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特開2024-49379組成物、成形体、積層体、及び、組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049379
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】組成物、成形体、積層体、及び、組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20240402BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20240402BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240402BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L27/18
C08L101/12
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023164733
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2022155496
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 俊行
(72)【発明者】
【氏名】関 豊光
(72)【発明者】
【氏名】小森 政二
(72)【発明者】
【氏名】岡西 謙
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD15W
4J002CF08X
4J002CF09X
4J002CH09X
4J002CM04X
4J002CN01X
4J002CN03X
4J002FD02W
4J002GQ01
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる組成物、成形体、積層体、及び、組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂Aと、融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)とを含み、前記フッ素樹脂Aは、前記フッ素樹脂AのMFR/前記樹脂BのMFR=0.2~10を満たす樹脂である組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂Aと、融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)とを含み、
前記フッ素樹脂Aは、前記フッ素樹脂AのMFR/前記樹脂BのMFR=0.2~10を満たす樹脂である組成物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂AのMFRが30g/10分以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂Aが、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記樹脂Bが、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
前記フッ素樹脂Aの含有量が10体積%以上である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記フッ素樹脂Aの分散粒子径が5.0μm以下である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項7】
添加剤を含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項8】
請求項1又は2記載の組成物を含む成形体。
【請求項9】
低誘電基板材料に用いられる請求項8記載の成形体。
【請求項10】
金属箔と、請求項9記載の成形体とを含む積層体。
【請求項11】
前記金属箔が銅である請求項10記載の積層体。
【請求項12】
(フッ素樹脂AのMFR)/(融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)のMFR)を0.2~10に調整するMFR調整工程を経て、前記フッ素樹脂A及び前記樹脂Bを含む組成物を得る組成物の製造方法。
【請求項13】
前記MFR調整工程では、重合、混練、又は、電離放射線の照射により、前記フッ素樹脂Aを得る請求項12記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、成形体、積層体、及び、組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂及び液晶ポリマーを含む組成物について、種々の検討が進められている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-187833号公報
【特許文献2】特開2018-177931号公報
【特許文献3】特開2019-065061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが検討したところ、特許文献2、3の実施例で行われているように、フッ素樹脂の割合を増加させていくと、液晶ポリマーとフッ素樹脂との親和性が低下し、フッ素樹脂の凝集(分散不良)が発生しやすくなることが分かった。フッ素樹脂の凝集は、ストランドの外観不良の原因となるため、できるだけ発生しないことが好ましい。
【0005】
本開示は、フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる組成物、成形体、積層体、及び、組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示(1)は、フッ素樹脂Aと、融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)とを含み、
前記フッ素樹脂Aは、前記フッ素樹脂AのMFR/前記樹脂BのMFR=0.2~10を満たす樹脂である組成物(以下、「本開示の組成物」とも記載する)である。
【0007】
本開示(2)は、前記フッ素樹脂AのMFRが30g/10分以上である本開示(1)記載の組成物である。
【0008】
本開示(3)は、前記フッ素樹脂Aが、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)又は(2)記載の組成物である。
