計画の進捗に適した前記コンタクトレンズの前記反射面の回転角度、および、治療レーザ光を照射すべき前記照射スポットの方向の少なくとも一方をしめす外周部ガイドを、前記照準ガイドとして前記内部表示部に表示させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項13】
請求項12に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記外周部ガイドは、前記照射計画における前記複数の照射スポットのうち、次の前記照射スポットの方向を示す次回照準ガイドを含み、
前記制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、前記次回照準ガイドの位置を、前記照射計画で定められた進行方向に隣接する前記照射スポットに対応する位置に遷移させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項14】
請求項13に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記外周部ガイドは、前記照射計画における前記複数の照射スポットのうち、既に治療レーザ光の照射が完了した前記照射スポットの方向を示す照射完了ガイドを含み、
前記制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、表示されていた前記次回照準ガイドを前記照射完了ガイドに変更することを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記外周部ガイドは、前記照射計画における前記複数の照射スポットのうち、次回よりも後で治療レーザ光が照射される予定の前記照射スポットの方向を示す未照射ガイドを含み、
前記制御部は、治療レーザ光の照射が完了する毎に、前記照射計画で定められた次回の照射順の前記照射スポットの方向に表示されていた前記未照射ガイドを、前記次回照準ガイドに変更することを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項16】
請求項12から15のいずれかに記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記外周部ガイドは、前記コンタクトレンズの前記反射面の回転角度を固定した状態で治療レーザ光が照射される複数の前記照射スポットの区画である照射区画の方向、または、前記照射区画への治療レーザ光の照射に適した前記反射面の回転角度の方向を示す区画照準ガイドを含み、
前記制御部は、前記照射区画に含まれる前記複数の照射スポットと同数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、前記区画照準ガイドの位置を、前記照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項17】
請求項16に記載の眼科用レーザ治療装置であって、
前記コンタクトレンズの一種として、ユーザの指によって1回操作される毎に、前記反射面を含む部位が、ユーザによって把持される把持部に対して規定角度回転する部分回転型レンズがあり、
前記制御部は、
1つの前記規定角度の範囲毎に前記区画照準ガイドを表示すると共に、
1つの前記規定角度の範囲内に含まれる前記複数の照射スポットと同数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、前記区画照準ガイドの位置を、前記照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項18】
治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズを介して、患者眼における環状または弧状の治療対象部位に治療レーザ光を照射する眼科用レーザ治療装置であって、
治療レーザ光を照射するレーザ照射光学系と、
前記治療対象部位の少なくとも一部を含む観察像に、治療レーザ光の光軸を中心とする円周方向の角度を示す円周方向チャートを重畳表示させる重畳表示部と、
を備えることを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者眼の組織に治療レーザ光を照射することで組織を治療する眼科用レーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
治療レーザ光による患者眼の治療を補助するための技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の眼科用レーザ治療装置は、治療レーザ光の照射予定領域を表示画面に表示させると共に、治療レーザ光が実際に照射された場合に、治療レーザ光が照射された領域(照射済み領域)を表示画面に表示させる。照射予定領域と照射済み領域は、治療の進捗状況を術者に確認させることを目的に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-233469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
治療レーザ光による患者眼の組織の治療が行われる際に、治療レーザ光を反射させる反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合がある。例えば、眼球の角膜と虹彩が接する部分に存在する環状の線維柱帯等の治療に、反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合がある。この場合、術者は、コンタクトレンズを把持しつつ、コンタクトレンズの反射面に写る組織を観察して治療レーザ光の照準位置を調整する必要がある。さらに、組織の複数箇所に治療レーザ光を照射する場合には、術者は、コンタクトレンズの反射面を適宜回転させながら治療レーザ光の照準位置を調整する必要があるので、照準位置を正確に調整するためには術者の熟練を要する。従って、反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合の治療レーザ光による治療を適切に補助することが可能な技術が望まれる。
【0005】
本開示の典型的な目的は、反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合の治療レーザ光による治療を適切に補助することが可能な眼科用レーザ治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科用レーザ治療装置は、治療レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織に治療レーザ光を照射する眼科用レーザ治療装置であって、前記患者眼に治療レーザ光を照射するレーザ照射光学系と、前記患者眼の観察像を、接眼レンズを介して術者に観察させる観察光学系と、前記観察光学系に設けられ、前記接眼レンズを介して術者に画像を表示する内部表示部と、制御部と、を備え、前記制御部は、治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズを使用して、前記患者眼に治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する、治療レーザ光の照射順が定められた照射計画を取得する照射計画取得ステップと、術者によって調整される治療レーザ光の照準位置を適正位置に調整することを補助する照準ガイドを、前記照射計画の進捗に応じて前記内部表示部に表示させる照準ガイド表示ステップと、を実行する。
【0007】
本開示に係る眼科用レーザ治療装置によると、反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合の治療レーザ光による治療が適切に補助される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】眼科用レーザ治療装置1の外観図である。
図2】眼科用レーザ治療装置1の光学系を側方からみた図である。
図3】眼科用レーザ治療装置1の光学系を上方からみた図である。
図4】患者眼Eとコンタクトレンズ26の模式的断面図である。
図5】コンタクトレンズ26の反射面27を介して観察される観察部位の一例を模式的に示す図である。
図6】部分回転型レンズであるコンタクトレンズ26の分解斜視図である。
図7】間隔指標28が設けられているコンタクトレンズ26を、患者眼Eに接触する側の反対側から見た図である。
図8】コントロールボックス6に表示される照射計画の一例を示す図である。
図9】照射スポットの照準位置の調整方法を説明するための説明図である。
図10】第1実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一例を示す図である。
図11】第1実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理のフローチャートである。
図12】第2実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の遷移の一例を示す図である。
図13】第2実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理のフローチャートである。
図14】第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一例を示す図である。
図15図13に示す角度ガイド80の拡大図である。
図16】第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理のフローチャートである。
図17】第4実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の遷移の一例を示す図である。
図18】第4実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の遷移の一例を示す図である。
図19】第4実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理のフローチャートである。
図20】第5実施形態の眼科用レーザ治療装置による治療中の、術者の観察視野の一例を示す図である。
図21】第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一部の遷移の一例を示す図である。
図22】第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一部の遷移の一例を示す図である。
図23】第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理のフローチャートである。
図24】第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一部の遷移の一例を示す図である。
図25】第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一部の遷移の一例を示す図である。
図26】第6実施形態における治療レーザ光の光路の遷移の一例を模式的に示す図である。
図27】第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理のフローチャートである。
図28】第7実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一例を示す図である。
図29】スポット間隔ガイドの変容例を示す図である。
図30】第4実施形態のスポット間隔ガイドの変容例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示で例示する眼科用レーザ治療装置は、治療レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織に治療レーザ光を照射する。眼科用レーザ治療装置は、レーザ照射光学系、観察光学系、内部表示部、および制御部を備える。レーザ照射光学系は、患者眼に治療レーザ光を照射する。観察光学系は、患者眼の観察像を、接眼レンズを介して術者に観察させる。内部表示部は、観察光学系に設けられており、接眼レンズを介して術者に画像を表示する。制御部は、眼科用レーザ治療装置の各種制御を司る。制御部は、照射計画取得ステップと照準ガイド表示ステップを実行する。照射計画取得ステップでは、制御部は、治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズを使用して、患者眼に治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する、治療レーザ光の照射順が定められた照射計画を取得する。照準ガイド表示ステップでは、制御部は、術者によって調整される治療レーザ光の照準位置を適正位置に調整することを補助する照準ガイドを、照射計画の進捗に応じて内部表示部に表示させる。
【0010】
本開示に係る眼科用レーザ治療装置によると、術者による照準位置の調整を補助するための照準ガイドが、照射計画の進捗に応じて内部表示部に表示される。従って、術者は、接眼レンズを介して患者眼を観察したまま(つまり、接眼レンズから眼を離さずに)、照準ガイドを確認し、確認した照準ガイドを参考にして治療レーザ光の照準位置を調整することができる。よって、術者は、より適切に治療レーザ光の照準位置を調整することができる。
【0011】
なお、治療レーザ光による治療痕を観察できる治療方法が採用される場合には、術者は、前回以前の治療レーザ光の照射によって形成された治療痕の位置を確認したうえで、次回以降の治療レーザ光の照準位置を調整することができる。しかし、治療レーザ光による治療痕を確認することが困難な治療方法(例えば、治療レーザ光の出力を、治療痕が形成される出力よりも低い出力に設定した状態で実行される治療方法等)が採用される場合もある。この場合、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットの各々に、照準位置を正確に調整することが、さらに困難となる。しかし、術者は、照準ガイドを参考にして照準位置を調整することで、治療レーザ光による治療痕を確認することが困難な場合でも、照準位置をより正確に調整し易くなる。ただし、本開示の技術は、治療レーザ光による治療痕を観察できる場合にも非常に有用である。
【0012】
内部表示部における表示領域の中心が、観察光学系の光軸(以下、「観察光軸」という場合もある)と一致していてもよい。この場合、観察光学系の観察光軸を基準として、画像が内部表示部における表示領域に表示される。従って、術者は、視野の適切な位置に呈示される画像を認識しながら適切に治療を行うことができる。
【0013】
また、レーザ照射光学系によって照射される治療レーザ光の光軸も、観察光学系の光軸と一致していてもよい。この場合、制御部は、治療レーザ光の光軸を中心とした適切な方向に、適切な角度で画像を表示させることができる。さらに、レーザ照射光学系が、治療レーザ光の照射予定位置を術者に認識させるための照準レーザ光(以下、「照準光」という場合もある)を患者眼に照射する場合、照準レーザ光の光軸も観察光学系の光軸と一致していてもよい。この場合、術者は、観察視野および内部表示部の表示領域の中心に照準光を視認するので、照準光と表示内容に基づく治療レーザ光の照射位置の調整が、さらに容易になる。
【0014】
制御部は、観察光学系を介して術者によって観察されている、患者眼の弧状または環状の治療対象部位が合わせられる基準となる対象部位ガイドを、照準ガイドとして内部表示部に表示させてもよい。この場合、術者は、観察光学系を介して観察している弧状または環状の治療対象部位が、表示されている対象部位ガイドに合うように種々の調整を行うことで、治療レーザ光の照準位置を、より容易に適正位置に調整することができる。
【0015】
対象部位ガイドは、観察光学系における術者の視線方向から見て、弧状または環状の治療対象部位のうち、次回の照射スポットの適正位置に接する接線方向に平行な直線部分を含んでいてもよい。円周上の一部の領域(円の中心から見た角度範囲が180度未満の領域)に着目すると、円周上の特定の点では、接線の傾きは一意に定まる。コンタクトレンズの反射面を介して観察される弧状または環状の治療対象部位の角度範囲は、180度未満となる。従って、弧状または環状の治療対象部位(例えば線維柱帯等)の接線方向が、対象部位ガイドの直線部分の方向に合致するように、治療対象部位が対象部位ガイドに合わせられることで、治療レーザ光の照準位置が正確に調整され易くなる。また、術者が観察光学系を介して弧状または環状の治療対象部位を観察する場合、患者眼の大きさ、および観察光学系の倍率(以下、「観察倍率」と言う場合もある)等に応じて、観察される治療対象部位の曲率が変化する。しかし、術者は、観察される治療対象部位の曲率に関わらず、治療対象部位の接線方向を、対象部位ガイドの直線部分の方向に合わせることができる。よって、術者は、より容易に照準位置を適正位置に調整することができる。
【0016】
対象部位ガイドは、照射計画によって定められた複数の照射スポットの弧状の配置に対応する弧状部分を含んでいてもよい。この場合、治療対象部位が描く弧状が、対象部位ガイドの弧状部分の形状に合致するように、治療対象部位が対象部位ガイドに合わせられることで、コンタクトレンズの反射面の回転角度と、治療レーザ光の照準位置が、共に正確に調整され易くなる。
【0017】
制御部は、観察光学系の倍率に応じて、内部表示部に表示させる対象部位ガイドの弧状部分の曲率を変化させてもよい。つまり、制御部は、観察光学系の倍率が大きくなる程、対象部位ガイドの弧状部分の曲率を小さくしてもよい。この場合、観察倍率に応じて変化する治療対象部位の見え方の違いに応じて、対象部位ガイドの弧状部分が適切に変化する。よって、照準位置の調整がより容易になる。
【0018】
制御部は、術者によって入力される指示に応じて、対象部位ガイドの少なくとも一部(例えば、直線部分または弧状部分)の内部表示部による表示と非表示を切り替えてもよい。この場合、実際に治療レーザ光を照射スポットに向けて照射させる際に、対象部位ガイドの少なくとも一部が治療レーザ光の照準の妨げとなってしまうことが防止される。
【0019】
なお、対象部位ガイドの構成を変更することも可能である。例えば、対象部位ガイドは、観察光学系における術者の視線方向から見て、コンタクトレンズの反射面による治療レーザ光の、次の照射スポットへの適切な反射方向に平行な直線部分を含んでいてもよい。この場合、術者は、弧状または環状の治療対象部位が、対象部位ガイドの直線部分に対して垂直に近づくように、コンタクトレンズの反射面の回転角度を調整することで、反射面の回転角度を適切に調整することができる。
【0020】
制御部は、内部表示部に表示させる対象部位ガイドの角度を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度で対象部位ガイドを表示させてもよい。この場合、照射計画の進捗に応じた適切な角度で対象部位ガイドが内部表示部に表示されるので、より適切に照準位置が調整され易くなる。
【0021】
詳細には、制御部は、照射計画に従った治療の開始時には、照射計画によって定められた最初の照射順の照射スポットの位置または方向に応じて、対象部位ガイドの角度を決定してもよい。制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に(例えば、治療レーザ光の照射実行指示が入力される毎に)、表示させていた対象部位ガイドの角度を、照射スポットの進行方向および進行角度に応じて回転させてもよい。この場合、治療レーザ光の照射が実行される毎に、次回の照射スポットに応じた適切な角度の対象部位ガイドが表示される。
【0022】
また、反射面を有するコンタクトレンズ(「ゴニオレンズ」と言われる場合もある)の中には、ユーザの指によって1回操作される毎に、反射面を含む部位が、ユーザによって把持される把持部に対して規定角度回転する部分回転型レンズも存在する。制御部は、部分回転型レンズが使用される場合、使用される部分回転型レンズの規定回転角度(つまり、1回の操作によって回転する角度)の情報を取得してもよい。制御部は、1つの規定回転角度の範囲内で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、表示させていた対象部位ガイドの角度を、照射スポットの進行方向に、規定回転角度だけ回転させてもよい。この場合、1つの規定回転角度の範囲内での治療レーザ光の照射が完了する毎に、対象部位ガイドの角度が、次の規定回転角度の範囲に対応する角度に回転される。よって、部分回転型レンズを用いて治療が行われる場合でも、より適切に照準位置が調整され易くなる。
【0023】
制御部は、使用されるコンタクトレンズに関する情報に基づいて、対象部位ガイドの表示方法を変更してもよい。例えば、使用されるコンタクトレンズが、術者によって全体が回転されるコンタクトレンズである場合には、制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、照射スポットの進行角度だけ対象部位ガイドを回転させる処理を実行してもよい。また、使用されるコンタクトレンズが部分回転型レンズである場合には、制御部は、所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、対象部位ガイドを規定回転角度だけ回転させる処理を実行してもよい。この場合、使用されるコンタクトレンズに応じて適切に対象部位ガイドの表示が変更されるので、治療レーザ光の照準位置がさらに調整され易くなる。
【0024】
なお、部分回転型レンズでなく、術者によって全体が回転されるコンタクトレンズが使用される場合にも、所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、対象部位ガイドを規定回転角度だけ回転させる処理が実行されてもよい。この場合、術者は、表示される対象部位ガイドを利用することで、部分回転レンズを使用する場合と同様の手順で治療を進行させ易くなる。また、制御部は、対象部位ガイドの表示方法を、ユーザ(例えば術者等)によって入力された設定内容に応じて変更してもよい。
【0025】
制御部は、照射計画の進捗に適したコンタクトレンズの反射面の回転角度を示す角度ガイドを、照準ガイドとして内部表示部に表示させてもよい。この場合、術者は、角度ガイドによって示された角度を参照して、コンタクトレンズの反射面の回転角度を調整することで、反射面の角度が適切に調整された状態で治療レーザ光の照準位置を調整することができる。よって、治療レーザ光の照準位置の調整がさらに容易になる。
【0026】
角度ガイドは、次の照射スポットが配置される、患者眼の弧状または環状の治療対象部位の適正角度に沿った形状、および、コンタクトレンズの反射面による、次回の照射スポットへの治療レーザ光の適切な反射方向に沿った形状の少なくともいずれかを含んでいてもよい。制御部は、内部表示部に表示させる角度ガイドの角度を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度で角度ガイドを表示させてもよい。治療対象部位の適正角度に沿った角度ガイド(例えば、弧状の治療対象部位の模式図、または、治療対象部位に沿う弧状のライン等)が表示される場合、術者は、観察されている治療対象部位の角度が角度ガイドに沿うように調整を行うことで、コンタクトレンズの反射面の回転角度を容易に調整することができる。また、治療レーザ光の適切な反射方向に沿った形状の角度ガイドが表示される場合、術者は、治療レーザ光の反射方向が角度ガイドに沿う方向となるように調整を行うことで、コンタクトレンズの反射面の回転角度を容易に調整することができる。さらに、照射計画の進捗に応じた適切な角度で角度ガイドが内部表示部に表示されるので、より適切に照準位置が調整され易くなる。
【0027】
なお、角度ガイドの具体的な態様を変更することも可能である。例えば、次の照射スポットに治療レーザ光を照射するための、コンタクトレンズの適切な回転角度を示すコンタクトレンズ模式図が、角度ガイドとして表示されてもよい。この場合、術者は、観察視野に含まれるコンタクトレンズの回転角度を、角度ガイドとして表示されているコンタクトレンズ模式図の角度に近づけることで、コンタクトレンズの回転角度を容易に調整することができる。
【0028】
詳細には、制御部は、照射計画に従った治療の開始時には、照射計画によって定められた最初の照射順の照射スポットの位置または方向に応じて、角度ガイドの角度を決定してもよい。制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に(例えば、治療レーザ光の照射実行指示が入力される毎に)、表示させている角度ガイドの角度を、照射スポットの進行方向および進行角度に応じて回転させてもよい。この場合、治療レーザ光の照射が実行される毎に、次回の照射スポットに応じた適切な角度で角度ガイドが表示される。
【0029】
また、部分回転型レンズが使用される場合、制御部は、使用される部分回転型レンズの規定回転角度(つまり、1回の操作によって回転する角度)の情報を取得してもよい。制御部は、1つの規定回転角度の範囲内で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、表示させていた角度ガイドの角度を、照射スポットの進行方向に、規定回転角度だけ回転させてもよい。この場合、1つの規定回転角度の範囲内での治療レーザ光の照射が完了する毎に、角度ガイドの角度が、次の規定回転角度の範囲に対応する角度に回転される。よって、部分回転型レンズを用いて治療が行われる場合でも、より適切に照準位置が調整され易くなる。
【0030】
