(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049351
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】デュアル燃料エンジン用噴射ノズル、デュアル燃料エンジン、およびこれを操作するための方法
(51)【国際特許分類】
F02M 61/14 20060101AFI20240402BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F02M61/14 310U
F02D19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149220
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】10 2022 124 897.6
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・インドリッヒ
【テーマコード(参考)】
3G066
3G092
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066BA53
3G066BA61
3G066CA26
3G092AB03
3G092AB06
3G092AB12
3G092EA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デュアル燃料エンジンのシリンダ用噴射ノズルを提供すること。
【解決手段】噴射ノズル23を介して、第1の動作モードでは第1の燃料を、第2の動作モードでは第2の燃料用点火流体を燃焼チャンバ内に導入する。噴射ノズル23は、噴射オリフィス25および噴射オリフィス26を備えた噴射ノズル本体24と、噴射ノズル弁体27とを備え、噴射オリフィス25は噴射オリフィス26より小さい断面を有し、噴射オリフィス25、26は、軸方向で、したがって噴射ノズル弁体27の変位方向で見ると所定の距離を有しており、噴射オリフィス25、26を閉口または閉塞させる噴射ノズル弁体27の変位方向X1で見ると、噴射オリフィス25は噴射オリフィス26の前に置かれ、噴射オリフィス25、26を開口または開放させる噴射ノズル弁体27の変位方向(X2)で見ると、噴射オリフィス25は噴射オリフィス26の後ろに置かれている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアル燃料エンジン(1)のシリンダ(2)用噴射ノズル(23)であって、前記噴射ノズル(23)を介して、前記デュアル燃料エンジン(1)の第1の動作モードでは第1の燃料を、前記デュアル燃料エンジン(1)の第2の動作モードでは第2の燃料用点火流体を、前記シリンダ(2)の燃焼チャンバ(9)内に導入することができ、前記噴射ノズル(23)は、第1の噴射オリフィス(25)および第2の噴射オリフィス(26)を備えた噴射ノズル本体(24)と、前記噴射ノズル本体(24)内に変位可能に案内される噴射ノズル弁体(27)とを備え、前記第1の噴射オリフィス(25)は前記第2の噴射オリフィス(26)より小さい噴射オリフィス断面を有し、前記第1および第2の噴射オリフィス(25、26)は、軸方向で、したがって前記噴射ノズル弁体(27)の変位方向で見ると所定の距離を有する、噴射ノズル(23)において、前記噴射オリフィス(25、26)を閉口または閉塞させる前記噴射ノズル弁体(27)の変位方向(X1)で見ると、前記第1の噴射オリフィス(25)は前記第2の噴射オリフィス(26)の前に位置し、前記噴射オリフィス(25、26)を開口または開放させる前記噴射ノズル弁体(27)の変位方向(X2)で見ると、前記第1の噴射オリフィス(25)は前記第2の噴射オリフィス(26)の後ろに位置していることを特徴とする、噴射ノズル(23)。
【請求項2】
前記噴射ノズル弁体(27)は、前記噴射ノズル本体(24)の第1の弁座(24a)と相互作用する第1の弁体部分(27a)と、前記噴射ノズル本体(24)の第2の弁座(24b)と相互作用する第2の弁体部分(27b)とを備え、特に、前記噴射ノズル弁体(27)が前記第1の噴射オリフィス(25)と前記第2の噴射オリフィス(26)の両方を開口するまたは開放する場合に、前記第1の弁体部分(27a)は前記第1の弁座(24a)から離れて持ち上げられ、前記第2の弁体部分(27b)は前記第2の弁座(24b)から離れて持ち上げられることを特徴とする、請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
特に前記噴射ノズル弁体(27)のみが前記第1の噴射オリフィス(25)を開口するまたは開放する場合、前記第1の弁体部分(27a)は前記第1の弁座(24a)から離れて持ち上げられるが、前記第2の弁体部分(27b)は前記第2の弁座(24b)に接していることを特徴とする、請求項2に記載の噴射ノズル。
【請求項4】
