(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049388
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光学的欠陥が少なく、特に表面近傍の屈折力が低い板ガラス、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C03C 3/089 20060101AFI20240402BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20240402BHJP
C03B 18/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C03C3/089
C03C3/091
C03B18/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023166359
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】10 2022 125 049.0
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2022 129 719.5
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】522480388
【氏名又は名称】ショット テクニカル グラス ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Technical Glass Solutions GmbH
【住所又は居所原語表記】Otto-Schott-Str. 13, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユリアネ ブラント-スロヴィク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュミアディ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エーバル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュプレンガー
(72)【発明者】
【氏名】アーミン フォーグル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル マイスター
(72)【発明者】
【氏名】トミー シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ラインル
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB05
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
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4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM12
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光学的欠陥が少なく、特に表面近傍の屈折力が低い板ガラス、その製造方法およびその使用を提供する。
【解決手段】板ガラスであって、板ガラスは特に、ホウケイ酸ガラスを含み、少なくとも1.75mmでかつ最大で7mmの厚さDを有し、かつ上側および下側を含むものとする板ガラスにおいて、板ガラスの表面に対して平行な少なくとも1つの方向において、板ガラスに対して垂直に入射する光に対する500mm×500mmの正方形の領域Mb内での上側の屈折力と下側の屈折力との合計の大きさが、99.9%の分位数で0mdpt以上1.7mdpt未満であることを特徴とする板ガラス、その製造方法およびその使用に関する。
【選択図】
図7b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスであって、特に、熱間成形により成形され、有利にはフロート法により加工されたガラスリボンから個別化により得られた板ガラスであって、前記板ガラスは特に、ホウケイ酸ガラスを含み、少なくとも1.75mmでかつ最大で7mmの厚さDを有し、かつ上側および下側を含むものとする板ガラスにおいて、前記板ガラスの表面に対して平行な少なくとも1つの方向において、前記板ガラスに対して垂直に入射する光に対する500mm×500mmの正方形の領域Mb内での前記上側の屈折力と前記下側の屈折力との合計の大きさが、99.9%の分位数で0mdpt以上1.7mdpt未満であることを特徴とする、板ガラス。
【請求項2】
前記屈折力が、前記板ガラスの前記上側の表面と、前記下側の表面とで測定されており、したがって、熱間成形時のフロート法において前記板ガラスの錫浴とは反対側の表面と、前記板ガラスの錫浴に面する側の表面とで測定されている、請求項1記載の板ガラス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの方向が、前記板ガラスの前記熱間成形時に用いられる延伸方向に相当する、請求項1または2記載の板ガラス。
【請求項4】
重量%で以下の成分:
SiO2 70~87、好ましくは75~85
B2O3 5~25、好ましくは7~14
Al2O3 0~5、好ましくは1~4
Na2O 0.5~9、好ましくは0.5~6.5
K2O 0~3、好ましくは0.3~2.5、特に好ましくは0.3~2
CaO 0~3
MgO 0~2
を含むホウケイ酸ガラスを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の板ガラス。
【請求項5】
前記板ガラスが、フロート板ガラスである、請求項1から4までのいずれか1項記載の板ガラス。
【請求項6】
板ガラスの製造方法、特に、板ガラス、特に請求項1から5までのいずれか1項記載の板ガラスを連続的に製造する方法であって、前記方法は、
- ガラス原料を含むバッチを提供する工程と、
- 前記バッチを溶融してガラス融液を得る工程と、
- 前記ガラス融液の粘度を調整する工程と、
- 前記ガラス融液を、熱間成形装置、特にフロート法による熱間成形装置に移送して、ガラスリボンを形成する工程と、
- 前記熱間成形されたガラスリボンを個別化して板ガラスを得る工程と
を含み、
前記熱間成形装置内の粘度は、前記ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での前記粘度の常用対数lg(ηA/dPa・s)と、前記熱間成形の終点での前記粘度の常用対数lg(ηE/dPa・s)との合計が、少なくとも11.4でかつ最大で11.8となるように調整されている、方法。
【請求項7】
板ガラスの製造方法、特に、板ガラス、特に請求項1から5までのいずれか1項記載の板ガラスを連続的に製造する方法であって、特に請求項6記載の方法の特徴を有する方法において、前記ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の前記流量制御用部材からの距離での、特に延伸方向で前記流量制御用部材の下流に約1.5mの距離での、特に第2のフロート浴セクションの始点での前記粘度の前記常用対数lg(ηA/dPa・s)が、少なくとも5.0、特に好ましくは少なくとも5.1でかつ5.25未満であり、かつ前記熱間成形の終点での、特に延伸方向で前記流量制御用部材の下流に約10.5m~11.1mの距離での、特に第4のフロート浴セクションの始点での前記常用対数lg(ηE/dPa・s)が、少なくとも6.2、有利には少なくとも6.3、特に好ましくは少なくとも6.35であり、好ましい上限が、最大で6.5である、方法。
【請求項8】
前記熱間成形を、フロート法により行う、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの方向を、前記板ガラスまたは前記板ガラスの包装材に表示する、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から5までのいずれか1項記載の板ガラスであって、有利には請求項8または9記載の方法により製造されたまたは製造可能である、板ガラス。
【請求項11】
電子機器における、特にディスプレイ設備または表示設備のカバーガラスとしての、請求項1から5までのいずれか1項または請求項10記載の板ガラスの使用。
【請求項12】
グレージングとしての、特に建造物の建築用グレージングとしての、請求項1から5までのいずれか1項または請求項10記載の板ガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、板ガラス、有利には光学的欠陥が少なく、特に表面近傍の屈折力が低い板ガラス、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