制御部は、使用されるコンタクトレンズに関する情報に基づいて、角度ガイドの表示方法を変更してもよい。例えば、使用されるコンタクトレンズが、術者によって全体が回転されるコンタクトレンズである場合には、制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、照射スポットの進行角度だけ角度ガイドを回転させる処理を実行してもよい。また、使用されるコンタクトレンズが部分回転型レンズである場合には、制御部は、所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、角度ガイドを規定回転角度だけ回転させる処理を実行してもよい。この場合、使用されるコンタクトレンズに応じて適切に角度ガイドの表示が変更されるので、治療レーザ光の照準位置がさらに調整され易くなる。
【0031】
コンタクトレンズの一部(例えば内壁等)には、治療レーザ光が照射されるスポットの間隔の目安とするために、一定の間隔毎に複数配置される間隔指標(「インデックス」と言われる場合もある)が設けられている場合がある。角度ガイドは、コンタクトレンズの間隔指標を模した間隔指標模式図を含んでいてもよい。この場合、術者は、角度ガイドによってコンタクトレンズの反射面の回転角度を容易に調整できることに加えて、間隔指標模式図を把握したうえで複数の治療レーザ光の照準位置を調整することで、複数のスポットの間隔を適切に調整し易くなる。特に、使用するコンタクトレンズに間隔指標が設けられている場合には、術者は、コンタクトレンズの間隔指標と、表示部に表示されている間隔指標模式図を比較したうえで照準位置を調整することで、より容易に照準位置を調整することができる。
【0032】
角度ガイドには、照射計画における複数の照射スポットのうち、次の照射スポットを含む連続した複数の照射スポットの配置を示すスポット配置指針図が付加されてもよい。制御部は、スポット配置指針図に含まれる複数の照射スポットの配置のうち、次の照射スポットの表示を、治療レーザ光の照射が実行される毎に、照射計画で定められた進行方向に隣接する照射スポットに遷移させてもよい。この場合、術者は、スポット配置指針図において表示されている次の照射スポットの位置を把握することで、より適切に次の照準位置を調整することができる。
【0033】
なお、間隔指標模式図が用いられる場合には、間隔指標模式図によって示される目安の間隔に合致させてスポット配置指針図を表示させるのがさらに望ましい。この場合、術者は、スポット配置指針図において示されている次の照射スポットの、間隔指標模式図に対する位置関係を把握することで、より適切に次の照準位置を調整することができる。
【0034】
前述したように、コンタクトレンズの一種として、ユーザの指によって1回操作される毎に、反射面を含む部位が、ユーザによって把持される把持部に対して規定角度回転する部分回転型レンズが用いられてもよい。制御部は、1つの規定回転角度の範囲内で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、コンタクトレンズの反射面を規定回転角度だけ回転させることを術者に推奨する回転推奨ステップをさらに実行してもよい。この場合、術者は、特に部分回転型レンズを使用して治療を実行する場合に、反射面の規定角度の回転が必要なタイミングを適切に把握することができる。
【0035】
なお、反射面の規定角度の回転を推奨するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、音および振動の少なくともいずれかによって、反射面の回転を推奨してもよい。また、制御部は、内部表示部の表示を制御することで(例えば、内部表示部に表示されている図柄を規定角度回転させることで)、反射面の回転を推奨してもよい。
【0036】
制御部は、観察光学系を介した術者による観察視野の外周部に沿って、照射計画の進捗に適したコンタクトレンズの反射面の回転角度、および、治療レーザ光を照射すべき照射スポットの方向の少なくとも一方をしめす外周部ガイドを、照準ガイドとして内部表示部に表示させてもよい。この場合、術者は、観察視野の外周部に沿って表示される外周部ガイドを視認することで、反射面の適切な回転角度、および照射スポットの方向の少なくともいずれかを、容易に把握することができる。
【0037】
なお、外周部ガイドは、観察視野の外周部に沿って弧状または環状に表示されてもよい。弧状または環状の外周部ガイドの中心は、観察光学系の光軸と一致していてもよい。この場合、外周部ガイドによって示される方向が、観察視野の中心からの方向と一致する。よって、術者は、外周部ガイドによって示される方向を適切に把握することができる。
【0038】
外周部ガイドは、照射計画における複数の照射スポットのうち、次の照射スポットの方向を示す次回照準ガイドを含んでいてもよい。制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、次回照準ガイドの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する照射スポットに対応する位置に遷移させてもよい。この場合、術者は、次の照射スポットの方向を、観察視野の外周部に沿って遷移される次回照準ガイドによって適切に把握することができる。
【0039】
外周部ガイドは、照射計画における複数の照射スポットのうち、既に治療レーザ光の照射が完了した照射スポットの方向を示す照射完了ガイドを含んでいてもよい。制御部は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、表示されていた次回照準ガイドを照射完了ガイドに変更してもよい。この場合、術者は、治療レーザ光の照射が完了した方向を把握したうえで、次回照準ガイドによって次の照準位置を適切に調整することができる。治療の進捗状況を把握することも容易となる。
【0040】
外周部ガイドは、照射計画における複数の照射スポットのうち、次回よりも後で治療レーザ光が照射される予定の照射スポットの方向を示す未照射ガイドを含んでいてもよい。制御部は、治療レーザ光の照射が完了する毎に、照射計画で定められた次回の照射順の照射スポットの方向に表示されていた未照射ガイドを、次回照準ガイドに変更してもよい。この場合、術者は、次回よりも後で治療レーザ光を照射する予定のスポットの方向も把握したうえで、次回照準ガイドによって次の照準位置を適切に調整することができる。治療の進捗状況を把握することも容易となる。
【0041】
外周部ガイドは、コンタクトレンズの反射面の回転角度を固定した状態で治療レーザ光が照射される複数の照射スポットの区画である照射区画の方向、または、照射区画への治療レーザ光の照射に適した反射面の回転角度の方向を示す区画照準ガイドを含んでいてもよい。制御部は、照射区画に含まれる複数の照射スポットと同数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、区画照準ガイドの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させてもよい。この場合、術者は、複数の照射区画の方向、または、照射区画内の照射スポットに治療レーザ光を照射するための反射面の方向を、区画照準ガイドによって容易に把握することができる。従って、コンタクトレンズの反射面の角度の調整等が、さらに容易になる。
【0042】
制御部は、部分回転型レンズにおける1つの規定角度の範囲毎に、区画照準ガイドを表示させてもよい。制御部は、1つの規定角度の範囲内に含まれる複数の照射スポットと同数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、区画照準ガイドの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させてもよい。この場合、部分回転型レンズの仕様と治療の進捗に応じて、区画照準ガイドが適切に表示される。従って、部分回転型レンズが用いられる場合でも、区画照準ガイドによって、照準位置の調整が適切に補助される。
【0043】
なお、照準ガイドの具体的な構成を変更することも可能である。例えば、制御部は、治療レーザ光が前回照射された際に撮影部によって撮影された、照準光が照射された治療対象部位の画像を、内部表示部に表示させてもよい。この場合、術者は、前回の治療レーザ光の照射部位(つまり、表示されている画像において照準光が写る部位)を把握したうえで、次の照準位置を調整することができる。よって、治療レーザ光がさらに適切に照射され易くなる。
【0044】
なお、照準ガイドとして、前述した角度ガイドおよび外周部ガイドの少なくともいずれかを表示させる場合、眼科用レーザ治療装置は、内部表示部とは異なる表示部(例えば、観察光学系の外に設けられる表示部等)に照準ガイドを表示させる場合でも、術者による照準位置の調整を適切に補助することが可能である。この場合、眼科用レーザ治療装置は以下のように表現することも可能である。治療レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織に治療レーザ光を照射する眼科用レーザ治療装置であって、前記患者眼に治療レーザ光を照射するレーザ照射光学系と、前記患者眼の観察像を、接眼レンズを介して術者に観察させる観察光学系と、画像を表示する表示部と、制御部と、を備え、前記制御部は、治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズを使用して、前記患者眼に治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する、治療レーザ光の照射順が定められた照射計画を取得する照射計画取得ステップと、術者によって調整される治療レーザ光の照準位置を適正位置に調整することを補助する照準ガイド(角度ガイドおよび外周部ガイドの少なくともいずれか)を、前記照射計画の進捗に応じて前記表示部に表示させる照準ガイド表示ステップと、を実行する。
【0045】
また、眼科用レーザ治療装置は、照準ガイドを表示させる処理を実行せずに、部分回転型レンズの反射面の回転を術者に推奨する処理のみを実行することも可能である。この場合、眼科用レーザ治療装置は以下のように表現することも可能である。治療レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織に治療レーザ光を照射する眼科用レーザ治療装置であって、前記患者眼に治療レーザ光を照射するレーザ照射光学系と、前記患者眼の観察像を、接眼レンズを介して術者に観察させる観察光学系と、制御部と、を備え、前記眼科用レーザ治療装置による治療において、治療レーザ光を光軸に交差する方向に反射させる反射面を有するコンタクトレンズが使用される場合に、前記コンタクトレンズの一種として、ユーザの指によって1回操作される毎に、前記反射面を含む部位が、ユーザによって把持される把持部に対して規定角度回転する部分回転型レンズがあり、前記制御部は、前記部分回転型レンズを使用して、前記患者眼に治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する、治療レーザ光の照射順が定められた照射計画を取得する照射計画取得ステップと、1つの前記規定角度の範囲内で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、前記コンタクトレンズの前記反射面を前記規定角度だけ回転させることを術者に推奨する処理を、前記照射計画の進捗に応じて実行する回転推奨ステップと、を実行する。
【0046】
眼科用レーザ治療装置は、コンタクトレンズの反射面に治療レーザ光を反射させて、患者眼における環状または弧状の治療対象部位に治療レーザ光を照射する。眼科用レーザ治療装置は、レーザ照射光学系と重畳表示部を備える。レーザ照射光学系は、治療レーザ光を照射する。重畳表示部は、治療対象部位の少なくとも一部を含む観察像に、治療レーザ光の光軸を中心とする円周方向の角度を示す円周方向チャートを重畳表示させる。この場合、術者は、観察像に重畳表示される円周方向チャートを視認することで、治療レーザ光の光軸を中心とした場合の治療対象部位の方向を適切に把握することができる。
【0047】
例えば、複数のスポットに対する治療の途中で、コンタクトレンズを患者眼から一旦取り外す場合もある。この場合、術者は、治療対象部位のうち、コンタクトレンズを取り外す直前に治療レーザ光を照射したスポットが位置する方向(治療レーザ光の光軸を中心とする円周方向の角度)を、円周方向チャートを参照することで適切に把握することができる。従って、一旦取り外したコンタクトレンズを再度患者眼に装着する際に、次のスポットが位置する方向に治療レーザ光の照準位置が適切に調整されるように、円周方向チャートを参照しながらコンタクトレンズの角度を調整することができる。よって、術者は、治療レーザ光の照準位置を容易且つ適切に調整することができる。
【0048】
観察像に重畳表示される環状の円周方向チャートの中心は、観察像における治療レーザ光の光軸の通過位置に一致していてもよい。この場合、治療レーザ光の光軸を中心とした場合の治療対象部位の方向が、円周方向チャートによってより適切に把握され易くなる。
【0049】
円周方向チャートは、治療レーザ光の光軸を中心とした円周方向に均等な角度毎に配置された複数の指標を備えていてもよい。この場合、均等な角度で配置された複数の指標によって、治療対象部位の方向がより適切に把握され易くなる。
【0050】
重畳表示部は、アナログ時計の文字盤の各方向の少なくともいずれかに表示され得る記号(例えば、最大で12となる数字等)を、円周方向チャートにおける適切な位置に表示させてもよい。この場合、術者は、アナログ時計で時間を把握する場合と同様の感覚で、治療レーザ光の光軸を中心とした場合の治療対象部位の方向を適切に把握することができる。
【0051】
重畳表示部は、画像の表示領域内における所定位置に円周方向チャートを固定して表示させてもよい。この場合、観察像の状態に関わらず、円周方向チャートが所定位置に固定されて表示されるので、治療レーザ光の光軸を中心とした場合の治療対象部位の方向が、より正確に把握され易くなる。なお、この場合、観察像を術者に視認させるための光学系(例えば、後述する観察光学系、または、観察撮影部の光学系)の光軸と、治療レーザ光の光軸の間の相対的な位置関係も固定されていてもよい。例えば、観察光学系の光軸と治療レーザ光の光軸が常に一致していてもよい。
【0052】
観察像に円周方向チャートを重畳表示させる重畳表示部には、種々の表示部を採用できる。例えば、眼科用レーザ治療装置は、治療対象部位の少なくとも一部を含む観察像を、接眼レンズを介して術者に観察させる観察光学系を備えていてもよい。重畳表示部は、接眼レンズを介して術者に画像を表示する内部表示部であってもよい。また、眼科用レーザ治療装置は、患者眼の観察像を撮影する観察撮影部を備えていてもよい。重畳表示部(例えばモニタ等)は、観察撮影部によって撮影された観察像に、円周方向チャートを重畳表示させてもよい。重畳表示部の構成は、観察像に重畳表示させる画像を変化させることが不可能な簡素な構成であってもよい。
【0053】
重畳表示部は、観察像に対する円周方向チャートの重畳表示と非表示を切換可能であってもよい。治療対象部位の方向を術者に把握させる必要が無い場合等には、円周方向チャートを非表示とすれば、術者は観察像の観察に集中できる。例えば、制御部は、術者等によって設定された治療モードが、環状または弧状の治療対象部位に対する治療を実行する治療モードであるか否かに応じて、円周方向チャートを表示させるか否かを切り換えてもよい。この場合、設定された治療モードに応じた視野が、適切に術者に提供される。
【0054】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、患者眼Eに治療用のレーザ光を照射して、患者眼Eの治療等を行うことができる。
【0055】
<全体構成>
図1図3を参照して、眼科用レーザ治療装置1の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、テーブル部2、本体部3、およびコントロールボックス6を備える。テーブル部2には、本体部3およびコントロールボックス6が設置される。
【0056】
本体部3は、後述するレーザ照射光学系10、照明光学系30、観察光学系40、内部表示部50、および制御部60(図2参照)等の各種構成を備える。また、本体部3は、ベース部4およびジョイスティック部5(操作レバー)を備える。ベース部4は、変位機構を備えた変位手段であり、レーザ照射光学系10、観察光学系40、および内部表示部50等の少なくとも一部を、上下方向(図1ではY方向)、左右方向(図1ではX方向)、および前後方向(図1ではZ方向)に移動できる。変位手段によって、患者眼とレーザ照射光学系10の位置関係が、上下方向、左右方向、および前後方向に変更される。ベース部4は更に、上下方向に伸びる軸を回動中心として、レーザ照射光学系10、観察光学系40、および内部表示部50等の少なくとも一部を水平方向に回動できる。術者はジョイスティック部5を操作することで、レーザ照射光学系10、観察光学系40、および内部表示部50等を移動または回動させることで、患者眼Eの観察位置、および、レーザ光(治療レーザ光および照準光)の照射位置を調整することができる。なお、本実施形態のジョイスティック部5(例えば、ジョイスティック5の上端部)には、術者によって操作される操作ボタンが設けられている。本実施形態では、ジョイスティック部5の操作ボタンは、治療レーザ光の照射を実行させるためのトリガを入力するトリガ入力手段として用いられる。なお、術者の足によって操作されるフットスイッチ等が、治療レーザ光の照射を実行させるためのトリガを入力するトリガ入力手段として用いられてもよい。
【0057】
コントロールボックス6は、観察光学系40(図2参照)の外部に設けられた外部表示部7を備える。外部表示部7は、各種画像を表示することができる。コントロールボックス6の外部表示部7の表面には、タッチパネル式の操作部が設けられている。コントロールボックス6は、治療に関する各種パラメータ等を外部表示部7に表示させると共に、ユーザからの各種指示の入力を受け付ける。
【0058】
<レーザ照射光学系>
図2に示すように、本実施形態のレーザ照射光学系10は、治療レーザ光源11、照準光源(エイミング光源)12、エネルギー調整部13、ビームスプリッタ17、光検出器18、安全シャッタ19、コリメータレンズ21、ダイクロイックミラー22、エキスパンダレンズ23、ダイクロイックミラー24、および対物レンズ25を備える。
【0059】
治療レーザ光源11は、患者眼Eの組織を治療するための治療レーザ光を出射する。一例として、本実施形態のレーザ光源11では、ネオジウムをドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶(Nd:YAG)がレーザロッドとして使用される。また、図示しない波長変換素子は、レーザ光源11によって出射された赤外レーザ光(波長:1064nm)を、可視レーザ光(波長:532nm)に変換することができる。
【0060】
照準光源12は、治療レーザ光が照射される位置(つまり、照射スポットの位置)を示す照準レーザ光(以下、単に「照準光」という)を出射する。本実施形態では、波長が635nm(赤色)の可視レーザ光を出射する光源が、照準光源12として用いられる。しかし、照準光の波長等を適宜変更できるのは言うまでも無い。
【0061】
エネルギー調整部13は、患者眼Eの組織に照射される治療レーザ光のエネルギー量を調整する。本実施形態のエネルギー調整部13は、1/2波長板14および偏光板16を備える。1/2波長板14は、治療レーザ光の光軸を中心として、モータ15によって回転する。偏光板16は、ブリュースタ角で配置されている。1/2波長板14と偏光板16の組合せによって、治療レーザ光のエネルギー量が調整される。
【0062】
ビームスプリッタ17は、治療レーザ光の一部を光検出器18へ向けて反射させる。光検出器18は、ビームスプリッタ17によって反射された治療レーザ光を受光することで、治療レーザ光のエネルギー量を検出する。安全シャッタ19は、シャッタ駆動部(例えばソレノイド)20によって、治療レーザ光の光軸上と光軸外との間を移動する。安全シャッタ19は、治療レーザ光の光軸上に配置されることで、患者眼Eへの治療レーザ光の照射を遮断する。
【0063】
コリメータレンズ21は、照準光源12によって出射された照準光を平行光束とする。ダイクロイックミラー22は、治療レーザ光と照準光の光軸を同軸として、治療レーザ光と照準光を合波する。本実施形態のダイクロイックミラー22は、治療レーザ光を反射し、且つエイミング光を透過させることで、治療レーザ光とエイミング光を合波する。
【0064】
エキスパンダレンズ23は、ダイクロイックミラー22によって合波されたレーザ光(治療レーザ光および照準光)の光束を拡大する。エキスパンダレンズ23によって拡大されたレーザ光は、ダイクロイックミラー24によって反射され、対物レンズ25を透過する。本実施形態では、対物レンズ25を透過したレーザ光は、患者眼Eに装着されたコンタクトレンズ26を介して患者眼Eの組織に照射される。ダイクロイックミラー24は、患者眼Eによって反射された治療レーザ光の反射光が術者の眼に入射し難くなるように、反射光の波長の光をほぼ反射させる。なお、照射光学系10には、組織に照射されるレーザ光のスポットサイズを調整するための構成等が設けられていてもよい。
【0065】
<照明光学系>
照明光学系30は、組織の治療対象部位を含む観察部位を照明する。本実施形態の照明光学系30は、ランプ31、レンズ32、絞り33、レンズ群34、およびプリズム35を備える。例えば、ランプ31には白色発光素子等を用いることができる。なお、照明光学系30は、観察部位にスリット光を照明するためのスリット板等を備えていてもよい。
【0066】
<観察光学系>
図2および図3に示すように、観察光学系40は、患者眼Eを術者に観察させるための観察手段であり、光軸L3(図3参照)を備える。図3に示すように、本実施形態の観察光学系40は、術者の右眼EoRに観察像を呈示するための光軸L3Rと、術者の左眼EoLに観察像を呈示するための光軸L3Lとを備える。本実施形態の観察光学系30を双眼鏡と呼んでもよい。本実施形態の観察光学系40は、対物レンズ25、変倍光学系42(42R,42L)、保護フィルタ43(43R,43L)、ハーフミラー47、正立プリズム群44(44R,44L)、視野絞り45(45R,45L)、接眼レンズ46(46R,46L)等を備える。術者は接眼レンズ46を覗いて、患者眼Eの観察部位、照準光のスポット(換言するなら照準光が患者眼Eで反射した反射光(戻り光))等を確認できる。本実施形態では、対物レンズ41の先に設けられる観察面(物体面)と、装置内部に配置されている視野絞り45が、対物レンズ41を介して光学的に共役な位置関係にある。つまり視野絞り45の位置で、患者眼Eの観察像が空中像として結像される。なお、本実施形態では、術者によって観察される観察像の倍率が、変倍光学系42によって変更される。観察光学系40には、変倍光学系42による観察像の倍率を取得するためのエンコーダ(図示せず)が設けられている。
【0067】
<内部表示部>
図2に示すように、内部表示部50は観察光学系40に設けられており、接眼レンズ46を介して術者に画像を表示する。内部表示部50は、表示器53、レンズ52、およびハーフミラー51を備える。表示器53には各種画像が表示される。本実施形態では、表示器53としてLCD(バックライト付き)が用いられている。詳細には、本実施形態では、1600(H)×1200(V)を表示可能なカラーLCDが表示器53として用いられている。図3に示すように、ハーフミラー51は、光軸L3R上に配置されている。詳細には、ハーフミラー51は、保護フィルタ43Rと正立プリズム群44Rの間に配置されている。
【0068】
表示器53から発せられる呈示光(表示光)は、光軸L5(図3参照)に沿って進む。詳細には、表示器53から発せられる呈示光は、レンズ52を介した後、ハーフミラー51で正立プリズム群44Rの方向に反射される。本実施形態のハーフミラー51は、観察光学系40によって観察される光学観察像と、表示器53に表示される画像を合成するための合成手段である。本実施形態のハーフミラー51は、光軸L5と光軸L3Rとを同軸にする。ハーフミラー51で反射した呈示光は、正立プリズム群44R、視野絞り45R、接眼レンズ46Rの順で進み、接眼レンズ46Rを覗いた術者の眼底に集光する。内部表示部50は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)として機能する。
【0069】
本実施形態では、表示器53と視野絞り45Rが光学的に共役な位置関係にある。つまり、視野絞り45Rの位置で、表示器53の表示像が空中像として結像される。なお、接眼レンズ46を介して術者に画像を表示させる方法は、本開示で例示した方法に限るものでは無い。例えば、内部表示部として、バックライトを備えないLCD(液晶パネル)を視野絞り45Rの位置(光軸L3R上)に配置し、制御部60がLCDを構成する各セルの透過率を制御して術者に呈示情報を呈示してもよい。
【0070】
本実施形態では、内部表示部50における表示領域の中心が、観察光学系40の観察光軸と一致している。従って、観察光学系40の観察光軸を基準として、内部表示部50における表示領域に画像が表示される。従って、術者は、接眼レンズ46を介した観察視野の適切な位置に呈示される画像を認識しながら、適切に治療を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態では、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸も、観察光学系40の光軸、および内部表示部50における表示領域の中心と一致している。従って、内部表示部50は、治療レーザ光の光軸を中心とした適切な方向に、適切な角度で画像を表示させることができる。さらに、本実施形態では、レーザ照射光学系10によって照射される照準光の光軸も、観察光学系40の光軸、および内部表示部50における表示領域の中心と一致している。従って、術者は、観察視野の中心、および、内部表示部50の表示領域の中心に照準光を視認するので、照準光と、内部表示部50による表示内容に基づく治療レーザ光の照射位置の調整が、さらに容易になる。
【0072】
