(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049362
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電解装置の動作方法及び電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 15/00 20060101AFI20240402BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20240402BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240402BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240402BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240402BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20240402BHJP
【FI】
C25B15/00 302Z
C25B15/02
C25B9/00 A
C25B1/04
C01B3/02 H
C25B15/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023157477
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】22020462
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレンホーファー、アントン
(72)【発明者】
【氏名】ディリッグ、マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー-トルヴァルト、オレ
(72)【発明者】
【氏名】ビルク、ロベルト
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC09
4K021CA11
4K021CA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電解装置内で爆発性の混合気体が発生することを防ぐ、電解装置の動作方法および電解装置を提供する。
【解決手段】本発明は、水が電解ユニット(110)において酸素及び水素に変換される電解装置(100)を動作させるための方法に関し、この方法においては、電解ユニットの酸素側(116)から気体分離器(120)へと、水及び気体を含む流体流(c、d)が案内され、流体流(c)内に、点火装置(152)の点火が能動的に発生される。本発明は、相応の電解装置にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が電解ユニット(110)において酸素及び水素に変換される電解装置(100)を動作させるための方法において、
前記電解ユニットの酸素側(116)から気体分離器(120)へと、水及び気体を含む流体流(c、d)を案内し、
前記流体流(c)において、点火装置(152)の点火を能動的に発生させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
規則的又は不規則的な時間間隔でもって、特に所定の周波数でもって、前記点火を発生させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記点火が発生するか否かを監視し、特に、点火が発生しないことが識別される場合、エラー応答を開始することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記点火装置(152)と前記気体分離器120との間の流体流(c)において、特に二相流の流動様式を適合させることで、液相によって気相を中断させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
水を酸素及び水素に変換可能である電解ユニット(110)と、気体分離器(120)と、前記電解ユニット(110)の酸素側(114)を前記気体分離器(120)に接続する流体接続部(126)と、を備えた電解装置(100)において、
前記電解装置(100)は、前記流体接続部(126)において、前記電解ユニットの前記酸素側(114)から前記ガス分離器(120)への、水及び気体を含む流体流(c、d)が発生するように構成されており、
前記電解装置(100)は、前記流体接続部(126)において点火装置(152)を有し、且つ前記流体接続部において、前記点火装置(152)の点火を能動的に発生させるように構成されていることを特徴とする、電解装置(100)。
【請求項6】
