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特開2024-49365エンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049365
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】エンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20240402BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20240402BHJP
   H03D 7/00 20060101ALI20240402BHJP
   H03D 7/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04B1/16 Z
H04B1/40
H03D7/00 F
H03D7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023158264
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】17/954,428
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒマンシュ・カトリ
(72)【発明者】
【氏名】サミート・ジヒール
(72)【発明者】
【氏名】トュマイ・カナ
【テーマコード(参考)】
5K011
5K061
【Fターム(参考)】
5K011DA06
5K011KA04
5K061AA10
5K061CC14
(57)【要約】
【課題】トランシーバを動作させるための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】
トランシーバは、アップコンバートミキサーと、ダウンコンバートミキサーと、コントローラと、エンベロープ検出器と、を含むことができる。アップコンバートミキサーは、入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成することができる。エンベロープ検出器は、アップコンバートミキサーから出力された送信信号を受信し、送信信号のエンベロープをダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力することができる。エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示すことができる。コントローラは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方に基づく較正パラメータを受信し、較正パラメータに基づいてアップコンバートミキサーを較正することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成するように構成されたアップコンバートミキサーと、
ダウンコンバートミキサーと、
前記アップコンバートミキサーから出力された前記送信信号を受信するように、および前記送信信号のエンベロープを前記ダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力するように構成されたエンベロープ検出器と、
を備え、
前記エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示す、
半導体装置。
【請求項2】
前記エンベロープ検出器の入力端子は、前記アップコンバートミキサーの出力端子および電力増幅器の入力に接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記エンベロープ検出器は、前記送信信号のエンベロープを可変利得増幅器に出力する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記リークされたLO信号は、前記エンベロープ内の第1の周波数にあり、前記第1の周波数は、中間周波数であり、
前記画像信号は、前記エンベロープ内の第2の周波数にあり、前記第2の周波数は、前記中間周波数の2倍である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記エンベロープは、前記LO信号の少なくとも1つの高調波をさらに示す、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置であって、
入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成するように構成されたアップコンバートミキサーと、
ダウンコンバートミキサーと、
コントローラと、
前記アップコンバートミキサーから出力された前記送信信号を受信するように、および前記送信信号のエンベロープを前記ダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力するように構成されたエンベロープ検出器と、
を備え、
前記エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示し、
前記コントローラは、前記リークされたLO信号および前記画像信号のうちの少なくとも一方に基づく較正パラメータを受信するように、および前記較正パラメータに基づいて前記アップコンバートミキサーを較正するように構成される、
半導体装置。
【請求項7】