なお、図示は省略するが、本実施形態の観察光学系40には、患者眼E等の観察像を撮影する撮影光学系が組み込まれている。撮影光学系は、ハーフミラー、結像レンズ、および撮影素子を備える。ハーフミラーは、観察光学系40に設けられた左右の観察光路のいずれかに配置されている。観察部位等から対物レンズ25を介してハーフミラーに入射した光は、ハーフミラーによって反射され、結像レンズを介して撮影素子に入射する。その結果、撮影光学系によって観察像が撮影される。
【0073】
<制御部>
制御部60は、レーザ治療装置1の各種制御を司る。本実施形態の制御部60は、CPU(プロセッサ)61、ROM62、RAM63、および不揮発性メモリ65等を備える。CPU61は、レーザ治療装置1における各部の制御を司る。ROM62には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM63は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ65は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、制御部60に着脱可能に装着されるUSBメモリ、制御部60に内蔵されたフラッシュROM等を、不揮発性メモリ65として使用することができる。本実施形態では、制御部60には、ベース部4、ジョイスティック部5、コントロールボックス6、レーザ光源11、エイミング光源12、モータ15、光検出器18、シャッタ駆動部20、ランプ31、および表示器53等が接続されている。
【0074】
<線維柱帯の治療態様>
図4および図5を参照して、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1によって実行される線維柱帯の治療態様の一例について説明する。本実施形態では、患者眼Eの組織のうち、環状(部分的には弧状)の組織である線維柱帯が治療対象部位とされる場合を例示する。例えば、選択的レーザ線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)は、患者眼Eの房水の排出量を増加させるために、患者眼Eの隅角の線維柱帯に治療レーザ光を照射する治療方法である。SLTでは、環状の線維柱帯の全周または一部に渡って治療レーザ光が複数回照射される。
【0075】
図4に示すように、本実施形態における線維柱帯の治療では、患者眼Eの角膜Cにコンタクトレンズ26が装着される。コンタクトレンズ26には、一例として、患者眼Eの隅角Aを観察するための隅角鏡(ゴニオスコープ)、ゴールドマンの三面鏡を用いることができる。コンタクトレンズ26には反射面(反射ミラー)27が設けられている。隅角Aは、反射面27を介して観察される。従って、図5に示すように、本実施形態では隅角Aの全体(全周)が同時に観察されるわけではなく、隅角Aの一部が扇形状に観察される。環状の隅角Aのうち、反射面27を介して観察される扇形状の部分の範囲は、環状の隅角Aの中心を基準として180度未満の角度範囲に収まる。また、コンタクトレンズ26の反射面27は、治療レーザ光および照準光を、対物レンズ25(図2および図3参照)から患者眼E側に延びる光軸に対して交差する方向に反射させることで、治療対象部位である線維柱帯TMに治療レーザ光および照準光を照射する。つまり、本実施形態では、図5に例示するような観察状態で、治療レーザ光が反射面27を介して隅角Aの線維柱帯TMに照射されることで、線維柱帯の治療が実行される。
【0076】
術者は、コンタクトレンズ26の回転角度(つまり、コンタクトレンズ26の軸を中心とする回転方向の角度)を調整することで、観察光学系40における術者の視線方向から見た場合の、コンタクトレンズ26の反射面27による治療レーザ光の反射方向を調整する。また、術者は、ジョイスティック部5を操作してベース部4を移動させることで、患者眼Eの組織に対する治療レーザ光および照準光の照準位置を、治療するスポットSに調整する。術者は、照準位置の調整が完了した状態で、ジョイスティック5の操作ボタンまたはフットスイッチ等を操作して治療レーザ光の照射実行指示を入力することで、スポットSに治療レーザ光を照射させる。なお、SLTでは、組織の熱変性を生じ難くするために、アルゴンレーザ線維柱帯形成術(ALT)よりも低い出力(エネルギーおよび照射時間)で治療レーザ光が照射される。従って、術者は、術前および術後における治療部位の状態変化(例えば治療痕等)を視認し難い。なお、SLTの手技として、治療レーザ光と照準光のスポットサイズを所定のサイズ(例えば400μm等)に固定し、線維柱帯TMに沿って複数の照射スポットが隣接するように治療レーザ光を断続的に照射する手技が知られている。図5では、複数の照射スポットが隣接するように治療レーザ光を断続的に照射する手技の一部の様子を模式的に示している。なお、SLTでは、治療痕を目視することは困難である。つまり、治療レーザ光が照射された照射済みスポット(スポットS)が図5に示すように術者によって目視されるわけではない。
【0077】
<コンタクトレンズ>
図6および図7を参照して、本実施形態における線維柱帯の治療で使用されるコンタクトレンズ26の一例について説明する。図6および図7に示すコンタクトレンズ26は、部分回転型レンズである。部分回転型レンズでは、ユーザ(術者)の指によって1回操作される毎に、反射面27を含む部位が、ユーザによって把持される把持部26Aに対して規定角度回転する。つまり、ユーザの指による1回の操作が行われると、反射面27を含む部位が、他の部位とは独立して、軸AX1を中心として周方向に回転する。
【0078】
詳細には、図6に示すコンタクトレンズ26は、環状の把持部26Aと、回転基部26Bを備える。把持部26Aは、略円筒状であり、ユーザの複数の指によって把持される。回転基部26Bは、略円筒状の把持部26Aの内径とほぼ等しい外径の円筒部分を有する。回転基部26Bの先端(図6の紙面下方)は、患者眼にE接触する接触部26Dとなる。接触部26Dには透光窓29(図7参照)が形成されている。回転基部26Bの内側には、反射面27(図7参照)が固定されている。把持部26Aは、回転基部26Bの円筒部分の外側に装着される。回転基部26Bは、把持部26Aに対して回転することができる。回転基部26Bの外周のうち、把持部26Aが装着された状態で外側に露出する部分には、外側に向けて突出する突部26Cが複数設けられている。本実施形態では、周方向において、前述した規定角度(図6に示す例では36度)毎に、等間隔で複数(図6に示す例では10個)の突部26Cが設けられている。ユーザは、少なくともいずれかの突部26Cに指を掛けることで、反射面27が設けられた回転基部26Bを、把持部26Aに対して回転させることができる。詳細には、ユーザは、複数の指(例えば、人差し指と親指)で把持部26Aを把持して固定したまま、残りの指(例えば、中指)を突部26Cに掛けて回転基部26Bだけを回転させることができる(回転軸は軸AX1)。従って、コンタクトレンズの全体を回転させることで反射面を回転させる場合に比べて、回転時に必要な指の動きが少なくなる。その結果、反射面27を回転させる際にも、コンタクトレンズ26が安定した状態で保持され易い。
【0079】
図6に示すコンタクトレンズ26では、ユーザの指による1回の回転操作による回転基部26Bの回転角度が、規定角度で停止するように、形状が設計されている。一例として、図6に示すコンタクトレンズ26では、1回の操作によって、把持部26Aに対して回転基部26Bが36度回転する。従って、回転基部26Bは、同一方向への10回の回転操作によって、把持部26Aに対して1周する。なお、規定角度を変更できることは言うまでもない。例えば、1回の操作によって、把持部に対して回転基部が45度回転する部分回転型レンズ等も存在する。
【0080】
図7は、コンタクトレンズ26を、患者眼Eに接触する側の反対側から見た図である。図7に示すように、コンタクトレンズ26の内壁(図7に示す例では、回転基部26Bの内壁)の一部には間隔指標28が形成されている。間隔指標28は、治療レーザ光が照射されるスポットの間隔の目安とするために、一定の間隔毎に複数配置されている。図7に示す例では、線状の5つの間隔指標が等間隔で配置されている。間隔指標28は、コンタクトレンズ26の内壁のうち、反射面27が設けられている側の反対側に形成されている。患者眼Eに接触する側の反対側からコンタクトレンズ26を見ると、間隔指標28の少なくとも一部の反射像28Zが、反射面27に写り込む。また、治療中には、患者眼Eの治療対象部位(本実施形態では線維柱帯)の反射像も、反射面27に写り込む。さらに、反射面27には、治療対象部位に照射された照準光の反射像も写り込む。従って、術者は、反射面27に写り込む治療対象部位と照準光の位置を把握しつつ、間隔指標28の反射像28Zを目安として、治療対象部位における複数のスポットの各々に、治療レーザ光の照準位置を順に調整することができる。なお、本開示における各図面に例示する観察視野の図は、図7に示す領域AR1に相当する領域を拡大観察した状態を示す図である。なお、反射面27は、写り込む間隔指標28の像(反射像28Z)が欠けない大きさで形成されている。本実施形態における線維柱帯TMの全周への治療レーザ光の照射は、使用されるコンタクトレンズ26の種類(例えば、間隔指標28が設けられているか、および、部分回転型レンズであるか否か)に関わらず、患者眼Eの瞳孔中心と透光窓29の中心を略一致させた状態を維持しつつ、軸AX1を中心として反射面27を一周させて行われる。この際、反射面27の変位に領域AR1を適宜追従させる。従って、術者は、線維柱帯TMの全周への治療レーザ光の照射中、ジョイスティック部5を走査し、軸AX1を中心として領域AR1を一周させることとなる。
【0081】
なお、図6および図7に示すコンタクトレンズ26は、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1による治療で使用可能な複数種類のコンタクトレンズのうちの一種に過ぎない。従って、図6および図7に示すコンタクトレンズ26とは異なるコンタクトレンズを、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療に用いることも可能である。例えば、反射部27と間隔指標28を備える一方で、部分回転型レンズではない(つまり、全体を回転させることで反射部27を回転させる)コンタクトレンズを、治療に用いることも可能である。間隔指標28を備えていない部分回転型レンズを治療に用いることも可能である。また、間隔指標28を備えておらず、且つ部分回転型レンズではないコンタクトレンズを使用することも可能である。
【0082】
なお、反射部を回転させるために全体を回転させることが必要なコンタクトレンズが用いられる場合、術者は、コンタクトレンズを複数の指で把持し、接触部を患者眼Eに接触させたまままコンタクトレンズ全体を回転させる。この場合、術者がコンタクトレンズを持ち替えずに(把持をやり直さずに)全体を回転できる角度には限界がある。さらに、術者がコンタクトレンズを持ち替えると、患者眼Eとレーザ照射光学系10の位置関係が変化し易い。これに対し、図6および図7に例示する部分回転型のコンタクトレンズ26では、コンタクトレンズを持ち替えることなく反射面を規定角度ずつ回転できる。
【0083】
図8を参照して、治療レーザ光の照射計画の一例について説明する。図8は、コントロールボックス6に表示される照射計画の一例を示す図である。本実施形態では、コントロールボックス6が操作されることで照射計画が策定される。照射計画では、反射面27を有するコンタクトレンズ26を使用して患者眼Eに治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する照射順等が定められる。本実施形態の照射計画では、環状の治療対象部位(本実施形態では線維柱帯TM)における治療レーザ光の照射範囲(つまり、複数の照射スポットが配置される周方向の範囲)、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット(図8に示す「START」の位置の照射スポット)、照射スポットの数(図8に示す「Shots」の分母の数)、および、各々の照射スポットに対する治療レーザ光の照射順(照射方向を含む。図8では周方向の矢印が照射順の方向を示す。)が定められる。本実施形態では、治療レーザ光の照射が1回行われる毎に、照射が完了した照射スポットに隣接する照射スポットが、次に治療レーザ光を照射する照射スポットとなり、図8に示す「Shots」の分子に「1」が加算される。また、治療レーザ光の照射が1回行われる毎に、弧状または環状(図8では環状)に配置された複数の照射スポットのうち、照射が完了したスポットに対応するスポット(照射済みスポット)の表示が、他のスポットとは異なる表示態様に変更される。複数回の治療レーザ光の照射は、時計回り方向、または反時計回り方向に順に実行される。
【0084】
本実施形態では、治療レーザ光を照射する治療対象部位が実際に位置する方向と、治療対象部位を観察するためにコンタクトレンズ26の反射面27が向けられる方向は、観察光学系40の光軸に対して反対の方向となる。本実施形態では、治療レーザ光を照射すべき方向が、反射面27が向けられる方向によって示される。しかし、治療対象部位が実際に位置する方向によって、治療レーザ光を照射すべき方向が示されてもよい。なお、後述する他の実施形態では、治療において使用されるコンタクトレンズに関する情報(例えば、コンタクトレンズが部分回転型レンズであるか否かを示す情報、部分回転型レンズにおける規定角度の情報、コンタクトレンズに間隔指標28が形成されているか否かを示す情報等の少なくともいずれか)が、照射計画に含まれていてもよい。
【0085】
一例として、本実施形態では、術者は「全周」モードおよび「半周」モードのいずれかを指定することで、照射予定領域および照射予定スポット数をまとめて指定する。詳細には、本実施形態では、隅角Aの全周に渡る複数のスポットに治療レーザ光を照射する「全周」モードと、隅角Aの半周に渡る複数のスポットに治療レーザ光を照射する「半周」モードとが予め用意されている。「全周」モードにおける照射予定スポット数のデフォルト値は100に定められている。「半周」モードにおける照射予定スポット数のデフォルト値は50に定められている。術者によって「全周」モードの指定が受け付けられると、制御部60は、隅角Aの全周に渡る領域を照射予定領域に設定し、且つ、「100」を照射予定スポット数に設定する。図8に示す例では、「全周」モードが指定されている。また、術者によって「半周」モードの指定が受け付けられると、制御部60は、隅角Aの半周に渡る領域を照射予定領域に設定し、且つ、「50」を照射予定スポット数に設定する。本実施形態では、術者は、「半周」モードを指定した場合、タッチパネルの操作等を行い、隅角Aの「上半分・下半分・右半分・左半分」等を指定することで、隅角Aにおける照射予定領域の詳細な位置を指定する。制御部60は、入力された結果に基づいて照射予定領域を設定する。
【0086】
なお、照射予定領域および照射予定スポット数の指定を受け付ける方法を変更できることは言うまでもない。例えば、レーザ治療装置1は、「全周」モードおよび「半周」モード以外のモードを予め用意していてもよい。制御部60は、術者からの角度(360度以下の範囲内)の指定を受け付けて、指定された角度に応じた領域を照射予定領域に設定してもよい。制御部60は、照射予定スポット数を術者に直接入力させて、入力された照射予定スポット数を、選択されたモードに関わらず設定してもよい。制御部60は、モード毎に予め定められている照射予定スポット数を、術者による操作指示に応じて変更してもよい。制御部60は、隣接する2つのスポットの間隔を術者に入力させると共に、照射予定領域のパラメータ(例えば、治療対象部位の周方向の長さ)と、入力されたスポットの間隔とに応じて照射予定スポット数を算出してもよい。
【0087】
図9を参照して、照射スポットの照準位置を調整する方法について説明する。本実施形態では、治療レーザ光の照射スポットの照準位置を調整する方法として、ジョイスティック部5の操作によって患者眼Eとレーザ照射光学系10の位置関係を調整する方法と、コンタクトレンズ26の反射面27の回転操作および移動操作の少なくともいずれかを行う方法がある。図9(A)は、治療レーザ光の直近の照射が完了した状態を示す。図9(A)の状態では、治療レーザ光の照射が完了した照射済みスポットSSの位置と、照準光AIの位置が一致している。術者は、図9(A)に示す状態から、照準光AIの位置(つまり、照射スポットの照準位置)を、次の照射スポットの位置(図9に示す例では、照射済みスポットSSの位置の右隣りの位置)に調整する必要がある。
【0088】
図9(B)は、図9(A)に示す状態から、ジョイスティック部5の操作によって(つまり、コンタクトレンズ26の反射面27の角度を固定した状態で)照準位置が次の照射スポットの位置に調整された状態を示す。図9(B)では、治療レーザ光の直前の照射完了時の照射済みスポットSSと治療対象部位(本実施形態では線維柱帯TM)の位置を、模式的に点線で示している。しかし、実際には、直前の照射完了時の照射済みスポットSSには治療痕が存在しないので、ジョイスティック部5の操作によって照準位置を正確に調整することは難しい。
【0089】
また、図9(C)は、図9(A)に示す状態から、コンタクトレンズ26の反射面27の回転によって(つまり、ジョイスティック部5は操作せずに)照準位置が次の照射スポットの位置に調整された状態を示す。図9(C)においても、治療レーザ光の直前の照射完了時の照射済みスポットSSと治療対象部位の位置を、模式的に点線で示している。しかし、実際には、図9(C)においても、直前の照射完了時の照射済みスポットSSには治療痕が存在しておらず、反射面の回転27によって照準位置を正確に調整することも難しい。本開示では、内部表示部50にガイドを表示させることで、術者による照準位置の調整を補助する。
【0090】
<第1実施形態>
図10および図11を参照して、第1実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理について説明する。まず、図10を参照して、第1実施形態の眼科用レーザ治療装置1が内部表示部50に表示させる照準ガイド(第1実施形態では、対象部位ガイド71Aおよび外周部ガイド75)について説明する。照準ガイドは、術者によって調整される治療レーザ光の照準位置を適正位置に調整することを補助するために、内部表示部50に表示される。前述したように、照準位置を調整する方法には、ジョイスティック部5の操作によって患者眼Eとレーザ照射光学系10の位置関係を調整する方法と、コンタクトレンズ26の反射面27の回転操作および移動操作の少なくともいずれかを行う方法がある。術者は、接眼レンズ46を介して患者眼Eの組織を観察したまま(つまり、接眼レンズ46から眼を離さずに)、照準ガイドを確認し、確認した照準ガイドを参考にして治療レーザ光の照準位置を調整することができる。詳細は後述するが、眼科用レーザ治療装置1の制御部60(CPU61)は、照射計画の進捗に応じて照準ガイドを内部表示部50に表示させる。
【0091】
図10に示す例では、観察光学系40を介して、弧状または環状の治療対象部位(図10に示す例では線維柱帯TM)と、治療対象部位に照射された照準光のスポットAIが、術者によって観察されている。治療対象部位および照準光の観察像は、コンタクトレンズの反射面によって反射された反射像である。なお、図10では、前述した間隔指標28(図7参照)を備えておらず、且つ部分回転型レンズではないコンタクトレンズが使用された場合を例示している。前述したように、本実施形態では、内部表示部50における表示領域の中心、観察光学系40の観察光軸、治療レーザ光の光軸、および照準光の光軸が、中心Oにおいて全て一致している。従って、内部表示部50は、治療レーザ光および照準光の光軸を中心とした適切な方向に、適切な角度で画像を表示させることができる。換言すると、術者は、観察視野の中心、および内部表示部50の表示領域の中心に照準光を視認する。よって、照準光と、内部表示部50による表示内容に基づく治療レーザ光の照射位置の調整が、さらに容易になる。治療レーザ光の照射実行指示が入力されると、治療レーザ光は、照準光のスポットAIと同一のスポットに照射される。
【0092】
図10に示すように、第1実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照準ガイドとして対象部位ガイド71Aを内部表示部50に表示させる。対象部位ガイド71Aは、観察光学系40を介して術者によって観察されている、患者眼Eの弧状または環状の治療対象部位(図10に示す例では線維柱帯TM)が合わせられる基準となる。術者は、観察光学系40を介して観察している弧状または環状の治療対象部位が、表示されている対象部位ガイド71Aに合うように、種々の調整を行うことで、治療レーザ光の照準位置を容易に適正位置に調整することができる。
【0093】
図10に例示する対象部位ガイド71Aは、観察光学系における術者の視線方向から見て、弧状または環状の治療対象部位(線維柱帯TM)のうち、照射計画によって定められている次回の照射スポットの適正位置に接する接線方向に平行な直線を含む。円の特性上、特定の傾きの直線が円に接する場合の円周上の点は2つ存在し、2つの点は円の中心に対して正反対に位置する。術者が観察している弧状または環状の治療対象部位は反射面27に写り込んだものであるため、治療対象部位のうち、反射面27を介して観察される扇形状の部分の範囲は、弧状又は環状の治療対象部位の中心を基準として180度未満の角度範囲に収まる。その結果、前述した2点は観察視野に同時に収まることはなく、対象部位ガイド71Aの傾きと平行な接線を持つ治療対象部位は一意に定まる。従って、術者がジョイスティック部5およびコンタクトレンズ26の少なくとも一方を操作し、弧状または環状の治療対象部位の接線方向が、対象部位ガイド71Aの直線部分の方向に合致するように、治療対象部位が対象部位ガイド71Aに合わせられることで、治療レーザ光の照準位置が正確に調整され易くなる。なお、図10では、次回の照射スポットの適正位置に、照準位置(照準光のスポットAIの位置)が正確に調整されている状態を示す。
【0094】
また、術者が観察光学系40を介して弧状または環状の治療対象部位を観察する場合、患者眼Eの大きさ、および観察光学系40の観察倍率等に応じて、観察される治療対象部位の曲率が変化する。これは、観察範囲が変化するためであり、曲率変化の影響を受けるのは観察範囲の端の方で観察される治療対象部位である。対象部位ガイド71Aと治療対象部位の接線方向を合わせる調整を行うと、治療対象部位は、照準光の位置である観察範囲の中心付近で観察されるようになる。そのため、術者は、患者眼Eの大きさ、および観察倍率等に関わらず、治療対象部位の接線方向を、対象部位ガイド71Aの直線部分の方向に合わせることができる。よって、術者は、より容易に照準位置を適正位置に調整することができる。
【0095】
図10に例示する対象部位ガイド71Aは、前述した接線方向に平行な2本の直線を含む。治療レーザ光の光軸および照準光の光軸の位置(図10では中心Oの位置)は、2本の直線の中間に位置する。その結果、術者によって観察される照準光のスポットAIの中心が、対象部位ガイド71Aにおける2本の直線の中間に位置する。よって、術者は、治療対象部位の接線方向を、対象部位ガイド71Aの直線部分の方向に合わせながら、同時に治療レーザ光の照準位置(照準光のスポットAI)を治療対象部位の適正位置に合わせることができる。なお、制御部60は、観察光学系40の観察倍率に応じて、対象部位ガイド71Aにおける2本の直線の間の距離を調整する。その結果、観察倍率に応じた適切な距離を置いて対象部位ガイド71Aの2本の直線が表示されるので、観察倍率に関わらず適切に照準位置の調整が補助される。ただし、対象部位ガイド71Aの直線部分は1本でもよい。この場合、治療レーザ光の光軸および照準光の光軸の位置を直線部分が通過していれば、照準位置を適正位置に合わせ易くなる。
【0096】
なお、制御部60は、内部表示部50に表示させる対象部位ガイド71Aの角度を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度で対処部位ガイド71Aを表示させる。従って、照射計画の進捗に応じた適切な角度で対象部位ガイド71Aが内部表示部50に表示される。この詳細については後述する。
【0097】
また、図10に示すように、第1実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照準ガイドとして外周部ガイド75を内部表示部50に表示させる。外周部ガイド75は、照射計画の進捗に適したコンタクトレンズの反射面の回転角度(つまり、コンタクトレンズ26の中心軸AX1に対して反射面27を配置させる方向)、および、治療レーザ光を照射すべき照射スポットが位置する方向(コンタクトレンズ26を用いた観察像での照射スポットが位置する方向)の少なくとも一方を示す。外周部ガイド75は、観察光学系40を介した術者による観察視野の外周部に沿って表示される。前述したように、観察光学系40による観察光軸と、内部表示部50の表示領域の中心は一致している。従って、内部表示部50の表示領域の中心を基準として、観察視野の外周部に沿って外周部ガイド75が表示されることで、適切な方向を容易に術者に把握させることができる。
【0098】
詳細には、本実施形態では、複数の外周部ガイド75が、観察視野の外周部に沿って弧状または環状に配置される。また、制御部60は、1つの外周部ガイド75を移動させる場合には、観察視野の外周部に沿う弧状または環状のライン上を移動させる。外周部ガイド75が表示される弧状または環状のラインの中心(換言すると、外周部ガイド75の中心、または外周部ガイド75の曲率中心)は、観察光学系40の観察光軸と一致する。よって、術者は、外周部ガイド75によって示される方向を適切に把握することができる。
【0099】