前記電解装置(100)は、前記流体接続部(126)の一部として点火室(150)を有し、前記点火装置(152)は、前記点火室(150)内に配置されていることを特徴とする、請求項5記載の電解装置(100)。
【請求項7】
前記流体接続部(126)は、流れ方向において、前記点火室(150)の後段に、特に前記点火室の直後に、サイフォン状又はU字状の経路(154)を有することを特徴とする、請求項6記載の電解装置(100)。
【請求項8】
前記流体接続部の前記サイフォン状又はU字状の経路(154)は、流れ方向において、先ず、少なくとも実質的に垂直方向下方に延びる区間(154.2)が設けられており、続いて少なくとも実質的に垂直方向上方に延びる区間(154.4)が設けられているように構成されていることを特徴とする、請求項7記載の電解装置(100)。
【請求項9】
前記点火室(150)は、前記電解ユニット(110)の上方、且つ/又は流れ方向において前記電解ユニット(110)の直後に配置されていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項記載の電解装置(100)。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項記載の方法を実施するように構成されている、請求項5から9のいずれか一項記載の電解装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電気分解のための電解装置を動作させるための方法、並びに、例えば水素を取得するために使用される、その種の電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を取得するために、いわゆる電気分解を使用することができ、この電気分解においては、例えば水が電気エネルギによって酸素と水素に分解又は変換される。これは、水電気分解とも称される。ここでは、例えば、いわゆるプロトン交換膜電気分解(PEM電気分解、「Proton Exchange Membrane」電気分解)を検討する。
【0003】
PEM電気分解では、通常の場合、水の大部分が膜の酸素側に残る。水素が膜の反対側において生成されて排出されるが、酸素は差し当たり水の中に残り、その後、典型的には、容器内で水から分離される。
【0004】
しかしながら、酸素側においても水素がある程度発生するか、又は酸素側に再び戻って拡散するか、さもなければ、例えば膜における欠陥又は亀裂に起因して酸素側に到達することが起こり得る。これは、爆発性の混合物として発生する可能性があり、そのような混合物は、場合によっては、どこかで発火して、生じた爆発によって、電解装置が損傷するおそれがある。この背景から、電解装置又はその動作をより確実なものにすることが課題となる。
【0005】
発明の開示
この課題は、独立請求項の特徴を備えた、電解装置を動作させるための方法並びに電解装置によって解決される。実施形態は、従属請求項並びに以下の説明の対象である。
【0006】
発明の利点
本発明は、水電気分解並びに電解装置又は電解装置のための動作に取り組む。その種の電解装置は、典型的には、電気分解を用いて、水素の生成又は取得に用いられる。いわゆる水電気分解では、水が水素と酸素に変換(分解)される。つまり、水素の他に、それと同時に、常に酸素も取得又は生成される。水電気分解では、例えば、いわゆるアルカリ水電気分解(AEL:「Alkaline Electrolysis」)、又はいわゆるプロトン交換膜電気分解(PEM電気分解、「Proton Exchange Membrane」電気分解)が存在する。これらの基礎は、それ自体公知であり、例えば、Bessarabov等著「PEM electrolysis for Hydrogen production」、CRC Press、から公知である。
【0007】
その他に、いわゆる固体酸化物形電解セル(SOEC、「Solid Oxide Electrolysis Cell」)及び陰イオン交換膜電気分解(AEM電気分解、「Anion Exchange Membrane」電気分解)も存在する。特に、低温で行われる電気分解技術、つまり例えばPEM電気分解、AEL電気分解及びAEM電気分解は、フレキシブルな動作を実現できることから、エネルギ取得を再生可能エネルギへと移行させることに適している。
【0008】
PEM電気分解では、例えば、水、特に脱イオン水が、使用媒体として、プロトン交換膜(PEM)を備えた電解ユニットに供給され、このPEMにおいて、その使用媒体、即ち水が水素と酸素に変換(分解)される。
【0009】
PEM電気分解では、通常の場合、水の大部分が上述のように膜の酸素側に残る。水素が膜の反対側において生成されて排出されるが、酸素は差し当たり水の中に残り、その後、典型的には、(気体分離器又は酸素分離器として使用される)容器内で水から分離される。
【0010】