前記噴射ノズル(23)が前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内へ前記第1の燃料を導入するために働く、前記デュアル燃料エンジンの前記第1の動作モードにおける前記噴射ノズル弁体(27)は、前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内に前記第1の燃料を導入するために前記第1および第2の噴射オリフィス(25、26)を開口するまたは開放することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項5】
前記噴射ノズル(23)が前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内へ前記点火流体を導入するために働く、前記デュアル燃料エンジンの前記第2の動作モードにおける前記噴射ノズル弁体(27)は、前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内に前記点火流体を導入するために前記第1の噴射オリフィス(25)を開口するまたは開放するが、前記第2の噴射オリフィス(26)は閉口または閉塞されたままにすることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項6】
前記噴射ノズル(23)が前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内へ前記点火流体を導入するために働く、前記デュアル燃料エンジンの前記第2の動作モードにおける前記噴射ノズル弁体(27)は、前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内に前記点火流体を導入するために前記第1および前記第2の噴射オリフィス(25、26)を開口するまたは開放することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項7】
前記噴射ノズル弁体(27)の前記第1の弁体部分(27a)は円錐台形の輪郭をしており、前記噴射ノズル弁体(27)の前記第2の弁体部分(27b)は円筒形の輪郭をしていることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項8】
前記噴射ノズル(23)が前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内へ前記第1の燃料を導入するために働く、前記デュアル燃料エンジンの前記第1の動作モードでは、前記第1の燃料は、前記噴射ノズル弁体(27)と前記噴射ノズル本体(24)との間の間隙を通して外側で前記噴射ノズル弁体(27)に沿ってのみ流れることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項9】
前記噴射ノズル(23)が前記シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内へ前記点火流体を導入するために働く、前記デュアル燃料エンジンの前記第2の動作モードでは、前記点火流体は、前記噴射ノズル弁体(27)と前記噴射ノズル本体(24)との間の間隙を通して外側で前記噴射ノズル弁体(27)に沿ってのみ流れることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の噴射ノズル。
【請求項10】
前記デュアル燃料エンジンの第1の動作モードでは、少なくとも1つのシリンダ(2)を有する燃焼チャンバ(9)に第1の燃料を供給してそれを燃焼させることができ、前記デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、前記少なくとも1つのシリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)に、一方では、第2の燃料を供給してそれを燃焼させ、もう一方では、点火流体を供給してそれを点火するデュアル燃料エンジンにおいて、前記それぞれのシリンダ(2)に対して、請求項1から9のいずれか一項に記載の噴射ノズル(23)を備えている燃料供給デバイスであって、前記噴射ノズル(23)を介して、前記第1の動作モードでは前記第1の燃料を、前記第2の動作モードでは前記点火流体を前記それぞれのシリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内に導入することができる、燃料供給デバイスを特徴とする、デュアル燃料エンジン。
【請求項11】
前記デュアル燃料エンジンの前記第2の動作モードでは、点火流体は、前記それぞれのシリンダ(2)の第1および第2の噴射オリフィス(25、26)を介して、前記それぞれのシリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(9)内に導入される、請求項10に記載のデュアル燃料エンジンを操作するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載のデュアル燃料エンジン用噴射ノズルに関する。さらに、本発明は、デュアル燃料エンジン、およびこれを操作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実践から、一方では、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードにおいて、第1の燃料、特にディーゼルなどの液体引火性燃料、もう一方では、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードにおいて、第2の燃料、特に天然ガスなどの気体低引火性燃料を燃焼させることができる、デュアル燃料エンジンが知られている。デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、希薄な気体空気混合物が一般的に、デュアル燃料エンジンのシリンダ内に導入され、同様にシリンダに導入された点火流体の点火エネルギーによって点火される。