外周部ガイド75には、次回照準ガイド75Aが含まれている。次回照準ガイド75Aは、照射計画において定められている複数の照射スポットのうち、次に治療レーザ光を照射する照射スポットの適切な方向を示す。制御部60は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、次回照準ガイド75Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する照射スポットに対応する位置に遷移させる。例えば、線維柱帯TMの全周に亘って右回りで100発の照射を行う照射計画の場合、次回照準ガイド75Aを、中心Oを基準として3.6度遷移させればよい。従って、術者は、次に照準位置を調整する照射スポットの方向を、観察視野の外周部に沿って遷移される次回照準ガイドによって適切に把握することができる。
【0100】
外周部ガイド75には、照射完了ガイド75Bが含まれている。照射完了ガイド75Bは、照射計画において定められている複数の照射スポットのうち、既に治療レーザ光の照射が完了した照射スポットの方向を示す。制御部60は、治療レーザ光の照射が完了する毎に、照射直前まで表示されていた次回照準ガイド75Aを照射完了ガイド75Bに変更する。従って、術者は、治療レーザ光の照射が完了した方向を把握したうえで、次回照準ガイド75Aによって次の照準位置を適切に調整することができる。治療の進捗状況を把握することも容易となる。
【0101】
外周部ガイド75には、未照射ガイド75Cが含まれている。未照射ガイド75Cは、照射計画において定められている複数の照射スポットのうち、次回よりも後で治療レーザ光が照射される予定の照射スポットの方向を示す。制御部60は、治療レーザ光の照射が完了する毎に、照射計画で定められた次回の照射順の照射スポットの方向に表示されていた未照射ガイド75Cを、次回照準ガイド75Aに変更することで、次回照準ガイド75Aを遷移させる。この場合、術者は、次回よりも後で治療レーザ光を照射する予定の照射スポットの方向も把握したうえで、次回照準ガイド75Aによって次の照準位置を適切に調整することができる。治療の進捗状況を把握することも容易となる。
【0102】
なお、制御部60は、次回照準ガイド75A、照射完了ガイド75B、および未照射ガイド75Cの各々を識別可能な態様で(つまり、異なる表示態様で)表示させる。従って、術者は、表示されている外周部ガイド75の種類を容易に認識することができる。なお、制御部60は、次回照準ガイド75A、照射完了ガイド75B、および未照射ガイド75Cのうちの1つ、または2つを選択的に表示させてもよい。この場合、少なくとも次回照準ガイド75Aを表示させることが望ましい。また、次回照準ガイド75Aと照射完了ガイド75Bの両方を表示させることがより望ましい。次回照準ガイド75Aは、例えば、観察光学系40の光軸が通過する中心Oまで延びる直線であってもよい。次回照準ガイド75Aによって、コンタクトレンズ26の反射面27を向ける方向を誘導できればよい。
【0103】
図11を参照して、第1実施形態における治療制御処理について説明する。なお、以下説明する全ての治療制御処理は、治療を開始させる指示がタッチパネル等を介して入力された場合に、制御部60のCPU(コントローラ)61によって実行される。CPU61は、ROM62または不揮発性メモリ65に記憶された制御プログラムに従って治療制御処理を実行する。
【0104】
まず、制御部60は、患者眼Eに対する治療レーザ光の照射計画を取得する(S1)。前述したように、照射計画では、反射面27を有するコンタクトレンズ26を使用して患者眼Eに治療レーザ光を照射する場合の、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットに対する照射順等が定められる。本実施形態の照射計画では、環状の治療対象部位(本実施形態では線維柱帯TM)における治療レーザ光の照射範囲(つまり、複数の照射スポットが配置される周方向の範囲)、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット、照射スポットの数、および、各々の照射スポットに対する治療レーザ光の照射順(照射方向を含む)が定められる。本実施形態では、治療レーザ光の照射が1回行われる毎に、照射が完了した照射スポットに隣接する照射スポットが、次に治療レーザ光を照射する照射スポットとなる。複数回の治療レーザ光の照射は、時計回り方向、または反時計回り方向に順に実行される。なお、後述する他の実施形態では、治療において使用されるコンタクトレンズに関する情報(例えば、コンタクトレンズが部分回転型レンズであるか否かを示す情報、部分回転型レンズにおける規定角度の情報、コンタクトレンズに間隔指標28が形成されているか否かを示す情報等の少なくともいずれか)が、照射計画に含まれていてもよい。一例として、本実施形態では、コントロールボックス6が操作されることで照射計画が策定される。
【0105】
制御部60は、内部表示部50における表示領域の外周部(つまり、観察光学系40を介した観察視野の外周部)のうち、照射計画において治療レーザ光を照射することが予定されている複数の照射スポットの各々の方向に、未照射ガイド75Cを表示させる(S2)。
【0106】
制御部60は、照射計画で定められた複数の照射スポットに対する治療レーザ光の照射順を特定する照射順カウンタ「n」の値を「1」とする(S3)。制御部60は、内部表示部50における表示領域の外周部のうち、照射計画で定められた1番目の照射スポットの方向に、次回照準ガイド75Aを表示させる(S1)。さらに、制御部60は、照射計画で定められた1番目の照射スポットの位置または方向に応じて、対象部位ガイド71Aの角度を決定し、決定した角度で対象部位ガイド71Aを内部表示部50に表示させる(S5)。
【0107】
次いで、制御部60は、治療レーザ光の照射実行指示が術者によって入力されたか否かを判断する(S7)。照射実行指示が入力されていなければ(S7:NO)、S7の判断が繰り返されて待機状態となる。この間に、術者によって治療レーザ光の照準位置が調整される。一例として、実際の繊維柱帯TMにおいて6時方向の部位への照射を誘導する場合、制御部60は、水平方向に伸びる直線(前述した部位に対応する一意の角度)を対象部位ガイド71Aとして表示されればよい。また、図10に例示する対象部位ガイド71Aは、実際の繊維柱帯における左斜め下方向の部位への照射を誘導している。
【0108】
治療レーザ光の照射実行指示が入力されると(S7:YES)、治療レーザ光が照射される(S8)。次いで、照射順カウンタ「n」の値が、照射計画において治療レーザ光を照射すると定められた全ての照射スポットの数「N」に達しているか否かが判断される(S10)。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了していなければ(つまり、「n」が「N」に達していなければ)(S10:NO)、照射順カウンタ「n」の値に「1」が加算される(S11)。制御部60は、次回照準ガイド75Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する照射スポットの対応する位置に遷移させる(S12)。また、制御部60は、表示されていた次回照準ガイド75Aを、照射完了ガイド75Bに変更する(S13)。さらに、制御部60は、表示させていた対象部位ガイド71Aの角度を、照射スポットの進行方向および進行角度に応じて回転させる(S14)。一例として、繊維柱帯TMの全周に対して、隣接的な100発の照射を行う照射計画の場合、制御部60は、内部表示部50に表示させている対象部位ガイド71Aを、照射を行う毎に3.6度、一方向に回転させてゆけばよい。その後、処理はS7に戻る。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると(つまり、「n」が「N」に達している場合)(S10:YES)、処理は終了する。
【0109】
<第2実施形態>
図12および図13を参照して、第2実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理について説明する。なお、以下説明する第2実施形態~第4実施形態における構成および制御等の少なくとも一部には、第1実施形態で説明した構成および制御を採用できる。従って、以下説明する実施形態のうち、第1実施形態で説明した構成および制御を採用できる部分については、説明を省略または簡略化する場合もある。第2実施形態では、内部表示部50に表示される対象部位ガイドの形状等が第1実施形態とは異なる。なお、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、間隔指標28(図7参照)を備えておらず、且つ部分回転型レンズではないコンタクトレンズが使用される場合を例示して説明を行う。
【0110】
まず、図12を参照して、第2実施形態の眼科用レーザ治療装置1が内部表示部50に表示させる照準ガイド(第2実施形態では、対象部位ガイド71B)について説明する。前述したように、対象部位ガイドは、観察光学系40を介して術者によって観察されている、患者眼Eの弧状または環状の治療対象部位(図12に示す例では線維柱帯TM)が合わせられる基準となる。図12に例示する対象部位ガイド71Bは、照射計画によって定められた複数の照射スポットの弧状の配置に対応する弧状部分を含む。従って、治療対象部位が描く弧状が、対象部位ガイド71Bの弧状部分の形状に合致するように、治療対象部位が対象部位ガイド71Bに合わせられることで、コンタクトレンズの反射面の回転角度と、治療レーザ光の照準位置が、共に正確に調整され易くなる。
【0111】
制御部60は、観察光学系40の倍率に応じて、内部表示部50に表示させる対象部位ガイド71Bの弧状部分の曲率を変化させる。その結果、観察倍率に応じて変化する治療対象部位の見え方の違いに応じて、対象部位ガイド71Bの弧状部分が適切に変化する。よって、照準位置の調整がより容易になる。
【0112】
第2実施形態では、コンタクトレンズの反射面の角度を固定した状態で、扇状の照射区画内で治療レーザ光が所定数照射される。1つの照射区画内における所定数の治療レーザ光の照射が完了すると、コンタクトレンズの反射面の回転角度が術者によって変更(調整)されたうえで、次の扇状の照射区画内で治療レーザ光が所定数照射される。図12に示す例では、1つの照射区画の角度範囲は36度である。従って、治療対象部位の全周に対して治療が行われる場合、10個の照射区画の各々で所定数の治療レーザ光の照射が実行される。
【0113】
図12(a)では、まず制御部60は、照射計画において最初の照射区画内に配置される、所定数(図12に示す例では10個)の照射スポットの弧状の配置に対応する弧状の対象部位ガイド71Bを、内部表示部50に表示させる。図12(a)に示す状態では、観察されている治療対象部位の弧状と、表示された対象部位ガイド71Bの弧状は一致していない。従って、図12(b)に示すように、術者は、コンタクトレンズおよびジョイスティック部5によって、治療対象部位の弧状を対象部位ガイド71Bの弧状に合わせる。その結果、コンタクトレンズの反射面の回転角度と治療レーザ光の照準位置が、照射計画によって定められている照射スポットに治療レーザ光を照射するための適切な角度および位置に近づく。なお、第2実施形態では、術者は、ジョイスティック部5に設けられている切り替えスイッチ(図示せず)を操作することで、対象部位ガイド71Bの表示と非表示を切り替えることができる(図12(b)および図12(c)参照)。図12(c)に示すように、術者は、コンタクトレンズの反射面の回転角度を固定した状態で、照射区画内における所定数の治療レーザ光の照射を完了させる(図12(c)では、治療レーザ光が照射されたスポットSを模式的に点線で示している)。所定数の治療レーザ光の照射を行う際に、術者は、例えば図9(B)で例示した操作を繰り返せばよい。図12(d)に示すように、制御部60は、照射区画内における所定数の治療レーザ光の照射が完了すると、1つの照射区画分の角度(図12の例では36度)だけ、次の照射スポットの進行方向に対象部位ガイド71Bを回転させる。術者は、回転された対象部位ガイド71Bの弧状に、観察される治療対象部位の弧状が合うように、コンタクトレンズの回転操作等を行えばよい。以上の手順が繰り返されることで、複数の照射区画の各々に対して適切に治療が実行される。つまり、本実施形態では、ジョイスティック部5によって観察像をずらして照準位置を調整する手順を複数回繰り返した後に、コンタクトレンズの反射面を大きく(図12に示す例では約36度)回転させるまでの一連の手順が、1つのサイクルとされる。このサイクルが複数回繰り返されることで、環状または弧状である治療対象部位の広い範囲に対して、治療レーザ光が適切に複数回照射される。制御部60は、予め設定された照射計画に基づいて、コンタクトレンズの反射面を大きく回転させるタイミングで、対象部位ガイド71Bを回転させる。その結果、例えば、構造が簡素なコンタクトレンズと、構造が簡素な眼科用レーザ治療装置1が組み合わされて使用される場合等であっても、術者は、複数の照射スポットの位置を、治療対象部位の広い領域において適切に調整し易い。
【0114】
図13を参照して、第2実施形態における治療制御処理について説明する。まず、制御部60は、患者眼Eに対する治療レーザ光の照射計画を取得する(S21)。前述したように、S21で取得される治療計画では、1つの照射区画分の角度、各々の照射区画内で治療レーザ光が照射される回数M、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数N、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット、治療レーザ光の照射順(照射方向を含む)等が定められている。
【0115】
制御部60は、1番目の照射区画内に配置される所定数の照射スポットの配置に対応する、弧状の対象部位ガイド71Bを、内部表示部50に表示させる(S22)。制御部60は、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射された累計回数を特定する全照射数カウンタ「n」の値を「0」とする(S23)。さらに、制御部60は、1つの照射区画内に対して治療レーザ光が照射された回数を特定する区画内照射数カウンタ「m」の値を「0」とする(S24)。
【0116】
次いで、制御部60は、内部表示部50における対象部位ガイド71Bの表示と非表示を切り替える指示が、術者によって入力されたか否かを判断する(S26)。表示切替指示が入力されると(S26:YES)、制御部60は、入力された指示に応じて、内部表示部50における対象部位ガイド71Bの表示と非表示を切り替える(S27)。その後、処理はS28へ移行する。
【0117】
制御部60は、治療レーザ光の照射実行指示が術者によって入力されたか否かを判断する(S28)。照射実行指示が入力されていなければ(S28:NO)、処理はS26へ戻る。この間に、術者によって治療レーザ光の照準位置が調整される。治療レーザ光の照射実行指示が入力されると(S28:YES)、治療レーザ光が照射される(S29)。次いで、制御部60は、全照射数カウンタ「n」と、区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算する(S30)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」の値が、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数「N」に達したか否かを判断する(S32)。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了していなければ(つまり、「n」が「N」に達していなければ)(S32:NO)、制御部60は、区画内照射数カウンタ「m」の値が、1つの照射区画内において治療レーザ光が照射される所定回数「M」に達したか否かを判断する(S33)。1つの照射区画内の治療レーザ光の照射が完了していなければ(つまり、「m」が「M」に達していなければ)(S33:NO)、処理はS26へ戻り、S26~S33の処理が繰り返される。1つの照射区画内の治療レーザ光の照射が完了すると(S33:YES)、制御部60は、1つの照射区画分の角度だけ、次の照射スポットの進行方向に対象部位ガイド71Bを回転させて(S34)、処理はS24へ戻り、次の照射区画に対する治療のための処理に移行する。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると(S32:YES)、処理は終了する。
【0118】
なお、第2実施形態で例示した処理を変更することも可能である。例えば、制御部60は、部分回転型レンズが使用される場合、使用される部分回転型レンズの規定回転角度(つまり、1回の操作によって回転する角度)の情報を取得してもよい。制御部60は、1つの規定回転角度(前述した「1つの照射区画の角度」に相当)の範囲内で実行される予定の所定回数(前述した所定回数「M」に相当)の治療レーザ光の照射が完了する毎に、表示させていた対象部位ガイド71Bの角度を、照射スポットの進行方向に、規定回転角度だけ回転させてもよい。この場合、1つの規定回転角度の範囲内での治療レーザ光の照射が完了する毎に、対象部位ガイド71Bの角度が、次の規定回転角度の範囲に対応する角度に回転される。よって、部分回転型レンズを用いて治療が行われる場合でも、より適切に照準位置が調整され易くなる。
【0119】
また、制御部60は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、表示させていた対象部位ガイド71Bの角度を、照射スポットの進行方向および進行角度に応じて回転させてもよい。この場合、治療レーザ光の照射が実行される毎に、次回の照射スポットに応じた適切な角度の対象部位ガイド71Bが表示される。
【0120】
制御部60は、使用されるコンタクトレンズに関する情報に基づいて、対象部位ガイド71A,71Bの表示方法を変更してもよい。例えば、使用されるコンタクトレンズが、術者によって全体が回転されるコンタクトレンズである場合には、制御部60は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、照射スポットの進行角度だけ対象部位ガイド71Aを回転させる処理を実行してもよい。また、使用されるコンタクトレンズが部分回転型レンズである場合には、制御部60は、所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、対象部位ガイド71Bを規定回転角度だけ回転させる処理を実行してもよい。この場合、使用されるコンタクトレンズに応じて適切に対象部位ガイド71A,71Bの表示が変更されるので、治療レーザ光の照準位置がさらに調整され易くなる。
【0121】
<第3実施形態>
図14図16を参照して、第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理について説明する。まず、図14および図15を参照して、第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1が内部表示部50に表示させる照準ガイド(第3実施形態では、角度ガイド80、区画照準ガイド75D)、および前回照射時画像88について説明する。
【0122】
図14に示すように、第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照準ガイドとして角度ガイド80を内部表示部50に表示させる。角度ガイド80は、照射計画の進捗に適したコンタクトレンズの反射面の回転角度を示す。術者は、角度ガイド80によって示された角度を参照して、コンタクトレンズの反射面の回転角度を調整することで、反射面の角度が適切に調整された状態で治療レーザ光の照準位置を調整することができる。
【0123】
図15に示すように、第3実施形態の角度ガイド80は、治療対象部位模式図81を含む。治療対象部位模式図81の形状は、次に治療レーザ光を照射する予定の照射スポットが配置される、患者眼の弧状または環状の治療対象部位(本実施形態では、図14に示す線維柱帯TM)の適正角度に沿った形状となっている。従って、術者は、観察されている治療対象部位の角度が治療対象部位模式図81に沿うように調整を行うことで、コンタクトレンズの反射面の回転角度を容易に調整することができる。
【0124】
また、第3実施形態の角度ガイド80は、コンタクトレンズの反射面の輪郭形状を模した形状、および、コンタクトレンズの反射面を適切な方向に向けた際に反射面に写り込むコンタクトレンズの特徴構造(本実施形態では、間隔指標28)を模した形状を含む。図14および図15に示す例では、制御部60は、内部表示部50の表示領域の中心から見て、軸AX1に対して反射面を配置させる方向に角度ガイド80を表示させる。従って、術者は、コンタクトレンズの反射面が角度ガイド80に沿う方向となるように調整を行うことで、コンタクトレンズの反射面の回転角度を容易に調整することができる。
【0125】
制御部60は、内部表示部50に表示させる角度ガイド80の角度を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度で角度ガイド80を表示させる。従って、術者は、角度ガイド80を参照することで、コンタクトレンズの反射面の角度を、照射計画の進捗に応じた適切な角度に調整することができる。
【0126】
詳細には、第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療では、図6および図7に示すコンタクトレンズ(部分回転型レンズ)26が使用される場合がある。前述したように、部分回転型のコンタクトレンズ26では、ユーザの指によって1回操作される毎に、反射面27を含む部位が、ユーザによって把持される把持部26Aに対して規定角度回転する。制御部60は、1つの規定回転角度の範囲内(換言すると、1つの照射区画内)で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、角度ガイド80の角度を規定角度回転させる。従って、術者は、特に部分回転型のコンタクトレンズ26を使用して治療を実行する場合でも、角度ガイド80を参照することで、反射面27の角度を適切な角度に調整することができる。
【0127】
なお、制御部60は、コンタクトレンズ26における1つの規定回転角度の範囲内(換言すると、1つの照射区画内)で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎(つまり、コンタクトレンズ26の反射面27の向きを維持したまま、ジョイスティック部5による複数箇所への照準位置の調整が完了する毎)に、反射面27を規定回転角度だけ回転させることを術者に推奨する。従って、術者は、特に部分回転型のコンタクトレンズ26を使用して治療を実行する場合に、反射面27の規定角度の回転が必要なタイミングを適切に把握することができる。なお、本実施形態では、制御部60は、スピーカによって音を発生させることで、反射面27の回転を推奨する。従って、術者は、接眼レンズ46を覗いたままでも、反射面27の回転が必要なタイミングを把握することが可能である。
【0128】
図15に示すように、第3実施形態の角度ガイド80は、コンタクトレンズ26に設けられている間隔指標28(図7参照)を模した間隔指標模式図82を含む。前述したように、第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療で使用されるコンタクトレンズ26には、間隔指標28が設けられている。間隔指標28は、治療レーザ光が照射されるスポットの間隔の目安とするために、一定の間隔毎に複数配置されている。図14に示すように、間隔指標28の少なくとも一部は、反射面27を介して術者によって観察される。術者は、角度ガイド80によってコンタクトレンズ26の反射面27の回転角度を容易に調整できることに加えて、間隔指標模式図82を把握したうえで複数の治療レーザ光の照準位置を調整することで、複数のスポットの間隔を適切に調整し易くなる。特に、使用するコンタクトレンズ26に間隔指標28が設けられている場合には、術者は、観察光学系40を介して観察されるコンタクトレンズ26の間隔指標28と、内部表示部50に表示されている間隔指標模式図82を比較したうえで照準位置を調整することで、より容易に照準位置を調整することができる。
【0129】
第3実施形態の角度ガイド80には、スポット配置指針図83が付加されている。スポット配置指針図83は、照射計画において定められた複数の照射スポットのうち、次に治療レーザ光を照射する予定の照射スポットを含む連続した照射スポットの配置を示す。制御部60は、スポット配置指針図83に含まれる複数の照射スポットの配置のうち、次に治療レーザ光を照射する照射スポットの表示を、治療レーザ光の照射が実行される毎に、照射計画で定められた進行方向に隣接する照射スポットに遷移させる。従って、術者は、スポット配置指針図83において表示されている次の照射スポットの位置を把握することで、より適切に次の照準位置を調整することができる。特に、図14および図15に示す角度ガイド80では、スポット配置指針図83は、間隔指標模式図82によって示される照射スポットの目安の間隔に合致した状態で表示される。従って、術者は、スポット配置指針図83において示されている次の照射スポットの、間隔指標模式図83に対する位置関係を把握することで、より適切に次の照準位置を調整することができる。
【0130】
図14に示すように、第3実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、観察視野の外周部に沿って表示する外周部ガイドとして、区画照準ガイド75Dを内部表示部50に表示させる。図14に例示する区画照準ガイド75Dは、治療計画の進捗に応じた治療対象部位の領域(観察光学系40を介さずに患者眼Eを正面視した際の治療対象部位の領域)を示す。図14に示す例では、8個の照射区画の各々に対応するバーグラフのうち、現在の照射区画への治療レーザ光の照射に対応した治療対象部位の領域の方向を示す部分が、他の部分とは異なる態様で(つまり、他の部分との識別が可能な態様で)表示されることで、区画照準ガイド75Dが表示されている。図14は、コンタクトレンズ26の反射面27を向ける方向を角度ガイド80で案内し、角度ガイド80に対応する治療対象部位の領域の方向を区画照準ガイド75Dで示している。なお、図14では、コンタクトレンズ26を介して観察される観察像が反射像(虚像)であることを考慮して、区画照準ガイド75Dを角度ガイド80とは反対の方向に配置している。しかし、区画照準ガイド75Dと角度ガイド80が同一の方向に配置されてもよい。制御部60は、1つの照射区画に含まれる複数の照射スポットと同数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、区画照準ガイド75Dの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させる。従って、術者は、照射区画内の照射スポットに治療レーザ光を照射するための反射面27の方向を、区画照準ガイド75Dによって容易に把握することができる。なお、区画照準ガイド75Dは、治療計画の進捗に応じた照射区画の方向を示してもよい。この場合、区画照準ガイド75Dの方向は、反射面27の適切な回転角度の方向を示す場合とは反対の方向となる。
