IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 興和株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049405
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】新規吸入剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/435 20060101AFI20240403BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K31/435
A61K31/58
A61K9/72
A61P43/00 121
A61P31/14
A61K45/00
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026301
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 睦男
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC30
4C076CC35
4C076DD37
4C076DD43
4C076EE30
4C076FF68
4C076GG03
4C076GG41
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA43
4C084MA55
4C084NA01
4C084ZB33
4C084ZC08
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA13
4C086BC30
4C086CB22
4C086GA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA43
4C086MA55
4C086NA01
4C086ZB33
4C086ZC08
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】COVID-19の治療薬としての新規な吸入剤の提供。
【解決手段】セファランチン及びステロイド薬類等を用いることを特徴とする吸入剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)セファランチン;
(B)シクレソニド、ブデソニド、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、コルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、デキサメタゾンリン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロン酢酸エステルナトリウム、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、ペラミビル水和物、ナファモスタットメシル酸塩、カモスタットメシル酸塩、ガベキサートメシル酸塩、アバカビル硫酸塩、エファビレンツ、エムトリシタビン、サニルブジン、ジダノシン、ジドブジン、ダナルビル エタノール付加物、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、ドルテグラビルナトリウム、ネビラピン、ネルフィナビルメシル酸塩、ホスアンプレナビル カルシウム水和物、ラテグラビルカリウム、リトナビル及びリルピビリン塩酸塩よりなる群から選ばれる1種以上の薬物を含有する吸入剤。
【請求項2】
成分(A)及び成分(B)が配合されてなる請求項1記載の吸入剤。
【請求項3】
成分(A)を含有する吸入剤及び成分(B)を含有する吸入剤を含む吸入剤キット。
【請求項4】
成分(A)及び成分(B)の空気動力学的質量中位径が0.5~10μmである請求項1~3のいずれか1項記載の吸入粉末剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入剤に関する。
【背景技術】
【0002】
COVID-19(日本名:新型コロナウイルス感染症)は、2019新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって発症する感染症である。COVID-19は、2019年11月に中華人民共和国の武漢で発生が確認され、同年12月にWHOに報告された感染症であり、これ以降世界的に感染が拡大している。その症状は、発熱、空咳、疲労、喀痰、息切れ、咽頭痛、頭痛、筋肉痛、関節痛、嗅覚異常、味覚異常などから始まり、重症例では肺炎が重症化して呼吸不全に陥り、死亡の転帰をとるものである。
その感染力、罹患した際の重症化率等未だ不明な点があることに加え、新型であることから有効な治療法も未だ模索中であり、世界中の人々を不安に陥らせている。
【0003】
これまでに、多数の既存薬物のスクリーニングがなされ、最近になって、セファランチンがCOVID-19の治療薬として期待されている。SARS-CoV-2は細胞表面に存在するACE2(ACE2(Angiotensin-converting enzyme 2、アンジオテンシン変換酵素II)を受容体として結合することによって細胞内に侵入して感染する。セファランチンはSARS-CoV-2とACE2の結合を阻害することで細胞内への侵入を阻止する(非特許文献1)。
また吸入ステロイド薬もCOVID-19の治療薬として検討されている。吸入ステロイド薬は喘息など肺の局所的な炎症を抑制する作用を有し、COVID-19で確認される肺の炎症に対しても抑制する効果が期待される。また一部の吸入ステロイド薬では非構造タンパク質であるNsp15に結合することでSARS-CoV-2の増殖を抑制する(非特許文献2、3)。
