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  • 特開-オリーブオイルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049402
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】オリーブオイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/02 20060101AFI20240403BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A23D9/02
A23L19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019633
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】521063421
【氏名又は名称】Olive Wellness株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】松村 成師
(72)【発明者】
【氏名】金丸 洋一
(72)【発明者】
【氏名】高尾 豊弘
【テーマコード(参考)】
4B016
4B026
【Fターム(参考)】
4B016LE05
4B016LG01
4B016LP02
4B016LP11
4B016LP13
4B026DC04
4B026DC06
4B026DG01
4B026DP10
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】新鮮、かつ、高品質のオリーブオイルを消費者に提供可能にする。
【解決手段】凍結過程と、解凍過程と、抽出過程とを備える。凍結過程では、収穫後のオリーブの果実を、急速冷凍する。解凍過程では、凍結させたオリーブの果実を一定期間冷凍保存した後、冷凍保存したオリーブの果実を、緩慢解凍する。抽出過程では、解凍後のオリーブの果実からオリーブオイルを抽出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫後のオリーブの果実を、急速冷凍する凍結過程と、
凍結させたオリーブの果実を一定期間冷凍保存した後、緩慢解凍する解凍過程と、
解凍後のオリーブの果実からオリーブオイルを抽出する抽出過程と
を備えるオリーブオイルの製造方法。
【請求項2】
前記凍結過程は、収穫後のオリーブの果実を、-30℃以下の液体中に20~40分間浸して行われる
請求項1に記載のオリーブオイルの製造方法。
【請求項3】
前記解凍過程は、冷凍保存したオリーブの果実を、常温の雰囲気中に12~24時間置く緩慢解凍で行われる
請求項1又は2に記載のオリーブオイルの製造方法。
【請求項4】
前記凍結過程では、
前記収穫後のオリーブの果実を、容器内に収容し、
オリーブの果実が収容された容器内の気体を除き、
前記容器を、-30℃以下の液体に浸す
請求項1~3のいずれか一項に記載のオリーブオイルの製造方法。
【請求項5】
前記凍結過程で凍結されたオリーブの果実は、-15℃以下の環境で冷凍保存される
請求項1~4のいずれか一項に記載のオリーブオイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オリーブオイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康効果が期待できることなどから、オリーブオイルの需要が高まっている。一方、オリーブオイルは、生産地、品種、収穫時期などにより品質が異なる。また、オリーブの果実の収穫後果実の酸化が始まるので、収穫後速やかにオリーブオイルの抽出を行わないと、高品質のオリーブオイルが得られない。
【0003】
オリーブの果実の収穫時期や、生産地による制約を受けるため、必要なときに、新鮮、かつ、高品質のオリーブオイルを消費者に提供するのは難しい。これまで、収穫後のオリーブの果実を冷蔵保存することで、オリーブの果実の収穫後、長期間保存した後に抽出したオリーブオイルが、国際オリーブ協会(IOC:International Olive Council)の規格を満たす技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、長期保存によるオリーブオイルの品質劣化を防ぐために、収穫後のオリーブの果実を冷凍保存し、冷凍状態のままオリーブオイルを抽出する技術の提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8,377,488号明細書
【特許文献2】特開2020-41110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の状況に鑑みて、この出願に係る発明者らが鋭意検討したところ、収穫後のオリーブの果実を急速冷凍して、冷凍保存することにより、より高品質のオリーブオイルを抽出できることを見出した。
【0006】
この発明の目的は、新鮮、かつ、高品質のオリーブオイルを消費者に提供可能にする、オリーブオイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のオリーブオイルの製造方法は、凍結過程と、解凍過程と、抽出過程とを備える。凍結過程では、収穫後のオリーブの果実を、急速冷凍する。解凍過程では、凍結させたオリーブの果実を一定期間冷凍保存した後、冷凍保存したオリーブの果実を、緩慢解凍する。抽出過程では、解凍後のオリーブの果実からオリーブオイルを抽出する。
【0008】