【0131】
制御部60は、使用される部分回転型のコンタクトレンズ26(図6および図7参照)の規定角度の範囲毎に、区画照準ガイド75Dを表示させる。制御部60は、1つの規定角度の範囲内に含まれる複数の照射スポットと同数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、区画照準ガイド75Dの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させる。従って、部分回転型のコンタクトレンズ26の仕様と治療の進捗に応じて、区画照準ガイド75Dが適切に表示される。
【0132】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、患者眼E等の観察像を撮影する撮影光学系を備える。図14に示すように、制御部60は、撮影光学系によって撮影された前回照射時画像88を内部表示部50に表示させる。前回照射時画像88は、治療レーザ光が前回照射された際に撮影光学系によって撮影された、照準光が照射された治療対象部位の画像である。例えば、前回の治療レーザ光の照射直前、または照射直後に撮影された静止画が、前回照射時画像88として表示されてもよい。本実施形態における治療では、治療レーザ光の照射痕が残らないので、前回照射時画像88には、照準光が照射された状態の治療対象部位の画像が用いられる。ただし、撮影画像の所定位置(本実施形態では、治療レーザ光の光軸と一致する位置)に、スポットを模したグラフィックが描画されてもよい。術者は、前回の治療レーザ光の照射部位(つまり、表示されている前回照射時画像88において照準光が写る部位)を把握したうえで、次の照準位置を調整することができる。よって、治療レーザ光がさらに適切に照射され易くなる。
【0133】
図16を参照して、第3実施形態における治療制御処理について説明する。まず、制御部60は、患者眼Eに対する治療レーザ光の照射計画を取得する(S41)。S41で取得される治療計画では、使用される部分回転型のコンタクトレンズ26の規定角度(つまり、1つの照射区画分の角度)、各々の照射区画内で治療レーザ光が照射される回数M、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数N、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット、治療レーザ光の照射順(照射方向を含む)等が定められている。なお、コンタクトレンズ26の規定角度等の情報は、コンタクトレンズ26の種類を示す情報に基づいて取得されてもよい。
【0134】
制御部60は、1番目の照射区画の配置に対応する角度・方向・位置で、角度ガイド80および区画照準ガイド75Dを内部表示部50に表示させる(S42)。制御部60は、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射された累計回数を特定する全照射数カウンタ「n」の値を「0」とする(S43)。さらに、制御部60は、1つの照射区画内に対して治療レーザ光が照射された回数を特定する区画内照射数カウンタ「m」の値を「0」とする(S44)。制御部60は、スポット配置指針図83のうち、次に治療レーザ光を照射する照射スポット(次回スポット)の表示を、スポット配置指針図83における複数のスポットのうち、治療レーザ光の照射順が最初のスポットに設定する(S45)。
【0135】
制御部60は、治療レーザ光の照射実行指示が術者によって入力されたか否かを判断する(S47)。照射実行指示が入力されていなければ(S47:NO)、S47の判断が繰り返される。この間に、術者によって治療レーザ光の照準位置が調整される。治療レーザ光の照射実行指示が入力されると(S47:YES)、治療レーザ光が照射される(S48)。また、制御部60は、治療レーザ光が照射された際に撮影光学系によって撮影された、照準光が照射された治療対象部位の観察画像を取得する(S49)。
【0136】
制御部60は、全照射数カウンタ「n」と、区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算する(S50)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」の値が、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数「N」に達したか否かを判断する(S52)。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了していなければ(つまり、「n」が「N」に達していなければ)(S52:NO)、制御部60は、区画内照射数カウンタ「m」の値が、1つの照射区画内において治療レーザ光が照射される所定回数「M」に達したか否かを判断する(S53)。1つの照射区画内の治療レーザ光の照射が完了していなければ(つまり、「m」が「M」に達していなければ)(S53:NO)、制御部60は、スポット配置指針図83における複数のスポットのうち、次に治療レーザ光を照射する照射スポット(次回スポット)の表示を、照射の進行方向に隣接するスポットに遷移させる(S54)。さらに、制御部60は、S49で撮影された観察画像を、前回照射時画像88として内部表示部50に表示させて(S55)、処理はS47へ戻る。
【0137】
1つの照射区画内の治療レーザ光の照射が完了すると(S53:YES)、制御部60は、内部回転型のコンタクトレンズ26の規定角度(つまり、1つの照射区画分の角度)だけ、角度ガイド80を回転させる(S57)。制御部60は、区画照準ガイド75Dの位置を、照射計画で定められた進行方向に隣接する位置に遷移させる(S58)。さらに、制御部60は、反射面27を規定回転角度だけ回転させることを術者に推奨し(S59)、処理はS44へ戻る。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると(S52:YES)、処理は終了する。
【0138】
なお、第3実施形態で例示した処理を変更することも可能である。まず、角度ガイド80の表示態様を変更してもよい。例えば、観察光学系40を介して観察される治療対象部位の観察像の適切な角度を術者に把握させる線図または写真等が、角度ガイドとして内部表示部50に表示されてもよい。また、コンタクトレンズ26を観察光軸に沿う方向から見た場合の模式図等が、角度ガイドとして表示されてもよい。
【0139】
第3実施形態の角度ガイド80は、1つの照射区画内で実行される予定の所定回数の治療レーザ光の照射が完了する毎に、照射区画の角度範囲だけ回転される。しかし、制御部60は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、表示させている角度ガイド60の角度を、照射スポットの進行方向および進行角度に応じて回転させてもよい。
【0140】
第3実施形態の角度ガイド80、区画照準ガイド75D、および前回照射時画像88は、内部表示部50に表示される。しかし、眼科用レーザ治療装置1は、内部表示部50とは異なる表示部(例えば、観察光学系40の外に設けられるコントロールボックス6の外部表示部7等)に、角度ガイド80、区画照準ガイド75D、および前回照射時画像88の少なくともいずれかを表示させる場合でも、術者による照準位置の調整を適切に補助することが可能である。
【0141】
<第4実施形態>
図17図19を参照して、第4実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理について説明する。図17図19では、内部回転型であり、且つ間隔指標28が形成されたコンタクトレンズ26(図6および図7参照)を使用して治療が行われる場合について例示する。図15および図16に示すように、観察光学系40によって観察される観察像には、コンタクトレンズ26の反射面27によって反射される間隔指標28の反射像が含まれる。スポット間隔ガイド90は、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットの適正間隔を術者に示す。
【0142】
まず、図17および図18に示す例を用いて、スポット間隔ガイド90を利用した治療の流れについて説明する。なお、図17および図18は、術者が予め設定した照射計画に基づき、下方(図17)から左斜め下方(図18)にかけての実際の繊維柱帯の領域に対し、時計回りの隣接的な照射を行う一例を示している。
【0143】
本実施形態の照射計画には、術者が回転基部26Bを時計回りに回転することが含まれている。図17および図18では、下方の線維柱帯がコンタクトレンズの反射面によって反射されて、術者の観察視野に入り込んでいる。従って、図17および図18では、上下が反転し、下方の線維柱帯が写り込んでいる。図17および図18における反射面上で、照射スポットに対する治療が右から左に(つまり、反時計回りに)進んでいくと、実際の下方の線維柱帯では、照射スポットに対する治療が右から左に(つまり、時計回りに)進行する。
【0144】
まず、図17(a)に示すように、制御部60は、内部表示部50に表示させるスポット間隔ガイド90の角度を、照射計画の進捗に応じて(詳細には、治療レーザ光を照射する照射区画の方向に応じて)決定し、決定した角度でスポット間隔ガイド90を表示させる。スポット間隔ガイド90の指標は、コンタクトレンズ26の反射面27による、次回の照射スポットへの治療レーザ光の適切な反射方向に沿っている。図17は、実際の繊維柱帯TMの下方領域に対し、コンタクトレンズ26の反射面27の向きを維持したまま隣接的な10回の照射を行うためのガイドである。前述した領域に基づき、スポット間隔ガイド90の指標は水平方向に配列されている。制御部60は、スポット間隔ガイド90中に、次の治療レーザ光の照準位置を合わせるための次回照準指標90Aを識別可能に表示させる。図17(a)に示す例では、制御部60は、まず、スポット間隔ガイド90の複数の指標(本実施形態では、コンタクトレンズ26の反射面27を介して観察される、5つの間隔指標28の反射像に合わせられる5つの指標)のうち、照射計画で定められた治療の進行方向に対して反対側の端部に位置する指標(図17(a)では、右側の端部に位置する指標)に重なる位置に、次回照準指標90Aを表示させる。スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次回照準指標90Aに重なる位置以外の指標は、次回よりも後で治療レーザ光が照射されるスポットの少なくとも一部に対応する未照射指標とされる。さらに、制御部60は、次回照準指標90Aが、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上の位置に対応するように、スポット間隔ガイド90の複数の指標と次回照準指標90Aを表示させる。なお、次回照準指標90Aを表示させる位置は、治療レーザ光の光軸に完全に一致している必要は無い。つまり、次回照準指標90Aは、治療レーザ光の光軸上の位置を術者に認識させることができるように、治療レーザ光の光軸上に対応する位置に表示されればよい。
【0145】
術者は、スポット間隔ガイド90の複数の指標(本実施形態では5つの指標)の位置と、観察視野内のコンタクトレンズ26の反射面27に写る複数の照準指標28の位置が一致するように、コンタクトレンズ26の回転角度、および、ジョイスティック部5によって変更される患者眼Eとレーザ照射光学系10の相対位置の少なくとも一方を調整する。図17(b)に示すように、スポット間隔ガイド90の複数の指標の位置と、照準指標28の位置が一致すると、スポット間隔ガイド90における次回照準指標90Aが延びる直線上に、次に治療レーザ光を照射させるスポットSが位置する。術者は、照準光の位置を治療対象部位に合わせた状態で、治療レーザ光の照射実行指示を入力する。その結果、治療レーザ光は、レーザ照射光学系10の光軸が通過するスポットSに照射される。
【0146】
図17(c)に示すように、治療レーザ光の照射が完了すると、制御部60は、スポット間隔ガイド90の指標を、照射計画で定められた治療の進行方向(図17では、時計回りの方向)とは反対の方向(図17では反時計回りの方向)に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。その結果、照準指標28の位置に対して、スポット間隔ガイド90の複数の指標の位置がずれる。制御部60は、次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。さらに、制御部60は、前回の治療レーザ光の照射時に次回照準指標90Aが重ねられていた指標を、既に治療レーザ光の照射が完了したスポットに対応する照射済み指標に変更する。本実施形態の照射計画は、5つの指標で構成されるスポット間隔ガイド90を用いて、10回の隣接的な照射を行う計画であり、照射スポットの適正間隔1つ分とは、スポット間隔ガイド90の隣り合う指標同士の間隔の半分の間隔に対応する。なお、本実施形態におけるスポット間隔ガイド90の隣り合う指標同士の間隔は、800μm(治療レーザ光と照準光のスポットサイズの2倍)である。術者は、スポット間隔ガイド90の複数の指標(図17(c)では、次回照準指標90A以外の5つの指標)の位置と、観察視野内の照準指標28の位置が再度一致するように、ジョイスティック部5およびコンタクトレンズの少なくとも一方(図17ではジョイスティック部5)を操作して、治療レーザ光の照準位置を調整する。図17(d)に示すように、スポット間隔ガイド90の複数の指標の位置と、照準指標28の位置が一致し、且つ、照準光の位置と治療対象部位の位置が一致すると、術者は治療レーザ光の照射実行指示を入力する。なお、本実施形態は一例であり、スポット間隔ガイド90の移動方向を逆(照準指標28の左端から右方向へと反時計回りに照射させてゆく誘導)にしてもよい。
【0147】
図17(e)に示すように、治療レーザ光の照射が完了すると、制御部60は、スポット間隔ガイド90の指標を、照射計画で定められた進行方向とは反対の方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけさらに移動させる。また、制御部60は、次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。図17(e)に示す例では、次回照準指標90Aの位置は、スポット間隔ガイド90における複数の指標のうち、治療の進行方向の反対側の端部から2番目の指標の位置と一致する。術者は、スポット間隔ガイド90の複数の指標の位置と、観察視野内の照準指標28の位置を再度一致させて、治療レーザ光の照射実行指示を入力する(図17(f)参照)。以上の手順が、1つの照射区画内の複数のスポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了まで繰り返される。つまり、スポット間隔ガイド90は、図9で例示した1つのスポット分の照準位置のシフトを繰り返すことを補助することで、複数の照射スポットの間隔を術者に把握させる。
【0148】
1つの照射区画に対する治療レーザ光の照射(図17および図18に示す例では、10回の治療レーザ光の照射)が完了すると、図18(a)に示す状態となる。制御部60は、スポット間隔ガイド90の指標の全体を、照射区画の角度だけ進行方向に自動的に回転させる。本実施形態で使用されるコンタクトレンズ26では、回転基部26Bが1回の回転操作で36度回転する(図7参照)。従って、制御部60は、照射計画に基づき、スポット間隔ガイド90の指標の全体を36度ずつ回転する。また、制御部60は、複数の指標のうち、照射計画で定められた治療の進行方向の反対側の端部に位置する指標に重なる位置に、次回照準指標90Aを表示させる。さらに、制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次回照準指標90Aが重なる位置以外の全ての指標を未照射指標とする。制御部60は、次回照準指標90Aが、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上の位置に対応するように、スポット間隔ガイド90の複数の指標および次回照準指標90Aを表示させる。その結果、観察像は図18(b)に示す状態となる。術者は、部分回転型のコンタクトレンズ26を1回操作することで、コンタクトレンズ26の反射面27を、治療の進行方向である時計回りに規定角度回転させる(図18(c)参照)。前述したように、部分回転型のコンタクトレンズ26の規定角度は、スポット間隔ガイド90を回転させる角度と一致する。その後、新たな照射区画内の複数のスポットの全てに対する治療レーザ光の照射が繰り返される。
【0149】
以上説明したように、スポット間隔ガイド90は、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットの適正間隔をユーザに把握させるために表示される。スポット間隔ガイド90は、照射計画の進捗に応じて内部表示部50に表示される。従って、術者は、接眼レンズ46を介して患者眼Eを観察したまま(つまり、接眼レンズ46から眼を離さずに)、スポット間隔ガイド90を確認し、確認したスポット間隔ガイド90を参考にして治療レーザ光の複数の照準位置を調整することができる。よって、術者は、治療レーザ光を照射する複数の照射スポットの間隔を、容易に適正間隔に近づけることができる。
【0150】
前述したように、本実施形態では、内部表示部50における表示領域の中心、観察光学系40の観察光軸、治療レーザ光の光軸、および照準光の光軸が、全て一致している。従って、内部表示部50は、治療レーザ光および照準光の光軸を中心とした適切な方向に、適切な角度でスポット間隔ガイド90を表示させることができる。換言すると、術者は、観察視野の中心、および内部表示部50の表示領域の中心に照準光を視認する。よって、照準光と、内部表示部50による表示内容に基づく治療レーザ光の照射位置の調整が、さらに容易になる。
【0151】
制御部60は、観察光学系40の倍率に応じて、内部表示部50に表示させるスポット間隔ガイド90の複数の指標の間隔を変化させる。つまり、制御部60は、観察光学系40の倍率が大きくなる程、スポット間隔ガイド90の指標の間隔を大きくする。この場合、観察倍率が変更されても、複数の照射スポットの適正間隔に応じた(本実施形態では、複数の照射スポットの適正間隔の目安となる5つの間隔指標28に応じた)スポット間隔ガイド90が、内部表示部50に表示される。
【0152】
制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標の間隔を、使用されるコンタクトレンズ26の間隔指標28の間隔に一致させる。従って、術者は、観察光学系40を介して観察されている間隔指標28の位置および方向と、内部表示部50に表示されているスポット間隔表示部90の位置および方向を共に参照しながら照準位置を調整することで、複数の治療レーザ光の照射位置をより適切に調整し易くなる。一例として、第4実施形態では、制御部60は、使用されるコンタクトレンズ26に関する情報に基づいて、スポット間隔ガイド90の表示方法(例えば、スポット間隔ガイド90における複数の指標の間隔および数、および、スポット間隔ガイド90を回転させる際の回転角度等)を変更する。従って、使用されるコンタクトレンズ26の間隔指標28に応じた適切なスポット間隔ガイド90が表示されるので、より円滑に治療が進行し易くなる。
【0153】
図17および図18に示すように、スポット間隔ガイド90は、コンタクトレンズ26の反射面27による、次回の照射スポットへの治療レーザ光の適切な反射方向に沿った形状(本実施形態では、複数の直線状の指標)を含む。制御部60は、内部表示部50に表示させるスポット間隔ガイド90の角度を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度でスポット間隔ガイド90を表示させる。従って、術者は、治療レーザ光の反射角度が、スポット間隔ガイド90によって示される方向に沿う方向となるように調整を行うことで、コンタクトレンズ26の反射面27の回転角度を容易に調整することができる。さらに、照射計画の進捗に応じた適切な角度でスポット間隔ガイド90が内部表示部50に表示されるので、より適切に照準位置が調整され易くなる。さらに、術者は、スポット間隔ガイド90の形状によって示される方向の先に間隔指標28が位置するように、コンタクトレンズ26の反射面27の回転角度を調整することで、より容易に回転角度を調整することができる。
【0154】
図17および図18に示すように、制御部60は、スポット間隔ガイド90において一定の間隔毎に複数配置される指標に加えて、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上に対応する位置に、次の照射スポットの位置を合わせるための次回照準指標90Aを、他の指標とは異なる態様で表示させる。制御部60は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ移動させる。従って、術者は、治療レーザ光の光軸(照準光を照射する場合には、照準光の光軸にも一致する)の位置を示す次回照準指標90Aを考慮して、次の治療レーザ光を照射させる組織上の位置を合わせることで、次の照準位置をさらに容易に調整することができる。
【0155】
スポット間隔ガイド90における複数の指標のうち、次回照準指標90A以外の指標は、既に治療レーザ光の照射が完了したスポットの少なくとも一部に対応する照射済み指標と、次回よりも後で治療レーザ光が照射されるスポットの少なくとも一部に対応する未照射指標のうちのいずれかとなる。制御部60は、次回照準指標90A、照射済み指標、および未照射指標の各々を、異なる態様で(つまり、術者によって識別可能な態様で)表示させる。従って、術者は、次回照準指標90A、照射済み指標、および未照射指標の位置関係を容易に把握することができるので、より円滑に治療を進行させ易くなる。
【0156】
図17に示すように、制御部60は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、スポット間隔ガイド90において一定の間隔毎に(本実施形態では、コンタクトレンズ26の間隔指標28と同じ間隔で)複数配置される指標を、照射計画で定められた進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ移動させる。術者は、治療レーザ光の照射が実行される毎に移動する複数の指標の位置が、観察光学系40を介して観察されている観察像上の一定の位置(本実施形態では、スポット間隔ガイド90の複数の指標が、観察像上の間隔指標28に一致する位置)となるように、照準位置を毎回調整することで、照準位置をさらに容易に調整することができる。
【0157】
前述したように、治療レーザ光が照射される患者眼の治療対象部位(図17および図18では線維柱帯TM)の形状は、弧状または環状である。制御部60は、スポット間隔ガイド90において一定の間隔毎に複数配置される指標の全体を回転させる。弧状または環状の治療対象部位の形状に合わせて、スポット間隔ガイド90の指標の全体が回転されることで、照射スポットの周方向の位置の違いに関わらず、照準位置の調整がスポット間隔ガイド90によって適切に補助される。
【0158】
詳細には、制御部60は、スポット間隔ガイド90の1回の回転角度を、照射区画(つまり、スポット間隔ガイド90の角度を固定した状態で、スポット間隔ガイド90に基づく複数回の治療レーザ光の照射が可能な角度範囲)の角度と一致させて、照射計画で定められた治療の進行方向にスポット間隔ガイド90を回転させる。その結果、弧状または環状の治療対象部位に対して、照射区画毎の治療レーザ光による治療が円滑に進行され易くなる。なお、本実施形態では、照射区画に応じたスポット間隔ガイド90の回転角度は、部分回転型のコンタクトレンズ26の反射面27が1回の操作で回転する規定角度と一致する。
【0159】
制御部60は、1つの照射区画内の複数のスポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了するまでは、治療レーザ光の照射が実行される毎に、スポット間隔ガイド90の指標を、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ自動的に移動させる。また、制御部60は、1つの照射区画内の複数のスポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了する毎に、スポット間隔ガイド90の指標の全体を、照射区画の角度だけ進行方向に自動的に回転させる。その結果、1つの照射区画内における治療レーザ光の照射だけでなく、複数の照射区画の各々に対する治療レーザ光の照射も、照射計画の進捗に応じて自動的且つ適切に補助される。
【0160】
また、制御部60は、複数の指標を回転させる毎に、複数の指標のうち、照射計画で定められた治療の進行方向とは反対側の端部に位置する指標と重なる位置(つまり、指標の回転後に最初に照射スポットの照準位置が合わせられる位置)に、次回照準指標90Aを表示させる。その結果、次回照準指標90Aの位置が、照射計画の進捗に応じて適切に変更されるので、治療がさらに円滑に進行し易くなる。さらに、制御部60は、複数の指標を回転させる毎に、複数の指標のうち、次回照準指標90Aが重ねられる位置以外の全ての指標を、未照射指標とする。