ナファモスタットやカモスタット等のたん白分解酵素阻害薬もCOVID-19の治療薬として検討されている。たん白分解酵素阻害薬はSARS-CoV-2が細胞に侵入する最初の過程であるウイルス外膜と細胞膜との融合を阻害し、SARS-CoV-2の感染を阻害する(非特許文献4)。また、抗インフルエンザ薬やHIV治療薬はノイラミニダーゼ阻害作用やキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用といった抗ウイルス作用によりCOVID-19の治療薬として検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://www.tus.ac.jp/mediarelations/archive/20200422_9837.html
【非特許文献2】https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200302_02.pdf
【非特許文献3】https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.11.987016v1.full.pdf
【非特許文献4】https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00060.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、SARS-CoV-2感染に基づく疾患、COVID-19の予防及び/又は治療のための新たな医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、SARS-CoV-2の感染抑制に効果的な薬物として考えられるセファランチン、及びセファランチンとは作用機序の異なる薬物であるステロイド薬類等を同時に最もSARS-CоV-2が感染する部位に適用することを着想した。その結果、セファランチン及びステロイド薬類等を下気道に直接適用できる配合吸入剤又は吸入剤のキット製剤とすることにより、当該目的が達成できることを見出し、さらに、セファランチン及びステロイド薬類等の空気動力学的質量中位径を0.5~10μmとすることにより、下気道に直接セファランチン及びステロイド薬類等を効率よく供給可能な吸入剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
次の成分(A)及び(B):
(A)セファランチン;
(B)シクレソニド、ブデソニド、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、コルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、デキサメタゾンリン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロン酢酸エステルナトリウム、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、ペラミビル水和物、ナファモスタットメシル酸塩、カモスタットメシル酸塩、ガベキサートメシル酸塩、アバカビル硫酸塩、エファビレンツ、エムトリシタビン、サニルブジン、ジダノシン、ジドブジン、ダナルビル エタノール付加物、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、ドルテグラビルナトリウム、ネビラピン、ネルフィナビルメシル酸塩、ホスアンプレナビル カルシウム水和物、ラテグラビルカリウム、リトナビル及びリルピビリン塩酸塩よりなる群から選ばれる1種以上の薬物(以下、ステロイド薬類等ということもある。)を含有することを特徴とする吸入剤を提供するものである。
また、セファランチンやステロイド薬類等の粒子径を空気動力学的質量中位径として0.5~10μmとすると、セファランチンやステロイド薬類等が下気道に効率よく到達する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸入剤は、SARS-CoV-2の感染抑制に効果的な薬物として考えられるセファランチン及びセファランチンとは作用機序の異なるステロイド薬類等の薬物を下気道に直接供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸入剤は(A)セファランチン、並びに(B)シクレソニド、ブデソニド、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、コルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、デキサメタゾンリン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロン酢酸エステルナトリウム、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、ペラミビル水和物、ナファモスタットメシル酸塩、カモスタットメシル酸塩、ガベキサートメシル酸塩、アバカビル硫酸塩、エファビレンツ、エムトリシタビン、サニルブジン、ジダノシン、ジドブジン、ダナルビル エタノール付加物、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、ドルテグラビルナトリウム、ネビラピン、ネルフィナビルメシル酸塩、ホスアンプレナビル カルシウム水和物、ラテグラビルカリウム、リトナビル及びリルピビリン塩酸塩よりなる群から選ばれる1種以上の薬物をエアゾールとして吸入し、下気道に適用する製剤である。