しかしながら、酸素側においても水素がある程度発生するか、又は酸素側に再び戻って拡散するか、さもなければ、例えば膜における欠陥又は亀裂に起因して酸素側に到達することが起こり得る。従って、酸素側から排出される流体流は、水及び酸素だけを含むのではなく、場合によっては水素も含み、つまり一般的に水及び気体を含む。ここで、気体という用語は、単一の気体だけでなく、場合によっては存在する混合気も含めた、気体状の媒体全般であると解される。即ち、電解ユニットの酸素側には、又は流体流には、状況によっては、電解ユニットの下流側において電解装置内のいずれかの場所で発火する可能性がある爆発性の混合物が発生するおそれがある。これは、酸素分離器又は気体分離器への流体流内であろうと、又はその後の、(まさしく酸素だけでなく、場合によっては存在する水素も分離される)それらの分離器において分離され排出された気体流においても発生するおそれがある。生じた爆発又は爆轟によって、電解装置が損傷する可能性がある。
【0011】
混合物の発火は、特に、気体中の水素の割合(ここで水の割合は重要ではない)が、ある所定の割合、いわゆる爆発下限界(LEL:lower explosive limit)を超えると生じる可能性がある。つまり、例えば、これはスタンバイモード又は、典型的には約4%の低い負荷で電解装置が動作する状況である。気体の爆発(下)限界とは、それを超えた際に、それと同時に十分な酸素が含有されていれば、発火又は爆発が起こり得る、混合気内の含有量を表す。
【0012】
通常の場合、電解ユニット内又は下流側のどこかにある発火源は排除又は回避できないので、電解装置の動作時の潜在的な発火又は爆発若しくは爆轟を常に考慮しなければならない。爆発とは、着火性の混合気の、層状の火炎面を伴う、制御不能な燃焼である。爆発は、実質的に伝播速度によって、爆轟と区別される。
【0013】
水素と酸素は非常に高速に反応し終えるので、非常に高速な火炎速度が生じる。つまり、例えば、相応の流体接続部又は流体ラインにおいて、火炎は高速に伝播する。爆発では、その火炎速度は音速を下回るが、爆轟では、典型的には、音速を遥かに上回る。気体又は混合気の爆発及び爆轟によって、圧力の大幅な上昇が生じる。典型的には、爆発時には係数10の圧力上昇が想定され得る。爆轟の影響は遥かに深刻である。爆轟では、圧力上昇係数が25、それどころか50以上になり得る。爆発は、特定の初期段階後に、また燃料と酸素の最低濃度に従い爆轟に急変する可能性がある。つまり、電解装置において、特にその電解装置の酸素側及び下流側の経路、また場合によっては上流側の経路において、本来の動作圧力の25倍、それどころか50倍の圧力が生じるおそれがある。
【0014】
即ち、電解装置の場合によっては生じる損傷を回避するために、該当する流体ライン又は気体ラインを、相応に高い圧力に対応するように設計することが考えられる。この場合、電解装置及び酸素の用途に応じて、非常に多くの又は非常に長いラインが関係することが考えられる。このことは、電解ユニットから気体分離器までの流体ラインだけに該当するのでなく、分離された酸素(また場合によっては水素)が1つ又は複数の所望の用途又は他の処理ステップへと案内される、場合によっては設けられている気体ラインにも該当する。これは非常に高いコストに繋がる可能性がある。
【0015】
この背景から、上述のような電解装置において、電解ユニットの酸素側から気体分離器(又は気体分離器として使用される容器)までの流体流において、適切な点火装置が設けられることによって、点火を能動的に発生させる(又は引き起こす)ことが提案される。これによって、場合によっては存在する水素、又は場合によっては着火性の気体又は混合気が制御下で所望の箇所において点火される。能動的な点火が行われた箇所の下流側には、着火性の気体又は混合気はもはや存在し得ないので、これによって、任意の箇所での制御できない点火が阻止される。相応に、点火が電解ユニットの可能な限り近傍において、又は電解ユニットの直後において行われることも好適である。ここで、点火装置の点火又は点火装置内での点火は確かに行われるが、しかしながらその際、気体又は混合気は、通常、点火されず、例えば水素の濃度が過度に高い場合のようなケース又は例外ケースにおいてのみ点火されることを言及しておく。
【0016】
とりわけ、点火は規則的な時間間隔又は不規則的な時間間隔で、特に所定の周波数、例えば5Hzから50Hzの間の値の周波数で発生される。これによって、点火時に反応する新たな水素は流体流において常に少量しか存在しないので、爆発の規模を小さく抑えることが達成される。
【0017】
また、点火が発生するか否かが監視される場合、またその際に特に、点火が発生しないこと、つまり例えば、本来はトリガされる筈であったにも関わらず、エラーに起因して点火が発生しなかったことが識別される場合、エラー応答が開始されるか、例えばエラー通知が出力されるか、又は電解装置がスイッチオフされることも好適である。このために、例えば、点火火花が発生しているか否かを検出するために、点火装置に光学的な監視部を設けることができる。例えば、点火火花が発生しているか否かを検出するために用いられる電圧監視部又は電流監視部を同様に設けることができる。これによって、気体又は混合気も点火しているか否かに依存せずに、点火装置の点火を監視することができる。
