(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004943
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エアクリーナおよびそれを備えた鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20240110BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20240110BHJP
B62J 40/00 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
F02M35/024 511C
F02M35/16 M
F02M35/024 511D
F02M35/024 511A
B62J40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104857
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】石田 将吾
(57)【要約】
【課題】エレメントの広範囲の部分を有効活用することができ、かつ、エレメントの寿命を長くすることができるエアクリーナを提供すること。
【解決手段】エアクリーナ30は、エアクリーナケース31の内部に配置されたドーム型のエレメント32を備えている。エレメント32は、左後壁21と左前壁22とを有する。エアクリーナケース31は、左後面11と左前面12とを有する。左後面11は左後壁21に対向し、左前面12は左前壁22に対向している。エアクリーナケース31の左半部31Lに吸気口33が形成されている。吸気口33は、左後壁21と左後面11との間からエアクリーナケース31の外部に向かって開口している。エアクリーナケース31には、吸気口33と左右対称な他の吸気口が形成されていない。エアクリーナケース31は、吸気口33の一部または全部と左右対称な位置にある閉鎖壁34を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナケースと、
前記エアクリーナケースの内部に配置され、前記エアクリーナケースの内部をクリーンサイドとダーティーサイドとに仕切るエレメントと、
前記エアクリーナケースに形成され、前記エアクリーナケースの外部と前記ダーティーサイドとをつなぐ吸気口と、を備え、
前記エアクリーナケースは、第1方向と、前記第1方向と逆方向である第2方向と、前記第1方向に垂直な第3方向と、前記第3方向と逆方向である第4方向とに延びる仮想面に対して、前記第1方向および前記第3方向に対して垂直な第5方向側に位置する第1半部と、前記仮想面に対して前記第5方向と逆方向である第6方向側に位置する第2半部と、を有し、
前記エレメントは、前記第1方向かつ前記第5方向に延びる第1エレメント側壁と、前記第1エレメント側壁から前記第1方向かつ前記第6方向に延びる第2エレメント側壁と、を有し、
前記エアクリーナケースは、前記第1方向かつ前記第5方向に延び、前記第1エレメント側壁と対向する第1ケース内面と、前記第1ケース内面から前記第1方向かつ前記第6方向に延び、前記第2エレメント側壁と対向する第2ケース内面と、を有し、
前記吸気口は、前記エアクリーナケースの前記第1半部に形成され、かつ、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間から前記エアクリーナケースの外部に向かって開口し、
前記エアクリーナケースは、前記仮想面を基準として前記吸気口の一部または全部と対称な位置にある閉鎖壁を有している、エアクリーナ。
【請求項2】
前記第3方向は上方である、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記第3方向は左方である、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、
前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方である、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、
前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、
前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面とを有する溝を備えている、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項6】
前記エレメントは、前記第2エレメント側壁の前記第6方向側に位置し、前記第2方向かつ前記第6方向に延びる第3エレメント側壁を有し、
前記エアクリーナケースは、前記第2ケース内面の前記第6方向側に位置し、前記第2方向かつ前記第6方向に延び、前記第3エレメント側壁と対向する第3ケース内面を有している、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項7】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、
前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、
前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面と、前記第3エレメント側壁と前記第3ケース内面との間に位置する第3底面と、を有する溝を備えている、請求項6に記載のエアクリーナ。
【請求項8】
前記エレメントは、前記第3エレメント側壁から前記第2方向かつ前記第5方向に延びる第4エレメント側壁を有し、
