(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049414
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】帯電防止助剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/16 20060101AFI20240403BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20240403BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240403BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240403BHJP
【FI】
C09K3/16 102E
C09J133/06
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155632
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 正之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 啓雅
(72)【発明者】
【氏名】今泉 暁
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA04
4J040DF031
4J040HB46
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA32
4J040LA06
4J040LA09
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】低抵抗表面が得られ、かつ、その経時安定性に優れる帯電防止助剤を提供する。
【解決手段】下記式(I)
(式中、R
1は酸素原子を含む炭化水素基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基を示し、
R
2は酸素原子を含んでいても良い炭化水素基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、もしくは水素原子を示す。)
で表される化合物を含む、帯電防止助剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、R
1は酸素原子を含む炭化水素基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基を示し、
R
2は酸素原子を含んでいても良い炭化水素基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、もしくは水素原子を示す。)
で表される化合物を含む、帯電防止助剤。
【請求項2】
R1がエーテル結合を有する炭化水素基を示す、請求項1に記載の帯電防止助剤。
【請求項3】
R
1が下記式(II)
【化2】
(式中、R
3は2価の脂肪族炭化水素基を示し、R
4は炭化水素基を示す。)
で表される基である、請求項1に記載の帯電防止助剤。
【請求項4】
R2が水素原子を示す、請求項1に記載の帯電防止助剤。
【請求項5】
帯電防止剤と、請求項1に記載の帯電防止助剤を含む組成物。
【請求項6】
帯電防止剤がカチオンとアニオンからなる塩であり、カチオンとアニオンのどちらか一方又は両方が有機イオンである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
アクリル系粘着剤と、帯電防止剤と、請求項1に記載の帯電防止助剤を含む粘着剤組成物。
【請求項8】
アクリル系粘着剤と、帯電防止剤と、請求項1に記載の帯電防止助剤を含む粘着剤層。
【請求項9】
基材層と請求項8に記載の粘着剤層を形成してなる粘着シート。
【請求項10】
基材層と請求項8に記載の粘着剤層を含む表面保護フィルム。
【請求項11】
光学フィルムと請求項8に記載の粘着剤層を含む粘着剤付き光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止助剤に関する。また、本発明は、帯電防止助剤を含む組成物、粘着剤組成物、粘着剤層、粘着シート、表面保護フィルム及び粘着剤付き光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板やタッチパネル用基板を貼り合せる際に使用される粘着層には、粘着層表面抵抗を下げて帯電防止をするために無機塩や有機塩などのイオン性化合物を帯電防止剤として添加することがある。粘着層表面に静電気が滞留すると、表面へ微粒子が付着しやすくなり、また、次工程で貼り合せる偏光板やタッチパネル基板などにその静電気が転写されて動作不良の原因となるため、粘着層表面の帯電防止は近年ますます重要になってきている。
【0003】
そのためこれらの帯電防止剤の機能をより発揮させるために、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートを帯電防止剤用助剤して一緒に粘着剤に添加することが知られている(特許文献1~3)。
【0004】
しかしながら、エチレンカーボネートは融点が35℃付近であることから、固体としても液体としても工業的に取り扱うことは難しく、また、実際に粘着剤に帯電防止剤と共に添加しても、表面抵抗を下げる効果が小さい場合がある(後述の比較例2参照)。
【0005】
またプロピレンカーボネートを用いた場合、粘着層を形成した直後は低い表面抵抗が得られても、その後経時的に表面抵抗が上昇してしまい、帯電防止性能が安定しないという問題があった(後述の比較例3参照)。
【0006】
このことから、帯電防止剤とともに粘着剤に添加した際に、低い帯電防止性を付与でき、かつ経時安定性もある帯電防止助剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-156916
【特許文献2】WO2007/111200A1
【特許文献3】特開2010-265388
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の帯電防止剤用助剤カーボネート化合物に比べて、低い表面抵抗が得られ、かつ、経時的にも安定した表面抵抗が得られる帯電防止助剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来の帯電防止剤用助剤であるカーボネート化合物に比べて、低い表面抵抗が得られ、かつ、経時的にも安定した表面抵抗が得られる帯電防止助剤について鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、以下の[1]~[11]を提供するものである。
[1]
下記式(I)
【0011】
【0012】
(式中、R1は酸素原子を含む炭化水素基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基を示し、
