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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049343
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240402BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 P
H05K13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143244
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2022155079
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】森 治雄
(72)【発明者】
【氏名】手島 慶
【テーマコード(参考)】
5E353
5F044
【Fターム(参考)】
5E353BC02
5E353GG33
5E353MM08
5E353QQ05
5F044KK03
5F044KK06
5F044LL09
5F044PP15
(57)【要約】
【課題】吸引力を調整する部材を増加させずに、簡易な構造でリークの影響を抑えて、サイズの異なる基板に合わせて確実に吸引保持できる実装装置を提供する。
【解決手段】実施形態の実装装置1は、電子部品4が実装される基板2を基準位置Rに保持する保持テーブル210と、保持テーブル210に設けられ、負圧の吸引力によって基板2を保持テーブル210の表面に引き寄せて保持するための複数の吸引孔11と、保持テーブル210の一辺に沿う方向に並び、それぞれが複数の吸引孔11を含む複数の吸引孔グループ10と、基準位置Rに保持された基板2に、電子部品4を圧着する圧着部100と、を有し、複数の吸引孔グループ10のうちのいずれかの吸引孔グループ10は、当該吸引孔グループ10に含まれる吸引孔11のうち、基準位置Rに近い側の吸引孔11の吸引力が、他の吸引孔11の吸引力よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装される基板を基準位置に保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルに設けられ、負圧の吸引力によって前記基板を保持テーブルの表面に引き寄せて保持するための複数の吸引孔と、
前記保持テーブルの一辺に沿う方向に並び、それぞれが複数の前記吸引孔を含む複数の吸引孔グループと、
前記基準位置に保持された前記基板に、前記電子部品を圧着する圧着部と、
を有し、
複数の前記吸引孔グループのうちのいずれかの前記吸引孔グループは、当該吸引孔グループに含まれる前記吸引孔のうち、前記基準位置に近い側の前記吸引孔の吸引力が、他の前記吸引孔の吸引力よりも大きいことを特徴とする実装装置。
【請求項2】
前記基準位置は、前記吸引孔グループの並び方向における中央であり、
吸引力の大きな前記吸引孔は、前記基準位置を挟んで対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項3】
前記吸引孔グループは、複数の前記吸引孔グループの並び方向に直交する方向に延び、各吸引孔にそれぞれ連通した溝を有することを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項4】
前記吸引孔グループにおける吸引力の大きな前記吸引孔以外の前記吸引孔は、吸引力が同じであることを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項5】
前記吸引孔は排気流路を介して排気装置に接続され、
前記吸引孔グループにおいて、吸引力の大きな前記吸引孔から前記排気装置に至るまでの前記排気流路の最も小さな内径が、他の前記吸引孔から前記排気装置に至るまでの前記排気流路の最も小さな内径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項6】
前記吸引孔グループ毎に、開閉制御弁を介して排気装置に接続されていることを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項7】
各吸引孔グループにおいて、全ての前記吸引孔によって、前記基板を吸引している場合の吸引力に対して、吸引力の大きな前記吸引孔のみによって前記基板を吸引している場合の吸引力の比が、0.6以上であることを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや有機ELパネル等の表示パネルなどの基板には、接着材料としての異方性導電部材を介してTCP(Tape Carrier Package)などの電子部品が圧着される。基板の側部上面には、電極を備えた複数の実装部が設けられ、各実装部に、テープ状の異方性導電部材を貼着し、この異方性導電部材に電子部品を仮圧着した後、本圧着する。
【0003】
基板に対する電子部品の実装は、基板の下面を保持面で保持する保持テーブルによって、保持面から実装部が突出するように保持し、実装部の下面をバックアップツールの上面で支持しながら、実装ツールによって実装部の上面に電子部品を圧着することにより行っている。
【0004】
このような圧着において、基板に反りがあると、電子部品と実装部との位置合わせが困難になり、電子部品の圧着精度が悪化する原因となる。このため、保持テーブルの保持面に設けた吸引孔に、真空源により負圧を作用させ、保持面から実装部が突出するように吸引保持し、保持面に倣って平坦に保持した状態で、電子部品を圧着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-059901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、実装対象の基板は、複数種類のサイズが存在する。このため、保持テーブルに保持される基板のサイズも複数種類であり、保持される基板のサイズが変わると、基板に覆われていない吸引孔が生じる場合がある。基板に覆われていない吸引孔からは、エアーがリークしてしまうので、基板を吸引している吸引孔の吸引力が小さくなり、基板を安定して保持できない。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1のように、最大サイズの基板が保持できる範囲に吸引孔を複数設け、基板のサイズが変わった場合、各吸引孔に連通する吸引管に設けられたバルブを制御することにより、基板のサイズよりも小さな領域にある吸引孔のみを吸引させて、リークする吸引孔を無くすことが必要となる。
