(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049360
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】自動車のブレーキシステム及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B60T7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155819
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】2209846
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】517271212
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ フランス
【氏名又は名称原語表記】Hitachi Astemo France
【住所又は居所原語表記】126 Rue de Stalingrad, 93700 Drancy, France
(71)【出願人】
【識別番号】523360832
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ ハイルブロン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ASTEMO HEILBRONN GmbH
【住所又は居所原語表記】2 Theresienstrasse 74072 HEILBRONN Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】サッソー ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】デマンドレ マクシム
(72)【発明者】
【氏名】ワング ウェイチャオ
(72)【発明者】
【氏名】パトラオ カルケイホ アレックス
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA08
3D246DA02
3D246GB15
3D246GC14
3D246GC16
3D246HB07A
3D246HB24A
3D246JA12
3D246JB11
3D246JB33
3D246LA13Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】運転者または使用者が、車両の駐車状態の変化を予測し、駐車車両の傾きの増加に応じて、パーキングブレーキのブレーキ力を適応させることができる自動車のブレーキシステム及びその作動方法を提供する。
【解決手段】車輪に配置される少なくとも1つの電気作動式のパーキングブレーキと、第1の要求を受けて、第1の強さでパーキングブレーキ力を加え、または、パーキングブレーキ力を加えることを中断するための指令をパーキングブレーキに発するように構成されたコントロールユニットとを含み、コントロールユニットは、また、第1の要求の後に発せられる第2の要求を受けて、第2の強さでパーキングブレーキ力を加えるための指令をパーキングブレーキに発するように構成された、自動車のブレーキシステム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を固定するための少なくとも1つのパーキングブレーキと、コントロールユニットと、を含み、前記パーキングブレーキは、車輪に配置される電気作動式のものであり、前記コントロールユニットは、前記自動車の第1の傾きに対応する第1の要求を受けて、第1の強さでパーキングブレーキ力を加え、または、パーキングブレーキ力を加えることを中断するための指令を前記パーキングブレーキに発するように構成された、自動車のブレーキシステムであって、
前記コントロールユニットは、また、前記第1の傾きに対する前記自動車の傾きの変化が予測される場合に、前記第1の要求の後に発せられる第2の要求を受けて、第2の強さでパーキングブレーキ力を加えるための指令を前記パーキングブレーキに発するように構成された、自動車のブレーキシステム。
【請求項2】
前記第1の要求および前記第2の要求は、前記自動車の運転者がパーキングブレーキ操作部を操作することによって発せられる、請求項1に記載の自動車のブレーキシステム。
【請求項3】
前記第1の要求および前記第2の要求は、前記コントロールユニットによって発せられ、前記第1の要求は、前記自動車の停車時における前記パーキングブレーキの自動作動である、請求項1に記載の自動車のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2の要求の少なくとも一方は前記コントロールユニットによって発せられ、他方は前記自動車の運転者によって発せられる、請求項1に記載の自動車のブレーキシステム。
【請求項5】
前記パーキングブレーキは、サービスブレーキに統合され、モータ減速ギアを含む、請求項1に記載の自動車のブレーキシステム。
【請求項6】
