(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049378
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】流路切替装置
(51)【国際特許分類】
F16K 11/076 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023164665
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2022154594
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】木屋尾 祐太
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067AA32
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD45
3H067FF17
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】冷媒回路の複雑化を防止することが可能な流路切替装置を提供すること。
【解決手段】第1弁部2および第2弁部3のそれぞれは、円筒状の弁室29,39と、入力ポート22,32と、第1出力ポート23,33および第2出力ポート24,34と、弁室29,39内に、弁室29,39の軸心Cを中心に回転自在に設けられた弁体28,38と、を備えること、駆動部4は、第1弁部2および第2弁部3の弁体28,38を所定の回転角度で回転させるモータ等の電気駆動源42を備えること、前記回転角度に応じて、入力ポート22,32と、第1出力ポート23,33または第2出力ポート24,34との連通状態が切り替えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用バッテリを冷却するための冷却回路に配設されて冷却用の制御流体の流路を切り替える流路切替装置において、
一つの流入ポートと二つの流出ポートを備えた弁室に、該流入ポートを該二つの流出ポートに対して選択的に接続する回転式の切替弁体が配された弁部を、第1の弁部及び第2の弁部として2つ備えていると共に、
それぞれの該弁部における各該切替弁体に対して同じ電気駆動源による回転駆動力を及ぼして切替作動する駆動力伝達機構を有しており、
該駆動力伝達機構は、該第1の弁部における前記流入ポートと前記二つの流出ポートとの接続状態と、該第2の弁部における前記流入ポートと前記二つの流出ポートとの接続状態とを、互いに異なる組み合わせ態様に切り替える流路切替装置。
【請求項2】
前記駆動力伝達機構が、前記電気駆動源の出力軸を前記第1の弁部及び第2の弁部の各前記切替弁体の回転軸と連結する歯車列によって構成されている請求項1に記載の流路切替装置。
【請求項3】
前記駆動力伝達機構が、前記第1の弁部の前記切替弁体と、前記第2の弁部の前記切替弁体とを、互いに同じ又は異なる一定の角度で回転させることで切替作動させる請求項1又は2に記載の流路切替装置。
【請求項4】
前記駆動力伝達機構が、前記第一の弁部の前記切替弁体と前記第2の弁部の前記切替弁体との一方を他方に対して間欠的に回転させることで切替作動させる請求項1又は2に記載の流路切替装置。
【請求項5】
前記駆動力伝達機構によって、前記第1の弁部の前記切替弁体および前記第2の弁部の前記切替弁体が切り替えられることにより、
該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続された第1の接続状態と、
該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続された第2の接続状態と、
該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続された第3の接続状態と、
該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続された第4の接続状態と
が発現される請求項1又は2に記載の流路切替装置。
【請求項6】
前記電気駆動源が電気モータである請求項1又は2に記載の流路切替装置。
【請求項7】
並置された第1弁部および第2弁部と、前記第1弁部および/または前記第2弁部に連結された駆動部と、を備え、車両用バッテリを冷却するための冷媒回路に配設される流路切替装置において、
前記第1弁部および前記第2弁部のそれぞれは、
円筒状の弁室と、
制御流体を前記弁室に入力するための入力ポートと、
前記制御流体を前記弁室から出力するための第1出力ポートおよび第2出力ポートと、
前記弁室内に、前記弁室の軸心を中心に回転自在に設けられた弁体と、
を備えること、
前記弁体は、前記軸心に平行な区画壁を備えること、
前記駆動部は、前記第1弁部および前記第2弁部の前記弁体を所定の回転角度で回転させる駆動源を備えること、
前記回転角度に応じて、前記入力ポートと、前記第1出力ポートまたは前記第2出力ポートと、を連通させること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項8】
前記第1弁部および前記第2弁部において、
前記区画壁は、前記弁室を第1室と第2室とに区画しており、
前記弁体の回転角度に応じて、該第1室と該第2室のいずれか一方が、前記入力ポートと、前記第1出力ポートまたは前記第2出力ポートとを連通させる請求項7に記載の流路切替装置。
【請求項9】
請求項8に記載の流路切替装置において、
前記入力ポートと、前記第1出力ポートと、前記第2出力ポートと、の口径は、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で29度以下の範囲内であること、
前記第1出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、45度以上135度以内の範囲に位置すること、
前記第2出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、-135度以上-45度以内の範囲に位置すること、
前記区画壁は、軸方向視において、前記軸心を起点に屈曲しており、該屈曲の屈曲角度は135度以上195度以下の範囲であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項10】
請求項9に記載の流路切替装置において、
前記第1弁部において、
前記第1出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、
前記第2出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、-75度以上-45度以内の範囲に位置し、
前記屈曲角度は、165度以上195度以内であること、
前記第2弁部において、
前記第1出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、
前記第2出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置し、
前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、
前記第1弁部の前記弁体と、前記第2弁部の前記弁体の回転角度比は、1:1であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項11】
請求項9に記載の流路切替装置において、
前記第1弁部および前記第2弁部において、
前記第1出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置し、
前記第2出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置し、
前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、
前記第1弁部の前記弁体と、前記第2弁部の前記弁体の回転角度比は、1:1であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項12】
請求項9に記載の流路切替装置において、
前記第1弁部において、
前記第1出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置し、
前記第2出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置し、
前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、
前記第2弁部において、
前記第1出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、
前記第2出力ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記入力ポートの位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置し、
前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、
前記第1弁部の前記弁体と、前記第2弁部の前記弁体の回転角度比は、2:1であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれか1つに記載の流路切替装置において、
前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記駆動部を挟んで、前記弁室の軸方向に沿って直列に配置され、前記第1弁部と前記第2弁部と前記駆動部とが連結されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項14】
請求項7乃至11のいずれか1つに記載の流路切替装置において、
前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記弁室の軸方向に沿って直列に配置されて連結され、前記第1弁部の前記第2弁部の側とは反対側の端面、または、前記第2弁部の前記第1弁部の側とは反対側の端面に、前記駆動部が連結されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項15】
請求項7乃至12のいずれか1つに記載の流路切替装置において、
前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記弁室の軸方向に対して並列に配置されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項16】
請求項7乃至12のいずれか1つに記載の流路切替装置において、
前記入力ポートは、前記冷媒回路と接続するための第1接続部を備えること、
前記第1出力ポートは、前記冷媒回路と接続するための第2接続部を備えること、
前記第2出力ポートは、前記冷媒回路と接続するための第3接続部を備えること、
前記第1接続部と、前記第2接続部と、前記第3接続部とは、前記弁部から、前記軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ異なる方向に突設されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項17】
請求項7乃至12のいずれか1つに記載の流路切替装置において、
前記入力ポートは、前記冷媒回路と接続するための第1接続部を備えること、
前記第1出力ポートは、前記冷媒回路と接続するための第2接続部を備えること、
前記第2出力ポートは、前記冷媒回路と接続するための第3接続部を備えること、
前記第1接続部と、前記第2接続部と、前記第3接続部とは、前記弁部から、前記軸心に沿った方向に突設されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項18】
請求項7又は8に記載の流路切替装置において、
前記第1弁部と、前記第2弁部と、前記駆動部とは、軸方向視における少なくとも一部の断面で、外形が略同一形状であり、当該外形が略同一の部分に、固定具を挿通可能な固定部を備えること、
を特徴とする流路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題の顕在化から、車両に搭載されたリチウムイオン電池等のバッテリから供給される電力により走行する電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両の普及が進められている。車両に搭載されたバッテリは、車両の加速時や充電時等、自己発熱により温度が上昇する。このような高温となった状態が放置されると、バッテリは劣化や発火のおそれがある。このため、バッテリには冷媒回路が接続されている。冷媒回路には、ウォータポンプにより冷媒(例えばクーラント液等の冷却水)が循環されており、熱交換作用によりバッテリの冷却を行っている。
【0003】
バッテリの冷却が必要であるのは、高温状態にある場合であるため、バッテリが適切な温度範囲にある場合には冷却が不要である。このため、冷媒回路は、バッテリの冷却が必要である場合には冷媒をバッテリに供給し、バッテリの冷却が不要な場合には、例えば空調機器等のバッテリ以外で冷媒の供給が必要な個所等に冷媒を供給するなど、バッテリの冷却の要不要に応じて流路の切り替えを行い、冷媒の供給先を変更することが可能とされている。
【0004】
冷媒回路の流路の切り替えを行う装置としては、例えば特許文献1に開示されるマルチポートバルブが知られているが、冷媒回路の構造によっては、より簡便な構造の三方弁を複数台使用する場合がある。三方弁とは、例えば、制御流体を入出力する3つのポート(第1のポート、第2のポート、第3のポートとする)と、内部に弁体と、を備える弁部、および、弁体を回転駆動する駆動部からなっている。そして、駆動部により回転される弁体の回転位置に応じて、第1のポートと第2のポートを連通させたり、第1のポートと第3のポートを連通させたりすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術に係る流路切替装置には以下のような問題があった。