【0008】
一方、基板を安定的に吸引保持するためには、可能な限り基板のサイズに近い領域を吸引することが好ましい。すると、多種多様な基板のサイズに対応するためには、吸引孔を細かい間隔で多数設けるとともに、吸引切り替え用のバルブを多数設ける必要があり、配管系統が複雑となる。特に、バルブの数を増やすことには限界があるため、結局、吸引する領域を基板のサイズに合わせることができない。
【0009】
これに対処するため、バルブを切り替えずに、プレートなどの蓋によって、基板で覆われない吸引孔を塞ぐことが考えられる。しかし、異なる品種に対応するために、蓋も変える必要があり、複数種類の蓋を準備しなければならない。また、その管理が煩雑になる。
【0010】
本発明の実施形態は、吸引力を調整する部材を増加させずに、簡易な構造でリークの影響を抑えて、サイズの異なる基板に合わせて確実に吸引保持できる実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、実施形態の実装装置は、電子部品が実装される基板を基準位置に保持する保持テーブルと、前記保持テーブルに設けられ、負圧の吸引力によって前記基板を保持テーブルの表面に引き寄せて保持するための複数の吸引孔と、前記保持テーブルの一辺に沿う方向に並び、それぞれが複数の前記吸引孔を含む複数の吸引孔グループと、前記基準位置に保持された前記基板に、前記電子部品を圧着する圧着部と、を有し、複数の前記吸引孔グループのうちのいずれかの前記吸引孔グループは、当該吸引孔グループに含まれる前記吸引孔のうち、前記基準位置に近い側の前記吸引孔の吸引力が、他の前記吸引孔の吸引力よりも大きい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態は、吸引力を調整する部材を増加させずに、簡易な構造でリークの影響を抑えて、サイズの異なる基板に合わせて確実に吸引保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の実装装置を示す側面図及び制御装置を示すブロック図である。
図2】保持テーブルに基板が搭載された状態を示す平面図である。
図3】実施形態の基板製造装置を示す説明図である。
図4】実施形態の実装装置の吸引構成を示す平面図である。
図5】実施形態の実装装置の吸引構成を示す断面図である。
図6】サイズの異なる基板を保持テーブルが保持する例を示す説明図である。
図7】実施形態の実装手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態の変形例を示す平面図である。
図9】閉塞された吸引孔の総面積と吸引力との関係を示すグラフである。
図10】吸引孔グループの配置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。なお、図面は模式図であって、各部のサイズ、比率等は、理解を容易にするために誇張している部分を含んでいる。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態の実装装置1は、基板2に対して、接着材料3を介して、電子部品4を圧着する。基板2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示領域を有する表示パネルである。基板2は、図2に示すように、複数の実装部21を有する。各実装部21は、基板2の上面の外縁に沿って配設されている。本実施形態では、基板2の短辺の一辺に沿って、等間隔で3つの実装部21が並んでいる。
【0016】
各実装部21には、上流の工程で接着材料3が供給され、それぞれの実装部21に電子部品4が個別に圧着される。なお、実装装置1による圧着は、最終的な本圧着である。実装部21には表示領域内の回路に信号線を介して接続されたリードが設けられていて、仮圧着により、電子部品4の電極がリードに重ね合わされた後、本圧着により加熱圧着される。本実施形態では、本圧着のことを実装として説明する。
【0017】
接着材料3は、本実施形態では、加熱圧着により導電性を確保する異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)である。異方性導電フィルムは、基材となる樹脂の中に、小さな導電粒子が多数入ったシート状の部材である。基材の樹脂としては、熱硬化性樹脂が用いられている。
【0018】
電子部品4は、基板2に接着材料3を介して接合される部品である。電子部品4は、例えば、ICチップ、TCP(Tape Carrier Package)やCOF(Chip On Film)等である。
【0019】
なお、図3に示すように、接着材料3を基板2に貼着する貼着装置Sから、図示しない受渡機構によって基板2が仮圧着装置Cに搬入され、供給装置Fから供給される電子部品4が、基板2の実装部21に仮圧着される。仮圧着装置Cから、図示しない受渡機構によって基板2が実装装置1に搬入され、電子部品4が基板2に加熱圧着されることにより、本圧着される。このような貼着装置S、供給装置F、仮圧着装置C及び実装装置1を含む装置を、電子部品4が実装された基板2を製造する基板製造装置Mとして捉えることができる。
【0020】
[構成]
実装装置1は、図1に示すように、圧着部100、位置決め部200、制御装置300を有する。圧着部100は、基板2に対して電子部品4を圧着する。位置決め部200は、基板2の側辺部にある実装部21を圧着部100に対して位置付ける。制御装置300は、圧着部100、位置決め部200の動作を制御する。
[圧着部]
本実施形態の圧着部100は、圧着ツール120、支持部130、シリンダ140、バックアップツール150を有する。圧着ツール120は、接着材料3を介して、基板2の複数の実装部21に対して、個別に電子部品4を本圧着するツールである。圧着ツール120は、下端に押圧面121が形成され、電子部品4に接離する。圧着ツール120により圧着される位置を圧着ポジションPOとする。支持部130は、設置面又は装置底面に立設された台である図示しない架台に設けられ、圧着ツール120を昇降可能に支持する。シリンダ140は、支持部130に設けられ、圧着ツール120を上下方向(図中、Z方向)に駆動する。
【0021】
本実施形態の圧着ツール120の押圧面121は、基板2の側辺部の全長を押圧できる長さを有している。つまり、押圧面121は、基板2の実装部21の並び方向に沿う一辺の全長以上の長さを有する。なお、本実施形態の圧着ツール120には、ヒータ122が内蔵され、この圧着ツール120を数百度に加熱することができる。
【0022】
