(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004940
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20240110BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240110BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
A01P1/00
A01N25/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104853
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川村 泰史
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BB18
4H011DA02
4H011DA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、モリブデン酸銀を含み、効率良く抗ウイルス性を発揮する抗ウイルス剤を提供することを課題とする。
【解決手段】粒度分布におけるD90が10μm以下であるモリブデン酸銀粒子を含む、抗ウイルス剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン酸銀粒子を含み、
前記モリブデン酸銀粒子は、粒度分布におけるD90が10μm以下である、抗ウイルス剤。
【請求項2】
前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD50が0.5μm以上5μm以下である、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
【請求項3】
前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD10が0.05μm以上1.7μm以下である、請求項1又は2に記載の抗ウイルス剤。
【請求項4】
RNAウイルスの不活性化に用いられる、請求項3に記載の抗ウイルス剤。
【請求項5】
エンベロープを有さない前記RNAウイルスの不活性化に用いられる、請求項4に記載の抗ウイルス剤。
【請求項6】
前記RNAウイルスであるネコカリシウイルスの不活性化に用いられる、請求項5に記載の抗ウイルス剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤に関し、具体的には、モリブデン酸銀を含む抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデン酸銀は、抗ウイルス性を有することが知られている。よって、モリブデン酸銀を各種製品に配合することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建材などの樹脂製品にモリブデン酸銀を配合することが記載されている。また、特許文献1の実施例には、モリブデン酸銀(実施例1)を油性ニスに配合して調製した樹脂エマルション(樹脂組成物)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、銀化合物であるモリブデン酸銀は、高価格であるため、各種製品における配合量の低減が望まれる。一方で、配合量の低減は、該製品の抗ウイルス性を低下させるおそれがある。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、モリブデン酸銀を含み、効率良く抗ウイルス性を発揮する抗ウイルス剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る抗ウイルス剤は、
モリブデン酸銀粒子を含み、
前記モリブデン酸銀粒子は、粒度分布におけるD90が10μm以下である。
【0008】
かかる構成の抗ウイルス剤は、効率良く抗ウイルス性を発揮する。
【0009】
また、本発明に係る抗ウイルス剤は、好ましくは、
前記モリブデン酸銀粒子は、粒度分布におけるD50が0.5μm以上5μm以下である。
【0010】
かかる構成の抗ウイルス剤は、より効率良く抗ウイルス性を発揮し、具体的には、インフルエンザウイルスなどのエンベロープを有するウイルスやネコカリシウイルスなどのエンベロープを有さないウイルスといったRNAウイルスに対しても効率良く抗ウイルス性を発揮する。
【0011】
また、本発明に係る抗ウイルス剤は、好ましくは、
前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD10が0.05μm以上1.7μm以下である。
【0012】
かかる構成の抗ウイルス剤は、さらに効率良く抗ウイルス性を発揮し、具体的には、エンベロープを有さないRNAウイルスに対して効率良く抗ウイルス性を発揮し、好ましくは前記RNAウイルスであるネコカリシウイルスに対して効率よく抗ウイルス性を発揮する。
【0013】
また、本発明に係る抗ウイルス剤は、好ましくは、RNAウイルスの不活性化に用いられ、より好ましくは、エンベロープを有さない前記RNAウイルスの不活性化に用いられ、さらに好ましくは、前記RNAウイルスであるネコカリシウイルスの不活性化に用いられる。
【0014】
