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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049454
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/20 20180101AFI20240403BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20240403BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240403BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20240403BHJP
   F21S 41/265 20180101ALI20240403BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20240403BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20240403BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240403BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S41/151
F21S41/143
F21S41/26
F21S41/265
F21S41/663
F21W102:145
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155687
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 樹生
(57)【要約】
【課題】ハイビーム配光とロービーム配光を可能にした一体型のランプユニットにおいて、ハイビーム配光におけるレンズ収差を抑制した車両用灯具を提供する。
【解決手段】ロービーム光源ユニット1,2と、ハイビーム光源ユニット3と、各光源ユニット1,2,3の光を投影して所要の配光を形成する投影レンズ4を備える。投影レンズ4は、ロービーム光源ユニット1,2の光を投影してロービーム配光を形成するロービームレンズ部41,42と、ハイビーム光源ユニット3の光を投影してハイビーム配光を形成するハイビームレンズ部43とが一体に形成される。さらに、ハイビーム光源ユニット3はレンズ収差を抑制する補正光学部(補正レンズ)32を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム光源ユニットと、ハイビーム光源ユニットと、前記各光源ユニットの光を投影して所要の配光を形成する投影レンズとを備え、前記投影レンズは、前記ロービーム光源ユニットの光を投影してロービーム配光を形成するロービームレンズ部と、前記ハイビーム光源ユニットの光を投影してハイビーム配光を形成するハイビームレンズ部とが一体に形成され、前記ハイビーム光源ユニットはレンズ収差を抑制する補正光学部を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記補正光学部は、光源ユニットから出射されてハイビームレンズ部に入射される光の入射角を抑制する光学部材で構成される請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記補正光学部は正の屈折力を有するレンズで構成される請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記補正光学部は光を収束反射するリフレクタで構成される請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記投影レンズの前面は一様な曲面で構成され、当該投影レンズの後面は前記ハイビームレンズ部と前記ロービームレンズ部が異なる曲面で構成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ハイビーム光源ユニットのレンズ部は鉛直方向と水平方向に屈折力を有するレンズとして構成される請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記投影レンズの前面は鉛直方向と水平方向にそれぞれ湾曲した曲面である請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記投影レンズの前面は、前記ハイビームレンズ部と前記ロービームレンズ部が異なる曲面で構成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記ロービーム光源ユニットはロービーム配光のホットゾーンを含む中央領域を照明する集光ロービーム光源ユニットと、前記中央領域よりも広い広域領域を照明する拡散ロービーム光源ユニットを備え、前記集光ロービーム光源ユニットのレンズ部は鉛直方向と水平方向に屈折力を有するレンズとして構成され、前記拡散ロービーム光源ユニットのレンズ部は鉛直方向に屈折力を有し水平方向に屈折力を有しないレンズとして構成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項10】