R2は酸素原子を含んでいても良い炭化水素基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、もしくは水素原子を示す。)
で表される化合物を含む、帯電防止助剤。
〔2〕
R1がエーテル結合を有する炭化水素基を示す、〔1〕に記載の帯電防止助剤。
〔3〕
R1が下記式(II)
【0013】
【0014】
(式中、R3は2価の脂肪族炭化水素基を示し、R4は炭化水素基を示す。)
で表される基である、〔1〕に記載の帯電防止助剤。
〔4〕
R2が水素原子を示す、〔1〕に記載の帯電防止助剤。
〔5〕
帯電防止剤と、〔1〕に記載の帯電防止助剤を含む組成物。
〔6〕
帯電防止剤がカチオンとアニオンからなる塩であり、カチオンとアニオンのどちらか一方又は両方が有機イオンである〔5〕に記載の組成物。
〔7〕
アクリル系粘着剤と、帯電防止剤と、〔1〕に記載の帯電防止助剤を含む粘着剤組成物。
〔8〕
アクリル系粘着剤と、帯電防止剤と、〔1〕に記載の帯電防止助剤を含む粘着剤層。
〔9〕
基材層と〔8〕に記載の粘着剤層を形成してなる粘着シート。
〔10〕
基材層と〔8〕に記載の粘着剤層を含む表面保護フィルム。
〔11〕
光学フィルムと〔8〕に記載の粘着剤層を含む粘着剤付き光学フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、低抵抗表面が得られ、かつ、その経時安定性に優れる帯電防止助剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の帯電防止助剤は、下記式(I)
【0018】
【0019】
(式中、R1は酸素原子を含む炭化水素基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基を示し、
R2は酸素原子を含んでいても良い炭化水素基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、もしくは水素原子を示す。)
で表される化合物を含む。
【0020】
酸素原子を含む炭化水素基において、酸素原子は、ヒドロキシ基、エーテル(-O-)、エステル(-O-CO-又は-CO-O-)、及び、カルボニル(-CO-)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基として含まれる。酸素原子を含む炭化水素基は、好ましくは少なくとも1種のエーテル(-O-)結合を有する炭化水素基である。
【0021】
酸素原子を含む炭化水素基の酸素原子の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0022】
酸素原子を含む炭化水素基又は酸素原子を含んでいても良い炭化水素基の炭化水素基において、一つの好ましい様態としては炭素数1~20の炭化水素基、より好ましくは炭素数1~12の炭化水素基が挙げられる。
【0023】
好ましいR1は下記式(II)
【0024】
【0025】
(式中、R3は2価の脂肪族炭化水素基を示し、R4は炭化水素基を示す。)
で表される基である。
【0026】
R3で表される2価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、-(CH2)n1-(n1は1~8の整数を示す)、-CH(CH3)-(CH2)n2-(n2は1~6の整数を示す)、-C(CH3)2-(CH2)n3-(n3は1~5の整数を示す)、などが挙げられ、-(CH2)-が好ましい。
【0027】
R4で表される炭化水素基としては、飽和直鎖状炭化水素基、飽和分岐鎖状炭化水素基、飽和環状炭化水素基、不飽和直鎖状炭化水素基、不飽和分岐鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基が挙げられる。
一つの様態として、R4で表される炭化水素基としては、炭素数1~10の炭化水素基が好ましい。
【0028】
上記飽和直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等の炭素数1~10の直鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0029】
上記飽和分岐鎖状炭化水素基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基等の炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0030】
上記飽和環状炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基や、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基を挙げることができる。
【0031】
上記不飽和直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、ビニリデン基、アリル基、ブテニル基など、CH2=Cの構造を有する炭素数2~10の直鎖状のアルケニル基等を挙げることができる。
【0032】
上記不飽和分岐鎖状炭化水素基としては、プロペン-2-イル基、ブテン-2-イル基、ブテン-3-イル基等の炭素数3~10の分岐鎖状アルケニル基、ブチン-3-イル基等の炭素数4~10の分岐鎖状アルキニル基等を挙げることができる。
【0033】
上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6~10の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0034】
上記芳香脂肪族炭化水素基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、β-フェニルエチル基(フェネチル基)、1-フェニルエチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、スチリル基、シンナミル基等の炭素数7~10の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0035】
