(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049361
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光ファイバ担持樹脂成形体、光ファイバ担持樹脂成形体キット及び光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156268
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022155022
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023043571
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 晶
(72)【発明者】
【氏名】江口 勇司
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】福本 慎一郎
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103CA07
2F103EB02
2F103EC08
2F103EC09
2F103FA01
2F103FA02
(57)【要約】
【課題】より正確に計測できる光ファイバ担持樹脂成形体。
【解決手段】長尺で樹脂の芯材10と、前記芯材10の外面を筒状に覆う被覆層20とを有し、前記被覆層20は、長尺帯状の樹脂壁部24と、前記樹脂壁部24の長手方向に延びる1本以上の光ファイバ22と、を有し、前記被覆層20は、前記樹脂壁部24における短手方向の一方の端部と、前記樹脂壁部24における短手方向の他方の端部との接合部を有し、かつ前記芯材10に接合し、前記光ファイバ22は、前記芯材10の長手方向に延びていることよりなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の芯材と、前記芯材の外面を筒状に覆う被覆層とを有し、
前記被覆層は、長尺帯状の樹脂壁部と、前記樹脂壁部内に位置し前記樹脂壁部の長手方向に延びる1本以上の光ファイバと、を有し、
前記被覆層は、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と、前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部との接合部を有し、
前記被覆層は、前記芯材に接合し、
前記光ファイバは、前記芯材の長手方向に延びている、光ファイバ担持樹脂成形体。
【請求項2】
前記光ファイバは、前記芯材の軸線を軸に螺旋を形成する、請求項1に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
【請求項3】
前記樹脂壁部は、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部に第一の接合体を有し、かつ前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部に第二の接合体を有し、
前記第一の接合体と前記第二の接合体とで前記接合部をなし、
前記第一の接合体は、凸形状であり、
前記第二の接合体は、前記第一の接合体を受け入れる凹形状である、請求項1又は2に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
【請求項4】
前記芯材は樹脂であり、
前記芯材を構成する樹脂と、前記樹脂壁部を構成する樹脂とが同じ種類である、請求項1又は2に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
【請求項5】
前記芯材は樹脂であり、
前記樹脂壁部と前記芯材とは、融着している、請求項1又は2に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
【請求項6】
前記樹脂壁部内の前記光ファイバは4本以上であり、
前記4本以上の光ファイバは、前記芯材の軸線方向の一端で前記樹脂壁部から突出し、
前記芯材の外方で、任意の前記光ファイバと、前記任意の光ファイバと前記芯材の周方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、
前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しい、請求項1又は2に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
【請求項7】
長尺の芯材と、長尺帯状の樹脂シートとを有し、
前記樹脂シートは、長尺帯状の樹脂壁部と、前記樹脂壁部内で前記樹脂壁部の長手方向に延びる1本以上の光ファイバと、を有し、
前記樹脂壁部は、短手方向の一方の端部に位置する第一の接合体と、短手方向の他方の端部に位置し、前記第一の接合体と接合する第二の接合体と有し、
前記樹脂シートは、前記芯材の外面に巻き付けて筒状に形成できる、光ファイバ担持樹脂成形体キット。
【請求項8】
前記樹脂シートは、4本以上の前記光ファイバを有し、
前記4本以上の光ファイバは、前記樹脂壁部の長手方向の一方の端縁から突出し、
前記樹脂壁部の外方で、任意の前記光ファイバと、前記任意の光ファイバと前記樹脂壁部の幅方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、
前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しく、
前記2つ以上の折り返し部が突出する前記樹脂壁部の端縁は、前記光ファイバの延在方向に対して角度θ1で傾斜し、
側面視で、前記芯材の軸線と直交する方向に対して、前記光ファイバが角度θ1となるように前記樹脂シートを巻き付けて、前記光ファイバを、前記芯材の軸線を軸に螺旋を形成する、請求項7に記載の光ファイバ担持樹脂成形体キット。
【請求項9】
光ファイバ担持樹脂成形体の外径をR1とした場合、
前記2つ以上の折り返し部の折曲縁の位置は、前記光ファイバの延在方向において、0.5πR1sinθ1の差がある、請求項8に記載の光ファイバ担持樹脂成形体キット。
【請求項10】
長尺の芯材と、前記芯材の外面を筒状に覆う被覆層とを有し、前記被覆層の内部に前記芯材の長手方向に延びる1本以上の光ファイバを有する光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法であって、
長尺帯状の樹脂壁部と前記樹脂壁部の長手方向に延びる1本以上の前記光ファイバとを有する樹脂シートを前記芯材の外面に巻き付け、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合し、前記芯材に前記樹脂シートを接合して前記被覆層とする、光ファイバ配設工程を有する、光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
【請求項11】
長尺の芯材と、前記芯材の外面を筒状に覆う被覆層とを有し、前記被覆層は、長尺帯状の樹脂壁部と前記樹脂壁部の内部に前記芯材の長手方向に延びる4本以上の光ファイバを有し、前記4本以上の光ファイバは、前記芯材の軸線方向の一端で前記樹脂壁部から突出し、前記芯材の外方で、任意の前記光ファイバと、前記任意の光ファイバと前記芯材の周方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しい光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法であって、
前記樹脂壁部と前記光ファイバとを有する樹脂シートを前記芯材の外面に巻き付け、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合し、前記芯材に前記樹脂シートを接合して前記被覆層とする、光ファイバ配設工程を有し、
前記樹脂シートは、前記樹脂壁部の長手方向に延びる4本以上の前記光ファイバを有し、前記4本以上の光ファイバは、前記樹脂壁部の長手方向の一方の端縁から突出し、前記樹脂壁部の外方で、任意の前記光ファイバと前記任意の光ファイバと前記樹脂壁部の幅方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しく、前記2つ以上の折り返し部が突出する前記樹脂壁部の端縁は、前記光ファイバの延在方向に対して角度θ1で傾斜しており、