自動車のヘッドランプとして機能する照明ランプユニットとして構成される請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用灯具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に装備して好適な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具、特に、自動車のヘッドランプの構造の簡易化を図るために、ロービーム光源ユニットやハイビーム光源ユニットを含む複数の光源ユニットの投影レンズを一体化したランプユニットが提案されている。例えば、特許文献1には、一つの投影レンズに対してロービーム光源ユニットとハイビーム光源ユニットが対応配置されており、各光源ユニットから出射された光を当該一つの投影レンズにより投影してそれぞれ所要のロービーム配光とハイビーム配光を形成する構成がとられている。また、特許文献2には1つの投影レンズに対して3つのロービーム光源ユニットが対応配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2021-261559号公報
【特許文献2】国際公開2013-183240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにロービーム配光とハイビーム配光を一つの投影レンズで投影するように構成した場合に、ハイビーム配光において生じるレンズ収差が問題になる。すなわち、ハイビーム光源ユニットはハイビーム配光を広くかつ高い照度(明るさ)とするために、光源で発光された発散状態の光をそのまま投影レンズに入射させる構成がとられることが多い。そのため、ハイビーム光源ユニットから出射された光の一部が投影レンズに入射する際の入射角が大きくなり、レンズ収差、特にコマ収差が発生するという問題が生じる。
【0005】
ハイビーム配光用の投影レンズが独立した構成の場合には、このようなレンズ収差を抑制した投影レンズを設計することは比較的に容易である。しかし、ハイビーム配光用の投影レンズをロービーム配光用の投影レンズと一体化した投影レンズの場合には、ハイビーム配光用のレンズの設計の自由度が制限され、レンズ収差を十分に抑制する投影レンズを設計することは難しくなる。
【0006】
特に、ADB(Adaptive Driving Beam)配光制御を可能にしたハイビーム光源ユニットは、光源として複数個のLED(発光ダイオード)を配列した構成がとられているため、投影レンズの光軸から離れたLEDから出射されて投影レンズに入射される光の入射角が顕著に大きくなり、レンズ収差、特にコマ収差が無視できなくなる。コマ収差が生じると、ADB配光制御した際の遮光領域に、隣接する光照射領域で発生したコマ収差の光が進入される状態となり、遮光領域に存在する他車両を幻惑するおそれが生じる。
【0007】
本発明の目的は、ハイビーム配光とロービーム配光を可能にした一体型のランプユニットにおいて、特にハイビーム配光におけるレンズ収差を抑制した車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用灯具は、ロービーム光源ユニットと、ハイビーム光源ユニットと、各光源ユニットの光を投影して所要の配光を形成する投影レンズとを備えており、投影レンズは、ロービーム光源ユニットの光を投影してロービーム配光を形成するロービームレンズ部と、ハイビーム光源ユニットの光を投影してハイビーム配光を形成するハイビームレンズ部とが一体に形成され、さらに、ハイビーム光源ユニットはレンズ収差を抑制する補正光学部を備える。
【0009】
ここで、補正光学部は、光源ユニットから出射されてハイビームレンズ部に入射される光の入射角を抑制する光学部材で構成される。例えば、補正光学部は正の屈折力を有するレンズで構成される。あるいは、補正光学部は光を収束反射するリフレクタで構成される。
【0010】