発明の背景
板ガラスは、例えば車両のウインドウにおいて、建築用途で、または電子機器のカバー(いわゆるディスプレイ用ガラス)として、様々な用途に使用することができる。
【0003】
例えば独国特許発明第102007025687号明細書には、ホウケイ酸ガラスの板ガラス製表示装置への使用、およびそのように装備された板ガラス製表示装置が記載されている。
【0004】
国際公開第2018/114956号には、薄板ガラス基材、ならびにその製造方法および製造装置が記載されている。薄板ガラス基材の製造方法では、ガラスの粘度が狙いどおりに調整される。国際公開第2019/076492号には、薄板ガラス基材、特にホウケイ酸ガラスの薄板ガラス基材、ならびにその製造方法および製造装置が記載されており、この場合にも、製造方法でガラスの粘度が狙いどおりに調整される。両出願とも、熱間成形時に延伸方向に形成される細長い延伸条痕を低減する方法を開示しており、この延伸方向に対して横方向の測定値を示している。
【0005】
最後に、独国特許出願公開第102020104973号明細書には、車両のウインドウ用ガラス基材、特に車両のフロントウインドウ用ガラス基材が記載されている。このために、ガラスのエージング速度が狙いどおりに調整される。
【0006】
しかし、先行技術の板ガラスは、依然としてかなり顕著な、特にレンズのような光学的欠陥を有しており、このような光学的欠陥は、例えば、延伸方向に生じる、先行技術によってまだ検出されていない表面近傍の屈折力に起因し得る。しかし、このことは、このようなウインドウを特にディスプレイ設備に応用する上で不利となり得る。
【0007】
したがって、例えば表面近傍の屈折力のような光学的欠陥を低減することのできる板ガラスの製造方法、ならびに有利には光学的欠陥が少なく、特に延伸方向に生じる表面近傍の屈折力が低い板ガラスが必要とされている。ここで、延伸方向とは、熱間成形されるガラスが熱間成形時に最も強度に伸ばされる方向であると理解される。
【0008】
本発明の課題
本発明の一態様は、先行技術の上述の欠点を少なくとも部分的に緩和する板ガラスを提供することである。さらなる一態様は、該板ガラスの製造方法および該板ガラスの使用を提供することである。
【0009】
発明の概要
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。好ましい特定の実施形態は、本開示の従属請求項、明細書および図面に示されている。
【0010】
特に本開示において考察されるような板ガラス、したがって実質的に平行な主面を有する熱間成形法によって得られる板ガラスでは、そこを通過する光の光路の偏向が生じる場合があり、この偏向によって、この光の少なくとも一部がその伝播方向を変更する。この偏向は、板ガラスの表面が、理想的に平坦な表面から逸脱することによって生じる場合があり、その結果、例えば光が板ガラスに対して傾斜した状態で板ガラスを通過する場合など、理想的な場合のように、この光の、その伝播方向に対して垂直な光路が単に平行にオフセットされるだけでなく、様々なタイプの光路の偏向が生じることがある。
【0011】
板ガラスが少なくとも一方向に空間的に延在する隆起部を有している場合、これによりレンズのような屈折力が生じることがあり、板ガラス越しに見たときに、この屈折力によって板ガラスの後ろにある物体の像が変化し、特に歪むことがある。こうした像を変化させる光路の乱れは、ここでは光学的な障害とも呼ばれ、板ガラスの表面の屈折力として検出することができる。このような歪みは例えば、板ガラスを例えばカバーガラスとして使用したディスプレイ装置や表示装置を見た場合に特に支障をきたしかねない。
【0012】
本発明の一態様により特に、こうした像を変化させる構造が、板ガラスの表面の少なくとも一方において、しかし好ましくは板ガラスの上側の表面と板ガラスの下側の表面との双方において、緩和される。
【0013】
本発明により、光学的欠陥を、板ガラスの熱間成形時の時点ですでに、板ガラスのその後の表面加工を必要とすることなく直接的に低減することが驚くほど効果的に可能となった。したがって、本明細書において示された3つのデータは、熱間成形した板ガラスを個別化した後のものについてのデータであるが、ただしこの板ガラスには、熱間成形時にも熱間成形後にも、熱間成形以外の表面加工が施されていない。ここで、表面加工という用語には、表面の平滑化や表面の隆起または窪みの低減に特に適した機械的、化学的および熱的な表面加工に加え、例えば熱強化や化学強化など、被加工表面の強度の向上に適した圧縮応力および/または引張応力の発生工程も含まれる。
【0014】
光学的屈折力は、光学的欠陥を招きかねないビームまたは波面形成特性を有し、本明細書では表面近傍の屈折力ともみなされる。したがって、表面近傍の屈折力という用語は、表面の形状によって生じる屈折力を指すものであって、屈折率変化を指すものではなく、ここで、屈折率変化も同様に、例えば、板ガラスのそれぞれのガラスの組成の不均一性によっても板ガラス内で引き起こされることがある。このような表面近傍の屈折力は、例えば高解像度の表示設備のような所定の用途での板ガラスの使い勝手を損ねたり、さらにはその解像力を低下させたりすることさえある。しかし、さらなる開示において、略称として単に屈折力という用語が使用される場合、この用語は同様にそれぞれ表面近傍の屈折力をも指す。しかし、本明細書に開示された板ガラスにおいて、それぞれの板ガラスのガラスの不均一性や反り、特にくさび形の反りによっても引き起こされる屈折力は非常にわずかであったため、この屈折力は、実際に測定された表面近傍の屈折力には実質的には影響を及ぼさなかった。
【0015】
このような表面近傍の屈折力は、例えば純粋に光学的な測定により記録することができる。このために、当業界で慣用されているようにISRA VISION LABSCAN-SCREEN 2D測定システムの「水平歪み」測定設定を用いた。
【0016】
この測定には、熱間成形時に用いられる延伸方向に対して平行にそれぞれ1列ずつ記録されるデータが含まれており、その際、各測定列は、延伸方向に対して平行に延びていた。表面近傍の屈折力の測定を傾斜角で実施した場合、その場合に記録した測定値を、入射光の垂直方向に対して換算し、相応してこの入射光の垂直方向に対しても示した。この場合、測定データに対して4/5/0(角度/屈折力/示差長/)のフィルタを使用し、その際、それぞれ板ガラスの2つの表面、したがって上側の屈折力と下側の屈折力との合計を、55°の傾斜角で記録した。この際に得られた測定値のグラフを、例えば、
図6、
図7aおよび
図7bならびに
図8から得ることができる。
【0017】
本発明は、板ガラス、特に、少なくとも1.75mmでかつ最大で7mmの厚さを有する、ホウケイ酸ガラスを含むまたはホウケイ酸ガラスから構成される板ガラスに関する。板ガラスは、上側および下側を含み、これらはそれぞれ板ガラスの1つの表面を画定しており、これらの表面は、互いに実質的に平行に延在している。
【0018】
本発明の一態様によれば、板ガラスであって、特に、熱間成形により成形され、有利にはフロート法により加工されたガラスリボンから個別化により得られた板ガラスが提供され、該板ガラスは特に、ホウケイ酸ガラスを含み、少なくとも1.75mmでかつ最大で7mmの厚さDを有し、かつ上側および下側を含み、該板ガラスは、板ガラスの表面に対して平行な少なくとも1つの方向において、板ガラスに対して垂直に入射する光に対する500mm×500mmの正方形の領域Mb内での上側の屈折力と下側の屈折力との合計の大きさが、99.9%の分位数で0mdpt~1.7mdptであることを特徴とする。
【0019】
前述の少なくとも1つの方向はそれぞれ、
図1~
図4に示す直交直線座標系のY方向に対応し、したがって、熱間成形で用いられる延伸方向Yに対して平行に延びており、それぞれ流量制御用部材であるツイールまたは調整弁からの距離も示されており、ここで、
図5に示すように、フロート浴に面するツイールまたは調整弁の面は、延伸方向Yで0mの距離にあり、したがって、X方向に関してフロート浴の中心Miについてそれぞれ示される距離データの出発点を示す。
【0020】
板ガラスの可能な限り容易なさらなる加工を保証するために、この少なくとも1つの方向を、板ガラスまたは板ガラスの包装材に表示することができる。また、この少なくとも1つの方向を、この少なくとも1つの方向の各表示とは無関係に、特に「延伸方向」という表示とは無関係に、表面近傍の屈折力が最も低いそれぞれの方向を測定することによって決定することもできる。
【0021】
したがって、換言すれば、本開示によれば、特に表面近傍の光学的屈折力によって引き起こされ得る光学的欠陥が特に少ない板ガラスが提供される。
【0022】
