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特開2024-49391バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩及びその製造方法、並びに当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで被覆された白色顔料用酸化チタン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049391
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩及びその製造方法、並びに当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで被覆された白色顔料用酸化チタン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/32 20060101AFI20240402BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20240402BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20240402BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20240402BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C01B33/32
C01G23/04 B
C09C1/36
C09C3/06
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166785
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022154707
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(71)【出願人】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釜田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】時 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】森田 崇聖
(72)【発明者】
【氏名】片山 真宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 年将
【テーマコード(参考)】
4G047
4G073
4J037
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CB08
4G047CC01
4G047CD04
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA63
4G073BB79
4G073BD13
4G073CB03
4G073FB18
4G073FB36
4G073FC25
4G073FC27
4G073FD02
4G073FD05
4G073FD18
4G073GA01
4G073GA33
4G073GB09
4G073UB14
4G073UB36
4J037AA22
4J037CA24
4J037DD05
4J037EE03
4J037EE08
4J037FF02
4J037FF04
(57)【要約】
【課題】バイオマスシリカ原料から、二酸化炭素の排出量削減に寄与するとともに、着色が抑えられたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を提供する。また、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカにより被覆された白色顔料用酸化チタンを提供する。
【解決手段】バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩であって、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量が30ppm以下であり、かつP含有量が300ppm以下である、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩であって、
Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量が30ppm以下であり、かつP含有量が300ppm以下である、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩。
【請求項2】
450nmにおける透過率が82%以上である、請求項1に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩。
【請求項3】
バイオマスシリカ原料がもみ殻シリカ灰である、請求項1又は2に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩。
【請求項4】
バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法であって、
バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌し、未溶解物をろ過して除去することを特徴とする、請求項1に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法。
【請求項5】
バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩における不純物元素量の調整方法であって、
バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌し、未溶解物をろ過して除去することにより、得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量を30ppm以下にし、かつP含有量を300ppm以下にすることを特徴とする、調整方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンであって、
平均一次粒子径が0.01~2μmであり、
バイオマスシリカ含有量が0.1~20質量%であり、
亜鉛、ジルコニウム、スズ、アンチモン、アルミニウム、カリウム、ニオブ、バナジウム、マグネシウム、塩素、リン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.1~20質量%含むことを特徴とする、白色顔料用酸化チタン。
【請求項7】
前記白色顔料用酸化チタンの450nmにおける反射率の値が、以下の近似式(1)で得られる反射率Yの値よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の白色顔料用酸化チタン。
Y=-0.00108X+0.01931X-0.28569X+100.00278 (1)
[式(1)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは450nmにおける反射率(%)である。]
【請求項8】
前記白色顔料用酸化チタンのLab表色系における粉体色調L値が、以下の近似式(2)で得られるYの値よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の白色顔料用酸化チタン。
Y=-0.000725X-0.069820X+97.609116 (2)
[式(2)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における粉体色調L値である。]
【請求項9】
前記白色顔料用酸化チタン及び煮亜麻仁油を含む塗膜のLab表色系における塗膜色調L値が、以下の近似式(3)で得られるYの値よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の白色顔料用酸化チタン。
Y=0.00532X-0.28702X+95.41685 (3)
[式(3)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における塗膜色調L値である。]
【請求項10】
前記白色顔料用酸化チタンに含まれるMn含有量の値が、以下の近似式(4)で得られるYの値よりも小さいことを特徴とする、請求項6に記載の白色顔料用酸化チタン。
Y=3.7654X (4)
[式(4)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはMn含有量(ppm)である。]
【請求項11】
前記白色顔料用酸化チタンに含まれるCa含有量が150~300ppmであり、Mg含有量が40~150ppmである、請求項6に記載の白色顔料用酸化チタン。
【請求項12】
前記白色顔料用酸化チタン及びアルキド-メラミン樹脂を含む塗膜に対して促進耐候性試験(ハイブリッドエクスポージャー)を行った際の光沢維持率の値が、以下の近似式(5)で得られるYの値よりも大きいことを特徴とする、請求項11に記載の白色顔料用酸化チタン。
Y=-0.2028X+7.1823X+22.474 (5)
[式(5)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは光沢維持率(%)の値である。]
【請求項13】
請求項1に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンの製造方法であって、
被覆前の酸化チタンを含む水性スラリーに前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を加えて酸で中和することにより、前記バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンの製造方法であって、