前記光ファイバ配設工程は、側面視で、前記芯材の軸線と直交する方向に対して、前記光ファイバが角度θ1となるように前記樹脂シートを巻き付けて、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合し、記芯材に前記樹脂シートを接合して前記被覆層とする、光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
【請求項12】
前記芯材は樹脂であり、
前記光ファイバ配設工程は、前記芯材の外面と前記樹脂シートの表面とを加熱し、次いで前記樹脂シートを前記芯材の外面に巻き付ける、請求項10又は11に記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
【請求項13】
前記芯材は樹脂であり、
前記光ファイバ配設工程は、前記芯材と前記樹脂シートとを熱融着して、前記芯材と前記樹脂シートとを接合する、請求項10又は11に記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂シートを製造する樹脂シート製造工程をさらに有する、請求項10又は11に記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ担持樹脂成形体、光ファイバ担持樹脂成形体キット及び光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂管に光ファイバが軸方向に延びるように直線状又は螺旋状に埋め込まれた光ファイバ担持樹脂成形体は、光ファイバを計測機器に接続し、光ファイバのレイリー散乱の周波数変化又は位相変化から、樹脂管に生じた曲げ、伸び、ねじりの各ひずみ変化、圧力変化、温度変化を計測機器で常時監視できる。例えば、光ファイバ担持樹脂管を構造物(例えば、建築物)等の測定対象に埋め込むことで、測定対象に生じた変位を監視できる。測定対象の変位を正確に測定するには、光ファイバ樹脂担持管において、樹脂管内に光ファイバを固定する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、長尺光ファイバが筒状に組立て可能な樹脂ベルトの樹脂肉内に埋め込まれた構成を以て横断面内一様な位置関係に維持されている長尺光ファイバセンサーが提案されている。特許文献1の発明によれば、長尺光ファイバを内部に有する樹脂ベルトを筒状に湾曲させ、突き合せた樹脂ベルトの噛み合わせ結合同士を噛み合わせて、筒状に成形する。このため、樹脂ベルトを巻回してコンパクトに纏めやすく、かつ施工の容易化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、測定対象に生じた変位が光ファイバ担持樹脂成形体に伝わった際、樹脂ベルトの噛み合わせがずれて、生じた変化を正確に計測することができないという問題があった。加えて、光ファイバ担持樹脂成形体には、光ファイバを軸方向に延びるように螺旋状に埋め込み、3次元計測をしたいという要求があった。
そこで、本発明は、より正確に計測できる光ファイバ担持樹脂成形体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
長尺の芯材と、前記芯材の外面を筒状に覆う被覆層とを有し、
前記被覆層は、長尺帯状の樹脂壁部と、前記樹脂壁部内に位置し前記樹脂壁部の長手方向に延びる1本以上の光ファイバと、を有し、
前記被覆層は、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と、前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部との接合部を有し、
前記被覆層は、前記芯材に接合し、
前記光ファイバは、前記芯材の長手方向に延びている、光ファイバ担持樹脂成形体。
<2>
前記光ファイバは、前記芯材の軸線を軸に螺旋を形成する、<1>に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<3>
前記樹脂壁部は、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部に第一の接合体を有し、かつ前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部に第二の接合体を有し、
前記第一の接合体と前記第二の接合体とで前記接合部をなし、
前記第一の接合体は、凸形状であり、
前記第二の接合体は、前記第一の接合体を受け入れる凹形状である、<1>又は<2>に記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<4>
前記芯材は樹脂であり、
前記芯材を構成する樹脂と、前記樹脂壁部を構成する樹脂とが同じ種類である、<1>~<3>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<5>
前記芯材は樹脂であり、
前記樹脂壁部と前記芯材とは、融着している、<1>~<4>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<6>
前記光ファイバは、前記芯材の軸線を軸に螺旋を形成し、
前記被覆層の厚さは、2.5mm~10mmであり、
前記樹脂壁部の短手の長さは、20mm~120mmであり、
前記光ファイバの螺旋ピッチは、10mm~600mmである、<1>~<5>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<7>
前記被覆層は、2本以上の前記光ファイバを有し、
断面視で、前記光ファイバは、前記芯材の軸線を中心に任意の角度で位置し、
前記被覆層は、任意の光ファイバと他の任意の光ファイバとの間に、前記任意の光ファイバに沿って延びるテンションメンバを有する、<1>~<6>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<8>
前記被覆層は、前記樹脂壁部と前記光ファイバとの間の少なくとも一部に位置する接着部を有し、
前記接着部は、接着性ポリオレフィン樹脂組成物の硬化物である、<1>~<7>のいずれかにに記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
<9>
前記樹脂壁部内の前記光ファイバは4本以上であり、
前記4本以上の光ファイバは、前記芯材の軸線方向の一端で前記樹脂壁部から突出し、
前記芯材の外方で、任意の前記光ファイバと、前記任意の光ファイバと前記芯材の周方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、
前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しい、<1>~<8>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体。
【0007】
<10>
長尺の芯材と、長尺帯状の樹脂シートとを有し、
前記樹脂シートは、長尺帯状の樹脂壁部と、前記樹脂壁部内で前記樹脂壁部の長手方向に延びる1本以上の光ファイバと、を有し、
前記樹脂壁部は、短手方向の一方の端部に位置する第一の接合体と、短手方向の他方の端部に位置し、前記第一の接合体と接合する第二の接合体と有し、
前記樹脂シートは、前記芯材の外面に巻き付けて筒状に形成できる、光ファイバ担持樹脂成形体キット。
<11>
前記樹脂シートは、4本以上の前記光ファイバを有し、
前記4本以上の光ファイバは、前記樹脂壁部の長手方向の一方の端縁から突出し、
前記樹脂壁部の外方で、任意の前記光ファイバと、前記任意の光ファイバと前記樹脂壁部の幅方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、
前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しく、
前記2つ以上の折り返し部が突出する前記樹脂壁部の端縁は、前記光ファイバの延在方向に対して角度θ1で傾斜し、