【0018】
点火が能動的に引き起こされる場合であっても高い圧力が発生する可能性はあるので、好適には、内部に点火装置が配置されており、且つ流体流が案内される流体接続部の一部である点火室が設けられる。従って、この場合、流体流は点火室を通って案内される。この点火室は、可能な限り高い圧力に耐えるために、例えば球状に形成することができる。更に、この点火室は、小さい気体空間及び短い焼尽時間のみを有するように、可能な限り小型に構成することができる。
【0019】
好適には、流体接続部は、流れ方向において、点火室の後段、特に点火室の直後に、サイフォン状又はU字状の経路を有する。特に、流体接続部のサイフォン状又はU字状の経路は、流れ方向において、先ず、少なくとも実質的に垂直方向下方(即ち重力方向)に延び、続いて少なくとも実質的に垂直方向上方(即ち重力方向とは反対の方向)に延びる区間が設けられているように形成されている。例えば相応に成形された管の形態の流体ラインのその種の経路は、発生した爆発面が下流側に更に伝播せずに、サイフォン状又はU字状の経路によって更なる伝播が防止されることを保証する。
【0020】
ここで、垂直方向下方に延びる区間及び/又は垂直方向上方に延びる区間は、少なくともある程度の長さを有することが好ましい。垂直方向に延びる区間の直径並びに内部は、また場合によっては、同様に長さは、特に、液体内に気泡が含まれている、いわゆる「気泡流」(bubble flow)、いわゆる「スラグ流」(slug flow)、又はいわゆる「チャーン流」(churnflow)(又はフロス流)を維持できるように形成されていることが望ましい。これに対して、「環状流」(annular flow)(又は液膜流)又は「霧流」(mist flow)は、適切な設計又は成形によって回避されることが望ましい。
【0021】
特に、気相が確実に液相によって中断される流動様式が所望され、このことは「環状流」(annular flow)(又は液膜流)及び「霧流」(mist flow)では該当しないので、従って、これらは設計にあたり可能な限り排除されるべきである。流体接続部のサイフォン状又はU字状の経路は、所望の流動様式を達成するための実現可能性であるが、しかしながら、特に液相による気相の中断が特に重要であるので、流体接続部の他の形状及び経路も考えられることに留意されたい。
【0022】
サイフォン状又はU字状の経路の湾曲した区間は、圧力波の反射を阻止するために、相応に成形されることが望ましい。つまり例えば、TRGS 407に準拠して、少なくとも5L/D(L/Dは長さと直径の比を表す)を有するように成形されることが望ましい。
【0023】
所期のように引き起こされるこの点火によって、また特に、特別な構成の点火室によって、残りのラインを従来よりも遥かに低い圧力に合わせて設計することができ、このことは、大幅なコスト削減ももたらす。このことは、特に、ラインの広範な部分においてプラスチック、例えば繊維強化プラスチックも使用することができ、その結果、金属製ラインの使用、またそれに伴うPEMの比較的高い劣化率が回避されるという点において有利である。ラインにプラスチックを使用することは、例えば流体ライン又は排出される酸素用のラインにおける動作圧力が3.5bargである場合、プラスチックは少なくとも25倍の圧力には耐えられないので、少なくとも、比較的大きい直径では通常は不可能である。場合によっては、それにもかかわらず残存する水素を除去するために、上流において気体流を圧縮することは、そのために必要とされるコンプレッサが同様にそれらの圧力に通常は耐えられないので、従来では不可能であった。
【0024】
本発明を主にPEM電気分解に関連させて説明したが、本発明は、水素及び酸素から成る着火性の混合物の危険性が存在するあらゆる水電気分解に適していることに留意されたい。
【0025】
以下では、本発明の好適な実施形態による装置を示す添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】好適な実施形態における、本発明による電解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明による方法も実施可能である、好適な実施形態における本発明による電解装置100が概略的に示されている。例えば、この電解装置100は、PEMを用いる水電気分解のための電解装置である。特に、ここに図示した、また本発明の範囲内で全般的に説明する電解装置は、例えば工業的な規模において水素を取得するための工業的な規模における電解装置である。その種の電解装置の典型的な電力は、例えば10MW以上、又は20MW以上である。
【0028】