前記エンベロープ検出器の入力端子は、前記アップコンバートミキサーの出力端子と電力増幅器の入力との間に接続される、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記エンベロープ検出器は、前記送信信号のエンベロープを可変利得増幅器に出力する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記リークされたLO信号は、前記エンベロープ内の第1の周波数にあり、前記第1の周波数は、中間周波数であり、
前記画像信号は、前記エンベロープ内の第2の周波数にあり、前記第2の周波数は、前記中間周波数の2倍である、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記エンベロープは、前記LO信号の少なくとも1つの高調波をさらに示す、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記アップコンバートミキサーの出力端子に接続された電力増幅器を無効にするように、および前記ダウンコンバートミキサーの入力端子に接続された低雑音増幅器を無効にするように、および前記電力増幅器および前記低雑音増幅器を無効にしたことに応答して、前記エンベロープ検出器を有効にするように構成される、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記エンベロープは、ベースバンドプロセッサに出力され、前記コントローラは、前記ベースバンドプロセッサから前記較正パラメータを受信するように構成される、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項13】
トランシーバを動作させるための方法であって、
入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成するステップと、
前記トランシーバ内のアップコンバートミキサーの出力端子において前記送信信号をタップするステップと、
前記送信信号のエンベロープを前記トランシーバ内のダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力するステップであって、前記エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示す、ステップと、
前記エンベロープにおける前記リークされたLO信号および前記画像信号に基づく較正パラメータを用いて前記アップコンバートミキサーを較正するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記送信信号のエンベロープを出力するステップは、前記送信信号を前記エンベロープに変換するようにエンベロープ検出器を動作させるステップを含み、前記エンベロープ検出器は、前記アップコンバートミキサーの出力端子と電力増幅器の入力との間に接続される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エンベロープを可変利得増幅器に出力するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記リークされたLO信号は、前記エンベロープ内の第1の周波数にあり、前記第1の周波数は、中間周波数であり、
前記画像信号は、前記エンベロープ内の第2の周波数にあり、前記第2の周波数は、前記中間周波数の2倍である、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記エンベロープは、前記LO信号の少なくとも1つの高調波をさらに示す、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記アップコンバートミキサーの出力端子に接続された電力増幅器を無効にするステップと、
前記ダウンコンバートミキサーの入力端子に接続された低雑音増幅器を無効にするステップと、
前記電力増幅器および前記低雑音増幅器を無効にしたことに応答して、前記エンベロープを出力するようにエンベロープ検出器を有効にするステップと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記エンベロープをベースバンドプロセッサに出力するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記較正パラメータは、前記ベースバンドプロセッサから前記トランシーバで受信される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、トランシーバの動作に関する。より詳細には、本開示は、トランシーバに組み込まれたエンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正に関する。
【背景技術】
【0002】