【0161】
図19を参照して、第4実施形態における治療制御処理について説明する。まず、制御部60は、患者眼Eに対する治療レーザ光の照射計画を取得する(S61)。S61で取得される治療計画では、使用される部分回転型のコンタクトレンズ26の規定角度(つまり、1つの照射区画分の角度)、各々の照射区画内で治療レーザ光が照射される回数M、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数N、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット、治療レーザ光の照射順(照射方向を含む)等が定められている。なお、コンタクトレンズ26の規定角度等の情報は、コンタクトレンズ26の種類を示す情報に基づいて取得されてもよい。
【0162】
制御部60は、1番目の照射区画の配置に対応する角度で、スポット間隔ガイド90を内部表示部50に表示させる(S62)。制御部60は、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射された累計回数を特定する全照射数カウンタ「n」の値を「0」とする(S63)。さらに、制御部60は、1つの照射区画内に対して治療レーザ光が照射された回数を特定する区画内照射数カウンタ「m」の値を「0」とする(S64)。制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次に治療レーザ光を照射するための指標となる次回照準指標90Aの表示位置を、照射順の進行方向の反対側の端部に位置する指標に重なる位置に設定する(S65)。
【0163】
制御部60は、治療レーザ光の照射実行指示が術者によって入力されたか否かを判断する(S67)。照射実行指示が入力されていなければ(S67:NO)、S67の判断が繰り返される。この間に、術者によって治療レーザ光の照準位置が調整される。治療レーザ光の照射実行指示が入力されると(S67:YES)、治療レーザ光が照射される(S68)。
【0164】
制御部60は、全照射数カウンタ「n」と、区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算する(S69)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」の値が、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数「N」に達したか否かを判断する(S72)。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了していなければ(つまり、「n」が「N」に達していなければ)(S72:NO)、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、照射スポットの進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ移動させる(S74)。なお、S74では、次回照準指標90Aを適正間隔1つ分だけ移動させる制御も実行される。その後、処理はS67へ戻る。
【0165】
1つの照射区画内の治療レーザ光の照射が完了すると(S73:YES)、制御部60は、内部回転型のコンタクトレンズ26の規定角度(つまり、1つの照射区画分の角度)だけ、スポット間隔ガイド90を回転させる(S77)。制御部60は、次回照準指標90Aおよび未照射指標の再設定を行い(S78)、処理はS64へ戻る。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると(S72:YES)、処理は終了する。
【0166】
<第5実施形態>
図20図23を参照して、第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理について説明する。第5実施形態では、第3および第4実施形態とは異なり、間隔指標28が形成されておらず、且つ部分回転型レンズではないコンタクトレンズを使用して治療が行われる場合について例示する。ただし、第5実施形態で例示する技術の少なくとも一部は、間隔指標28が形成されたコンタクトレンズ26を使用して治療が行われる場合にも適用することができる。第5実施形態で実行される治療レーザ光の照準位置の調整パターンは、1つの照射区画内に含まれる複数の照射スポットの各々に照準位置を調整する際に、主に被検眼に対する眼科用レーザ治療装置1の相対位置が移動されるパターン(以下、「移動調整パターン」という)である。ただし、移動調整パターンでは、被検眼に対する眼科用レーザ治療装置1の相対位置が移動されることに加えて、コンタクトレンズも回転されてもよい。第5実施形態における照射区画とは、スポット間隔ガイド90に基づいて、規定回数M(M≧2)の治療レーザ光の照射(つまり、規定個数の照射スポットの各々に対する治療レーザ光の照射)が実行される予定の、弧状領域(扇型の領域)の角度範囲である。第5実施形態においても、内部表示部50における表示領域の中心、観察光学系40の観察光軸、治療レーザ光の光軸、および照準光の光軸が、中心Oにおいて全て一致している。換言すると、術者は、観察視野の中心、および内部表示部50の表示領域の中心に、照準光のスポットAIを視認する。治療レーザ光は、照準光のスポットAIと同一のスポットに照射される。
【0167】
まず、図20を参照して、第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野の一例について説明する。第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1も、第4実施形態と同様に、スポット間隔ガイド90を内部表示部50に表示させることで、複数の照射スポットの間隔を術者に把握させることができる。スポット間隔ガイド90は、治療レーザ光を照射する予定の複数の照射スポットの適正間隔を術者に示す。
【0168】
図20に示すように、第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の間隔を、複数の照射スポットの適正間隔に一致させる。従って、術者は、治療レーザ光の照準位置を、前回の照射スポットから次回の照射スポットへ移動させる際の移動距離を、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の間隔に一致させることで、治療レーザ光の照射スポットの間隔を、容易に適正間隔に近づけることができる。よって、治療計画に応じた治療がより適切に行われ易くなる。
【0169】
第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、内部表示部50における表示領域のうち、治療レーザ光の照準位置(図20では、照準光AIが投影される位置)から離間した位置(図20では、僅かに上方に離間した位置)に、スポット間隔ガイド90を表示させる。眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々の、治療レーザ光の照準位置側の端部(図20では、複数の指標の各々の下端部)を、弧状または環状である患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯)のカーブに近似するカーブに沿って表示させる。第5実施形態では、スポット間隔ガイド90が治療レーザ光の照準位置(照準光AIが投影される位置)とは異なる位置に表示される(つまり、スポット間隔ガイド90が照準位置に重複しない)ので、術者は、照準位置における組織の状態を適切に把握したうえで、治療レーザ光の照射位置を設定することができる。さらに、複数の指標の各々における照準位置側の端部を、カーブに沿って(弧状に)配置することで、スポット間隔ガイド90が次の照準位置に対して適切な位置に配置された際の、複数の指標の各々の照準位置側端部(図20では下側の端部)と、弧状の治療部位の間の距離が近づきやすくなる。その結果、術者は、スポット間隔ガイド90を参照することで、治療レーザ光の次の照準位置をさらに適切に調整し易くなる。なお、図20に示す例では、スポット間隔ガイド90は、治療部位(本実施形態では線維柱帯)から見て虹彩側の反対側に表示されている。しかし、治療部位よりも虹彩側にスポット間隔ガイドが表示されてもよい。
【0170】
なお、患者眼Eの弧状の治療部位のカーブの形状は、患者眼によって多少の差はあるものの、患者眼毎に大幅に変化するものではない。従って、複数の指標の各々の照準位置側端部は、治療部位の平均的な形状に基づいて予め定められたカーブに沿って表示されていてもよい。一例として、本実施形態では、模型眼のうち、線維柱帯を模した部分(模擬線維柱帯)を所定の条件で観察する実験が、予め実行されている。実験によって観察された模擬線維柱帯の形状に沿って、複数の指標の各々の照準位置側端部を表示させるためのプログラムが、予め不揮発性メモリ65に記憶されている。複数の指標の各々の照準位置側端部を表示させるための処理の詳細については後述する。
【0171】
第4実施形態と同様に、眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90のうち、治療レーザ光の光軸上に対応する位置に、次の照射スポットの位置を合わせるための次回照準指標90Aを表示させる。眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標を、照射計画で定められた治療の進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。また、眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90内における次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、複数の照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。その結果、次回照準指標90Aの位置は、照準位置に対応する位置で維持されることになる。術者は、治療レーザ光の光軸(照準光を照射する場合には、照準光の光軸にも一致する)上の次回照準指標90Aの位置を考慮して、次の治療レーザ光を照射させる組織上の位置を合わせることで、次の照準位置をさらに容易に調整することができる。
【0172】
なお、スポット間隔ガイド90における複数の指標のうち、次回照準指標90A以外の指標は、既に治療レーザ光の照射が完了したスポットに対応する照射済み指標90Bと、次回よりも後で治療レーザ光が照射されるスポットに対応する未照射指標90Cのうちのいずれかとなる。眼科用レーザ治療装置1は、次回照準指標90A、照射済み指標90B、および未照射指標90Cの各々を、異なる態様で(つまり、術者によって識別可能な態様で)表示させる。従って、術者は、次回照準指標90A、照射済み指標90B、および未照射指標90Cの位置関係を容易に把握することができるので、より円滑に治療を進行させ易くなる。
【0173】
眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、スポット間隔ガイド90の全体を、照射計画で定められた進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。術者は、治療レーザ光の照射が実行される毎に移動する複数の指標の位置が、観察光学系40を介して観察されている観察像上の一定の位置となるように、照準位置を毎回調整することで、照準位置をさらに容易に調整することができる。前述したように、第5実施形態では、間隔指標28が形成されておらず、且つ部分回転型レンズではないコンタクトレンズを使用して治療が行われる場合について例示する。この場合でも、術者は、観察像に含まれる組織に存在する特徴部位と、スポット間隔ガイド90の複数の指標の位置関係を適宜調整することで、複数の照準位置の各々を適切に調整することができる。例えば、術者は、観察像上における1つの特徴部位を特定し、スポット間隔ガイド90が照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動する毎に(つまり、治療レーザ光の照射を実行する毎に)、複数の指標の中の特定の指標(例えば、最も左の指標、または、左から2番目の指標等)と、特定した特徴部位が一致するように、装置への移動指示を実行することも可能である。つまり、スポット間隔ガイド90に複数の指標が含まれていれば、複数の指標の少なくともいずれか(特定の指標)を特徴部位に一致させることで、複数の照準位置の各々が適切に調整される。
【0174】
第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々におけるいずれかの要素を、直線に沿って並べて表示させる。本実施形態では、眼科用レーザ治療装置1は、仮想的な直線状の角度基準線AL(実際には内部表示部50には表示されない)に沿って、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標90A,90B,90Cを並べて表示させる。本実施形態では、複数の指標の各々の重心を、角度基準線ALに沿って並べて表示させる。眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、スポット間隔ガイド90を、複数の指標の要素が並べられた直線状の方向に沿って移動させる。この場合、術者は、複数の指標の要素が並べられた方向と、治療レーザ光の照準位置を次の照射スポットに移動させる移動方向を合わせることで、より適切に治療を進めることができる。例えば、コンタクトレンズの反射面には、レンズの中心軸から外側に延びる方向に対して垂直なエッジ等が含まれる場合もある。この場合、術者は、観察像に写るコンタクトレンズのエッジの方向を、複数の指標の要素が並べられた直線状の方向に合わせることで、エッジの方向に沿って治療レーザ光の照準位置を移動させることも可能である。また、患者眼に接触させていたコンタクトレンズが、患者眼から一旦外れてしまった場合でも、術者は、観察像に写るコンタクトレンズのエッジの方向を、複数の指標の要素が並べられた直線状の方向に合わせることで、コンタクトレンズの位置および方向を容易に復帰させることも可能である。
【0175】
詳細には、本実施形態では、複数の指標の各々は、角度基準線ALに直交し、且つ、各指標の中心(重心)が角度基準線AL上に配置される。スポット間隔ガイド90の複数の指標が、次の照射スポットに対して適切な位置に配置されると、スポット間隔ガイド90の各指標は、角度基準線ALから、本実施形態における治療部位(線維柱帯)の近くまで延びる。その結果、スポット間隔ガイド90と治療部位の位置関係(例えば、特定の指標と、組織における特徴部位の間の位置関係等)が、より適切に把握され易くなる。また、スポット間隔ガイド90の複数の指標の各々の長さは、角度基準線ALを中心として対称となる。従って、術者は、複数の指標の各々の要素が配置されている方向(つまり、角度基準線ALが延びる方向)を把握し易くなるので、コンタクトレンズの反射面の角度を、適切な角度に調整し易くなる。例えば、角度基準線ALの方向が、環状または弧状の治療部位に接する方向となるようにコンタクトレンズの反射面の角度を調整することで、反射面の角度を適切な角度とすることも可能である。なお、スポット間隔ガイド90の複数の指標は、角度基準線ALから治療部位の近くまで延びていなくてもよい。治療部位の近くに表示される指標が適度な幅を持ち、治療部位のカーブの個体差を吸収できてもよい。
【0176】
第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照準ガイドとして外周部ガイド75を内部表示部50に表示させる。外周部ガイド75には、次回照準ガイド75A、照射完了ガイド75B、および未照射ガイド75Cが含まれている。外周部ガイド75には、第1実施形態で例示した外周部ガイド75(図10参照)と同様の構成を採用できる。従って、外周部ガイド75の詳細な説明は省略する。
【0177】
また、第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照射計画で定められている照射スポットの全数を表示する。図20に示す例では、「SHOTS」の分母の数が、照射スポットの全数となる。また、治療が完了した照射スポットの数(つまり、治療レーザ光の照射が完了した照射スポットの数と、照射がスキップされた照射スポットの合計数)が表示される。図20に示す例では、「SHOTS」の分子の数が、治療が完了した照射スポットの数となる。治療レーザ光の照射、および、照射のスキップが実行される毎に、「SHOTS」の分子の数に「1」が加算される。また、図20に示す例では、使用されている照準光AIの態様と、治療レーザ光のエネルギーも表示されている。
【0178】
図21および図22に示す例を用いて、スポット間隔ガイド90を利用した治療の流れについて説明する。図21および図22では、スポット間隔ガイド90の表示の遷移の理解を容易にするために、術者の観察視野のうち、内部表示部50に表示されるスポット間隔ガイド90の近傍以外の部分は省略されている。なお、図21および図22は、術者が予め設定した照射計画に基づき、下方(図21)から左斜め下方(図22)にかけての実際の繊維柱帯の領域に対し、時計回りの隣接的な照射を行う一例を示している。図21および図22では、下方の線維柱帯がコンタクトレンズの反射面によって反射されて、術者の観察視野に入り込んでいる。従って、図21および図22では、上下が反転し、下方の線維柱帯が写り込んでいる。図21および図22における反射面上で、照射スポットに対する治療が右から左に(つまり、反時計回りに)進んでいくと、実際の下方の線維柱帯では、照射スポットに対する治療が右から左に(つまり、時計回りに)進行する。
【0179】
まず、図21(a)に示すように、制御部60は、内部表示部50に表示させるスポット間隔ガイド90の角度を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度でスポット間隔ガイド90を表示させる。図21に示すスポット間隔ガイド90は、実際の繊維柱帯TMの下方領域に対し、規定回数である10回(つまり、最大で10回)の照射を行うためのガイドである。図21(a)に示すスポット間隔ガイド90の指標は、繊維柱帯TMの下方領域の治療を行うために、水平方向に配列されている。制御部60は、スポット間隔ガイド90中に、次の治療レーザ光の照準位置を合わせるための次回照準指標90Aを識別可能に表示させる。図21(a)に示す例では、制御部60は、まず、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、照射計画で定められた治療の進行方向に対して反対側の端部に位置する指標(図21(a)では、右側の端部に位置する指標)の位置に、次回照準指標90Aを表示させる。スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次回照準指標90Aに重なる位置以外の指標は、次回よりも後で治療レーザ光が照射されるスポットの少なくとも一部に対応する未照射指標とされる。さらに、制御部60は、次回照準指標90Aが、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上の位置に対応するように、スポット間隔ガイド90の複数の指標を表示させる。前述したように、次回照準指標90Aを表示させる位置は、治療レーザ光の光軸に完全に一致している必要は無い。つまり、次回照準指標90Aは、治療レーザ光が照射される照準位置を術者に認識させることができるように、治療レーザ光の照準位置に対応する位置に表示されればよい。
【0180】
術者は、スポット間隔ガイド90に含まれる次回照準指標90Aの位置が、患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯)における最初の治療レーザ光の照射スポットに対応するように、コンタクトレンズの回転角度、および、ジョイスティック部5によって変更される患者眼Eとレーザ照射光学系10の相対位置の少なくとも一方を調整する。ここで、観察像に含まれる患者眼Eの組織に何らかの特徴部位が存在する場合には、術者は、スポット間隔ガイド90における複数の指標の少なくともいずれか(特定の指標)と、組織の特徴部位の位置関係を把握するのが望ましい。この場合、以後の治療手順において、術者は、特定の指標と、組織の特徴部位の位置関係を、同一の位置関係に調整することで、複数の照射スポットの各々に対する治療を円滑に進行させることができる。図21(b)に示すように、術者は、次回照準指標90Aの位置を、患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯)における最初の治療レーザ光の照射スポットに対応する位置に合わせた状態で、治療レーザ光の照射実行指示を入力する。その結果、治療レーザ光は、レーザ照射光学系10の光軸が通過するスポットSに照射される。
【0181】
図21(c)に示すように、治療レーザ光の照射が完了すると、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全ての指標を、照射計画で定められた治療の進行方向(図21では、時計回りである左方向)とは反対の方向(図21では右方向)に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。また、制御部60は、次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。その結果、次回照準指標90Aの位置は、照準位置に対応する位置で維持されることになる。さらに、制御部60は、前回の治療レーザ光の照射時に次回照準指標90Aが重ねられていた指標を、照射済み指標に変更する。図21(d)に示すように、術者は、主にジョイスティック部5を操作し、スポット間隔ガイド90の複数の指標の各々の間隔分だけ、照射計画で定められた治療の進行方向に、観察像に写る組織を移動させることで、次の治療レーザ光の照準位置を調整することができる。また、術者は、複数の指標の少なくともいずれか(特定の指標)と、組織の特徴部位の位置関係を、前回と同一の位置関係に調整することで、次の治療レーザ光の照準位置を調整することも可能である。従って、照準位置が適切に調整され易い。術者は、次回照準指標90Aの位置を、次の治療レーザ光の照準位置に対応する位置に合わせた状態(図21(d)に示す状態)で、治療レーザ光の照射実行指示を入力する。
【0182】
図21(e)に示すように、2番目の照射スポットに対する治療レーザ光の照射が完了すると、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全ての指標を、照射計画で定められた進行方向とは反対の方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけさらに移動させる。また、制御部60は、次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。その結果、次回照準指標90Aの位置は、照準位置に対応する位置で維持されることになる。術者は、次回照準指標90Aの位置を、次の治療レーザ光の照射スポットに対応する位置に合わせた状態(図21(f)に示す状態)で、治療レーザ光の照射実行指示を入力する。以上の手順が、1つの照射区画内の複数のスポット(図21および図22に示す例では、10個のスポット)の全てに対する治療レーザ光の照射が完了まで繰り返される。前述したように、照射区画とは、スポット間隔ガイド90に基づいて規定回数M回(M≧2、本実施形態ではM=10)の治療レーザ光の照射が実行される予定の、弧状領域の角度範囲である。
【0183】
1つの照射区画に対する規定回数M回の治療レーザ光の照射(図21および図22に示す例では、10回の治療レーザ光の照射)が完了すると、図22(a)に示す状態となる。制御部60は、スポット間隔ガイド90の指標の全体を、1つの照射区画の角度だけ進行方向に自動的に回転させる。また、制御部60は、複数の指標のうち、照射計画で定められた治療の進行方向の反対側の端部に位置する指標に重なる位置に、次回照準指標90Aを表示させる。さらに、制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次回照準指標90Aが重なる位置以外の全ての指標を未照射指標とする。制御部60は、次回照準指標90Aが、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上の位置に対応するように、スポット間隔ガイド90の複数の指標および次回照準指標90Aを表示させる。その結果、観察像は図22(b)に示す状態となる。術者は、コンタクトレンズの反射面を、治療の進行方向である時計回りに回転させる(図22(c)参照)。前述したように、その後、新たな照射区画内の複数のスポットの全てに対する治療レーザ光の照射が繰り返される。
【0184】
なお、第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了する前に(つまり、照射区画内の照射スポットに対する治療の途中で)、スポット間隔ガイド90の全体を回転させるためのユーザからの指示を入力することも可能である。眼科用レーザ治療装置1は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療が完了する前に、スポット間隔ガイド90の全体の回転指示が入力されると、治療中であった照射区画内で治療が進行した範囲に対応する角度だけ、スポット間隔ガイド90の全体を回転させる。従って、術者は、各々の照射区画内における治療が全て完了していなくても、スポット間隔ガイド90の全体を回転させたうえで、次の照射区画内における治療に移行することもできる。
【0185】