電解装置100は、電解ユニット110を有し、この電解ユニット110は、ここでは例示的に、2つのいわゆる電解セル又はスタック110.1、110.2を有しており、各電解セル又はスタックには、それぞれ、1つのプロトン交換膜(PEM)112が設けられている。PEM112は、電解セルをそれぞれ、酸素側114と水素側116とに隔てる。各酸素側114及び各水素側116は、共通して、それぞれ電解ユニット110の酸素側及び水素側とみなすことができる。電解ユニット110は、サイズ及び要求に応じて、例えば電解セルを1つだけ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。
【0029】
電解装置100は、更に、容器120を有し、この容器120は、気体分離器、ここでは特に、酸素分離器又は酸素-水分離器として用いられる。容器120は、流体接続部を介して、電解ユニット110に接続されているか、又は電解ユニット110において電解セル110.1、110.2の各々に接続されている。これによって、流体流bを、例えばポンプ124を用いて、容器120から電解ユニットへと送り出すことができる。電解ユニット110は更に、流体接続部126、例えば管を介して容器120に接続されている。流体接続部126によって、流体流cを電解ユニット110、そこにおける酸素側114、又は各電解セルの酸素側から容器120に送り出すことができる。この送り出しは、やはりポンプ124で足る。
【0030】
更に、電解装置100は、別の気体分離器130、ここでは水素分離器又は水素-水分離器を有する。
【0031】
ここでは、電解ユニット110を1つだけ図示しているが、例えば電解装置100のサイズ及び電力に応じて、複数の電解装置100が設けられてもよい。その場合、複数の電解ユニットは、例えばそれにもかかわらず、気体分離又は酸素分離のための共通の容器及び/又は共通の水素分離器に接続されていてもよい。
【0032】
ここで、電解装置100の動作時には、水を含む流体流bが容器120から電解ユニット110へと送り出される。電解ユニット110では、水が酸素及び水素に変換される。このために、電圧が電解ユニット110に印加され、水素がPEM112によって電気化学的に水素側116に移動し、そこから、必要に応じて水蒸気及び液体の水相と更に混合され、流れeとして水素分離器130に供給される。そこでは、水素が分離され、流れfとして例えば別の用途のために排出又は貯蔵される。分離された水は、例えば処理部に供給され、続いて、再び主水循環系に戻される。
【0033】
酸素は、水の大部分と共に酸素側114に残る。しかしながら、上述したように、酸素側114には水素もある程度、存在する場合がある。つまり、生じた流体流cは、水及び気体、特に水、酸素及び水素を含む。流体流cは、点火装置152が設けられている点火室150に案内される。更に、流体流は、流体接続部126のサイフォン状又はU字状の経路154を通って案内され、続いて、流体流dとして容器又は気体分離器120に到達する。総じて、流体流は、容器120と電解ユニット110との間において循環される。
【0034】
上述したように、容器120においては、気体、特に酸素(また場合によっては依然として存在する水素)が水から取り除かれる。つまり、その際に、取り除かれた又は分離された気体を、流れgとして、別の用途のために排出又は貯蔵することができる。例えば、流れhとして、場合によっては更に存在する水素を除去して気体を乾燥させるための濾過部、又はコンプレッサへと更に分岐させることも考えられる。
【0035】
電解ユニット110において、水が酸素及び水素に変換され、それら酸素及び水素が排出され、水の量は減少するので、従って、連続的な動作を維持するために、外部から新たな水(いわゆる補給水(Make-Up-Water))が流れaとして供給されてもよい。
【0036】
この水aは、事前に例えば更に処理されていてもよいが、しかしながらこのことは本発明には重要ではない。同様に、場合によっては、水素分離器130において分離された水が、場合によっては同様に事前処理された後に、容器120に再び供給されてもよい。
【0037】
点火室150においては、例えば所定の周波数でもって、点火装置152(即ち点火源)の点火が発生され、それによって、場合によっては流体流c内に存在する、水素及び酸素から成る着火性の混合気が点火される。サイフォン状又はU字状の経路154と、そこに収容されている流れ領域とによって、その際に生じた圧力波が下流側に更に伝播することはない。つまり、流体流c内に(点火下限界を下回る)少量の水素しか存在していなかったため、又はより高い濃度で、点火室150内で既に点火が行われていたため、結果として生じる流体流dは、点火下限界を下回る割合の水素しか含んでいないことが保証される。
【0038】
更に、例示的に制御装置160が図示されており、この制御装置160を用いて、例えば点火装置152を制御することができ、また必要に応じて監視することができる。
【0039】
図2には、