前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に酸を加えて中和し、バイオマスシリカを析出させたのち、被覆前の酸化チタンを加えて混合することにより、前記バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法。
【請求項15】
請求項4に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法で得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を、被覆前の酸化チタンを含む水性スラリーに加えて酸で中和することにより、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法。
【請求項16】
請求項4に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法で得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に酸を加えて中和し、バイオマスシリカを析出させたのち、被覆前の酸化チタンを加えて混合することにより、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法。
【請求項17】
前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれるMnおよびPが、バイオマスシリカ原料由来である、請求項1又は2に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩。
【請求項18】
前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を形成するアルカリ金属が、ナトリウムまたはカリウムである、請求項1又は2に記載のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩。
【請求項19】
請求項6に記載の白色顔料用酸化チタンを含有する樹脂組成物。
【請求項20】
請求項13から16のいずれかに記載の白色顔料用酸化チタンの製造方法で得られる白色顔料用酸化チタンを樹脂と混合することを特徴とする、樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩及びその製造方法、並びに当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで被覆された白色顔料用酸化チタン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言している。ここで、バイオマス原料は、植物が成長する過程でCOを吸収するため、廃棄の際に燃焼したとしても全体として地球温暖化の原因となるCO量が増加しない「カーボンニュートラル」の考え方ができるとされている。そのため、バイオマス原料の有効利用が検討されている。
【0003】
バイオマス原料の一つとして、米を脱穀した際に副生成物として生ずるもみ殻が挙げられる。当該もみ殻には、約20%シリカが含有されており、もみ殻を焼成することでシリカを主成分とするもみ殻灰を得ることができる。さらに、当該もみ殻灰に含まれるシリカを分離することでバイオマスシリカを得ることができる。
【0004】
バイオマス原料から製造されるバイオマスインキが知られているが、従来の石油由来原料と、バイオマス原料は同じものではなく炭素鎖の数が異なるので、従来の石油由来原料から得られるウレタンをバイオマス原料から得られるウレタンに置きかえるだけでは、塗膜の凝集力と相溶性のバランスをとることが難しいとされている。
【0005】
特許文献1には、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料とする非晶質シリカの製造方法であって、前記バイオマスを熱分解処理してガス化するガス化ステップと、前記ガス化ステップで生じたバイオマス残渣を焼成処理する焼成ステップと、を含む非晶質シリカの製造方法が記載されている。これによれば、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、効率的にエネルギー回収するとともに純度の高い高品質なシリカを得ることができる非晶質シリカの製造方法を提供できるとされている。
【0006】
また、特許文献2には、もみ殻灰からのケイ酸塩の調製方法及び当該ケイ酸塩からの沈降シリカの調製方法が記載されている。具体的には、もみ殻灰、水、砂及び水酸化ナトリウムを含む液体混合物をParr型反応器(オートクレーブ)の中に入れて加熱し、約220℃、23barの圧力で3時間保持し、未反応材料を除去することでケイ酸ナトリウム溶液が得られ、当該ケイ酸ナトリウムは、沈降シリカ調製のために使用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-40861号公報
【特許文献2】特表2018-530512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法によりバイオマス原料からシリカを得ることはできるが、得られるシリカにはバイオマス原料由来の不純物元素が多く含まれるため、白色顔料として用いるには不十分であった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、バイオマスシリカ原料から、二酸化炭素の排出量削減に寄与するとともに、着色が抑えられたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を提供することを目的とするものである。また、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカにより被覆された白色顔料用酸化チタンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩であって、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量が30ppm以下であり、かつP含有量が300ppm以下である、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を提供することによって解決される。
【0011】
このとき、450nmにおける透過率が82%以上であることが好適であり、バイオマスシリカ原料がもみ殻シリカ灰であることが好適である。
【0012】
上記課題は、バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法であって、バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌し、未溶解物をろ過して除去することを特徴とする、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法を提供することによっても解決される。
【0013】
上記課題は、バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩における不純物元素量の調整方法であって、バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌し、未溶解物をろ過して除去することにより、得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量を30ppm以下にし、かつP含有量を300ppm以下にすることを特徴とする、調整方法を提供することによっても解決される。
【0014】
上記課題は、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンであって、平均一次粒子径が0.01~2μmであり、バイオマスシリカ含有量が0.1~20質量%であり、亜鉛、ジルコニウム、スズ、アンチモン、アルミニウム、カリウム、ニオブ、バナジウム、マグネシウム、塩素、リン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.1~20質量%含むことを特徴とする、白色顔料用酸化チタンを提供することによっても解決される。
【0015】
このとき、前記白色顔料用酸化チタンの450nmにおける反射率の値が、以下の近似式(1)で得られる反射率Yの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=-0.00108X+0.01931X-0.28569X+100.00278 (1)
[式(1)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは450nmにおける反射率(%)である。]
【0016】
このとき、前記白色顔料用酸化チタンのLab表色系における粉体色調L値が、以下の近似式(2)で得られるYの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=-0.000725X-0.069820X+97.609116 (2)
[式(2)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における粉体色調L値である。]
【0017】
このとき、前記白色顔料用酸化チタン及び煮亜麻仁油を含む塗膜のLab表色系における塗膜色調L値が、以下の近似式(3)で得られるYの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=0.00532X-0.28702X+95.41685 (3)
[式(3)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における塗膜色調L値である。]
【0018】
このとき、前記白色顔料用酸化チタンに含まれるMn含有量の値が、以下の近似式(4)で得られるYの値よりも小さいことが好適な実施態様である。
Y=3.7654X (4)
[式(4)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはMn含有量(ppm)である。]
【0019】