側面視で、前記芯材の軸線と直交する方向に対して、前記光ファイバが角度θ1となるように前記樹脂シートを巻き付けて、前記光ファイバを、前記芯材の軸線を軸に螺旋を形成する、<10>に記載の光ファイバ担持樹脂成形体キット。
<12>
光ファイバ担持樹脂成形体の外径をR1とした場合、
前記2つ以上の折り返し部の折曲縁の位置は、前記光ファイバの延在方向において、0.5πR1sinθ1の差がある、<11>に記載の光ファイバ担持樹脂成形体キット。
【0008】
<13>
長尺の芯材と、前記芯材の外面を筒状に覆う被覆層とを有し、前記被覆層の内部に前記芯材の長手方向に延びる1本以上の光ファイバを有する光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法であって、
長尺帯状の樹脂壁部と前記樹脂壁部の長手方向に延びる1本以上の前記光ファイバとを有する樹脂シートを前記芯材の外面に巻き付け、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合し、前記芯材に前記樹脂シートを接合して前記被覆層とする、光ファイバ配設工程を有する、光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
<14>
長尺の芯材と、前記芯材の外面を筒状に覆う被覆層とを有し、前記被覆層は、長尺帯状の樹脂壁部と前記樹脂壁部の内部に前記芯材の長手方向に延びる4本以上の光ファイバを有し、前記4本以上の光ファイバは、前記芯材の軸線方向の一端で前記樹脂壁部から突出し、前記芯材の外方で、任意の前記光ファイバと、前記任意の光ファイバと前記芯材の周方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しい光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法であって、
前記樹脂壁部と前記光ファイバとを有する樹脂シートを前記芯材の外面に巻き付け、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合し、前記芯材に前記樹脂シートを接合して前記被覆層とする、光ファイバ配設工程を有し、
前記樹脂シートは、前記樹脂壁部の長手方向に延びる4本以上の前記光ファイバを有し、前記4本以上の光ファイバは、前記樹脂壁部の長手方向の一方の端縁から突出し、前記樹脂壁部の外方で、任意の前記光ファイバと前記任意の光ファイバと前記樹脂壁部の幅方向で隣り合う他の任意の前記光ファイバとが連なった折り返し部を2つ以上有し、前記2つ以上の折り返し部は、基端から先端までの長さが互いに等しく、前記2つ以上の折り返し部が突出する前記樹脂壁部の端縁は、前記光ファイバの延在方向に対して角度θ1で傾斜しており、
前記光ファイバ配設工程は、側面視で、前記芯材の軸線と直交する方向に対して、前記光ファイバが角度θ1となるように前記樹脂シートを巻き付けて、前記樹脂壁部における短手方向の一方の端部と前記樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合し、記芯材に前記樹脂シートを接合して前記被覆層とする、光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
<15>
前記芯材は樹脂であり、
前記光ファイバ配設工程は、前記芯材の外面と前記樹脂シートの表面とを加熱し、次いで前記樹脂シートを前記芯材の外面に巻き付ける、<13>又は<14>に記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
<16>
前記芯材は樹脂であり、
前記光ファイバ配設工程は、前記芯材と前記樹脂シートとを熱融着して、前記芯材と前記樹脂シートとを接合する、<13>~<15>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
<17>
前記樹脂シートを製造する樹脂シート製造工程をさらに有する、<13>~<16>のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
<18>
前記樹脂シート製造工程は、前記光ファイバを押出成形機に供給し、溶融した樹脂組成物(A2)と共にシート状に押し出し、シート状の成形物を引き取りつつ冷却して前記樹脂組成物(A2)を硬化して、前記樹脂シートを得る、<17>に記載の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光ファイバ担持樹脂成形体によれば、より正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体を示す側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの断面図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法を示す工程図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法を示す工程図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法を示す工程図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの断面図である。
【
図10】第三の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体を示す側面図である。
【
図11】本発明の第三の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法を示す工程図である。
【
図12】(a)本発明の第三の実施形態に係る樹脂シートの平面図である。(b)本発明の第三の実施形態に係る樹脂シートの平面図である。
【
図13】(a)本発明の第三の実施形態に係る樹脂シートの比較例を示す平面図である。(b)本発明の第三の実施形態に係る樹脂シートの比較例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載した数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
本発明の光ファイバ担持樹脂成形体は、芯材と、芯材の外面を覆う被覆層とを有する。
以下、本発明の光ファイバ担持樹脂成形体について、実施形態を挙げて説明する。
【0013】
(第一の実施形態)
<光ファイバ担持樹脂成形体>
本発明の第一の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体について、図面を参照して説明する。
図1の光ファイバ担持樹脂成形体1は、長尺の円筒形である。但し、光ファイバ担持樹脂成形体1は、長尺であればよく、円筒、多角筒等の筒状、円柱、多角柱等の柱状でもよい。但し、ひずみ等の変位を感知しやすくし、軽量化を図る観点から、光ファイバ担持樹脂成形体1は、円筒が好ましい。
光ファイバ担持樹脂成形体1は、長尺の芯材10と、芯材10の外面を筒状に覆う被覆層20とを有する。
被覆層20は、樹脂壁部24と、樹脂壁部24内で芯材10の軸線O1方向に延びる光ファイバ22とを有する。
【0014】
樹脂壁部24は、長尺帯状で、芯材10の外面に対して軸線O1を軸に螺旋を描いて巻き付いている。
本実施形態において、被覆層20は、4本の光ファイバを有する。なお、光ファイバ22の本数は、光ファイバ担持樹脂成形体1の一端から他端にかけて、被覆層20内で連なっている一連の光ファイバ22を一本とする。
4本の光ファイバ22は、樹脂壁部24の長手方向に沿って延び、軸線O1を軸とする螺旋状とされている。
【0015】
光ファイバ担持樹脂成形体1の外径R1は、20mm~50mmが好ましく、30mm~40mmがより好ましい。外径R1が上記下限値以上であると、光ファイバ22同士の信号干渉をより良好に抑制できる。外径R1が上記上限値以下であると、光ファイバ担持樹脂成形体1が構造物の変位に追従しやすくなって、光ファイバ担持樹脂成形体1による測定の精度をより高められる。
光ファイバ担持樹脂成形体1の断面が多角形である場合、外径R1は、断面形状の外接円の直径である。
【0016】