4つの車輪と、請求項1から5の何れか1項に記載の自動車のブレーキシステムと、を有する自動車であって、前記ブレーキシステムは、各後輪にそれぞれ、2つの前記パーキングブレーキを有する、自動車。
【請求項7】
自動車に取り付けられた、請求項1から5の何れか1項に記載の自動車のブレーキシステムの作動方法であって、
前記自動車を駐車スペースに駐車した後、前記パーキングブレーキを第1の強さで作動させるための第1の要求を発し、
前記第1の強さでパーキングブレーキ力を加える指令を前記パーキングブレーキに送り、
駐車スペースの傾きの変化を予測し、
第2の強さでパーキングブレーキ力を加えるための第2の要求を発し、
前記第2の強さでパーキングブレーキ力を加える指令を前記パーキングブレーキに送る、自動車のブレーキシステムの作動方法。
【請求項8】
前記第1の要求は、前記自動車の運転者または前記コントロールユニットによって発せられ、前記第2の要求は、自動車の運転者によって発せられる、請求項7に記載の自動車のブレーキシステムの作動方法。
【請求項9】
前記第1の要求は、前記自動車の運転者または前記コントロールユニットによって発せられ、前記第2の要求は、前記コントロールユニットによって発せられる、請求項7に記載の自動車のブレーキシステムの作動方法。
【請求項10】
前記第2の要求は、衛星ナビゲーションシステムのコンサルテーションに基づいて、前記コントロールユニットによって発せられる、請求項9に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のブレーキシステム及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ブレーキを備えたブレーキシステムが各車輪に装備されている。
【0003】
ブレーキシステムは、車両の減速と停止を可能にするサービスブレーキを提供する。サービスブレーキは、一般にブレーキペダルを踏むことによって得られる。サービスブレーキは、例えば自動速度制御が望まれる場合には、コントロールユニットによって自動的に制御することができる。
【0004】
ブレーキシステムは、また、駐車時に車両を固定するためのパーキングブレーキも提供する。パーキングブレーキは、非常ブレーキとしても使用される。
【0005】
最近まで、パーキングブレーキは、後輪ブレーキにケーブルで直結されたブレーキレバーを運転者が引くことで作動されていたが、牽引力が大きいほど、パーキングブレーキ力のレベルは高くなる。そのため、運転者はパーキングブレーキ力のレベルを調節することができた。
【0006】
パーキングブレーキは、電気モータを作動させるコントロールユニットに信号を送るボタンを押すことによって作動されることがますます多くなっている。
【0007】
パーキングブレーキ中にブレーキによって加えられるブレーキ力のレベルは、車両の駐車状況に応じてコントロールユニットによって設定される。車両が水平な地面に駐車されている場合、ブレーキ力のレベルは第1の値に設定されるが、車両が斜面に駐車されている場合、ブレーキ力のレベルは第1の値よりも高い第2の値に設定される。ブレーキ力のレベルは、車両の駐車様態を通じて不変に設定され、変更されることはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特定の駐車状況において、ブレーキ力のレベルを増加できることが望ましいことを確認した。例えば、車両が車両運搬セミトレーラーによって輸送される場合、車両はトレーラーに積載され、水平または実質的に水平に駐車される。そして、パーキングブレーキが作動される。車両が水平である場合、車輪に加わるブレーキ力のレベルは、水平な地面に駐車された車両に対してプログラムされたレベルである。しかし、この種のトレーラーでは、輸送する車両の数を最適化するために、いくつかの車両を斜めに配置することがある。この目的のために、トレーラーは傾斜することができる部品を含む。車両が水平に駐車され、パーキングブレーキが作動された後、車両を載せたトレーラーの部分が傾動される。その結果、車両は斜面に駐車される一方、ブレーキ力のレベルは水平または実質的に水平な駐車のレベルである。そのため、車両が十分に固定されないリスクがある。
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、上記の欠点を有しないブレーキシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、車輪に配置される少なくとも1つのパーキングブレーキと、パーキングブレーキ力を与えるようにパーキングブレーキを制御するコントロールユニットとを含み、コントロールユニットは、ブレーキ力を加えるための第1の要求に続く、ブレーキ力を加えるための第2の要求に応じて、ブレーキ力を変化させる指令を送る、自動車のブレーキシステムによって達成される。
【0011】
実施形態の一例では、第2の要求は、第1の要求に対応する傾きと比較した車両の傾きの変化を予測して、パーキングブレーキ力を増加させるべきと考える運転者によって発せられる。
【0012】