冷媒回路に複数台の三方弁を用いる場合、複数台の三方弁のそれぞれの駆動部に対して、電源線や信号線の配線を行う必要があるため、冷媒回路が複雑化するおそれがある。電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の航続距離を長大化させるためには、可能な限り車両を軽量化することが望まれるところ、冷媒回路の複雑化は、車両重量の増加につながるため、好ましくない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、冷媒回路の複雑化を防止することが可能な流路切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における流路切替装置は、以下にカッコ付き数字を付して順次に示す、次のような構成を有している。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0009】
(1)並置された第1弁部および第2弁部と、前記第1弁部および/または前記第2弁部に連結された駆動部と、を備え、車両用バッテリを冷却するための冷媒回路に配設される流路切替装置において、前記第1弁部および前記第2弁部のそれぞれは、円筒状の弁室と、制御流体を前記弁室に入力するための流入ポートと、前記制御流体を前記弁室から出力するための第1流出ポートおよび第2流出ポートと、前記弁室内に、前記弁室の軸心を中心に回転自在に設けられた切替弁体と、を備えること、前記駆動部は、前記第1弁部および前記第2弁部の前記切替弁体を所定の回転角度で回転させる駆動源を備えること、前記回転角度に応じて、前記流入ポートと、前記第1流出ポートまたは前記第2流出ポートと、を連通させること、を特徴とする。
【0010】
(1)に記載の流路切替装置によれば、2つの弁部(第1弁部および第2弁部)対して、1つの駆動部が設けられている。そして、第1弁部および第2弁部のそれぞれにおいて、駆動部が備える駆動源に回転される切替弁体の回転角度に応じて、流入ポートと、第1流出ポートまたは第2流出ポートとを連通させること(すなわち流路切替)が可能である。この流路切替とは、第1弁部および第2弁部のそれぞれが、流入ポートと第1流出ポートが連通した状態(第1状態)と、流入ポートと第2流出ポートが連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備え、第1状態と第2状態とを切り替えることが可能であることを意味する。つまり、1台の流路切替装置により、三方弁2台分の流路切替を行うことが可能である。1つの駆動部に電源線や信号線の配線を行うことで、第1弁部および第2弁部の切替弁体を動作させることが可能であるため、それぞれに駆動部を備える三方弁を2台用いるよりも冷媒回路の複雑化を防止することが可能である。さらには、三方弁を2台用いるよりも、車両中の冷媒回路が占めるスペースおよび重量の削減が可能である。
【0011】
(2) 前記(1)に記載の流路切替装置であって、前記第1弁部および前記第2弁部において、前記区画壁は、前記弁室を第1室と第2室とに区画しており、前記切替弁体の回転角度に応じて、該第1室と該第2室のいずれか一方が、前記流入ポートと、前記第1流出ポートまたは前記第2流出ポートとを連通させるようにされ得る。
【0012】
(3) 前記(2)に記載の流路切替装置において、前記流入ポートと、前記第1流出ポートと、前記第2流出ポートと、の口径は、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で29度以下の範囲内であること、前記第1流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、45度以上135度以内の範囲に位置すること、前記第2流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、-135度以上-45度以内の範囲に位置すること、前記区画壁は、軸方向視において、前記軸心を起点に屈曲しており、該屈曲の屈曲角度は135度以上195度以下の範囲であること、が望ましい。
【0013】
(4) 前記(3)に記載の流路切替装置において、前記第1弁部において、前記第1流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、前記第2流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、-75度以上-45度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、165度以上195度以内であること、前記第2弁部において、前記第1流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、前記第2流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、前記第1弁部の前記切替弁体と、前記第2弁部の前記切替弁体の回転角度比は、1:1であること、が望ましい。
【0014】
(5) 前記(3)に記載の流路切替装置において、前記第1弁部および前記第2弁部において、前記第1流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置し、前記第2流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、前記第1弁部の前記切替弁体と、前記第2弁部の前記切替弁体の回転角度比は、1:1であること、が望ましい。
【0015】
(6) 前記(3)に記載の流路切替装置において、前記第1弁部において、前記第1流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置し、前記第2流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、前記第2弁部において、前記第1流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、前記第2流出ポートは、前記軸心を中心として周方向に広がる角度で、前記流入ポートの位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、前記第1弁部の前記切替弁体と、前記第2弁部の前記切替弁体の回転角度比は、2:1であること、が望ましい。
【0016】
前記(3)に記載の流路切替装置によれば、最大で4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。具体的には、第1弁部および第2弁部がともに第1状態(流入ポートと第1流出ポートが連通した状態)になる場合、第1弁部および第2弁部がともに第2状態(流入ポートと第2流出ポートが連通した状態)になる場合、第1弁部が第1状態になり、第2弁部が第2状態になる場合、第1弁部が第2状態になり、第2弁部が第1状態になる場合の4通りである。
【0017】
例えば、前記(4)に記載の構成とすれば、第1弁部および第2弁部のそれぞれの切替弁体を、30度ピッチで回転させることで、上記4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。
【0018】
例えば、前記(5)に記載の構成とすれば、第1弁部および第2弁部のそれぞれの切替弁体を、60度ピッチで回転させることで、3通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。具体的には、第1弁部および第2弁部がともに第1状態(流入ポートと第1流出ポートが連通した状態)になる場合、第1弁部が第1状態になり、第2弁部が第2状態(流入ポートと第2流出ポートが連通した状態)になる場合、第1弁部が第2状態になり、第2弁部が第1状態になる場合の3通りである。
【0019】
例えば、前記(6)に記載の構成とすれば、第1弁部の切替弁体を60度ピッチで回転させ、第2弁部の切替弁体を30度ピッチで回転させることで、上記4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。
【0020】
(7) 前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の流路切替装置において、前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記駆動部を挟んで、前記弁室の軸方向に沿って直列に配置され、前記第1弁部と前記第2弁部と前記駆動部とが連結されていること、が望ましい。
【0021】
第1弁部と第2弁部とを流れる制御流体は、それぞれ温度が異なる場合がある。しかし、(7)に記載の流路切替装置によれば、第1弁部と第2弁部との間に駆動部が位置するため、第1弁部と第2弁部との間の熱移動を抑制することが可能である。つまり、駆動部を断熱層として機能させることができる。
【0022】
(8) 前記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流路切替装置において、前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記弁室の軸方向に沿って直列に配置されて連結され、前記第1弁部の前記第2弁部の側とは反対側の端面、または、前記第2弁部の前記第1弁部の側とは反対側の端面に、前記駆動部が連結されていること、が望ましい。
【0023】
(8)に記載の流路切替装置によれば、第1弁部と第2弁部が軸方向に隣接して配置されるため、第1弁部と第2弁部のハウジングや切替弁体を一体構造することが可能であり、流路切替装置の製造・組み立てが容易になる。
【0024】
(9) 前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の流路切替装置において、前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記弁室の軸方向に対して並列に配置されていること、が望ましい。
【0025】
第1弁部と第2弁部とを流れる制御流体は、それぞれ温度が異なる場合がある。しかし、(9)に記載の流路切替装置によれば、前記第1弁部と、前記第2弁部とが、前記弁室の軸方向に対して並列に配置されているため、第1弁部と第2弁部との間の熱移動を抑制することが可能である。
【0026】
(10) 前記(1)乃至(9)のいずれか1つに記載の流路切替装置において、前記流入ポートは、前記冷媒回路と接続するための第1接続部を備えること、前記第1流出ポートは、前記冷媒回路と接続するための第2接続部を備えること、前記第2流出ポートは、前記冷媒回路と接続するための第3接続部を備えること、前記第1接続部と、前記第2接続部と、前記第3接続部とは、前記弁部から、前記軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ異なる方向に突設されていること、が望ましい。
【0027】
(10)に記載の流路切替装置によれば、第1接続部と、第2接続部と、第3接続部とは、弁部から、軸心に対して垂直に突設されているため、流路切替装置の軸方向における外形サイズをコンパクトにすることが可能である。また、第1接続部と、第2接続部と、第3接続部とは、それぞれ異なる方向に突設されているため、それぞれの接続部に接続する冷媒回路の配管同士の干渉を防止することができる。
【0028】
(11) 前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の流路切替装置において、前記流入ポートは、前記冷媒回路と接続するための第1接続部を備えること、前記第1流出ポートは、前記冷媒回路と接続するための第2接続部を備えること、前記第2流出ポートは、前記冷媒回路と接続するための第3接続部を備えること、前記第1接続部と、前記第2接続部と、前記第3接続部とは、前記弁部から、前記軸心に沿った方向に突設されていること、が望ましい。
【0029】
(11)に記載の流路切替装置によれば、第1接続部と、第2接続部と、第3接続部とは、弁部から、軸心に沿った方向に突設されているため、軸心に対して垂直方向における流路切替装置の外形サイズを、コンパクトにすることが可能である。
【0030】
(12) 前記(7)または(8)に記載の流路切替装置において、前記第1弁部と、前記第2弁部と、前記駆動部とは、軸方向視における少なくとも一部の断面で、外形が略同一形状であり、当該外形が略同一の部分に、固定具を挿通可能な固定部を備えること、が望ましい。
【0031】
(12)に記載の流路切替装置によれば、固定部に対して、ボルト等の固定具を軸方向に挿通することで、第1弁部と第2弁部と駆動部を連結することが可能である。なお、かかる固定部は、固定具を軸方向に挿通可能とされることが望ましい。
【0032】
(13) 車両用バッテリを冷却するための冷却回路に配設されて冷却用の制御流体の流路を切り替える流路切替装置において、一つの流入ポートと二つの流出ポートを備えた弁室に、該流入ポートを該二つの流出ポートに対して選択的に接続する回転式の切替弁体が配された弁部を、第1の弁部及び第2の弁部として2つ備えていると共に、それぞれの該弁部における各該切替弁体に対して同じ電気駆動源による回転駆動力を及ぼして切替作動する駆動力伝達機構を有しており、該駆動力伝達機構は、該第1の弁部における前記流入ポートと前記二つの流出ポートとの接続状態と、該第2の弁部における前記流入ポートと前記二つの流出ポートとの接続状態とを、互いに異なる組み合わせ態様に切り替える流路切替装置。