【0009】
本開示(4)は、前記樹脂Bが、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(3)のいずれかに記載の組成物である。
【0010】
本開示(5)は、前記フッ素樹脂Aの含有量が10体積%以上である本開示(1)~(4)のいずれかに記載の組成物である。
【0011】
本開示(6)は、前記フッ素樹脂Aの分散粒子径が5.0μm以下である本開示(1)~(5)のいずれかに記載の組成物である。
【0012】
本開示(7)は、添加剤を含む本開示(1)~(6)のいずれかに記載の組成物である。
【0013】
本開示(8)は、本開示(1)~(7)のいずれかに記載の組成物を含む成形体(以下、「本開示の成形体」とも記載する)である。
【0014】
本開示(9)は、低誘電基板材料に用いられる本開示(8)記載の成形体である。
【0015】
本開示(10)は、金属箔と、本開示(8)又は(9)記載の成形体とを含む積層体(以下、「本開示の積層体」とも記載する)である。
【0016】
本開示(11)は、前記金属箔が銅である本開示(10)記載の積層体である。
【0017】
本開示(12)は、(フッ素樹脂AのMFR)/(融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)のMFR)を0.2~10に調整するMFR調整工程を経て、前記フッ素樹脂A及び前記樹脂Bを含む組成物を得る組成物の製造方法(以下、「本開示の製造方法」とも記載する)である。
【0018】
本開示(13)は、前記MFR調整工程では、重合、混練、又は、電離放射線の照射により、前記フッ素樹脂Aを得る本開示(12)記載の組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる組成物、成形体、積層体、及び、組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、及び、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0021】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0022】
<本開示の組成物>
本開示の組成物は、フッ素樹脂Aと、融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(フッ素樹脂Aを除く)とを含み、フッ素樹脂Aは、フッ素樹脂AのMFR/樹脂BのMFRが0.2~10を満たす樹脂である。
【0023】
本開示の組成物によれば、フッ素樹脂AのMFR/樹脂BのMFRを上記の範囲に調整することで、フッ素樹脂A及び樹脂Bの親和性を向上させることができる。その結果、フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる。
【0024】
フッ素樹脂Aとしては、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体[PFA]、TFE/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]、エチレン[Et]/TFE共重合体[ETFE]、Et/TFE/HFP共重合体[EFEP]、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFE]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]/TFE共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニル[PVF]、ポリフッ化ビニリデン[PVdF]、フッ化ビニリデン[VdF]/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/ペンタフルオロプロピレン共重合体、VdF/PAVE/TFE共重合体、TFE/パーフルオロアルキルアリルエーテル共重合体等が挙げられる。パーフルオロアルキルアリルエーテルは、CF=CFCF-O-Rf(Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表される単量体である。
【0025】
フッ素樹脂Aとしては、樹脂Bとの親和性の点から、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体[PFA]及びテトラフルオロエチレン[TFE]/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、FEPがより好ましい。
【0026】
パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF=CF-ORf (1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0027】
パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0028】
PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]が好ましい。
【0029】
パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(1)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0032】
【化2】
【0033】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0034】
(パーフルオロアルキル)エチレンとしては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン[PFBE]、(パーフルオロヘキシル)エチレン[PFHE]、(パーフルオロオクチル)エチレン等が挙げられる。
【0035】
PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位とのモル比(TFE単位/PAVE単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。上記PFAは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%(TFE単位及びPAVE単位が合計で90~99.9モル%である共重合体)であることが好ましく、0.1~5モル%であることがより好ましく、0.2~4モル%であることが特に好ましい。