図1に示した電解装置の一部が、概略的ではあるがより詳細に、とりわけ点火室150からサイフォン状又はU字状の経路154後までの流体接続部126が図示されている。点火室150には、電解ユニットの酸素側から到来する流体流cが流入し、端部において流体流dが流出して、気体分離器へと案内される。上述したように、点火室は、電解ユニットの可能な限り近傍に配置することができる。これによって、設計圧力が高い領域を小さく抑えることができる。更に、(重力方向に見て)電解ユニットの上方に点火室を配置することは、電解ユニットが確実に水によって覆われた状態を保つためには特に好適である。流体流cの点火室150への結合は、特に、
図2に示唆されているように、液面の上方から下方へと行われることが望ましい。
【0040】
点火室150は、ここでは例示的にほぼ球状に形成されており、また点火装置152は、例示的に点火室の内部へと延在する2つの電気的な接点を含む。これらの接点に電圧を印加することによって、点火室150において、点火を能動的に引き起こす、又は発生させることができる。点火は、例示的に雷のシンボルとして示唆されている。
【0041】
例示的に、流体接続部126は、流れ方向において、点火室150の後段にサイフォン状又はU字状の経路154を有する。ここでは、(基本的に管等であってよい)流体接続部126が、短く水平方向に延び、続いて弧状の区間154.1(ほぼ90°の湾曲部)を有し、それに続いて、垂直方向下方に向かって延びる区間154.2に移行する。続いて、区間154.2は、弧状の区間154.3(ほぼ180°の湾曲部)を経て、垂直方向上方に延びる区間154.4に移行する。続いて、区間154.4は、弧状の区間154.5(ほぼ90°の湾曲部)を経て、水平方向に延びる区間に再び移行する。この水平方向に延びる区間は、続いて、例えば容器まで更に水平方向に延びていてもよい。
【0042】
この場合、流体接続部のサイフォン状又はU字状の経路は、流れ方向において、先ず、少なくとも実質的に垂直方向下方(即ち重力方向)に延び、続いて少なくとも実質的に垂直方向上方(即ち重力方向とは反対の方向)に延びる区間が設けられているように形成されている。例えば相応に成形された管の形態の流体ラインのその種の経路は、発生した爆発面が下流側に更に伝播せずに、サイフォン状又はU字状の経路によって更なる伝播が防止されることを保証する。
【0043】
前述したように、点火室150における点火によって、場合によっては存在する着火性の混合物が爆発するが、その圧力波は、サイフォン状又はU字状の経路に起因して、(流れ方向において)せいぜい区間154.4の端部までしか伝播しない。その限りにおいて、流体接続部126の更に下流側、また同様に容器120、並びに場合によっては別の(例えば流れg及びh用の)気体接続部が、防爆性又は防轟性に設計されている必要はない。むしろ、点火室150、区間154.4まで(又は場合によっては僅かに先までの区間)も含めた流体接続部126及び点火室150の上流側が、防爆性又は防轟性に形成されていれば十分である。
【0044】
上述したように、サイフォン状又はU字状の経路154は、特に個々の区間の直径及び長さに関して、「環状流」(annular flow)(又は液膜流)及び「霧流」(mist flow)が生じないように形成されていることが望ましい。
【0045】
これに関して、
図3には種々のタイプの流れが示されている。ここでは、(A)から(F)それぞれには、流体接続部126の一部、とりわけサイフォン状又はU字状の経路154の領域における流体接続部126の一部、特に
図2において内側に少数の平行線が示されている流体接続部126の一部が図示されている。ここで、iは気泡を表しており、これに対して、kは液体を表している。
【0046】
(A)には、液体内に平均的な気泡が分布している、いわゆる「気泡流」(bubble flow)が示されている。(B)には、いわゆる「スラグ流」slug flow)」が示されており、(C)及び(D)には、それぞれいわゆる「チャーン流」(churn flow)(又はフロス流)が示されているが、タイプは異なる。気相が点火室150と流体接続部126との間において確実に遮断され、下流側への圧力波の伝播を阻止するために、これら3つ又は4つのタイプの流れが許容されるか、又は所望される。
【0047】
(E)には、いわゆる「環状流」(annular flow)(又は液膜流)が示されており、この場合、純粋な液体は流体接続部(又は管)の壁部に集まり、これに対して、更に内部には、気体及び液体から成る微細な混合物が存在する。(F)には、いわゆる「霧流」(mist flow)が示されており、この場合、一貫して、気体及び液体から成る微細な混合物が生じている。これら2つのタイプの流れは、サイフォン状又はU字状の経路154の適切な成形によって阻止されることが望ましい。流動様式は、流速、特に管路の直径、特に垂直方向上方に延びる部分における直径の影響を受けると考えられる。
【外国語明細書】