【0033】
(13)に記載の流路切替装置によれば、単一の電気駆動源によって駆動力伝達機構を介してポート切替作動せしめられる第1の弁部と第2の弁部を備えており、これら第1の弁部と第2の弁部によって複数の組合せ態様をもって流路が選択的に発現され得る。それ故、複数種類のポート切替態様によって複数種類の流路を選択的に発現する流路切替装置を、簡単な構造をもって効率的に実現することが可能になる。
【0034】
(14) 前記(13)に記載の流路切替装置において、前記駆動力伝達機構は、前記電気駆動源の出力軸を前記第1の弁部及び第2の弁部の各前記切替弁体の回転軸と連結する歯車列によって構成され得る。
【0035】
(14)に記載の流路切替装置によれば、駆動力伝達機構をコンパクトで且つ良好な作動安定性や耐久性、信頼性をもって構成することが可能である。なお、本態様の歯車列を構成する歯車は、平歯車(スパーギヤ)に限定されるものでなく、直線歯車(ラック)、内歯車(インターナルギヤ)、はすば歯車(ヘリカルギヤ)、かさ歯車(ベベルギヤ)ウォームギヤ、フェイスギヤ、ピン車、爪車、揺動車などの公知の各種の歯車を含む。また、歯車列の全ての伝動要素が歯車によって構成されている必要はなく、クランクやリンク、更には伝動ベルトやチェーンなどを伝動要素として含んで構成しても良く、それによって一層多様な歯車列による伝動態様が実現可能になって設計自由度が大きくされる。
【0036】
(15) 前記(13)又は(14)に記載の流路切替装置において、前記駆動力伝達機構は、前記第1の弁部の前記切替弁体と、前記第2の弁部の前記切替弁体とを、互いに同じ又は異なる一定の角度で回転させることで切替作動させるように構成され得る。
【0037】
(15)に記載の流路切替装置によれば、第1の弁部の切替弁体と第2の弁部の切替弁体とが、連動されて各一定の角度で回転作動されることから、駆動力伝達機構による駆動力の伝達態様を比較的単純に構成することが可能になる。なお、本態様及び他の態様において、切替弁体の「回転」は、特定方向への回転に限定されるものでなく、往復方向の回転作動を含むものであり、また、所定角度で繰り返し往復回転する揺動も含む。
【0038】
(16) 前記(13)又は(14)に記載の流路切替装置において、前記駆動力伝達機構は、前記第1の弁部の前記切替弁体と前記第2の弁部の前記切替弁体との一方を他方に対して間欠的に回転させることで切替作動させるように構成され得る。
【0039】
(16)に記載の流路切替装置によれば、例えば第1の弁部の切替弁体を間欠作動によって特定のポート連通状態に維持したままで、第2の弁部の切替弁体を回転させてポート連通状態を切り替えることができる。それ故、一方の弁部における特定のポート連通状態下で、他方の弁部において異なるポート連通状態を容易に且つ効率的に実現することも可能になる。
【0040】
(17) 前記(13)~(16)の何れかに記載の流路切替装置において、前記駆動力伝達機構によって、前記第1の弁部の前記切替弁体および前記第2の弁部の前記切替弁体が切り替えられることにより、該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続された第1の接続状態と、該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続された第2の接続状態と、該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの一方へ接続された第3の接続状態と、該第1の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続され、且つ、該第2の弁部において前記流入ポートが前記2つの流出ポートの他方へ接続された第4の接続状態とが発現される構成が採用され得る。
【0041】
(17)に記載の流路切替装置によれば、第1の弁部と第2の弁部との組み合わせによって、少なくとも4種類の流路態様が選択的に発現され得る。
【0042】
(18) 前記(13)~(17)の何れかに記載の流路切替装置において、前記電気駆動源として電気モータが採用され得る。
【0043】
(18)に記載の流路切替装置によれば、電気的な制御装置によって電気駆動源の作動を容易に且つ精度良く制御でき、延いては各切替弁体の作動を制御する装置が容易に実現可能とされる。なお、本態様で採用される電気モータは具体的に限定されるものでなく公知の各種の電気モータが採用可能である。即ち、電気モータとしては、例えばサーボモータ等を採用することで切替弁体の切替位置制御を一層高精度に行うことが可能になるが、コストや要求精度等を考慮して、例えばステッピングモータなどを採用することも可能であり、或いは一般的なDCモータを用いて、切替弁体の位置を検出する位置センサを併せて採用するようにしても良い。
【発明の効果】
【0044】
本発明の流路切替装置によれば、冷媒回路の複雑化を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図4】(a)は第1弁部の各ポートの構成を模式的に表した図である。(b)は第2弁部の各ポートの構成を模式的に表した図である。
【
図5】(a)は弁体が第1位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第1位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図6】(a)は弁体が第2位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第2位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図7】(a)は弁体が第3位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第3位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図8】(a)は弁体が第4位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第4位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図9】流路切替装置の流路切替のパターンをまとめた表である。
【
図14】(a)は、第2の実施形態における第1弁部の各ポートの構成を模式的に表した図である。(b)は、第2の実施形態における第2弁部の各ポートの構成を模式的に表した図である。
【
図15】(a)は、第2の実施形態における弁体が第1位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は、第2の実施形態における弁体が第1位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図16】(a)は、第2の実施形態における弁体が第2位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は、第2の実施形態における弁体が第2位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図17】(a)は、第2の実施形態における弁体が第3位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は、第2の実施形態における弁体が第3位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図18】流路切替装置の流路切替のパターンをまとめた表である。
【
図19】(a)は第1弁部の各ポートの構成を模式的に表した図である。(b)は第2弁部の各ポートの構成を模式的に表した図である。
【
図20】(a)は弁体が第1位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第1位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図21】(a)は弁体が第2位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第2位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図22】(a)は弁体が第3位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第3位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図23】(a)は弁体が第4位置にあるときの第1弁部の内部構造模式図である。(b)は弁体が第4位置にあるときの第2弁部の内部構造模式図である。
【
図24】流路切替装置の流路切替のパターンをまとめた表である。
【
図25】第4の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。
【
図26】第5の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。
【
図27】第6の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。
【
図28】第6の実施形態において採用され得る駆動力伝達機構の歯車列の具体例を示す説明図である。
【
図29】第7の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。
【
図30】第8の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。
【
図31】
図25に示された第4の実施形態における第1弁部についての別例を2つ示す説明図である。
【
図32】
図25に示された第4の実施形態における第1弁部についての別例を更に示す説明図である。
【
図33】
図32に示された第1弁部についての更なる別例を示す説明図である。
【
図34】
図33に示された第1弁部の切替弁体に対する駆動力伝達機構として採用され得る歯車列の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(第1の実施形態)
本発明に係る流路切替装置の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
第1の実施形態に係る流路切替装置1Aは、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたリチウムイオン電池等のバッテリを冷却するための冷媒回路上に配設される。冷媒回路には、クーラント液等の冷却水(制御流体の一例)が流れており、流路切替装置1Aは、バッテリの冷却の要不要に応じて流路の切り替えを行うことで、冷却水の供給先を変更する。
【0048】
流路切替装置1Aは、
図1および
図2に示すように、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4とが、軸方向に並んで連結されることで、全体的に略円筒状に形成されている。
【0049】
まず、駆動部4について説明する。
駆動部4は、
図3に示すように、ハウジング41と、ハウジング41の内部に位置するモータ42(駆動源の一例)、第1ギヤ43、第2ギヤ44を備えている。ハウジング41は、例えばPA66やPPA等の樹脂製で、軸方向の両端が開口された円筒状に形成されている。なお、ハウジング41の材質としては、特に限定されないが、PPA、PA66、PPS、PBT、POM等のエンジニアリングプラスチックや、鉄系金属が挙げられる。
【0050】
モータ42は、例えば、DCモータやステッピングモータ等、回転角度が制御可能なものであれば良い。第1ギヤ43は、モータ42の回転力を第2ギヤ44に伝達する。第2ギヤ44は、第1駆動軸441と第2駆動軸442とを備えている。第1駆動軸441は、軸方向において第1弁部2側に延伸しており、モータ42の回転力を第1弁部2に出力する。また、第2駆動軸442は、軸方向において、第2弁部3側に延伸しており、モータ42の回転力を第2弁部3に出力する。第1駆動軸441と第2駆動軸442とは、同軸上に位置している。また、双方とも第2ギヤ44から延伸しているため、第1弁部2と第2弁部3とに出力される回転速度、回転角度は同一になる。
【0051】
次に、第1弁部2について説明する。
第1弁部2は、
図1-
図3に示すように、ハウジング21と、ハウジング21の内部に位置する切替弁体としての弁体28と、を備える。ハウジング21は、例えば、PPA、PA66、PPS、PBT、POM等のエンジニアリングプラスチック、または鉄系金属からなる。また、ハウジング21は、円筒状に形成されており、軸方向両端のうち、駆動部4に面する側の一端が開口され、他端は側壁212により閉塞されている。ハウジング21の外周壁211は全周において均一の肉厚とされており、ハウジング21の内部には、ハウジング21の外形と同軸上に円柱状の中空部が形成されている。この中空部が弁室29である。
【0052】
さらにハウジング21は、弁室29とハウジング21の外部とを連通させる、流入ポート22、第1流出ポート23、第2流出ポート24を備えている。流入ポート22は、冷却水を弁室29に入力するために用いられる。また、第1流出ポート23および第2流出ポート24は、弁室29に入力された冷却水を弁室29から出力するために用いられる。
【0053】
流入ポート22、第1流出ポート23、第2流出ポート24は、それぞれ、冷媒回路の配管を接続するための、第1接続部25、第2接続部26、第3接続部27を備えている。第1接続部25に接続される配管は、流路切替装置1A(弁室29)に対して冷却水を入力するための配管である。第1流出ポート23および第2流出ポート24に接続される配管は、流路切替装置1A(弁室29)から冷却水を出力するための配管であり、第1流出ポート23から出力される冷却水と第2流出ポート24から出力される冷却水とでは、それぞれ冷却水の供給先が異なるようにされている。各ポート22,23,24は、弁室29の軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ異なる方向に延伸しており、その延伸する方向に沿って、第1接続部25、第2接続部26、第3接続部27が、外周壁211から突設されている。