【0036】
TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、式(I):CZ=CZ(CF(式中、Z、Z及びZは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Zは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、式(II):CF=CF-OCH-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、式(X):CZ=CZ-CZ-O-Rf(式中、式中、Z、Z及びZは、同一又は異なって、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、Z及びZは、水素原子又はフッ素原子を表し、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアリルエーテル単量体等が挙げられる。上記アリルエーテル単量体としては、CH=CFCF-O-Rf、CF=CFCF-O-Rf(パーフルオロアルキルアリルエーテル)、CF=CFCH-O-Rf、CH=CHCF-O-Rf(式中、Rfは上記式(X)と同じ)等が好ましく挙げられる。
また、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、更にイタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0037】
PFAは、融点が180~324℃未満であることが好ましく、230~320℃であることがより好ましく、280~320℃であることが更に好ましい。
【0038】
FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。上記FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%(TFE単位及びHFP単位が合計で90~99.9モル%である共重合体)であることが好ましく、0.1~5モル%であることがより好ましく、0.2~4モル%であることが特に好ましい。
【0039】
TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、式(X)で表される単量体、式(II)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。また、TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、更にイタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0040】
FEPは、融点が150~324℃未満であることが好ましく、200~320℃であることがより好ましく、240~320℃であることが更に好ましい。
【0041】
ETFEとしては、TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が20/80以上90/10以下である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は37/63以上85/15以下であり、更に好ましいモル比は38/62以上80/20以下である。ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。上記ETFEは、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%(TFE単位及びエチレン単位が合計で90~99.9モル%である共重合体)であることが好ましく、0.1~5モル%であることがより好ましく、0.2~4モル%であることが特に好ましい。
【0042】
TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、下記式
CH=CXRf、CF=CFRf、CF=CFORf、CH=C(Rf(式中、Xは水素原子又はフッ素原子、Rfはエーテル結合を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)で表される単量体や式(X)で表される単量体が挙げられ、なかでも、CF=CFRf、CF=CFORf及びCH=CXRfで表される含フッ素ビニルモノマー、式(X)で表される単量体が好ましく、HFP、CF=CF-ORf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CF=CF-CF-O-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロアルキルアリルエーテル及びRfが炭素数1~8のフルオロアルキル基であるCH=CXRfで表される含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、更にイタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0043】
ETFEは、融点が140~324℃未満であることが好ましく、160~320℃であることがより好ましく、195~320℃であることが更に好ましい。
【0044】
上述した重合体の各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0045】
フッ素樹脂Aの熱分解温度は、好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは370℃以上であり、また、好ましくは500℃以下、より好ましくは480℃以下、更に好ましくは470℃以下である。
【0046】
なお、フッ素樹脂Aの熱分解温度は、株式会社日立ハイテクサイエンス社製熱分析装置 STA7200を用いて測定した。測定は200mL/minの窒素パージ雰囲気下で行った。アルミ製パンに試料10mgを入れ、25℃で10分間保持した後、10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した。その際の初期質量から5%質量減少温度(Td5)を熱分解温度とした。
また、フッ素樹脂Aが、電離放射線を照射して低分子量化されたものである場合、熱分解温度は、電離放射線を照射後、脱気操作を経て、測定したものである。
【0047】
フッ素樹脂Aは、主鎖炭素数10個あたり100~2000個の不安定末端基を有していてもよい。不安定末端基は、-COF、-COOHであり、上記個数はこれらの総数である。