光ファイバ担持樹脂成形体1の長さは、特に限定されず、例えば、1m~1000mとされる。
【0017】
<芯材>
芯材10は、長尺の部材である。
芯材10は、例えば、樹脂(A1)を有する樹脂組成物(A1)を筒状又は柱状に成形し、硬化したものである。
芯材10が筒状である場合、芯材10は円筒でもよいし、多角筒でもよい。
芯材10が柱状である場合、芯材10は円柱でもよいし、多角柱でもよい。
なお、
図2に示すように、本実施形態の芯材10は、円筒である。
【0018】
芯材10が筒状である場合は、筒壁の厚さt10は2.5mm~10mmが好ましく、3mm~5mmがより好ましい。筒壁の厚さが前記下限値以上であると、加熱を行っても形状を維持できる。筒壁の厚さが上記上限値以下であると、芯材が構造物等の測定対象の変位に追従しやすくなって、光ファイバ担持樹脂成形体による測定の精度をより高められる。
【0019】
樹脂(A1)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリエチレン熱可塑性樹脂樹脂が好ましい。樹脂(A1)としては、低密度ポリエチレン(密度:910kg/m3以上930kg/m3未満)、中密度ポリエチレン(密度:930kg/m3以上942kg/m3未満)、高密度ポリエチレン(密度:942kg/m3以上)が挙げられる。樹脂(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
樹脂(A1)としては、ポリエチレンが好ましく、樹脂(A1)の密度は、0.920g/cm3~0.960g/cm3が好ましく、0.93g/cm3~0.95g/cm3がより好ましい。樹脂(A1)の密度が上記下限値以上であると、剛性をより高められる。樹脂(A1)の密度が上記上限値以下であると、成形収縮を抑えることができる。樹脂(A1)の密度は、芯材10の密度を測定することで求められる。
密度は、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定される値である。
【0021】
樹脂(A1)のメルトフローレート(MFR)は、例えば、0.1g/10min.~1.3g/10min.が好ましく、0.2g/10min.~0.8g/10min.がより好ましい。樹脂(A1)のMFRが上記下限値以上であると、芯材10をより容易に成形できる。樹脂(A1)のMFRが上記上限値以下であると、芯材10の機械的強度をより高められる。樹脂(A1)のMFRは、芯材10のMFRを測定することで求められる。
MFRは、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値である。
【0022】
樹脂組成物(A1)の総質量(100質量%)に対して、樹脂(A1)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0023】
樹脂組成物(A1)は、樹脂(A1)以外の成分(任意成分(A1))を含んでもよい。即ち、芯材10は、任意成分(A1)を含んでもよい。任意成分(A1)としては、可塑剤、着色料(顔料、染料)、滑沢剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、ポリオレフィン樹脂に用いられる公知の添加剤が挙げられる。
【0024】
<被覆層>
被覆層20は、長尺帯状の樹脂シートを筒状に成形したものである。
被覆層20は、芯材10と接合している。被覆層20と芯材10との接合の態様は、被覆層20及び芯材10の材質に応じて適宜決定でき、例えば、熱融着、溶剤による溶着、接着剤による接着等を例示できる。
被覆層20は、樹脂(A2)を含む樹脂組成物(A2)を成形し、硬化した樹脂壁部24と、樹脂壁部24内で、樹脂壁部24の長手方向に延びる光ファイバ22とを有する。
被覆層20は、樹脂壁部24同士が接合した接合部28を有する。即ち、接合部28は、樹脂壁部24における短手方向の一方の端部と、樹脂壁部24における短手方向の他方の端部とが接合してなる。
本実施形態において、接合部28は、軸線O1を軸とする螺旋を描いている。
【0025】
被覆層20の厚さ(即ち、樹脂壁部24の厚さ)t20は、2.5mm~10mmが好ましく、3mm~5mmがより好ましい。厚さt20が上記下限値以上であると、加熱した際の変形をより抑制できる。厚さt20が上記上限値以下であると、光ファイバ担持樹脂成形体1が構造物の変位により追従しやすくなって、光ファイバ担持樹脂成形体1による測定の精度をより高められる。
【0026】
被覆層20における樹脂壁部24の短手の長さ(幅)w24は、20mm~120mmが好ましく、70mm~110mmがより好ましい。幅w24は、樹脂壁部24のつなぎ目(接続部)同士の距離である。
【0027】
樹脂組成物(A2)は、樹脂組成物(A1)と同様である。樹脂組成物(A2)は、樹脂組成物(A1)と同じでもよいし、異なってもよい。
樹脂(A2)は、樹脂(A1)と同様である。樹脂(A2)は、樹脂(A1)と同じ種類でもよいし、異なってもよいが、同じ種類であることが好ましい。樹脂(A2)が樹脂(A1)と同じ種類であると、後述する製造方法において、芯材10と被覆層20とをより容易かつ強固に融着できる。
なお、樹脂が同じ種類であるとは、モノマーに由来する繰り返し単位や官能基等の化学構造が同一であることをいう。
【0028】
樹脂組成物(A2)の総質量(100質量%)に対して、樹脂(A2)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0029】
光ファイバ22は、被覆層20の厚さを二分する位置から表面に向かう25%以内にあることが好ましい。これにより、光ファイバ担持樹脂成形体1の設置施工時において被覆層20の表面を削った際に、光ファイバ22が被覆層20の外部に露出せず、光ファイバ22が損傷しにくい。
【0030】
4本の光ファイバ22は、断面視において(
図2)、軸線O1回りに90°間隔で位置している。光ファイバ22が5本以上である場合には、5本以上の光ファイバ22は、軸線O1回りに等角度で位置することが好ましい。
【0031】
本実施形態において、光ファイバ担持樹脂成形体1は、4本の光ファイバ22を有している。しかしながら、光ファイバ22の数は、光ファイバ担持樹脂成形体1の用途等を勘案して決定でき、1本以上であればよく、2本以上が好ましく、4本以上がより好ましい。光ファイバ22の数が上記下限値以上であると、ねじりや扁平変位をより良好に検知できる。光ファイバ22の数の上限値は、例えば、20本以下である。光ファイバ22の数が上記上限値以下であると、被覆層20の機械的強度をより高められる。
【0032】
本実施形態において、光ファイバ22の螺旋ピッチp22は、10mm~600mmが好ましく、100mm~500mmがより好ましく、300mm~400mmがさらに好ましい。螺旋ピッチp22が上記上限値以上であれば、光ファイバ22の長さを過度に長くすることなく、計測精度を高められる。螺旋ピッチp22が上記上限値以下であれば、計測精度をより高められる。
【0033】
光ファイバ22は、光ファイバ素線のみでもよいし、光ファイバ素線とその周面を覆う被覆樹脂層とを有してもよい。
【0034】
光ファイバ担持樹脂成形体1をひずみ測定用光ファイバ又は温度測定用光ファイバとして用いる場合、光ファイバの種類は、特に限定されず、ひずみの測定方法、温度の測定方法、測定の際に用いる散乱光の種類等に応じて選択することができる。例えば、ひずみ測定用光ファイバ又は温度測定用光ファイバとしては、シングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバ及び偏波保持光ファイバからなる群から選択される少なくとも1種類の光ファイバを用いることが好ましい。
【0035】
ひずみ測定用光ファイバと温度測定用光ファイバとは、同じ種類の光ファイバでもよく、異なる種類の光ファイバでもよい。
光ファイバ担持樹脂成形体1が2本以上の光ファイバ22を有する場合、2本以上の光ファイバ22の種類は、同じでもよいし、互いに異なってもよい。例えば、光ファイバ担持樹脂成形体1がひずみ測定用であれば、異なる種類の光ファイバ22又は同じ種類の光ファイバ22を2本以上用いることができる。温度測定用光ファイバについても、ひずみ測定用光ファイバと同様である。