前記エアクリーナケースは、前記第3ケース内面から前記第2方向かつ前記第5方向に延び、前記第4エレメント側壁と対向する第4ケース内面を有している、請求項6に記載のエアクリーナ。
【請求項9】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、
前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、
前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面と、前記第3エレメント側壁と前記第3ケース内面との間に位置する第3底面と、前記第4エレメント側壁と前記第4ケース内面との間に位置する第4底面と、を有する溝を備えている、請求項8に記載のエアクリーナ。
【請求項10】
前記エレメントは、前記第4エレメント側壁から前記第5方向に延びる第5エレメント側壁を有し、
前記エアクリーナケースは、前記第4ケース内面から前記第5方向に延び、前記第5エレメント側壁と対向する第5ケース内面を有している、請求項8に記載のエアクリーナ。
【請求項11】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、
前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、
前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面と、前記第3エレメント側壁と前記第3ケース内面との間に位置する第3底面と、前記第4エレメント側壁と前記第4ケース内面との間に位置する第4底面と、前記第5エレメント側壁と前記第5ケース内面との間に位置する第5底面と、を有する溝を備えている、請求項10に記載のエアクリーナ。
【請求項12】
前記吸気口は、前記エアクリーナケースの外部に向けて前記第2方向かつ前記第6方向に開口している、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項13】
前記エアクリーナケースの前記第2半部には、前記エアクリーナケースの外部と前記ダーティーサイドとをつなぐ吸気口が形成されていない、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項14】
前記エアクリーナケースには、前記エアクリーナケースの外部と前記ダーティーサイドとをつなぐ吸気口として、前記第1半部に形成された前記吸気口のみが形成されている、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項15】
前記エレメントはドーム型に形成されている、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項16】
前記エレメントの全面がメッシュ状に形成されている、請求項15に記載のエアクリーナ。
【請求項17】
前記エアクリーナケースは、ベースと、前記ベースに対して前記第3方向側に配置されたカバーと、を有し、
前記エレメントは、前記ベースと前記カバーとの間に配置されている、請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一つに記載のエアクリーナと、
前記エアクリーナケースの前記クリーンサイドに接続された吸気管と、
前記吸気管に接続された内燃機関と、
を備えた鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナおよびそれを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の鞍乗型車両において、内燃機関に供給される空気を浄化するエアクリーナが設けられている。エアクリーナは、エアクリーナケースと、エアクリーナケースの内部に配置されたエレメントとを備える。エアクリーナケースの内部は、エレメントによってダーティーサイドとクリーンサイドとに仕切られている。エアクリーナケースには、ダーティーサイドに臨む吸気口が形成されている。吸気口からダーティーサイドに吸い込まれた空気は、エレメントを通過することによりクリーンサイドに流れる。この際、空気に含まれる埃がエレメントに捕捉されることにより、空気が浄化される。
【0003】
特開2021-55620号公報には、吸気ダクトがエレメントの表面に沿うように配置されたエアクリーナが開示されている。エレメントの表面は下方に延びており、吸気ダクトはダーティーサイドにおいて下方に延出している。吸気ダクトから導入された空気は、流れの慣性により下方に向かいやすいため、エレメントの広範囲の表面に供給される。上記エアクリーナによれば、エレメントの全体の有効利用が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記エアクリーナでは、吸気ダクトから導入された空気は、エレメントの表面に直接的に供給される。空気に含まれる比較的小さな埃だけでなく、比較的大きな埃もエレメントに捕捉される。そのため、エレメントは比較的汚れやすく、エレメントの寿命が短くなる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、エレメントの広範囲の部分を有効活用することができ、かつ、エレメントの寿命を長くすることができるエアクリーナおよびそれを備えた鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されるエアクリーナは、エアクリーナケースと、前記エアクリーナケースの内部に配置され、前記エアクリーナケースの内部をクリーンサイドとダーティーサイドとに仕切るエレメントと、前記エアクリーナケースに形成され、前記エアクリーナケースの外部と前記ダーティーサイドとをつなぐ吸気口と、を備える。