【0048】
なお、不安定末端基の数は、赤外分光分析法によって測定できる。具体的には、まず、フッ素樹脂Aを溶融押出成形して、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、フッ素樹脂Aの赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化処理されて不安定末端基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の不安定末端基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、フッ素樹脂Aにおける炭素原10個あたりの不安定末端基数Nを算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0049】
本開示の組成物は、樹脂Bが海、フッ素樹脂Aが島の海島構造を形成していることが好ましい。
【0050】
本開示の組成物において、フッ素樹脂Aの分散粒子径は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、更に好ましくは2.0μm以下である。下限は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。
【0051】
なお、フッ素樹脂Aの分散粒子径は、以下の手順に従って決定する。
まず、組成物を長手方向に垂直に切削することによって、試験片を得て、その断面を共焦点レーザー顕微鏡で観察する。得られた顕微鏡画像を、画像解析ソフト(Image J)を用いて解析し、分散相の円相当径を求める。そして、分散相20個分の円相当径を算出し、これを平均したものを分散粒子径とする。
【0052】
樹脂Bとしては、融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上のものであれば特に限定されないが、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等を使用できる。なかでも、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、液晶ポリマーが特に好ましい。
【0053】
液晶ポリマーとしては特に限定されないが、液晶化温度(すなわち融点)が180℃~380℃であるポリマーであってよく、加熱してネマチック等の液晶状態となるサーモトロピック液晶ポリマーが好ましく、たとえば、
I型液晶ポリマー(ビフェノール/安息香酸/パラオキシ安息香酸(POB)共重合体など)
II型液晶ポリマー(ヒドロキシナフトエ酸(HNA)/POB共重合体など)
III型液晶ポリマー(POB/エチレンテレフタレート共重合体など)
などがあげられる。なかでも、混練温度と液晶転移温度の観点から、I型液晶ポリマー及びII型液晶ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、II型液晶ポリマーがより好ましい。
【0054】
液晶ポリマーの融点は、好ましくは280℃以上、より好ましくは310℃以上であり、また、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下である。
【0055】
ポリエーテルイミドとしては、例えば、分子内にイミド結合及びエーテル結合を有するものを使用できる。
【0056】
ポリエーテルイミドのガラス転移温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下である。
【0057】
ポリフェニレンサルファイドとしては、例えば、下記式で表される構造単位を有する樹脂を使用できる。この構造単位の割合は、70モル%以上が好ましい。
-(Ph-S)-
式中のPhはフェニレン基であり、当該フェニレン基としては、p-フェニレン、m-フェニレン、o-フェニレン、アルキル置換フェニレン、フェニル置換フェニレン、ハロゲン置換フェニレン、アミノ置換フェニレン、アミド置換フェニレン、p,p’-ジフェニレンスルホン、p,p’-ビフェニレン、p,p’-ビフェニレンエーテル等が挙げられる。なかでも、p-フェニレンが好ましい。
【0058】
ポリフェニレンサルファイドの融点は、好ましくは240℃以上、より好ましくは270℃以上であり、また、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下である。
【0059】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等が挙げられる。なかでも、PEEKが好ましい。
【0060】
ポリアリールエーテルケトンの融点は、好ましくは320℃以上、より好ましくは340℃以上であり、また、好ましくは400℃以下、より好ましくは380℃以下である。
【0061】
ポリサルフォン(ポリスルホン)としては特に限定されず、一般的なものを使用可能である。
【0062】
ポリサルフォンのガラス転移温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
【0063】
ポリエーテルサルフォン(ポリエーテルスルホン)としては特に限定されず、一般的なものを使用可能である。
【0064】
ポリエーテルサルフォンのガラス転移温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
【0065】
なお、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びポリアリールエーテルケトンの融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
ポリエーテルイミド、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンのガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0066】
樹脂Bの熱分解温度は、好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上であり、また、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下である。
【0067】