トランシーバは、信号を送受信するように構成された集積回路(IC)であり得る。トランシーバの応用例として、ベースバンドプロセッサ、複数のトランシーバIC、および複数のアンテナに接続された複数のビームフォーマICなどのコンポーネントを含むビームフォーミングシステムを挙げることができる。複数のビームフォーマICは、異なる利得設定および位相設定をもつことができる。送信モードにおいて、複数のアンテナは、複数のビームフォーマICの異なる利得設定および位相設定に基づいた形状、サイズ、および方向を有するビームを出力することができる。受信モードにおいて、複数のアンテナは、異なる方向から異なる振幅の信号を受信することができ、受信した信号を組み合わせて復号可能な信号を形成することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態において、トランシーバを動作させるための半導体装置が提供される。半導体装置は、アップコンバートミキサーと、ダウンコンバートミキサーと、エンベロープ検出器と、を含むことができる。アップコンバートミキサーは、入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成するように構成され得る。エンベロープ検出器は、アップコンバートミキサーから出力された送信信号を受信するように構成され得る。さらに、エンベロープ検出器は、送信信号のエンベロープをダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力するように構成され得る。エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示すことができる。
【0004】
一実施形態において、トランシーバを動作させるための半導体装置が提供される。半導体装置は、アップコンバートミキサーと、ダウンコンバートミキサーと、コントローラと、エンベロープ検出器と、を含むことができる。アップコンバートミキサーは、入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成するように構成され得る。エンベロープ検出器は、アップコンバートミキサーから出力された送信信号を受信するように構成され得る。さらに、エンベロープ検出器は、送信信号のエンベロープをダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力するように構成され得る。エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示すことができる。コントローラは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方に基づく較正パラメータを受信するように構成され得る。さらに、コントローラは、較正パラメータに基づいてアップコンバートミキサーを較正するように構成され得る。
【0005】
一実施形態において、トランシーバを動作させるための方法が提供される。該方法は、入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、トランシーバ内のアップコンバートミキサーの出力端子において送信信号をタップするステップを含むことができる。さらに、該方法は、送信信号のエンベロープをトランシーバ内のダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力するステップを含むことができる。エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示すことができる。さらに、該方法は、エンベロープにおけるリークされたLO信号および画像信号に基づく較正パラメータを用いてアップコンバートミキサーを較正するステップを含むことができる。
【0006】
上述した概要は、例示的なものであり、いかなる場合でも限定的であることを意図していない。上述した例示的な態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が、添付の図面および以下の詳細な説明を参照することで明らかになるであろう。図において、同様の参照符号は、同一または機能的に類似する要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態における、エンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正を実現することができる例示的なシステムを示す図である。
図2】一実施形態における、図1のシステムの詳細を追加的に示す図である。
図3】一実施形態における、エンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正を実現することができる例示的なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本願の様々な実施形態の理解を促すために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技術などを含む多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本願の様々な実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実現され得ることを理解するであろう。場合によっては、本願を不明瞭にしないために、既知の構造または処理ステップの詳細に関する説明を省略する。
【0009】
図1は、一実施形態における、エンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正を実現することができる例示的なシステムを示す図である。1つまたは複数の実施形態において、システム100は、無線周波数(RF)トランシーバなどの通信装置によって実現されるRF伝送システムであり得る。さらに、1つまたは複数の実施形態において、システム100は、一般的な無線周波数、ミリ波周波数、および/またはマイクロ波周波数で動作するように構成され得る。1つまたは複数の実施形態において、システム100は、第4世代(4G)無線通信システム、第5世代(5G)無線通信システム、衛生通信システム、共通データリンクなどのポイントツーポイント通信システム、および/またはその他のタイプの無線通信ネットワークなどの無線通信ネットワークの一部であり得る。1つまたは複数の実施形態において、システム100は、無線ネットワークカードに実装され得る。