酸素原子を含む炭化水素基としてはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、イソプロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、イソブチルオキシメチル基、tert-ブチルオキシメチル基、(2-エチルヘキシル)オキシメチル基、アリルオキシメチル基、(2-エチルヘキシル)オキシメチル、(2-プロペニルオキシ)メチル、2-メトキシエチル基、3-メトキシプロピル基、4-メトキシブチル基、5-メトキシペンチル基、6-メトキシヘキシル基、7-メトキシヘプチル基、8-メトキシオクチル基、9-メトキシノニル基、10-メトキシデシル基、エトキシメチル基、2-エトキシエチル基、3-エトキシプロピル基、4-エトキシブチル基、2-(2’-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-エトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-プロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソプロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-ブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-tert-ブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-ペンチルオキシエトキシ)エチル基、2-〔2’-(2”-エチルブチルオキシ)エトキシ〕エチル基、2-(2’-n-ヘキシルオキシエトキシ)エチル基、2-〔2’-(3”-エチルペンチルオキシ)エトキシ〕エチル基、2-(2’-n-ヘプチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-オクチルオキシエトキシ)エチル基、などを挙げることができる。
【0036】
酸素原子を含む炭化水素基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、イソプロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、イソブチルオキシメチル基、tert-ブチルオキシメチル基、(2-エチルヘキシル)オキシメチル基、アリルオキシメチル基、2-(2’-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-エトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-プロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソプロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-ブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-tert-ブチルオキシエトキシ)エチル基等が好ましい。
【0037】
本発明の帯電防止助剤は、帯電防止剤とともに粘着剤やその他の樹脂製品へ用いる場合、取り扱いの観点などから10℃以上において液体であることが好ましい。また、粘着剤やその他の樹脂製品の樹脂や併用する帯電防止剤との相溶性が良好であることが好ましい。
【0038】
本発明における帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤を広く使用することができ、特に限定されないが、例えばQ+・A-(Q+は有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオン又は有機スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンを示す。A-は有機または無機のアニオンを示す。)で表されるオニウム塩の帯電防止剤が挙げられる。このような帯電防止剤は、例えば特開2019-147771、特開2019-108414、特開2019-85570、特開2019-65173、特開2018-150257、特開2017-218465、特開2017-48149、特開2016-188315などに開示されている帯電防止剤が挙げられる。粘着剤用樹脂に対して帯電防止剤を用いる場合、粘着剤用樹脂との相溶性が良いものを用いることが好ましい。
【0039】
好ましいQ+としては、下記の式(2b)~式(5e)のカチオンが挙げられる。
【0040】
【0041】
(R1b~R3bは酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルケニル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数6~20のアリール基、又は酸素原子を含んでいても良い炭素数7~20のアラルキル基であり、R4bは水素原子、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルケニル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数6~20のアリール基、又は酸素原子を含んでいても良い炭素数7~20のアラルキル基である。R1bとR2bは末端で互いに結合し、置換基を有してもよいピロリジン環、置換基を有してもよいピペリジン環又は置換基を有してもよいピリジン環を形成してもよい。但し、R1bとR2bが末端で互いに結合してピリジン環を形成する場合は、R3bは存在しない。)
【0042】
【0043】
(R1c~R3cは酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20アルケニル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数6~20のアリール基、又は酸素原子を含んでいても良い炭素数7~20のアラルキル基であり、R4cは水素原子、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルケニル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数6~20のアリール基、又は酸素原子を含んでいても良い炭素数7~20のアラルキル基であり、R1cとR2cは末端で互いに結合し、置換基を有してもよいホスホラン環、置換基を有してもよいホスホリナン環又は置換基を有してもよいホスホリン環を形成してもよい。但し、R1cとR2cが末端で互いに結合してホスホリン環を形成する場合は、R3cは存在しない。)
【0044】
【0045】
(R1d、R5dは酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20アルケニル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数6~20のアリール基、又は酸素原子を含んでいても良い炭素数7~20のアラルキル基であり、R2d~R4dは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニルオキシ基又は炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアラルキルオキシ基である。)
【0046】
【0047】
(R1eは、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルケニル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数6~20のアリール基、又は酸素原子を含んでいても良い炭素数7~20のアラルキル基であり、R2e、R3eは各々独立に水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、酸素原子を含んでいても良い炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基を示す。)