かかる構成の抗ウイルス剤は、上記のようなRNAウイルスに対して効率良く抗ウイルス性を発揮するため、かかるウイルスへの用途に好適である。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明によれば、モリブデン酸銀を含み、効率良く抗ウイルス性を発揮する抗ウイルス剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る抗ウイルス剤について説明する。なお、以下では、本実施形態の抗ウイルス剤と、樹脂とを含む樹脂組成物を例示する。該樹脂組成物の用途としては、例えば、樹脂成形体、塗料が挙げられる。
【0017】
本実施形態の抗ウイルス剤は、モリブデン酸銀粒子を含む。前記モリブデン酸銀粒子は、モリブデン酸銀が粒子を形成したものである。前記モリブデン酸銀は、銀塩とモリブデン酸塩とから調製される塩である。前記銀塩としては、硝酸銀、酢酸銀、又は硫酸銀などが挙げられる。前記モリブデン酸塩としては、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム、又はモリブデン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0018】
前記モリブデン酸銀粒子は、前記モリブデン酸銀の他に、前記銀塩と前記モリブデン酸塩との反応で生じる副生成物を含んでいてもよい。かかる副生成物としては、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどの硝酸塩、酢酸ナトリウムや酢酸カリウムなどの酢酸塩、硫酸ナトリウムや硫酸カリウムなどの硫酸塩が挙げられる。
【0019】
前記モリブデン酸銀粒子の総質量に対する前記モリブデン酸銀の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、94.5質量%以上であることがより好ましく、98.5質量%以上であることがさらに好ましい。一方、前記モリブデン酸銀粒子の総質量に対する前記副生成物の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5.5質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
前記抗ウイルス剤は、粉体であってもよく、前記モリブデン酸銀粒子が水や有機溶媒などの溶媒に分散されたスラリー状の分散体であってもよい。前記粉体の場合、前記抗ウイルス剤は、分散剤、紫外線吸収剤、キレート剤、変色抑制剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、充填剤、帯電防止剤を含むことが好ましい。前記分散体の場合、前記抗ウイルス剤は、分散剤、粘度調整剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、キレート剤、変色抑制剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、充填剤などを含むことが好ましい。
【0021】
前記抗ウイルス剤の総質量に対する前記モリブデン酸銀粒子の含有量は、前記粉体の場合には20質量%以上であることが好ましい。また、前記分散体の場合には、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。前記抗ウイルス剤の総質量に対する前記モリブデン酸銀粒子の含有量は、通常90質量%以下である。
【0022】
本実施形態のモリブデン酸銀粒子は、粒度分布における90%累積体積粒度D90が10μm以下である。また、本実施形態のモリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布における50%累積体積粒度D50が5μm以下である。さらに、本実施形態のモリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布における10%累積体積粒度D10が1.7μm以下である。かかる粒度のモリブデン酸銀粒子を含む抗ウイルス剤は、従来技術よりも効率良く抗ウイルス性を発揮する。なお、前記粒度分布は、レーザー回折散乱法により測定され、具体的には、実施例に記載の測定方法によって測定される。また、前記副生成物を含んだ状態で測定することができる。
【0023】
また、本実施形態のモリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD90が1.0μm以上であり、D50が0.5μm以上であり、D10が0.05μm以上である。これによって、モリブデン酸銀粒子が樹脂組成物の表面から露出し易くなり、延いては、抗ウイルス性を発揮し易くなる。
【0024】
前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD90が5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。また、前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD50が3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。さらに、前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD10が1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。かかる粒度のモリブデン酸銀を含む抗ウイルス剤は、RNAウイルスの不活性化に用いることができ、具体的には、ネコカリシウイルス(一本鎖プラス鎖RNAウイルス)などのエンベロープを有さないウイルスに加えて、インフルエンザウイルス(一本鎖マイナス鎖RNAウイルス)などのエンベロープを有するウイルスの不活性化に用いることができる。なお、ウイルスの不活性化とは、ウイルスを殺すこと、ウイルスの増殖を抑制すること、又はウイルスの感染性を低減することを意味する。