【0054】
第1弁部2の各ポート22,23,24の位置および口径について、
図4(a)を用いて説明する。
図4(a)は、
図1中のX方向から見たときの、第1弁部2の各ポート22,23,24の構成を模式的に表した図である。なお、
図4(a)中の、軸心Cは弁室29の軸心であり、中心軸CL21は第1流出ポート23の中心軸であり、中心軸CL22は第2流出ポート24の中心軸である。また、
図4(a)中において、流入ポート22の中心軸は、弁室29の中心線CL12と一致している。
【0055】
第1流出ポート23は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度が、流入ポート22の位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては120度とされている。具体的には、中心線CL12から、中心軸CL21までの角度A11が、105度以上135度以内であることが望ましく、本実施形態においては120度とされている。
【0056】
第2流出ポート24は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、-75度以上-45度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては-60度とされている。具体的には、中心線CL12から、中心軸CL22までの角度A12が、-75度以上-45度以内であることが望ましく、本実施形態においては-60度とされている。なお、ここで、角度の値がマイナスであるのは、角度A12が、角度A11とは反対の方向に広がる角度であることを意味している。
【0057】
また、流入ポート22と、第1流出ポート23と、第2流出ポート24の弁室29の内周壁における口径は、軸心Cを中心とした周方向に広がる角度A21,A22,A23が全て、29度以下の範囲内になるように形成されている。
【0058】
弁体28は、例えば、PPA、PA66、PPS、PBT、POM等のエンジニアリングプラスチック、または鉄系金属からなる。また、弁体28は、
図2および
図3に示すように、弁室29の軸心と同軸上に位置する円盤状の基部282と、基部282から立設される区画壁281と、を備えている。基部282は、弁室29の内径と略同一径を備えており、ハウジング21の駆動部4に面する側の開口を閉塞している。
【0059】
区画壁281は、軸方向視において、弁室29の軸心を起点に屈曲して形成されている。具体的には、区画壁281は、弁室29の軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ別方向に延在する第1片281aと第2片281bとにより構成されている。区画壁281の屈曲角度(すなわち、第1片281aと第2片281bとがなす角度A31(
図5参照))は、135度以上195度以下の範囲であることが望ましく、本実施形態においては180度とされている。
【0060】
また、弁体28は、
図2および
図3に示すように、中央部に、第1駆動軸441を連結するための連結部283を備えている。弁体28は、第1駆動軸441に連結されることで、第1駆動軸441から出力されるモータ42の回転力により、弁室29内で軸心を中心に回転可能とされている。区画壁281は、第1片281aと第2片281bの先端が弁室29の内周面に摺接することで、弁室29を第1室291と第2室292に区画している。そして、弁体28の回転角度に応じて、第1室291と第2室292のいずれか一方が、流入ポート22と、第1流出ポート23または第2流出ポート24とを連通させる。つまり、第1弁部2は、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)と、流入ポート22と第2流出ポート24が連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備えるところ、弁体28の回転角度に応じて、第1状態と第2状態とを切り替えることが可能である。なお、第1室291と第2室292との間での冷却水の漏れの防止を確実なものとするため、第1片281aと第2片281bの先端にシール部材を設けることとしても良い。
【0061】
次に、第2弁部3について説明する。
第2弁部3は、
図1-
図3に示すように、ハウジング31と、ハウジング31の内部に位置する切替弁体としての弁体38と、を備える。ハウジング31は、ハウジング21と同様の部材であり、軸方向両端のうち、駆動部4に面する側の一端が開口され、他端は側壁312により閉塞された円筒形状に形成されており、内部に弁室39を備えている。
【0062】
さらにハウジング31は、弁室39とハウジング31の外部とを連通させる、流入ポート32、第1流出ポート33、第2流出ポート34を備えている。流入ポート32は、冷却水を弁室39に入力するために用いられる。また、第1流出ポート33および第2流出ポート34は、弁室39に入力された冷却水を弁室39から出力するために用いられる。
【0063】
また、第2弁部3の各ポート32,33,34は、第1弁部2の各ポート22,23,24同様に、冷媒回路と接続するための第1接続部35、第2接続部36、第3接続部37を備えている。各ポート32,33,34は、弁室39の軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ異なる方向に延伸しており、その延伸する方向に沿って、第1接続部35、第2接続部36、第3接続部37が、外周壁311から突設されている。
【0064】
各ポート32,33,34の位置および口径について、
図4(b)を用いて説明する。
図4(b)は、
図1中のX方向から見たときの、第2弁部3の各ポート32,33,34の構成を模式的に表した図である。なお、
図4(b)中の、軸心Cは弁室39の軸心であり、中心軸CL23は第1流出ポート33の中心軸であり、中心軸CL24は第2流出ポート24の中心軸である。また、
図4(b)中において、流入ポート32の中心軸は、弁室39の中心線CL14と一致している。
【0065】
第1流出ポート33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度が、流入ポート32の位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては120度とされている。具体的には、中心線CL14から、中心軸CL23までの角度A13が、105度以上135度以内であることが望ましく、本実施形態においては120度とされている。
【0066】
第2流出ポート34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては-90度とされている。具体的には、中心線CL14から、中心軸CL24までの角度A14が、-105度以上-75度以内であることが望ましく、本実施形態においては-90度度とされている。このため、中心軸CL24は、弁室39の中心線CL13と一致している。なお、ここで、角度の値がマイナスであるのは、角度A14が、角度A13とは反対の方向に広がる角度であることを意味している。
【0067】
また、流入ポート32と、第1流出ポート33と、第2流出ポート34の弁室39の内周壁における口径は、軸心Cを中心とした周方向に広がる角度A24,A25,A26が全て、29度以下の範囲内になるように形成されている。
【0068】
弁体38は、弁体28と同様の部材であり、
図3に示すように、弁室39の軸心と同軸上に位置する円盤状の基部382と、基部382から立設される区画壁381と、を備えている。基部382は、弁室39の内径と略同一径を備えており、ハウジング31の駆動部4に面する側の開口を閉塞している。
【0069】
区画壁381は、軸方向視において、弁室39の軸心を起点に屈曲して形成されている。具体的には、区画壁381は、弁室39の軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ別方向に延在する第1片381aと第2片381bとにより構成されている。区画壁381の屈曲角度(すなわち、第1片381aと第2片381bとがなす角度A51(
図5参照))は、135度以上165度以内の範囲であることが望ましく、本実施形態においては150度とされている。
【0070】
また、弁体38は、
図3に示すように、中央部に、第2駆動軸442を連結するための連結部383を備えている。弁体38は、第2駆動軸442に連結されることで、第2駆動軸442から出力されるモータ42の回転力により、弁室29内で軸心を中心に回転可能とされている。この弁体38の回転は、弁体28の回転と同時に行われるのであり、回転速度、回転角度も弁体28と同一である。これは、弁体38を回転させる第2駆動軸442は、弁体28に連結されている第1駆動軸441と同じく第2ギヤ44から延伸しているためである。
【0071】
区画壁381は、第1片381aと第2片381bの先端が弁室39の内周面に摺接することで、弁室39を第1室391と第2室392に区画している。そして、弁体38の回転角度に応じて、第1室391と第2室392のいずれか一方が、流入ポート32と、第1流出ポート33または第2流出ポート34とを連通させる。つまり、第2弁部3は、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)と、流入ポート32と第2流出ポート34が連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備えるところ、弁体38の回転角度に応じて、第1状態と第2状態とを切り替えることが可能である。なお、第1室391と第2室392との間での冷却水の漏れの防止を確実なものとするため、第1片381aと第2片381bの先端に、シール部材を設けることとしても良い。
【0072】
以上のような、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4は、以下のように連結されている。駆動部4のハウジング41は、外周部に固定部411を備えている。この固定部411は、弁室の軸心を中心とした周方向に等間隔に4つ設けられている。また、第1弁部2は、外周部の駆動部4側の端部に固定部213を備えている。この固定部213は、固定部411に対応する位置に設けられている。さらに、第2弁部3は、外周部の駆動部4側の端部に固定部313を備えている。この固定部313は、固定部411に対応する位置に設けられている。
【0073】
第1弁部2と、第2弁部3とが、駆動部4を挟んで、軸方向に沿って直列に配置されると、固定部213,313,411が軸方向に重なった状態になる。この重なった部分は、軸方向視において、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4の外形が略四角形状で、同一の形状である。そして、固定部213,313,411ごとに、ボルト等の固定具を軸方向に挿通し、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4を連結する。
【0074】
冷媒回路においては、チラーから出力された直後の冷却水と、バッテリを冷却した後の冷却水とでは、温度差が生じるように、冷媒回路を流れる冷却水の温度には幅がある(例えば、-40~80℃)。したがって、第1弁部と第2弁部とを流れる制御流体は、それぞれ温度が異なる場合がある。しかし、流路切替装置1Aは、第1弁部2と第2弁部3との間に駆動部4が位置するため、第1弁部2と第2弁部3との間の熱移動を抑制することが可能である。つまり、駆動部を断熱層として機能させることができる。
【0075】
(流路切替について)
以上のような構成を備える流路切替装置1Aは、適宜、弁体28、38が第1位置、第2位置、第3位置、第4位置へ回転することで、流路切替が行われる。
【0076】
弁体28の第1位置とは、
図5(a)に示す位置であり、中心線CL12と第1片281aとがなす角度A41が15度になる位置である。また、弁体38の第1位置とは、
図5(b)に示す位置であり、中心線CL14と第1片381aとがなす角度A61が45度になる位置である。弁体28,38の第2位置とは、
図6(a)および
図6(b)に示す位置であり、第1位置から反時計回りに30度回転した位置である。弁体28,38の第3位置とは、
図7(a)および
図7(b)に示す位置であり、第2位置から反時計回りに30度回転した位置である。弁体28,38の第4位置とは、
図8(a)および
図8(b)に示す位置であり、第3位置から反時計回りに30度回転した位置である。なお、弁体38の回転と弁体28の回転は同時に行われるため、弁体28が第1位置に位置するとき、弁体38も第1位置に位置し、弁体28が第2位置に位置するとき、弁体38も第2位置に位置し、弁体28が第3位置に位置するとき、弁体38も第3位置に位置し、弁体28が第4位置に位置するとき、弁体38も第4位置に位置する。
【0077】
このように、第1位置から第4位置まで、弁体28,38が30度ずつ回転可能なように、モータ42が制御される。そして、弁体28,38の回転角度に応じて、第1室291,391と第2室292,392のいずれか一方が、流入ポート22,32と、第1流出ポート23,33または第2流出ポート24,34とを連通させる。具体的には以下の通りである。
【0078】
図5(a)に示すように、弁体28が第1位置にあるとき、第2室292により、流入ポート22と第2流出ポート24が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第2流出ポート24から出力される。また、