【0036】
ひずみ測定用光ファイバとしては、シングルモード光ファイバが好ましい。シングルモード光ファイバは、計測を行う際に、散乱光としてブリルアン散乱光、レイリー散乱光等を好ましく用いることができ、シャープなピークが得られることから、ひずみ測定用光ファイバとして好ましい。
温度測定用光ファイバとしては、マルチモード光ファイバが好ましい。マルチモード光ファイバは、散乱光としてラマン散乱光等を好ましく用いることができ、高いピーク強度が得られることから、温度測定用光ファイバとして好ましい。
このように、計測(測定)に用いる散乱光に適した光ファイバ22を選択することにより、精度よくひずみや温度を測定することができる。
【0037】
光ファイバの外径r22は、125μm~2000μmが好ましく、150μm~1000μmがより好ましい。外径r22が上記下限値以上であると、荷重がかかった際に断線しにくくなり、生産性をより高め、耐久性をより高められる。外径r22が上記上限値以下であると、光ファイバ担持樹脂成形体同士を接続する際、又は光ファイバを計測器に接続する際に、被覆樹脂の剥離作業をより容易に行える。
【0038】
光ファイバ22の光ファイバ素線は、コアとクラッドとを有する。本発明はこれに限定されず、光ファイバ素線がクラッドを有しなくてもよい。但し、光ファイバ素線としては、コアとクラッドとを有するものが好ましい。光ファイバ素線は、コアとクラッドとを有することで、コアにレーザー光等の不連続ポンプ光を入射して、ブリルアン散乱やラマン散乱等のコアの歪や温度等に由来する散乱光を発生させ、計測精度をより高められる。
【0039】
コアの材質としては、例えば、石英ガラスが挙げられる。
クラッドの材質は、コアの材質と同様である。
コアの材質とクラッドの材質とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0040】
光ファイバ22が被覆樹脂層を有する場合、被覆樹脂層は、樹脂(C)を含む樹脂組成物(C)の硬化物である。樹脂(C)としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの樹脂(C)は、ハードセグメントとソフトセグメントを含むエラストマーであってもよい。中でも、樹脂(C)としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。これらの樹脂であれば、光ファイバ担持樹脂成形体1を製造した際に、被覆樹脂層と後述する接着部との親和性がより良好となり、光ファイバ22と樹脂壁部24との密着性をより高められる。
樹脂(C)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
樹脂組成物(C)の総質量(100質量%)に対して、樹脂(C)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0042】
樹脂(C)の総質量(100質量%)に対して、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリイミドから選択される少なくとも1種の樹脂の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
【0043】
被覆樹脂層の表面(外面)には、粗面処理が施されていてもよい。粗面処理の方法は、特に限定されず、例えば、サンドブラスト処理等の機械的方法、コロナ処理等の物理的方法、プライマ処理、エッチング処理等の化学的方法、等が挙げられる。
【0044】
被覆樹脂層の厚さは、例えば、5μm~950μmが好ましく、10μm~900μmがより好ましく、15μm~850μmがさらに好ましい。厚さが上記下限値以上であると、光ファイバ22の機械的強度をより高められる。厚さが上記上限値以下であると、接続時の被覆樹脂の剥離作業をより容易に行える。
【0045】
図3に示すように、被覆層20は、樹脂壁部24と光ファイバ22との間の少なくとも一部に、接着部23を有してもよい。接着部23を有することで、樹脂壁部24内に光ファイバ22をより強固に固定できる。本実施形態において、光ファイバ22と接着部23とは、樹脂壁部24内で、樹脂壁部24の長手方向に延びる坑道25内に位置している。
接着部23は、樹脂(B)を含む樹脂組成物(B)が硬化したものである。
【0046】
接着部23は、光ファイバ22の外面(周面)の全てを覆っていてもよく、一部を覆っていてもよく、全てを覆っていることが好ましい。接着部23が光ファイバの外面の全て覆うことで、光ファイバと成形体との接着力をより高められる。
【0047】
接着部23の厚さt23は、1μm~5000μmが好ましく、5μm~4000μmがより好ましく、10μm~3000μmがさらに好ましい。厚さt23が上記下限値以上であると、光ファイバ22と樹脂壁部24との接着力をより高められる。厚さt23が上記上限値以下であると、厚さt23を過度に高めるのを防止できる。
【0048】
樹脂組成物(B)としては、接着性ポリオレフィン樹脂組成物(以下、「接着性組成物」ということがある)が好ましい。接着性組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂を主成分とすることは好ましい。即ち、接着部23は、酸変性ポリオレフィン樹脂を主成分として含むことが好ましい。
接着性組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂(樹脂(B))と、必要に応じた任意成分(任意成分(B))と、を含む。
【0049】
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂の酸(無水物を含む)変性樹脂が挙げられる。中でも、酸変性樹脂としては、ポリエチレンの(無水)マレイン酸変性樹脂、アクリル酸変性樹脂及びフマル酸変性樹脂等が好ましい。樹脂(B)が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことで、光ファイバ22と樹脂壁部24との接着力をさらに高められる。
【0050】
接着性組成物中の樹脂(B)の含有量は、接着性樹脂組成物の総質量(100質量%)に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上が好ましく、100質量%でもよい。
樹脂(B)中の酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
【0051】
任意成分(B)としては、例えば、可塑剤、着色料(顔料、染料)、滑沢剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、ポリオレフィン樹脂に用いられる公知の添加剤が挙げられる。加えて、任意成分(B)としては、粘着付与剤、充てん剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0052】
接着部23についてフーリエ変換赤外分光光度計で測定した際に、CH2による吸収スペクトルは680cm-1~790cm-1の範囲に現れる。680cm-1~790cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値は、CH2の存在量を示す。680cm-1~790cm-1の範囲の吸収スペクトルの相加平均は720cm-1が中心となる。
本稿において、フーリエ変換赤外分光光度計で測定した際の680cm-1~790cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値を720cm-1における吸光度のピーク面積αとする。
接着部23についてフーリエ変換赤外分光光度計で測定した際に、C=Oによる吸収スペクトルは1680cm-1~1840cm-1の範囲に現れる。1680cm-1~1840cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値が、C=Oの存在量を示す。1680cm-1~1840cm-1の範囲の吸収スペクトルの相加平均は1780cm-1が中心となる。
本稿において、フーリエ変換赤外分光光度計で測定した際の1680cm-1~1840cm-1の範囲の吸収スペクトルの積分値を1780cm-1における吸光度のピーク面積βとする。