【0025】
前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD50が0.5μm以上であることが好ましい。さらに、前記モリブデン酸銀粒子は、前記粒度分布におけるD10が0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。これによって、モリブデン酸銀粒子が樹脂組成物の表面からさらに露出し易くなる。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物が樹脂成形体に用いられる場合、前記樹脂としては、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン性の不飽和結合を有する有機カルボン酸誘導体とエチレンとの共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体(AES)などのスチレン系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)や不飽和ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、及びフェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましい。
【0027】
前記樹脂成形体によって構成される樹脂製品としては、例えば、手すり、床材、壁紙などの建材、便座などの電化製品、スマートフォンやタブレットなどの携帯用電子機器を構成する筐体、コピー機などのOA機器を構成する筐体や操作ボタンが挙げられる。また、該樹脂製品として、各種製品の包装用フィルム、OA機器、電化製品、自動販売機、及びエレベータなどの操作ボタンに貼付するフィルム、タブレットなどの画像表示部に貼付するフィルム、抗菌シートなどが挙げられる。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物が塗料に用いられる場合、前記樹脂としては、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ系樹脂、メラミン系樹脂、及びウレタン系樹脂が好ましい。この他、紫外線硬化型のウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及びエポキシ系樹脂なども好ましい。
【0029】
前記塗料は、各種製品の表面をコーティングするために用いられ得る。
【0030】
前記樹脂組成物は、各製品に種々の性能を付与するための成分として、抗菌剤、防カビ剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色抑制剤、可塑剤、軟化剤、粘度調整剤、防汚剤、顔料、染料、脱臭剤、芳香剤、香料、展着剤、防錆剤、滑剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、帯電防止剤、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤、発泡剤、有機充填剤、無機充填剤、樹脂強化用繊維、難燃剤などを含んでいてもよい。
【0031】
次に、本実施形態の抗ウイルス剤の製造方法について説明する。
【0032】
本実施形態の抗ウイルス剤の製造方法は、前記銀塩と前記モリブデン酸塩とを水中で反応させることによって前記モリブデン酸銀を生成させる反応工程と、反応液を固液分離することによって前記モリブデン酸銀を含むウェット状態の析出物を得る固液分離工程と、該析出物を乾燥させることによって水分を除去して前記モリブデン酸銀を含む乾燥物を得る乾燥工程と、前記乾燥物を粉砕して前記モリブデン酸銀粒子を得る粉砕工程とを備える。本実施形態の製造方法では、前記粉砕工程で得られたモリブデン酸銀粒子を抗ウイルス剤として取得する。
【0033】
前記反応工程における反応液の基質濃度(前記銀塩と前記モリブデン酸塩とを合わせた基質濃度)は、特に限定されないが、1.0mol/L以下とすることが好ましい。基質濃度を1.0mol/L以下の低濃度にすることにより、前記モリブデン酸銀粒子の粒度を小さくし易くなる。
【0034】
本実施形態の反応工程では、水に前記銀塩を添加して調製した銀塩水溶液と、水に前記モリブデン酸塩を添加して調製したモリブデン酸塩水溶液とを作製し、前記モリブデン酸塩水溶液に前記銀塩水溶液を滴下することによってこれらを混合する。前記銀塩水溶液の滴下速度を速くすることによって粒度の大きいモリブデン酸銀粒子が得られ、前記銀塩水溶液の滴下速度を遅くすることによって粒度の小さいモリブデン酸銀粒子が得られる。なお、前記銀塩水溶液に前記モリブデン酸塩水溶液を滴下してもよい。
【0035】
また、本実施形態の反応工程では、撹拌装置を用いて反応液を撹拌することが好ましい。撹拌速度を速くすることにより、粒度の小さいモリブデン酸銀粒子が得られ、撹拌速度を遅くすることにより、粒度の大きいモリブデン酸銀粒子が得られる。
【0036】