このようなことは、従来知られていなかった。しかし、本出願による板ガラスの表面近傍の低い屈折力は、例えば板ガラスをカバーガラスとして使用することができる電子機器およびディスプレイにおける板ガラスの用途にまさに特に有利である。本願発明による板ガラスは、グレージング、特に建築用グレージングとしての用途にも有利に適している。
【0023】
さらに、板ガラスが重量%で以下の成分を含むホウケイ酸ガラスを含む場合には、特に板ガラスの耐擦傷性および耐薬品性に関して有利である:
SiO2 70~87、好ましくは75~85
B2O3 5~25、好ましくは7~14
Al2O3 0~5、好ましくは1~4
Na2O 0.5~9、好ましくは0.5~6.5
K2O 0~3、好ましくは0.3~2.0
CaO 0~3
MgO 0~2。
【0024】
このようなホウケイ酸ガラスを用いることで、特に優れた耐擦傷性および耐薬品性が実現される。また、このようにして、熱膨張係数の低いガラスを得ることも可能である。20℃~300℃の範囲における線熱膨張係数は、有利には5×10-6/K未満であるが、好ましくは少なくとも3.0×10-6/Kである。
【0025】
特に好ましくは、一実施形態によれば、板ガラスは、フロート板ガラスとして形成されている。このようにして、板ガラスの片側の少なくとも1つの表面の表面近傍の低い屈折力を提供することができ、一方で、本明細書においてさらに、それぞれ板ガラスの互いに実質的に平行に延在する2つの表面の屈折力の合計が与えられる。
【0026】
それに応じて、屈折力を、板ガラスの上側の表面と下側の表面とで測定し、したがって、熱間成形時のフロート法において板ガラスの錫浴とは反対側の表面と、板ガラスの錫浴に面する側の表面とで測定した。
【0027】
有利には、このような板ガラスは、本開示のさらなる一態様による方法で製造することができる。したがって、本開示はまた、板ガラスの製造方法、特に、板ガラス、特に一実施形態による板ガラスを連続的に製造する方法であって、該方法は、
- ガラス原料を含むバッチを提供する工程と、
- バッチを溶融してガラス融液を得る工程と、
- ガラス融液の粘度を調整する工程と、
- ガラス融液を、熱間成形装置、特にフロート法による熱間成形装置に移送して、ガラスリボンを形成する工程と、
- 熱間成形されたガラスリボンを個別化して板ガラスを得る工程と
を含み、
熱間成形装置内の粘度は、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での常用対数lg(ηA/dPa・s)と、熱間成形の終点での常用対数lg(ηE/dPa・s)との合計が、少なくとも11.4でかつ最大で11.8となるように調整されている、方法に関する。
【0028】
換言すれば、本開示による本方法は、ガラス融液の粘度が、いかなる場合にもガラスの所定の最低粘度を下回らないように調整されている工程を含む。それどころか、例えばガラスを熱間成形装置への移送前に狙いどおりに冷却することによって、粘度は狙いどおりに調整される。しかし、かなり高い粘度を、本方法の開始時にのみ狙いどおりに調整するのではなく、ここでは本プロセスの全体的な粘度を狙いどおりに調整することが有利であり、その好適な指標となるのが、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での、板ガラスに含まれるガラスのガラス粘度ηの常用対数と、熱間成形の終点での、板ガラスに含まれるガラスのガラス粘度ηの常用対数との合計である。このために、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度ηAの常用対数、したがってlg(ηA/dPa・s)と、熱間成形の終点での粘度ηEの常用対数、したがってlg(ηE/dPa・s)とを求め、これらの値の合計は、本方法によれば上記の限度内、すなわち少なくとも11.4でかつ最大で11.8にある。この合計において、粘度ηAの対数値とηEの対数値とが足し合わせられるため、lg(ηA/dPa・s)+lg(ηE/dPa・s)が得られ、これはまた、これらの粘度値の積の常用対数に相当し、すなわち、lg(ηA/dPa・s)+lg(ηE/dPa・s)=lg(ηA/dPa・s×ηE/dPa・s)である。本開示において、例えば添付図の凡例にあるように、粘度値ηAおよびηEまたは粘度値全般の積について言及する場合、それぞれ、各常用対数の和も開示されているものとする。
【0029】
従来は、熱間成形の開始時に粘度をある値に調整し、またこの値をかなり低く選択することが知られていた。しかし、こうした方法では、表面近傍の、依然として著しい屈折力が得られることが判明した。このことは、特に表面特性についてより詳細に検討した場合に、特に、本明細書に開示される表面近傍の屈折力を、特に熱間成形時に用いられる延伸方向でのまたはそれに対して平行な屈折力について検討した場合に明らかとなる。
【0030】
ここで、このようにして、生じ得る表面の不均一性を熱間成形プロセス自体で流動によって補償することができる、低粘度の液体が存在すると考えられていた。
【0031】
しかし、驚くべきことに、これは事実ではないことが判明した。そうではなく、最初に粘度を狙いどおりに高く調整すると、特に低い屈折力の形成に驚くほどはるかに有利であると考えられる。この背景となる機序は、まだ完全には解明されていない。
【0032】
しかしさらに、粘度を注意深くモニタリングすること、そしてそれに対応する形で温度制御を行うことが、この方法において極めて有利である。また、初期粘度を狙いどおりに高くするだけでは、表面近傍の良好な、すなわち低い屈折力を達成できないことも判明した。そうではなく、成形プロセスにおける全体的な粘度を考慮することが重要である。したがって、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での常用対数と、熱間成形の終点での常用対数との合計が、その指標となることが判明した。本方法によれば、粘度は、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度の常用対数と、熱間成形の終点での粘度の常用対数との合計が少なくとも11.4でかつ最大で11.8となるように調節される。
【0033】
ここで、「ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離」および熱間成形の「終点」とは、まずは、本方法の空間的な区切りであると理解される。ガラスの所定の厚さに調整される、厚さに関連する成形または成形区間Hsの始点は、最初のトップローラ12,42によって表され、このトップローラは、ベイ2またはフロート浴セクション2とも呼ばれる第2のフロート浴セクション28の始点に位置するが、ただし、流量制御用部材からは、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の距離とは異なる距離にある。最初のトップローラは、流量制御用部材であるツイールから流れ方向または延伸方向Yに約4.5mの距離にある。より正確には、ガラスが所定の厚さ変化を受ける、厚さに関連する熱間成形区間の始点は、トップローラ42の対称軸線50から出発して上部表面36、したがって熱間成形されるガラス8の上部主面48に向かう負のz方向の鉛直線52によって定められる。しかし、特に厚さに関連する所定の熱間成形は、熱間成形全体の一部に過ぎない。
【0034】
熱間成形区間の終点は、最後のトップローラ40,44によって定められ、このトップローラ40,44は、熱間成形されるガラスリボンに流れ方向または延伸方向に成形の影響を及ぼし、流量制御用部材であるツイール17から流れ方向または延伸方向Yに約10.5m~11.1mの距離にある。より正確には、熱間成形区間の終点は、最後の成形トップローラ44の対称軸線51から出発して上部表面、特に熱間成形されるガラス8の主面48に向かう負のz方向の鉛直線53によって定められる。前述のトップローラ12および42ならびに40および44は、例えば、添付の
図3および4からも明瞭に見て取ることができる。
【0035】
熱間成形されるガラスの下部表面または下部主面49は、熱間成形時にフロート浴7上に載る。
【0036】
有利には、一実施形態によれば、粘度は、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での、したがって、特に延伸方向Yで流量制御用部材であるツイールから1.5mの距離での、特に第2のフロート浴セクション(またはフロート浴セクション2)の始点での粘度の常用対数が、少なくとも5.0、特に好ましくは少なくとも5.1でかつ有利には5.25未満であり、かつ有利には、熱間成形の終点での、特に延伸方向で流量制御用部材であるツイールの下流に約10.5m~11.1mの距離での、特に第4のフロート浴セクションの始点での常用対数が、少なくとも6.2、有利には少なくとも6.3、特に好ましくは少なくとも6.35であり、好ましい上限が最大で6.5となるように調整されている。