図5(b)に示すように、弁体38が第1位置にあるとき、第1室391により、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第1流出ポート33から出力される。
【0079】
図6(a)に示すように、弁体28が第2位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第1流出ポート23から出力される。また、
図6(b)に示すように、弁体38が第2位置にあるとき、第1室391により、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第1流出ポート33から出力される。
【0080】
図7(a)に示すように、弁体28が第3位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第1流出ポート23から出力される。また、
図7(b)に示すように、弁体38が第3位置にあるとき、第2室392により、流入ポート32と第2流出ポート34が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第2流出ポート34から出力される。
【0081】
図8(a)に示すように、弁体28が第4位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第2流出ポート24が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第2流出ポート24から出力される。また、
図8(b)に示すように、弁体38が第4位置にあるとき、第2室392により、流入ポート32と第2流出ポート34が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第2流出ポート34から出力される。
【0082】
以上の動作をまとめた表が
図9である。第1弁部および第2弁部のそれぞれが、流入ポートと第1流出ポートが連通した状態(第1状態)と、流入ポートと第2流出ポートが連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備えるところ、
図9に示すように、弁体28,38の位置を第1位置-第4位置の間で切り替えることで、第1弁部が第2状態になり、第2弁部が第1状態になる場合(第1位置)、第1弁部および第2弁部がともに第1状態(第2位置)、第1弁部が第1状態になり、第2弁部が第2状態になる場合(第3位置)、第1弁部および第2弁部がともに第2状態になる場合(第4位置)の4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。
【0083】
(作用・効果について)
以上説明したように、本実施形態に係る流路切替装置1Aは、並置された第1弁部2および第2弁部3と、第1弁部2および第2弁部3に連結された駆動部4と、を備え、車両用バッテリを冷却するための冷媒回路に配設される流路切替装置1Aにおいて、第1弁部2および第2弁部3のそれぞれは、円筒状の弁室29,39と、制御流体(冷却水)を弁室29,39に入力するための流入ポート22,32と、制御流体を弁室29,39から出力するための第1流出ポート23,33および第2流出ポート24,34と、弁室29,39内に、弁室29,39の軸心Cを中心に回転自在に設けられた弁体28,38と、を備えること、弁体28,38は、軸心に平行な区画壁281,381を備えること、区画壁281,381は、弁室29,39を第1室291,391と第2室292,392とに区画すること、駆動部4は、第1弁部2および第2弁部3の弁体28,38を所定の回転角度で回転させる駆動源(モータ42)を備えること、前記回転角度に応じて、第1室291,391と第2室292,392のいずれか一方が、流入ポート22,32と、第1流出ポート23,33または第2流出ポート24,34と、を連通させること、を特徴とする。
【0084】
上記流路切替装置1Aによれば、2つの弁部(第1弁部2および第2弁部3)対して、1つの駆動部4が設けられている。そして、第1弁部2および第2弁部3のそれぞれにおいて、駆動部4が備える駆動源(モータ42)に回転される弁体28,38の回転角度に応じて、第1室291,391と第2室292,392のいずれか一方が、流入ポート22,32と、第1流出ポート23,33または第2流出ポート24,34とを連通させること(すなわち流路切替)が可能である。この流路切替とは、第1弁部2および第2弁部3のそれぞれが、流入ポート22,32と第1流出ポート23,33が連通した状態(第1状態)と、流入ポート22,32と第2流出ポート24,34が連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備え、第1状態と第2状態とを切り替えることが可能であることを意味する。つまり、1台の流路切替装置1Aにより、三方弁2台分の流路切替を行うことが可能である。1つの駆動部に電源線や信号線の配線を行うことで、第1弁部2および第2弁部3の弁体を動作させることが可能であるため、それぞれに駆動部を備える三方弁を2台用いるよりも冷媒回路の複雑化を防止することが可能である。さらには、三方弁を2台用いるよりも、車両中の冷媒回路が占めるスペースおよび重量の削減が可能である。
【0085】
さらに、上記流路切替装置1Aにおいて、流入ポート22,32と、第1流出ポート23,33と、第2流出ポート24,34と、の口径は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で29度以下の範囲内であること、第1流出ポート23,33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22,32の位置を0度として、45度以上135度以内の範囲に位置すること、第2流出ポート24,34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22,32の位置を0度として、-135度以上-45度以内の範囲に位置すること、区画壁281,381は、軸方向視において、軸心Cを起点に屈曲しており、該屈曲の屈曲角度は135度以上195以下の範囲であること、が望ましい。
【0086】
さらに、上記流路切替装置1Aにおいて、第1弁部2において、第1流出ポート23は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、第2流出ポート24は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、-75度以上-45度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、165度以上195度以内であること、第2弁部3において、第1流出ポート33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、第2流出ポート34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、第1弁部2の弁体28と、第2弁部3の弁体38の回転角度比は、1:1であること(弁体28,38を、双方とも30度ピッチで回転させること)、が望ましい。
【0087】
上記流路切替装置1Aによれば、4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。具体的には、第1弁部2および第2弁部3がともに第1状態(流入ポート22,32と第1流出ポート23,33が連通した状態)になる場合、第1弁部2および第2弁部3がともに第2状態(流入ポート22,32と第2流出ポート24,34が連通した状態)になる場合、第1弁部2が第1状態になり、第2弁部3が第2状態になる場合、第1弁部2が第2状態になり、第2弁部3が第1状態になる場合の4通りである。
【0088】
さらに、上記流路切替装置1Aにおいて、第1弁部2と、第2弁部3とが、駆動部4を挟んで、弁室29,39の軸方向に沿って直列に配置され、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4とが連結されていること、が望ましい。
【0089】
第1弁部2と第2弁部3とを流れる制御流体は、それぞれ温度が異なる場合がある。しかし、上記流路切替装置1Aによれば、第1弁部2と第2弁部3との間に駆動部4が位置するため、第1弁部2と第2弁部3との間の熱移動を抑制することが可能である。つまり、駆動部4を断熱層として機能させることができる。
【0090】
さらに、上記流路切替装置1Aにおいて、流入ポート22,32は、冷媒回路と接続するための第1接続部25,35を備えること、第1流出ポート23,33は、冷媒回路と接続するための第2接続部26,36を備えること、第2流出ポート24,34は、冷媒回路と接続するための第3接続部27,37を備えること、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37とは、弁部2,3から、軸心Cに対して垂直で、かつ、それぞれ異なる方向に突設されていること、が望ましい。
【0091】
上記流路切替装置1Aによれば、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37とは、弁部2,3から、軸心Cに対して垂直に突設されているため、流路切替装置1Aの軸方向における外形サイズをコンパクトにすることが可能である。また、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37とは、それぞれ異なる方向に突設されているため、それぞれの接続部25,35,26,36,27,37に接続する冷媒回路の配管同士の干渉を防止することができる。
【0092】
また、流路切替装置1Aにおいて、第1弁部2と、第2弁部3と、駆動部4とは、軸方向視における少なくとも一部の断面で、外形が略同一形状であり、当該外形が略同一の部分に、固定具を挿通可能な固定部213,313,411を備えること、が望ましい。
【0093】
上記流路切替装置1Aによれば、固定部213,313,411に対して、ボルト等の固定具を軸方向に挿通することで、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4を連結することが可能である。
【0094】
(第1の変形例について)
上記した流路切替装置1Aは、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37とが、軸心に対して垂直な方向に、弁部2,3から突設されているが、
図10に示す流路切替装置1Bのように、第1接続部25と、第2接続部26と、第3接続部27とが、第1弁部2から、弁室の軸心(
図10中の軸方向と同一方向)に沿った方向で、駆動部4の側とは反対側の方向に突設されたものとしても良い。第1弁部2における、流入ポート22と、第1流出ポート23と、第2流出ポート24の位置関係、その他の構成は、上記した流路切替装置1Aと同様である。第2弁部3も同様に、第1接続部35と、第2接続部36と、第3接続部37とが、第2弁部3から、軸心に沿った方向で、駆動部4の側とは反対側の方向に突設されたものとしても良い。第2弁部3における、流入ポート32と、第1流出ポート33と、第2流出ポート34の位置関係、その他の構成は、上記した流路切替装置1Aと同様である。
【0095】
第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37とを、弁部2,3から、軸心に沿った方向に突設させることで、軸心に対して垂直方向における流路切替装置1Bの外形サイズを、コンパクトにすることが可能である。なお、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37の全てを軸心に沿った方向に突設させるのではなく、軸心に沿った方向に突設させたものと、軸心に対して垂直な方向に突設させたものを組み合わせるものとしても良い。
【0096】
(第2の変形例について)
上記した流路切替装置1Aは、第1弁部2と、第2弁部3とが、駆動部4を挟んで、軸方向に沿って直列に配置された状態で、第1弁部2と第2弁部3と駆動部4とが連結されているが、
図11に示す流路切替装置1Cのように、第1弁部2と、第2弁部3とを、軸方向に沿って直列に配置し、第2弁部3の第1弁部2の側とは反対側の端面に、駆動部4を連結させても良い。なお、駆動部4は、第1弁部2の第2弁部3の側とは反対側の端面に連結することとしても良い。
【0097】
流路切替装置1Cにおいて、第1弁部2および第2弁部3は、一体として形成されており、ハウジング51と、切替弁体としての弁体58とを備えている。
【0098】
ハウジング51は、円筒状に形成されており、軸方向両端のうち、駆動部4に面する側の一端が開口され、他端は側壁512により閉塞されている。ハウジング51の外周壁511は全周において均一の肉厚とされており、ハウジング51の内部には、ハウジング51の外形と同軸上に円柱状の中空部が形成されている。該中空部の、軸方向において駆動部4側の半分が、第2弁部3の弁室として、他方の半分が第1弁部2の弁室として利用される。
【0099】
第1弁部2の弁室は、流入ポート22、第1流出ポート23、第2流出ポート24により、ハウジング51の外部と連通している。各ポート22,23,24の口径や、位置関係は、流路切替装置1Aと同様である(
図4(a)参照)。さらに、第2弁部3の弁室は、流入ポート32、第1流出ポート33、第2流出ポート34により、ハウジング51の外部と連通している。各ポート32,33,34の口径や、位置関係は、流路切替装置1Aと同様である(
図4(b)参照)。
【0100】