本実施形態の固液分離工程では、反応液を減圧濾過や遠心分離などの方法によりろ過することによって、前記析出物と水とを分離する。また、前記析出物をイオン交換水や蒸留水などによってさらに洗浄する。この他、反応液中に析出した析出物が沈殿するように反応液を静置し、該反応液から上澄液を除去してもよい。
【0037】
前記乾燥工程では、前記析出物を大気圧条件下で乾燥して前記乾燥物を得てもよく、前記析出物を減圧条件下で乾燥して前記乾燥物を得てもよい。乾燥温度は、60~120℃であることが好ましい。
【0038】
前記粉砕工程では、ジェットミル、ピンミル、ハンマーミル、遊星ミル、振動ミル、ビーズミルなどの粉砕機を用いて前記乾燥物を粉砕し、前記モリブデン酸銀粒子とすることが好ましい。
【0039】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係る抗ウイルス剤は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る抗ウイルス剤は、上記した作用効果により限定されるものではない。本発明に係る抗ウイルス剤は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0040】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0041】
[抗ウイルス剤の調製]
表1に示す粒度分度のモリブデン酸銀粒子を含む抗ウイルス剤を調製した。粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD-2200)を用い、下記の測定条件で測定した。
(粒度分布の測定条件)
(1)抗ウイルス剤1gを100mLガラスビーカーに採取し、イオン交換水50mLを徐々に加え、ガラス棒で撹拌し、測定試料を作製した。
(2)測定装置の屈折率に2.40-0.20iを選択し、撹拌回転数を8に調整し、測定試料2mLを測定装置に投入した。超音波を3分間照射後、粒度分布を測定し、D10、D50、及びD90の値を読み取った。
【0042】
【0043】
[抗ウイルス性コーティング材試験片の調製]
表2又は表3に示す割合で、実施例ないし比較例の抗ウイルス剤と、水性ウレタン樹脂エマルションであるハイドラン(登録商標)WLS-201(DIC株式会社)とを混合し、塗料(樹脂組成物)を調製した。各塗料をPPC用紙に60ml/m2となるように塗布し、110℃で3分間加熱することで、塗料でコーティングされたPPC用紙を作製し、これを5cm×5cmに裁断することで試験片を得た。
【0044】
[抗ウイルス性評価]
(インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性試験)
ISO21702に従い、インフルエンザウイルスH3N2株(influenza A virus:A/Hong Kong/8/68:TC adapted ATCC VR-1679)をMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)により培養し、ウイルス感染価2×107Plaque Forming Unit/ml(以下、PFU/mlと記す)の試験インフルエンザウイルス懸濁液を得た。
作製した試験片の1枚をプラスチックシャーレに入れ、該試験片の略中心域に上述の試験インフルエンザウイルス懸濁液を0.4ml滴下した後、試験ウイルス懸濁液全体を覆うように4cm×4cmのポリエチレンフィルムを載置し、25℃、湿度95%下で24時間保管した。次いで試験片とポリエチレンフィルムの間の試験インフルエンザウイルス懸濁液を、10mlのSCDLP培地(日本製薬)により洗い出し、この洗い出し液をEMEM培地を用いて10倍、100倍、1000倍、10000倍および100000倍に希釈し、MDCK細胞を対象にプラーク測定法によりインフルエンザウイルス感染価(IV感染価対数値)を測定した。
【0045】
(ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス性試験)
ISO21702に従い、ネコカリシウイルスF-9株(Feline calicivirus、Strain:F-9 ATCC VR-782)をCRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)により培養し、ウイルス感染価2×107Plaque Forming Unit/ml(以下、PFU/mlと記す)の試験ネコカリシウイルス懸濁液を得た。
前記で用意した試験片1枚をプラスチックシャーレに入れ、該試験片の略中心域に上述の試験ネコカリシウイルス懸濁液を0.4ml滴下した後、試験ウイルス懸濁液全体を覆うように4cm×4cmのポリエチレンフィルムを載置し、25℃、湿度95%下で24時間保管した。次いで試験片とポリエチレンフィルムの間の試験ネコカリシウイルス懸濁液を、10mlのSCDLP培地(日本製薬)により洗い出し、この洗い出し液をEMEM培地(富士フイルム和光純薬製)を用いて10倍、100倍、1000倍、10000倍および100000倍に希釈し、CRFK細胞を対象にプラーク測定法によりネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定した。
【0046】
(評価基準)
IV感染価対数値又はFCV感染価対数値が2.0以上の場合、抗ウイルス性有り(○)と評価し、2.0未満の場合、抗ウイルス性無し(×)と評価した。インフルエンザウイルスについての結果は表2に示したとおりであり、ネコカリシウイルスについての結果は表3に示したとおりである。
【0047】
【0048】