【0010】
システム100は、ベースバンドプロセッサ102と、複数のトランシーバ110と、分配ネットワーク104と、複数のビームフォーマ集積回路(IC)120と、複数のアンテナ122と、を含むことができる。複数のトランシーバ110は、トランシーバ110-0から110-Nの範囲のN個のトランシーバを含むことができる。複数のトランシーバ110の各々は、複数のビームフォーマIC120のうちのビームフォーマICセットに接続され得る。各ビームフォーマIC120は、1つまたは複数のアンテナ122に接続され得る。複数のアンテナ122は、複数の個別のアンテナ、および/または異なる数のアンテナを有するアンテナアレイを含むことができる。複数のアンテナ122のうちの各アンテナは、それぞれの振幅および位相をもつRF信号を出力してもよい。
【0011】
ベースバンドプロセッサ102は、例えば、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはその他のタイプのプロセッサあるいはコントローラであり得る。1つまたは複数の実施形態において、ベースバンドプロセッサ102は、無線ネットワークカード内のプロセッサ、またはシステム100を実装する無線ネットワークカードを含むコンピュータ内の一般的なマイクロプロセッサであり得る。ベースバンドプロセッサ102は、システム100の送受信動作に必要なベースバンドデジタル信号処理を実行するように構成された様々な論理回路およびインタフェースを含むことができる。一実施形態において、ベースバンドプロセッサ102は、トランシーバ110およびビームフォーマIC120の動作に関連する波形生成、等化、および/またはパケット処理を実行するように構成され得る。また、ベースバンドプロセッサ102は、トランシーバ110およびビームフォーマIC120の信号のフロー方向を構成、管理、および制御するように構成され得る。例えば、ベースバンドプロセッサ102は、制御信号をトランシーバ110およびビームフォーマIC120のコントローラに送信して、送信モードと受信モードを切り替えることができる。
【0012】
ビームフォーマIC120は、複数のチャネルを含むことができる。各チャネルは、位相調整器および利得制御回路を含むことができる。位相調整器の位相設定および利得制御回路の利得設定は、アンテナ122によって出力または受信されるRF信号の位相および/または利得(例えば、振幅)を定義することができる。送信モードにおいて、位相設定および利得設定は、複数のチャネルにわたって位相遅延を生じさせて、干渉パターンを生成し、アンテナ122にフィールドパターンおよびビーム方向を有するビームを集束させることができる。受信モードにおいて、位相設定および利得設定は、複数のチャネルにわたって位相遅延を生じさせて、異なる方向からアンテナ122によって受信され得るRF信号を結合し、フィールドパターンおよびビーム方向を有する受信ビームを形成することができる。
【0013】
一実施形態において、各トランシーバ110は、単一の集積回路チップであり得る。送信モードにおいて、ベースバンドプロセッサ102は、1つまたは複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)106を介して信号をトランシーバ110に送信することができる。DAC106を介してベースバンドプロセッサ102からトランシーバ110で受信された信号は、アンテナ122によって送信され得る形式への変換などの処理を受けることができる。分配ネットワーク104は、トランシーバ110からビームフォーマIC120へ、およびビームフォーマIC120からトランシーバ110へ信号をルーティングすることができる複数のトレース(例えば単方向および/または双方向トレース)を含むことができる。
【0014】
複数のトランシーバ110のうちの各トランシーバは、コントローラ115と、アップコンバートミキサー112と、ダウンコンバートミキサー114と、エンベロープ検出器130と、を含むことができる。コントローラ115は、トランシーバ110の様々な動作を制御するように構成されたマイクロコントローラであり得る。例えば、コントローラ115は、アップコンバートミキサー112およびダウンコンバートミキサー114の調整、エンベロープ検出器130の有効化および無効化、ならびにトランシーバ110に組み込まれ得る電力増幅器および低雑音増幅器の有効化および無効化などの他の動作を行うように構成され得る。さらに、複数のトランシーバ110のうちの各トランシーバは、基準周波数をもつ局部発振器(LO)信号を生成するように構成された周波数シンセサイザ117を含むことができる。1つまたは複数の実施形態において、周波数シンセサイザ117は、周波数逓倍器、分周器、またはバッファであり得る。LO信号は、アップコンバートミキサー112およびダウンコンバートミキサー114に入力されて、より高い周波数またはより低い周波数を有する信号が生成され得る。エンベロープ検出器130は、トランシーバ110のそれぞれに内蔵され得る。エンベロープ検出器130の入力端子は、アップコンバートミキサー112の出力に接続され、エンベロープ検出器130の出力端子は、ダウンコンバートミキサー114の出力に接続され得る。エンベロープ検出器130は、振幅変調信号であり得る入力信号を、入力信号の復調エンベロープに変換するように構成された電子回路であり得る。
【0015】