弁体58は、円盤状の基部581と、基部581から第1弁部2側へ立設される第1区画壁582と、基部581から第2弁部3側へ立設される第2区画壁583と、を備えている。基部581は、ハウジング51の中空部の内径と略同一径を備えており、ハウジング51の中空部を、第1弁部2の弁室と、第2弁部3の弁室とに区画している。第1区画壁582の構成は、流路切替装置1Aの区画壁281(
図5参照)と同様である。また、第2区画壁583は、流路切替装置1Aの区画壁381(
図5参照)と同様である。
【0101】
以上のように、流路切替装置1Cは、第1弁部2と第2弁部3が軸方向に隣接して配置されるため、第1弁部2と第2弁部3のハウジング51や弁体58を一体構造にすることが可能である。よって、流路切替装置の製造・組み立てを容易にすることができる。
【0102】
(第3の変形例について)
上記した流路切替装置1Aは、第1弁部2と、第2弁部3とが、軸方向に沿って直列に配置されているが、
図12に示す流路切替装置1Dまたは
図13に示す流路切替装置1Eのように、第1弁部2と第2弁部3とを、軸方向に対して並列に配置しても良い。
【0103】
流路切替装置1Dにおいて、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37とが、軸心に沿った方向に弁部2,3から突設して設けられている。そして、略長方形状の駆動部4が、弁部2,3の、第1接続部25,35と、第2接続部26,36と、第3接続部27,37が突設されている側とは反対側に連結されている。
【0104】
駆動部4は、例えば、駆動部4の長手方向における中央部にモータを有しており、その中央部から第1弁部2側に向かって、第1弁部2にモータの回転力を伝達するためのギヤが複数個連続して設けられるとともに、第2弁部3側に向かっても、第2弁部3にモータの回転力を伝達するギヤが複数個連続して設けられている。これにより、モータ1つで第1弁部2の弁体と第2弁部3の弁体を駆動する構成となっている。
【0105】
図13に示す流路切替装置1Eは、第1接続部25,35のみが、軸方向に垂直な方向に突設されている点が、流路切替装置1Dと異なっており、その他の構成は同様である。
【0106】
第1弁部と第2弁部とを流れる制御流体は、それぞれ温度が異なる場合がある。しかし、流路切替装置1D,1Eのように、第1弁部と、第2弁部とが、前記弁室の軸方向に対して並列に配置されていれば、第1弁部と第2弁部との間の熱移動を抑制することが可能である。
【0107】
(第2の実施形態)
流路切替装置1A-1Eにおいては、流入ポート22,32、第1流出ポート23,33、第2流出ポート24,34の位置、弁体28,38の形状を、以下のようにしても良い。
【0108】
まず、第1弁部2の各ポート22,23,24の位置および口径について、
図14(a)を用いて説明する。なお、
図14(a)中の、軸心Cは弁室29の軸心であり、中心軸CL21は第1流出ポート23の中心軸であり、中心軸CL22は第2流出ポート24の中心軸である。また、
図14(a)中において、流入ポート22の中心軸は、弁室29の中心線CL12と一致している。
【0109】
第1流出ポート23は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度が、流入ポート22の位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては105度とされている。具体的には、中心線CL12から、中心軸CL21までの角度A11が、90度以上120度以内であることが望ましく、本実施形態においては105度とされている。
【0110】
第2流出ポート24は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては-105度とされている。具体的には、中心線CL12から、中心軸CL22までの角度A12が、-120度以上-90度以内であることが望ましく、本実施形態においては-105度とされている。
【0111】
また、流入ポート22と、第1流出ポート23と、第2流出ポート24の弁室29の内周壁における口径は、軸心Cを中心とした周方向に広がる角度A21,A22,A23が全て、29度以下の範囲内になるように形成されている。
【0112】
第1弁部2の弁体28の区画壁281は、軸方向視において、弁室29の軸心Cを起点に屈曲して形成されている。具体的には、区画壁281は、弁室29の軸心に対して垂直で、かつ、それぞれ別方向に延在する第1片281aと第2片281bとにより構成されている。区画壁281の屈曲角度(すなわち、第1片281aと第2片281bとがなす角度A31(
図15(a)参照))が、135度以上165度以内の範囲であることが望ましく、本実施形態においては150度とされている。
【0113】
次に、第2弁部3の各ポート32,33,34の位置および口径について、
図14(b)を用いて説明する。なお、
図14(b)中の、軸心Cは弁室29の軸心であり、中心軸CL23は第1流出ポート33の中心軸であり、中心軸CL24は第2流出ポート34の中心軸である。また、
図14(b)中において、流入ポート32の中心軸は、弁室29の中心線CL14と一致している。
【0114】
第1流出ポート33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度が、流入ポート32の位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては105度とされている。具体的には、中心線CL14から、中心軸CL23までの角度A13が、90度以上120度以内であることが望ましく、本実施形態においては105度とされている。
【0115】
第2流出ポート34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては-105度とされている。具体的には、中心線CL14から、中心軸CL24までの角度A14が、-120度以上-90度以内であることが望ましく、本実施形態においては-105度とされている。
【0116】
また、流入ポート32と、第1流出ポート33と、第2流出ポート34の弁室39の内周壁における口径は、軸心Cを中心とした周方向に広がる角度A24,A25,A26が全て、29度以下の範囲内になるように形成されている。
【0117】
第2弁部3の弁体38の区画壁381は、軸方向視において、弁室39の軸心Cを起点に屈曲して形成されている。具体的には、区画壁381は、弁室39の軸心Cに対して垂直で、かつ、それぞれ別方向に延在する第1片381aと第2片381bとにより構成されている。区画壁381の屈曲角度(すなわち、第1片381aと第2片381bとがなす角度A51(
図15(b)参照))が、135度以上165度以内の範囲であることが望ましく、本実施形態においては150度とされている。
【0118】
(流路切替について)
以上のような第2の実施形態に係る構成によれば、適宜、弁体28,38が第1位置、第2位置、第3位置へ回転することで、流路切替を行うことができる。
【0119】
弁体28の第1位置とは、
図15(a)に示す位置であり、中心線CL12と第1片281aとがなす角度A41が30度になる位置である。また、弁体38の第1位置とは、
図15(b)に示す位置であり、中心線CL14と第1片381aとがなす角度A61が90度になる位置である。弁体28,38の第2位置とは、
図16(a)および
図16(b)に示す位置であり、第1位置から反時計回りに60度回転した位置である。弁体28,38の第3位置とは、
図17(a)および
図17(b)に示す位置であり、第2位置から反時計回りに60度回転した位置である。なお、弁体38の回転と弁体28の回転は同時に行われるため、弁体28が第1位置に位置するとき、弁体38も第1位置に位置し、弁体28が第2位置に位置するとき、弁体38も第2位置に位置し、弁体28が第3位置に位置するとき、弁体38も第3位置に位置する。
【0120】
このように、第1位置から第3位置まで、弁体28,38が60度ずつ回転可能なように、モータ42が制御される。そして、弁体28,38の回転角度に応じて、第1室291,391と第2室292,392のいずれか一方が、流入ポート22,32と、第1流出ポート23,33または第2流出ポート24,34とを連通させる。具体的には以下の通りである。
【0121】
図15(a)に示すように、弁体28が第1位置にあるとき、第2室292により、流入ポート22と第2流出ポート24が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第2流出ポート24から出力される。また、
図15(b)に示すように、弁体38が第1位置にあるとき、第1室391により、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第1流出ポート33から出力される。
【0122】
図16(a)に示すように、弁体28が第2位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第1流出ポート23から出力される。また、
図16(b)に示すように、弁体38が第2位置にあるとき、第1室391により、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第1流出ポート33から出力される。
【0123】
図17(a)に示すように、弁体28が第3位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第1流出ポート23から出力される。また、
図17(b)に示すように、弁体38が第3位置にあるとき、第2室392により、流入ポート32と第2流出ポート34が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第2流出ポート34から出力される。
【0124】
以上の動作をまとめた表が
図18である。第1弁部および第2弁部のそれぞれが、流入ポートと第1流出ポートが連通した状態(第1状態)と、流入ポートと第2流出ポートが連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備えるところ、
図18に示すように、弁体28,38の位置を第1位置-第3位置の間で切り替えることで、第1弁部が第2状態になり、第2弁部が第1状態になる場合(第1位置)、第1弁部および第2弁部がともに第1状態(第2位置)、第1弁部が第1状態になり、第2弁部が第2状態になる場合(第3位置)の、3通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。
【0125】
以上説明したように、流路切替装置1A,1B,1C,1D,1Eにおいて、第1弁部2および第2弁部3において、第1流出ポート23,33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22,32の位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置し、第2流出ポート24,34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22,32の位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置し、前記屈曲角度は、135度以上165度以内であること、第1弁部2の弁体28と、第2弁部3の弁体38の回転角度比は、1:1であること(弁体28,38を、双方とも60度ピッチで回転させること)、が望ましい。
【0126】
これにより、3通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。具体的には、第1弁部2および第2弁部3がともに第1状態(流入ポート22,32と第1流出ポート23,33が連通した状態)になる場合、第1弁部2が第1状態になり、第2弁部3が第2状態(流入ポート22,32と第2流出ポート24,34が連通した状態)になる場合、第1弁部2が第2状態になり、第2弁部3が第1状態になる場合の3通りである。
【0127】
(第3の実施形態)
流路切替装置1A,1B,1D,1Eにおいては、流入ポート22,32、第1流出ポート23,33、第2流出ポート24,34の位置および弁体28,38の形状を、以下のようにしても良い。
【0128】
まず、第1弁部2の各ポート22,23,24の位置および口径について、
図19(a)を用いて説明する。なお、
図19(a)中の、軸心Cは弁室29の軸心であり、中心軸CL21は第1流出ポート23の中心軸であり、中心軸CL22は第2流出ポート24の中心軸である。また、
図19(a)中において、流入ポート22の中心軸は、弁室29の中心線CL12と一致している。
【0129】
第1流出ポート23は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度が、流入ポート22の位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては105度とされている。具体的には、中心線CL12から、中心軸CL21までの角度A11が、90度以上120度以内であることが望ましく、本実施形態においては105度とされている。
【0130】
第2流出ポート24は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては-105度とされている。具体的には、中心線CL12から、中心軸CL22までの角度A12が、-120度以上-90度以内であることが望ましく、本実施形態においては-105度とされている。
【0131】
また、流入ポート22と、第1流出ポート23と、第2流出ポート24の弁室29の内周壁における口径は、軸心Cを中心とした周方向に広がる角度A21,A22,A23が全て、29度以下の範囲内になるように形成されている。
【0132】