なお、樹脂Bの熱分解温度は、株式会社日立ハイテクサイエンス社製熱分析装置 STA7200を用いて測定した。測定は200mL/minの窒素パージ雰囲気下で行った。アルミ製パンに試料10mgを入れ、25℃で10分間保持した後、10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した。その際の初期質量から5%質量減少温度(Td5)を熱分解温度とした。
【0068】
本開示の組成物において、フッ素樹脂AのMFR/樹脂BのMFRは、0.2~10であればよいが、フッ素樹脂A及び樹脂Bの親和性の点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。
【0069】
なお、フッ素樹脂AのMFR/樹脂BのMFRを算出する際、各樹脂のMFRは同じ温度で測定する。測定温度は、フッ素樹脂A及び樹脂Bを混練する際の混練温度(樹脂Bの成形加工温度)に近い温度であり、具体的には325℃である。
そして、各樹脂のMFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、325℃×2.16kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0070】
フッ素樹脂Aの325℃でのMFRは、上記関係を満たす範囲であれば特に限定されないが、好ましくは30g/10分以上、より好ましくは50g/10分以上、更に好ましくは100g/10分以上であり、また、好ましくは1000g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下、更に好ましくは500g/10分以下である。
樹脂Bの325℃でのMFRについても同様に、上記関係を満たす範囲であれば特に限定されないが、好ましくは30g/10分以上、より好ましくは50g/10分以上、更に好ましくは100g/10分以上であり、また、好ましくは1000g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下、更に好ましくは500g/10分以下である。
【0071】
樹脂Bの融点+8℃でのMFRは、30g/10分以上であればよいが、好ましくは40g/10分以上、より好ましくは60g/10分以上であり、また、好ましくは1000g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下、更に好ましくは700g/10分以下である。
【0072】
なお、樹脂Bの8℃でのMFRは、測定温度が相違する点を除き、325℃でのMFRと同様の方法で測定したものである。
【0073】
本開示の組成物において、フッ素樹脂Aの含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは25体積%以上であり、また、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下、更に好ましくは35体積%以下である。
【0074】
本開示の組成物において、樹脂Bの含有量は、好ましくは55体積%以上、より好ましくは60体積%以上、更に好ましくは65体積%以上であり、また、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは75体積%以下である。
【0075】
本開示の組成物において、フッ素樹脂A及び樹脂Bの合計含有量は、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは90体積%以上である。上限は特に限定されず、100体積%であってもよい。
【0076】
本開示の組成物において、フッ素樹脂Aと樹脂Bとの体積比(フッ素樹脂A/樹脂B)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは25/75以上であり、また、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは35/65以下である。
【0077】
本開示の組成物は、フッ素樹脂Aに該当しないフッ素樹脂Cを含んでもよい。フッ素樹脂Cは、フッ素樹脂CのMFR/樹脂BのMFR=0.2~10を満たさないものであれば特に限定されない。
フッ素樹脂CのMFR/樹脂BのMFRを算出する際、各樹脂のMFRは、フッ素樹脂AのMFR/樹脂BのMFRを算出する際と同様の方法で測定する。
【0078】
なお、上述のフッ素樹脂A、樹脂B、フッ素樹脂Cは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
本開示の組成物は、さらに、添加剤を含んでもよい。
【0080】
添加剤としては、エポキシ化合物、アミン化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物等を使用できる。なかでも、オキサゾリン化合物が好ましい。
【0081】
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を1個以上有するものであれば特に限定されないが、オキサゾリン基を2個以上有するものが好ましく、オキサゾリン基を2個有するものがより好ましい。オキサゾリン基を2個有するオキサゾリン化合物の具体例として、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン[1,3-PBO]や、その異性体である1,4-PBO等が挙げられる。
また、オキサゾリン化合物は、オキサゾリン基を有するオリゴマー、ポリマーであってもよい。オキサゾリン基を有するポリマーの具体例として、ポリ-2-ビニル-2-オキサゾリン[Pvozo]等が挙げられる。
【0082】
添加剤としては、フィラーも使用可能である。フィラーの具体例としては、シリカ(より具体的には結晶性シリカ、溶融シリカ、球状溶融シリカ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、アルミナ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の無機化合物;モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノライト、バーキュライト、セリサイト等の鉱物;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン等の各種ガラス等;が挙げられる。
【0083】
添加剤としては、上記で説明したもの以外に、架橋剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、発泡剤、発泡核剤、酸化防止剤、界面活性剤、光重合開始剤、摩耗防止剤、表面改質剤等、樹脂に使用される一般的な添加剤も使用可能である。