【0037】
本発明者らは、これまでの想定に反して、特に比較的低温の熱間成形を特にすでに初期の段階で行うことによって、光学的屈折力を特に低下させることができるという見解を有している。これまでは、特にガラス製造ユニットのうちガラス質材料が溶融ユニットから熱間成形領域に移送される領域では、特に温間モードが表面近傍の屈折力の低減に有利であると想定されていた。
【0038】
実際に、いわゆる「ホットモード」、すなわち、熱間成形プロセスの開始時の粘度が低く、例えば105.0dPa・sよりかなり低いモードによって、実質的にフロートガラスの延伸方向に発生する筋目とも呼ばれる細長く延びる隆起部を低減できることが判明した。これらの筋目は、ほとんど延伸方向に延びる円筒レンズ様の構造を形成し、その場合、その屈折力は、延伸方向に対して実質的に垂直に顕著になる。しかし、これらの筋目、すなわち、延伸方向に延びるガラスリボンの、延伸方向に対して横方向に発生する厚み変化は、本明細書で取り上げる表面近傍の屈折力の原因ではないことが判明した。そうではなく、筋目の形成と重なっており、かつ単に筋目の形成を抑制する対策では実質的に影響を受けない、他の現象が存在する。
【0039】
この考察において、驚くべきことに、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離でのガラス質の粘度を狙いどおりに低く、つまり例えば10
5.0dPa・sを下回るように調整する方法では、得られるガラスリボンの筋目は確かに少なくはなるが、他の表面構造、特に、延伸方向に延びる屈折力を発生させる延伸方向に生じる表面構造がより頻繁に出現し得ることが判明した。これは、(いわゆる筋目の場合のように)延伸方向に対して平行に増減するのではなく、ヒョウの毛皮や「ゆず肌」を思わせる不規則な構造を形成する小面積の構造である。このような構造は、例示的に
図7aおよび
図7bに示されており、これらの構造から生じる表面近傍の屈折力が、本発明による板ガラスおよび従来の板ガラスについて、上側と下側との双方の屈折力の合計として示されている。本発明により、例示的に
図7bの図からもわかるように、このような構造、ひいてはこれらの構造により発生する表面近傍の屈折力を大幅に低減することが可能となった。この測定領域Mbの表示が、
図7aおよび
図7bのそれぞれの上側の図において正方形でない場合、これは単にY方向における撮像スケールの変更によるものであり、これは
図7aおよび
図7bのそれぞれの下側の図において実質的に修正されているが、実際の測定領域Mbからの逸脱を表すものではない。
【0040】
このようにして製造されたガラスリボンあるいは板ガラス(個別化後)の表面状態を全体的にさらに向上させるために結果的に重要であるのは、従来考えられていたような、熱間成形の開始時の粘度の調整だけではない。そうではなく、熱間成形時の全体的な粘度を考慮することが特に有利である。ここで、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度の常用対数と、熱間成形の終点での粘度の常用対数との合計が、本方法を評価するための優れた指標であることが判明した。ここで、本プロセスを評価するための簡単な指標として、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度の常用対数と、熱間成形の終点での粘度の常用対数との合計を用いることができる。本方法によれば、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度の常用対数と、熱間成形の終点での粘度の常用対数との合計は、少なくとも11.4でかつ最大で11.8である。
【0041】
したがって有利には、熱間成形の終点での、特に、熱間成形されるガラスの流れの流量制御用部材から約10.5m~11.1mの距離にある第4のフロート浴セクションの始点での粘度の常用対数は、少なくとも6.2、有利には少なくとも6.3、特に好ましくは少なくとも6.35であり、好ましい上限は、最大で6.5である。熱間成形におけるこの箇所では、つまり例えば第4のフロート浴セクションの終点では、ガラスリボンは、もはや熱間成形工程において以前ほどには収縮しないため、そこではいわゆるエッジローラまたはトップローラによって、主に延伸方向に延伸され、ガラスリボンが低温であればあるほど、より強く延伸される。
【0042】
このことは、確かに原理的には正しいが、たとえ、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での、特に流量制御用部材の上流での、および/または第1のフロート浴セクションの始点でのガラスリボンの粘度がすでに、少なくとも5.0、特に好ましくは少なくとも5.1でかつ5.25未満であったとしても、トップローラ、特にまた最後のトップローラの強い延伸が必要であることが判明した。その場合、この箇所で有利には延伸方向の延伸が加えられる。しかし、トップローラは有利には、熱間成形の中央に、外側に向かって15°までの角度で存在する。成形の終点での高粘度により、例えば冷却トラックローラの延伸によってもガラスリボンが狭まる(収縮する)ことが防止される。
【0043】
一般に、これまでは、ガラス製造での少なくとも熱間成形の始点での「冷間」モードは、好ましくないと考えられてきた。その理由は、その場合、それによって、製造プロセス、特に熱間成形プロセスを全体的により綿密に監視する必要があるだけでなく、こうした方法では比較的低い流量しか得られないためである。
【0044】
このような方法、特に連続方法ではガラスリボンが得られ、冷却炉を出た後にこれをさらに加工することができる。特にここでは、このガラスリボンを次いで板ガラスに個別化することが可能である。
【0045】
有利なことに、一実施形態によれば、本開示による方法は、流量が、ガラス400トン未満/日、有利にはガラス200トン未満/日、特に好ましくはガラス100トン未満/日となるように設計されたプラントで実施することができる。
【0046】
これは、本方法が、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での位置から「低温」、すなわち比較的高粘度の状態で運転されるだけでなく、熱間成形の終点での粘度も非常に所定どおりに調整されることによるものである。説明したように、このことは、表面近傍の屈折力を特に低く調整するのに非常に有利である。熱間成形プロセスの温度は、総じて加熱ユニットを用いて調整される。しかし、特に低温で運転される場合には、ガラス質材料自体も熱を輸送することを考慮しなければならない。したがって、ある一定の流量を超えると、流量のさらなる向上とともに、例えば送風機などの特別な冷却装置を用いてガラス質材料自体から熱を取り出すことが必要になる場合がある。これは、装置の追加とそれに伴うコストアップを意味するだけでなく、これによって、ガラス質材料やガラスリボンに、例えば熱応力などのさらなる特性が生じることにもなりかねない。
【0047】
しかし、例えば上記に示したように流量が制限されている場合には、例えばそれぞれのフロート浴セクションの錫浴の温度の調整によってガラス質材料自体が輸送する熱を放散させることが、より容易に可能である。したがって、流量がかなり低いユニットにおける方法制御は、特に本明細書に開示された方法がこうした方法制御に用いられる場合には、表面近傍の屈折力が有利に低い板ガラスを製造するのに特に適している。
【0048】
ガラス融液の粘度の調整は、熱間成形装置への移送前に、リップタイル(またはスパウト)の上流またはリップタイルの位置でも行われると有利である。
【0049】
実施例
特に有利には、記載した方法により、ホウケイ酸ガラスから構成されるまたはホウケイ酸ガラスを含む板ガラスを製造することができる。例示的な組成は、酸化物ベースでの重量%で与えられる以下の組成範囲であってよい:
SiO2 70~87、好ましくは75~85
B2O3 5~25、好ましくは7~14
Al2O3 0~5、好ましくは1~4
Na2O 0.5~9、好ましくは0.5~6.5
K2O 0~3、好ましくは0.3~2.0
CaO 0~3
MgO 0~2。
【0050】
特に、板ガラスのガラスは、酸化物ベースでの重量%で以下の成分を含むことができる:
SiO2 70~86
Al2O3 0~5
B2O3 9~25
Na2O 0.5~5
K2O 0~1。
【0051】
さらに、板ガラスのガラスは、重量%で以下の成分を含むことができる:
SiO2 77~80
Al2O3 2~5
B2O3 9~11
Na2O 2.6~5.2
K2O 0.5~2.5
MgO 0~2
CaO 1.2~2.7。
【0052】
図面の説明