本実施形態のバックアップツール150は、基板2の側辺部を支持する。電子部品4は、圧着ツール120とバックアップツール150とで挟持されて、圧着される。バックアップツール150は、圧着ポジションPOにおける圧着ツール120の押圧面121の下方に設けられている。バックアップツール150は、基板2の側辺部の全長、つまり実装部21の並び方向の一辺の全長を支持できる長さを有する。
【0023】
バックアップツール150における押圧面121に対向する位置には、バックアップ面151が設けられている。バックアップツール150にも、図示しないヒータが内蔵されている。本実施形態のバックアップツール150は、設置面又は装置底面に立設された支持体152に支持固定されている。このため、バックアップツール150のバックアップ面151は、高さ位置が固定である。
【0024】
なお、本実施形態では、圧着ツール120の押圧面121と、バックアップツール150のバックアップ面151との間には、X方向に沿ってクッションシート160が配置される。クッションシート160は、例えば、フッ素樹脂などの耐熱性を有する樹脂によって形成されている。クッションシート160は、圧着ツール120によって電子部品4を実装部21に本圧着する際に、圧着ツール120と電子部品4との間に介在して、溶融した接着材料3が圧着ツール120の押圧面121に付着するのを阻止する。クッションシート160は、圧着ツール120の長手方向一端側に配置された図示しない供給リールから送り出され、使用済みの部分は、長手方向他端側に配置された図示しない巻き取りリールによって巻き取られる。
【0025】
[位置決め部]
位置決め部200は、基板2の側辺部にある実装部21を、圧着ポジションPOに位置決めする。位置決め部200は、保持テーブル210、位置決めユニット220を有する。保持テーブル210は、基板2を保持する保持面211を有し、実装部21が保持面211から突出するように基板2を保持するとともに、基板2の実装部21を圧着ポジションPOに位置付けるように移動する。
【0026】
図4に示すように、本実施形態の保持テーブル210は矩形の板体であり、保持面211は、保持テーブル210の水平な上面である。保持面211には、側部吸引部212、中央吸引部213が設けられている。側部吸引部212は、保持テーブル210の一辺に沿う方向(図中、X方向)に、所定間隔で並んだ複数の吸引孔グループ10を有する。この一辺は、圧着部100に対向する保持面211の一辺である。各吸引孔グループ10は、負圧の吸引力によって基板2を保持テーブル210の表面に引き寄せて保持するための複数の吸引孔11を含む。複数の吸引孔11は、その内径がそれぞれ等しい。
【0027】
本実施形態では、保持面211の一辺の中央に吸引孔グループ10Aが設けられ、この吸引孔グループ10Aを中心にして対称に、吸引孔グループ10B~10Dが等間隔で並んで配設されている。以下、吸引孔グループ10A~10Dを区別しない場合には、単に吸引孔グループ10として説明する。ここで、複数の吸引孔グループ10の、その並び方向(X方向)の中央(中心)を、基板2が設置される基準位置Rとする。つまり、基準位置Rは、保持面211のX方向中心であり、保持テーブル210の一辺の中央である。図4において、基準位置Rを示す線を一点鎖線で示す。そして、基板2の実装部21が並んだ辺の中央が、基準位置Rに一致するように、保持面211に基板2が載置される。
【0028】
各吸引孔グループ10は、複数の吸引孔グループ10の並び方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に延びた複数の溝12を有する。複数の溝12は、X方向の幅が等しく、等間隔で配置され、Y方向の長さが等しい。各溝12は、それぞれ吸引孔11の一端と一対一で連通している。図5は、本実施形態の実装装置1の吸引構成を示す断面図であって、複数の吸引孔11が並ぶ位置で、保持テーブル210をZ方向に切断した切断面を示す断面図である。一例として、図4における基準位置Rの左側に位置する吸引孔グループ10Bを、図の下側から見た断面を示している。図5に示すように、各吸引孔11の他端は、保持テーブル210の下面に開口し、それぞれ排気流路である吸引管13の一端が接続されている。
【0029】
吸引管13の他端は、各吸引孔グループ10毎に共通の接続管14に接続されている。各接続管14には、図4に示すように、開閉制御弁15が設けられている。各接続管14は、排気装置である吸引ポンプ16に接続されている。つまり、吸引孔グループ10毎に、開閉制御弁15を介して排気装置に接続されている。さらに、接続管14は、基準位置Rに対して対称となる位置の吸引孔グループ10の接続管14を合流させ、合流後に開閉制御弁15を設けている。本実施形態では、基準位置R上に設けられる吸引孔グループ10Aを中心にして、対称に設けられる吸引孔グループ10B~10Dにおいては、図4において基準位置Rを示す一点鎖線の両側の、吸引孔グループ10B同士、吸引孔グループ10C同士、吸引孔グループ10D同士の接続管14が接続して合流し、吸引ポンプ16に至る間に開閉制御弁15が設けられている。
【0030】
吸引ポンプ16を作動させているときに、各接続管14に設けられた開閉制御弁15の開閉を制御すれば、吸引孔グループ10A~10Dのいずれの吸引孔11及び溝12に吸引力を作用させるかを、選択的に制御できる。
【0031】
本実施形態の吸引孔グループ10は、図5図6(A)に示すように、10個の吸引孔11a~11jを有する。中央の吸引孔グループ10Aを挟んで対称に配置された吸引孔グループ10B~10Dは、基準位置Rに近い側から順に吸引孔11a~11jが並んでいる。また、各吸引孔11a~11jに対応する溝12、吸引管13は、溝12a~12j、吸引管13a~13jとなっている。以下、これらを区別しない場合には、単に吸引孔11、溝12、吸引管13として説明する。
【0032】
複数の吸引孔グループ10は、基準位置Rに近い側の吸引孔11の吸引力が、他の吸引孔11の吸引力よりも大きい吸引孔グループ10を含む。つまり、複数の吸引孔グループ10のうちのいずれかの吸引孔グループ10は、当該吸引孔グループ10に含まれる吸引孔11のうち、基準位置Rに近い側の吸引孔11の吸引力が、他の吸引孔11の吸引力よりも大きい。また、吸引力の大きな吸引孔11は、基準位置Rを挟んで対称に配置されている。このような吸引力の差は、吸引孔11に接続された排気流路である吸引管13の内径の差によって生じさせている。つまり、大きな吸引力の吸引孔11に接続された吸引管13の内径が、他の吸引孔11に接続された吸引管13の内径よりも大きい部分を有する。さらに、吸引孔グループ10において、吸引力の大きな吸引孔11以外の吸引孔11は、吸引力を同じとしている。
【0033】