【0010】
本発明で用いるセファランチン(成分(A))は、化学名を6’,12’-Dimethoxy-2,2’-dimethyl-6,7-[methylenebis(oxy)]oxyacanthanとする化学物質であり、タマサキツヅラフジ、コウトウツズラフジ、ハスノハカズラ等から抽出されうるアルカロイドの一種である。
セファランチンは、放射線による白血球減少症、円形脱毛症・粃糠性脱毛症、滲出性中耳炎、マムシ咬傷の治療に用いられている。本発明のようにセファランチンを吸入剤とした場合には、これらの適応症に加えて、SARS-CoV-2の感染抑制薬、COVID-19の予防及び/又は治療薬として特に有用である。
本発明において、セファランチンは化学合成されたものでも、タマサキツヅラフジ、コウトウツズラフジ、ハスノハカズラ等から抽出されたものでもいずれをも用いることができる。タマサキツヅラフジより抽出される場合は、セファランチンに加えて、イソテトランドリン、シクレアニン、ベルバミン等のセファランチン以外の他のアルカロイドをも含むタマサキツヅラフジ抽出物を用いることも可能である。セファランチンやタマサキツヅラフジ抽出物は市販品があり、購入して用いることが可能であり、また、タマサキツヅラフジ抽出物は公知の手法を用いることにより、タマサキツヅラフジから製造することができる。
【0011】
本発明において、セファランチンとは作用機序の異なり、セファランチンとともに吸入する薬物(成分(B))としては、例えば、シクレソニド、ブデソニド、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、コルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、デキサメタゾンリン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム、メチルプレドニゾロン酢酸エステルナトリウム等のステロイド薬、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ラニナミビルオタン酸エステル水和物、ペラミビル水和物等の抗インフルエンザ薬、ナファモスタットメシル酸塩、カモスタットメシル酸塩、ガベキサートメシル酸塩等のたん白分解酵素阻害薬、アバカビル硫酸塩、エファビレンツ、エムトリシタビン、サニルブジン、ジダノシン、ジドブジン、ダナルビル エタノール付加物、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、ドルテグラビルナトリウム、ネビラピン、ネルフィナビルメシル酸塩、ホスアンプレナビル カルシウム水和物、ラテグラビルカリウム、リトナビル、リルピビリン塩酸塩等のHIV治療薬等が挙げられる。
上述のステロイド薬は肺の局所的な炎症抑制作用のほか、SARS-CoV-2の増殖抑制作用を有することから、また、ナファモスタットメシル酸塩等のたん白分解酵素阻害薬は、SARS-CoV-2の感染阻害作用を有することから、抗インフルエンザ薬やHIV治療薬はノイラミニダーゼ阻害作用やキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用といった抗ウイルス作用により、COVID-19の予防及び/又は治療薬として期待されるものである。
【0012】
吸入に際しては、セファランチン及びステロイド薬類等を配合した複数薬物を同時に吸入可能な配合吸入剤を用いてもよく、セファランチンの吸入剤とステロイド薬類等の吸入剤の複数の吸入剤のキット製剤を用いてもよい。
【0013】
本発明で用いるセファランチン及びステロイド薬類等を下気道(気管、気管支、肺臓)で適用するには、セファランチン及びステロイド薬類等の下気道への到達性の観点から、その粒子径を0.5~10μmとするのが好ましく、0.5~8μmにするのがより好ましく、0.5~6μmとするのが更に好ましい。ここで、セファランチン及びステロイド薬類等の粒子径は、粉末の場合はセファランチン及び/又はステロイド薬類等含有粉末の粒子径であり、液剤の場合はセファランチン及び/又はステロイド薬類等含有噴霧液滴の粒子径である。この粒子径は、粉末の場合は粉末製造時の粉砕、篩過などによって調整することができる。噴霧液滴の場合は、液剤を吸入する際に用いるネブライザの形態(ジェット式、超音波式、メッシュ式等)に応じて、適宜調整すればよい。ここで、粒子径は空気動力学的質量中位径である。
【0014】
吸入剤の形態としては、吸入粉末剤、吸入液剤、吸入エアゾール剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明の吸入剤を使用するに際しては、吸入投与のために適切な器具又は装置を使用するか、吸入用の器具を兼ね備えた容器に充填すればよい。
【0015】
吸入粉末剤は、吸入量が一定となるように調製したセファランチン及びステロイド薬類等の固体粒子のエアゾールとして吸入する製剤であり、セファランチン及びステロイド薬類等はそれぞれ好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~8μm、さらに好ましくは0.5~6μmの粒子径を有する粒子として調製すればよい。ここで、粒子径は空気動力学的質量中位径である。
また、添加剤として、糖や糖アルコールを添加剤として用いることもできる。ここで、糖としては、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖等を挙げることができ、糖アルコールとしては、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等を挙げることができる。
