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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049399
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】アンカーボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/06 20060101AFI20240403BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F16B13/06 Z
E04B1/58 503G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011831
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】591091641
【氏名又は名称】三宅 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 晃
【テーマコード(参考)】
2E125
3J025
【Fターム(参考)】
2E125AF01
2E125AG13
2E125BA18
2E125BB19
2E125BB25
3J025AA07
3J025BA05
3J025CA03
(57)【要約】
【課題】要求される引き抜き強度に応じた施工が可能なアンカーボルトを得る。
【解決手段】ボルトの先端に鍔状の当たり止めを設けておく。拡張リングは、筒体の後方半分に軸方向のスリットで複数に分割されて拡張部を形成する。また、前記筒体の先端に、後述の雌テーパに符合する雄デーパを備え、後端に前記雄テーパを受ける雌テーパが形成される。前記テーパリングは、先端に前記拡張リングの後端に設けた雌テーパに符合する雄テーパを備えとともに、回り止めとなる複数の突起を周囲に備えている。前記ボルトに対して強度的に必要な個数の前記拡張リングを挿通し、更に、テーパリング、締め付けナットが上記の順に先方から後方に向かって配列される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に鍔状の当たり止めを設けたボルトと、
筒体の後方半分に軸方向のスリットで複数に分割された拡張部を備え、前記筒体の後端に設けられた軸心に沿って先方から後方に向かって径が大きくなる雌テーパと、前記筒体の先端に設けられ、前記雌テーパに符合する雄テーパを備えた拡張リングと、
先端に、前記拡張リングの後端に設けた雌テーパに符合する雄テーパを備えるとともに、周囲に回り止めとなる複数の突起を備えたテーパリングと、
前記ボルトに対して強度的に必要な個数の拡張リング、テーパリング、締め付けナットが先方から後方に向かって上記の順で挿通された配列と
を備えたことを特徴とするアンカーボルト。
【請求項2】
前記拡張リングの前記拡張部が、使用前の状態で後方に向かって微小角度開いた請求項1に記載のアンカーボルト。
【請求項3】
前記拡張リングに設けられた雌テーパが、後端から先端方向に向かって段階的に設けられた段階雌テーパである請求項1に記載のアンカーボルト。
【請求項4】
前記テーパリングの先後両端に雄テーパを形成し、前記ボルトに対して拡張部を後方に向けた拡張リング、テーパリング、拡張部を先方に向けた拡張リング、締め付けナットが先方から後方に向かって上記の順で挿通された請求項1に記載のアンカーボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンカーボルトに関し、特に、強度の可変選択が可能なアンカーボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに対して、構造物を固定する際にアンカーボルトが用いられる。
【0003】
特開平10-184627号公報に開示するアンカーボルトは、先端がテーパ状に径が大きくなったヘッドを持ったボルトを使用している。前記ボルトに対して、先端部に軸方向に周壁を複数分割するスリットが設けられた拡張片を備えたスリーブが挿通され、前記ヘッドのテーパに前記拡張片が対応する構成としている。
【0004】
上記の構成によって、ボルトがナットで引き上げられると、前記テーパを持ったヘッドが拡張片に食い込んで、当該拡張片の径が固定孔の中で拡大して、アンカーボルトは固定孔に固定されることになる。
【0005】
特開2017-96470号公報に開示するアンカーボルトは、ボルトに対して、先端部に軸方向にスリットが入れられ拡張部となしたスリーブが挿通され、更に、その先端にテーパ状のコーンナットが挿通されている。これによって、ボルトを後端で回すと、前記コーンナットが、前記拡張部に食い込んで、当該拡張部を広げる構成になっている。
【0006】
以上の2例は、いずれも固定孔の浅い方から深い方に向かって拡張部が拡大する。従って、外から軸方向に大きな引っ張り力が掛かったときには、ボルトが抜ける恐れがある。施工時の前記固定孔の状態、コンクリートや金属の経年劣化等が大いに影響することは勿論である。
【0007】
図7は、固定孔の深い方から浅い方に向かって拡張部が拡大する構造を実現したアンカーボルトである。
【0008】
ボルト50の先端側51と後端側52でネジの方向を逆に形成しておき、先端側51に前記拡張リング55を、前記拡張部をボルトの後端方向に向けて嵌め込み、後端側52から、先端に雄テーパを備えたナット56を挿入する。六角レンチを前記ナット56側から挿入して、前記ボルト50を前記拡張リング55とナット56が互いに先後端を突き合わす方向に回転させると、前記ナット56の先端の雄テーパ58は前記拡張リング55の後端に形成した雌テーパ57に食い込んで、拡張リング56が固定孔の口方向に開いた状態を形成することができ、ボルトの抜け落ちを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-184627号公報