また、第5実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照射計画で定められている次の照射スポットへの治療レーザ光の照射を省略するための、ユーザからの指示(以下、「スキップ指示」という)を入力することも可能である。眼科用レーザ治療装置1は、スキップ指示が入力されると、治療レーザ光の照射を行わずに、スポット間隔ガイド90を、照射計画で定められた進行方向、または、進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。従って、術者は、治療レーザ光を照射するのが適切でない非照射箇所が存在する場合等にスキップ指示を入力することで、非照射箇所への治療レーザ光の照射をスキップさせて、その後に予定されている照射スポットから治療を再開することも可能である。よって、より円滑に治療が進行し易くなる。つまり、眼科用レーザ治療装置1は、治療計画で定められた複数の照射スポットの一部に対する治療レーザ光の照射ステップをスキップするスキップ手段を備える。従って、治療計画により利便性(例えば、治療レーザ光の照射のガイド等)と、スキップ手段による臨機応変な治療(例えば、治療計画に沿った治療の開始後に発見された非照射部位への治療レーザ光の照射を省略する手順等)が、適切に両立され易くなる。
【0186】
以上説明したように、第5実施形態においても、複数の照射スポットの適正間隔をユーザに把握させるためのスポット間隔ガイド90が、照射計画の進捗に応じて内部表示部50に表示される。従って、術者は、接眼レンズ46を介して患者眼Eを観察したまま(つまり、接眼レンズ46から眼を離さずに)、スポット間隔ガイド90を確認し、確認したスポット間隔ガイド90を参考にして治療レーザ光の複数の照準位置を調整することができる。
【0187】
また、制御部60は、観察光学系40の倍率に応じて、内部表示部50に表示させるスポット間隔ガイド90の複数の指標の間隔を変化させる。従って、観察倍率が変更されても、複数の照射スポットの適正間隔に応じたスポット間隔ガイド90が、内部表示部50に表示される。
【0188】
図23を参照して、第5実施形態における治療制御処理について説明する。まず、制御部60は、患者眼Eに対する治療レーザ光の照射計画を取得する(S81)。S81で取得される治療計画では、隣接する2つの照射スポットの間の角度、1つの照射区画分の角度、各々の照射区画内で治療レーザ光が照射される回数M、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数N、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット、治療レーザ光の照射順(照射方向を含む)等が定められている。なお、環状または弧状の治療対象部位の角度範囲をR度(R≦360)とし、治療対象部位に治療レーザ光を照射する照射スポットの数をNとすると、隣接する2つの照射スポットの間の角度は「R/N」度となる。また、環状または弧状の治療対象部位におけるR度の範囲を、S個の照射区画に分ける場合、1つの照射区画分の角度は「R/S」度となる。
【0189】
制御部60は、1番目の照射区画の配置に対応する角度で、スポット間隔ガイド90を内部表示部50に表示させる(S82)。制御部60は、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射された累計回数を特定する全照射数カウンタ「n」の値を「0」とする(S83)。さらに、制御部60は、1つの照射区画内で治療レーザ光が照射された回数を特定する区画内照射数カウンタ「m」の値を「0」とする(S84)。制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次に治療レーザ光を照射するための指標となる次回照準指標90Aの表示位置を、照射順の進行方向の反対側の端部に位置する指標に重なる位置に設定する(S85)。
【0190】
ここで、S82、および後述するS94において、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々の照準位置側の端部をカーブに沿って表示させる方法の一例について説明する。まず、制御部60は、次に治療レーザ光を照射するための指標(つまり、次回照準指標90A)の長さ(つまり、図20に示す角度基準線ALに直交する方向の長さ)を、最も短い初期値に設定する。制御部60は、複数の指標のうち、次回照準指標90A以外の指標の長さ(角度基準線ALに直交する方向の長さ)を、次回照準指標90Aとの間の間隔が長くなる程、次回照準指標90Aの長さとして設定した初期値から増加するように設定する。次回照準指標90Aとの間の間隔と、各々の指標の長さの関係は、複数の指標の各々の照準位置側端部の位置が、実験によって観察された模擬線維柱帯の形状に沿って配置されるように、予め定められていてもよい。また、次回照準指標90Aとの間の間隔に比例して、各々の指標の長さが初期値から増加するように、各々の指標の長さが算出されてもよい。全ての指標の長さが設定されると、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々が、設定された長さで内部表示部50に表示される。
【0191】
制御部60は、治療レーザ光の照射実行指示が術者によって入力されたか否かを判断する(S87)。照射実行指示が入力されていなければ(S87:NO)、制御部60は、照射計画で定められている次の照射スポットへの治療レーザ光の照射省略指示(つまり、「スキップ指示」)が入力されたか否かを判断する(S88)。スキップ指示が入力されていなければ(S88:NO)、制御部60は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了する前の、スポット間隔ガイド90の全体を回転させる指示(以下、「途中回転指示」という)が入力されたか否かを判断する(S89)S87~S89においていずれの指示も入力されていなければ、S87~S89の判断が繰り返されて待機状態となる。この間に、術者によって治療レーザ光の照準位置が調整される。
【0192】
治療レーザ光の照射実行指示が入力されると(S87:YES)、治療レーザ光が照射される(S90)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」と、区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算する(S91)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」の値が、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数「N」に達したか否かを判断する(S92)。全ての照射スポットへの治療レーザ光の規定回数の照射(本実施形態では、照射がスキップされた回数も含む)が完了していなければ(つまり、「n」が「N」に達していなければ)(S92:NO)、制御部60は、治療中の照射区画内への規定回数の治療レーザ光の照射が完了したか否か(つまり、区画内照射数カウンタ「m」の値が、1つの照射区画内への治療レーザ光の照射回数「M」に達したか否か)を判断する(S93)。治療中の照射区画内への治療レーザ光の照射が完了していなければ(S93:NO)、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、照射スポットの進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ移動させる(S94)。なお、S94では、次回照準指標90Aを適正間隔1つ分だけ移動させる制御も実行される。その後、処理はS87へ戻る。
【0193】
1つの照射区画内への治療レーザ光の照射が完了すると(S93:YES)、制御部60は、1つの照射区画分の角度(規定角度)だけ、スポット間隔ガイド90の全体を回転させる(S95)。制御部60は、次回照準指標90Aおよび未照射指標の再設定を行い(S98)、処理はS84へ戻る。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると(S92:YES)、処理は終了する。
【0194】
また、治療レーザ光の照射実行指示が入力される前に、スキップ指示が入力されると(S88:YES)、制御部60は、全照射数カウンタ「n」と、区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算し(S91)、S92~S95,S98の処理を実行する。つまり、全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了していなければ(「n」が「N」に達していなければ)(S92:NO)、制御部60は、治療レーザ光を照射せずに、スポット間隔ガイド90の全体を、照射スポットの進行方向、または進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ移動させる(S94)。スポット間隔ガイド90を移動させる方向は、術者によって入力される指示に応じて定められてもよい。また、「n」が「N」に達していれば(S92:YES)、制御部60は、規定角度だけスポット間隔ガイド90の全体を回転させて(S95)、次回照準指標90Aおよび未照射指標の再設定を行う(S98)。
【0195】
また、治療レーザ光の照射実行指示が入力される前に、途中回転指示が入力されると(S89:YES)、制御部60は、治療中であった照射区画内で治療が進行した範囲に対応する角度を、スポット間隔ガイド90を回転させる角度として算出する(S96)。S96における回転角度の具体的な算出方法は、適宜選択できる。例えば、計画された複数の照射スポットが通過する仮想円の中心から見た場合の、隣接する2つの照射スポットの間の角度をA度、治療中であった照射区画内で治療が進行した照射スポットの数をm個(本実施形態では、区画内照射数カウンタmの値に一致する)とする。本実施形態では、制御部60は、治療中であった照射区画内で治療が進行した範囲に対応する角度を、「A度×m個」によって算出する。治療が進行した照射スポットの数「m個」には、スキップ指示によって治療レーザ光の照射がスキップされた照射スポットの数も含まれる。制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、S96で算出された角度だけ、治療計画で定められている進行方向に回転させる(S97)。なお、治療が進行した照射スポットの数「m個」が「0」である場合には、S96で算出される角度は「0度」となるため、S97ではスポット間隔ガイド90は回転されない。その後、次回照準指標90Aおよび未照射指標の再設定処理が行われて(S98)、処理はS84へ戻る。
【0196】
<第6実施形態>
図20図24図27を参照して、第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1が実行する治療制御処理について説明する。第6実施形態では、第5実施形態と同様に、間隔指標28が形成されておらず、且つ部分回転型レンズではないコンタクトレンズを使用して治療が行われる場合について例示する。ただし、第6実施形態で例示する技術の少なくとも一部は、間隔指標28が形成されたコンタクトレンズ26を使用して治療が行われる場合にも適用することができる。第6実施形態で実行される治療レーザ光の照準位置の調整パターンは、1つの照射区画内に含まれる複数の照射スポットの各々に照準位置を調整する際に、主にコンタクトレンズが回転されるパターン(以下、「回転調整パターン」という)である。ただし、回転調整パターンでは、コンタクトレンズが回転されることに加えて、被検眼に対する眼科用レーザ治療装置1の相対位置も移動されてもよい。第6実施形態における照射区画とは、スポット間隔ガイド90に基づいて、規定回数M(M≧2)の治療レーザ光の照射(つまり、規定個数の照射スポットの各々に対する治療レーザ光の照射)が実行される予定の、弧状領域(扇型の領域)の角度範囲である。第6実施形態においても、内部表示部50における表示領域の中心、観察光学系40の観察光軸、治療レーザ光の光軸、および照準光の光軸が、中心Oにおいて全て一致している。換言すると、術者は、観察視野の中心、および内部表示部50の表示領域の中心に、照準光のスポットAIを視認する。治療レーザ光は、照準光のスポットAIと同一のスポットに照射される。
【0197】
第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1による治療中の、術者の観察視野は、図20に示した第5実施形態の観察視野と同様となる。図20に示すように、第6実施形態においても、眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90を内部表示部50に表示させることで、複数の照射スポットの間隔を術者に把握させることができる。眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の間隔を、複数の照射スポットの適正間隔に一致させる。眼科用レーザ治療装置1は、内部表示部50における表示領域のうち、治療レーザ光の照準位置(図20では、照準光AIが投影される位置)から離間した位置(図20では、僅かに上方に離間した位置)に、スポット間隔ガイド90を表示させる。眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々の、治療レーザ光の照準位置側の端部(図20では、複数の指標の各々の下端部)を、弧状または環状である患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯)のカーブに近似するカーブに沿って表示させる。スポット間隔ガイド90は、治療レーザ光の照準位置(照準光AIが投影される位置)とは異なる位置に表示される。
【0198】
図20に示すように、第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90のうち、治療レーザ光の光軸上に対応する位置に、次の照射スポットの位置を合わせるための次回照準指標90Aを表示させる。眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射が実行される毎に、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標を移動および回転させる(詳細は後述する)。また、眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90内における次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、複数の照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。術者は、治療レーザ光の光軸上の次回照準指標90Aの位置を考慮して、次の治療レーザ光を照射させる組織上の位置を合わせることで、次の照準位置をさらに容易に調整することができる。
【0199】
スポット間隔ガイド90における複数の指標のうち、次回照準指標90A以外の指標は、既に治療レーザ光の照射が完了したスポットに対応する照射済み指標90Bと、次回よりも後で治療レーザ光が照射されるスポットに対応する未照射指標90Cのうちのいずれかとなる。眼科用レーザ治療装置1は、次回照準指標90A、照射済み指標90B、および未照射指標90Cの各々を、異なる態様で(つまり、術者によって識別可能な態様で)表示させる。
【0200】
図20に示すように、第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々におけるいずれかの要素を、直線に沿って並べて表示させる。本実施形態では、眼科用レーザ治療装置1は、仮想的な直線状の角度基準線AL(実際には内部表示部50には表示されない)に沿って、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標90A,90B,90Cを並べて表示させる。本実施形態では、複数の指標の各々の重心を、角度基準線ALに沿って並べて表示させる。この場合、術者は、複数の指標の要素が並べられた方向と、治療レーザ光の照準位置を次の照準位置に移動させる移動方向を合わせることで、より適切に治療を進めることができる。詳細には、複数の指標の各々は、角度基準線ALに直交し、且つ、各指標の中心(重心)が角度基準線AL上に配置される。スポット間隔ガイド90の複数の指標の各々の長さは、角度基準線ALを中心として対称となる。従って、術者は、複数の指標の各々の要素が配置されている方向(つまり、角度基準線ALが延びる方向)を把握し易くなるので、コンタクトレンズの反射面の角度を、適切な角度に調整し易くなる。
【0201】
第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照準ガイドとして外周部ガイド75を内部表示部50に表示させる。外周部ガイド75には、次回照準ガイド75A、照射完了ガイド75B、および未照射ガイド75Cが含まれている。外周部ガイド75には、第1実施形態で例示した外周部ガイド75(図10参照)と同様の構成を採用できる。第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照射計画で定められている照射スポットの全数を表示する。また、治療が完了した照射スポットの数(つまり、治療レーザ光の照射が完了した照射スポットの数と、照射がスキップされた照射スポットの合計数)が表示される。また、図20に示す例では、使用されている照準光AIの態様と、治療レーザ光のエネルギーも表示されている。
【0202】
図24図26に示す例を用いて、第6実施形態におけるスポット間隔ガイド90を利用した治療の流れについて説明する。図24および図25では、スポット間隔ガイド90の表示の遷移の理解を容易にするために、術者の観察視野のうち、内部表示部50に表示されるスポット間隔ガイド90の近傍以外の部分は省略されている。なお、図24および図25は、術者が予め設定した照射計画に基づき、下方(図24)から左斜め下方(図25)にかけての実際の繊維柱帯の領域に対し、時計回りの隣接的な照射を行う一例を示している。図24および図25では、下方の線維柱帯がコンタクトレンズの反射面によって反射されて、術者の観察視野に入り込んでいる。従って、図24および図25では、上下が反転し、下方の線維柱帯が写り込んでいる。図24および図25における反射面上で、照射スポットに対する治療が右から左に(つまり、反時計回りに)進んでいくと、実際の下方の線維柱帯では、照射スポットに対する治療が右から左に(つまり、時計回りに)進行する。
【0203】
まず、図24(a)に示すように、制御部60は、内部表示部50に表示させるスポット間隔ガイド90の角度(詳細には、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標を並べる角度)を、照射計画の進捗に応じて決定し、決定した角度でスポット間隔ガイド90を表示させる。図24に示すスポット間隔ガイド90は、実際の繊維柱帯TMの下方領域に対し、規定回数である10回(つまり、最大で10回)の照射を行うためのガイドである。図24(a)に示すスポット間隔ガイド90の複数の指標は、繊維柱帯TMの下方領域の治療を行うために、水平方向に配列されている。つまり、図24(a)に示す状態では、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標は、水平方向に延びる1番目の基準線R1に沿って配列されている。
【0204】
制御部60は、スポット間隔ガイド90中に、次の治療レーザ光の照準位置を合わせるための次回照準指標90Aを識別可能に表示させる。図24(a)に示す例では、制御部60は、まず、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、照射計画で定められた治療の進行方向に対して反対側の端部に位置する指標(図24(a)では、右側の端部に位置する指標)の位置に、次回照準指標90Aを表示させる。スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次回照準指標90Aに重なる位置以外の指標は、次回よりも後で治療レーザ光が照射されるスポットの少なくとも一部に対応する未照射指標とされる。さらに、制御部60は、次回照準指標90Aが、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上の位置に対応するように、スポット間隔ガイド90の複数の指標を表示させる。前述したように、次回照準指標90Aを表示させる位置は、治療レーザ光の光軸に完全に一致している必要は無い。つまり、次回照準指標90Aは、治療レーザ光が照射される照準位置を術者に認識させることができるように、治療レーザ光の照準位置に対応する位置に表示されればよい。
【0205】
術者は、スポット間隔ガイド90に含まれる次回照準指標90Aの位置が、患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯)における最初の治療レーザ光の照射スポットに対応するように、主にコンタクトレンズの回転角度、および、ジョイスティック部5によって変更される患者眼Eとレーザ照射光学系10の相対位置の少なくとも一方を調整する。図24(b)に示すように、術者は、次回照準指標90Aの位置を、患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯)における最初の治療レーザ光の照準位置に対応する位置に合わせた状態で、治療レーザ光の照射実行指示を入力する。その結果、治療レーザ光は、レーザ照射光学系10の光軸が通過するスポットSに照射される。なお、図24(b)に示す状態では、コンタクトレンズの反射面のうち、中央部よりも紙面右側において治療レーザ光が反射される。
【0206】
図24(c)に示すように、治療レーザ光の照射が完了すると、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全ての指標を、照射計画で定められた治療の進行方向(図24では、時計回りである左方向)とは反対の方向(図24では右方向)に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。また、制御部60は、治療レーザ光の照射が完了すると、スポット間隔ガイド90の全ての指標を、照射計画で定められた治療の進行方向(図24では時計回り)に、単位角度Tだけ回転させる。単位角度Tとは、治療レーザ光の照準位置を、前回の照射スポットから次の照射スポットに移動させるために必要なコンタクトレンズの回転角度である。つまり、制御部60は、図24(a),(b)の状態で基準線R1に沿って配列していたスポット間隔ガイド90の全体を、基準角度回転させることで、2番目の基準線R2に沿って配列させる(図24(c),(d)参照)。その結果、コンタクトレンズの回転操作によって照射位置の調整が可能な、1つの照射区画内における複数回の治療レーザ光の照射が、照射計画の進捗に応じて適切に補助される。
【0207】
制御部60は、次回照準指標90Aの位置を、照射計画で定められた進行方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。その結果、次回照準指標90Aの位置は、照準位置に対応する位置で維持されることになる。さらに、制御部60は、前回の治療レーザ光の照射時に次回照準指標90Aが重ねられていた指標を、照射済み指標に変更する。図24(d)に示すように、術者は、コンタクトレンズを前述した基準角度回転させることで、治療レーザ光の照準位置を、前回の照射スポットから次の照射スポットに調整することができる。また、術者は、複数の指標の少なくともいずれか(特定の指標)と、組織の特徴部位の位置関係を、前回と同一の位置関係に調整することで、次の治療レーザ光の照準位置を調整することも可能である。従って、照準位置が適切に調整され易い。術者は、次回照準指標90Aの位置を、次の治療レーザ光の照準位置に対応する位置に合わせた状態(図24(d)に示す状態)で、治療レーザ光の照射実行指示を入力する。なお、図24(d)に示す状態では、コンタクトレンズの反射面のうち、図24(b)に示す状態よりも中心に近い位置において治療レーザ光が反射される。本実施形態では、同一の照射区画内で治療レーザ光の照射が繰り返されると、前半ではコンタクトレンズの反射面の紙面右側を治療レーザ光が反射し、後半では紙面左側を治療レーザ光が反射する。つまり、本実施形態では、治療レーザ光を反射させる際に、コンタクトレンズの反射面の中央部近傍が、左右均等に使用され易い。
【0208】
図24(e)に示すように、2番目の照射スポットに対する治療レーザ光の照射が完了すると、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全ての指標を、照準計画で定められた進行方向とは反対の方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけさらに移動させる。また、制御部60は、2番目の照射スポットに対する治療レーザ光の照射が完了すると、スポット間隔ガイド90の全ての指標を、照射計画で定められた治療の進行方向に、単位角度Tだけ回転させる。つまり、制御部60は、図24(c),(d)の状態で基準線R2に沿って配列していたスポット間隔ガイド90の全体を、基準角度回転させることで、3番目の基準線R3に沿って配列させる(図24(e),(f)参照)。制御部60は、次回照準指標90Aの位置を、照準計画で定められた進行方向に、照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。その結果、次回照準指標90Aの位置は、照準位置に対応する位置で維持されることになる。術者は、コンタクトレンズを基準角度回転させることで、次回照準指標90Aの位置を、次の治療レーザ光の照射スポットに対応する位置に合わせる(図24(f)参照)。その後、術者は治療レーザ光の照射実行指示を入力する。以上の手順が、1つの照射区画内の複数のスポット(図24および図25に示す例では、10個のスポット)の全てに対する治療レーザ光の照射が完了まで繰り返される。前述したように、照射区画とは、スポット間隔ガイド90に基づいて規定回数M回(M≧2、本実施形態ではM=10)の治療レーザ光の照射が実行される予定の、弧状領域の角度範囲である。