実施形態の別の例では、第2の要求は、車両の傾きが変化することを予測するコントロールユニットによって発せられる。例えば、衛星ナビゲーションシステムを通じて、車両がボートの上に駐車されていることが通知された場合、コントロールユニットは、車両の傾きの変化を予測して、第2の要求を発する。波のうねりは、車両の傾きを変化させる。
【0013】
有利には、第1の要求および第2の要求は、所定の時間内に発せられる。
【0014】
本発明の一主題は、車輪に配置される少なくとも1つの電気作動式のパーキングブレーキと、第1の要求に対応する第1の強さでパーキングブレーキ力を加え、または、パーキングブレーキ力を加えることを中断するための指令をパーキングブレーキに発するように構成されたコントロールユニットと、を含む自動車のブレーキシステムである。
【0015】
一実施形態では、第1の要求および第2の要求は、自動車の運転者がパーキングブレーキ操作部を操作することによって発せられる。
【0016】
実施形態の別の例では、第1の要求および第2の要求は、コントロールユニットによって発せられ、第1の要求は、自動車の停車時におけるパーキングブレーキの自動作動である。
【0017】
実施形態の別の例では、第1の要求および第2の要求のうちの一方は、コントロールユニットによって発せられ、他方は自動車の運転者によって発せられる。
【0018】
追加の特徴によれば、パーキングブレーキは、サービスブレーキに統合され、モータ減速ギアを含む。
【0019】
本発明の別の主題は、4つの車輪と本発明によるブレーキシステムとを含む自動車であり、ブレーキシステムは、各後輪にそれぞれ、2つのパーキングブレーキを含む。
【0020】
本発明の別の主題は、自動車に装備された本発明によるブレーキシステムの作動方法であって、
自動車を駐車スペースに駐車した後、パーキングブレーキを第1の強さで作動させるための第1の要求を発し、
第1の強さでパーキングブレーキ力を加える指令を前記パーキングブレーキに送り、
変化する駐車スペースの傾きを検知し、
第2の強さでパーキングブレーキ力を加えるための第2の要求を発し、
第2の強さでパーキングブレーキ力を加える指令をパーキングブレーキに送る、自動車のブレーキシステムの作動方法である。
【0021】
実施形態の一例では、第1の要求は、運転者またはコントロールユニットによって発せられ、第2の要求は、運転者によって発せられる。
【0022】
実施形態の別の例では、第1の要求は、運転者またはコントロールユニットによって発せられ、第2の要求は、コントロールユニットによって発せられる。第2の要求は、衛星ナビゲーションシステムのコンサルテーション(consultation)に基づいて、コントロールユニットによって発するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明が適用される車両の駐車の例の略図である。
【
図1B】本発明が適用される車両の駐車の別の例の略図である。
【
図2】一実施形態の例によるブレーキシステムの図である。
【
図3】一実施形態の例によるブレーキシステムの作動例のフローチャートを示す図である。
【
図4】一実施形態の別の例によるブレーキシステムの作動例のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A及び
図1Bは、本発明が特に適用される自動車の駐車の形態を示す。
【0025】
図1Aは、複数の自動車Vを積載したトレーラーを含むトラックを示す。トレーラーにはプラットフォームが含まれる。積載可能な車両の数を最適化するために、特定のプラットフォームが傾斜している。車両V1、V2、V3、V4、V5およびV6が傾斜している。積載は以下のように行われる。車両は移動プラットフォームを有するトレーラーに積載される。車両をプラットフォームに駐車した後、プラットフォームが傾動する。
【0026】
図1Bは、地上の同じ場所に積み重ねられた2台の車両V7、V8を駐車するための、機械化されたプラットフォームを備えた駐車システムを示す。最初の車両V7はプラットフォームPに駐車され、プラットフォームPは上昇して前方に傾き、2台目の車両V8を駐車するためのスペースを解放する。
【0027】
何れの形態においても、車両は実質的に水平に駐車され、その傾きは外部事情によって変更される。
【0028】
図2に概略的に示す車両Vは、各車輪に装備されたブレーキFを備えたブレーキシステムSを含む。
【0029】
油圧ブレーキは、一般にサービスブレーキを提供する。
【0030】
後輪のブレーキFにはパーキングブレーキ機能FPが装備されており、電動化が進んでいる。モータ減速機が、ブレーキパッドをディスクに当接させたり、あるいは、ブレーキライニングをドラムに当接させたりする。パーキングブレーキは後輪にのみ装備されるのが一般的である。
【0031】
4つのパーキングブレーキおよび/または電気式サービスブレーキを備えたブレーキシステムは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0032】
ブレーキシステムは、特にパーキングブレーキFPの作動を制御するためのコントロールユニットUCを更に含む。