R1eとR2eは互いに末端で結合して環を形成しても良く、R1eとR2eが互いに結合して環を形成する場合、例えば、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環等を形成しても良い。
【0048】
ここで上記の式(2b)で表されているR1b~R3b、R4b、式(3c)で表されているR1c~R3c、R4c、式(4d)で表されているR1d、R5d、R2d~R4d、式(5e)で表されているR1e~R3eの炭素数1~20のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状、環状のいずれであってもよい。炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イコシル基、2-エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基である。
【0049】
式(2b)で表されているR1b~R3b、R4b、式(3c)で表されているR1c~R3c、R4c、式(4d)で表されているR1d、R5d、R2d~R4d、式(5e)で表されているR1eの炭素数1~20のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基、アリル基である。
【0050】
式(2b)で表されているR1b~R3b、R4b、式(3c)で表されているR1c~R3c、R4c、式(4d)で表されているR1d、R5d、R2d~R4d、式(5e)で表されているR1eの炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0051】
式(2b)で表されているR1b~R3b、R4b、式(3c)で表されているR1c~R3c、R4c、式(4d)で表されているR1d、R5d、R2d~R4d、式(5e)で表されているR1eの炭素数7~20のアラルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、β-フェニルエチル基(フェネチル基)、1-フェニルエチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、スチリル基、シンナミル基など等が挙げられ、好ましくはベンジル基である。
【0052】
式(2b)で表されているR1b~R3b、R4b、式(3c)で表されているR1c~R3c、R4c、式(4d)で表されているR1d、R5d、R2d~R4d、式(5e)で表されているR1eが酸素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含む炭素数1~20のアルケニル基、酸素原子を含む炭素数6~20のアリール基又は酸素原子を含む炭素数7~20のアラルキル基である場合、酸素原子は、ヒドロキシ基、エーテル(-O-)、エステル(-O-CO-又は-CO-O-)、及び、カルボニル(-CO-)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基として含まれ、好ましくは少なくとも1種のエーテル(-O-)結合を含む基である。
【0053】
酸素原子を含む場合の酸素原子の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個である。
【0054】
式(2b)で表されているR1b~R3b、R4b、式(3c)で表されているR1c~R3c、R4c、式(4d)で表されているR1d、R5d、R2d~R4d、式(5e)で表されているR1eの酸素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、酸素原子を含む炭素数1~20のアルケニル基、酸素原子を含む炭素数6~20のアリール基又は酸素原子を含む炭素数7~20のアラルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、イソプロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、イソブチルオキシメチル基、tert-ブチルオキシメチル基、(2-エチルヘキシル)オキシメチル基、2-(2’-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-エトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-プロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソプロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-ブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-tert-ブチルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-ペンチルオキシエトキシ)エチル基、2-〔2’-(2”-エチルブチルオキシ)エトキシ〕エチル基、アリルオキシメチル基、アリルオキシエチル基、1-プロペニルオキシメチル基、1-プロペニルオキシエチル基、イソプロペニルオキシメチル基、イソプロペニルオキシエチル基、ブテニルオキシメチル基、ブテニルオキシエチル基、4-メトキシフェニル基、4-メトキシベンジル基、フェニルオキシメチル基、フェニルオキシエチル基、ナフチルオキシメチル基、ナフチルオキシエチル基等が挙げられ、好ましくはメトキシメチル基、エトキシメチル基、イソプロピルオキシメチル基、(2-エチルヘキシル)オキシメチル基、2-(2’-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-エトキシエトキシ)エチル基、2-(2’-n-プロピルオキシエトキシ)エチル基、2-(2’-イソプロピルオキシエトキシ)エチル基が挙げられる。
【0055】
式(4d)で表されているR2d~R4d、式(5e)で表されているR1eの、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニルオキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基又は炭素数7~20のアラルキルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシメチル基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、(2-エチルヘキシル)オキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-(n-プロピルオキシ)エトキシ基、2-(イソプロピルオキシ)エトキシ基、2-(n-ブチルオキシ)エトキシ基、2-(イソブチルオキシ)エトキシ基、2-(tert-ブチルオキシ)エトキシ基、2-(n-ペンチルオキシ)エトキシ基、2-(2’-エチルブチルオキシ)エトキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、4-メトキシフェニル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0056】