【0053】
接着部23において、ピーク面積αに対するピーク面積βの比(β/α比)は、0.05~0.25が好ましく、0.06~0.24がより好ましく、0.07~0.23がさらに好ましく、0.08~0.22が特に好ましい。β/α比が上記範囲内であれば、光ファイバ22及び樹脂壁部24の双方との親和性がより高くなり、光ファイバ22と樹脂壁部24との接着力をさらに高められる。
【0054】
接着部23の密度は、0.880g/cm3~0.940g/cm3が好ましく、0.880g/cm3~0.930g/cm3がより好ましい。接着部23の密度が上記下限値以上であると、剛性をより高められる。接着部23の密度が上記上限値以下であると、接着力をより高められる。接着部23の密度は、樹脂壁部24の密度と同じでもよいし、異なってもよい。
【0055】
接着部23のMFRは、例えば、0.5g/10min.~4g/10min.が好ましく、0.6g/10min.~3.9g/10min.がより好ましく、0.7g/10min.~3.8g/10min.がさらに好ましい。接着部23のMFRが上記下限値以上であると、流動性が良好なため、光ファイバ22と樹脂壁部24との接着力をより高められる。接着部23のMFRが上記上限値以下であると、成形性が良好なため、安定して製造できる。接着部23のMFRは、樹脂壁部24のMFRと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
接着部23の軟化点は、例えば、30℃~115℃が好ましく、35℃~110℃がより好ましく、40℃~105℃がさらに好ましい。接着部23の軟化点が上記下限値以上であると、ハンドリング性に優れるため、光ファイバ22と樹脂壁部24との接着力をより高められる。接着部23の軟化点が上記上限値以下であると、成形性が良好なため、光ファイバ22と樹脂壁部24との接着力をより高められる。接着部23の軟化点は、ISO 306により測定されるビカット軟化点である。
【0057】
<光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法>
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体1の製造方法は、光ファイバ配設工程を有する。
光ファイバ担持樹脂成形体1の製造方法は、例えば、芯材製造工程、樹脂シート製造工程、光ファイバ配設工程を有する。
【0058】
芯材製造工程は、従来公知の樹脂成形方法を採用できる。例えば、芯材製造工程は、樹脂組成物(A1)を溶融混練し、溶融混練した樹脂組成物(A1)を筒状又は柱状に押し出しつつ引き取り、これを冷却して樹脂組成物(A1)を硬化して、芯材10とする方法を例示できる。
【0059】
必要に応じて、得られた芯材10を巻回体としてもよい。芯材10を巻回体とすることで、保管時又は輸送時の省スペース化が図れる。
【0060】
樹脂シート製造工程は、樹脂壁部24内に光ファイバ22が位置する樹脂シートを製造する。
樹脂シートの一例を
図4に示す。
図4は、樹脂シート21を短手に沿って切断した断面図である。
樹脂シート21は、平面視長方形の長尺帯状の樹脂壁部24と、樹脂壁部24の長手方向に延びる1本以上の光ファイバ22とを有する。
樹脂壁部24は、短手方向の一方の端縁寄り(端部)に第一の接合体27aを有し、短手方向の他方の端縁寄り(端部)に第二の接合体27bを有する。本実施形態において、第一の接合体27aは凸形状であり、第二の接合体27bは、第一の接合体27aを受け入れる凹形状である。
【0061】
第一の接合体27aは、樹脂シート21の長手方向に連なる凸条でもよいし、部分的に形成された凸部でもよい。
第二の接合体27bは、第二の接合体27bは、第一の接合体27aの形状に応じて適宜決定でき、樹脂シート21の長手方向に連なる凹条でもよいし、部分的に形成された凹部でもよい。即ち、第一の接合体27aと第二の接合体27bとは、相補形をなしている。
なお、本実施形態では、第一の接合体27aと第二の接合体27bとは、相補形をなしているが、本発明はこれに限定されず、接着剤により接着される接着しろでもよい。
但し、両接合体をより容易に接合させる観点から、第一の接合体27aは凸条又は凸部等の嵌合体が好ましく、第二の接合体27bは第一の接合体27aと相補形をなす凹状又は凹部等の嵌合体が好ましい。
【0062】
樹脂シート21の幅w21は、例えば、15mm~130mmが好ましく、70mm~110mmがより好ましい。
樹脂シート21の厚さt21は、所望する厚さt20等を勘案して適宜決定できる。
【0063】
光ファイバ22同士の離間距離d22は、例えば、16mm~39mmが好ましく、24mm~31mmがより好ましい。離間距離d22が上記下限値以上であると、樹脂壁部24の強度をより高められる。離間距離d22が上記下限値以下であると、幅w21を過度に広くすることを要せず、取り扱いをより容易にできる。
なお、光ファイバ22を3つ以上有する場合、光ファイバ22同士の離間距離d22は、全て同じでもよいし、互いに異なってもよい。但し、被覆層20において、軸線O1回りに光ファイバ22を等間隔で位置させる観点から、樹脂シート21における離間距離d22は互いに同じであることが好ましい。
【0064】
樹脂シート21の製造方法としては、光ファイバ22を押出成形機に供給し、溶融した樹脂組成物(A2)と共にシート状に押し出し、シート状の成形物を引き取りつつ冷却して樹脂組成物(A2)を硬化して、樹脂シート21を得る方法(一体成形法)が挙げられる。光ファイバ22を押出成形機に供給する際、光ファイバ22の外面に接着性組成物が位置するように、接着性組成物を金型に供給することで、光ファイバ22と樹脂壁部24との間に接着部23を設けてもよい。一体成形法において、接着部23は、樹脂シート21の外面に露出しないことが好ましい。
【0065】
また、後被覆法により、内部に光ファイバ22を設けてもよい。後被覆法について、以下に説明する。予め、長尺帯状のシート状樹脂成形体を用意する。このシート状樹脂成形体に対して、外面から内面に向かう凹条を形成する。凹条の数は、樹脂壁部24内に設ける光ファイバ22の数と同じである。なお、凹条を有するシート状樹脂成形体を製造してもよい。
シート状樹脂成形体の外面の凹条に、光ファイバ22を嵌め込む。次いで、凹条の開口部から凹条内に樹脂組成物(A2)又は接着性組成物を充填する。次いで、凹条に充填した接着性組成物(A2)又は接着性組成物を硬化して、樹脂壁部24内に光ファイバ22を設ける。後被覆法において、接着性組成物で凹条を塞ぐ場合、接着部23が樹脂シート21の外面に露出する。後被覆法において、凹条に接着性組成物を充填した後、凹条を樹脂組成物(例えば、樹脂組成物(A2))で塞いでもよい。凹条を樹脂組成物で塞ぐことで、接着部23は、樹脂シート21の外面に露出しない。
【0066】
必要に応じて、得られた樹脂シート21を巻回体としてもよい。樹脂シート21を巻回体とすることで、保管時又は輸送時の省スペース化が図れる。
【0067】
上述した芯材製造工程と樹脂シート製造工程とを経ることで、芯材10と樹脂シート21とを有する光ファイバ担持樹脂成形体キットを得る。
「光ファイバ担持樹脂成形体キット」は、光ファイバ担持樹脂成形体の製造に用いられる組み合わせ物である。「光ファイバ担持樹脂成形体キット」は、必ずしも芯材と樹脂シートとが共に流通する必要はなく、それぞれが独立して流通し、最終的に光ファイバ担持樹脂成形体を構成すればよい。
【0068】
光ファイバ配設工程は、樹脂シート21を芯材10の外面に巻き付け、樹脂シート21を筒状とし、筒状の樹脂シート21を芯材10に接合する。
【0069】
光ファイバ配設工程の一例を説明する。
芯材10の外面と樹脂シート21の表面とを加熱する(加熱操作)。
加熱する方法は、赤外線(IR)ヒーター、熱風ヒーターを用いた加熱方法を例示できる。
加熱温度は、芯材10、樹脂シート21の樹脂壁部24が軟化する温度が好ましい。加熱温度は、80℃~150℃が好ましく、90℃~120℃がより好ましい。
【0070】
加熱操作の後、樹脂シート21を芯材10の外面に巻き付ける(