【0033】
実際には、電気作動式のパーキングブレーキは、一般に小さなレバーの形態のボタンを操作することによる運転者からの指令によって、または、例えば音声指令のような他の制御手段によって、あるいは、例えばエンジンの停止時に自動的に作動される。この信号はコントロールユニットによって検知され、コントロールユニットは、各パーキングブレーキFPのモータ減速機に指令を送り、強さF1のブレーキ力を加えさせる。
【0034】
操作手段は、例えば、パーキングブレーキの制御がないニュートラル位置、ブレーキ力を加える位置、およびブレーキ力を解除する位置の3つの位置を有するボタンである。したがって、操作手段に対する運転者の動作は、パーキングブレーキを作動させる場合と、パーキングブレーキを解除する場合と異なる。
【0035】
コントロールユニットは、運転者またはコントロールユニットによって発せられた第1の要求を考慮して、第1のパーキングブレーキ力F1を働かせるように、モータ減速機に指令を発する。コントロールユニットは、駐車車両の傾きを考慮して、パーキングブレーキで加える力を調整する。駐車スペースが水平に対して大きく傾斜するほど、第1のパーキングブレーキ力F1は高くなる。
【0036】
本発明によれば、コントロールユニットは、更に、運転者またはコントロールユニットによって発せられた第2の要求を考慮するように構成される。
【0037】
図3は、本発明の実施形態によるブレーキシステムの第1の実施形態を概略的に示す図である。
【0038】
運転者は、車両を駐車し、ステップ100において、パーキングブレーキの操作部を操作することによって第1の要求を送信する。
【0039】
ステップ200において、コントロールユニットUCは、第1の要求を受けて、パーキングブレーキFPのモータ減速機にブレーキ力F1を加えることを指令する。
【0040】
ステップ300において、例えば、車両が駐車スペースの機械化されたプラットフォームに駐車されているために、車両の傾きが変化する可能性がある、または変化することを予測する運転者は、優先的に所定の時間内に第2の要求を送信する。
【0041】
ステップ400において、コントロールユニットUCは、第2の要求を受けて、パーキングブレーキFPのモータ減速機にブレーキF2を加えることを指令する。
【0042】
F2の値は予め決定されており、この種の駐車装置または積載装置の最大傾斜を考慮して選択されている。
【0043】
図4は、本発明の実施形態によるブレーキシステムの第2の実施形態を概略的に示す図である。
【0044】
一実施形態によれば、第1の要求および第2の要求は、コントロールユニットUCによって発せられる。
【0045】
ステップ100’において、運転者は車両を駐車し、イグニッションをスイッチオフにする。ステップ200’において、イグニッションのスイッチオフを検知したコントロールユニットは、駐車場の勾配に依拠する強さF1でパーキングブレーキを作動させる指令を送信する。
【0046】
ステップ300’において、コントロールユニットUCは、第1の要求に応じてパーキングブレーキを作動させた後、駐車状態が変化する可能性があるかどうか、追加のブレーキ作動を必要とするかどうかをチェックする。例えば、車両がボートの上に駐車されている場合、車両の傾きは波のうねりによって変化する可能性がある。
【0047】
このような駐車状態は、例えば、衛星ナビゲーションシステムによって検知され、衛星ナビゲーションシステムは、車両が水上に駐車され、したがって、ボートまたはフェリーの中または上に駐車されていることを検知する。
【0048】
ステップ400’において、コントロールユニットUCは、そのような事態を検知した場合、第2の要求を発すると共に、パーキングブレーキのモータ減速機にブレーキ力F3を加える指令を送信または発する。値F3は、ボートの最大傾斜値を考慮して予め決定することができ、また、コントロールユニットのメモリに予め記憶させることができる。あるいは、F3の値は、外部パラメータ、例えば気象条件に従って選択される。この目的のために、コントロールユニットはインターネットに接続され、天気予報サービスにアクセスする。
【0049】
本発明によれば、運転者または使用者は、車両の駐車状態の変化を予測し、駐車車両の傾きの増加に応じて、パーキングブレーキのブレーキ力を適応させる。
【0050】
実施形態の別の例では、第1の要求は、パーキングブレーキの自動作動モードでコントロールユニットによって発せられ、第2の要求は、車両の傾きが変化することを予測する運転者によって発行せられる。
【0051】
実施形態の別の例では、第1の要求は運転者によって発せられ、第2の要求はコントロールユニットによって発せられる。
【0052】
実施形態の別の例では、第1の要求は、パーキングブレーキの自動作動モードでコントロールユニットによって発せられ、第2の要求もコントロールユニットによって発せられる。
【0053】
本発明は、外部パラメータに従ってブレーキ力のレベルを調整することを可能にするという利点を提供する。外部パラメータは、進化し、運転者がブレーキ力のレベルを調整することを可能にするであろう。