本発明において、投影レンズの前面は一様な曲面で構成され、当該投影レンズの後面はハイビームレンズ部とロービームレンズ部が異なる曲面で構成される。その上で、ハイビーム光源ユニットのレンズ部は鉛直方向と水平方向に屈折力を有するレンズとして構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つの投影レンズに対応してハイビーム用とロービーム用の光源ユニットを備えたランプユニットを構成した場合において、ハイビーム配光におけるレンズ収差を抑制した車両用灯具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の車両用灯具を搭載した自動車の概略斜視図とその一部の分解斜視図。
図2】実施形態1の照明ランプユニットの概略の分解斜視図。
図3】実施形態1の照明ランプユニットの概略平面図。
図4A】集光Lo光源ユニットの断面図と配光図。
図4B】拡散Lo光源ユニットの断面図と配光図。
図5】投影レンズの後面側からの斜視図。
図6】Hi光源ユニットの配光を説明する模式図。
図7】Hi配光を説明する配光図。
図8】コマ収差の抑制を説明する模式図。
図9】コマ収差によるグレアを説明する模式図。
図10】実施形態2の照明ランプユニットの概略の分解斜視図。
図11】実施形態2のHi光源ユニットの一部の拡大斜視図。
図12】実施形態3の照明ランプユニットの概略の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の車両用灯具として適用された左右のヘッドランプL-HL,R-HLを備える自動車CARの概略斜視図である。これら左右のヘッドランプL-HL,R-HLの構成は一部の構成を除けば左右対称であるので、以降は主に右ヘッドランプR-HLについて説明するが、単にヘッドランプHLと称することもある。右ヘッドランプR-HLは自動車CARの車体の右前部に配設されており、当該車体に取り付けられたランプハウジング100内に、照明ランプユニットLLUと表示ランプユニットILUが配設された複合型ヘッドランプとして構成されている。なお、以降の説明において、基本的に前後方向は自動車CARの前後方向であり、左右方向は自動車CARの車幅方向である。
【0014】
図1(b)は右ヘッドランプR-HLの一部を分解した概略斜視図である。ランプハウジング100は、車両の前方から側方にわたる部位が開口されたランプボディ101と、このランプボディ101の開口を塞ぐように取り付けられた透光性のアウターカバー102とで構成されている。このアウターカバー102は透光性カバーあるいはアウターレンズとも称されるが、無色の透光性樹脂等からなる、いわゆる素通しレンズとて構成されており、自動車CARの車体の右前部の湾曲形状に倣って表面が幾分湾曲された曲面に形成されている。
【0015】
このランプハウジング100内の下部に照明ランプユニットLLUが配設され、その上部に表示ランプユニットILUが配設されている。照明ランプユニットLLUは前面側から見たときには車幅方向に長辺を向けた横長の長方形に近い形状の発光面を有する構成とされている。また、表示ランプユニットILUは照明ランプユニット1の上側において車幅方向に延びる細長いストリップ(帯)状に近い形状の発光面を有する構成とされている。
【0016】
照明ランプユニットLLUは、詳細については後述するが複数の実施の形態があり、1つの投影レンズに対応してロービーム(以下、Lo)光源ユニットとハイビーム(以下、Hi)光源ユニットが組み付けられている。そして、Lo光源ユニットが発光されたときに所定のLo配光での照明を行い、Hi光源ユニットが発光されたときにHi配光、ここではADB(Adaptive Driving Beam)-Hi配光での照明を行うように構成されている。
【0017】
表示ランプユニットILUは、ここでは自車の存在を表示するための白色光で発光するCL(クリアランスランプ)又はDRL(デイタイムランニングランプ)として機能するランプユニットとして構成されている。この表示ランプユニットILUは本発明との関連が少ないので詳細な説明は省略するが、照明ランプユニットLLUの上縁に沿って車幅方向に延びるストリップ状の導光体と、白色光を発光する白色LEDを備えている。そして、白色LEDが発光したときに発光された白色光が導光体を透して出射されることによりCL又はDRLとして点灯される。
【0018】
あるいは、表示ランプユニットILUは、車幅方向に配列された複数の白色LEDと、これらのLEDの前側に配設された車幅方向に細長い投影レンズとで構成されてもよい。この構成では、白色LEDが発光したときに発光された白色光が投影レンズを透して出射されることによりCL又はDRLとして点灯される。なお、この表示ランプユニットILUは、さらにアンバー色光を発光するアンバー色LEDを備えてもよく、その場合には表示ランプユニットILUは信号灯機能を有するTSL(ターンシグナルランプ)としても構成される。