本実施形態においては、吸引孔グループ10B~10Dにおける基準位置Rに最も近い吸引孔11aの吸引力を、他の吸引孔11b~11jの吸引力よりも大きくしている。また、吸引孔11b~11jの吸引力を等しくしている。各吸引孔グループ10B~10Dにおける各吸引孔11a~11jには、共通の吸引ポンプ16、接続管14及び開閉制御弁15によって負圧を作用させている。このため、吸引孔11a~11jの内径が同じで、溝12a~12jの幅が同じであれば、吸引力は等しくなる。しかし、本実施形態においては、吸引孔11a~11jに接続された排気流路の内径を変えて、吸引力に差を生じさせている。
【0034】
すなわち、吸引孔11aから吸引ポンプ16に至るまでの排気流路の最も小さな内径を、他の吸引孔11b~11jから吸引ポンプ16に至るまでの排気流路の最も小さな内径よりも大きくなるようにし、吸引孔11aの吸引力のみを、他の吸引孔11b~11jの吸引力よりも大きくしている。
【0035】
つまり、吸引力の大きな吸引孔11aから吸引ポンプ16に至るまでの排気流路の最も小さな内径が、他の吸引孔11b~11jから吸引ポンプ16に至るまでの排気流路の最も小さな内径よりも大きい。
【0036】
より具体的には、図5に示すように、吸引管13b~13jにおける吸引孔11b~11jとの接続部分に挿入するオリフィスORの径を、吸引管13b~13jよりも小さくすることにより、吸引孔11aの吸引力のみを、他の吸引孔11b~11jの吸引力よりも大きくしている。例えば、吸引管13a~13jの内径を、吸引孔11a~11jと等しく1mmとし、吸引管13b~13jに挿入したオリフィスORの径を0.2mmとする。吸引管13aにはオリフィスORは挿入しないようにする。
【0037】
なお、中央の吸引孔グループ10Aの領域は、基準位置Rを含んで配置され、最小の基板2よりも小さな領域であって、基板2によって必ず覆われる領域である。したがって、吸引孔11からのリークは生じない。つまり、吸引孔グループ10内の吸引孔11のリークによる吸引力の低下を考慮する必要はない。よって、このような吸引孔グループ10内の全ての吸引孔11a~11jが覆われるような吸引孔グループ10Aについては、オリフィスORを挿入せずに、全ての吸引孔11a~11jの吸引力を等しく大きな吸引力とする。
【0038】
基板2は、上記のように、実装部21が並んだ一辺の中心が、基準位置Rに合うように保持される。吸引孔グループ10の吸引孔11に吸引力を作用させることにより、基板2を吸引保持できる。ところで、基板2のサイズによっては、吸引孔グループ10の一部の吸引孔11が基板2によって覆われ、一部の吸引孔11が覆われない場合がある。このような場合には、覆われていない一部の吸引孔11からのエアーのリークが生じる。エアーのリークが生じると、基板2を保持するための吸引力が落ちてしまう。このため、リークが生じる吸引孔11の吸引を行わないようにすることが考えられる。しかし、全ての吸引孔11に個別に吸引を制御する開閉弁を設けることは現実的でない。本実施形態では、前述のように、吸引孔グループ10毎に、開閉制御弁15を介して排気装置に接続されているので、吸引孔グループ10毎に吸引を行うか行わないかを選択できる。したがって、エアーのリークが生じている吸引孔グループ10だけの吸引を行わないようにできる。これにより、全ての吸引孔11にエアーのリークの影響が及ぶことを防止できる。
【0039】

また、吸引のための排気流路が吸引孔グループ10毎に分離されているので、エアーのリークが生じている吸引孔グループ10が有っても、他の吸引孔グループ10に、そのリークの影響は及ばない。よって、必ずしもエアーのリークが生じている吸引孔グループ10の吸引を行わないようにする必要はない。エアーのリークが生じることによって、当該吸引孔グループ10の吸引力は低下するものの、基板2の吸引保持には貢献することができる。
【0040】
ところで、吸引孔グループ10の全ての吸引孔11の吸引力が等しい場合には、覆われていない部分の吸引孔11からのエアーのリーク量が大きくなって、基板2を吸引保持する吸引力が大きく落ちてしまう。すると、吸引孔11により基板2を確実に保持できなくなり、位置ずれ等が生じる。
【0041】
しかし、本実施形態では、吸引孔グループ10内での排気流路の内径を変えることで排気のコンダクタンスに差を設けて、吸引孔11aの吸引力のみを、他の吸引孔11b~11jの吸引力よりも大きくしている。したがって、吸引孔11aに対して、他の吸引孔11b~11jからのエアーの吸引量は小さい。また、吸引孔11aは、基準位置Rに最も近い。そのため、吸引孔グループ10の一部の吸引孔11が基板2によって覆われ、一部の吸引孔11が覆われていない場合、概ね、吸引孔11aが基板2に覆われ、他の吸引孔11b~11jが覆われていない。つまり、エアーのリークの多くは吸引孔11b~11jで生じる。吸引孔11b~11jは、吸引孔11aに対して吸引量(排気量)が小さいので、エアーのリーク量も小さい。このため、当該吸引孔グループ10の吸引力の低下は抑制される。
【0042】
また、少なくとも吸引孔11aが基板2に覆われている場合、吸引孔11aには大きな吸引力が作用しているので、基板2を確実に保持できる。さらに、その他の吸引孔11b~11jのいずれかを基板2が覆っている場合にも、覆われた吸引孔11には吸引力が作用しているので、基板2の端部又は端部に近い位置も保持できる。つまり、吸引孔グループ10の基板2に覆われていない吸引孔11からのエアーのリーク量を抑えつつ、覆われた吸引孔11でも吸引力を作用させている。これにより、基板2のサイズを変えても、基板2のサイズにより近い領域を吸引保持することができる。さらに、基板2に覆われていない吸引孔グループ10の吸引を行わないことにより、他の吸引孔グループ10におけるエアーのリークの影響を抑えることができる。
【0043】
図6(A)~(E)は、サイズの異なる基板2を保持テーブル210が保持する例を示す説明図である。明瞭にするため、吸引力の大きい吸引孔11aを黒く塗りつぶしている。点線枠で囲んだ部分は、同じ吸引孔グループ10を示している。また、基板2をハッチングして示す。
【0044】
例えば、図6(A)に示すように、吸引孔グループ10A、10Bの全体のみを覆うサイズの基板2を保持する場合には、吸引孔グループ10A、10Bの開閉制御弁15を開いて、吸引孔グループ10A、10Bの全吸引孔11、すなわち、吸引孔11a~11jに吸引力を作用させ、吸引孔グループ10C、10Dについては開閉制御弁15を閉じて吸引力を作用させない。これにより、基板2の保持すべき端部のX方向全域に近い領域を吸引保持できるとともに、基板2の吸着保持に不要な吸引孔グループ10からのエアーのリークは生じない。
【0045】