【0003】
図1では、従来技術から知られるデュアル燃料エンジン1のアセンブリが知られ、
図1はこのようなデュアル燃料エンジン1のシリンダ2を示している。シリンダ2は、シリンダヘッド3を有する。シリンダ2では、接続ロッド5によって案内されるピストン4が上下に移動する。シリンダヘッド3では、噴射ノズル6が取り付けられ、これを通して、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードでは第1の燃料、特に液体ディーゼル燃料を、燃料ライン7を介して燃料ポンプ8からシリンダ2の燃焼チャンバ9内に噴射させることができる。噴射ノズル6、燃料ライン7と燃料ポンプ8は、シリンダ2の燃焼チャンバ9内に第1の燃料を供給するために働く、燃料供給デバイスの要素である。この燃料供給デバイスは、特に、デュアル燃料エンジンのシリンダ2内で、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードにおいて、液体燃料、特にディーゼルが第1の燃料として燃焼される場合にアクティブである。
【0004】
液体燃料を燃焼するために、給気10はさらに、吸気バルブ17を介してデュアル燃料エンジン1のそれぞれのシリンダ2内に導入することができ、燃料の燃焼中に生じる排気ガス15は、デュアル燃料エンジン1のそれぞれのシリンダ2から排気バルブ18を介して排出することができる。
【0005】
デュアル燃料エンジン1のシリンダ2の燃焼チャンバ9では、第2の燃料、特に気体は、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードで燃焼させることができる。この目的から、デュアル燃料エンジン1は混合物形成ユニット20を備え、この中で、燃焼空気10、および気体供給ライン21を介して混合物形成ユニット20に提供される気体の混合物が形成され、前記気体空気混合物は吸気バルブ17を介してシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入される。排気ガス15はまた、排気バルブ18を介してシリンダ2から排出することができる気体の燃焼中に生じる。点火流体は、第2の燃料、特に気体空気混合物をシリンダ2の別の燃焼チャンバ11内で点火させるために働き、点火流体は点火流体インジェクタ13の助けをかりて、シリンダ2の別の燃焼チャンバ11内に導入することができ、シリンダ2のこの別の燃焼チャンバ11は、少なくとも1つの接続チャネル12を介して燃焼チャンバ9に結合される。別の方法では、点火流体はまた、燃焼チャンバ9内に直接導入することができる。
図1に示したシリンダ2の点火流体インジェクタ13は、デュアル燃料エンジン1の点火流体噴射システムの一部であり、デュアル燃料エンジン1の各シリンダ2の点火流体噴射システムは、個別の点火流体インジェクタ13を備えている。点火流体インジェクタ13は、点火流体噴射システムの共通の点火流体リザーバ22から始まる点火流体ライン14を介して点火流体を供給することができ、点火流体リザーバ22は、点火流体リザーバ22に点火流体を供給する点火流体運搬ポンプ16が割り当てられる。点火流体運搬ポンプ16は、電気動作高圧ポンプである可能性がある。点火流体運搬ポンプ16は、吸引チョーク19が割り当てられる。
【0006】
そのように実践から知られているデュアル燃料エンジン1は、一方では、デュアル燃料エンジン1の第1の動作モードで第1の燃料を供給するための燃料供給デバイスを備え、もう一方では、実践から知られているデュアル燃料エンジン1は、第2の燃料を燃焼させるようにデュアル燃料エンジン1の第2の動作モードでデュアル燃料エンジン1のシリンダ2内に点火流体を導入するために、別個の点火流体噴射システムを有する。
【0007】
そのように実践から知られているデュアル燃料エンジンは、2つの噴射システム、すなわち、第1の燃料用の燃料供給デバイス、および点火流体用の点火流体噴射システムを有する。点火流体は典型的には、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、点火流体噴射システムのそれぞれの点火流体インジェクタを介してそれぞれのシリンダ内に比較的少量で導入することができる第1の動作モードの第1の燃料である。実践から知られているデュアル燃料エンジンでは、第1の燃料用の燃料流体供給デバイスの噴射ノズルは、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードにおいてこのような少量の第1の燃料を運搬するのに適していない。そのため、このことによって2つの噴射システムが必要となり、デュアル燃料エンジンの複雑な構造が必要となる。