このとき、前記白色顔料用酸化チタンに含まれるCa含有量が150~300ppmであり、Mg含有量が40~150ppmであることが好適である。
【0020】
このとき、前記白色顔料用酸化チタン及びアルキド-メラミン樹脂を含む塗膜に対して促進耐候性試験(ハイブリッドエクスポージャー)を行った際の光沢維持率の値が、以下の近似式(5)で得られるYの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=-0.2028X+7.1823X+22.474 (5)
[式(5)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは光沢維持率(%)の値である。]
【0021】
上記課題は、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンの製造方法であって、被覆前の酸化チタンを含む水性スラリーに前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を加えて酸で中和することにより、前記バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法を提供することによっても解決される。
【0022】
上記課題は、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンの製造方法であって、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に酸を加えて中和し、バイオマスシリカを析出させたのち、被覆前の酸化チタンを加えて混合することにより、前記バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法を提供することによっても解決される。
【0023】
上記課題は、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法で得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を、被覆前の酸化チタンを含む水性スラリーに加えて酸で中和することにより、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法を提供することによっても解決される。
【0024】
上記課題は、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法で得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に酸を加えて中和し、バイオマスシリカを析出させたのち、被覆前の酸化チタンを加えて混合することにより、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部を被覆することを特徴とする、白色顔料用酸化チタンの製造方法を提供することによっても解決される。
【0025】
このとき、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれるMnおよびPが、バイオマスシリカ原料由来であることが好適な実施態様であり、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を形成するアルカリ金属がナトリウムまたはカリウムであることが好適な実施態様である。また、前記白色顔料用酸化チタンを含有する樹脂組成物が好適な実施態様であり、前記白色顔料用酸化チタンの製造方法で得られる白色顔料用酸化チタンを樹脂と混合する樹脂組成物の製造方法も好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、バイオマスシリカ原料から、二酸化炭素の排出量削減に寄与するとともに、着色が抑えられたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を提供することができる。当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカにより被覆された酸化チタンは、バイオマス原料由来にも関わらず白色度に優れるため、白色顔料として好適に用いられる。また、化学合成品のケイ酸ソーダを用いて被覆された酸化チタンと比較しても耐候性に優れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1と比較例3でそれぞれ得られたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の外観を示した図である。
図2】作成例1~4及び比較作成例1~4で得られた白色顔料用酸化チタンの粉体反射率の結果を示した図である。
図3】作成例1~4及び比較作成例1~4で得られた白色顔料用酸化チタンの粉体色調の結果を示した図である。
図4】作成例1~4及び比較作成例1~4で得られた白色顔料用酸化チタンの塗膜色調の結果を示した図である。
図5】比較作成例1~4で得られた白色顔料用酸化チタンの不純物元素量の結果を示した図である。
図6】作成例1~4及び比較作成例5~8で得られた白色顔料用酸化チタンの促進耐候性試験の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩は、バイオマスシリカ原料から得られるものであり、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量が30ppm以下であり、かつP含有量が300ppm以下であることを特徴とするものである。本発明における前記Mn含有量と前記P含有量は、ICP発光分光分析法により各元素について測定し、Si含有量を100000ppmに調整した際のそれぞれのMnとPの含有量を表すものである。
【0029】
本発明者らの検討により、Mn含有量とP含有量が一定以下であるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩であることで、着色が抑えられるとともに、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカにより被覆された酸化チタンは、バイオマス原料由来にも関わらず白色度に優れるものである。後述する実施例と比較例との対比から分かるように、Mn含有量が30ppmを超える比較例1~2、P含有量が300ppmを超える比較例3では、450nmにおけるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の透過率が80%以下と比較的低く、着色が抑えられていない。これに対し、Mn含有量が30ppm以下であり、かつP含有量が300ppm以下である実施例1~11では、450nmにおけるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の透過率が高く、着色が抑えられている。
【0030】
そして、このようなバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の違いにより、生成されるバイオマスシリカで酸化チタン表面を被覆した際に、粉体反射率、粉体色調、塗膜色調、不純物元素等についての物性評価に差が見られることが明らかとなった。図2~5で示されるように、シリカ処理量が同程度の酸化チタンで比較すると、Mn含有量とP含有量が一定以下である本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用することで、粉体反射率、粉体色調、塗膜色調及び不純物元素についての評価結果がいずれも優れていることが分かる。
【0031】
また、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩から生成されるバイオマスシリカにより被覆された酸化チタンは、化学合成品のケイ酸ソーダを用いて被覆された酸化チタンと比較して耐候性に優れることが明らかとなった。図6で示されるように、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンと、化学合成品のケイ酸ソーダを用いて被覆された酸化チタンでは、いずれも不純物としてのMn元素は含まれていないが、シリカ処理量が同程度の酸化チタンで比較すると、Ca含有量とMg含有量がともに異なり、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用することで、光沢維持率が優れることが明らかとなった。
【0032】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量が30ppm以下である。前記Mn含有量が30ppmを超える場合、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色を抑えることができず、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンの白色度等が不十分となるおそれがある。前記Mn含有量は、20ppm以下であることが好ましく、14ppm以下であることがより好ましく、12ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、8ppm以下であることが最も好ましい。なお、前記Mn含有量としては、0ppm以上であることが好ましく、1ppm以上であることがより好ましい。
【0033】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、Si含有量を100000ppmに調整した際のP含有量が300ppm以下である。前記P含有量が300ppmを超える場合、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色を抑えることができず、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンの白色度等が不十分となるおそれがある。前記P含有量は、280ppm以下であることが好ましく、270ppm以下であることがより好ましく、260ppm以下であることがさらに好ましく、255ppm以下である特に好ましい。なお、前記P含有量としては、10ppm以上であることが好ましく、50ppm以上であることがより好ましい。