上述のオリーブの製造方法の好適実施形態によれば、凍結過程は、収穫後のオリーブの果実を-30℃以下の液体中に20~40分間浸して行われる。また、解凍過程は、常温の雰囲気中に12~24時間置く緩慢解凍で行われる。
【0009】
また、上述のオリーブの製造方法のさらなる好適実施形態によれば、凍結過程では、収穫後のオリーブの果実を、容器内に収容し、オリーブの果実が収容された容器内の気体を除き、容器を、-30℃以下の液体に浸す。また、上述のオリーブの製造方法の実施にあたり、凍結過程で凍結されたオリーブの果実は、-15℃以下の環境で冷凍保存されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明のオリーブオイルの製造方法によれば、収穫後のオリーブの果実を、急速冷凍し、冷凍保存後のオリーブを緩慢解凍させることで、一定期間冷凍保存した場合であっても、収穫直後のオリーブから抽出したオリーブオイルと同程度に、新鮮、かつ、高品質のオリーブオイルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】オリーブオイルの製造方法における処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0013】
(オリーブオイルの製造方法)
図1を参照して、この発明のオリーブオイルの製造方法の一実施形態を説明する。図1は、オリーブオイルの製造方法における処理フローを示す図である。
【0014】
先ず、ステップ1(以下、ステップをSで表す。)の脱気工程が行われる。脱気工程S1では、収穫されたオリーブの果実を容器に収容する。この容器は、少なくとも-30℃程度の低温化で使用でき、また、真空パック等が可能な、任意好適な従来公知のものを用いることができる。この容器として、例えば、ビニール袋を用いることができる。容器内にオリーブの果実が収容された後、容器は密閉されるとともに、内部の気体が除かれる。このとき、容器内は、いわゆる真空状態になるのが好ましい。
【0015】
その後、凍結過程S2において、収穫後のオリーブの果実を、急速冷凍する。この急速冷凍は、任意好適な従来公知の、液体凍結機又は液体急速凍結機を用いて行うことができる。液体凍結機を用いる場合、例えば、収穫後のオリーブの果実が収容された容器を-30℃又はそれ以下に冷却されたエタノールなどの液体中に20~40分間浸して、急速冷凍が行われる。
【0016】
なお、ここでは、急速冷凍を液体凍結機を用いて行う例を説明するが、これに限定されない。例えば、冷媒として空気を用いるエアブラストを用いてもよい。
【0017】
急速冷凍された、オリーブの果実は、一定期間冷凍保存される。このとき、オリーブの果実は、-15℃の以下の雰囲気中で保存される。この-15℃以下の雰囲気は、例えば、市販されている家庭用冷蔵庫に設けられる冷凍庫や、冷凍配送で用いられる冷凍設備等で実現可能である。したがって、凍結したオリーブの果実を、容易に、保存し、又は、輸送することができる。
【0018】
次に、解凍過程S3において、一定期間冷凍保存されたオリーブの果実を解凍する。この解凍は、緩慢解凍で行われるのが良い。緩慢解凍は、急速冷凍に比べて、単位時間当たりの温度の変化量が小さい解凍方法である。この緩慢解凍は、例えば、冷凍保存したオリーブの果実を、15~25℃の温度範囲である常温の雰囲気中に12~24時間置いて行われる。なお、ここでの緩慢解凍は、加熱等による解凍でも、冷蔵庫内での解凍でもない、屋内又は屋外に置いて行われる解凍である。この緩慢解凍に要する解凍時間は、雰囲気の温度に依存する。例えば、雰囲気の温度が25℃よりも高く、例えば、30℃又はそれ
以上の場合は、12時間よりも短い3時間程度で十分な場合もある。
【0019】
次に、抽出過程S4において、解凍後のオリーブの果実からオリーブオイルを抽出する。この抽出過程は、収穫されたオリーブの果実からオリーブオイルを抽出する、任意好適な従来公知の方法で行うことができるので、ここでは、説明を省略する。
【0020】
(効果)
図1を参照して説明した製造方法を用いて製造されたオリーブオイル(実施例)と、収穫直後の新鮮なオリーブの果実から抽出したオリーブオイル(比較例)とを比較する測定を行った。
【0021】
実施例として、収穫後のオリーブの果実の一部を、-30℃の液体に30分間浸して急速冷凍を行った。冷凍したオリーブの果実を、-18℃の冷凍庫内に36時間冷凍保存した後、常温の雰囲気中に16時間置いて緩慢解凍を行った。その後、解凍されたオリーブの果実からオリーブオイルを抽出した。また、比較例として、収穫後のオリーブの果実の一部から、実施例と同様にオリーブオイルを抽出した。
【0022】
実施例と、比較例についての試験結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1中、酸価及び過酸化物価の分析は、それぞれ、基準油脂分析試験法に準じて行った。また、紫外線吸光度については、IOCにより定められた測定法に準じて行った。表1に示すように、実施例のオリーブオイルは、酸価、過酸化物価、及び、紫外線吸光度の各項目について、比較例のオリーブオイルと同等の値を示している。すなわち、この発明のオリーブオイルの製造方法を用いると、収穫直後の新鮮なオリーブの果実から抽出されるオリーブオイルと同程度の、高品質なオリーブオイルが得られることが示された。
【0025】
なお、酸価、過酸化物価及び紫外線吸光度のいずれの値も、IOCが定める基準に収まっており、この点からもこの発明のオリーブオイルの製造方法によれば、冷凍保存した後であっても、高品質のオリーブオイルが得られることが裏付けられる。
図1