【0008】
DE102017122117A1から、一方では第1の動作モードにおいて、第1の燃料、もう一方では第2の動作モードにおいて、点火流体をデュアル燃料エンジンのそれぞれのシリンダの燃焼チャンバ内に導入することができる、デュアル燃料エンジンのシリンダの噴射ノズルが知られている。この場合、2つの噴射システムは必要なくなる。噴射ノズルの噴射ノズル本体では、第1の噴射オリフィスおよび第2の噴射オリフィスが導入され、第1の噴射オリフィスは第2の噴射オリフィスより小さい噴射オリフィス断面を有する。噴射ノズル弁体は噴射ノズル本体と相互作用し、軸方向で、したがって噴射ノズル弁体の変位方向で見ると、第1の噴射オリフィスおよび第2の噴射オリフィスは、互いから所定の距離を有する。
【0009】
特許文献1によると、噴射オリフィスを閉口または閉塞させる噴射ノズル弁体の変位方向で見ると、第2の噴射オリフィスは、第1の噴射オリフィスの前に配置されている。噴射オリフィスを開口または開放させる噴射弁体の対向する変位方向で見ると、第2の噴射オリフィスは第1の噴射オリフィスの後ろに位置決めされている。噴射ノズル弁体内で、ガイドチャネルは案内され、これを通して第1の燃料または点火流体は、デュアル燃料エンジンの第1の動作モード、また第2の動作モードの両方で流れる。
【0010】
特許文献1の噴射ノズルは既に、デュアル燃料エンジン上の噴射システム、すなわち、点火流体用の別個の噴射システムを省くことを可能にするが、点火流体用の別個の噴射システムを省略することを同様に可能するが、製造するのがより容易であるデュアル燃料エンジン用の代替噴射ノズルの必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のことから、本発明は、新しいタイプのデュアル燃料エンジン用噴射ノズル、このような噴射ノズルを有するデュアル燃料エンジン、およびデュアル燃料エンジンを操作するための方法を作り出す目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の噴射ノズルによって、請求項10に記載のデュアル燃料エンジンによって、および請求項11に記載の方法によって解決される。
【0014】
本発明によると、噴射オリフィスを閉口または閉塞させる噴射ノズル弁体の変位方向で見ると、第1の噴射オリフィスは第2の噴射オリフィスの前に置かれ、噴射オリフィスを開口または開放させる噴射ノズル弁体の変位方向で見ると、第1の噴射オリフィスは第2の噴射オリフィスの後ろに置かれている。
【0015】
本発明による噴射ノズルでは、噴射ノズルの第1の噴射オリフィスおよび噴射ノズルの第2の噴射オリフィスの相対位置が、従来技術に対して交換される、すなわち、噴射オリフィスを閉口または閉塞させる噴射ノズル弁体の変位方向で見ると、より小さい噴射オリフィス断面を備えた第1の噴射オリフィスがより大きい噴射オリフィス断面を備えた第2の噴射オリフィスの前に置かれ、噴射オリフィスを開口または開放させる噴射ノズル弁体の変位方向で見ると、より小さい噴射オリフィス断面を備えた第1の噴射オリフィスがより大きい噴射オリフィス断面を備えた第2の噴射オリフィスの後ろに置かれているという事実により、噴射ノズルのより単純な製造が可能である。特に、噴射ノズル弁体を通して延びる、第1の燃料または点火流体用のガイドチャネルを省略することができる。
【0016】
本発明による噴射ノズルの噴射ノズル弁体は、噴射ノズル本体の第1の弁座と相互作用する第1の好ましくは円錐台形弁体部分と、噴射ノズル本体の第2の弁座と相互作用する第2の好ましくは円筒形弁体部分とを備えることが好ましく、特に噴射ノズル弁体が第1の噴射オリフィスおよび第2の噴射オリフィスの両方を開口するまたは開放する場合に、第1の弁体部分は第1の弁座から離れて持ち上げられ、第2の弁体部分は第2の弁座から離れて持ち上げられる。これは、噴射ノズルの単純な製造に好ましい。
【0017】
本発明による噴射ノズルの噴射ノズル弁体は、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードで開放または開口することが好ましく、噴射ノズルはシリンダの燃焼チャンバ内に点火流体を導入するために働き、第1および第2の噴射オリフィスはシリンダの燃焼チャンバ内に点火流体を導入するために働く。これにより、点火のためにも、それぞれのシリンダの燃焼チャンバ内に第2の噴射オリフィスを介して点火流体を導入することが可能である。
【0018】
第1の燃料はデュアル燃料エンジンの第1の動作モードで流れることが好ましく、噴射ノズルは、噴射ノズル弁体と噴射ノズル本体との間の間隙を通して噴射ノズル弁体に沿って外側のみに、シリンダの燃焼チャンバ内へ第1の燃料を導入するために働き、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、噴射ノズルはシリンダの燃焼チャンバ内に点火流体を導入するために働き、点火流体は同様に、噴射ノズル弁体と噴射ノズル本体との間の間隙を通して噴射ノズル弁体に沿って外側のみに流れる。デュアル燃料エンジンの第1の動作モードおよび第2の動作モード両方では、第1の燃料または点火流体および点火流体は、噴射ノズル弁体と噴射ノズル本体との間の間隙を通してのみ流れる。第1の燃料または点火流体に従来技術で必要とされるノズル弁体を通して延びるガイドチャネルを省略することができる。