A-としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン等のビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、チオシアネートイオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、メトキシ酢酸イオン、エトキシ酢酸イオン、プロポキシ酢酸イオン、(2-メトキシエトキシ)酢酸イオン、(2-エトキシエトキシ)酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ペンタフルオロプロピオン酸イオン、ヘプタフルオロブタン酸イオン、ペンタデカフルオロオクタン酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、p-ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、メチルリン酸モノエステルイオン、エチルリン酸モノエステルイオン、プロピルリン酸モノエステルイオン、メチルリン酸ジエステルイオン、エチルリン酸ジエステルイオン等のリン酸イオン、式(III)で表されるアニオンが挙げられる。
【0057】
【0058】
(式中、RIIIa~RIIIdはそれぞれ独立にフッ素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。)
【0059】
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられ、RIIIa~RIIIdの少なくともいずれか1つ以上が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることが好ましい。RIIIa~RIIIdにおいて炭化水素基の炭素数としては1~20が好ましく、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~6である。
【0060】
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、エチニル基、プロピニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、アズレニル基、テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ナフタセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。
【0061】
RIIIa~RIIIdにおいて、前記炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の他、ヒドロキシル基、アミノ基等が挙げられる。好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基等のアリールオキシ基、ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基であり、特に好ましくはフッ素原子である。置換基の数は、好ましくは1~9個、より好ましくは1~7個、さらに好ましくは1~5個である。
【0062】
式(III)で表されるアニオンとしては、例えば、テトラフェニルボレートアニオン、テトラキス(4-クロロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4-メチルフェニル)ボレートアニオン、テトラキス[4-(トリフルオロメチル)]フェニルボレートアニオン、テトラキス(4-メトキシフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン等が挙げられる。
【0063】
本発明の帯電防止助剤は帯電防止剤とともに粘着剤やハードコート剤、塗料、その他の樹脂へ混合して使用することができる。
【0064】
このとき、帯電防止剤と帯電防止助剤を混合して本発明の帯電防止剤と帯電防止助剤を含む組成物とし、当該組成物を粘着剤やハードコート剤、塗料、その他の樹脂へ添加して使用することもできる。
【0065】
ここで、帯電防止用助剤として使用する帯電防止剤を溶解できる帯電防止用助剤を選択することで、当該組成物を粘着剤やハードコート剤、塗料、その他の樹脂へ添加して使用する際に、帯電防止剤を溶解するための溶媒の使用を省略することもできる。
【0066】
また、一般に、帯電防止剤や帯電防止助剤はそのメーカーから粘着剤を塗工するメーカーへ別々に供給され、塗工メーカーにて粘着剤用樹脂溶液や希釈用溶剤と一緒に混合されるが、本発明の帯電防止剤を帯電防止助剤に溶解させた組成液を使用することで、塗工メーカーでの粘着剤の調製作業が省略化できる。
【0067】
帯電防止剤と帯電防止助剤を含む本発明の組成物としては、帯電防止剤と帯電防止助剤からなる組成物、又はそれを溶剤で希釈した組成物とすることができる。
【0068】
帯電防止剤と帯電防止助剤からなる組成物としては、帯電防止剤を0.1~30質量%を帯電防止助剤に溶解させた組成物、好ましくは帯電防止剤を0.5~20質量%を帯電防止助剤に溶解させた組成物、より好ましくは帯電防止剤を1.0~10質量%を帯電防止助剤に溶解させた組成物である。
【0069】
また、帯電防止剤と帯電防止助剤と溶剤からなる組成物としては、帯電防止剤を0.1~20質量%、帯電防止助剤を30~80質量%、残りを溶剤とする組成物、好ましくは帯電防止剤を0.1~10質量%、帯電防止助剤を40~70質量%、残りを溶剤とする組成物である。
【0070】
この場合の溶剤としては、帯電防止剤、帯電防止助剤、粘着用樹脂組成物をすべて溶解させることができる溶剤が好ましい。溶剤としては、たとえば、酢酸エチル、メタノール、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0071】
帯電防止剤と帯電防止助剤を含む本発明の組成物は、用途に応じてさらに各種添加剤を含んでいても良い。これらの添加剤としては、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、透明化剤などが挙げられる。
【0072】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤と帯電防止助剤と粘着剤を含み、さらに溶媒を含んでいてもよい。前記粘着剤組成物を樹脂成型体などの任意の基材表面に塗工した後、必要に応じて溶媒を除去することで基材表面に帯電防止性の粘着層を形成することができる。