一態様において、トランシーバ110の動作で信号障害が発生する場合がある。信号処理の障害の例として、パスの不均衡や発振器リークなどが挙げられる。これらの信号処理の障害は、トランシーバの出力信号の生成または入力信号の処理を劣化させる可能性がある。パスの不均衡は、トランシーバ110の同相パス(Iパス)および直交パス(Qパス)の性能の不均等に起因する障害である。パスの不均衡、またはI/Q不均衡は、IパスとQパスとの間の利得差および/または位相差によって引き起こされ得る。発振器リークは、発振器信号の一部がミキサーの入力からミキサーの出力に供給されたときに発生する可能性がある障害である。発振器リークは、ミキサーからの出力に発振器信号を発現させる場合がある。
【0016】
図1に示すシステム100において、周波数シンセサイザ117によって生成されたLO信号がアップコンバートミキサー112およびダウンコンバートミキサー114に入力されたときに、発振器リーク(またはLOリーク)が発生する場合がある。コントローラ115は、LOリークが低減されるように、アップコンバートミキサー112およびダウンコンバートミキサー114を較正するように構成され得る。一態様において、コントローラ115は、ミキサー内のバイアス電流または電圧を調整することでミキサーを較正することができる。較正の量または調整の度合いは、コンポーネント、周波数、および温度変化などのばらつきによって変化する場合がある。
【0017】
エンベロープ検出器130は、アップコンバートミキサー112の出力がタップされるように、各トランシーバ110に内蔵され得る。アップコンバートミキサー112の出力は、ダウンコンバートミキサー114の出力信号ラインを介してベースバンドプロセッサ102にフィードバックされ得る。ダウンコンバートミキサー114の出力信号ラインを用いてアップコンバートミキサー112の出力をベースバンドプロセッサ102にフィードバックすることで、フィードバックの目的でトランシーバ110に出力ピンを追加することを回避することができる。さらに、エンベロープ検出器130は、アップコンバートミキサー112の出力のエンベロープを出力することができる。ここで、エンベロープは、アナログ信号であり得る。さらに、ダウンコンバートミキサー114の出力信号ラインを用いることで、アップコンバートミキサー112の出力がダウンコンバートミキサー114を経由することを回避することができる。これにより、DCオフセット較正を実行する必要性を回避することができる。また、ダウンコンバートミキサー114の出力信号ラインを用いることで、ハードウェアを追加することなく、ADC108がエンベロープをデジタル信号に変換することができる。さらに、エンベロープ検出器130を用いて、トランシーバ110の出力をタップするかわりに、内部(例えば、電力増幅段の前のトランシーバ110内)でアップコンバートミキサー112の出力をタップすることで、トランシーバ110からの増幅出力を分析するためにスペクトラムアナライザなどの追加のハードウェアを使用する必要性を回避することができる。
【0018】
図2は、一実施形態における、図1のシステムの詳細を追加的に示す図である。図2に示すトランシーバ110-0を例として参照すると、複数のトランシーバ110のうちの各トランシーバは、入力ピンTXIFおよびRX、ならびに出力ピンTXおよびRXIFを含むことができる。入力ピンTXIFは、ベースバンドプロセッサ102(図1参照)からトランシーバ110-0への信号を受信することができる。入力ピンTXは、分配ネットワーク104を介してビームフォーマIC120から信号を受信することができる(図1参照)。出力ピンTXは、分配ネットワークを介してトランシーバ110-0からビームフォーマICへ信号を供給することができる。出力ピンRXIFは、トランシーバ110からベースバンドプロセッサ102へ信号を供給することができる。
【0019】
さらに、各トランシーバ110は、増幅器202と、電力増幅段204と、低雑音増幅器(LNA)206と、可変利得増幅器(VGA)208と、を含むことができる。増幅器202は、入力ピンTXIFとアップコンバートミキサー112の入力端子との間に接続された中間周波数(IF)増幅器であり得る。電力増幅段204は、出力ピンTXとアップコンバートミキサー112の出力端子との間に接続された1つまたは複数の電力増幅器を含むことができる。LNA206は、ピンRXとダウンコンバートミキサー114との間に接続され得る。VGA208は、ダウンコンバートミキサー114の出力端子とピンRXIFとの間に接続されたIF VGAであり得る。
【0020】
一実施形態において、入力信号212が(例えば、ベースバンドプロセッサ102から)トランシーバ110-0のピンTXIFに供給され得る。入力信号212は、中間周波数ωIFをもつテスト信号、または単一のインパルス信号であり得る。増幅器202は、入力としてアップコンバートミキサー112に供給される前の入力信号212を増幅することができる。アップコンバートミキサー112は、入力信号212と、周波数シンセサイザ117によって生成されたLO信号とを混合することができる。LO信号は、LO周波数ωLOをもつことができる。一実施形態において、増幅器202およびアップコンバートミキサー112による入力信号212の増幅は、入力信号212が搬送波として機能するように、且つ入力信号212とLO信号との混合後にスプリアス発射が変調として現れるように、入力信号212を振幅まで増大させる。
【0021】