【0019】
本発明の好ましい別の発展形態が、従属請求項および以下の記載から得られる。
【0020】
本発明の例示的実施形態は、これに制約されることなく、図によりより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術によるデュアル燃料エンジンのブロック図である。
【
図2】第1の状態の本発明による噴射ノズルの詳細を示す図である。
【
図5】本発明による噴射ノズルの機能性を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、デュアル燃料エンジン用噴射ノズル、およびデュアル燃料エンジンに関する。デュアル燃料エンジンの基本的構成は、ここで取り扱われる当業者によく知られており、
図1を参照して既に詳細に説明された。したがって、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードでは、第1の燃料、特に、例えばディーゼル燃料などの液体引火性燃料がエンジンのシリンダ内に導入され、シリンダ内で燃焼される。デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、第2の燃料、特に気体燃料および空気などの低引火性である混合物が、デュアル燃料エンジンのシリンダ内に導入され、点火流体を介して点火される。特に、第1の動作モードの液体燃料は第2の動作モードでは点火流体として働くが、第2の動作モードでは、第1の動作モードよりシリンダの燃焼チャンバ内により少ない量が導入される。第1の動作モードの第1の燃料の代わりに、異なる点火流体を、第2の動作モードの第2の燃料を点火する点火流体として利用することもできる。例えば、DMB、DMXまたはVLSFO燃料などの船舶用ディーゼルオイル、HVO(水素化野菜オイル)燃料またはHFO(重燃料オイル)燃料を利用することができる。しかし、この一覧は単に例示的性質のものである。他の点火流体も利用することができる。
【0023】
これを可能にするため、実践から知られているデュアル燃料エンジンは、2つの別個の噴射システム、すなわちこれを介して第1の動作モードでは、第1の燃料がデュアル燃料エンジンのシリンダ内に比較的大量に導入される燃料噴射システム、およびこれを介して第2の動作モードでは、点火流体がシリンダ内に比較的少量で導入される点火流体噴射システムを有する。ここに存在する発明は、デュアル燃料エンジン1のシリンダ2用の噴射ノズル23に関し、これを介して、第1の動作モードでは、液体燃料、および第2の動作モードでは、点火流体をそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入することができ、したがって、2つの別個の噴射システムが必要ない。
【0024】
図2、
図3および
図4はそれぞれ、その異なる状態での本発明による発明23の抜粋を示し、噴射ノズル23の噴射ノズル本体24および噴射ノズル弁体27が抜粋として示されている。噴射ノズル弁体27は、すなわち、変位方向X1に噴射ノズル23を閉じるために、および対向する変位方向X2に噴射ノズル23を開くために、噴射ノズル本体24に平行変位可能である。
【0025】
噴射ノズル23の噴射ノズル本体24は、第1の噴射オリフィス25および第2の噴射オリフィス26を有し、
図2、
図3および
図4では、単に1つの第1の噴射オリフィス25および1つの第2の噴射オリフィス26がそれぞれ示されている。噴射ノズル本体24の周方向に、多数のこのような噴射オリフィス25、26が配置されている。
【0026】
第1の噴射オリフィス25は、第2の噴射オリフィス26より小さい噴射オリフィス断面を有し、第1の噴射オリフィス25および第2の噴射オリフィス26は、噴射ノズル弁体27の変位方向で見ると、互いから所定の距離を有する、すなわち、それぞれの変位方向X1およびX2に互いからオフセットされる。
【0027】
本発明に関して、第2の噴射オリフィス26と比較して、より小さい噴射オリフィス断面を有する第1の噴射オリフィス25は、噴射オリフィス25、26を閉口または閉塞させる噴射ノズル弁体27の変位方向X1で見られるように配置され、したがって、噴射ノズル23のものは、第2の噴射オリフィス26の前に配置されている。噴射オリフィス25、26の開口または開放と反対側の噴射ノズル弁体27の、したがって噴射ノズル23の第2の変位方向X2で見ると、第2の噴射オリフィス26に対してより小さい噴射オリフィス断面を有する第1の噴射オリフィス25は、第2の噴射オリフィス26の後ろに配置されている。
【0028】
噴射ノズル弁体27は、第1の弁体部分27aおよび第2の弁体部分27bを備えている。第1の弁体部分27aは、噴射ノズル本体24の第1の弁座24aと相互作用する。第2の弁体部分27bは、噴射ノズル本体24の第2の弁座24bと相互作用する。