前記エアクリーナケースは、第1方向と、前記第1方向と逆方向である第2方向と、前記第1方向に垂直な第3方向と、前記第3方向と逆方向である第4方向とに延びる仮想面に対して、前記第1方向および前記第3方向に対して垂直な第5方向側に位置する第1半部と、前記仮想面に対して前記第5方向と逆方向である第6方向側に位置する第2半部と、を有している。前記エレメントは、前記第1方向かつ前記第5方向に延びる第1エレメント側壁と、前記第1エレメント側壁から前記第1方向かつ前記第6方向に延びる第2エレメント側壁と、を有している。前記エアクリーナケースは、前記第1方向かつ前記第5方向に延び、前記第1エレメント側壁と対向する第1ケース内面と、前記第1ケース内面から前記第1方向かつ前記第6方向に延び、前記第2エレメント側壁と対向する第2ケース内面と、を有している。前記吸気口は、前記エアクリーナケースの前記第1半部に形成され、かつ、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間から前記エアクリーナケースの外部に向かって開口している。前記エアクリーナケースは、前記仮想面を基準として前記吸気口の一部または全部と対称な位置にある閉鎖壁を有している。
【0008】
上記エアクリーナによれば、エアクリーナケースにおける上記吸気口と左右対称の位置に、上記吸気口と同様の吸気口が形成されていない。エアクリーナケースの内部において、左右対称な気流は生成されない。吸気口から吸い込まれた空気は、第1エレメント側壁と第1ケース内面との間を通った後、第2エレメント側壁と第2ケース内面との間を通る。吸気口から吸い込まれた空気は第1エレメント側壁および第2エレメント側壁に沿って流れるので、エレメントの広範囲の部分を有効活用することができる。また、空気は第1ケース内面および第2ケース内面に沿って流れるので、エレメントの少なくとも一部の周囲を回り込むように流れる。空気が第1ケース内面および第2ケース内面に沿って流れる際に、空気に含まれる比較的大きな埃は、第1ケース内面および第2ケース内面と接触することによって空気から分離されやすい。空気は、比較的大きな埃が分離された後に、エレメントを通過する。このように、上記エアクリーナによれば、比較的大きな埃が分離された空気がエレメントの広範囲を通過する。よって、エレメントが比較的汚れにくいので、エレメントの寿命を長くすることができる。
【0009】
前記第1~第6方向は特に限定されない。例えば、前記第3方向は上方であってもよい。この場合、吸気口から吸い込まれる空気は水平方向に旋回しやすい。エアクリーナケースのダーティーサイドにおいて、いわゆるスワール流が形成されやすくなる。前記第3方向は左方であってもよい。この場合、吸気口から吸い込まれる空気は鉛直方向に旋回しやすい。エアクリーナケースのダーティーサイドにおいて、いわゆるタンブル流が形成されやすくなる。
【0010】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であってもよい。
【0011】
このことにより、吸気口から吸い込まれる空気は水平方向に旋回しやすい。エアクリーナケースのダーティーサイドにおいて、いわゆるスワール流が形成されやすくなる。空気がエレメントの周囲を回り込むように流れる際に、第1ケース内面および第2ケース内面と接触することによって空気から分離された埃は、重力によって落下する傾向がある。空気がエレメントを通過する前に、比較的大きな埃は空気から分離しやすくなる。
【0012】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面とを有する溝を備えていてもよい。
【0013】
このことにより、空気から分離されて落下した埃は、溝に回収される。溝を清掃することにより、空気から分離された埃を除去することができる。よって、エアクリーナを容易にメンテナンスすることができる。
【0014】
前記エレメントは、前記第2エレメント側壁の前記第6方向側に位置し、前記第2方向かつ前記第6方向に延びる第3エレメント側壁を有していてもよい。前記エアクリーナケースは、前記第2ケース内面の前記第6方向側に位置し、前記第2方向かつ前記第6方向に延び、前記第3エレメント側壁と対向する第3ケース内面を有していてもよい。
【0015】
このことにより、吸気口から吸い込まれた空気は、第1エレメント側壁と第1ケース内面との間、および、第2エレメント側壁と第2ケース内面との間を通過した後、第3エレメント側壁と第3ケース内面との間を通過する。空気は、エレメントの周囲を半周以上にわたって旋回する。そのため、空気をエレメントの側壁の広範囲に沿って流すことができ、空気をエアクリーナケースの内面の広範囲に沿って流すことができる。エレメントを更に有効活用することができると共に、空気から埃を更に分離しやすくなる。
【0016】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面と、前記第3エレメント側壁と前記第3ケース内面との間に位置する第3底面と、を有する溝を備えていてもよい。
【0017】
このことにより、空気から分離されて落下した埃は、溝に回収される。溝を清掃することにより、空気から分離された埃を除去することができる。よって、エアクリーナを容易にメンテナンスすることができる。
【0018】
前記エレメントは、前記第3エレメント側壁から前記第2方向かつ前記第5方向に延びる第4エレメント側壁を有していてもよい。前記エアクリーナケースは、前記第3ケース内面から前記第2方向かつ前記第5方向に延び、前記第4エレメント側壁と対向する第4ケース内面を有していてもよい。
【0019】
このことにより、吸気口から吸い込まれた空気は、第1エレメント側壁と第1ケース内面との間、第2エレメント側壁と第2ケース内面との間、および、第3エレメント側壁と第3ケース内面との間を通過した後、第4エレメント側壁と第4ケース内面との間を通過する。空気は、エレメントの周囲を3/4周以上にわたって旋回する。そのため、空気をエレメントの側壁の広範囲に沿って流すことができ、空気をエアクリーナケースの内面の広範囲に沿って流すことができる。エレメントを更に有効活用することができると共に、空気から埃を更に分離しやすくなる。