図6(B)に示すように、吸引孔グループ10Cの吸引孔11aまでを覆うサイズの基板2を保持する場合には、吸引孔グループ10A、10B、10Cの開閉制御弁15を開いて、吸引孔グループ10A、10B、10Cの吸引孔11a~11jに吸引力を作用させ、吸引孔グループ10Dについて開閉制御弁15を閉じて吸引力を作用させない。これにより、吸引孔グループ10A、10Bの全体の吸引孔11a~11j及び吸引孔グループ10Cの吸引孔11aによって、基板2のサイズを含む領域を吸引することができる。吸引孔グループ10Cの吸引孔11b~11jは基板2に覆われず開放されているため、エアーのリークが生じるが、吸引力が弱いため(排気量が少ないため)、リーク量が抑えられ、吸引孔グループ10Cの吸引力の低下が抑えられる。なお、基板2のサイズを含む領域とは、基板2のX方向において全ての領域を含むということであり、様々なサイズの基板2であっても、そのX方向端部まで吸引することができるということである。
【0046】
図6(C)に示すように、吸引孔グループ10Cの吸引孔11eまでを覆うサイズの基板2を保持する場合には、吸引孔グループ10A、10B、10Cの開閉制御弁15を開いて、吸引孔グループ10A、10B、10Cの吸引孔11a~11jに吸引力を作用させ、吸引孔グループ10Dについて開閉制御弁15を閉じて吸引力を作用させない。これにより、吸引孔グループ10A、10Bの全体の吸引孔11a~11j及び吸引孔グループ10Cの吸引孔11a~11eによって、基板2のサイズを含む領域を吸引することができる。吸引孔グループ10Cの吸引孔11f~11jは基板2に覆われず開放されているため、エアーのリークが生じるが、吸引力が弱いため(排気量が少ないため)、リーク量が抑えられ、吸引孔グループ10Cの吸引力の低下が抑えられる。
【0047】
図6(D)に示すように、吸引孔グループ10Dの吸引孔11aまでを覆うサイズの基板2を保持する場合には、吸引孔グループ10A~10Dの開閉制御弁15を開いて、吸引孔グループ10A~10Dの吸引孔11a~11jに吸引力を作用させる。これにより、吸引孔グループ10A、10B、10Cの全体の吸引孔11a~11j及び吸引孔グループ10Dの吸引孔11aによって、基板2のサイズを含む領域を吸引することができる。吸引孔グループ10Dの吸引孔11b~11jは基板2に覆われず開放されているため、エアーのリークが生じるが、吸引力が弱いため(排気量が少ないため)、リーク量が抑えられ、吸引孔グループ10Dの吸引力の低下が抑えられる。
【0048】
図6(E)に示すように、吸引孔グループ10A~10Dの全体を覆うサイズの基板2を保持する場合には、吸引孔グループ10A~10Dの開閉制御弁15を開いて、吸引孔グループ10A~10Dの吸引孔11a~11jに吸引力を作用させる。これにより、吸引孔グループ10A~10Dの全体の吸引孔11a~11jによって、基板2のサイズを含む領域を吸引することができる。基板2によってすべての吸引孔11が覆われているため、エアーのリークは生じない。
【0049】
図4に示すように、中央吸引部213は、保持面211の中央に設けられている。中央吸引部213は、大きさの異なる3つの矩形溝213aが同心状に設けられている。矩形溝213aは、直線状の複数の連通溝213bによって連通している。1つの矩形溝213aと連通溝213bとの交点に、図示しない吸引孔が一端を連通させて形成されている。吸引孔には、図示しない吸引管が接続され、開閉制御弁を介して吸引ポンプ16に接続されている。
【0050】
位置決めユニット220は、基板2を水平方向(X、Y方向)、回転方向(θ方向)及び上下方向(Z方向)に駆動する。図1に示すように、位置決めユニット220はXテーブル221を有し、このXテーブル221には、X可動体221aが設けられている。X可動体221aは、X駆動源221bによってX方向に駆動される。
【0051】
X可動体221aの上面にはYテーブル222が一体的に設けられている。このYテーブル222の上面にはY可動体222aが設けられている。このY可動体222aは、Y駆動源222bによって上記X方向と直交する水平方向のY方向に駆動されるようになっている。
【0052】
また、位置決めユニット220は、昇降機構223を有する。昇降機構223は、支持体223a、支持部223b、ねじ軸223c、ガイド軸223d、Z可動体223e、従動歯車223f、駆動歯車223g、Z駆動源223h、駆動軸223iを有する。
【0053】
支持体223aは、側面形状がクランク状であり、Y可動体222a上に立設されている。この支持体223aの上端に設けられた支持部223bとY可動体222aとの間には、ねじ軸223cとガイド軸223dとが軸をZ方向に設けられている。ねじ軸223cは回転可能に設けられ、ガイド軸223dは固定的に設けられている。
【0054】
ねじ軸223cには、Z可動体223eが螺合され、このZ可動体223eには、上記ガイド軸223dがスライド可能に挿通されている。したがって、ねじ軸223cを回転させると、上記Z可動体223eは回転することなく、上記ガイド軸223dに沿って上下動するようになっている。
【0055】
ねじ軸223cの上端部は支持部223bの上面から突出し、その突出端には従動歯車223fが嵌着されている。この従動歯車223fには、駆動歯車223gが噛合している。駆動歯車223gは、支持体223aに設けられたZ駆動源223hの駆動軸223iに嵌着されている。したがって、Z駆動源223hが作動してその駆動軸223iが回転すると、噛合した一対の駆動歯車223g、従動歯車223fを介してねじ軸223cが回転するので、Z可動体223eがZ方向に駆動される。
【0056】
Z可動体223eには、L字状の取付け部材224の一辺が固着されている。この取付け部材224の水平となった他辺の上面にはθ駆動源225aによって垂直軸線を中心にして回転駆動されるθ可動体225bが設けられている。θ可動体225bの上面には、保持テーブル210が設けられている。保持面211に吸引保持された基板2は、位置決めユニット220による保持テーブル210の移動によって、X、Y、Z及びθ方向の位置決めが可能となる。
【0057】
[制御装置]
制御装置300は、圧着部100、位置決め部200の起動、停止、速度、動作タイミング等を制御する。制御装置300は、実装装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサ、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路等を有する。制御装置300には、図1に示すように、作業者が制御に必要な指示や情報を入力する入力装置310、装置の状態を確認するための表示装置320が接続されている。入力装置310は、スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウスなどを用いることができる。表示装置320は、液晶、有機ELなどを用いることができる。