【0019】
(実施形態1)
図2は前記した右ヘッドランプR-HLにおける照明ランプユニットLLUの実施形態1の一部を分解した斜視図であり、図3は概略の平面断面図である。この照明ランプユニットLLUは、一つの投影レンズ4に対して、2つのLo光源ユニット、すなわち第1Lo光源ユニット1及び第2Lo光源ユニット2と、1つのHi光源ユニット3を備えており、各光源ユニット1,2,3は1つの投影レンズ4を共用してそれぞれプロジェクター型のランプを構成している。
【0020】
2つのLo光源ユニット1,2は車幅方向の外側に配置され、1つのHi光源ユニット3は車幅方向の内側に配置されている。第1Lo光源ユニット1は、後述するように、配光の中心領域、すなわち自動車の前方を照明する際の配光の基準となる水平線Hと鉛直線Vの交点(以下、HV点と称する)の近傍領域を集光的に照明する集光Lo光源ユニットとして構成されている。第2Lo光源ユニット2は、この集光領域を含む広い領域を相対的に低い照度で照明する拡散Lo光源ユニットとして構成されている。
【0021】
第1Lo光源ユニット、すなわち集光Lo光源ユニット1は、図4A(a)の縦断面図を合わせて参照すると、光源としての白色LED11と、この白色LED11から出射された白色光を前方に向けて反射するリフレクタ12を備えている。白色LED11は白色光を発光するチップ型LEDで構成され、その発光面を鉛直上方に向けた状態でユニットボディ13に搭載されている。このユニットボディ13は例えばヒートシンクとして構成されており、その上面に所要のアタッチメントを介して白色LED11が搭載され、さらに図示を省略した配線を通して発光のための給電が行われる。
【0022】
リフレクタ12は回転楕円面を基礎とする凹面反射鏡として構成されており、その第1焦点に前記白色LED11が配置されている。実際には、リフレクタ12は、楕円長軸を含む鉛直方向断面から水平方向断面に向けて楕円の偏平率が徐々に小さくなる形状とされている。また、前記ユニットボディ13の上面の前端縁はシェード14として構成されており、前方に向けて凹状に湾曲された平面形状である。
【0023】
第2Lo光源ユニット、すなわち拡散Lo光源ユニット2は、図4B(a)の縦断面図を合わせて参照すると、基本的な構成は集光Lo光源ユニット1と同様である。すなわち、光源としての白色LED21と、この白色LED21から出射された白色光を前方に向けて反射するリフレクタ22を備えている。白色LED21は白色光を発光するチップ型LEDで構成され、その発光面を鉛直上方に向けた状態でユニットボディ23に搭載されている。リフレクタ22は回転楕円面を基礎とする凹面反射鏡として構成されており、その第1焦点に前記白色LED21が配置されている。前記ユニットボディ23の上面の前端縁はシェード24として構成されており、集光Lo光源ユニット1とは逆に、シェード24は前方に向けて凸状に湾曲された平面形状である。
【0024】
前記Hi光源ユニット3は、図3に示したように、光源としての複数個の白色LED31と、この白色LEDから出射された光を幾分収束させる補正レンズ32を備えている。複数個の白色LED31は10個のチップ型LEDで構成されており、それぞれの発光面を前方に向けた状態でユニットボディ33に立設されたベース壁34の前面に車幅方向に一列に並んで搭載されている。これら10個の白色LED31は、自動車の車幅外方向から車幅内方向(車幅中央方向)に向けて隣接する白色LEDとの車幅方向の間隔寸法が徐々に大きくされているが、その詳細は後述する。
【0025】
前記補正レンズ32は10個の白色LED31の前側位置に配置され、各白色LED31の発光面から出射された白色光が入射されるように構成されている。この補正レンズ32は正の屈折力を有するレンズ、ここでは凸レンズで構成されており、各白色LED31から発散状態で出射された白色光を収束方向に屈折して投影レンズ4に入射させる構成とされている。この補正レンズ32はHi光源ユニット3と一体的に組み立てられているが、別体に構成されてもよい。
【0026】
一方、図3に示した投影レンズ4は、2つのLo光源ユニット1,2と1つのHi光源ユニット3の各配光を形成するための共通の投影レンズとして構成されており、2つのLo光源ユニット1,2と1つのHi光源ユニット3の前面側の領域にわたって配設されている。この投影レンズ4はインナーレンズとも称されるが、照明ランプユニットLLUの発光面として構成されるものであり、透光性材料により車幅方向に長辺を向けた横長の長方形に近い形状に形成されている。
【0027】