【0020】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面と、前記第3エレメント側壁と前記第3ケース内面との間に位置する第3底面と、前記第4エレメント側壁と前記第4ケース内面との間に位置する第4底面と、を有する溝を備えていてもよい。
【0021】
このことにより、空気から分離されて落下した埃は、溝に回収される。溝を清掃することにより、空気から分離された埃を除去することができる。よって、エアクリーナを容易にメンテナンスすることができる。
【0022】
前記エレメントは、前記第4エレメント側壁から前記第5方向に延びる第5エレメント側壁を有していてもよい。前記エアクリーナケースは、前記第4ケース内面から前記第5方向に延び、前記第5エレメント側壁と対向する第5ケース内面を有していてもよい。
【0023】
このことにより、吸気口から吸い込まれた空気は、第1エレメント側壁と第1ケース内面との間、第2エレメント側壁と第2ケース内面との間、第3エレメント側壁と第3ケース内面との間、および、第4エレメント側壁と第4ケース内面との間を通過した後、第5エレメント側壁と第5ケース内面との間を通過する。空気は、エレメントの周囲を1周以上にわたって旋回する。そのため、空気をエレメントの側壁の広範囲に沿って流すことができ、空気をエアクリーナケースの内面の広範囲に沿って流すことができる。エレメントを更に有効活用することができると共に、空気から埃を更に分離しやすくなる。
【0024】
前記第1方向、前記第2方向、前記第3方向、前記第4方向は、それぞれ前方、後方、上方、下方であり、前記第5方向および前記第6方向の一方は左方であり、他方は右方であり、前記エアクリーナケースは、前記第1エレメント側壁と前記第1ケース内面との間に位置する第1底面と、前記第2エレメント側壁と前記第2ケース内面との間に位置する第2底面と、前記第3エレメント側壁と前記第3ケース内面との間に位置する第3底面と、前記第4エレメント側壁と前記第4ケース内面との間に位置する第4底面と、前記第5エレメント側壁と前記第5ケース内面との間に位置する第5底面と、を有する溝を備えていてもよい。
【0025】
このことにより、空気から分離されて落下した埃は、溝に回収される。溝を清掃することにより、空気から分離された埃を除去することができる。よって、エアクリーナを容易にメンテナンスすることができる。
【0026】
前記吸気口は、前記エアクリーナケースの外部に向けて前記第2方向かつ前記第6方向に開口していてもよい。
【0027】
このことにより、吸気口から吸い込まれた空気は、第1エレメント側壁および第1ケース内面に沿って流れやすい。
【0028】
前記エアクリーナケースの前記第2半部には、前記エアクリーナケースの外部と前記ダーティーサイドとをつなぐ吸気口が形成されていなくてもよい。
【0029】
このことにより、第2半部から空気が吸い込まれないので、第1半部の吸気口から吸い込まれた空気によって、エレメントの周囲を回り込む気流(例えばスワール流)が生成されやすい。また、空気はケース内面に沿って周回しやすい。そのため、前述の効果が発揮されやすい。
【0030】
前記エアクリーナケースには、前記エアクリーナケースの外部と前記ダーティーサイドとをつなぐ吸気口として、前記第1半部に形成された前記吸気口のみが形成されていてもよい。
【0031】
上記構成によれば、吸気口は一つのみである。第1半部の吸気口から集中的に吸い込んだ空気によって、エレメントの周囲を回り込む気流(例えばスワール流)が生成されやすい。また、空気はケース内面に沿って周回しやすい。そのため、前述の効果が発揮されやすい。
【0032】
前記エレメントはドーム型に形成されていてもよい。
【0033】
このことにより、エアクリーナを小型化しつつ浄化性能を向上させることができる。
【0034】
前記エレメントの全面がメッシュ状に形成されていてもよい。
【0035】
このことにより、エレメントの全面において空気を浄化させることができるので、エアクリーナを小型化しつつ浄化性能を向上させることができる。
【0036】
前記エアクリーナケースは、ベースと、前記ベースに対して前記第3方向側に配置されたカバーと、を有していてもよい。前記エレメントは、前記ベースと前記カバーとの間に配置されていてもよい。
【0037】
上記構成によれば、ベースからカバーを取り外すことにより、エレメントを露出させることができる。エレメントの交換および清掃が容易である。よって、エアクリーナを容易にメンテナンスすることができる。
【0038】
ここに開示される鞍乗型車両は、前記エアクリーナと、前記エアクリーナケースの前記クリーンサイドに接続された吸気管と、前記吸気管に接続された内燃機関と、を備える。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、エレメントの広範囲の部分を有効活用することができ、かつ、エレメントの寿命を長くすることができるエアクリーナおよびそれを備えた鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るエアクリーナの斜視図である。
【
図4】
図4は、カバーを取り外したときのエアクリーナの左側面図である。
【
図5】
図5は、カバーを取り外したときのエアクリーナを
図4のZ方向から見た図である。
【
図6】
図6は、
図5においてエレメントを取り外した図である。
【
図11】
図11は、エアクリーナケースに吸気口が左右対称に形成されている場合の気流の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るエアクリーナおよび鞍乗型車両について説明する。