【0029】
特に、噴射ノズル23が非アクティブである、すなわち、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードにおいて第1の燃料を噴射するためにも、またはデュアル燃料エンジンの第2の動作モードにおいて点火オイルを噴射するためにも利用されない場合、ノズル弁体27は、第1の噴射オリフィス25と第2の噴射オリフィス26の両方を閉口または閉塞する。この場合、第1の弁体部分27aは第1の弁座24aに接しており、第2の弁体部分27bは第2の弁座24bに接している。これは、
図2に示されている。
【0030】
特に、
図4によると、噴射ノズル弁体27が第1の噴射オリフィス25と第2の噴射オリフィス26の両方を開口するまたは開放する場合、第1の弁体部分27aは第1の弁座24aから離れて持ち上げられ、第2の弁体部分27bは第2の弁座24bから離れて持ち上げられる。
図4に示されたこのような状態は、特にデュアル燃料エンジン1が第1の動作モードで利用される場合に少なくとも利用される。その後、第1の燃料は第1の噴射オリフィス25を介して、および第2の噴射オリフィス26を介して、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ内にそれぞれ導入することができる。
【0031】
図2の状態から始まる噴射ノズル23が
図4の状態に変位される前に、噴射ノズル23は
図3の状態を取り、
図3では、単に第1の噴射オリフィス25が開口または開放されるが、第2の噴射オリフィス26はそうではない。
図3の状態では、第1の弁体部分27aが第1の弁座24aから離れて持ち上げられるが、第2の弁体部分27bは第2の弁座24bに接している。
【0032】
したがって、
図4では、第1の燃料または点火流体がそれぞれ第1の噴射オリフィス25および第2の噴射オリフィス26を介してそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入され、燃料または燃焼流体は、単に第1の噴射オリフィス25を介して
図3の状態でそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入することができる。
【0033】
図2の状態および
図3の状態の両方では、第1の燃料または点火流体は、外側で噴射ノズル弁体27に沿って、すなわち、噴射ノズル本体27と噴射ノズル弁体27との間に形成された間隙を通してのみ流れる。この間隙は
図3では比較的小さく、第1の噴射オリフィス25と単に連通する。
図4では、この間隙は比較的大きく、第1の噴射オリフィス25と、第2の噴射オリフィス26の両方と連通する。
【0034】
噴射ノズル弁体27の第1の弁体部分27aは円錐台形の輪郭をしており、噴射ノズル弁体27の第2の弁体部分27bは円筒形の輪郭をしている。
【0035】
図5は、噴射タイミングプロファイルでそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に本発明による噴射ノズル23の助けをかりて噴射動作または噴射サイクル中に導入することができる噴射量Mを図で示している。
【0036】
時間tにわたって、3つの異なる曲線プロファイル32、33および34が、噴射量Mに対して、すなわち、点火オイルがそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に第1の噴射オリフィス25を介してのみ導入される、曲線プロファイル32では、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードに対する噴射量で、曲線プロファイル33では、第1の燃料が第1の噴射オリフィス25と第2の噴射オリフィス26の両方を介してそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入される、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードに対する噴射量で、および曲線プロファイル34では、第2の動作モードをそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入することができる噴射量で、すなわち、特に第2の動作モードでは、燃料流体が第1の噴射オリフィス25と第2の噴射オリフィス26の両方を介してそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入される場合に、描かれている。
【0037】
図5の時間t0では、デュアル燃料エンジン1のそれぞれのシリンダ2内へのそれぞれの噴射動作または噴射サイクルは、その噴射ノズル23の助けをかりて始まり、時間t0の前に、噴射ノズル23は
図2の状態をとる。
図5の時間t0とt1との間で、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に点火流体または第1の燃料を第1の噴射オリフィス25を介して導入するために、
図3の状態の方向に
図2の状態から始まり、噴射ノズル23の噴射ノズル弁体27が移動される。