図5)。この際、樹脂シート21の加熱した面を芯材10に外面に当て、軸線O1回りに螺旋を描くように樹脂シート21を巻き付けつつ、第一の接合体27aと第二の接合体27bとを接合する(被覆層形成操作、
図6)。被覆層形成操作において、樹脂シート21の外面をローラーやコルゲート金型で圧着することで、芯材10と樹脂シート21とをより強固に接合できる。
加熱された樹脂シート21を加熱した芯材10に当接することで、両者が密着して接合する。加えて、加熱された第一の接合体27aと第二の接合体27bとにより、第一の接合体27aと第二の接合体27bとが接合されて、接合部28を形成する(
図1参照)。即ち、樹脂壁部における短手方向の一方の端部と、樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合して、接合部とする。
こうして、樹脂シート21が円筒状となり、芯材10に接合して、被覆層20となる。得られた光ファイバ担持樹脂成形体1の被覆層20には、樹脂シート21を巻き付けた形態(本実施形態では螺旋状)に応じて、光ファイバ22が配設される。加えて、得られた光ファイバ担持樹脂成形体1の4本の光ファイバ22は、樹脂シート21の短手に沿った断面において、一様な位置関係を保って、配設される。
【0071】
光ファイバ配設工程は、さらに熱融着操作を有してもよい。熱融着操作を有することで、芯材10と被覆層20との境界を相溶させて、芯材10と被覆層20とをより強固に融着し、かつ第一の接合体27aと第二の接合体27bとをより強固に融着できる。
熱融着操作は、芯材10の外面に被覆層20を形成したのち、これらを加熱する工程が挙げられる。
あるいは、加熱操作で芯材10の外面及び樹脂シート21の表面の少なくとも一方を溶融し、溶融した状態を維持したまま被覆層形成操作を行うことで、熱融着操作としてもよい。
【0072】
被覆層形成操作の後、芯材10と被覆層20とを冷却し、被覆層20が硬化して、被覆層20が芯材10に固定された光ファイバ担持樹脂成形体1とする。被覆層形成工程が熱融着工程を有する場合、冷却操作によって相溶部分が硬化し、より強固に接合できる。
【0073】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法は、芯材製造工程及び樹脂シート製造工程を有する。しかしながら、光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法は、芯材製造工程並びに樹脂シート製造工程の双方もしくはいずれか一方を有しなくてもよい。即ち、光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法は、製造、購入等により予め準備した芯材又は樹脂シートを用いてもよい。
【0074】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体によれば、芯材の外面に、樹脂シートを巻き付けてなる筒状の被覆層を有し、被覆層が芯材に接合しているため、被覆層内の光ファイバと芯材との一体性をより高め、構造物の変位が光ファイバに正確に伝わる。このため、本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体は、より正確に歪みを計測できる。
【0075】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法によれば、加熱した樹脂シートを加熱した芯材に巻き付け、樹脂シートにおける第一の接合体と第二の接合体とを接合して、円筒状の被覆層とすることで、容易かつ強固に芯材に被覆層を固定できる。
【0076】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体について、図面を参照して説明する。
図7の光ファイバ担持樹脂成形体1aは、芯材10と芯材10の外面を筒状に覆う被覆層20aとを有する。被覆層20aは、樹脂壁部24と、樹脂壁部24内に位置し軸線O1と平行な4本の光ファイバ22を有する。被覆層20aは、軸線O1と平行に延びる接合部28aを有する。
即ち、本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体1aは、光ファイバ22及び接合部28aが軸線O1に平行な点で第一の実施形態と異なる。
なお、本稿における平行とは、側面視において目視で平行と認識できる位置関係であることをいう。
【0077】
光ファイバ担持樹脂成形体1aの製造方法について、説明する。
光ファイバ担持樹脂成形体1aの製造方法は、芯材10に対する樹脂シート21の巻き付け方が異なる以外は第一の実施形態における光ファイバ担持樹脂成形体1の製造方法と同様である。以下、本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体1aの製造方法について、第一の実施形態と異なる点を説明する。
【0078】
図8に示すように、樹脂シート21の長手を軸線O1と略同方向とし、芯材10の外面に樹脂シート21を被せる。樹脂シート21の短手方向の両端縁を突き合せるように、樹脂シート21を芯材10に巻き付け、第一の接合体27aと第二の接合体27bとを接合する(光ファイバ配設工程)。即ち、樹脂壁部における短手方向の一方の端部と、樹脂壁部における短手方向の他方の端部とを接合して、接合部とする。
こうして、芯材10の外面を筒状に覆う被覆層20aを有する、光ファイバ担持樹脂成形体1aを得る。
【0079】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂成形体について、図面を参照して説明する。第一の実施形態と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略し、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。
図10の光ファイバ担持樹脂成形体1bは、芯材10と芯材10の外面を筒状に覆う被覆層20とを有する。被覆層20は、樹脂壁部24と、樹脂壁部24内に位置する4本の光ファイバ22を有する。
【0080】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体1bは、樹脂壁部24の長手方向の一方の端縁から突出する折り返し部222及び折り返し部223を有する。
折り返し部222は、樹脂壁部24の長手方向の一方の端縁から突出した光ファイバ22aと光ファイバ22bとが芯材10の外方(軸線O1方向で芯材から離れる方向)で連なった部材である。光ファイバ22aと光ファイバ22bとは、芯材10の周方向で隣り合っている。
折り返し部223は、樹脂壁部24の一方の端縁から突出した光ファイバ22cと光ファイバ22dとが芯材10の外方で連なった部材である。光ファイバ22cと光ファイバ22dとは、芯材10の周方向で隣り合っている。
即ち、本実施形態において、光ファイバ22は、芯材10の軸線O1方向の一端で樹脂壁部24から突出し、芯材10の外方で、任意の光ファイバ22と、任意の光ファイバ22と芯材10の周方向で隣り合う他の任意の光ファイバ22とが連なった折り返し部222、223を有している。
【0081】
本実施形態において、折り返し部222の長さL222は、折り返し部223の長さL223と同等である。両折り返し部の長さが同等であると、両折り返し部を介して伝えられる周波数変化又は位相変化の情報を、補正することなく測定機器で処理できる。なお、「同等」とは、両者の長さの差が1%以内であることをいう。
折り返し部222の長さL222は、折り返し部222の基端(即ち、樹脂壁部24の端縁224)から折曲縁(即ち先端)222aまでの距離である。
折り返し部223の長さL223は、折り返し部223の基端(即ち、樹脂壁部24の端縁224)から折曲縁(即ち先端)223aまでの距離である。
【0082】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体1bは、樹脂壁部24の長手方向の他方の端縁226から突出する折り返し部229を有する。
折り返し部229は、樹脂壁部24の長手方向の他方の端縁226から突出した光ファイバ22gと光ファイバ22hとが芯材10の外方(軸線O1方向で芯材から離れる方向)で連なった部材である。光ファイバ22gと光ファイバ22hとは、芯材10の周方向で隣り合っている。折り返し部229の長さは、折り返し部222の長さと同じでもよいし、異なってもよい。