【0073】
粘着剤としては、公知のものを広く使用することができ、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられ、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などの形態で使用できる。
【0074】
アクリル系粘着剤はその透明性の高さなどから光学部材用途で好適に使用される粘着剤である。このことから、経時での色相変化が少ない本発明の帯電防止助剤は、とりわけアクリル系粘着剤へ好適に使用される。アクリル系粘着剤は、アクリル系ポリマーを必須成分として含有する粘着剤組成物である。アクリル系粘着剤には、アクリル系ポリマーに加えて、必要に応じて、溶媒など、その他の成分(添加剤)などが含まれていてもよい。
【0075】
アクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。なお、本明細書において、別途の明示が無い限り、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表す。
【0076】
本発明の粘着剤組成物は、好ましくは粘着剤用樹脂100質量部に対し、帯電防止剤を0.01~10質量部、帯電防止助剤を0.01~30質量部含み、より好ましくは、帯電防止剤を0.1~5.0質量部、帯電防止助剤を0.1~15.0質量部含む。帯電防止助剤の使用量が0.01質量部より少ない場合、帯電防止助剤の効果が十分に発揮されにくく、30質量部より多い場合は粘着剤の粘着力が低下する場合があるため、上記範囲が好ましい。
【0077】
帯電防止剤の使用量が0.01質量部より少ない場合、帯電防止剤の効果が十分に発揮されにくく、10質量部より多い場合は粘着剤の粘着力が低下する場合があるため、上記範囲が好ましい。
【0078】
本発明の粘着剤組成物には、用途に応じて各種添加剤を併用することが可能である。これらの添加剤としては、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、透明化剤などが挙げられる。
【0079】
架橋剤としては、例えば、アクリル系ポリマーが水酸基やカルボキシル基などの活性水素含有官能基を有する場合、イソシアネート系架橋剤を用いることができる。
【0080】
このほかに、エポキシ系架橋剤、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物といった架橋剤を使用しても良い。これらの架橋剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0081】
前記イソシアネート系架橋剤としては、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N、タケネートD170N(以上、三井化学株式会社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化コベストロウレタン株式会社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、東ソー株式会社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、粘着剤組成物を使用して粘着シートを製造した際に、より接着信頼性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0082】
本発明の粘着剤組成物は、さらに硬化触媒を含んでいても良い。
【0083】
架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合、硬化触媒としては、例えば、錫触媒やアミン触媒といった公知のウレタン触媒を使用することができる。触媒併用により、高い架橋性(架橋度・硬化性)が得られ、高い架橋密度の粘着剤層と帯電防止剤の適度な相分離による表面移行が発生、高い帯電防止性が得られることとなるため好ましい態様となる。
【0084】
前記錫触媒としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫メトキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。これら触媒は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0085】
本発明の粘着剤組成物を塗工する基材は、無機、有機を問わず、各種の基材を用いることができ、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン- 酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン、アクリル樹脂などの樹脂、ガラスなどが挙げられ、いずれも公知のものを用いることができる。基材は用途に応じてシート状、フィルム状、板状などであってもよい。
【0086】
本発明の粘着剤層は粘着剤組成物を含む塗液を基材へ塗布し、必要により乾燥させることで基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に粘着剤層を有する被覆物を得ることができる。塗布方法については特に限定されるものではなく、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法スプレーコート法、刷毛塗り法、浸漬法、カーテンコート法、スピンコート法などが公知であり、各種の方法を適宜選択することができる。粘着剤層の膜厚は、乾燥後の膜厚として1~200μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは5~20μmである。
【0087】
粘着剤を紫外線で硬化させる場合には、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアークなどの光源が利用できる。
本発明の粘着剤層を有する物品としては、粘着シートや粘着テープ、粘着板などが挙げられる。
【0088】
本発明の粘着シートは、基材の片面上に、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたものである。粘着剤層にさらに剥離シート(セパレーター)が積層されてもよい。剥離シートには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施され得る。
【0089】
本発明の粘着シートは、偏光板やその他光学用フィルムの表面保護フィルムなどに好適に用いることができる。
【0090】
本発明の粘着剤層を有する光学フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、ディスプレイ用偏光板フィルムや位相差フィルム、レンズフィルム、光学補償フィルム、光拡散フィルム、電磁波シールドフィルムなどが挙げられる。