【0034】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、CaとMgを一定量含むことが好ましい。後述にて説明するとおり、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて得られる白色顔料用酸化チタンの耐候性が良好となることが本発明者らの検討により明らかとなった。Ca含有量としては、Si含有量を100000ppmに調整した際のCa含有量が10~200ppmであることが好ましく、20~150ppmであることがより好ましい。また、Mg含有量としては、Si含有量を100000ppmに調整した際のMg含有量が10~200ppmであることが好ましく、20~150ppmであることがより好ましい。
【0035】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、Si含有量を100000ppmに調整した際のFe含有量が30ppm以下であることが好ましい。Fe含有量が30ppmを超える場合、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色を抑えることができず、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンの白色度等が不十分となるおそれがある。前記Fe含有量は、25ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましく、15ppm以下であることが特に好ましく、10ppm以下であることが最も好ましい。なお、前記Fe含有量としては、0ppm以上であることが好ましく、1ppm以上であることがより好ましい。
【0036】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記Si、Mn、P、Ca、Mg及びFe以外の他の元素が含まれていても構わない。他の元素の含有量としては、Si含有量を100000ppmに調整した際の含有量が1~200ppmであることが好ましく、2~150ppmであることがより好ましく、3~100ppmであることがさらに好ましい。
【0037】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、シリカ溶解度が11質量%以上であることが好ましい。シリカ溶解度が11質量%未満の場合、経済的な観点から好ましくない。シリカ溶解度は、12質量%以上であることがより好ましく、14質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。本発明におけるシリカ溶解度は、ICP発光分光分析法によりSi元素について測定することにより求められるが、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩中のシリカ含有量が16.5%となるように調整されているため、シリカが全て溶解した場合のシリカ溶解度は16.5%である。また、前記バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を形成するアルカリ金属としては、ナトリウムまたはカリウムであることが好適な実施態様である。
【0038】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、450nmにおける透過率が82%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。前記透過率が82%未満の場合、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に着色が見られるとともに、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンの白色度等が不十分となるおそれがある。前記透過率は88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましく、94%以上であることが最も好ましい。一方、前記透過率は、通常、100%以下である。
【0039】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法としては特に限定されない。例えば、バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌し、未溶解物をろ過して除去することによって、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を好適に得ることができる。ここで使用するアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましい。別の方法として、バイオマス原料とアルカリ金属炭酸塩を混合し、500℃以上で溶融し、冷却後、回収物を水に溶解し、未溶解物をろ過して除去することによっても、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を得ることができる。
【0040】
本発明で用いられるバイオマスシリカ原料としては、バイオマスを原料として利用されるものであれば特に限定されない。バイオマスとは、生物由来の有機性資源のことであり、林産資源(林地残材、製材工業残材)、農産資源(稲わら、もみ殻、麦わら等)、水産資源(貝殻、海藻等)、畜産資源(家畜排せつ物等)、食品資源(加工残渣、生ごみ、動植物残渣等)、農業資源(パルプ廃液等)、下水汚泥、糖質資材(さとうきび、てんさい)、でんぷん資源(米、いも類、とうもろこし等)、油脂資源(なたね、大豆、落花生、アブラヤシ、ヒマ等)、草本資源(エリアンサス)と定義されるものである。中でも、農産資源を原料とするものであることが好ましく、バイオマスシリカ原料がもみ殻シリカ灰であることがより好適な実施態様である。
【0041】
本発明で得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩は、上記バイオマスを原料としたバイオマスシリカから得られるアルカリ金属ケイ酸塩と定義する。
【0042】
本発明で用いられるアルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度としては特に限定されないが、1~50質量%であることが好ましく、4~30質量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の製造方法において、バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌することが好適な実施態様である。本発明者らの検討により、バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌することで、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量とP含有量がそれぞれ一定以下のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩が得られることが明らかとなった。前記加熱攪拌する際の温度が45℃未満の場合、前記Mn含有量が一定以上となり、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色を抑えることができず、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンの白色度等が不十分となるおそれがある。前記加熱攪拌する際の温度としては、50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、65℃以上であることがさらに好ましく、75℃以上であることが特に好ましく、85℃以上であることが最も好ましい。
【0044】
一方、前記加熱攪拌する際の温度としては、150℃以下であることが好ましく、138℃以下であることがより好ましく、125℃以下であることがさらに好ましく、115℃以下であることが特に好ましく、110℃以下であることが最も好ましい。なお、本発明者らは、220℃のオートクレーブで反応させた場合に、Si含有量を100000ppmに調整した際のP含有量が一定以上となり、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色を抑えることができなかったことを確認している。したがって、大気圧下で加熱攪拌することが本発明の好適な実施態様である。
【0045】
前記加熱攪拌する際の時間としては、30分~48時間であることが好ましい。前記時間が30分未満の場合、前記Mn含有量が一定以上となり、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色を抑えることができず、当該バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を用いて被覆された酸化チタンの白色度等が不十分となるおそれがある。前記時間は40分以上であることが好ましく、50分以上であることがより好ましく、1時間以上であることがさらに好ましく、2時間以上であることが特に好ましく、4時間以上であることが最も好ましい。一方、前記時間が48時間を超える場合、生産性が低下するおそれがあり、30時間以下であることがより好ましく、24時間以下であることがさらに好ましく、20時間以下であることが特に好ましい。
【0046】
次いで、前記加熱攪拌後に未溶解物をろ過して除去することにより、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を得ることができる。ろ過としては公知の方法が採用される。
【0047】