図5は投影レンズ4を後面側から見た斜視図であり、投影レンズ4は各光源ユニット1,2,3に対応して車幅方向に区分されている。以降においては、区分した各部を便宜的にレンズ部と称する。すなわち、集光Lo光源ユニット1、拡散Lo光源ユニット2、Hi光源ユニット3に対向される部位をそれぞれ集光Loレンズ部41、拡散Loレンズ部42、Hiレンズ部43と称する。
【0028】
前記投影レンズ4の前面は全域にわたって一様な曲面で構成されている。すなわち、鉛直断面については各レンズ部41~43について所要の曲率の凸状をした円弧面あるいはこれに近い曲面とされる。一方、水平断面についてはランプハウジング100のアウターレンズ102の湾曲形状に倣って車両中央側から車幅外側方向に向けて緩やかに後方に延びる曲面に形成されている。したがって、投影レンズ4の前面は鉛直方向及び水平方向にそれぞれ湾曲した一様な曲面として構成され、投影レンズ4を前面側から観察したときには、各レンズ部41~43の区分が識別できない滑らかに連続した面として観察され、この点での意匠的効果が高められる。
【0029】
投影レンズ4の後面については各レンズ部41~43の形状は相違している。集光Loレンズ部41の後面は、少なくとも水平方向に所要の曲率の凸状の球面ないしは非球面に形成されている。また、鉛直方向についても同様な凸状の曲面に形成されている。これらの面形状により、集光Loレンズ部41は、いわゆる両凸レンズとして構成されており、水平方向及び鉛直方向のいずれも光を収束させる正の屈折力のあるレンズ部として構成されている。
【0030】
また、図4A(a)に示したように、この集光Loレンズ部41の光軸Lx上にある焦点Fは、集光Lo光源ユニット1のリフレクタ12の第2焦点の近傍位置、換言すればシェード14の近傍位置に設定される。なお、水平方向と鉛直方向のそれぞれについて正の屈折力のレンズ部として構成されるのであれば、集光Loレンズ部41の後面は凹面であってもよい。
【0031】
拡散Loレンズ部42の後面は、鉛直方向については正の屈折力を生じる平面又は曲面に形成されている。ここでは前面よりも小さい曲率の曲面に形成されており、いわゆるメニスカス型のレンズとして構成され、集光Loレンズ部41よりも薄肉に形成されている。一方、水平方向については、図3に示したように、前面と平行な曲面に形成されており、したがって水平方向にはレンズとしての屈折力を生じない構成とされている。換言すれば、水平方向に湾曲されたシリンドリカルレンズとして構成されている。
【0032】
この拡散Loレンズ部42は鉛直方向については光軸Lx及び焦点Fが特定できるが、水平方向については水平方向に延びる面状又は線状となる。この光軸Lx及び焦点Fは、図4B(a)に示したように、拡散Lo光源ユニット2のリフレクタ22の第2焦点の近傍位置、すなわちシェード24の位置に設定される。
【0033】
Hiレンズ部43の後面は、集光Loレンズ部41と同様に、水平方向には所要の曲率の凸状の球面ないしは非球面に形成され、鉛直方向についても同様な凸状の球面ないしは非球面に形成されている。これらの面形状により、Hiレンズ部43は、水平方向及び鉛直方向のいずれも光を収束させる正の屈折力のあるレンズ部として構成されており、3つのレンズ部のうち最も肉厚に形成されている。
【0034】
Hiレンズ部43の光軸Lxは、前記した補正レンズ32の光軸と一致されている。また、この光軸Lxの鉛直方向の位置は白色LED41の高さ位置に一致され、水平方向の位置は白色LED41の水平方向中心位置として設定された所定位置に一致されている。このHiレンズ部43についても、水平方向と鉛直方向のそれぞれについて正の屈折力のレンズ部として構成されるのであれば、後面は凹面であってもよい。
【0035】
以上の構成の3つの光源ユニット1,2,3と、1つの投影レンズ4はそれぞれ別体に構成された上で独立して前記ランプハウジング100内に配設されてもよい。あるいは2つのLo光源1,2が一体に組み立てられた上でランプハウジング100内に配設されてもよい。さらには、3つの光源ユニット1,2,3が一体的に組み立てられた上でランプハウジング100内に配設されてもよい。この場合には、投影レンズ4も3つの光源ユニット1,2,3と一体的に組み立てられる構成とされてもよい。
【0036】
以上の構成の照明ランプユニットの作用について説明する。ヘッドランプHLがLoビーム配光で点灯されたときには、2つのLo光源ユニット1,2が同時に発光状態とされる。集光Lo光源ユニット1では、図4A(a)のように、発光された白色LED11の白色光はリフレクタ12で前方に向けて反射されて第2焦点の近傍に収束され、また、一部はユニットベース13の表面で反射される。シェード14で遮光されない白色光が投影レンズ4の集光レンズ部41に入射される。集光レンズ部41は、図3にも示すように、鉛直方向と水平方向に屈折力を有しているので、白色光は集光レンズ部41により自動車の前方に照射される。