【特許文献2】特開2017-96470号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】サンコーテクノ株式会社ホームページ(http://www.sanko-techno.co.jp/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記したように、特許文献1、特許文献2に示す構造は、拡張部の径が、固定孔の奥に向かって広がるようになっているので、固定孔の施工に不具合がある場合や、経年的なコンクリートの劣化、金属の劣化にともない抜けやすくなり、大事故に繋がりかねない危険性がある。
【0012】
図8に示した構成は、ボルトの先端側と後端側で逆方向にネジを切って、当該ボルトを回転させると拡張リングと、ナットが逆方向に進行する構造になっているので、拡張リングは、ボルトの回転に伴う供回りもなく、固定孔の奥から手前に向かって広がるようになっている。従って、前記した不都合は改善されるが、ボルトの先端側と後端側で逆方向にネジを切る必要がある点で、施工上の煩わしさがあり、ひいてはコストデメリットとなり、製品化にもコストが掛かり過る欠点がある。
【0013】
また、上記いずれの従来技術においても、拡張リングの肉厚は要求される引き抜き強度に応じた厚さにする必要があり、メーカ側は種々の肉厚の拡張リングを用意しておく必要があり、非常に高価なものになり一般工事には向かない欠点がある。
【0014】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、拡張部の径が、固定孔の出口方向に向かって広がり、しかも要求される引き抜き強度に応じた施工が可能なアンカーボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下のボルトと、拡張リングと、テーパリングと、拡張リングとテーパリングの配列とよりなる。
【0016】
前記ボルトの先端に鍔状の当たり止めを設けておく一方、以下の拡張リングと、テーパリングを用意しておく。
【0017】
前記拡張リングは、筒体の後方半分に軸方向のスリットで複数に分割されて拡張部を形成する。また、前記筒体の先端に、後述の雌テーパに符合する雄デーパを備え、後端に前記雄テーパを受ける雌テーパが形成される。
【0018】
前記テーパリングは、先端に前記拡張リングの後端に設けた雌テーパに符合する雄テーパを備えとともに、回り止めとなる複数の突起を周囲に備えている。
【0019】
前記ボルトに対して強度的に必要な個数の前記拡張リングを挿通し、更に、テーパリング、締め付けナットが上記の順に先方から後方に向かって配列される。
【0020】
前記拡張リングの拡張部は、使用前の状態で後方に向かって微小角度開いた状態であると締め付け作業が容易となる。また、前記拡張リングの雌テーパが段階的形成された段階雌テーパとすることでもよい。
【0021】
また、前記テーパリングの先後両端に雄テーパを形成し、前記ボルトに対して拡張リング、テーパリング、逆方向に向けた拡張リング、締め付けナットが上記の順に先方から後方に向かって挿通され構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、メーカ側は同じ大きさの拡張リングを必要用意すれば足り、ユーザ側は、施工箇所に要求される引き抜き強度に応じて前記同じ大きさの拡張リングをいくつ使用するかの選択ができる。従って、同じ形状・大きさの拡張リングの数を整えることによって、必要な強度を得ることができると同時に、施工費用を抑えることができる。
【0023】
また、固定孔の内部で山状に、拡張リングの拡張部が食い込むようにすることもでき、極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の使用前の状態を示す側面図である。
図2】本発明の使用状態を示す側面図である。
図3】本発明に使用する拡張リングとテーパリングの斜視図である。
図4】拡張リングとテーパリングの噛み合わせ状態を示す図である。
図5】拡張リングの別の実施形態を示す図である。
図6】本願発明の別の構成を示す図である。
図7図5の構成の使用状態を示す図である。
図8】従来のアンカーの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図4は本発明の1実施形態を示す図であり、図1は施工前の状態、図2は施工後の状態、図3は、図4は拡大図である。
【0026】
まず、図3図4に拡大図で示す拡張リングと、テーパリングが用意される。
【0027】
すなわち、前記拡張リング2は、所定長さの筒状体の後半部に軸方向に複数(3~5本:図面上は3本)のスリット21が形成され、分割されて拡張部が形成される。更に、前記筒状体の先端に、先端から後端に向かって径が大きくなるように雄テーパ22が形成され、後端には、前記先端に形成された雄テーパ22が嵌り込む雌テーパ23が形成される。
【0028】
また、前記テーパリング3は所定長さの筒状体の先端に、前記拡張リング2の後端の雌テーパ23に嵌り込む雄テーパ32が形成される。さらに、前記筒状体の周囲の軸方向に回り止めとなる複数の突起33が形成される。
【0029】
上記の拡張リング2、テーパリング3に形成されたテーパは直線的であっても、Rを持った形状であってもよい。また、上記拡張リング2の拡張部は、使用前の状態で微小角度開いた状態にしておくと、施工時により開きやすくなる利点がある。前記微小角度の程度は、開いた先端がテーパリング3の前記回り止めの突起33の高さを超えない程度である。
【0030】