【0209】
1番目の照射区画に対する規定回数M回の治療レーザ光の照射(図24および図25に示す例では、10回の治療レーザ光の照射)が完了する直前では、観察像は図25(a)に示す状態となる。図25(a)に示す状態では、スポット間隔ガイド90は、1番目の照射スポットへの治療レーザ光の照射前(図24(a),(b)参照)に比べて、単位角度T×(M-1)度だけ回転されている。つまり、図25(a)に示す状態では、スポット間隔ガイド90の全体が10番目の基準線R10に沿って配列されている。1番目の照射区画内のM個の照射スポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了すると(つまり、10番目の照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると)、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を照射計画で定められた進行方向に回転させることで、スポット間隔ガイド90の全体の角度を、次の照射区画の最初の照射スポットに対応する角度に調整する。例えば、環状または弧状の治療部位におけるR度(R≦360)の範囲をS個の照射区画に分け、各々の照射区画内で治療レーザ光をM回照射する場合を想定する。1つの照射区画内の治療中において、M回の治療レーザ光の照射が完了した時点では、スポット間隔ガイド90の回転角度の合計値は、前述した単位角度をTとすると、(T×(M-1))度となる。また、1つの照射区画の角度範囲はR/S度である。従って、制御部は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了した際に、(R/S-T×(M-1))度だけスポット間隔ガイド90を回転させる。その結果、図25(b),(c)に示す状態では、スポット間隔ガイド90の全体は、11番目の基準線R11に沿って配置されている。また、制御部60は、複数の指標のうち、照射計画で定められた治療の進行方向の反対側の端部に位置する指標に重なる位置に、次回照準指標90Aを表示させる。さらに、制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次回照準指標90Aが重なる位置以外の全ての指標を未照射指標とする。制御部60は、次回照準指標90Aが、レーザ照射光学系10によって照射される治療レーザ光の光軸上の位置に対応するように、スポット間隔ガイド90の複数の指標および次回照準指標90Aを表示させる。その結果、観察像は図25(b)に示す状態となる。術者は、コンタクトレンズの反射面を回転させると共に、ジョイスティックを操作して治療レーザ光の光軸の位置を移動させることで、治療レーザ光の照準位置を、次回照準指標90Aの位置に合わせる(図25(c)参照)。その後、2番目の照射区画内の複数のスポットの全てに対する治療レーザ光の照射が繰り返される。
【0210】
なお、第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了する前に(つまり、照射区画内の照射スポットに対する治療の途中で)、スポット間隔ガイド90の全体を回転させるためのユーザからの指示を入力することも可能である。眼科用レーザ治療装置1は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療が完了する前に、スポット間隔ガイド90の全体の回転指示が入力されると、治療中であった照射区画内で治療が進行した範囲に対応する角度だけ、スポット間隔ガイド90の全体を回転させる。
【0211】
また、第6実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照射計画で定められている次の照射スポットへの治療レーザ光の照射を省略するための、ユーザからの指示(以下、「スキップ指示」という)を入力することも可能である。眼科用レーザ治療装置1は、スキップ指示が入力されると、治療レーザ光の照射を行わずに、スポット間隔ガイド90を、照準計画で定められた進行方向、または、進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポットの適正間隔1つ分だけ移動させる。
【0212】
図26を参照して、被検眼に対する装置の相対位置の移動(つまり、治療レーザ光の光軸の移動)を行わない場合の、治療レーザ光の照準位置を次の照射スポットに移動させるために必要なコンタクトレンズの回転角度(単位角度T)について説明する。図26に示す例では、環状または弧状の治療対象部位(本実施形態では線維柱帯TM)におけるR度(本実施形態では360度)の範囲内に、治療レーザ光を等間隔でN回(本実施形態では100回)照射する場合を想定する。また、環状または弧状の治療対象部位を通過する仮想的な近似円(つまり、計画された複数の照射スポットSが通過する円)を想定する。被検眼を視軸に沿う方向から見た状態(図26に示す状態)において、コンタクトレンズの反射面27によって反射された治療レーザ光が、近似円の中心Cと常に交差すれば、単位角度TはR/N度(本実施形態では3.6度)となる。この場合、被検眼を視軸に沿う方向から見ると、治療レーザ光の旋回半径は、近似円の半径(つまり、中心Cから照射スポットSまでの距離)に一致する。
【0213】
しかしながら、被検眼に対する装置の相対位置の移動を行わずに、コンタクトレンズの回転操作のみによって照準位置を次の照射スポットに移動させる場合には、患者眼の視軸の方向から見ても、治療レーザ光が近似円の中心Cと常に交差するとは限らない。つまり、回転調整パターンでは、治療レーザ光は、コンタクトレンズの反射面27における反射位置RPを中心に旋回される。実際に、図26に示す例では、コンタクトレンズの反射面27の角度を、1番目の照射スポットSAに治療レーザ光を照射するための角度(27Aで示す角度)とすれば、患者眼の視軸の方向から見た場合に、治療レーザ光は近似円の中心Cと交差する。しかし、コンタクトレンズの反射面27の角度を、2番目の照射スポットSBに治療レーザ光を照射するための角度(27Bで示す角度)とすると、患者眼の視軸の方向から見た場合に、治療レーザ光は近似円の中心Cと交差しない。また、コンタクトレンズの反射面27の角度を、3番目の照射スポットSCに治療レーザ光を照射するための角度(27Cで示す角度)とした場合も、患者眼の視軸の方向から見た場合に、治療レーザ光は近似円の中心Cと交差しない。図26のように、治療レーザ光の光軸の位置を維持したまま、コンタクトレンズ27の反射面27の角度が回転されると、治療レーザ光は、反射面27における反射位置RPを中心に旋回される。
【0214】
図26に示すように、治療レーザ光の光軸の位置を維持したまま、コンタクトレンズ27の反射面27の角度を回転させる場合、被検眼を視軸に沿う方向から見ると、治療レーザ光の旋回半径(反射位置RPから照射スポットSA,SB,SCまでの距離)は、前述した近似円の半径(中心Cから照射スポットSA,SB,SCまでの距離)よりも長くなる。その結果、被検眼を視軸に沿う方向から見た場合の回転調整パターンにおける単位角度Tは、R/N度よりも小さくなる。従って、回転調整パターンにおける単位角度Tは、R/N度よりも小さい範囲内で、視軸に沿う方向から見た場合の治療レーザ光の旋回半径(つまり、コンタクトレンズの反射面27における反射位置RPと、治療レーザ光が照射される照射スポットSA,SB,SCの間の距離)等に応じて設定されればよい。
【0215】
図27を参照して、第6実施形態における治療制御処理について説明する。まず、制御部60は、患者眼Eに対する治療レーザ光の照射計画を取得する(S101)。S101で取得される治療計画では、隣接する2つの照射スポットの間の角度、1つの照射区画分の角度、各々の照射区画内で治療レーザ光が照射される回数M、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数N、治療レーザ光を最初に照射する照射スポット、治療レーザ光の照射順(照射方向を含む)等が定められている。
【0216】
制御部60は、1番目の照射区画の配置に対応する角度で、スポット間隔ガイド90を内部表示部50に表示させる(S102)。制御部60は、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射された累計回数を特定する全照射数カウンタ「n」の値を「0」とする(S103)。さらに、制御部60は、1つの照射区画内で治療レーザ光が照射された回数を特定する区画内照射数カウンタ「m」の値を「0」とする(S104)。制御部60は、スポット間隔ガイド90の複数の指標のうち、次に治療レーザ光を照射するための指標となる次回照準指標90Aの表示位置を、照射順の進行方向の反対側の端部に位置する指標に重なる位置に設定する(S105)。なお、スポット間隔ガイド90に含まれる複数の指標の各々の照準位置側の端部を、カーブに沿って表示させる方法には、第5実施形態で示した方法と同様の方法を採用できる。
【0217】
制御部60は、治療レーザ光の照射実行指示が術者によって入力されたか否かを判断する(S107)。照射実行指示が入力されていなければ(S107:NO)、制御部60は、照射計画で定められている次の照射スポットへの治療レーザ光の照射省略指示(つまり、「スキップ指示」)が入力されたか否かを判断する(S108)。スキップ指示が入力されていなければ(S108:NO)、制御部60は、治療中の照射区画内の複数の照射スポットの全てに対する治療レーザ光の照射が完了する前の、スポット間隔ガイド90の全体を回転させる指示(以下、「途中回転指示」という)が入力されたか否かを判断する(S109)S107~S109においていずれの指示も入力されていなければ、S107~S109の判断が繰り返されて待機状態となる。この間に、術者によって治療レーザ光の照準位置が調整される。
【0218】
治療レーザ光の照射実行指示が入力されると(S107:YES)、治療レーザ光が照射される(S110)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」と、区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算する(S111)。制御部60は、全照射数カウンタ「n」の値が、治療対象部位の全体に対して治療レーザ光が照射される総数「N」に達したか否かを判断する(S112)。全ての照射スポットへの治療レーザ光の規定回数の照射(本実施形態では、照射がスキップされた回数も含む)が完了していなければ(つまり、「n」が「N」に達していなければ)(S112:NO)、制御部60は、治療中の照射区画内への規定回数の治療レーザ光の照射が完了したか否か(つまり、区画内照射数カウンタ「m」の値が、1つの照射区画内への治療レーザ光の照射回数「M」に達したか否か)を判断する(S113)。治療中の照射区画内への治療レーザ光の照射が完了していなければ(S113:NO)、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、照射スポットの進行方向とは反対の方向に、複数の照射スポット間の適正間隔1つ分だけ移動させる。また、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、前述した単位角度Tだけ回転させる(S114)。なお、S114では、次回照準指標90Aを適正間隔1つ分だけ移動させる制御も実行される。その後、処理はS107へ戻る。
【0219】
1つの照射区画内への治療レーザ光の照射が完了すると(S113:YES)、制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、次の照射区画に対応する角度に回転させる(S115)。制御部60は、次回照準指標90Aおよび未照射指標の再設定を行い(S118)、処理はS104へ戻る。全ての照射スポットへの治療レーザ光の照射が完了すると(S112:YES)、処理は終了する。
【0220】
また、治療レーザ光の照射実行指示が入力される前に、スキップ指示が入力されると(S108:YES)、制御部60は、治療レーザ光を照射せずに、全照射数カウンタ「n」と区画内照射数カウンタ「m」の各々の値に「1」を加算し(S111)、S112~S115,S118の処理を実行する。また、治療レーザ光の照射実行指示が入力される前に、途中回転指示が入力されると(S109:YES)、制御部60は、治療中であった照射区画内で治療が進行した範囲に対応する角度を、スポット間隔ガイド90を回転させる角度として算出する(S116)。S116における回転角度の具体的な算出方法は、適宜選択できる。例えば、計画された複数の照射スポットが通過する仮想円の中心から見た場合の、隣接する2つの照射スポットの間の角度をA度、前述した単位角度をT度、治療中であった照射区画内で治療が進行した照射スポットの数をm個(本実施形態では、区画内照射数カウンタmの値に一致する)とする。本実施形態では、制御部60は、治療中であった照射区画内で治療が進行した範囲に対応する角度を、「(A度-T度)×m個」によって算出する。治療が進行した照射スポットの数「m個」には、スキップ指示によって治療レーザ光の照射がスキップされた照射スポットの数も含まれる。制御部60は、スポット間隔ガイド90の全体を、S116で算出された角度だけ、治療計画で定められている進行方向に回転させる(S117)。その後、次回照準指標90Aおよび未照射指標の再設定処理が行われて(S118)、処理はS104へ戻る。
【0221】
<第7実施形態>
図28を参照して、第7実施形態の眼科用レーザ治療装置1について説明する。第7実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、レーザ照射光学系10(図2参照)と重畳表示部を備える。重畳表示部は、患者眼における環状または弧状の治療対象部位(本実施形態では線維柱帯TM)の少なくとも一部を含む観察像に、円周方向チャート100(詳細は後述する)を重畳表示させる。第7実施形態の重畳表示部には、第1~第6実施形態で説明した内部表示部50(図2および図3参照)が用いられる。ただし、内部表示部50以外の構成を重畳表示部として用いることも可能である。例えば、透過型エレクトロルミネセンス(EL)パネル(有機でも無機でもよい)が、重畳表示部として使用されてもよい。また、板ガラスの表面に円周方向チャート100を蒸着等によって形成し、形成した蒸着箇所を別途光源で照明することで、円周方向チャート100が所定の色(例えば緑色等)によって重畳表示されてもよい。なお、円周方向チャート100を点灯(換言すると明るく)させて術者に呈示できるとより好ましい。この場合、例えば、観察条件によって観察像の一部または全部が暗くなっている場合等でも、術者は円周方向チャート100を把握し易い。また、眼科用レーザ治療装置1は、患者眼の観察像を撮影する観察撮影部を備えていてもよい。重畳表示部(例えばモニタ等)は、観察撮影部によって撮影された観察像に、別の画像等を重畳表示させてもよい。重畳表示部の構成は、観察像に重畳表示させる画像を変化させることが不可能な簡素な構成であってもよい。
【0222】
図28に示すように、第7実施形態の眼科用レーザ治療装置1の重畳表示部は、治療レーザ光の光軸Oを中心とする円周方向の角度を示す円周方向チャート100を、観察像に重畳表示させる。従って、術者は、観察像に重畳表示される円周方向チャート100を視認することで、治療レーザ光の光軸を中心とした場合の治療対象部位の方向を適切に把握することができる。例えば、複数の照射スポットに対する治療の途中で、コンタクトレンズを患者眼から一旦取り外す場合もある。この場合、術者は、治療対象部位のうち、コンタクトレンズを取り外す直前に治療レーザ光を照射したスポットが位置する方向(治療レーザ光の光軸を中心とする円周方向の角度)を、円周方向チャートを参照することで適切に把握することができる。従って、一旦取り外したコンタクトレンズを再度患者眼に装着する際に、次のスポットが位置する方向に治療レーザ光の照準位置が適切に調整されるように、円周方向チャートを参照しながらコンタクトレンズの角度を調整することができる。よって、術者は、治療レーザ光の照準位置を容易且つ適切に調整することができる。
【0223】
図28に示すように、内部表示部は、観察像に重畳表示させる環状の円周方向チャート100の中心を、観察像における治療レーザ光の光軸Oの通過位置に一致させる。従って、治療レーザ光の光軸Oを中心とした場合の治療対象部位の方向が、円周方向チャート100によってより適切に把握され易くなる。
【0224】
図28に例示した円周方向チャート100は、治療レーザ光の光軸Oを中心とした円周方向に、均等な角度毎に配置された、複数の指標を備える。従って、均等な角度で配置された複数の指標によって、治療対象部位の方向がより適切に把握され易くなる。詳細には、第7実施形態の重畳表示部は、アナログ時計の文字盤の各方向の少なくともいずれかに表示され得る記号(例えば、最大で12となる数字等)を、円周方向チャート100における適切な位置(図28に示す例では、12時、3時、6時、9時の各々の位置)に表示させている。つまり、円周方向チャート100は、クロックポジションに合わせて表示されている。従って、術者は、アナログ時計で時間を把握する場合と同様の感覚で、治療レーザ光の光軸を中心とした場合の治療対象部位の方向を適切に把握することができる。なお、円周方向チャートの具体的な態様を変更することも可能である。例えば、治療レーザ光の光軸Oの右方向に配置する指標を0度とし、反時計回りに15度毎に複数の指標(例えば、角度数値の態様の指標等)が表示されてもよい。1つまたは複数の指標の形状が、他の指標の形状と異なっていてもよい。一部の指標または全ての指標が、文字(数字でもよい)のみによって構成されてもよいし、文字と形状の組み合わせによって構成されてもよい。指標として文字を使用する場合、文字の角度間隔は15度以上であることが好ましい。また、複数の指標同士が連結されていてもよい。態様が互いに異なる複数の円周方向チャートが記憶装置に記憶されていてもよい。この場合、術者は、複数の円周方向チャートの中から、重畳表示部に表示させる円周方向チャートを選択できてもよい。
【0225】
重畳表示部は、画像の表示領域内における所定位置に、円周方向チャート100を固定して表示させる。従って、観察像の状態、治療計画、および治療レーザ光の累積照射回数等に関わらず、円周方向チャート100が所定位置に固定されて表示されるので、治療レーザ光の光軸Oを中心とした場合の治療対象部位の方向が、より正確に把握され易くなる。なお、第7実施形態では、観察像を術者に視認させるための光学系の光軸と、治療レーザ光の光軸Oの間の相対的な位置関係も固定されている。換言すると、観察光学系の光軸と治療レーザ光の光軸Oが常に一致している。
【0226】
重畳表示部は、観察像に対する円周方向チャート100の重畳表示と非表示を切り替えることができる。従って、治療対象部位の方向を術者に把握させる必要が無い場合等には、円周方向チャート100が非表示とされることで、術者は観察像の観察に集中できる。第7実施形態では、制御部60は、術者等によって設定された治療モードが、環状または弧状の治療対象部位に対する治療を実行する治療モード(以下、「環状治療モード」という)であるか否かに応じて、円周方向チャート100を表示させるか否かを切り換える。従って、設定された治療モードに応じた視野が、適切に術者に提供される。なお、制御部60は、術者が選択した治療モードが環状治療モードであるか否かに基づいて、円周方向チャート100の形状を変化させてもよい。例えば、制御部60は、環状治療モードでは円周方向チャート100を重畳表示させる一方で、他の治療モードでは十字状のチャート(例えば照準用のレチクル)等を重畳表示させてもよい。また、制御部60は、図28に例示した円周方向チャート100と、図10および図20に例示した外周部ガイド75を切り換えて表示させてもよい。
【0227】
以上で開示した実施形態の少なくとも何れかは、設定された照射計画に応じて実行されてもよい。前述したように、照射計画は、照射領域、照射数、使用するコンタクトレンズの種類、および隣接する照射スポットへの照準位置の調整方法(図9参照)の少なくとも何れかが設定されることで策定される。制御部60は、照射計画に基づいた表示を内部表示部50に行ってもよい。例えば、図6のコンタクトレンズの使用が選択された場合は、第4実施形態の表示制御が行なわれてもよい。反射面の角度を調整するために全体が回転されるコンタクトレンズが使用される場合には、第1実施形態または第5実施形態の表示制御が行われてもよい。制御部60は、トリガ信号を入力すると、治療レーザ光を照射するとともに、照射計画に基づいて内部表示部50の表示を変化させる。
【0228】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、第1~第5実施形態の各々で説明した複数の技術の一部のみを採用することも可能である。また、複数の異なる実施形態の技術を適宜組み合わせて眼科用レーザ治療装置に採用することも可能である。
【0229】
第4実施形態のスポット間隔ガイドの構成は一例である。従って、スポット間隔ガイドの構成を変更することも可能である。つまり、観察光学系40を介して術者によって観察される観察像における所定位置(例えば、観察像に含まれる間隔指標28の反射像28Zに対する所定位置、または、観察像に含まれるコンタクトレンズの一部の輪郭に対する所定位置等)に、内部表示部50によって表示されているスポット間隔ガイドが配置されるように、術者による観察部位の調整(例えば、ジョイスティック部5の操作による調整、および、コンタクトレンズの回転または移動による調整等)が適切に誘導されれば、複数の照射スポットの適正間隔は、ユーザによって把握され易くなる。なお、スポット間隔ガイドを、所期する繊維柱帯TMの部位に照準位置を合わせるためのアライメントガイドと呼んでも良い。
【0230】
図29に、第4実施形態で例示したスポット間隔ガイドの変容例を示す。図29(a)~(e)では、コンタクトレンズ26に設けられた間隔指標28(図7参照)の反射像28Zが点線で模式的に示されている。図29(a)に示すように、スポット間隔ガイド901は、間隔指標28の複数の反射像28Zの各々に対応する形状の複数のグラフィックを含んでいてもよい。図29(b)に示すように、スポット間隔ガイド902は、間隔指標28の反射像28Zの左端から右端までの長さに対応するグラフィックを含んでいてもよい。図29(c)に示すように、スポット間隔ガイド903は、間隔指標28の複数の反射像28Zの全体を取り囲む形状のグラフィックを含んでいてもよい。図29(d)に示すように、スポット間隔ガイド904は、間隔指標28の複数の反射像28Zのうち、左端の指標の反射像と、右端の指標の反射像の各々に合わせられる2つのグラフィックによって構成されていてもよい。図29(e)に示すように、スポット間隔ガイド901は、間隔指標28の複数の反射像28Zのうち、真ん中の指標の反射像に合わせられる1つのグラフィックによって構成されていてもよい。以上のように、間隔指標28の反射像28Zに対して合わせられるスポット間隔ガイドの構成は、適宜選択できる。また、図29(f)に示すように、スポット間隔ガイドは、間隔指標28の反射像28Zの代わりに、観察像に含まれるコンタクトレンズ26の一部に対して合わせられてもよい。図29(f)に示すスポット間隔ガイド906は、観察像にコンタクトレンズ26の弧状の輪郭に合わせられる弧状のグラフィックを含む。
【0231】
第5実施形態および第6実施形態のスポット間隔ガイドの構成も一例に過ぎない。図30に、第5・第6実施形態で例示したスポット間隔ガイドの変容例を示す。第5・第6実施形態で例示したスポット間隔ガイド90の複数の指標の各々は、角度基準線ALに直交する方向に延びる矩形の形状である(図20参照)。しかし、スポット間隔ガイドに含まれる複数の指標の各々の形状を変更することも可能である。例えば、図30に示す例では、スポット間隔ガイド91に含まれる複数の指標(次回照準指標91A,照射済み指標91B、および未照射指標91C)の各々は円形である。なお、線分、正多角形、星型等の指標を、スポット間隔ガイドの指標として表示させてもよい。
【0232】
また、図30に示すスポット間隔ガイド91には、複数の指標を取り囲む枠部92が含まれる。図30に示す枠部92は、複数の指標を取り囲むと共に、角度基準線ALに沿う方向に延びている。従って、術者は、枠部92が延びる方向に基づいて、コンタクトレンズの反射面の角度を適切な角度に調整し易くなる。さらに、図30に示す例では、スポット間隔ガイド91における少なくとも一部の要素(図30では、枠部92における照準位置側の端部)を、弧状または環状である患者眼Eの治療部位(本実施形態では線維柱帯TM)のカーブに近似するカーブに沿って表示させる。その結果、スポット間隔ガイド91が次の照準位置に対して適切な位置に配置された際の、枠部92における照準位置側端部と、弧状の治療部位の間の距離が近づきやすくなる。よって、術者は、スポット間隔ガイド91を参照することで、治療レーザ光の次の照準位置をさらに適切に調整し易くなる。
【符号の説明】
【0233】
1 眼科用レーザ治療装置
6 コントロールボックス
7 外部表示部
10 レーザ照射光学系
26 コンタクトレンズ(部分回転型レンズ)
26A 把持部
26B 回転基部
27 反射面
28 間隔指標
40 観察光学系
46 接眼レンズ
50 内部表示部
60 制御部
61 CPU
71A,71B 対象部位ガイド
75 外周部ガイド
75A 次回照準ガイド
75B 照射完了ガイド
75C 未照射ガイド
75D 区画照準ガイド
80 角度ガイド
81 治療対象部位模式図
82 間隔指標模式図
83 スポット配置指針図
88 前回照射時画像
90,91 スポット間隔ガイド
90A,91A 次回照準指標
92 枠部
100 円周方向チャート
図1
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