上述のように、バイオマスシリカ原料から、バイオマスシリカ原料由来の不純物元素であるMnとPの含有量が一定以下に調整されたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を得ることができる。したがって、本発明により、バイオマスシリカ原料から得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩における不純物元素量の調整方法を提供することも好適な実施態様である。当該調整方法としては、バイオマスシリカ原料を大気圧下、45℃以上のアルカリ金属水酸化物の水溶液中で加熱攪拌し、未溶解物をろ過して除去する方法が好適に採用され、得られるバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩において、Si含有量を100000ppmに調整した際のMn含有量を30ppm以下にし、かつP含有量を300ppm以下に調整することができる。
【0048】
こうして得られる本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩からバイオマスシリカを生成することができる。当該バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンが好適な実施態様である。本発明の白色顔料用酸化チタンにおいて、バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆されたとは、酸化チタン表面にバイオマスシリカが一定程度存在することにより、一部又は全部が被覆されてなることをいう。
【0049】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンにおいて、バイオマスシリカ含有量が0.1~20質量%であることが好ましい。バイオマスシリカ含有量が0.1質量%未満の場合、塗料やインキに配合した際、耐候性に課題が生じるおそれがあり、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、2質量%以上であることが最も好ましい。一方、バイオマスシリカ含有量が20質量%を超える場合、高吸油量となり塗料やインキに配合した際、顔料分散性に課題が生じるおそれがあり、16質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、8質量%以下であることが最も好ましい。
【0050】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、亜鉛、ジルコニウム、スズ、アンチモン、アルミニウム、カリウム、ニオブ、バナジウム、マグネシウム、塩素、リン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.1~20質量%含むことが好ましい。当該元素としては、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれる元素に由来するものであってもよいし、別途被覆処理を行うことにより含まれる元素であってもよい。当該元素の含有量が0.1質量%未満の場合、塗料やインキに配合した際、耐候性に課題が生じるおそれがあり、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、2質量%以上であることが最も好ましい。一方、当該元素の含有量が20質量%を超える場合、高吸油量となり塗料やインキに配合した際、顔料分散性に課題が生じるおそれがあり、16質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、8質量%以下であることが最も好ましい。
【0051】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンの平均一次粒子径としては、0.01~2μmであることが好ましい。平均一次粒子径が0.01μm未満の場合、可視光の光散乱力が低下し、塗料やインキに配合した際、隠ぺい力が低下するおそれがあり、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましく、0.15μm以上であることが特に好ましい。一方、平均一次粒子径が2μmを超える場合、可視光の光散乱力が低下し、塗料やインキに配合した際、隠ぺい力が低下するおそれがあり、1.5μm以下であることがより好ましく、1.2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、0.8μm以下であることが最も好ましい。本発明において平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて白色顔料用酸化チタン粒子の写真を撮影し、自動画像処理解析装置にて体積基準の水平方向等分径を測定することにより算出される値である。
【0052】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、粉体反射率が優れるものである。図2に示されるように、酸化チタン表面に存在するバイオマスシリカ含有量(シリカ処理量)の増加にともなって、450nmにおける粉体反射率が低下することになるが、シリカ処理量が同程度の酸化チタンで比較すると、Mn含有量とP含有量が一定以下である本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用することで、当該粉体反射率が優れるものとなることが明らかとなった。したがって、白色顔料用酸化チタンの450nmにおける反射率の値が、以下の近似式(1)で得られる反射率Yの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=-0.00108X+0.01931X-0.28569X+100.00278 (1)
[式(1)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは450nmにおける反射率(%)である。]
【0053】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、粉体色調L値が優れるものである。図3に示されるように、酸化チタン表面に存在するバイオマスシリカ含有量(シリカ処理量)の増加にともなって、Lab表色系における粉体色調L値が低下することになるが、シリカ処理量が同程度の酸化チタンで比較すると、Mn含有量とP含有量が一定以下である本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用することで、当該粉体色調L値が優れるものとなることが明らかとなった。したがって、白色顔料用酸化チタンのLab表色系における粉体色調L値が、以下の近似式(2)で得られるYの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=-0.000725X-0.069820X+97.609116 (2)
[式(2)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における粉体色調L値である。]
【0054】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、塗膜色調L値が優れるものである。図4に示されるように、酸化チタン表面に存在するバイオマスシリカ含有量(シリカ処理量)の増加にともなって、白色顔料用酸化チタン及び煮亜麻仁油を含む塗膜のLab表色系における塗膜色調L値が低下することになるが、シリカ処理量が同程度の酸化チタンで比較すると、Mn含有量とP含有量が一定以下である本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用することで、塗膜色調L値が優れるものとなることが明らかとなった。したがって、白色顔料用酸化チタン及び煮亜麻仁油を含む塗膜のLab表色系における塗膜色調L値が、以下の近似式(3)で得られるYの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=0.00532X-0.28702X+95.41685 (3)
[式(3)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における塗膜色調L値である。]
【0055】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、Mn含有量が一定以下であることが好ましく、これにより白色度に優れる効果を奏する。図5に示されるように、酸化チタン表面に存在するバイオマスシリカ含有量(シリカ処理量)の増加にともなって、白色顔料用酸化チタンにおけるMn含有量が増加することになるが、本発明で得られる白色顔料用酸化チタンにおいて、Mn含有量の値が、以下の近似式(4)で得られるYの値よりも小さいことが好適な実施態様である。
Y=3.7654X (4)
[式(4)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはMn含有量(ppm)である。]
【0056】
白色顔料用酸化チタンにおけるMn含有量は、使用したバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれるMn含有量に依存するため、Mn含有量が一定以下となるように調整された本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用する意義が大きいことが分かる。白色顔料用酸化チタンにおけるMn含有量は、75ppm以下であることが好ましく、35ppm以下であることがより好ましく、15ppm以下であることがさらに好ましく、5ppm以下であることが特に好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0057】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、化学合成品のケイ酸ソーダを用いて被覆された酸化チタンと比較して耐候性に優れるものである。図6で示されるように、酸化チタン表面に存在するバイオマスシリカ含有量(シリカ処理量)の増加にともなって、白色顔料用酸化チタンにおける光沢維持率が良好となるが、シリカ処理量が同程度の酸化チタンで比較すると、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を使用することで、化学合成品のケイ酸ソーダを用いて被覆された酸化チタンと比較して光沢維持率が優れることが明らかとなった。したがって、白色顔料用酸化チタン及びアルキド-メラミン樹脂を含む塗膜に対して促進耐候性試験(ハイブリッドエクスポージャー)を行った際の光沢維持率の値が、以下の近似式(5)で得られるYの値よりも大きいことが好適な実施態様である。