【0091】
本発明の粘着剤付き光学フィルムの具体的な例として、基材であるPETフィルムの片面に、本発明の粘着剤をロールコーター法やバーコート法等により塗工した粘着剤層を設け、その粘着剤層を介して偏光板を貼り付けた偏光板フィルムや、基材であるPETフィルムの両面に、同じく本発明の粘着剤を塗工した粘着剤層を設け、片面に偏光板、片面に光拡散フィルムなどを貼り合せた積層フィルムなどがある。さらにはこれら光学フィルムとガラス基板、カラーフィルター基板やタッチパネル基板などを本発明の粘着剤により貼り合せた画像表示装置や部材などが挙げられる。
【実施例0092】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
・表面抵抗値の測定
抵抗率計(三菱化学株式会社製ハイレスターUP)を用い測定した。
【0093】
製造例1
【0094】
【0095】
アリルグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製試薬)25.0g、酢酸エチル(東京化成工業株式会社製試薬)25.0g、ヨウ化ナトリウム(関東化学株式会社製試薬)4.0gを180mlオートクレーブに投入して密閉し、容器外周に設置されたヒーターを用いて容器内の温度を100℃に加熱した。そこに二酸化炭素ガスを容器内圧力が0.5MPaになるまで供給し、その圧力を維持したまま3時間攪拌することで、グリシジル基をカーボネート化させた反応液を得た。その後反応液を同じ容量の酢酸エチルに溶解させた後、球状シリカカラム(バイオタージ・ジャパン製Biotage sfar sillica HD C_High Capasity Duo 20um)に通液させることで、シリカカラム内に反応液とヨウ化ナトリウムを担持させ、その後、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒を通液させることでカーボネート化反応物を溶出させることでヨウ化ナトリウムを除去した。その後エバポレーターによる減圧乾燥により不要な酢酸エチルを除去して助剤1(1,3-ジオキソラン,4-[(2-プロペニロキシ)メチル])を得た。
<同定データ>
得られた助剤1は、原料となるアリルグリシジルエーテルと共に、ダイヤモンドプリズムを用いたATR-FTIR(全反射フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製 FT/IR-6600))による比較測定を行い、1750~1800cm
-1付近に検出される環状カーボネート基のC=O結合の検出によって、反応物生成の確認を行った(
図1参照)。
【0096】
製造例2
【0097】
【0098】
製造例1のアリルグリシジルエーテルを2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(東京化成社製試薬)に代えた以外は、同様の反応により助剤2(1,3-ジオキソラン,4-[[(2-エチルヘキシル)オキシ]メチル])を得た。
<同定データ>
得られた助剤2は、製造例1と同じくダイヤモンドプリズムを用いたATR-FTIR測定によるC=O結合の検出により反応生成物の確認を行った(
図2参照)。
【0099】
製造例3
【0100】
【0101】
製造例1のアリルグリシジルエーテルをエチルグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製試薬)に代えた以外は同様の反応により助剤3(1,3-ジオキソラン,4-エトキシメチル)を得た。
<同定データ>
得られた助剤3は、製造例1と同じくダイヤモンドプリズムを用いたATR-FTIR測定によるC=O結合の検出により反応生成物の確認を行った(
図3参照)。
【0102】
製造例4:帯電防止剤1
(4-1)1-デシルピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの合成
1L 4つ口フラスコにアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート水溶液432.6g(アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート純分1.64mol)、トルエン151.3g、1-デシルピリジニウムブロミド水溶液140.1g(1-デシルピリジニウムブロミド純分139.1mmol)を入れ、60℃で2時間反応させた。反応後、静置して室温まで冷却した。冷却した反応液にイオン交換水を加えて洗浄する操作を3回行った。得られた有機層を減圧濃縮して1-デシルピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート127.6gを得た。なお、1-デシルピリジニウムブロミド水溶液は特開2015-78131号の実施例2の記載に従い製造することができる。
(4-2)帯電防止剤1の調製
1-デシルピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに酢酸エチルを加えて溶解し、濃度が5質量%の1-デシルピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの酢酸エチル溶液(帯電防止剤1)とした。
【0103】
製造例5:帯電防止剤2
(5-1)メチルトリオクチルアンモニウム・ドデシルベンゼンスルホナートの合成
5Lフラスコにメチルトリオクチルアンモニウムクロリド水溶液620.9g(メチルトリオクチルアンモニウムクロリド純分1.25mol)、イオン交換水894.6g、トルエン979.4gを入れ、そこへドデシルベンゼンスルホン酸422.9gを4時間かけて滴下した。滴下後、3時間反応させた。反応終了後、反応液を静置して分液し、水層を除去した。得られた有機層にイオン交換水を加え洗浄する操作を2回行った。洗浄後の有機層を減圧濃縮し、濃縮液を濾過してメチルトリオクチルアンモニウム・ドデシルベンゼンスルホナート814.7gを得た。
(5-2)帯電防止剤2の調製
メチルトリオクチルアンモニウムドデシルベンゼンスルホナートに酢酸エチルを加えて溶解し、濃度が5質量%のメチルトリオクチルアンモニウム・ドデシルベンゼンスルホナートの酢酸エチル溶液(帯電防止剤2)とした。
【0104】
製造例6:帯電防止剤3
(6-1)トリブチルドデシルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナートの合成
フラスコにリチウムトリフルオロメタンスルホナート729.2g(4.67mol)、イオン交換水2317g、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド2756.0gを入れ、3時間反応させた。反応後、分液し水層を除去した。得られた有機層にイオン交換水を加えて洗浄する操作を3回行った。洗浄後の有機層を減圧濃縮し、トリブチルドデシルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート2167.5gを得た。