【0058】
本実施形態の制御装置300は、吸引制御部301、位置決め制御部302、圧着制御部303、記憶部304を有する。吸引制御部301は、吸引ポンプ16を制御することにより、保持面211への基板2の吸引保持を制御する。なお、開閉制御弁15の開閉については、基板2のサイズに応じて、開閉制御弁15を電磁弁として、吸引制御部301によって、開閉させてもよいし、手動で開閉させてもよい。
【0059】
また、位置決め制御部302は、X駆動源221b、Y駆動源222b、θ駆動源225aの作動を制御することにより、保持テーブル210を移動させて、保持テーブル210に保持された基板2の各実装部21を、各圧着ポジションPOに位置決めする。圧着制御部303は、シリンダ140の作動を制御することにより、圧着ポジションPOにおける基板2の実装部21に対して、電子部品4を加熱圧着させる。
【0060】
記憶部304は、記憶媒体である各種メモリ(HDD:Hard Disk DriveやSSD:Solid State Driveなど)、記憶媒体と外部とのインターフェースを含む記憶装置である。記憶部304には、実装装置1の動作に必要なデータ、プログラムが記憶される。
【0061】
[動作]
以上のような本実施形態の実装装置1の動作を、上記の図面に加えて、図7のフローチャートを参照して説明する。まず、側部吸引部212において、基板2によって全体が覆われる吸引孔グループ10と、一部のみが覆われる吸引孔グループ10については、それぞれに対応する開閉制御弁15を予め開いておく。基板2に全く覆われる部分が無い吸引孔グループ10については、開閉制御弁15は閉じておく。また、中央吸引部213に対応する開閉制御弁15についても、予め開いておく。
【0062】
保持テーブル210には、貼着装置Sにおいて接着材料3が貼着され、仮圧着装置Cにおいて電子部品4が実装部21に仮圧着された基板2が搬入されて載置される(ステップS101)。基板2は、実装部21が保持面211から突出するとともに、基板2の実装部21が並ぶ一辺の中央と、基準位置Rとが一致する。このとき、実装部21が並ぶ一辺が、保持面211の圧着部100に対向する一辺に平行となり、実装部21が並ぶ部分が保持面211から突出して圧着部100に向かうように位置付けられる。
【0063】
そして、吸引ポンプ16を作動させると、基板2によって全体が覆われる吸引孔グループ10と、一部のみが覆われる吸引孔グループ10については、全ての吸引孔11a~11jに吸引力が作用するため、基板2の実装部21の並び方向の全体に近い領域が、吸引保持される(ステップS102)。なお、中央吸引部213にも、吸引ポンプ16によって吸引力が作用するので、基板2の中央部も吸引保持される。このようにして、基板2が保持テーブル210に保持される。
【0064】
基板2を吸引保持した保持テーブル210は、位置決めユニット220によってY方向、X方向、Z方向に移動して、電子部品4が仮圧着された実装部21を、圧着ポジションPOに位置付ける(ステップS103)。
【0065】
圧着ツール120が下降して、押圧面121によって、クッションシート160を介して、電子部品4を実装部21に加熱圧着する(ステップS104)。その後、圧着ツール120が上昇して、押圧面121が電子部品4から離れる(ステップS105)。そして、保持テーブル210が待機位置に戻り、側部吸引部212,中央吸引部213による吸引保持を解除する(ステップS106)。その後、基板2が搬出される(ステップS107)。
【0066】
[実施例]
吸引孔グループ10における複数の吸引孔11について、基板2が覆う領域の相違に応じた吸引力の変化を示す試験を行った結果を、以下の表に示す。この試験では、全ての吸引孔11a~11jが基板2によって覆われて基板2を吸引している場合と、基準位置Rから遠い吸引孔11jから吸引孔11bへと、順次、1つずつ基板2を吸引していない状態にした場合、さらに、全ての吸引孔11a~11jが基板2に覆われていない状態にした場合(空吸い)の吸引ポンプ16の吸引力(kPa)を測定した。また、基板2の保持状態(吸引状態)を観察し、十分に保持されている場合、「問題無し」とした。基板2が浮く、ずれるなど保持状態が不十分と認められる場合は、「不安定」とした。そして、吸引孔11a~11jのオリフィスORの径を0.3mmとした場合と、吸引孔11a~11jのオリフィスORの径を0.2mmとした場合と、オリフィスORを挿入しない場合(配管径1mm)とを比較した。また、図9は、表を元に、縦軸を吸引力、横軸を閉塞された吸引孔の総面積とし、オリフィスORの径0.2mmを小さい黒丸、オリフィスORの径0.3mmを中間の大きさの黒丸、オリフィスORを挿入しない場合を大きな黒丸で示したものである。さらに、最大の吸引力PSを白抜き、最小の吸引力Psを網掛けで示す。
【0067】
【0068】
表、図9から、オリフィスORの径が0.3mmの場合、条件2―6のように、5つの吸引孔11a~11eが基板2に覆われて閉塞し、5つの吸引孔11f~11jが開放された条件で、基板2の保持が不安定となった。この時、吸引力が-50kPa以上に低下していた。そして、条件2-7~条件2-10に示すように、徐々に閉塞される吸引孔11が減るにつれて、リークが増大し、吸引力(吸引圧力)は減少した。これらの条件で、基板2の吸引状態(保持状態)は不安定であった(図9において、点線で囲った部分)。一方、オリフィスORの径が0.2mmの場合、条件1―10のように、吸引孔11aのみ閉塞、つまり9つの吸引孔11b~11jが開放されても、基板2を安定して保持できており、この時、吸引力は-50kPa以下に維持されていた。
【0069】
全ての吸引孔11a~11jによって基板2を吸引保持している場合は、最大の吸引力PSとなり、最も安定して基板2を保持できる状態と言える。一方、吸引孔11a以外の全ての吸引孔11b~11jが開放された場合には、最もリーク量が多くなるため、吸引力PSから低下して最小の吸引力Psになる。この最小の吸引力Psとなった場合に、基板2を安定して吸引できなければ、対応できる基板2のサイズが限定されてしまう。このため、最大のPSに対する最小のPsの比が十分に大きければ、安定して保持できる吸引力を維持できると考えられる。
【0070】