図1は、鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の右側面図である。
【0042】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート2に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0043】
自動二輪車1は、ヘッドパイプ3Aを有する車体フレーム3と、乗員が座るシート2と、内燃機関(以下、エンジンという)5と、前輪6と、後輪8とを備えている。ヘッドパイプ3Aには、図示しないステアリング軸が左右に回転可能に支持されている。ステアリング軸の上部にはハンドルバー4が固定されている。ステアリング軸の下部にはフロントフォーク7が固定されている。前輪6はフロントフォーク7に支持されている。
【0044】
エンジン5の上方には、
図2に示すエアクリーナ30が配置されている。
図3はエアクリーナ30の左側面図である。
図3に示すように、エアクリーナ30は、ベース31Bおよびカバー31Aを有するエアクリーナケース31を備えている。本実施形態では、カバー31Aはベース31Bの上側に配置されている。カバー31Aはベース31Bに対して着脱自在に取り付けられている。
図4は、カバー31Aを取り外したときのエアクリーナ30の左側面図である。エアクリーナ30は、ベース31Bとカバー31Aとの間に配置されたエレメント32を備えている。エレメント32は、エアクリーナケース31の内部をクリーンサイドとダーティーサイドとに仕切っている。ここでは、エレメント32の下方がクリーンサイドであり、エレメント32の上方がダーティーサイドである。詳しくは、カバー31Aとエレメント32とにより仕切られた空間がダーティーサイドである。ベース31Bとエレメント32とにより仕切られた空間がクリーンサイドである。
【0045】
ベース31Bには吸気管37が接続されている。吸気管37は、エアクリーナケース31のクリーンサイドに接続されている。吸気管37はエンジン5(
図1参照)に接続されている。クリーンサイドの空気は、吸気管37を通じてエンジン5に吸い込まれる。
【0046】
図5は、カバー31Aを取り外したときのエアクリーナ30を
図4のZ方向から見た図である。
図6は、
図5においてエレメント32を取り外した図である。
図6に示すように、ベース31Bには装着溝36が形成されている。
図5に示すように、エレメント32は装着溝36に嵌め込まれている。エレメント32はベース31Bに取り付けられている。エレメント32はドーム型に形成されている。エレメント32は、Z方向と逆方向に凹んだ腕型に形成されている。エレメント32は、その全面がメッシュ状に形成されている。エレメント32の全面に、空気が通過可能な孔(図示せず)が形成されている。エレメント32の材料は特に限定されない。エレメント32は、例えば紙製であってもよい。本実施形態では、エレメント32はウレタンによって形成されている。
【0047】
エレメント32は、上方に延びる側壁20と、側壁20の上方に位置する上壁29とを有している。側壁20は、左後壁21と、左前壁22と、前壁26と、右前壁23と、右後壁24と、後壁25とを含んでいる。左後壁21は、前方かつ左方に延びている。左前壁22は、左後壁21から前方かつ右方に延びている。前壁26は、左前壁22から右方に延びている。右前壁23は、前壁26から後方かつ右方に延びている。右後壁24は、右前壁23から後方かつ左方に延びている。後壁25は、右後壁24から左後壁21に至るまで左方に延びている。上壁29は、Z方向と反対の方向に向かって凸状に形成されている。
【0048】
図7はカバー31Aの表面図である。カバー31Aは外面31Pを有している。
図8はカバー31Aの裏面図である。カバー31Aは内面31Qを有している。
図8に示すように、カバー31Aの内面31Qは、上方に延びる側面10と、側面10の上方に位置する天井面19とを有している。側面10は、左後面11と、左前面12と、前面16と、右前面13と、右後面14と、後面15とを含んでいる。左後面11は、前方かつ左方に延びており、エレメント32の左後壁21に対向している。左前面12は、左後面11から前方かつ右方に延びており、エレメント32の左前壁22に対向している。前面16は、左前面12から右方に延びており、エレメント32の前壁26に対向している。右前面13は、前面16から後方かつ右方に延びており、エレメント32の右前壁23に対向している。右後面14は、右前面13から後方かつ左方に延びており、エレメント32の右後壁24に対向している。後面15は、右後面14から左後面11に至るまで左方に延びており、エレメント32の後壁25に対向している。天井面19は、Z方向(
図4参照)と反対の方向に向かって凸状に形成されている。天井面19は、エレメント32の上壁29に対向している。
【0049】
図5に示すように、ベース31Bには、エレメント32を囲む溝40が形成されている。溝40は、エレメント32の側壁20の周囲に形成されている。溝40は、エレメント32の側壁20とカバー31Aの側面10との間に配置されている。
図9は、
図3のIX-IX線断面図である。
図9に示すように、溝40は下方に凹んでいる。
図5に示すように、溝40は、左後ろの底面41と、左前の底面42と、前の底面46と、右前の底面43と、右後ろの底面44と、後の底面45とを有している。左後ろの底面41は、左後壁21と左後面11との間に配置され、前方かつ左方に延びている。左前の底面42は、左前壁22と左前面12との間に配置され、前方かつ右方に延びている。前の底面46は、前壁26と前面16との間に配置され、右方に延びている。右前の底面43は、右前壁23と右前面13との間に配置され、後方かつ右方に延びている。右後ろの底面44は、右後壁24と右後面14との間に配置され、後方かつ左方に延びている。後ろの底面45は、後壁25と後面15との間に配置され、左方に延びている。