一実施形態において、エンベロープ検出器130は、アップコンバートミキサー112の出力端子と電力増幅段204との間のノードにおいて、アップコンバートミキサー112の出力をタップすることができる。別の実施形態において、エンベロープ検出器130は、電力増幅段204とピンTXとの間のノードにおいて、電力増幅段204の出力をタップすることができる。別の実施形態において、エンベロープ検出器130は、電力増幅段204の中間ノードの1つからタップすることができる。アップコンバートミキサー112の出力をタップするノードは、システム100の所望の実装に基づくことができる。
【0022】
図2には、エンベロープ検出器130によってタップされたアップコンバートミキサー112の出力が送信信号214として示されている。送信信号214は、周波数ωLO+ωIFにおける所望の出力信号RFを含むことができる。別の実施形態において、システムは、周波数ωLO-ωIFにおける所望の出力RFを有するハイサイド注入であり得る。一態様において、入力信号212が増幅器202およびアップコンバートミキサー112などのハードウェアコンポーネントを通過するたびに、これらのハードウェアコンポーネントのプロセス変動に起因する信号障害が発生する場合がある。図2に示す実施例において、送信信号214は、周波数ωLOにおけるLOリーク信号および周波数ωLO-ωIFにおける画像信号などの信号障害を含む場合がある。一態様において、ハイサイド注入の場合、画像信号は、周波数ωLO+ωIFにおいて現れる。
【0023】
エンベロープ検出器130は、送信信号214をエンベロープ216に変換することができる。ここで、エンベロープ216は、送信信号214の復調エンベロープであるアナログ信号であり得る。エンベロープ216は、ダウンコンバートミキサー114の出力ライン(例えば、ダウンコンバートミキサー114の出力端子に接続された信号ライン)に出力され得る。ダウンコンバートミキサー114の出力ラインを通して、エンベロープ216をVGA208に入力して、エンベロープ216を強化することができる。エンベロープ216は、出力ピンRXIFを介してベースバンドプロセッサ102に出力され得る。一実施形態において、エンベロープ216は、出力ピンRXIFおよびADC108を介してベースバンドプロセッサ102に出力され得る(図1参照)。ADC108は、エンベロープ216を較正信号218に変換することができる。一実施形態において、ADC108は、較正信号218を生成するように、周波数ωIFおよび2ωIFにおいてエンベロープ216をサンプリングすることができる。図2に示すように、較正信号218は、周波数ωIFにおけるリークされたLO信号と、2ωIFにおける画像信号とを含むことができる。
【0024】
一実施形態において、エンベロープ検出器130によって生成されたエンベロープ216は、アップコンバートミキサー112の出力に追加のスプリアス発射(例えば、望ましくない信号)を含む場合がある。このような追加のスプリアス発射の例として、リークされたLO信号の高調波、またはリークされたLO信号とIF周波数との線形結合などが挙げられる。また、エンベロープ検出器130が電力増幅段204とピンTXとの間のノードでエンベロープ検出器の出力をタップする実施形態において、電力増幅段204のうちの電力増幅器のハードウェアのプロセス変動に起因するスプリアス発射は、エンベロープ検出器130によってタップされる出力に現れることができる。したがって、トランシーバ110内にエンベロープ検出器130を組み込むことで、リークされたLO信号、画像信号、およびトランシーバ110によって出力される信号に現れることができるあらゆるスプリアス発射の検出を容易にすることができる。
【0025】
ベースバンドプロセッサ102は、較正信号218を受信し、周波数ωIFにおけるリークされたLO信号および2ωIFにおける画像信号を特定することができる。周波数ωIFにおけるリークされたLO信号および2ωIFにおける画像信号の振幅に基づいて、ベースバンドプロセッサ102は、トランシーバ110のコントローラ115によって読み取りまたは解釈可能な較正パラメータを生成することができる。ベースバンドプロセッサ102は、較正パラメータをトランシーバ110-0に送信することができ、コントローラ115は、較正パラメータを用いてアップコンバートミキサー112を調整することができる。一実施形態において、コントローラ115は、較正パラメータに基づいてアップコンバートミキサー112のバイアス電流を低減させて、アップコンバートミキサー112の将来の出力におけるリークされたLO信号および画像信号の振幅を低減させることができる。
【0026】
一実施形態において、コントローラ115は、トランシーバ110-0を較正モード下で動作させるように、トランシーバ110のコンポーネントを有効または無効にするように構成され得る。較正モードにおいてトランシーバ110を動作させるために、コントローラ115は、電力増幅段204およびLNA206を無効にすることができる。電力増幅段204およびLNA206を無効にしたことに応答して、コントローラ115は、エンベロープ検出器130を有効にして、トランシーバ110-0を較正モードで動作させることができる。電力増幅段204およびLNA206が無効にされてエンベロープ検出器130が有効にされると、アップコンバートミキサー112からの出力がエンベロープ検出器130によってタップされて、スプリアス発射を検出することができる。一実施形態において、電力増幅段204およびLNA206を無効にすることで、較正モード中の望ましくない送信または干渉を回避することができる。複数のトランシーバ110のうちの各トランシーバは、それぞれのエンベロープ検出器130を用いて、そのアップコンバートミキサー112を較正するために異なるエンベロープを出力することができる。