また、フッ素樹脂A及び樹脂B以外の樹脂を添加剤として使用してもよい。
【0084】
本開示の組成物において、添加剤の含有量は、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは3体積%以上であり、また、好ましくは15体積%以下、より好ましくは12体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。
【0085】
<本開示の成形体>
本開示の成形体は、本開示の組成物を含む。
【0086】
本開示の成形体は、本開示の組成物を成形することで得られる。成形方法としては特に限定されず、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空・圧空成形等、通常の方法を使用できる。
【0087】
本開示の成形体は、誘電材料、特に、低誘電基板材料(例えば、絶縁材料)として好適に用いられる。
なお、本明細書において、「低誘電基板材料」は、25℃、10GHzの比誘電率が5.0以下、かつ、25℃、10GHzの誘電正接が0.003以下である材料を意味し、25℃、10GHzの比誘電率が4.0以下、かつ25℃、10GHzの誘電正接が0.002以下である材料がより好ましく、25℃、10GHzの比誘電率が3.5以下、かつ25℃、10GHzの誘電正接が0.0012以下である材料が更に好ましい。
【0088】
本開示の成形体を誘電材料とする場合、その用途としては特に限定はない。例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品、ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品、コンパクトディスク、スピーカー等の音響製品部品、光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品、分離爪、ヒータホルダー等の複写機関連部品、インペラー、ファン、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具、床材、壁材等の断熱、防音用材料や、梁、柱等の支持材料や、屋根材等の建築資材又は土木建築用材料、航空機、宇宙機、宇宙機器用部品、原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品等の広範な用途に使用可能である。
【0089】
<本開示の積層体>
本開示の積層体は、金属箔と、本開示の成形体とを含む。
【0090】
金属箔の金属としては、アルミニウム、鉄、銀、金、ルテニウム等が挙げられる。また、これらの合金も使用可能である。なかでも、銅が好ましい。銅としては、圧延銅、電解銅等を使用できる。
【0091】
本開示の積層体の厚みは、10μm~1000μmが好ましい。また、本開示の積層体において、本開示の成形体の厚みは、1μm~100μmが好ましい。
なお、本開示の積層体及び成形体は、厚みが略一定のシート状であることが好ましいが、厚みが異なる部分が存在する場合、長手方向に等間隔に10分割した地点の厚みを測定し、それらを平均したものとする。
【0092】
本開示の積層体は、上述の金属箔及び本開示の成形体以外に、他の層が積層されていてもよい。
【0093】
本開示の積層体は、回路基板、特に、プリント基板、積層回路基板(多層基板)、高周波回路基板として好適に用いられる。
【0094】
高周波回路基板は、高周波帯域でも動作させることが可能な回路基板である。高周波帯域とは、1GHz以上の帯域であってよく、3GHz以上の帯域であることが好ましく、5GHz以上の帯域であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、100GHz以下の帯域であってもよい。
【0095】
<本開示の製造方法>
本開示の製造方法は、(フッ素樹脂AのMFR)/(融点+8℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(フッ素樹脂Aを除く)のMFR)を0.2~10に調整するMFR調整工程を経て、フッ素樹脂A及び樹脂Bを含む組成物を得る。
【0096】
フッ素樹脂A及び樹脂Bは、上述の本開示の組成物と同様のものを使用可能である。
【0097】
MFR調整工程では、いずれの樹脂のMFRを調整してもよいが、少なくとも、フッ素樹脂のMFRを調整し、フッ素樹脂AのMFR/樹脂BのMFR=0.2~10を満たすフッ素樹脂Aを得ることが好ましい。
また、MFRの調整方法は特に限定されないが、樹脂の分子量を調整することが好ましい。樹脂の分子量の調整方法としては、樹脂の分子量が低くなる重合法を採用する方法、混練時のせん断によって樹脂の分子量を低下させる方法、電離放射線を照射して樹脂の分子量を低下させる方法等が挙げられる。すなわち、MFR調整工程では、重合、混練、又は、電離放射線の照射により、フッ素樹脂Aを得ることが好ましい。
【0098】
樹脂の分子量が低くなる重合法としては特に限定されず、想定している分子量にあわせて材料や反応条件を適宜設定すればよい。
【0099】
混練時のせん断によって樹脂の分子量を低下させる場合、せん断速度は、100秒-1(/sec)以上とすることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、5000秒-1(/sec)以下である。
なお、せん断速度(γ)は、例えば、下記式を用いて求める値である。
γ=πDr/C
D:スクリュー外径(mm)
r:スクリュー回転数(rpm)
C:チップクリアランス(mm)
【0100】
電離放射線(電離性放射線)は、物質に電離作用を及ぼす放射線であり、粒子線と、電磁波とに分類される。粒子線は、アルファ線、ベータ線等の荷電粒子線と、中性子線等の非荷電粒子線とに更に分類される。電磁波としては、エックス線、ガンマ線等が挙げられる。
また、電離放射線は、直接電離放射線と、間接電離放射線とに分類することもできる。この場合、荷電粒子線が直接電離放射線に該当し、非荷電粒子線及び電磁波が間接電離放射線に該当する。
樹脂全体にエネルギーが浸透するという点から、電離放射線としては、間接電離放射線が好ましく、電磁波がより好ましく、ガンマ線が更に好ましい。
【0101】
電離放射線を照射するフッ素樹脂は、溶融加工可能なフッ素樹脂であることが好ましい。本明細書において、溶融加工可能であるとは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0102】