吸入粉末剤の具体例としては、ドライパウダー吸入器(Dry Powder Inhaler;以下、DPIと略する)を挙げることができる。本発明の吸入粉末剤に用いるデバイスはDPIとして通常用いられるものを使用することができる。例えばカプセルを用いるデバイスとして、モノヘラー、ハンディヘラー、ブリーズヘラー、フローキャプス等が挙げられる。またアルミニウムのブリスターを用いるディスクヘラー、ディスカス、エリプタ等が挙げられる。粉末を容器に充填したリザーバ型のデバイスとして、タービュヘイラー、クリックヘラー、スイングヘラー、ツイストヘラーなどが挙げられる。
【0016】
吸入液剤は、ネブライザ等により吸入する液状の吸入製剤である。セファランチン及びステロイド薬類等を適当な溶剤を用いて、溶解又は懸濁し、溶液又は懸濁液として調製すればよい。調製時、等張化剤やpH調節剤等を添加することができる。
吸入液剤の液滴は、ネブライザの形態(ジェット式、超音波式、メッシュ式等)に応じて、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~8μm、更に好ましくは0.5~6μmの液滴に調整すればよい。
本発明の吸入液剤に用いるデバイスはネブライザとして通常用いられるものを使用することができる。例えば圧縮空気で薬液を霧状にするタイプ(ジェット式)、超音波振動子の振動を利用して薬液を霧状にするタイプ(ジェット式)、振動などによって薬液をメッシュの穴から押し出して霧状にするタイプ(メッシュ式)などが挙げられる。
【0017】
吸入エアゾール剤は、容器に充填した噴射剤と共に、一定量のセファランチン及びステロイド薬類等を噴霧し得る定量噴霧式吸入剤である。セファランチン及びステロイド薬類等を適当な溶剤を用いて、溶解又は懸濁し、溶液又は懸濁液を調製し、液状の噴射剤と共に耐圧性の容器に充填し、定量バルブを装着することにより製することができる。溶液又は懸濁液を調製するに際し、分散剤や安定化剤等を添加することができる。吸入エアゾール剤の具体例としては、加圧噴霧式定量吸入器(Metered Dose Inhaler)を挙げることができる。
【0018】
本発明の吸入液剤に係るセファランチンとしては、メディサ新薬株式会社が製造販売するセファランチン(登録商標)注を用いることもできる。具体的にはセファランチン(登録商標)注そのまま、または適当な溶剤を用いて希釈して、ネブライザを用いて吸入すればよい。
【0019】
本発明の吸入液剤に係るステロイド薬類としては、アストラゼネカ株式会社が製造販売するパルミコート(登録商標)吸入液(有効成分:ブデソニド)も用いることができる。具体的にはパルミコート(登録商標)吸入液そのまま、または適当な溶剤を用いて希釈して、ネブライザを用いて吸入すればよい。
【0020】
本発明の吸入剤は、SARS-CoV-2の感染抑制薬、COVID-19の予防及び/又は治療薬として用いることができる。その投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などによって異なるが、通常は成人に対して、セファランチンとして1日1~20mgの範囲が挙げられる。また、ステロイド薬類等は、通常成人に対して1日0.0001mg~1000mgの範囲を挙げられる。これらの投与量は、適宜調整すればよい。
【実施例0021】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下の実施例において、%は質量%を意味する。
【0022】
実施例1
セファランチンを25%、ブデソニドを1%となるように乳糖水和物と混合し、混合物をジェットミルで粉砕し、粉砕物を得た。得られた粉砕物の平均粒子径D50は2.5μmであった。粉砕物と乳糖水和物をセファランチンの濃度が10%、ブデソニド0.4%となるように乳糖水和物と混合し、吸入粉末剤を得た。このとき乳糖水和物はキャリアー乳糖(平均粒子径約120μm)を用いた。また、得られた粉末0.025gをカプセルに充填し、吸入粉末剤充填カプセルを製造した。
【0023】
試験例1
実施例1で得た吸入粉末剤について、吸入用器具であるデバイスを用いた空気動力学的性質の評価をするため、微粒子量(FPF)(%)及び空気動力学的質量中位径を測定した。微粒子量(FPF)(%)及び空気動力学的質量中位径は、日本薬局方 第十七改正第一追補の吸入剤の空気動力学的粒度測定法に準拠して、装置1のマルチステージリキッドインピンジャーを用いて評価した。
その結果、実施例1の吸入粉末剤は、微粒子量(FPF)(%)がセファランチン、ブデソニドで9.9%であり、また空気動力学的質量中位径は4.3μmであったことから肺深部まで薬剤を到達させることが可能と考えられた。
【0024】
実施例2
セファランチン及びシクレソニドをエチルアルコールで溶解し、クエン酸水和物及び精製水を加え、セファランチン及びシクレソニドの最終的な濃度が各々0.5%及び0.04%となるように調製して吸入液剤を製造した。
【0025】
試験例2
実施例2で得られた吸入液剤について、ネブライザを用いて、目視にて液剤が霧状に噴霧されるかを確認した。さらに霧状とした液剤を採取し、顕微鏡で粒子径を確認した。
実施例2で得た吸入液剤は霧状に噴霧され、その粒子径は2~8μmであり、実施例2の液剤は吸入液剤として適切なものであると判断した。
【0026】
製造例1
常法により、下記表1~10に記載の成分及び分量(g)を100g中に含有する吸入粉末剤(処方例1~47)を製造できる。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
【表9】
【0036】
【表10】