本発明につき、添付図面をもとに、好ましいおよび特に好ましい実施形態例を参照して、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】板ガラスを製造するための、および本明細書に開示された方法を実施するための装置の概略断面図であり、この図において、この切断面は、装置のほぼ中心を通って垂直に延在している。
【
図2】
図1を大幅に簡略化した形の概略断面図であり、
図4に示す部分には、切断面AおよびBが付されている。
【
図3】
図1および
図2に示す板ガラスの製造装置の一部、特にフロート浴で熱間成形されるガラスリボンの概略上面図であり、簡略化のために、使用されるすべてのトップローラの一部のみが例示的に示されている。
【
図4】
図1および
図2に示す板ガラスの製造装置の一部を、切断面Aと切断面Bとの間に延在する部分の形で斜め上方から見た上面図である。
【
図5】本明細書に開示された粘度推移の例示的なグラフであり、このグラフにおいて特に、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度値η
A、および熱間成形セクションの終点、すなわち鉛直線53の位置での粘度値η
Eをも読み取ることができる。
【
図6】本明細書に開示された方法によって製造された板ガラスの、熱間成形時の錫浴とは反対側の上部表面の上面図であり、55°の傾斜角で測定される表面近傍の屈折力を求めるための、正確な縮尺によらずに単に例示のためにのみ示された測定領域Mbの、板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と下側の表面近傍の屈折力との合計を示す図である。
【
図7a】従来の板ガラスについて、測定領域Mb内の板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と下側の表面近傍の屈折力との合計(単位:mdpt)を、それぞれ55°の傾斜角で測定された、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離でのそれぞれのガラスの粘度η
Aの常用対数、つまりlg(η
A/dPa・s)と、熱間成形の終点での粘度η
Eの常用対数、つまりlg(η
E/dPa・s)との合計の本発明による値に対して示す図である。
【
図7b】本明細書に開示された方法によって製造された板ガラスについて、測定領域Mb内の板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と下側の表面近傍の屈折力との合計(単位:mdpt)を、それぞれ55°の傾斜角で測定された、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離でのそれぞれのガラスの粘度η
Aの常用対数、つまりlg(η
A/dPa・s)と、熱間成形の終点での粘度η
Eの常用対数、つまりlg(η
E/dPa・s)との合計の本発明による値に対して示す図である。
【
図8】従来の板ガラス、および本明細書に開示された方法によって製造された板ガラスの、測定領域Mb内の板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と下側の表面近傍の屈折力との合計の99.9%分位数(単位:mdpt)を、55°の傾斜角で測定された粘度η
Aの常用対数、すなわちlg(η
A/dPa・s)と粘度η
Eの常用対数、すなわちlg(η
E/dPa・s)との合計の値の関数として示す図である。
【
図9】特に板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と下側の表面近傍の屈折力との合計を測定するときに生じるような傾斜による光学効果の増大を示すグラフである。
【
図10】ISRA VISION LABSCAN-SCREEN 2D測定機器から得られたフィルタリングされていない生データをフィルタリングするために使用された18次バターワース型ローパスフィルタのフィルタ応答、ひいては増大係数を、フィルタリング前に、傾斜した板ガラスについて得られたデータから傾斜していないガラスに換算して、Y方向または延伸方向の生データの周期または波長の関数として示す図である。
【0054】
好ましい実施形態の詳細な説明
好ましいおよび特に好ましい実施形態の以下の説明において、異なる図面中の同一の参照符号は、本明細書にそれぞれ開示された装置の同一または同一作用の構成要素を示す。
【0055】
板ガラス33の厚さDに関するデータは、熱間成形後の板ガラス33の2つの主面、すなわち上側34と下側35との間の距離に対応し、
図4に例として示すように、それぞれこれらの主面に対して垂直に測定される。
【0056】
本明細書に開示された方法を実施するための
図1、
図2および
図3に示されたフロートプラントは、溶融槽とも呼ばれる溶解炉2を備え、この溶解炉2に、溶融されるバッチ、特にガラスバッチ3が公知の方法で供給され、所望の組成のガラス融液5が形成されるまでバーナー4によって加熱される。ガラス融液を均質化するためのさらなる設備は、当業者に知られており、したがって詳細には説明しない。
【0057】
流路6を通じて、ガラス融液5の溶融ガラスは、一般に重力の作用下で、液体錫を含むフロート浴7に達し、このフロート浴7上で、熱間成形されるガラス8は、その熱間成形の一部として重力の作用下にその高さを減少させながら横方向に広がることができる。
【0058】
熱間成形されるガラスの温度を調整するために、錫浴7は、熱間成形されるガラスの温度調整が可能な電気式上部ヒーター10を備えたフロート浴炉9内に配置されていてよい。さらに、錫浴7の温度は、延伸方向に所定どおりに調整することができ、このようにして、熱間成形されるガラスの温度、ひいてはその粘度に所定どおりに影響を与えることができる。
【0059】
溶融槽2を出る際に、熱間成形される溶融ガラス8は、リップタイルまたはスパウトとも呼ばれる下方に傾斜した入口リップ11を通じて錫浴7上に導かれ、この入口リップ11上で溶融ガラス8はすでに広がり始める。流量制御用部材から1.5mの距離で、したがってX方向でのガラスリボン13の中心MiにおいてY方向に1.5mの距離で、ガラスリボン13はその最大の幅を有し、これはX方向におけるその最大の広がりを意味する。開示された実施形態では、この距離は約1.5mであり、例えば
図4では参照符号56で示されている。延伸設備としてのローラ状のトップローラ12により、錫浴7上に形成されるガラスリボン13は、側方からこちら側へ広がる動きで、そのさらなる移動において所定どおりに影響を受ける。
図1では、例として3つのトップローラのみが示されているが、例えば
図3および
図4からも見て取れるように、必要に応じてこれらのトップローラは3つ以上存在し、使用することができる。
【0060】
トップローラとは、本分野の当業者には周知の実質的にローラ状の物体をいい、その外側の環状肩部が、熱間成形されるガラス8の錫浴とは反対側の主面またはその上側表面48と接触し、それぞれその長手または対称軸線50,51を中心とする回転運動によって、それぞれ熱間成形されるガラス8に力を加える。この対称軸線50,51は、トップローラ42,44についての例としてのみ示されている。本開示において、トップローラという用語は、熱間成形されるガラスの実質的にローラ状の搬送装置であると理解することもできる。ここで、最初のトップローラ12,42は、特に、厚さに関連する所定の熱間成形区間のセクションHsの始点での、熱間成形されるガラスの実質的にローラ状の搬送装置を表し、最後のトップローラ40,44は、熱間成形区間のセクションHsの終点での、熱間成形されるガラスの実質的にローラ状の搬送装置を表す。この厚さに関連する熱間成形区間Hsの過程でガラスリボン13の厚さが所定どおりに調整されるが、この熱間成形区間Hsは、すべての熱間成形措置を含むものではなく、なぜならば、ガラスリボン13の熱間成形されるガラス8の成形は、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離56から区間Hsの始点までに、すでに行われているためである。
【0061】
熱間成形されるガラス8は、各トップローラの外側の環状肩部と接触する該ガラス8の部分によって、所定どおりに動かされる。トップローラは、それぞれ実質的にロッド状の軸で、モーター制御可能な方法で所定どおりに駆動される。
【0062】
本開示において、特にガラス8の流れ方向Yにおけるトップローラの位置または配置とはそれぞれ、対応するトップローラ42,44のそれぞれの対称軸線50,51から出発して、熱間成形されるガラス8の表面、特に主面48に向かう負のz方向の鉛直線52,53であると理解される。
【0063】
それぞれの最初のトップローラ12,42の配置または位置は、ガラス8の厚さに関連するガラス8の熱間成形セクションHsへのガラス8の入口を定めるものである。
【0064】