図5の時間t1とt2との間に、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に第1の噴射オリフィス25を介して導入することができる噴射量Mは一定であり、
図5では、時間t2とt3との間に、
図3の状態から始まる噴射ノズル23の噴射ノズル弁体27が再び、
図2の状態の方向に移行され、それによって、時間t3では、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内への点火流体の導入が終了する。したがって、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードにおいて、第1の噴射オリフィス25のみがそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に点火流体を導入するために利用される場合、曲線プロファイル32は時間t0とt3との間で形成される。
【0038】
デュアル燃料エンジンの第1の動作モードでは、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内への噴射量Mの導入は、曲線プロファイル33を介して、すなわち、
図2の状態から始まる噴射ノズル23が
図3の状態を介して
図4の状態内に移行されるように、すなわち、時間t0とt4との間で、初期では第1の燃料が噴射ノズル23の第1の噴射オリフィス25を介してのみ導入され、加えてデュアル燃料エンジンのそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内への噴射ノズル23の第2の噴射オリフィス26を介する導入が時間t4で開始するようにして行われる。時間t6で始まり、噴射ノズル23の閉口はそれぞれの噴射サイクルの終わりに起こり、時間t6とt7との間では、噴射ノズル23の第2の噴射オリフィス26が、時間t7とt8との間ではまた、噴射ノズル23の第1の噴射オリフィス25が閉口または閉塞される。
【0039】
デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、点火流体はまた、曲線プロファイル34によりそれぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入することができ、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードでは、その後、それぞれの噴射ノズル23の第1の噴射オリフィス25とそれぞれの噴射ノズル23の第2の噴射オリフィス26の両方を介して、すなわち、時間t0とt4との間および時間t7’とt8’との間に、第1の噴射オリフィスのみを介して、および時間t4とt6’との間に、第1の噴射オリフィス25と第2の噴射オリフィス26の両方を介して、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入される。
【0040】
本発明による噴射ノズル23では、大量の第1の燃料は、デュアル燃料エンジンの第1の動作モードと同じ単純な設計でデュアル燃料エンジン1のシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入することができ、デュアル燃料エンジンの第2の動作モードにおいて、その後点火流体として働く少量の第1の燃料を導入することができる。点火流体用の別個の噴射システムは必要ない。本発明による噴射ノズル23は、容易に製造することができる。
【0041】
さらに、本発明は、多数のシリンダ2を有することが好ましいデュアル燃料エンジン1に関し、各シリンダ2は本発明による噴射ノズル23を備えている。さらに、本発明はデュアル燃料エンジンの第2の動作モードにおいてデュアル燃料エンジン1を操作するための方法に関し、噴射ノズル23はそれぞれのシリンダの燃焼チャンバ9内に点火流体を導入するように働き、点火流体の導入は
図5の曲線プロファイル34にしたがって起こり、その後、第2の動作モードにおいて、点火流体は、比較的小さい噴射オリフィス断面を備えた第1の噴射オリフィス25を介して、また比較的大きな噴射オリフィス断面を備えた第2の噴射オリフィス26を介した両方で、それぞれのシリンダ2の燃焼チャンバ9内に導入される。
【符号の説明】
【0042】
1 デュアル燃料エンジン
2 シリンダ
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 接続ロッド
6 噴射ノズル
7 燃料ライン
8 燃料ポンプ
9 燃焼チャンバ
10 給気
11 燃焼チャンバ
12 接続チャネル
13 点火流体インジェクタ
14 点火流体ライン
15 排気ガス
16 点火流体運搬ポンプ
17 吸気バルブ
18 排気バルブ
19 吸引チョーク
20 混合物形成ユニット
21 気体供給ライン
22 点火流体リザーバ
23 噴射ノズル
24 噴射ノズル本体
24a 第1の弁座
24b 第2の弁座
25 第1の噴射オリフィス
26 第2の噴射オリフィス
27 噴射ノズル弁体
27a 第1の弁体部分
27b 第2の弁体部分
32 曲線プロファイル
33 曲線プロファイル
34 曲線プロファイル
【外国語明細書】