ここで、オリフィスORの径が0.2mmの場合は、Ps/PS=-52.1/-77.9=0.668…、オリフィスORの径が0.3mmの場合は、Ps/PS=-29.4/-75.6=0.388…、オリフィスORを挿入しない場合(配管径1mm)は、Ps/PS=-17.6/-74.7=0.236…となる。径が0.2mmの場合には吸引力を維持でき、径が0.3mm、配管径そのままの場合には吸引力を維持できない。
【0071】
また、吸引に問題が無い最小の吸引力は、径0.2mmでは-52.1kPa(条件1-10)。径0.3mmでは、-51.9kPa(条件2-5)。オリフィスを挿入していない吸引孔の径1mmでは、-52.5kPaであることから(条件3-5)、-50kPa程度の吸引力を維持できれば、吸引に問題がないと考えられ、そのときの最大のPSに対する吸引力の比は、径0.2mmでは-52.1/-77.9=0.668。径0.3mmでは-51.9/-75.6=0.687、配管径そのままでは、-52.5/-74.7=0.703となり、最大のPSに対する最小のPsの比が0.6以上であれば、吸引孔の径、個数に関係無く、吸引力を維持できると推察される。
【0072】
本実施形態での基板2の吸引保持は、開放された吸引孔11からのリークを抑えつつ、閉塞された吸引孔11で基板2を吸引保持しているので、開放された吸引孔11からのリーク、すなわち、開放された吸引孔11でのエアーの流れが吸引力に大きく影響を与えている。つまり、上述した試験結果から、基板2を安定して保持できる吸引力は-50kPa以下で、吸引孔11の数や吸引孔11の排気流路の形状について、吸引孔グループの吸引孔が10個、配管径1mmの場合、吸引力が小さい場合の吸引孔11のオリフィスORの径は略0.2mmが好ましいと考えられる。
【0073】
[効果]
(1)本実施形態の実装装置1は、電子部品4が実装される基板2を基準位置Rに保持する保持テーブル210と、保持テーブル210に設けられ、負圧の吸引力によって基板2を保持テーブル210の表面に引き寄せて保持するための複数の吸引孔11と、保持テーブル210の一辺に沿う方向に並び、それぞれが複数の吸引孔11を含む複数の吸引孔グループ10と、基準位置Rに保持された基板2に、電子部品4を圧着する圧着部100と、を有し、複数の吸引孔グループ10のうちのいずれかの吸引孔グループ10は、当該吸引孔グループ10に含まれる吸引孔11のうち、基準位置Rに近い側の吸引孔11の吸引力が、他の吸引孔11の吸引力よりも大きい。
【0074】
このため、吸引孔グループ10の全ての吸引孔11を基板2が覆っていない場合であっても、基準位置Rに近い側の吸引孔11の吸引力によって、基板2を保持しつつ、覆われていない吸引孔11からのリーク量を抑えることができる。従って、多種多様な基板2のサイズに対応した吸引孔11を多数設け、バルブや蓋などの吸引力を調整する部材を増加させずに、簡易な構造でサイズの異なる基板2に対応し、確実に吸引保持できる。つまり、吸引力を調整する部材を増加させずに、簡易な構造でリークの影響を抑えて、サイズの異なる基板2をそのサイズを含む領域で確実に吸引保持できる。
【0075】
さらに、本実施形態では、基準位置Rに近い吸引孔11(例えば、吸引孔11a)の吸引力を、他の吸引孔11(例えば、吸引孔11b~11j)の吸引力よりも大きくしている。したがって、概ね、吸引孔11aが基板2に覆われ、他の吸引孔11b~11jが覆われないことになるため、エアーのリークの多くは吸引孔11b~11jで生じる。吸引孔11b~11jは、吸引孔11aに対して吸引量(排気量)が小さいので、エアーのリーク量も小さい。このため、当該吸引孔グループ10の吸引力の低下は抑制される。
【0076】
(2)基準位置Rは、複数の吸引孔グループ10の並び方向における中央であり、各吸引孔グループ10の吸引力の大きな吸引孔11は、基準位置Rを挟んで対称に配置されている。このため、基板2の中央を基準位置Rに合わせることにより、基板2の中央を挟んだX方向の両側で、特に吸引孔グループ10の吸引力の大きな吸引孔11によって吸引保持される。つまり、基板2の実装部21が並ぶ方向において、基板2のより外側に近い領域を吸引力の大きな吸引孔11で吸引することができる。これにより、基板2をより安定的に吸引保持できる。
【0077】
(3)吸引孔グループ10は、複数の吸引孔グループ10の並び方向に直交する方向に延び、各吸引孔11にそれぞれ連通した溝12を有する。このため、溝12の長手方向に沿う長さの広い領域で、基板2を安定して吸引保持できる。
【0078】
(4)吸引孔グループ10における吸引力の大きな吸引孔11以外の吸引孔11は、吸引力が同じである。このため、エアーのリークは同じ弱い吸引力の吸引孔11からとなるので、基板2に覆われていない場合の吸引孔11からのリーク量が、突然に過大となるのを抑えることができる。つまり、同じ弱い吸引力の吸引孔11の数が変化しても、リーク量は徐々に変化するのに対し、もし、吸引力が同じでない場合、大きな吸引孔11が、一番基準位置Rに近い吸引孔11以外で含まれると、その吸引孔11が塞がれない場合にリーク量の急激な増大が発生してしまう。このため、基板2の吸引保持の状態が不安定となる虞が生じてしまう。吸引孔グループ10における吸引力の大きな吸引孔11以外の吸引孔11の吸引力が同じであれば、このような基板2のサイズによって、不安定な吸引保持の状態となることを抑制できる。
【0079】
(5)吸引孔11は排気流路を介して排気装置(吸引ポンプ16)に接続され、吸引孔グループ10において、吸引力の大きな吸引孔11から排気装置に至るまでの排気流路の最も小さな内径が、他の吸引孔11から排気装置に至るまでの排気流路の最も小さな内径よりも大きい。このため、排気流路の内径を異なるものとするだけで、吸引力を調整できるので、保持テーブル210に設ける吸引孔11の径を同じとすることができ、加工が容易となる。溝12を形成する場合にも、溝12の幅を同じとすることができ、同様に加工が容易となる。
【0080】
(6)複数の吸引孔11からなる吸引孔グループ10毎に、開閉制御弁15を介して排気装置に接続されている。このため、吸引孔グループ10毎の開閉制御弁15の選択的な開閉により、基板2のサイズに合わせて吸引孔グループ10毎に吸引力を付与するようにした。この時、基板2のサイズによって、吸引孔グループ10内で、リークしてしまう吸引孔11が生じたとしても、リークしていない吸引孔11で基板2を吸引保持できるように各吸引孔11の吸引力を設定するようにしたので、確実に基板2を吸引保持することができる。つまり、負圧がリークして吸引力が低下しないように、基板2にかからない吸引孔11の吸引経路を閉塞する開閉制御弁15を、すべての吸引孔11に設ける必要がない。
【0081】