【0050】
図10は、エアクリーナ30を
図3のX方向から見た図である。なお、X方向はZ方向に対して垂直な方向である。
図10に示すように、エアクリーナケース31は、プレート31Cを有している(
図4も参照)。プレート31Cは、左右方向および上下方向に延びている。プレート31Cは、ベース31Bの後部およびカバー31Aの後部に取り付けられている。
【0051】
図2に示す鉛直面IPは、前方、後方、上方、および下方に延びる仮想的な平面である。
図10に示すように、鉛直面IPは、エアクリーナケース31の左右方向の中心を通る面である。エアクリーナケース31は、仮想面IPの左方に位置する左半部31Lと、仮想面IPの右方に位置する右半部31Rとを有している。エアクリーナケース31の左半部31Lには、吸気口33が形成されている。吸気口33はエアクリーナケース31の外部とダーティーサイドとをつないでいる。エアクリーナケース31の外部の空気は、吸気口33を通じてダーティーサイドに吸い込まれる。なお、
図10では、吸気口33の輪郭が分かりやすいようにエレメント32の図示は省略している。
【0052】
本実施形態に係るエアクリーナ30では、吸気口33と左右対称の位置に他の吸気口が形成されていない。エアクリーナケース31は、鉛直面IPを基準として吸気口33と対称な位置にある閉鎖壁34を有している。ここでは、閉鎖壁34は、カバー31Aの一部である閉鎖壁34bと、プレート31Cの一部である閉鎖壁34aとを含んでいる。
【0053】
また、本実施形態に係るエアクリーナ30では、エアクリーナケース31の右半部31Rに、エアクリーナケース31の外部とダーティーサイドとをつなぐ吸気口が形成されていない。空気は、専らエアクリーナケース31の左半部31Lに吸い込まれる。また、本実施形態に係るエアクリーナ30では、エアクリーナケース31の外部とダーティーサイドとをつなぐ吸気口として、前記吸気口33のみが形成されている。エアクリーナケース31の外部とダーティーサイドとをつなぐ吸気口は一つしか形成されていない。
【0054】
図5の仮想線は吸気口33を表し、矢印33Tは吸気口33の向きを表している。
図5に示すように、吸気口33は、エレメント32の左後壁21とカバー31Aの左後面11(
図8参照)との間から、エアクリーナケース31の外部に向かって開口している。詳しくは、吸気口33は、エアクリーナケース31の外部に向けて後方かつ右方に開口している。吸気口33は後方かつ右方から空気を吸い込むように形成されている。ただし、上記の向きは一例に過ぎず、吸気口33の向きは特に限定されない。また、吸気口33の形状は特に限定されない。ここでは、
図10に示すように、吸気口33は縦長の形状に形成されている。吸気口33の上下方向の寸法は左右方向の寸法よりも大きくなっている。吸気口33は、横幅が一定の下部33aと、上方に行くほど横幅が小さくなる上部33bとを有している。
【0055】
以上がエアクリーナ30の構成である。次に、エアクリーナ30における空気の流れについて説明する。
【0056】
空気は、吸気口33からエアクリーナケース31の内部に吸い込まれる。
図5に示すように、吸気口33から吸い込まれた空気の一部は、符号A1、A2、A6、A3、A4、A5に示すように、エレメント32の側壁20とカバー31Aの側面10との間を流れ、エレメント32の周りを旋回する。ここで、A1は、エレメント32の左後壁21とカバー31Aの左後面11との間の気流を示す。A2は、エレメント32の左前壁22とカバー31Aの左前面12との間の気流を示す。A6は、エレメント32の前壁26とカバー31Aの前面16との間の気流を示す。A3は、エレメント32の右前壁23とカバー31Aの右前面13との間の気流を示す。A4は、エレメント32の右後壁24とカバー31Aの右後面14との間の気流を示す。A5は、エレメント32の後壁25とカバー31Aの後面15との間の気流を示す。このように本実施形態では、エアクリーナケース31のダーティーサイドにおいて、横向きに一周する気流が生成される。すなわち、スワール流が生成される。
【0057】
ところで、吸気口33から吸い込まれる空気には、比較的大きな埃が含まれる場合がある。空気はエレメント32の周りをカバー31Aの側面10に沿って流れるので、空気に含まれる埃は、遠心力を受けて側面10に接触しやすい。空気に含まれる埃は、エレメント32の周囲を流れるときに空気から分離する。空気に含まれる比較的大きな埃は、エレメント32の周囲を流れるときに分離する。分離した埃は、重力によって落下する傾向がある。分離した埃は、エレメント32の周囲の溝40に回収される。
【0058】
吸気口33から吸い込まれた一部の空気は、上述したようにスワール流を形成し、エレメント32の側壁20に沿って流れる。他の空気は、エレメント32の上壁29に沿って流れる。このようにして、空気はエレメント32の表面全体に沿って流れる。エレメント32の表面近傍の空気は、エレメント32を通過し、クリーンサイドに流れる。空気がダーティーサイドからクリーンサイドに向けてエレメント32を通過することにより、空気に含まれる比較的小さな埃等がエレメント32によって除去される。空気はエレメント32によって浄化される。浄化された空気は、クリーンサイドから吸気管37を通じてエンジン5に供給される。
【0059】
次に、本実施形態に係るエアクリーナ30によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0060】
図11に示すように、エアクリーナケース31に吸気口33と左右対称な他の吸気口33Aが形成されている場合、吸気口33から吸い込まれた左側の気流ALと吸気口33Aから吸い込まれた右側の気流ARとは、衝突する傾向がある。しかし、左側の気流ALと右側の気流ARとが衝突すると、旋回流は生じにくい。これに対し、本実施形態によれば、