それぞれの最後のトップローラ40,44の配置または位置は、ガラス8の厚さに関連する熱間成形の、したがってガラス8の全体的な熱間成形セクションHsからのガラス8の出口を定めるものである。
【0065】
簡略化のため、本開示では、最初のトップローラへの言及はそれぞれ、流れ方向において同一の位置にある一対のトップローラ、例えばトップローラ42,12を表し、最後のトップローラへの言及はそれぞれ、流れ方向またはY方向においてそれぞれ同一の位置にある一対のトップローラ、例えばトップローラ44,40を表す。
【0066】
したがって、厚さに関連する熱間成形セクションHsへのガラス8の入口の位置は、破線54によって示され、一方で、熱間成形セクションHsからのガラス8の出口の位置は、破線55によって示される。
【0067】
別の破線は、熱間成形されるガラス8がフロート浴7に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの位置または距離56を示す。
【0068】
本開示において、厚さに関連する熱間成形セクションHsの長さHslは、最初のトップローラ42の鉛直線52と最後のトップローラ44の鉛直線53との間の流れ方向またはY方向での距離であると理解される。
【0069】
熱間成形後、ガラスリボン13は、必要に応じて冷却炉14に移送され、冷却炉14は同様に、ガラスリボン13を所定の温度低下にさらすために電気式の上部および底部ヒーター15を備えることもできるが、
図1では、例として上部ヒーターのみが示されている。
【0070】
冷却炉14を出た後、ガラスリボン13は次いで、さらなる加工、特に板ガラス33への個別化に供される。
【0071】
以下の好ましい実施形態の説明において、例えば熱間成形されるガラスまたは熱間成形後に個別化された板ガラス33の様々な集合体または特性の空間的配置をより明確に表すことができるようにするために、まず、直交するX方向、Y方向およびZ方向を規定する
図1、
図2、
図3および
図4に示される直交直線座標系が参照され、以下の様々な図中のデータはすべて、この座標系を参照したものである。
【0072】
XおよびY方向は、水平に延び、したがって錫浴7の表面に対しても実質的に平行に延在する平面に広がっている。この平面に対して垂直に延びるように、Z方向は上方に延び、したがってガラスリボン13に対する法線方向をも定める。
【0073】
以下では
図1を参照するが、
図1は、ガラスリボン13の製造装置として、全体的に参照符号1を付したフロートプラントを含んでおり、このフロートプラントは、
図2、
図3および
図4を参照して説明したすべての設備または装置を備えており、ガラスリボン13から、本明細書に開示された板ガラス33を個別化することができる。
【0074】
溶融設備16として、ここでは、溶融槽または溶解炉2、ガラスバッチ3用供給設備およびバーナー4が含まれる。さらに、溶融槽2には、熱間成形される溶融ガラス8を錫浴7に移送するための流路6が設けられている。
【0075】
一例として、調整弁17、すなわちガラス流の流量制御用部材であって、ツイールとも呼ばれる部材が、流路6の下流に配置されている。流量制御用部材17を形成する調整弁またはツイール17を、参照符号17の隣に示された二重矢印の方向にずらすことによって、流路6の断面を狭めたり広げたりすることができ、それによって、単位時間当たりに溶融槽2から流出する、熱間成形される溶融ガラス8の量を制御し、特に所定どおりに調整することができる。さらに、溶融槽2とフロート浴炉9との間、特にツイール17の上流に、供給用の溝が配置されていてよく、この溝はこの場合、流路6を、特に
図1に示すのよりも長い距離にわたって形成する。流量制御のより詳細な説明は、同一出願人の独国特許出願公開第102013203624号明細書に示されており、これは参照により本出願の主題にもなる。
【0076】
熱間成形される溶融ガラス8の流れ方向で見て、熱間成形される溶融ガラス8の粘度を所定どおりに調整するための設備18が、流量制御用部材17の上流であって、かつリップタイルまたはスパウト11の上流に配置されている。
【0077】
この粘度を所定どおりに調整するための設備18は、チャンバ19を備えており、このチャンバ19は、溶融槽2から分離されているか、またはその一部を形成することもでき、このチャンバ19には、ガラス基材へと成形される溶融ガラス8が、その粘度を所定どおりに調整する目的で収容される。
【0078】
さらに、粘度を所定どおりに調整するための設備18は、流体が流れる領域20,21、特に水が流れる領域を含み、これらの領域は、熱間成形されるガラス8から熱を吸収し、金属管系として形成されていてよい。この金属管系は、熱吸収性をより良好にするために着色されていてもよいし、その表面に耐熱塗料が施されていてもよい。
【0079】
代替的にまたは付加的に、チャンバ19の壁22,23,24および25は、熱間成形されるガラス8から、例えばさらなる冷却設備によりその温度を所定どおりに調整することによって熱を吸収することもできる。
【0080】
チャンバ19の壁22,23,24および25は、溶融槽2から空間的に分離するように形成されていてもよいし、耐高温金属壁を有することもでき、それにより改良された熱放散が提供される。
【0081】
上述したように、粘度を所定どおりに調整するための設備18は、熱間成形されるガラス8の温度ひいては粘度をも所定どおりに調整することができる少なくとも1つの冷却設備を含む。
【0082】
被測定ガラスと接触せずに、そして代替的にまたは付加的に被測定ガラスと接触して直接的な温度測定を行うことは、当業者に知られている。対応するセンサは、例えば、本開示の範囲におけるセンサ設備またはユニット26と共に記載されている。
【0083】
センサ設備またはユニット26は、ガラスに直に接触することができ、したがって直接的な温度測定を行うこともできるし、熱間成形されるガラス8によって放出されたスペクトルを、放出された放射線のスペクトル自体および/または強度に基づいて検出することによって温度を検出する放射線測定設備を備えることもできる。
【0084】
装置1は、以下に詳細に説明する熱間成形設備または装置47を備えており、この熱間成形設備または装置47は、流れ方向または延伸方向で、粘度を所定どおりに調整するための設備18の下流に存在し、リップタイルまたはスパウト11を通じて、熱間成形されるガラス8を収容する。
【0085】
リップタイルまたはスパウト8は、熱間成形されるガラス8を、フロート浴炉9内に収容された錫浴7へと送る。
【0086】
流量制御用部材17からY方向にその中心に関して約2mの距離に、熱間成形されるガラス8の上方に、さらなる冷却設備57が配置されている。この冷却設備57は、融液上に突出しており、Y方向の幅が300mm、Z方向の高さが80mm、X方向の長さが2.5mであり、2つの部分で構成されていてよい。この場合、冷却設備57の一部は、それぞれX方向において対向する側から熱間成形されるガラス上に突出し、その結果、X方向およびY方向の一部の領域において、熱間成形されるガラス8を実質的に完全に覆う。
【0087】
冷却設備57は、熱間成形されるガラス8を上部ヒーター10から遮蔽するだけでなく、ガラス8の上方から来る冷却空気流をも生じさせ、これにより、冷却設備57の下に位置するガラス8を約20~25K冷却することが可能である。このようにして、例えば
図5にも示されているように、すでに初期の段階でガラス8の粘度が高い状態で、粘度曲線の全体的に平坦な推移が、延伸方向のさらなる推移において生成され得る。
【0088】
錫浴7上に形成されたガラスリボン13の上方には、
図3からも良好に見て取れるように、ガラスリボン13の機械的移動のために、トップローラ12の他にさらなるトップローラ38~44が配置されている。
【0089】
ここで、本発明の好ましい実施形態では、有利には10~12対のトップローラが使用されるため、
図3に示すトップローラの数は、単なる例示である。
【0090】
トップローラ41および38は、熱間成形の際に生じるガラスリボン13の幅Bgを調整する役割を果たすだけであり、任意であるが、それは、例えば熱間成形に供されるガラス8の量を制御するなど、他の方法で幅Bgを調整することもできるためである。
【0091】
図3からさらに、粘度を所定どおりに調整するための設備18の代替的または追加的な構成を見て取ることができる。溶融ガラス8は、
図3に図示されていない溶融槽2からフロート浴炉9に通じる流路6内に存在する。流路6の壁45,46は、耐高温金属、例えば白金から形成されており、これは鉱物系の耐火材料上の金属層として配置されていてもよい。これらの壁の温度を所定どおりに調整することにより、ガラス8から熱を取り出し、その温度および粘度を所定どおりに調整することもできる。また、この実施形態において、上述のセンサユニット26は、有利にはツイール17の近傍に配置されていてよい。