Y=-0.2028X+7.1823X+22.474 (5)
[式(5)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは光沢維持率(%)の値である。]
【0058】
本発明者らの検討により、白色顔料用酸化チタンに不純物元素であるCaとMgが一定量含まれることで、耐候性に優れることが明らかとなった。本発明で得られる白色顔料用酸化チタンにおけるCa含有量としては、使用したバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれるCa含有量に依存するが、150~300ppmであることが好ましい。Ca含有量が150ppm未満の場合、耐候性が不十分となるおそれがあり、160ppm以上であることがより好ましく、170ppm以上であることがさらに好ましい。一方、Ca含有量が300ppmを超える場合、塗料やインキへ適用した際、高粘度となるおそれがあり、280ppm以下であることがより好ましく、260ppm以下であることがさらに好ましく、240ppm以下であることが特に好ましい。
【0059】
また、本発明で得られる白色顔料用酸化チタンにおけるMg含有量は、使用したバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれるMg含有量に依存するが、35~150ppmであることが好ましい。Mg含有量が35ppm未満の場合、耐候性が不十分となるおそれがあり、40ppm以上であることがより好ましい。一方、Mg含有量が150ppmを超える場合、塗料やインキへ適用した際、高粘度となるおそれがあり、120ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましく、80ppm以下であることが特に好ましい。
【0060】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンの製造方法としては特に限定されない。被覆前の酸化チタンを含む水性スラリーに、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を加えて酸で中和することにより、バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンを得ることができる。
【0061】
被覆前の酸化チタンの平均一次粒子径としては、0.01~2μmであることが好ましく、上述の白色顔料用酸化チタンの平均一次粒子径のところで説明した値を好適に採用することができる。本発明において平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて白色顔料用酸化チタン粒子の写真を撮影し、自動画像処理解析装置にて体積基準の水平方向等分径を測定することにより算出される値であり、被覆前の酸化チタンの平均一次粒子径と、白色顔料用酸化チタンの平均一次粒子径は実質的に変化していない。
【0062】
当該被覆前の酸化チタンを含む水性スラリーの酸化チタン濃度としては、200~1000g/Lであることが好ましい。前記水性スラリーに含まれる酸化チタンに対し、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩をSiO換算で0.1~20質量%に相当するように加える。すなわち、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の添加量により、得られる白色顔料用酸化チタンにおけるバイオマスシリカ含有量を調整することができる。
【0063】
次いで、酸で中和することにより、バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンを得ることができる。前記酸としては特に限定されず、硫酸、硝酸、塩酸等を適宜使用することができる。中和する際の温度としては、10~100℃であることが好ましく、経済的な観点から40~80℃であることがより好ましい。中和する際の時間としては、1~600分であることが好ましく、5~180分であることがより好ましい。
【0064】
また、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に酸を加えて中和し、バイオマスシリカを析出させたのち、被覆前の酸化チタンを加えて混合することにより、バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンを得ることができる。
【0065】
バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に酸を加えて中和する方法としては、上述と同様の方法が好適に採用される。次いで、前記中和によりバイオマスシリカを析出させたのち、被覆前の酸化チタンを加えて混合する。当該混合としては、析出したバイオマスシリカを含む液中に対し、被覆前の酸化チタンを粉体又は水性スラリーとして加えて混合する方法を採用してもよいし、析出したバイオマスシリカを濾別して回収した後、当該バイオマスシリカに対し、被覆前の酸化チタンを粉体又は水性スラリーとして加えて混合する方法を採用してもよい。これにより、バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンを得ることができる。
【0066】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、亜鉛、ジルコニウム、スズ、アンチモン、アルミニウム、カリウム、ニオブ、バナジウム、マグネシウム、塩素、リン及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の元素を酸化物換算で0.1~20質量%含むことが好ましいが、当該元素としては、本発明のバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩に含まれる元素に由来するものであってもよいし、別途被覆処理を行うことにより含まれる元素であってもよい。これにより、各種用途で使用した際の分散安定性、電気的特性、耐候性のさらなる向上が可能となる場合がある。
【0067】
前記被覆処理する方法としては特に限定されず、前記元素が含まれる化合物の溶液又はスラリーを用い、公知の方法により被覆処理することができる。前記元素が含まれる化合物としては、前記元素が含まれる塩、酸化物、含水酸化物等が挙げられる。例えば、アルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸チタニル、塩化チタン、硫酸スズ、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化セリウム、硫酸セリウムなどが挙げられる。さらに、アミノシラン、アルキルシラン、ポリエーテルシリコーン、シリコーンオイルなどの有機ケイ素化合物、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ソーダ、ラウリン酸、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパンなどの有機化合物を使用してもよい。前記元素がアルミニウムの場合は、バイオマスシリカで酸化チタン表面の少なくとも一部又は全部が被覆された白色顔料用酸化チタンに対し、Al換算で所定量含むようにアルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム等のアルミン酸アルカリ金属塩と、硫酸等の酸を添加し、pHを一定範囲に保持することで、さらにアルミナで被覆された白色顔料用酸化チタンを得ることができる。
【0068】
本発明で得られる白色顔料用酸化チタンは、バイオマス原料由来にも関わらず白色度に優れ、化学合成品のケイ酸ソーダを用いて被覆された酸化チタンと比較しても耐候性に優れる効果を奏する。したがって、環境フレンドリーでかつ意匠性に優れるとともに耐候性にも優れ、塗料、インキ、紙、成形用樹脂コンパウンド、化粧料などに好適に使用される。特に、本発明で得られる白色顔料用酸化チタンを含有する樹脂組成物が好適な実施態様であり、上記説明した前記白色顔料用酸化チタンの製造方法で得られる白色顔料用酸化チタンを樹脂と混合する樹脂組成物の製造方法も好適な実施態様である。
【0069】
塗料やインキの用途に用いる場合、白色顔料用酸化チタンの配合比率は樹脂の使用目的などに応じて任意に変えることができるが、樹脂100重量部あたり、1~500重量部が望ましい。白色顔料用酸化チタンとの配合に使用する樹脂は、アクリルメラミン、常乾アクリル、アクリルウレタン、ポリエステルメラミン、アルキドメラミン、ポリウレタン、ニトロセルロース、フッ素樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。なお、必要に応じて、マイカ、セリサイト、タルクなどの偏平状顔料や炭酸カルシウム、硫酸バリウム、バルーン状シリカ、酸化ジルコニウム、紫外線遮蔽酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料やアルミフレークなどを併用して構わない。上記樹脂組成物に白色顔料用酸化チタンを配合する際には、まず有機溶剤または水に溶解混合し、分散と塗装に適した粘度に調整する。有機溶剤としては、炭化水素系、アルコール系、エーテルアルコール及びエーテル系、エステル及びエステルアルコール系、ケトン系の中から任意に分散性、塗装性に適したものを用いればよい。そして、ペイントコンディショナー、ディスパー、サンドグラインドミルなど使用目的に応じて分散・攪拌に適した装置を用いて白色顔料用酸化チタンを分散する。作製した塗料は金属又はプラスチック製の被塗物に、バーコーター、刷毛、エアスプレー、静電塗装などにより塗装することができる。膜厚は目的により適宜変えることができる。なお、使用する樹脂によっては、110~180℃の温度で10~40分間程度乾燥焼付けする必要がある。