図10に示すように、エアクリーナケース31の吸気口33と左右対称の位置に他の吸気口は形成されていない。エアクリーナケース31の内部において、左右対称な気流は生成されない。気流はエアクリーナケース31の内部において旋回しやすい。
【0061】
吸気口33から吸い込まれた空気は、エレメント32の左後壁21とカバー31Aの左後面11との間を通った後、左前壁22と左前面12との間を通る(
図5の矢印A1およびA2参照)。吸気口33から吸い込まれた空気はエレメント32の左後壁21および左前壁22に沿って流れるので、エレメント32の広範囲の部分を有効活用することができる。また、空気はカバー31Aの左後面11および左前面12に沿って流れるので、空気はエレメント32の周囲を回り込むように流れる。
【0062】
空気が左後面11および左前面12に沿って流れる際に、空気に含まれる比較的大きな埃は、左後面11および左前面12と接触することによって空気から分離されやすい。空気は、比較的大きな埃が分離された後に、エレメント32を通過する。このように、本実施形態に係るエアクリーナ30によれば、空気は、比較的大きな埃が分離されてから、エレメント32の広範囲を通過する。よって、本実施形態によれば、空気の浄化性能を高めることができる。エンジン5に対して、より清浄な空気を供給することができる。また、エレメント32は比較的汚れにくいので、エレメント32の寿命を長くすることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、エレメント32は右前壁23を有し、カバー31Aは右前壁23と対向する右前面13を有している。吸気口33から吸い込まれた空気は、エレメント32の左側を回り込んだ後、右前壁23と右前面13との間を通る(
図5の矢印A3参照)。空気は、エレメント32の周囲を半周以上にわたって旋回する。そのため、空気をエレメント32の側壁20の広範囲に沿って流すことができ、空気をカバー31Aの側面10の広範囲に沿って流すことができる。エレメント32を更に有効活用することができると共に、空気から埃を更に分離しやすくなる。
【0064】
また、本実施形態によれば、エレメント32は右後壁24を有し、カバー31Aは右後壁24と対向する右後面14を有している。吸気口33から吸い込まれた空気は、エレメント32の左側、前側、および右側を回り込んだ後、右後壁24と右後面14との間を通る(
図5の矢印A4参照)。空気は、エレメント32の周囲を3/4周以上にわたって旋回する。そのため、空気をエレメント32の側壁20の広範囲に沿って流すことができ、空気をカバー31Aの側面10の広範囲に沿って流すことができる。エレメント32を更に有効活用することができると共に、空気から埃を更に分離しやすくなる。
【0065】
また、本実施形態によれば、エレメント32は後壁25を有し、カバー31Aは後壁25と対向する後面15を有している。吸気口33から吸い込まれた空気は、エレメント32の左側、前側、および右側を回り込んだ後、後壁25と後面15との間を通る(
図5の矢印A5参照)。空気は、エレメントの周囲を1周以上にわたって旋回する。そのため、空気をエレメント32の側壁20の広範囲に沿って流すことができ、空気をカバー31Aの側面10の広範囲に沿って流すことができる。エレメント32を更に有効活用することができると共に、空気から埃を更に分離しやすくなる。
【0066】
本実施形態によれば、エアクリーナケース31は、エレメント32の側壁20とカバー31Aの側面10との間に配置された溝40を有している。空気から分離されて落下した埃を溝40に回収することができる。溝40を清掃するだけで、埃を除去することができる。例えば、指に引っ掛けたシート状のクリーナを溝40に沿わせて移動させることにより、埃を簡単に除去することができる。本実施形態によれば、除去しやすい箇所に埃を溜めることができるので、エアクリーナ30を容易にメンテナンスすることができる。
【0067】
本実施形態によれば、吸気口33は、エアクリーナケース31の外部に向けて後方かつ右方に開口している。そのため、吸気口33から吸い込まれた空気は、エレメント32の左後壁21およびカバー31Aの左後面11に沿って流れやすい。空気をエレメント32の側壁20およびカバー31Aの内面10に沿って流すことが容易となる。
【0068】
本実施形態によれば、吸気口33は、エアクリーナケース31の左半部31Lにのみ形成されている(
図10参照)。エアクリーナケース31の右半部31Rには、エアクリーナケース31の外部とダーティーサイドとをつなぐ吸気口が形成されていない。エアクリーナケース31の右半部31Rからは空気が流入しない。そのため、左半部31Lに形成された吸気口33から吸い込まれた空気によって、エアクリーナケース31の内部において旋回流を生成しやすい。よって、空気を旋回させることにより、空気に含まれる比較的大きな埃を分離しやすい。また、エレメント32の広範囲の部分に沿って空気を流すことができ、エレメント32の広範囲の部分を有効活用することができる。
【0069】
吸気口33の数は特に限定されないが、本実施形態では1つのみである。エアクリーナケース31には、エアクリーナケース31の外部とダーティーサイドとをつなぐ吸気口として、左半部31Lに形成された吸気口33のみが形成されている。吸気口33から集中的に吸い込んだ空気によって、エレメント32の周囲を回る旋回流が生成されやすい。空気を旋回させることにより、空気に含まれる比較的大きな埃を分離しやすい。また、エレメント32の広範囲の部分に沿って空気を流すことができ、エレメント32の広範囲の部分を有効活用することができる。
【0070】
本実施形態によれば、エレメント32はドーム型に形成されている。エレメント32が平板型に形成されている場合に比べて、エアクリーナ30を小型化しつつ浄化性能を向上させることができる。
【0071】