【0027】
図3は、一実施形態における、エンベロープ検出器を用いたスプリアス発射検出および較正を実現することができる例示的なプロセスを示すフローチャートである。図3に示すプロセス300は、例えば、上述したシステム100を用いて実現されてもよい。例示的なプロセスは、1つまたは複数のブロック302、304、306、および/または308によって示される1つまたは複数の操作、動作、または機能を含んでもよい。個別のブロックとして図に示されているが、所望の用途に応じて、様々なブロックを追加のブロックに分割したり、より少ないブロックに組み合わせたり、省略したり、異なる順序で実行されたり、並行して実行されたりしてもよい。
【0028】
プロセス300は、トランシーバ(例えば、図1および図2に示すトランシーバ110)によって実行される較正プロセスであり得る。プロセス300は、ブロック302で開始することができる。ブロック302において、トランシーバのアップコンバートミキサーは、入力信号を局部発振器(LO)信号と混合して送信信号を生成することができる。
【0029】
プロセス300は、ブロック302からブロック304に進むことができる。ブロック304において、トランシーバのエンベロープ検出器は、アップコンバートミキサーの出力端子において送信信号をタップすることができる。一実施形態において、エンベロープ検出器は、アップコンバートミキサーの出力端子とトランシーバ内の電力増幅器の入力との間に接続され得る。
【0030】
プロセス300は、ブロック304からブロック306に進むことができる。ブロック306において、エンベロープ検出器は、送信信号のエンベロープをトランシーバ内のダウンコンバートミキサーの出力ラインに出力することができる。エンベロープは、リークされたLO信号および画像信号のうちの少なくとも一方を示すことができる。一実施形態において、トランシーバは、エンベロープを可変利得増幅器に出力することができる。
【0031】
プロセス300は、ブロック306からブロック308に進むことができる。ブロック308において、トランシーバのコントローラは、エンベロープにおけるリークされたLO信号および画像信号に基づく較正パラメータを用いてアップコンバートミキサーを較正することができる。一実施形態において、リークされたLO信号は、エンベロープ内の第1の周波数にあることができ、第1の周波数は、中間周波数であり得る。一実施形態において、画像信号は、エンベロープ内の第2の周波数にあることができ、第2の周波数は、中間周波数の2倍であり得る。一実施形態において、エンベロープは、LO信号の少なくとも1つの高調波をさらに示すことができる。一実施形態において、トランシーバは、エンベロープをベースバンドプロセッサに出力することができる。一実施形態において、較正パラメータは、ベースバンドプロセッサからトランシーバで受信され得る。
【0032】
一実施形態において、トランシーバのコントローラは、アップコンバートミキサーの出力端子に接続された電力増幅器を無効にすることができる。さらに、コントローラは、ダウンコンバートミキサーの入力端子に接続された低雑音増幅器を無効にすることができる。電力増幅器および低雑音増幅器を無効にしたことに応答して、コントローラは、エンベロープ検出器を有効にしてエンベロープを出力することができる。
【0033】
図におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、またはその一部を表すことができる。いくつかの代替的な実施例において、ブロックに示された機能は、図に示す順序からはずれて発生してもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実現されてもよく、関係する機能に応じて、場合によっては逆の順序で実現されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、ならびにそれらのブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムよって実現され得ることに留意されたい。
【0034】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数を表す用語は、特に明示されない限り、その複数を含むことも意図している。また、本明細書で使用される「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を画定するが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことに留意されたい。
【0035】
添付の特許請求の範囲に記載のすべての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、操作、およびそれらの等価物は、具体的に記載されている他の要素と組み合わせて機能を実現するための任意の構造、材料、または操作を包含することを意図している。本発明の開示されている実施形態の説明は、例示および説明のために提供されているが、網羅的であること、あるいは開示された形態に限定されることを意図していない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を適用することができることが明らかであろう。上述した実施形態は、本発明の原理および実用化を最適に説明するために、また、検討される特定の用途に適するように種々の修正を伴う様々な実施形態について本発明を当業者が理解できるように、選択および説明されたものである。
図1
図2
図3
【外国語明細書】