【0092】
上記では、熱間成形装置47に関して、フロート設備、特に錫浴7を有するフロート浴炉9を備えた延伸設備について説明した。
【0093】
例示的に、本明細書に開示された方法について、フロート法に基づいて以下に説明する。
【0094】
図4に、ガラスリボン13の製造装置1の、切断面Aと切断面Bとの間に延在する部分を示し、該装置は、ガラスリボン13から個別化される板ガラス33を得るためのものであり、ここでは、よりわかり易くするために、熱間成形されるガラス8と、錫浴として形成されているフロート浴7のみが示されている。
【0095】
ガラス8は、
図4の左側から来て、最初のトップローラ42,12に向かって進入速度で移動し、このトップローラ42,12で、本明細書に開示された厚さに関連した熱間成形が開始されてガラスリボン13が形成され、これは、ガラスリボン13から個別化される板ガラス33を得るためのものである。この速度は、最初のトップローラ42,12におけるガラス8の速度に相当する。ガラス8は、最後のトップローラ40,44の後に、したがって本明細書に記載されたその熱間成形によるガラスリボン13の形成後に流れ方向にさらに移動し、ここで、この熱間成形は、ガラスリボン13から個別化される、出口厚さDを有する板ガラス33に向けたものである。
【0096】
本開示において、省略して単に熱間成形としか記載されない場合、これは、言語的な簡略化のために、以下でより詳細に説明される熱間成形によるガラスリボン13の形成を指し、ここで、この熱間成形は、ガラスリボン13から、特にガラスリボン13の冷却後にガラスリボン13から個別化される板ガラス33を得るためのものであり、これには、厚さに関連する熱間成形区間のセクションHsに沿ったものも、例えばガラス8がフロート浴7に流し込まれる際など、最初のトップローラに達する前にすでに行われている可能性のあるさらなる熱間成形工程も該当し、ここで、フロート浴7ではガラスが面状に広がり、その平衡厚さDgを約7mm±1mmと想定することができる。
【0097】
熱間成形後、ガラス8は出口厚さDを有し、この出口厚さDは、最後のトップローラ40,44の後に想定される。
【0098】
ガラス8は、ガラスリボン13から個別化される板ガラス33を得るための、その全体の厚さに関連する熱間成形によるガラスリボン13の形成の際に、最初のトップローラ42,12と最後のトップローラ40,44との間、したがってセクションHsにおいて幅Bgを有し、したがってBgのx方向の広がりを有し、このBgの、この厚さに関連する熱間成形の際のx方向における変化は、有利には3%未満である。これは、各トップローラの対称軸線(回転軸線)に沿った回転速度および回転角度の調整によって保証することができる。ここで特に、対応するトップローラのそれぞれの対称軸線の角度は、これによって、熱間成形されるガラスの搬送時に、特に厚さに関連する熱間成形区間Hsに沿って、熱間成形されるガラス8またはガラスリボン13の一部のx方向への移動への寄与が多少なりとも生じるように変更することもできる。
【0099】
ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材17からの距離56において、特にこの位置におけるガラスリボン13の温度を調整することによって、粘度ηAは、これが、少なくとも5.0、特に好ましくは少なくとも5.1でかつ5.25未満のlg(ηA/dPa・s)の値を有するように調整される。
【0100】
熱間成形区間の終点で、粘度ηEは、特にこの位置におけるガラスリボン13の温度を調整することによって、これが、少なくとも6.2、有利には少なくとも6.3、特に好ましくは少なくとも6.35のlg(ηE/dPa・s)の値を有するように調整され、その際、好ましい上限は、最大でも6.5の値であると想定される。
【0101】
本発明によれば、熱間成形装置内の粘度は、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材17からの距離56での粘度の常用対数lg(ηA/dPa・s)と、熱間成形の終点での粘度の常用対数lg(ηE/dPa・s)との合計が少なくとも11.4でかつ最大で11.8ηdPa・sとなるように調整される。
【0102】
対応する粘度推移の例示的なグラフは、
図5から見て取ることができ、この
図5では特にまた、ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材17からの距離56での粘度値η
Aと、熱間成形区間の終点、したがって鉛直線53での粘度値η
Eとを見て取ることができる。
【0103】
図6からは、55°の測定角度で表面近傍の屈折力を求めるための、正確な縮尺によらずに単に例示のためにのみ示された測定領域Mbを有する、本明細書に開示された方法によって製造された板ガラス33の、熱間成形時の錫浴とは反対側の上部表面または上部主面48の上面図を見て取ることができる。この図からは、本明細書に開示された方法により達成可能な表面近傍の屈折力を、そのそれぞれの値とともに見て取ることができ、これについて、
図7を参照して以下にさらに詳細に説明する。この場合、測定領域Mbは、熱間成形されるガラスリボンのリボン中央をX方向に覆っているか、それに隣接しているか、またはそこから約200mm未満の距離にあった。
【0104】
板ガラスの表面上でZ方向に高さHの隆起z(x,y)を有する板ガラスの表面の光学的屈折力P(x,y)は、これを、屈折力測定の通常の様式で表面に対して垂直に入射する光に対して、それぞれ一定の値xでY方向に延びる直線に沿って求めた場合に得られる:
【数1】
ここで、
nは、測定される板ガラスの屈折率を表し、それぞれ測定された板ガラスにおいて1.471の値を有しており、
z’(y)およびz’’(y)は、Y方向、つまり延伸方向への延びz(y)の1次導関数および2次導関数を表し、
z(y)は、割り当てられた、特に固定されたxの値での、位置yにおけるz方向の延びである。
【0105】
したがって、板ガラスの屈折率nが既知であれば、形状測定法で得られた値z(x,y)も、原理的には屈折力、特に上に示したようなY方向での屈折力に換算することができる。しかし、上記の光学的屈折力の算出は、1つの表面のみを対象としているため、表面の幾何学的データから本明細書に開示された値を得るためには、両側の屈折力、すなわち板ガラスの上側の屈折力と下側の屈折力とを算出して足し合わせる必要がある。したがって、板ガラスの1つの表面の屈折力のデータも、板ガラスの1つの表面の構造の表示も、それぞれ測定された板ガラスの2つの表面を把握し、合計して表示するという本測定を反映することはできない。
【0106】
しかし、実際の測定には、フィルタ4/5/0(角度/屈折力/示差長/)を備えた光学測定システムISRA VISION LABSCAN-SCREEN 2Dが使用され、これを用いて、ガラスリボンから個別化された板ガラスの上側の屈折力と下側の屈折力とが同時に測定された。この測定には、熱間成形時に用いられる延伸方向にそれぞれ1列ずつ記録されるデータが含まれており、その際、各測定列は、延伸方向に延びていた。
【0107】
ただし、この屈折力を、ガラス表面に対して斜めに入射する光について求めると、屈折力は、下記式1にしたがって傾斜角Φの関数として増加する:
【数2】
【0108】
ここで、傾斜角Φ=55°により、測定された光学的屈折力の4.2倍の増大が生じ、それによって傾斜方向の観測精度が向上する。測定位置を、傾斜していない板ガラスに対して逆算したため、これは実際の板ガラスに対応する。つまり、板ガラスに対して垂直に入射する光に対しては、板ガラスの上側の屈折力に板ガラスの下側の屈折力を加えた力のみが作用し、この力は、4.2で除した値である。
【0109】
傾斜した板ガラスの測定は、例えば、板ガラスのゼブラ角を測定するための「フロートガラス」の光学的品質を決定する手順に関するDIN 52305またはEN 572-2から当業者に知られている。この規格に記載されているのと同様の方法で、板ガラスを板ガラスの上部表面の法線に対してα=55°の角度だけ傾斜させ、その際、板ガラスを、延伸方向に対して垂直な方向、すなわちX方向について傾斜させた。ここで、傾斜軸線、すなわちガラスの回転軸線は、板ガラスの延伸方向に対して垂直な面内にあり、これにより延伸方向のレンズ効果が増強される。
図7から、本発明の方法により製造された板ガラス33が、従来の板ガラスと比較して非常に低い屈折力しか有していないことが容易に見て取れる。ここで、それぞれ従来の板ガラスおよび本発明により製造された板ガラスの上側の表面の屈折力に、板ガラスの下側の表面の屈折力を足し合わせたものが示された。
【0110】