本実施形態によれば、エレメント32の全面がメッシュ状に形成されている。エレメント32の全面において空気を浄化させることができるので、エアクリーナ30を小型化しつつ浄化性能を向上させることができる。
【0072】
本実施形態によれば、エアクリーナケース31はベース31Bおよびカバー31Aを有し、エレメント32はベース31Bとカバー31Aとの間に配置されている。ベース31Bからカバー31Aを取り外すことにより、エレメント32を露出させることができる。よって、エアクリーナ30を容易にメンテナンスすることができる。
【0073】
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は例示に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0074】
前記実施形態では、エレメント32はドーム型であるが、エレメント32の形状は特に限定されない。エレメント32は、平板以外の他の形状を有していてもよい。エレメント32の形状は、曲面からなる表面を有する他の形状であってもよい。エレメント32は、例えば、軸線方向の一端部が閉じた円筒状に形成されていてもよい。エレメント32は、断面形状が楕円形の筒状に形成されていてもよい。エレメント32は、例えば、軸線方向がZ方向(
図4参照)に延びる円筒状に形成されていてもよい。この場合でも、エアクリーナケース31の内部において、エレメント32の周囲を旋回するスワール流を生成させることにより、前述の効果を得ることができる。
【0075】
前記実施形態では、吸気口33はエアクリーナケース31の左半部31Lに形成され、右半部31Rに吸気口が形成されていないが、吸気口33が右半部31Rに形成され、左半部31Lに吸気口が形成されていなくてもよい。この場合には、エアクリーナケース31の内部において、Z方向から見たときに左回りの旋回流が生成される。
【0076】
前記実施形態では、エレメント32は、上方に延びる軸線(すなわち、
図4のZ方向と逆方向に延びる軸線)周りに周回する側壁20を有している。前記実施形態に係るエアクリーナ30は、空気がエアクリーナケース31の内部において横向きに旋回するように構成されている。前記実施形態に係るエアクリーナ30は、エアクリーナケース31の内部においてスワール流が生成されるように構成されている。前記実施形態では、前方、後方、上方、下方、左方、右方が、それぞれ第1方向、第2方向、第3方向、第4方向、第5方向、第6方向に対応する。しかし、エレメント32の配置は特に限定されない。エレメント32は、前方または左方に延びる軸線周りに旋回する側壁20を有していてもよい。エアクリーナ30は、空気がエアクリーナケース31の内部において縦向きに旋回するように構成されていてもよい。エアクリーナ30は、エアクリーナケース31の内部においてタンブル流が生成されるように構成されていてもよい。例えば、第1方向、第2方向、第3方向、第4方向、第5方向、第6方向は、それぞれ前方、後方、左方、右方、下方、上方であってもよい。
【0077】
前記実施形態では、エアクリーナケース31の左半部31Lに吸気口33は1つだけ形成されているが、左半部31Lに複数の吸気口33が形成され、右半部31Rに吸気口が無くてもよい。
【0078】
また、エレメント32の側壁20およびカバー31Aの内面10に沿った流れが生成できる限り、左半部31Lおよび右半部31Rの両方に吸気口が形成されていてもよい。左半部31Lおよび右半部31Rの両方に吸気口が形成されている場合であっても、左右の吸気口が左右対称に形成されていなければ、エレメント32の周りに旋回流を生成することができる。エアクリーナケース31が、鉛直面IPを基準として吸気口33の一部または全部と対称な位置に閉鎖壁34を有していれば、エレメント32の周りに旋回流を生成することが可能である。そこで、エレメント32の左側の気流および右側の気流のいずれか一方が他方よりも強くなるように、例えば、左右の吸気口の形状または大きさが互いに異なっていてもよい。
【0079】
メンテナンス性の向上のために溝40はあった方が好ましいが、溝40は必ずしも必要ではない。溝40の一部または全部は無くてもよい。エアクリーナケース31は、溝40を備えていなくてもよい。
【0080】
エレメント32は、その全面がメッシュ状に形成されていなくてもよい。例えば、エレメント32の側壁20がメッシュ状に形成され、上壁29の一部または全部がメッシュ状に形成されていなくてもよい。
【0081】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0082】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0083】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、5…内燃機関、10…内面、11…左後面(第1ケース内面)、12…左前面(第2ケース内面)、13…右前面(第3ケース内面)、14…右後面(第4ケース内面)、15…後面(第5ケース内面)、20…側壁、21…左後壁(第1エレメント側壁)、22…左前壁(第2エレメント側壁)、23…右前壁(第3エレメント側壁)、24…右後壁(第4エレメント側壁)、25…後壁(第5エレメント側壁)、30…エアクリーナ、31…エアクリーナケース、31A…カバー、31B…ベース、31L…左半部(第1半部)、31R…右半部(第2半部)、32…エレメント、33…吸気口、34…閉鎖壁、37…吸気管、40…溝、41…左後ろの底面(第1底面)、42…左前の底面(第2底面)、43…右前の底面(第3底面)、44…右後ろの底面(第4底面)、45…後ろの底面(第5底面)、F…前方(第1方向)、Re…後方(第2方向)、U…上方(第3方向)、D…下方(第4方向)、L…左方(第5方向)、R…右方(第6方向)、IP…鉛直面(仮想面)