溶融加工可能なフッ素樹脂としては、上述したPFA、FEP、ETFE、EFEP、PCTFE、PVdF等が挙げられ、樹脂Bとの親和性の点から、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、FEPがより好ましい。
【0103】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0104】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0105】
実施例で使用する材料は、以下のとおりである。
(フッ素樹脂)(なお、以下の実施例では、FEP(2)、(3)がフッ素樹脂Aに該当する。)
FEP(1)(TFE単位/HFP単位(モル比)=88.0/12.0、MFR(325℃):5.6g/10分、熱分解温度:427℃)
FEP(2)(下記方法で合成、TFE単位/HFP単位/PPVE単位(モル比)=90.9:8.80:0.35、MFR(325℃):228.0g/10、熱分解温度:470℃)
FEP(3)(下記方法で合成、TFE単位/HFP単位(モル比)=88.0/12.0、MFR(325℃):270.2g/10、熱分解温度:463℃)
(樹脂B)
LCP(1)(II型液晶ポリマー、融点:313℃、MFR(325℃):206.5g/10分、MFR(321℃(融点+8℃)):62.4g/10分、熱分解温度:501℃)
LCP(2)(II型液晶ポリマー、融点:322℃、MFR(325℃):206.7g/10分、MFR(330℃(融点+8℃)):648.4g/10分、熱分解温度:501℃)
【0106】
FEP(2)の合成方法
内容積4Lのガラスライニングオートクレーブに、脱酸素したイオン交換水1100gを入れ、オートクレーブ内部を真空にし、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)1100gを入れて、槽内温度を28℃に保った。次いで、オートクレーブに、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)8.0gおよびメタノール5.0gを仕込み、撹拌下、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.89MPaGまで圧入した。次いで、ジ-iso-プロピルパーオキシジカーボネート8.0gを仕込んで重合を開始した。重合の進行とともに圧力が低下するため、テトラフルオロエチレンを追加圧入して重合圧力を0.89MPaGに保ちながら、重合を10.6時間行った。重合終了後、残モノマーと溶媒を回収し、生成物の洗浄乾燥を行い、重合粉末74gを得た。
【0107】
FEP(3)の合成方法
FEPペレット1000gを入れたアルミチャック袋をベルトコンベアに載せて、線源の周りを動かしながらガンマ線500kGyを照射した。その後、200℃×4時間の条件で脱気を行い、サンプルを得た。
【0108】
実施例、比較例
循環式二軸押出機(Xplore MC15HT:Xplore Instruments社製)を用いて、表1の条件で、13.72gの樹脂Bと9.03gのフッ素樹脂との混練を検討した。材料は事前にドライブレンドしてからホッパーから投入し、5min、500rpmの条件で混練した。混練温度は表1の条件とした。混練後、サンプルをストランドとして採取した。
得られたストランドの断面をレーザー顕微鏡で観察し、混練後のモルフォロジー(樹脂の分散状態)を評価した。いずれも樹脂Bが海、フッ素樹脂が島の海島構造を形成したが、比較例よりも実施例の方が島(フッ素樹脂)の分散粒子径が小さく、分散状態が良好であることが確認できた。また、ストランドの外観の状態も良好であった。
なお、ストランドの外観の評価基準は以下のとおりである。
A:ストランド表面にザラつきや凝集がみられない
B:ストランド表面にザラつきや凝集がみられる
【0109】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂Aと、融点+8℃×2.16kg荷重下でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)とを含み、
前記フッ素樹脂Aは、前記フッ素樹脂Aの325℃×2.16kg荷重下でのMFR/前記樹脂Bの325℃×2.16kg荷重下でのMFR=0.2~10を満たす樹脂であり、
前記フッ素樹脂Aと前記樹脂Bとの体積比(フッ素樹脂A/樹脂B)が45/55以下である組成物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂Aの325℃×2.16kg荷重下でのMFRが30g/10分以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂Aが、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記樹脂Bが、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
前記フッ素樹脂Aの含有量が10体積%以上である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記フッ素樹脂Aの分散粒子径が5.0μm以下である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項7】
添加剤を含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項8】
請求項1又は2記載の組成物を含む成形体。
【請求項9】
低誘電基板材料に用いられる請求項8記載の成形体。
【請求項10】
金属箔と、請求項9記載の成形体とを含む積層体。
【請求項11】
前記金属箔が銅である請求項10記載の積層体。
【請求項12】
(フッ素樹脂Aの325℃×2.16kg荷重下でのMFR)/(融点+8℃×2.16kg荷重下でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)の325℃×2.16kg荷重下でのMFR)を0.2~10に調整するMFR調整工程を経て、前記フッ素樹脂A及び前記樹脂Bを含む組成物を得る組成物の製造方法であって、
前記フッ素樹脂Aと前記樹脂Bとの体積比(フッ素樹脂A/樹脂B)が45/55以下である組成物の製造方法
【請求項13】
前記MFR調整工程では、重合、混練、又は、電離放射線の照射により、前記フッ素樹脂Aを得る請求項12記載の組成物の製造方法。