図8は、従来の板ガラス、および本明細書に開示された方法によって製造された板ガラスの、測定領域Mb内の板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と下側の表面近傍の屈折力との合計の99.9%分位数(単位:mdpt)を、55°の傾斜角での、それぞれガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での各ガラスの粘度η
Aの常用対数、すなわちlg(η
A/dPa・s)と、熱間成形の終点での粘度η
Eの常用対数、すなわちlg(η
E/dPa・s)との合計の値の関数として示す。測定された板ガラスは、それぞれ厚さ3.8mmを有し、ホウケイ酸ガラスからなっていた。
【0111】
55°の角で傾斜させた場合、本発明により製造された板ガラスにおいて、板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と板ガラスの下側の表面近傍の屈折力との合計の大きさは、一定して7mdpt未満であり、例えばこの量は、99.9%分位数では約6mdptの範囲であった。ここで、測定は、板ガラス33の上側の表面上で延伸方向に、すなわちY方向に広がるように行った。
【0112】
これらの値から、上述の式1により、板ガラスが傾斜していない場合、したがって板ガラスに対して垂直に入射する光については、板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と板ガラスの下側の表面近傍の屈折力との合計の大きさは、一定して、7mdpt未満を上記の係数4.2で除した値、つまり0mdpt~約1.7mdptの屈折力となり、したがってより正確に算出すると1.66mdpt未満であった。例えば、板ガラスに対して垂直に入射する光についての、99.9%分位数に対する板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と板ガラスの下側の表面近傍の屈折力との合計のこれらの値は、約6mdptを上記の係数4.2で除した範囲、つまり約1.7未満となり、より正確に算出すると1.66mdpt未満であった。ここで、99.9%分位数はそれぞれ、測定領域Mb内で得られたフィルタリングされた値について求めた。個々の測定値に関して、99.9%分位数に関する記述は、平均値、特に算術平均値に関する記述とは異なる値であり、なぜならば、99.9%分位数に関する記述は、得られた測定値の99.9%に対してなされたものであり、一方で算術平均値は、単にすべての測定値の合計をそれらの数で除した値を把握しただけのものであり、その結果、すでに原理的に、測定値の99.9%に当てはまる記述をすることができないためである。
【0113】
光学測定システムISRA VISION LABSCAN-SCREEN 2Dによる当業界で慣用されている測定では、フィルタ4/5/0(角度/屈折力/示差長/)を使用し、ガラスリボンから個別化された板ガラスの上側の屈折力と下側の屈折力とを同時に測定するが、この測定に加え、上記のフィルタ4/5/0(角度/屈折力/示差長/)によるフィルタリングの代わりに、この測定機器のフィルタリングされていない生データも評価し、ここでこれを後述のフィルタリングに供した。
【0114】
傾斜角55°で得られたこれらの値では、個々の測定点は、延伸方向にそれぞれ0.8mmの距離を有していた。これらの値を、傾斜していない板ガラスに変換するために、まず、傾斜角Φに従って、以下のように延伸方向、つまりY方向で得られた値について、以下の式2により変換した:
【数3】
【0115】
変換されたデータでは、各測定点の、したがって傾斜していないガラス上での測定点の距離は、1.4mmとなった。
【0116】
これにより得られた値を、18次バターワース型ローパスフィルタで、Y方向または延伸方向にフィルタリングし、そのフィルタ特性を
図10に示す。このローパスフィルタのカットオフ波長は、20mmであった。
図10から容易に見て取れるように、延伸方向の周期または波長が15mm未満のシグナルは、実質的に完全に抑制され、Y方向の周期または波長が約22mmを超えるシグナルは、実質的に変化しなかった。これらの算出にはPython SciPyプログラムを使用した。このフィルタリングは、ノイズ成分の抑制や、例えば板ガラス上での微粒子の堆積や汚染などの妨害的な影響を低減するために実施した。
【0117】
しかし、上記のフィルタリングに基づき、従来の板ガラスの表面の微細なうねりについて典型的に開示されているような値は得られず、示されない。なぜならば、微細なうねりのこれらの測定値は、通常は規定にしたがって下方カットオフ波長λc(カットオフ)=0.25mmおよび上方カットオフ波長λf(カットオフ)=8mmの範囲内で測定されるが、これらは、上記のフィルタリングによって実質的に完全に抑制されるためである。
【0118】
ここでも、したがって生データおよび上記のバターワース型フィルタを用いたローパスフィルタリングに基づき、上述の式1により、板ガラスが傾斜していない場合、したがって板ガラスに対して垂直に入射する光については、板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と板ガラスの下側の表面近傍の屈折力との合計の大きさは、一定して、7mdpt未満、いくつかの測定ではさらには5.7mdpt未満を上記の係数4.2で除した値、つまり0mdpt~約1.7mdptの屈折力となり、したがってより正確に算出すると1.66mdpt未満であった。例えば、板ガラスに対して垂直に入射する光についての、99.9%分位数に対する板ガラスの上側の表面近傍の屈折力と板ガラスの下側の表面近傍の屈折力との合計のこれらの値は、約6mdptを上記の係数4.2で除した範囲、つまり約1.7未満となり、より正確に算出すると1.66mdpt未満であった。本発明者らは、本評価の測定技術上の経験に基づき、上記のデータでは1.7mdptの値は最大で±0.1mdpt程度の偏差を受ける可能性があると想定している。ここで、99.9%分位数はそれぞれ、測定領域Mb内で得られたフィルタリングされた値について求めた。すでに上述したとおり、個々の測定値に関して、99.9%分位数に関するこれらの記述も、平均値、特に算術平均値に関する記述とは異なる値であり、なぜならば、99.9%分位数に関する記述は、得られた測定値の99.9%に対してなされたものであり、一方で算術平均値は、単にすべての測定値の合計をそれらの数で除した値を把握しただけのものであり、その結果、すでに原理的に、測定値の99.9%に当てはまる記述をすることができないためである。
【符号の説明】
【0119】
1 フロートプラント
2 溶融槽
3 溶融されるバッチ、特にガラスバッチ
4 バーナー
5 ガラス融液
6 流路
7 フロート浴
8 熱間成形されるガラス
9 フロート浴炉
10 上部ヒーター
11 リップタイルまたはスパウト
12 トップローラ
13 ガラスリボン
14 冷却炉
15 上部および底部ヒーター
16 溶融設備
17 流量制御用部材、特に調整弁またはツイール
18 流量制御用部材17の上流に配置された、熱間成形される溶融ガラス8の粘度を所定どおりに調整するための設備
19 溶融槽2から分離されているか、またはその一部を形成することもでき、ガラスリボン13へと成形される溶融ガラス8を、その粘度を所定どおりに調整する目的で収容する、チャンバ
20 流体が流れる領域
21 流体が流れる領域
22 チャンバ19の壁
23 チャンバ19の壁
24 チャンバ19の壁
25 チャンバ19の壁
26 センサ設備またはユニット
27 ベイまたは槽セクション1
28 ベイまたは槽セクション2
29 ベイまたは槽セクション3
30 ベイまたは槽セクション4
31 ベイまたは槽セクション5
32 ベイまたは槽セクション6
33 板ガラス
34 板ガラス33の上側
35 板ガラス33の下側
36 板ガラス33の上側34の表面
37 板ガラス33の下側35の表面
38 トップローラ
39 トップローラ
40 トップローラ
41 トップローラ
42 トップローラ
43 トップローラ
44 トップローラ
45 流路6の壁
46 流路6の壁
47 熱間成形設備または装置
48 熱間成形されるガラス8またはガラスリボン13の上側表面、上部主面
49 熱間成形されるガラス8またはガラスリボン13の下側表面、下部主面
50 対称軸線
51 対称軸線
52 負のz方向の鉛直線
53 負のz方向の鉛直線
54 破線によって示された、厚さに関連する熱間成形セクションHsへのガラス8の入口の位置
55 熱間成形セクションHsからのガラス8の出口の位置
56 ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離
57 さらなる冷却設備
Mb 屈折力、特に表面近傍の屈折力を求めるための領域または測定領域
Mi X方向でのガラスリボンの中心
η 粘度
ηA ガラスがフロート浴に衝突した後に最大幅に達した際の流量制御用部材からの距離での粘度
ηE 熱間成形の終点での粘度
【外国語明細書】