【0070】
また、成形用樹脂コンパウンド組成物に用いる場合、配合に使用する樹脂は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。酸化チタンの配合比率は樹脂の使用目的などに応じて任意に変えることができるが、樹脂100重量部あたり、0.2~50重量部が望ましい。上記成形用樹脂コンパウンド組成物中には、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤として脂肪酸金属塩を含有させるのが好ましい。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ジルコニウム、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、その含有量としては、成形用樹脂コンパウンド組成物に対し、0.01~5重量部が好ましい。必要に応じ、さらにマイカ、セリサイト、タルクなどの扁平状顔料や炭酸カルシウム、硫酸バリウム、バルーン状シリカ、酸化ジルコニウム、紫外線遮蔽酸化チタン、酸化亜鉛など有色無機顔料、有色有機顔料、色素なども併用して構わない。上記成形用樹脂コンパウンド組成物は必要に応じてタンブルミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いて予備混合し、バンバリーミキサー、混練ロール、エクストルーダー、射出成形機などを用いて溶融混練する。
【実施例0071】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0072】
[バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の作製]
(1)シリカ溶解度の測定
得られたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を、ICP発光分光分析装置(SPECTRO社製、「ARCOS」)を用いて、ICP発光分光分析法によりSi含有量を分析し、溶解度を算出した。なお、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩中のシリカ含有量が16.5%となるように調整されているため、シリカが全て溶解した場合のシリカ溶解度は16.5%である。
【0073】
(2)バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の着色度
得られたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩を、分光光度計(株式会社日立製作所製「U-4100」)にて、光路長1cmのガラスセルを用いて、波長450nmにおける透過率を測定し、着色度を評価した。
【0074】
実施例1
撹拌装置、還流管を備えた2Lのセパラブルフラスコに、もみ殻を熱分解処理して得られた、Si含有量がSiO換算で90質量%以上であり非晶質シリカを主成分とするもみ殻シリカ灰125重量部、水425重量部、24%水酸化ナトリウム水溶液189重量部を加え、105℃で還流させながら12時間反応を行った。反応の完結後、液体混合物をろ過して未反応材料を除去し、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)の溶液を得た。得られたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩について、ICP発光分光分析装置(SPECTRO社製、「ARCOS」)を用い、ICP発光分光分析法によりSi含有量を100000ppmに調整した際の各元素含有量を分析した。また、上記(1)及び(2)に記載の方法により、シリカ溶解度と着色度を測定した。得られた分析結果を表1にまとめて示す。また、得られたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の外観を図1に示す。
【0075】
実施例2
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに105℃で6時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0076】
実施例3
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに105℃で3時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0077】
実施例4
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに105℃で1時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0078】
実施例5
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに90℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0079】
実施例6
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに70℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0080】
実施例7
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに60℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0081】
実施例8
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに50℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0082】
実施例9
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに45℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0083】
実施例10
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに105℃で48時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0084】
実施例11
実施例1において、水425重量部、24%水酸化ナトリウム水溶液189重量部に代えて、水349重量部、24%水酸化カリウム水溶液265重量部を加えて反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸カリウム)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0085】
比較例1
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに25℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0086】
比較例2
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに40℃で12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。
【0087】
比較例3
実施例1において、105℃で12時間反応を行う代わりに220℃のオートクレーブで12時間反応を行った以外は実施例1と同様にして、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)を得た。得られた分析結果を表1にまとめて示す。また、得られたバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩の外観を図1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
[白色顔料用酸化チタンの作製]
(1)粉体反射率の測定
以下の作成例1~4及び比較作成例1~4で得られたそれぞれの白色顔料用酸化チタンを100MPaにてプレス成形し、分光光度計(株式会社日立製作所製「U-4100」)を用いてBaSO標準錠剤をリファレンスとして波長700-300nmにおける反射率曲線を測定した。得られた分光反射率曲線により450nmにおける反射率を評価した。得られた結果を表5と図2に示す。図2に示されるとおり、比較作成例1~4の450nmにおける反射率の値から以下の近似式(1)を作成した。
Y=-0.00108X+0.01931X-0.28569X+100.00278 (1)
[式(1)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは450nmにおける反射率(%)である。]
【0090】
(2)粉体色調の測定
以下の作成例1~4及び比較作成例1~4で得られたそれぞれの白色顔料用酸化チタンを100MPaにてプレス成形し、色差計(日本電色工業株式会社製「ZE2000」)を用いて粉体色調を測定した。得られた結果を表5と図3に示す。図3に示されるとおり、比較作成例1~4の粉体色調L値から以下の近似式(2)を作成した。
Y=-0.000725X-0.069820X+97.609116 (2)
[式(2)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における粉体色調L値である。]
【0091】
(3)塗膜色調の評価