基板2のサイズによって、吸引孔グループ10の一部の吸引孔11が基板2によって覆われ、一部の吸引孔11が覆われない場合、覆われていない一部の吸引孔11からのエアーのリークが生じる。しかし、本実施形態では、吸引孔グループ10毎に、開閉制御弁15を介して排気装置に接続されているので、エアーのリークが生じている吸引孔グループ10だけの吸引を行わないようにできる。これにより、全ての吸引孔11にエアーのリークの影響が及ぶことを防止できる。
【0082】
(7)各吸引孔グループ10において、全ての吸引孔11によって、基板2を吸引している場合の吸引力に対して、吸引力の大きな吸引孔11のみによって基板2を吸引している場合の吸引力の比が、0.6以上である。これにより、吸引力が大きい吸引孔11のみによって基板2を吸引している場合にも、リーク量を抑えて、基板2を安定して保持できる。
【0083】
[変形例]
本発明は、上記の実施形態には限定されない。上記の実施形態と基本的な構成は同様として、以下のような変形例も適用可能である。
【0084】
(1)吸引孔グループ10の数、それぞれに含まれる吸引孔11の数は、複数であればよく、上記で例示した数には限定されない。溝12の数も吸引孔11に対応していればよい。但し、必ずしも溝12はなくてもよい。
【0085】
(2)基準位置Rは、保持テーブル210の一辺の中央である必要はない。例えば、図8に示すように、保持テーブル210の一辺の端部であってもよい。この場合、基準位置Rに最も近い吸引孔グループ10Aの全ての吸引孔11、吸引孔グループ10B~10Dの吸引孔11aのみの吸引力を大きくする。もちろん、基準位置Rは、保持テーブル210の一辺の端部でなくてもよく、必要に応じて設定することができる。このように、基準位置Rに基づいて、複数の吸引孔11のうち、吸引力の大きい吸引孔11と吸引力の小さい吸引孔11を設け、それをグループ化するようになっていればよい。
【0086】
(3)上記の実施形態では、実装装置1を本圧着装置としたが、実装装置1を仮圧着装置Cとして構成してもよい。つまり、仮圧着のための保持テーブル210を、上記と同様に構成することにより、仮圧着においても、安定して基板2を保持できる。
【0087】
(4)基板2における実装部21の数は、上記の実施形態で例示した数には限定されない。実装部21の配置位置も、基板2の一辺ではなく、二辺以上に沿う位置であってもよい。本実施形態同様の吸引孔グループ10を、実装部21の配置に対応して設ければよい。
【0088】
(5)中央吸引部213による基板2の保持は、バキュームチャックには限定されない。例えば、静電チャック、メカニカルチャックであってもよい。
【0089】
(6)接着材料3としては異方性導電部材に限らず、基板2と電子部品4とを電気的に接続する必要がない場合には、単なる両面接着テープや溶液状の接着剤などであってもよい。
【0090】
(7)吸引力を大きくする吸引孔11は、吸引孔グループ10内で一番基準位置Rに近い11aだけには限定されない。例えば、一番近い11a、次に近い11bの2つを、その他より吸引力を大きくする。吸引力を大きくする吸引孔11は、2つに限らない。3つでもよいし、4つでもよいが、それは基準位置Rに近い側とし、残りの吸引孔11は、皆小さな吸引力とする。基準位置Rに近いと、その吸引孔グループ10の吸引エリアを覆う基板2のサイズのうち、最小の基板2を吸引するのに適した吸引をすることができる。また、吸引孔グループ10ごとに、吸引力を大きくする吸引孔11の数を変えてもよい。例えば吸引孔グループ10Bは2つ、吸引孔グループ10Cは3つ等としてもよい。これにより、基板2のサイズに合わせて、リーク量を抑えた吸引孔グループ10の組み合わせとすることができる。なお、これらの場合にも、全ての吸引孔11によって、基板2を吸引している場合の吸引力に対して、吸引力の大きな吸引孔11のみによって基板2を吸引している場合の吸引力の比が、0.6以上であることが好ましい。
【0091】
(8)上記の態様では、吸引孔11の吸引力が全て同じ吸引孔グループ10を、基準位置R(中央)としていたが、これには限定されない。基板2のサイズによって、吸引孔グループ10のエリア内でのサイズが変わらない場合、吸引孔グループ10Aを配置してもよい。例えば、図10に示すように、基準位置Rに近い側から、吸引孔グループ10A-10B-10A―10Cなどの順に配置してもよい。これにより、既知の基板2のサイズに対応する最適配置ができる。なお、吸引孔グループ10Aが全部塞がれない基板2の場合には、その吸引孔グループ10Aの吸引を行わない、つまりOFFにすればよい。
【0092】
(9)上記の態様では、オリフィスORを用いることによって、異なる吸引力となる吸引孔11を容易に構成できた。同様に、異なる径の配管を用いることによって、吸引孔11の吸引力を変えてもよい。また、流量調整弁又は圧力調整弁を用いて、吸引孔11の吸引力を変えてもよい。この場合、吸引力の大きな吸引孔11以外を共通流路として、吸引力が小さくなるように調整する。さらに、各吸引孔グループ10で吸引力の大きな吸引孔11につながる流路と、その他の吸引孔11につながる共通流路とを、複数のポンプによって別圧力の吸引を行ってもよい。つまり、吸引力の大きな吸引孔11の流路と、その他の吸引孔11の流路の2重流路としてもよい。これにより、吸引力の微調整を容易に行うことができる。
【0093】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 実装装置
10、10A~10D 吸引孔グループ
11、11a~11j 吸引孔
12、12a~12j 溝
13、13a~13j 吸引管
14 接続管
15 開閉制御弁
16 吸引ポンプ
2 基板
3 接着材料
4 電子部品
21、21a~21e 実装部
100 圧着部
120 圧着ツール
121 押圧面
122 ヒータ
130 支持部
140 シリンダ
150 バックアップツール
151 バックアップ面
152 支持体
154 ヒータ
160 クッションシート
200 位置決め部
210 保持テーブル
211 保持面
212 側部吸引部
213 中央吸引部
220 位置決めユニット
221 Xテーブル
221a X可動体
221b X駆動源
222 Yテーブル
222a Y可動体
222b Y駆動源
223 昇降機構
223a 支持体
223b 支持部
223c ねじ軸
223d ガイド軸
223e Z可動体
223f 従動歯車
223g 駆動歯車
223h Z駆動源
223i 駆動軸
224 取付け部材
225a θ駆動源
225b θ可動体
300 制御装置
301 吸引制御部
302 位置決め制御部
303 圧着制御部
304 記憶部
310 入力装置
320 表示装置
R 基準位置
OR オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10