(6-2)帯電防止剤3の調製
トリブチルドデシルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナートに酢酸エチルを加えて溶解し、濃度が5質量%のトリブチルドデシルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナートの酢酸エチル溶液(帯電防止剤3)とした。
【0105】
製造例7:帯電防止剤4
(7-1)1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
3Lフラスコに1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド水溶液763.8g(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド純分2.87mol)、イオン交換水497.6gを入れ、そこへリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド水溶液1153.0g(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド純分3.01mol)を滴下し、3時間反応させた。反応後、反応液を分液して水層を除去した。得られた有機層にイオン交換水を加えて洗浄する操作を2回行った。洗浄後の有機層を減圧濃縮し、濃縮液を濾過して1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1051.1gを得た。
(7-2)帯電防止剤4の調製
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに酢酸エチルを加えて溶解し、濃度が5質量%の1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの酢酸エチル溶液(帯電防止剤4)とした。
【0106】
製造例8:粘着剤組成物の調整方法
<粘着用主材の合成>
2-エチルヘキシルアクリレートモノマー(東京化成工業株式会社製試薬)150g、4-ヒドロキシブチルアククリレート(東京化成工業株式会社製試薬)7.5g、アゾビスイソブチロニトリル(東京化成工業株式会社製試薬)0.3g、酢酸エチル(東京化成工業株式会社製試薬)236gを1Lセパラブルフラスコに投入し、窒素バブリングを行いながらフラスコ内を窒素置換した。その後攪拌しながら昇温して60℃で5時間、さらに昇温して70℃2時間反応させて、40質量%アクリル樹脂含有の粘着剤用主材Aを得た。
【0107】
【0108】
評価方法
(表面抵抗1の測定)
表1記載の組成により得られた粘着剤を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製ルミラーフィルムT60)上に、厚み20umになるようにバーコーター(No.50)で塗工し、その後120℃3分間オーブンの中で乾燥させた。その後塗工膜表面を保護フィルムであるPETセパレーター(ニッパ株式会社製離型フィルム)でラミネートした後、温度25℃、湿度50%Rhに制御された室内に一夜放置した。
その後PETセパレーターを剥がした後の粘着層表面の表面抵抗値(Ω/□)を、温度25℃、湿度50%Rh環境下で測定した。
(表面抵抗2の測定)
表面抵抗1の一夜放置した後のラミネート済み粘着層フィルムを、60℃オーブンの中で三日間放置し、その後PETセパレーターを剥がしてその表面抵抗値(Ω/□)を25℃50%Rh環境下で測定した。
(表面抵抗3の測定)
表面抵抗1の一夜放置した後のラミネート済み粘着層フィルムを、25℃50%Rhに制御された室内で1週間放置し、その後PETセパレーターを剥がしてその表面抵抗値(Ω/□)を25℃50%Rh環境下測定した。
【0109】
実施例1
粘着剤用主材A 59.3g、帯電防止剤1(1-デシルピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)を5質量%含む酢酸エチル溶液)4.8g、助剤1(1.9g、1.2mmol)、架橋剤AとしてタケネートD-170N(三井化学株式会社製)の20質量%を含む酢酸エチル溶液4.8g、硬化用触媒Bとしてジラウリル酸ジブチル錫の0.05質量%を含む酢酸エチル溶液4.8g、及び溶媒として酢酸エチル24.3gを混合し、粘着剤組成物100gを得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
実施例2
実施例1において助剤1を助剤2(2.7g、1.2mmol)、溶媒としての酢酸エチルを23.4gとした以外は実施例1と同様に粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
実施例3
実施例1において助剤1を助剤3(1.7g、1.2mmol)、溶媒としての酢酸エチルを24.4gとした以外は実施例1と同様に粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
比較例1
実施例1において助剤1を使用せず、溶媒としての酢酸エチルを26.1gとした以外は実施例1と同様に粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表2に示す。
【0113】
比較例2
実施例1において助剤1を助剤4(1.0g、1.2mmol)、溶媒としての酢酸エチルを25.0gとした以外は実施例1と同様に粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表2に示す。
【0114】
比較例3
実施例1において助剤1を助剤5(1.2g、1.2mmol)、溶媒としての酢酸エチルを25.0gとした以外は実施例1と同様に粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
【0116】
実施例4、5および比較例4~7
粘着剤用主材A、帯電防止剤2、3として下記に示すイオン液体を5質量%含む酢酸エチル溶液、助剤1,2、5として表1に示す化合物、架橋剤A、硬化用触媒Bとして表1に示す溶液、及び溶媒として酢酸エチルを用い、表3記載の配合(単位:g)で混合し、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表3に示す。表3中、表面抵抗値以外の数値の単位はすべて「g」である。
【0117】
【0118】
実施例6
粘着剤用主材A、帯電防止剤1,2、3として下記に示すイオン液体を5質量%含む酢酸エチル溶液、助剤1,2、5として表1に示す化合物、架橋剤A、硬化用触媒Bとして表1に示す溶液、及び溶媒として酢酸エチルを用い、表4記載の配合(単位:g)で混合し、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物について評価を行った。結果を表4に示す。表4中、表面抵抗値以外の数値の単位はすべて「g」である。
【0119】