図1に示すように、ボルト1の先端に当該ボルト1より径の大きい鍔状の当たり止め11が固定され、前記拡張リング2が、要求される引き抜き強度に応じた数が挿通され、更に前記テーパリング3が挿通される。ボルト1の後端は鍔状のワッシャ12を介してナット13が嵌合される。または、前記ワッシャ12及びナット13として、ワッシャとナットの両者が一体になったワッシャ付きナットを用いてもよい。
【0031】
前記鍔状の当たり止め11の径は、前記拡張リング2と同じか、やや小さくする。また、前記鍔状のワッシャ12は、後述する固定孔40の径より大きくなる。また、前記拡張リング2の径と前記テーパリング3の径は同じとなる。
【0032】
以上の構成のアンカーボルトの使用状態について以下に説明する。
【0033】
まず、従来と同様、コンクリートの目的の箇所に、前記拡張リング2が嵌り込む径の固定孔40がドリルで開けられる。当該固定孔40に対して所定の数(図1では3つ)の拡張リング2を挿通したアンカーボルトが、前記後端のワッシャ12が固定孔40の表面に接した状態になるまで挿入される。このとき、前記テーパリング3の周囲に設けた回り止め33でテーパリング3の回転は固定された状態となる。
【0034】
前記の状態で、ナット13を締め付けると、図2に示すように、先方側の拡張リング2の後端の雌テーパ23に対して、中の拡張リング2の先端の雄テーパ22が食い込み、先方側の拡張リング2の拡張部が徐々に開くことになる。
【0035】
上記と同時に、中の拡張リング2の雌テーパ23に後側の拡張リング2の先端の雄テーパ22が食い込むことになり、更に、後側の拡張リング2の後端の雌テーパ23にテーパリング3の先端の雄テーパ33も食い込むので、3つの拡張リング2の拡張部が同時に開くことになる。
【0036】
上記の拡張リング3の拡張部は、スリット23の根本にまで雄テーパ22(32)が食い込むまで開くことになり、この意味でスリット23の根本がストッパーとなる。
【0037】
上記のように構成すると、拡張リングの数を増減することで、要求される引き抜き強度に応じることができることになる。もっともボルト1の長さは拡張リングの数に応じた長さとする必要がある。
【0038】
すなわち、ユーザは、複数個所の施工に対して、個々の箇所に要求される強度に応じた数の拡張リング2と、前記強度に応じた長さのボルト1を選択購入することで足りることになる。またメーカは、同じ大きさの拡張リングを用意すれば足りるので、製造コストを下げることができることになる。
【0039】
実際に径10mmのボルト1に3個の拡張リング2とテーパリング3を通し、コンクリートに開けた固定孔40に打ち込んで後端のナット13を締め付けると、ボルト1が切れる程の強度が得られた。
【0040】
図5は本発明の拡張リング2の別の実施形態を示すものである。
【0041】
図3図4に示す雌テーパ23を、後端から先端方向に向かって複数段階(図面上は3つ)に分割した、段階雌テーパ23a、23b、23cを設け、それに対応して、肉厚が厚くなっている。これによって、捻じ込み初期の負荷が小さくなり、しかも拡張部が開きやすいので施工が容易となる。
【0042】
図6は本願発明の別の利用方法を示すものである。
【0043】
まず、テーパリング30には、先後端に拡張リング2に形成した雌テーパ23に符合する雄テーパ32を設けておく。この状態で、ボルト1に対して、拡張部を後端側に向けた拡張リンク2、テーパリング3、拡張部を先端側に向けた拡張リンク2の順で、更にワッシャ12とナット13を配列してアンカーボルトを構成する。
【0044】
当該アンカーボルトを前記固定孔40に差し込んで、前記ナット13を締め付けると、図7に示すように、先端側の拡張リング2と後端側の拡張リング2の雌テーパ23が、真ん中にあるテーパリング30の先後両端に設けた雄テーパ32に食い込んで先後の拡張リング2の拡張部が同時に開くことになる。
【0045】
これによって、固定孔40への食い込みが山状になり、1方向からの食い込みに比べて遥かに強度を増すことになる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように本発明は、メーカ側は同じ大きさの拡張リングを多数用意すれば足り、ユーザ側は、施工箇所に応じて前記同じ大きさの拡張リングをいくつ使用するかの選択ができる点で、産業上極めて有益である。また、固定孔の内部で山状に、拡張リングの拡張部が食い込むようにすることもでき、極めて有効である。
【符号の説明】
【0047】
1 ボルト
2 拡張リング
3 テーパリング
11 当たり止め
12 ワッシャ
13 ナット
21 スリット
22 雄テーパ
23 雌テーパ
23a、23b、23c 段階雌テーパ
30 テーパリング
32 雄テーパ
33 回り止め
40 固定孔
50 ボルト
51 ボルトの先端側
52 ボルトの後端側
55 拡張リング
56 ナット
57 雌テーパ
58 雄テーパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明は、メーカ側は同じ大きさの拡張リングを必要数用意すれば足り、ユーザ側は、施工箇所に要求される引き抜き強度に応じて前記同じ大きさの拡張リングをいくつ使用するかの選択ができる。従って、同じ形状・大きさの拡張リングの数を整えることによって、必要な強度を得ることができると同時に、施工費用を抑えることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
以上説明したように本発明は、メーカ側は同じ大きさの拡張リングを必要数用意すれば足り、ユーザ側は、施工箇所に応じて前記同じ大きさの拡張リングをいくつ使用するかの選択ができる点で、産業上極めて有益である。また、固定孔の内部で山状に、拡張リングの拡張部が食い込むようにすることもでき、極めて有効である。