以下の作成例1~4及び比較作成例1~4で得られたそれぞれの白色顔料用酸化チタン4gに対して、煮亜麻仁油2-4g添加し、1000-3000mPa・sの粘度を有するペーストになるように試料を作製した。得られた試料をフーバー式マラーの下部練り板上の上に載せて、上部練り板を下部練り板に合わせ、68kgの分銅をつるし、25回転に設定して回転させた。回転が止まった後に、上部練り板を上げ、上部と下部の練り板上に広がったペースト状態の試料をへらで集め、下部練り板上に再度広げて、再び上部練り板と下部練り板を合わせた。この操作を合計4回(100回転)行い、分散ペーストを調製した。得られた分散ペーストをへらで集めてガラス板上に置き、6ミルのフィルムアプリケーターで塗布した。得られた塗膜を色差計(日本電色工業株式会社製「ZE2000」)を用いて塗膜色調を測定した。得られた結果を表5と図4に示す。図4に示されるとおり、比較作成例1~4の塗膜色調L値から以下の近似式(3)を作成した。
Y=0.00532X-0.28702X+95.41685 (3)
[式(3)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはLab表色系における塗膜色調L値である。]
【0092】
(4)不純物元素の評価
以下の作成例1~4及び比較作成例1~4で得られたそれぞれの白色顔料用酸化チタン0.3g、フッ酸3mL及び硝酸4mLを白金るつぼに加え、ホットプレート上で加熱を行い、蒸気が出なくなるまで加熱を行った。加熱終了後、得られた液を50mLのメスフラスコを用いて希釈を行い、試料とした。得られた試料をICP発光分光分析装置(SPECTRO社製「ARCOS」)を用い、ICP発光分光分析法により不純物元素を分析した。得られた結果を表5と図5に示す。図5に示されるとおり、比較作成例1~4のMn含有量の値から以下の近似式(4)を作成した。
Y=3.7654X (4)
[式(4)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、YはMn含有量(ppm)である。]
【0093】
(5)促進耐候性試験(ハイブリッドエクスポージャー)
表2で示される処方1のとおり、以下の作成例1~4及び比較作成例5~8で得られたそれぞれの白色顔料用酸化チタンを含む組成液を225mLガラス製容器に仕込み、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)を用いて60分間分散して分散液を調製した。次いで、表3で示される処方2のとおりの塗料組成物を調製した。このとき、塗料組成物中の樹脂成分1重量部に対し白色顔料用酸化チタンが1重量部となるように調製した。得られた塗料組成物を、乾燥膜厚が40μmになるようにスプレーガンを用いてプライマー処理済鋼板上に塗布し、140℃で30分間焼きつけ試験片を作製した。この試験片をキセノンウェザーメーター(株式会社東洋精機製作所製「Ci4000」)を用い、以下の表4で示される条件にて光照射しながら、一定の間隔で過酸化水素水を噴射して促進曝露した。一定間隔毎に、60度光沢値を光沢計(日本電色工業株式会社製「VG2000」)を用いて計測し、16時間後の光沢維持率を求めた。得られた結果を表6と図6に示す。図6に示されるとおり、比較作成例5~8の光沢維持率の値から以下の近似式(5)を作成した。
Y=-0.2028X+7.1823X+22.474 (5)
[式(5)中、Xは白色顔料用酸化チタン中のバイオマスシリカ含有量であり、Yは光沢維持率(%)の値である。]
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
作成例1
硫酸法にて得られた平均粒子径が0.27μmの二酸化チタン粒子を水に添加し、サンドミルを用いて予備粉砕を行い、二酸化チタン濃度300g/Lの水性スラリーを得た。この水性スラリー0.7Lを攪拌しながら、実施例1で作製したバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で2質量%に相当するように添加した。その後、水性スラリーを70℃に昇温し、硫酸にて中和処理を行い、二酸化チタン粒子の表面に含水バイオマスシリカの被覆層を形成した。10分間攪拌して熟成した後、Al換算で2質量%に相当するアルミン酸ソーダと硫酸を、攪拌しながらpHが5~7の間になるように20分間かけて同時に滴下し、含水アルミナの被覆層を形成した。その後、吸引濾過器を用いて洗浄し、固液分離してから120℃の温度で15時間乾燥することにより、二酸化チタン粒子の表面に含水バイオマスシリカの被覆層及び含水アルミナの被覆層を有する白色顔料用酸化チタンを得た。
【0098】
作成例2
作成例1において、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で4質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で4質量%に相当するように添加したこと以外は作成例1と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0099】
作成例3
作成例1において、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で10質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で5質量%に相当するように添加したこと以外は作成例1と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0100】
作成例4
作成例1において、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で20質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で10質量%に相当するように添加したこと以外は作成例1と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0101】
比較作成例1
硫酸法にて得られた平均粒子径が0.27μmの二酸化チタン粒子を水に添加し、サンドミルを用いて予備粉砕を行い、二酸化チタン濃度300g/Lの水性スラリーを得た。この水性スラリー0.7Lを攪拌しながら、比較例1で作製したバイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で2質量%に相当するように添加した。その後、水性スラリーを70℃に昇温し、硫酸にて中和処理を行い、二酸化チタン粒子の表面に含水バイオマスシリカの被覆層を形成した。10分間攪拌して熟成した後、Al換算で2質量%に相当するアルミン酸ソーダと硫酸を、攪拌しながらpHが5~7の間になるように20分間かけて同時に滴下し、含水アルミナの被覆層を形成した。その後、吸引濾過器を用いて洗浄し、固液分離してから120℃の温度で15時間乾燥することにより、二酸化チタン粒子の表面に含水バイオマスシリカの被覆層及び含水アルミナの被覆層を有する白色顔料用酸化チタンを得た。
【0102】
比較作成例2
比較作成例1において、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で4質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で4質量%に相当するように添加したこと以外は比較作成例1と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0103】
比較作成例3
比較作成例1において、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で10質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で5質量%に相当するように添加したこと以外は比較作成例1と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0104】
比較作成例4
比較作成例1において、バイオマスアルカリ金属ケイ酸塩(ケイ酸ソーダ)をSiO換算で20質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で10質量%に相当するように添加したこと以外は比較作成例1と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0105】
比較作成例5
硫酸法にて得られた平均粒子径が0.27μmの二酸化チタン粒子を水に添加し、サンドミルを用いて予備粉砕を行い、二酸化チタン濃度300g/Lの水性スラリーを得た。この水性スラリー0.7Lを攪拌しながら、化学合成品であるケイ酸ソーダ溶液をSiO換算で2質量%に相当するように添加した。その後、水性スラリーを70℃に昇温し、硫酸にて中和処理を行い、二酸化チタン粒子の表面にシリカ被覆層を形成した。10分間攪拌して熟成した後、Al換算で2質量%に相当するアルミン酸ソーダと硫酸を、攪拌しながらpHが5~7の間になるように20分間かけて同時に滴下し、含水アルミナの被覆層を形成した。その後、吸引濾過器を用いて洗浄し、固液分離してから120℃の温度で15時間乾燥することにより、二酸化チタン粒子の表面にシリカ被覆層及び含水アルミナの被覆層を有する白色顔料用酸化チタンを得た。
【0106】
比較作成例6
比較作成例5において、ケイ酸ソーダ溶液をSiO換算で4質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で4質量%に相当するように添加したこと以外は比較作成例5と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0107】
比較作成例7
比較作成例5において、ケイ酸ソーダ溶液をSiO換算で10質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で5質量%に相当するように添加したこと以外は比較作成例5と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0108】
比較作成例8
比較作成例5において、ケイ酸ソーダ溶液をSiO換算で20質量%に相当するように添加したこと、及びアルミン酸ソーダをAl換算で10質量%に相当するように添加したこと以外は比較作成例5と同様にして、白色顔料用酸化チタンを得た。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6