第1弁部2の弁体28の区画壁281は、軸方向視において、弁室29の軸心Cを起点に屈曲して形成されている。具体的には、区画壁281は、弁室29の軸心Cに対して垂直で、かつ、それぞれ別方向に延在する第1片281aと第2片281bとにより構成されている。区画壁281の屈曲角度(すなわち、第1片281aと第2片281bとがなす角度A31(
図20(a)参照))が、135度以上165度以内の範囲であることが望ましく、本実施形態においては150度とされている。
【0133】
次に、第2弁部3の各ポート32,33,34の位置および口径について、
図19(b)を用いて説明する。なお、
図19(b)中の、軸心Cは弁室39の軸心であり、中心軸CL23は第1流出ポート33の中心軸であり、中心軸CL24は第2流出ポート34の中心軸である。また、
図19(b)中において、流入ポート32の中心軸は、弁室29の中心線CL14と一致している。
【0134】
第1流出ポート33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度が、流入ポート32の位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては120度とされている。具体的には、中心線CL14から、中心軸CL23までの角度A13が、105度以上135度以内であることが望ましく、本実施形態においては120度とされている。
【0135】
第2流出ポート34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置していることが望ましく、本実施形態においては-90度とされている。具体的には、中心線CL14から、中心軸CL24までの角度A14が、-105度以上-75度以内であることが望ましく、本実施形態においては-90度とされている。このため、中心軸CL24は、弁室39の中心線CL13と一致している。
【0136】
また、流入ポート32と、第1流出ポート33と、第2流出ポート34の弁室39の内周壁における口径は、軸心Cを中心とした周方向に広がる角度A24,A25,A26が全て、29度以下の範囲内になるように形成されている。
【0137】
第2弁部3の弁体38の区画壁381は、軸方向視において、弁室39の軸心Cを起点に屈曲して形成されている。具体的には、区画壁381は、弁室39の軸心Cに対して垂直で、かつ、それぞれ別方向に延在する第1片381aと第2片381bとにより構成されている。区画壁381の屈曲角度(すなわち、第1片381aと第2片381bとがなす角度A51(
図20(b)参照))が、135度以上165度以内の範囲であることが望ましく、本実施形態においては150度とされている。
【0138】
(流路切替について)
以上のような第3の実施形態に係る構成によれば、適宜、弁体28、38が第1位置、第2位置、第3位置、第4位置へ回転することで、流路切替を行うことができる。
【0139】
弁体28の第1位置とは、
図20(a)に示す位置であり、中心線CL12と第1片281aとがなす角度A41が30度になる位置である。また、弁体38の第1位置とは、
図20(b)に示す位置であり、中心線CL14と第1片381aとがなす角度A61が45度になる位置である。
【0140】
弁体28の第2位置とは、
図21(a)に示す位置であり、第1位置から反時計回りに60度回転した位置である。弁体38の第2位置とは、
図6(b)に示す位置であり、第1位置から反時計回りに30度回転した位置である。
【0141】
弁体28の第3位置とは、
図22(a)に示す位置であり、第2位置から反時計回りに60度回転した位置である。弁体38の第3位置とは、
図22(b)に示す位置であり、第2位置から反時計回りに30度回転した位置である。
【0142】
弁体28の第4位置とは、
図23(a)に示す位置であり、第3位置から反時計回りに60度回転した位置である。弁体38の第4位置とは、
図23(b)に示す位置であり、第3位置から反時計回りに30度回転した位置である。
【0143】
なお、弁体38の回転と弁体28の回転は同時に行われるため、弁体28が第1位置に位置するとき、弁体38も第1位置に位置し、弁体28が第2位置に位置するとき、弁体38も第2位置に位置し、弁体28が第3位置に位置するとき、弁体38も第3位置に位置し、弁体28が第4位置に位置するとき、弁体38も第4位置に位置する。ただし、回転角度のピッチが、弁体28が60度であるのに対し、弁体38は30度になっている。このため、駆動部4において、一つのモータに対し、弁体28を回転させるための駆動軸を備えるギヤと、当該ギヤとは減速比率が異なる、弁体38を回転させるための駆動軸を備えるギヤと、を設け、弁体28と、弁体38の回転角度比が2:1になるようにする必要がある。
【0144】
そして、弁体28,38の回転角度に応じて、第1室291,391と第2室292,392のいずれか一方が、流入ポート22,32と、第1流出ポート23,33または第2流出ポート24,34とを連通させる。具体的には以下の通りである。
【0145】
図20(a)に示すように、弁体28が第1位置にあるとき、第2室292により、流入ポート22と第2流出ポート24が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第2流出ポート24から出力される。また、
図20(b)に示すように、弁体38が第1位置にあるとき、第1室391により、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第1流出ポート33から出力される。
【0146】
図21(a)に示すように、弁体28が第2位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第1流出ポート23から出力される。また、
図21(b)に示すように、弁体38が第2位置にあるとき、第1室391により、流入ポート32と第1流出ポート33が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第1流出ポート33から出力される。
【0147】
図22(a)に示すように、弁体28が第3位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第1流出ポート23が連通した状態(第1状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第1流出ポート23から出力される。また、
図22(b)に示すように、弁体38が第3位置にあるとき、第2室392により、流入ポート32と第2流出ポート34が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第2流出ポート34から出力される。
【0148】
図23(a)に示すように、弁体28が第4位置にあるとき、第1室291により、流入ポート22と第2流出ポート24が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート22から弁室29に入力される冷却水は、第2流出ポート24から出力される。また、
図23(b)に示すように、弁体38が第4位置にあるとき、第2室392により、流入ポート32と第2流出ポート34が連通した状態(第2状態)である。よって、流入ポート32から弁室39に入力される冷却水は、第2流出ポート34から出力される。
【0149】
以上の動作をまとめた表が
図24である。第1弁部および第2弁部のそれぞれが、流入ポートと第1流出ポートが連通した状態(第1状態)と、流入ポートと第2流出ポートが連通した状態(第2状態)との2通りの流路を備えるところ、
図24に示すように、弁体28,38の位置を第1位置-第4位置の間で切り替えることで、第1弁部が第2状態になり、第2弁部が第1状態になる場合(第1位置)、第1弁部および第2弁部がともに第1状態(第2位置)、第1弁部が第1状態になり、第2弁部が第2状態になる場合(第3位置)、第1弁部および第2弁部がともに第2状態になる場合(第4位置)の、4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。
【0150】
以上説明したように、例えば第3の実施形態等では、流路切替装置1A,1B,1D,1Eにおいて、第1弁部2において、第1流出ポート23は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、90度以上120度以内の範囲に位置し、第2流出ポート24は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート22の位置を0度として、-120度以上-90度以内の範囲に位置し、弁体28の屈曲角度は、135度以上165度以内であること、第2弁部3において、第1流出ポート33は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、105度以上135度以内の範囲に位置し、第2流出ポート34は、軸心Cを中心として周方向に広がる角度で、流入ポート32の位置を0度として、-105度以上-75度以内の範囲に位置し、弁体38の屈曲角度は、135度以上165度以内であること、第1弁部2の弁体28と、第2弁部3の弁体38の回転角度比は、2:1であること(弁体28を60度ピッチで回転させ、弁体38を30度ピッチで回転させること)、が望ましい。なお、上記の流路切替装置1Cは、その他の流路切替装置1A,1B,1D,1Eと異なり、弁体58が一つであるため、回転角度比を第1弁部2と第2弁部3とで異なるものに設定することができないため、上記構成をとることができない。
【0151】
上記構成により、4通りの流路の組み合わせを得ることが可能である。具体的には、第1弁部2および第2弁部3がともに第1状態(流入ポート22,32と第1流出ポート23,33が連通した状態)になる場合、第1弁部2および第2弁部3がともに第2状態(流入ポート22,32と第2流出ポート24,34が連通した状態)になる場合、第1弁部2が第1状態になり、第2弁部3が第2状態になる場合、第1弁部2が第2状態になり、第2弁部3が第1状態になる場合の4通りである。
【0152】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、
図1中のX方向から見たとき、第1弁部2の流入ポート22と、第2弁部3の流入ポート32とは、軸心Cを中心として対称に位置しているが(
図4(a),(b)参照)、必ずしも対称に位置させる必要はない。
【0153】
本発明の別態様を、以下に追加的に例示する。
【0154】
図25は、本発明の第4の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。本実施形態は、第1の弁部(第1弁部)の切替弁体28と第2の弁部(第2弁部)の切替弁体38とが、一つの電気モータ等の駆動部から及ぼされる回転駆動力によって、互いに同じ一定の回転角度ずつ回転せしめられるようになっている。
【0155】
なお、各ポートの位置は、図示されているとおり、第1弁部では、流入ポート22に対して第1流出ポート23と第2流出ポート24がそれぞれ周方向で反対側に略45度ずつ離れて位置に設定されている。第2弁部では、流入ポート32に対して第1流出ポート33と第2流出ポート34がそれぞれ周方向で反対側に略90度ずつ離れて位置に設定されている。
【0156】
具体的には、図面から判るように、第1弁部の切替弁体28は十文字状の羽根を有している一方、第2弁部の切替弁体38は一文字状の羽根を有しており、何れの切替弁体28,38も、同期して、周方向一方向に45度ずつ回転する。なお、周方向で45度ずつ往復して回転(回動)しても良い。
【0157】
かかる切替弁体28,38の45度ずつの回転により、第1弁部では、流入ポート22が第1流出ポート23と第2流出ポート24とに対して、交互に切り替えられて接続されて連通される。一方、第2弁部では、流入ポート32の第1流出ポート33への接続状態が、最初の45度の回転では切り替えられずに維持され、続く2回目の45度の回転(即ち、合計90度の回転)よって切り替えられて、第2流出ポート34へ接続されることとなる。
【0158】
それ故、切替弁体28,38の45度ずつの回転により、(i)第1弁部における流入ポート22と第1流出ポート23の接続状態、且つ、第2弁部における流入ポート32と第1流出ポート33の接続状態と、(ii)第1弁部における流入ポート22と第2流出ポート24の接続状態、且つ、第2弁部における流入ポート32と第1流出ポート33の接続状態と、(iii)第1弁部における流入ポート22と第1流出ポート23の接続状態、且つ、第2弁部における流入ポート32と第2流出ポート34の接続状態と、(iv)第1弁部における流入ポート22と第2流出ポート24の接続状態、且つ、第2弁部における流入ポート32と第2流出ポート34の接続状態と、が順次に発現されることとなる。これにより、4種類の流路接続状態が順次に発現され得る。
【0159】
特に本態様では、第1弁部の切替弁体28と第2弁部の切替弁体38とを、互いに同じ一定の回転角度ずつ回転させることで、4種類の流路接続状態が順次に発現されることから、駆動力伝達機構を構成する歯車列等の構造の設計が容易で構造の更なる簡略化やコンパクト化が実現容易であり、回転位置の制御も容易となる。
【0160】
図26は、本発明の第5の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。本実施形態は、第1弁部の切替弁体28と第2弁部の切替弁体38とが、一つの電気モータ等の駆動部から及ぼされる回転駆動力によって、互いに異なる一定の回転角度ずつ回転せしめられるようになっている。
【0161】