樹脂壁部24の長手方向の他方の端縁226から、光ファイバ22gと光ファイバ22hとが突出している。光ファイバ22eと光ファイバ22fとは、折り返し部を形成していない。光ファイバ22eは、計測機器240に接続している。
本実施形態においては、1本の光ファイバを折り返すことで、折り返し部222、223、229を形成し、かつ他方の端縁226から光ファイバ22eと22fとを突出させている。これにより、樹脂壁部24内に4本の光ファイバ12を位置させている。
なお、本発明はこれに限定されず、樹脂壁部24内の光ファイバ22の数が6本以上であり、樹脂壁部24の一方の端縁における折り返し部の数は3以上でもよい。
また、本発明は、折り返し部229を有さず、他方の端縁226から4本の光ファイバ12が突出していてもよい。
【0083】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法について、説明する。本実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法は、樹脂シートが異なる以外は第一の実施形態の光ファイバ担持樹脂成形体の製造方法と同じである。
【0084】
図11に示すように、本実施形態の製造方法に用いる樹脂シート221は、長尺帯状の樹脂壁部24と樹脂壁部24内に位置する4本の光ファイバ22とを有する。
4本の光ファイバ22は、樹脂壁部24の長手方向の一方の端縁224から突出している。樹脂壁部24から突出した4本の光ファイバ22は、樹脂壁部の外方で、光ファイバ22の延在方向Q1に延びる折り返し部222と折り返し部223とを形成している。
折り返し部222は、任意の光ファイバ22と、この任意の光ファイバ22と樹脂壁部24の幅方向で隣り合う他の任意の光ファイバ22とが、樹脂壁部24の外方で連なった部材である。
折り返し部223は、任意の光ファイバ22と、この任意の光ファイバ22と樹脂壁部24の幅方向で隣り合う他の任意の光ファイバ22とが、樹脂壁部24の外方で連なった部材である。
折り返し部222と折り返し部223とは、それぞれ独立し、隣り合っている。
【0085】
折り返し部222と折り返し部223とが突出する端縁224は、延在方向Q1に対して角度θ1で傾斜している。端縁224は、巻き付け方向Q3に鋭角の頂角225を形成している。
折り返し部222と折り返し部223とは、同等である。但し、樹脂シート221において、折り返し部222と折り返し部223とを延在方向Q1に揃えた場合、折り返し部222の折曲縁222aの位置と折り返し部223の折曲縁223aの位置とは、延在方向Q1において距離D1の差を有する。
【0086】
角度θ1は、後述する角度θ2と同等である。角度が「同等」とは、両者の違いが1%以下であることをいう。
【0087】
距離D1は、下記式(s1)で求められる。
D1=0.5πRsinθ1 ・・・(s1)
(s1)式中、Rは、光ファイバ22の中心から軸線O1までの距離rの2倍の値である。
本実施形態のように、4本の光ファイバ12が、軸線O1回りに90°間隔で位置している場合、対角にある2本の光ファイバ12の中心同士の距離R11である。
なお、設計時においては、R=芯材の外径R10+(t20(樹脂壁部の厚さ)÷2)×2とできる。これは、光ファイバ12の中心が樹脂壁部24の厚さt20の中心に位置するという仮定に基づく。
【0088】
本実施形態の光ファイバ配設工程は、樹脂シート221を芯材10に巻き付けて、被覆層20とする。
図11に示すように、側面視で、軸線O1に直交する仮想線Q2に対して、光ファイバ22が角度(巻付角度)θ2となるように、樹脂シート221を芯材10に巻き付ける。この時、巻付角度θ2を傾斜角度θ1と同等とする。即ち、樹脂シート221の製造においては、傾斜角度θ1が巻付角度θ2と同等のなるように、樹脂シート221の端縁224を形成する。
【0089】
巻付角度θ2となるように樹脂シート221を芯材10に巻き付けた後、第一の実施形態と同様にして、樹脂シート221を芯材10に接合して、被覆層20とする。
形成された被覆層20の樹脂壁部24の端縁224は、仮想線Q2と平行となる。加えて、樹脂シート221は、延在方向Q1において折曲縁222aの位置と折曲縁223aの位置との距離D1が特定の長さであるため、光ファイバ担持樹脂成形体1bは、折り返し部222の長さとL222と折り返し部223の長さL223とが、軸線O1方向で同等となる。
【0090】
図12(a)に示すように、延在方向Q1において折曲縁222aと折曲縁223aとが距離D1を有する。このため、樹脂シート221を芯材10に巻き付けた終端では、折り返し部222、223が芯材10の長さ方向(即ち、軸線方向O1)に屈曲する()
図12(b))。即ち、折り返し部222、223は、樹脂シート221における延在方向Q1に対して、角度(屈曲角度)θ11で屈曲する。この屈曲角度θ11は、90°-θ1である。このため、距離D1を、前述の(s1)式で求められる距離とすることで、光ファイバ担持樹脂成形体1bにおける折り返し部222の長さ222aと折り返し部223の長さL223aとが同等となる。
【0091】
例えば、
図13(a)に示す樹脂シート321は、光ファイバ22の延在方向Q1において、折り返し部322の折曲縁322aの位置と折り返し部323の折曲縁323aの位置とが同等である。樹脂シート321を用いて製造した光ファイバ担持樹脂成形体の折り返し部は、軸線O1方向において、折曲縁322aの位置と折曲縁323aとの位置に距離D2の差が生じる(
図13(b))。
【0092】
本実施形態によれば、2つ以上の折り返し部を有し、折り返し部の長さが相互に同等であるため、測定機器での処理が容易である。
【0093】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、被覆層は、樹脂壁部内に光ファイバのみを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、被覆層は、樹脂壁部内にテンションメンバを有してもよい。被覆層がテンションメンバを有することで、光ファイバへの張力を緩和して、光ファイバが損傷するのを抑制できる。
図9の樹脂シート121は、樹脂壁部24内に5本のテンションメンバ122を有する。それぞれのテンションメンバ122は、光ファイバ22と交互に位置している。この樹脂シート121を芯材に巻き付けて被覆層を形成することで、断面視で光ファイバ22の間に少なくとも1本のテンションメンバ122が位置する。
【0094】
テンションメンバの外径は、1μm~5000μmが好ましく、5μm~4000μmがより好ましく、10μm~3000μmがさらに好ましい。外径が上記下限値以上であれば、光ファイバ22の断線をより防止できる。外径が上記上限値以下であれば、樹脂シート121の厚さを過度に高めるのを防止できる。
【0095】
テンションメンバ122としては、金属線、樹脂線を例示できる。金属線としては、銅線を例示できる。樹脂線としては、アラミド繊維強化樹脂(AFRP)線、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)繊維を例示できる。鋼線等の金属線は電力線等からの誘導を受けることがあるため、テンションメンバ122としては、樹脂線が好ましい。
【0096】
上述の実施形態では、樹脂シートにおける光ファイバの本数と、光ファイバ担持樹脂成形体における光ファイバの本数とが同じである。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、1本の光ファイバを有する樹脂シートを2枚以上用い、2本以上の光ファイバを有する光ファイバ担持樹脂成形体としてもよい。
【0097】
上述の実施形態では、芯材が樹脂であるが、本発明はこれに限定されず、金属、ガラス、セラミック等の成形体でもよい。
【符号の説明】
【0098】
1、1a 光ファイバ担持樹脂成形体
10 芯材
20、20a 被覆層
21 樹脂シート
22 光ファイバ
24 樹脂壁部
27a 第一の接合体
27b 第二の接合体
28、28a 接合部
122 テンションメンバ
O1 軸線