具体的には、図面から判るように、第1弁部の切替弁体28と第2弁部の切替弁体38は、何れも、一文字状の単純な形状の羽根を有している。そして、第2弁部の切替弁体28の一度の切替作動時における回転角度に対して、第2弁部の切替弁体38の一度の切替作動時における回転角度がより小さく設定されて、互いに同期して周方向に各一定角度ずつ回転する。本実施形態では、第1弁部の切替弁体28における一度の回転角度が90度とされていると共に、第2弁部の切替弁体38における一度の回転角度が45度とされている。
【0162】
かかる切替弁体28,38の各一定角度ずつの回転により、第1弁部では、流入ポート22が第1流出ポート23と第2流出ポート24とに対して、交互に切り替えられて接続されて連通される。一方、第2弁部は前記第4の実施形態と同じであって、流入ポート32の第1流出ポート33への接続状態が、最初の45度の回転では切り替えられずに維持され、続く2回目の45度の回転(即ち、合計90度の回転)よって切り替えられて、第2流出ポート34へ接続されることとなる。
【0163】
それ故、本実施形態では、切替弁体28の90度の回転と切替弁体38の45度の回転を伴う各回転位置の変化に伴って、前記第4の実施形態と同様に、前記(i),(ii),(iii),(iv)の接続状態、即ち4種類の流路接続状態が、順次に発現され得る。
【0164】
特に本態様では、前記第4の実施形態に比して、第1弁部と第2弁部において流入ポートと流出ポートの各位置を同じに設定できると共に、第1弁部の切替弁体28と第2弁部の切替弁体38も同じ単純形状とすることができる。これにより、部材の製造の容易化や簡略化が図られ得る。
【0165】
図27は、本発明の第6の実施形態としての第1弁部及び第2弁部をモデル的に示す説明図である。本実施形態は、第1弁部の切替弁体28は上記第5の実施形態と同じにされる一方、第2弁部の切替弁体38は、間欠的に回転されることで、第5の実施形態では45度ずつ回転されていたのが間欠的に90度ずつ回転するようになっている。
【0166】
具体的には、図面から判るように、第1弁部と第2弁部の何れも切替弁体28,38を含む弁部自体の構造は、上記第5の実施形態と同じである。要するに、第5の実施形態と異なっているのは、一つの電気モータからの回転駆動力を各切替弁体28,38に伝達する駆動力伝達機構である。
【0167】
本実施形態で採用される駆動力伝達機構の一例が、
図28にモデル的に示されている。
図28から判るように、電気モータの出力軸で回転駆動される出力歯車80に対して、
大歯車82aと小歯車82bが同軸上に一体的に設けられた第1の従動歯車の当該大歯車82aが噛合していると共に、該小歯車82bに対して第1の出力歯車84が噛合している。そして、第1の出力歯車84の回転軸の回転駆動力が、第6の実施形態における第1弁部の切替弁体28に及ぼされて回転作動せしめられるようになっている。
【0168】
また、出力歯車80には、大歯車86aと小歯車86bが同軸上に一体的に設けられた第2の従動歯車の当該大歯車86aが噛合していると共に、該小歯車86bに対して第2の出力歯車88が噛合している。そして、第2の出力歯車88の回転軸の回転駆動力が、第6の実施形態における第2弁部の切替弁体38に及ぼされて回転作動せしめられるようになっている。ここにおいて、第2の出力歯車88が噛合する小歯車86bは、図示されているように周方向で部分的にだけ歯部が設けられた間欠歯車構造とされている。これにより、小歯車86bが一定速度で連続的に回転作動しても、歯部が設けられていない間欠部分では第2の出力歯車88が噛合せず、第2の出力歯車88は所定期間に亘って回転作動を停止した状態に維持される。
【0169】
従って、
図28に示されているように、第2弁部の切替弁体38への回転駆動力の伝達経路を構成する歯車列に間欠歯車86bを採用することで、第2弁部の切替弁体38を前述のように間欠的に回転させて、第1弁部の切替弁体28の二回の回転作動について一回の割合で、第2弁部の切替弁体38を回転作動させることが可能になる。なお、
図28は間欠歯車を用いた駆動力伝達機構の概念をモデル的に示すものであり、歯車列を構成する各歯車の直径や間欠歯車86bの間欠歯数等は適宜に調節設定されることとなる。
【0170】
なお、
図28に示されている上述の如き間欠歯車を用いた歯車列からなる駆動力伝達機構は、間欠歯車として平歯車に代えてラック(直線歯車)を採用しても良い。間欠作動するラックを採用した歯車列による駆動力伝達機構の一例を、
図29に概念的なモデル図として示す。
【0171】
すなわち、
図29に示された駆動力伝達機構は、電気モータの出力軸で回転駆動される駆動ピニオン90に対して、第1のラック92の右側歯が噛合していると共に、当該第1のラック92の左側歯に対して第1の出力ピニオン94が噛合されており、当該第1の出力ピニオン94の回転軸の回転駆動力が前記第6の実施形態における第1弁部の切替弁体28に及ぼされて回転作動せしめられるようになっている。
【0172】
なお、駆動ピニオン90は、例えば周方向に1回転の回転角度をもって、周方向で交互に右回りと左回りを繰り返すように往復回転作動されることとなる。このような往復回転作動は、例えば電気モータを往復回転作動するように制御する他、後述する
図34に例示されるように、電気モータによって連続的に一方向に回転作動せしめられる回転円板の回転運動を揺動アーム等を用いた伝動機構によって往復回転作動に変換する機械的な運動態様変換機構を採用すること等によっても実現可能である。
【0173】
また、駆動ピニオン90には、第2のラック96の左側歯が噛合していると共に、該第2のラック96の右側歯に対して第2の出力ピニオン98が噛合している。そして、第2の出力ピニオン98の回転軸の回転駆動力が、第6の実施形態における第2弁部の切替弁体38に及ぼされて回転作動せしめられるようになっている。ここにおいて、第2の出力ピニオン98が噛合する該第2のラック96の右側歯は、図示されているように部分的にだけ歯部が設けられた間欠ラック構造とされている。これにより、第2のラック96が一定速度で連続的に長さ方向(図中の上下方向)に移動しても、歯部が設けられていない間欠部分では第2の出力ピニオン98が噛合せず、第2の出力ピニオン98は所定期間に亘って回転作動を停止した状態に維持される。
【0174】
従って、このようなラックピニオンを含む歯車列を含んで構成された駆動力伝達機構でも、
図28に示された平歯車からなる歯車列を有する駆動力伝達機構と同様な作動態様を、第1及び第2の弁部における各切替弁体において実現せしめ得る。
【0175】
更にまた、上述の如き
図29に示されたラックピニオンによる駆動力伝達機構は、
図30に例示的に概念モデル図が示されているように、第1のラック92と第2のラック96を単一の共用ラック100に置換して構成することも可能である。なお、
図30に示された駆動力伝達機構では、
図29に示された駆動力伝達機構に比して、第1及び第2の出力ピニオン94,98の相対的な回転方向が相違するが、第1弁部と第2弁部の各切替弁体の作動に大きな問題にならないし、仮に問題になる場合には、回転方向を変更する平歯車を配すること等によって容易に対応することができる。
【0176】
さらに、上述の各実施形態では、第1流出ポート23,33や第2流出ポート24,34が、何れも、第2接続部26,36や第3接続部27,37から直接に弁室29,39の内周面に開口する略円形開口をもって形成されていたが、かかる態様に限定されない。例えば、
図31に例示するように、第2接続部26,36や第3接続部27,37から弁室29,39の内周面に沿って周方向に延びる溝状形態をもって第1流出ポート23や第2流出ポート24を形成することも可能である。
【0177】
なお、
図31は、
図25に示された第4の実施形態における第1弁部について、第1流出ポート23および第2流出ポート24の別態様の2つを具体的に例示するものであるが、かかる具体的な態様に限定されるものでない。
【0178】
そして、このように周方向に延びる溝状形態をもって各流入ポート及び/又は流出ポートを設けることで、
図31からも判るように、第2接続部26や第3接続部27の位置を、弁部の周方向で大きな自由度をもって調節及び設定することが可能になる。それ故、例えば各接続部に接続される外部配管の位置にも容易に又は柔軟に対応して各接続部を設定することも可能になる。
【0179】
また、上述の各実施形態では、弁室29,39を複数の領域(分割室)に仕切る形態をもって切替弁体28,38が構成されていたが、かかる態様に限定されない。具体的には、一例が
図32にモデル的に示されているように、周方向に所定長さで延びる一つの接続用流路だけを有する切替弁体28等も採用可能である。
【0180】
なお、
図32に例示される切替弁体28は、例えば周方向で180度の回転角度をもって順次に回転作動されることで、流入ポート22を第1流出ポート23と第2流出ポート24に対して交互に連通状態とするように切替作動し得ることとなる。
【0181】
因みに、周方向に所定長さで延びる一つの接続用流路だけを有する切替弁体28の別態様が、
図33に示されている。本態様では、接続用流路が切替弁体28の周方向で半周に満たない長さで形成されていることから、流路切替作動に際しては、かかる切替弁体28を、周方向で所定の角度だけ周方向で交互の方向(逆方向)に繰り返して移動させる揺動回転させることが好ましい。
【0182】
切替弁体28の揺動回転は、例えば切替弁体28を回転作動させる電気モータを正逆交互に回転制御することによって実現できる。その他、機械的な伝動機構を用いて、電気モータの一方向への連続的な回転運動を、一軸回りの左右交互の所定角度の繰り返し回動運動に変換することも可能である。
【0183】
かくの如き回転運動を回動運動(往復回転運動乃至は揺動運動)に変換する機械的な運動変換機構に一具体例を、
図34に概略モデル図として示す。かかる運動変換機構は、電気モータで連続的に一方向に回転作動せしめられる出力歯車としてのピン車102を有している。このピン車102に突設された係合ピン104が、伝動アームとしての揺動ギヤ106に形成された長手状の係合穴108に対して挿通されている。かかる揺動ギヤ106は、長手ロッド形状とされており、固定的に設定された揺動中心軸110の回りで回動可能に支持されている。ピン車102が周方向一方向へ連続的に回転すると、係合ピン104が係合穴108への係合状態を維持しつつ揺動ギヤ106の長さ方向に往復移動することとなり、その結果、揺動ギヤ106が揺動中心軸110の回りで所定角度で往復して繰り返し回動駆動される。
【0184】
揺動ギヤ106には、揺動中心軸110から外方に所定距離だけ離れた位置で、揺動中心軸110を中心とする円周方向に延びる平歯車状のギヤ歯をもった伝動歯部112が一体的に設けられている。そして、この伝動歯部112に噛合して出力ギヤ114が配設されている。
【0185】
これにより、かかる出力ギヤ114は、揺動中心軸110の回りで往復して揺動する揺動ギヤ106の伝動歯部112により、中心軸回りで所定角度をもって往復して繰り返し回転作動せしめられることとなる。それ故、当該出力ギヤ114の回転軸の回転運動を、
図33の切替弁体28に伝達することで、当該切替弁体28を所定角度(例えば略45度)ずつ周方向で交互に往復回転作動させることができて、流入ポート22を第1流出ポート23と第2流出ポート24とに対して交互に且つ択一的に連通させることができる。
【0186】
また、本発明で採用される駆動源は、駆動力伝達機構を介して各切替弁体に回転作動力を及ぼし得る物であれば良く、例示の電気モータに限定されない。尤も、作動制御の容易さや正確さなどから電気的な駆動源であることが望ましく、例えば電気モータの他、ソレノイド等の電気駆動装置が好適に採用され得、例えば複数段階でストローク制御できるソレノイドを採用して、前記
図29や
図30に記載のラックを往復駆動させるようにしても良い。
【0187】
また、第1弁部と第2弁部に加えて更に同様な弁部(第3弁部)を追加し、かかる追加した弁部の切替弁体を、同じ駆動源によって切替作動させても良い。要するに、3つ以上の弁部を連動的に流路切替作動させることも可能であり、それによって流路の切替態様を更に多様化することもできる。
【0188】
また、第1の弁部と第2の弁部について、大きさ(系寸法)やポート態様,接続部の構造などを同じにする必用はなく、互いに異ならせることも可能である。
【0189】
また、第1の弁部や第2の弁部の弁室は円形である必用はない。例えば前記
図33に示されているように切替弁体28が周方向で僅かな角度(略45度)の範囲で往復回転して、
図33中の略上側部分だけで流路切替作動が実現される場合には、図中の下側部分は実質的に不要であり、切替弁体28の往復回転作動が阻害されない限り、例えば切替弁体28を半円形状にしたうえで弁室を弦月形状(下側部分が偏平形状や切り欠かれた形状)等とすることも可能である。
【0190】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0191】
1A 流路切替装置
2 第1弁部
3 第2弁部
4 駆動部
22 流入ポート
23 第1流出ポート
24 第2流出ポート
25 第1接続部
26 第2接続部
27 第3接続部
28 弁体(切替弁体)
29 弁室
32 流入ポート
33 第1流出ポート
34 第2流出ポート
35 第1接続部
36 第2接続部
37 第3接続部
38 弁体(切替弁体)
39 弁室
42 モータ(駆動源の一例)
281 区画壁
291 第1室
381 区画壁
391 第1室
58 弁体(切替弁体)
80 駆動歯車(
図28)
82 第1の従動歯車
82a 大歯車
82b 小歯車
84 第1の出力歯車
86 第2の従動歯車
86a 大歯車
86b 小歯車(間欠歯車)
88 第2の出力歯車
90 駆動ピニオン(
図29)
92 第1のラック
94 第1の出力ピニオン
96 第2のラック
98 第2の出力ピニオン
100 共用ラック(
図30)
102 ピン車(出力歯車)(
図31)
104 係合ピン
106 揺動ギヤ(伝動アーム)
108 係合穴
110 揺動中心軸
112 伝動歯部
114 出力ギヤ