【0037】
集光Lo光源ユニット1のシェード14は、前記したように水平方向に段状に形成されているので、図4A(b)に示すように、投影される白色光にはカットオフライン(以下、COライン)、ここでは段状COラインCOL1が形成され、この段状COラインCOLcの下側領域に白色光が照射された集光Lo配光PLo1が得られる。この段状COラインCOL1は、例えば対向車線側が自車線側よりも低くされており、対向車線側では水平線Hに対して下方に0.57度の角度位置である。また、集光Lo光源ユニット1では、シェード14は前方に向けて凹形状とされているので、集光Loレンズ部41に生じるレンズ収差、特に像面湾曲を解消ないし低減した鮮鋭な段状COラインCOL1が得られる。さらに、集光Loレンズ部41の鉛直方向と水平方向の屈折力によって白色光はHV点の近傍に集光状態で照射されるので、集光Lo配光PLo1は相対的に照度の高い領域、いわゆるホットゾーンを含むLo配光となる。
【0038】
拡散Lo光源ユニット2では、図4B(a)のように、発光された白色LED21の白色光はリフレクタ22で反射されて第2焦点の近傍に収束され、シェード24で遮光されない白色光が投影レンズ4の拡散Loレンズ部42に入射される。拡散Loレンズ部42は鉛直方向に屈折力を有しているが、図3に示したように、水平方向には屈折力を有していない。また、拡散Lo光源ユニット2のシェード24は、前方に向けて凸形状とされており、これは拡散Loレンズ部42の水平方向の湾曲形状に対応した凸形状であるので、図4B(b)に示すように、水平方向に延びる直線ないしこれに近い水平COラインCOL2が形成される。この水平COラインCOL2は前記した段状COラインCOL1の対向車線側と同じ角度位置、すなわち水平線Hに対して下方に0.57度の角度位置である。
【0039】
そして、この水平COラインCOL2の下側の領域に白色光が照射され、拡散Lo配光PLo2が形成される。拡散Loレンズ部42は水平方向に屈折力を有していないため、白色光は水平方向の広い角度に向けて発散され、左右方向の広い領域に照射される。また、白色光はLo配光PLo1よりも広い領域に照射されるので相対的に低い照度の配光となる。なお、この図4A図4Bにおいては、白色光で照明される領域は点描で表している。
【0040】
これらの集光Lo光源ユニット1と拡散Lo光源ユニット2による各Lo配光PLo1,PLo2は合成されるので、段状COラインCOL1L及び水平COラインCOL2Lの下側の水平方向に広い領域を照明し、かつ自動車の直進方向、すなわちHV点の近傍の高い照度のホットゾーンを有するLo配光PLoが形成される。このLo配光の図示は省略するが、図4A(b)と図4B(b)の配光を合成したものとなる。
【0041】
ヘッドランプHLがHiビーム配光で点灯されたときには、2つのLo光源ユニット1,2の発光と同時にHi光源ユニット3の白色LED31が発光される。発光された白色LED31の各白色光は補正レンズ32に入射され、この補正レンズ32を透過された上で投影レンズ4のHiレンズ部43に入射される。Hiレンズ部43は鉛直方向と水平方向に屈折力を有しているので、各白色LED31の白色光はそれぞれ鉛直方向と水平方向に発散された状態で自動車の前方に投影される。
【0042】
図6はHi光源ユニット3における配光動作を説明するための模式図である。10個の白色LED31[31(1)~31(10)]は水平方向に配列されているので、各白色LED31の白色光が投影レンズ4により投影されることにより、各白色光の投影パターンが水平方向に配列した配光が得られる。この実施形態1では、10個の白色LED31は、光軸Lxに近い白色LED31(1)側が光軸Lxから離れた白色LED31(10)よりも水平方向に密に配置されている。換言すれば、光軸Lxから離れるのにしたがって白色LED31の間隔寸法は徐々に大きくされている。なお、ここでは照明パターンの点描は省略している。
【0043】
このような10個の白色LED31の配列では、光軸Lxから離れて配置された白色LED31(10)側の白色光は、光軸Lxに近い白色LED31(1)側の白色光よりも光軸Lxに対する入射角が大きくなる。そして、この白色光はHiレンズ部43でのレンズ収差によって水平方向の拡大幅が増大される。したがって、この水平方向の拡大幅の増大により、図6に示すように、光軸Lxから離れた白色LED31の隣接する白色光の投影パターンPAHi(10)の両側部は互いに重なるようになる。
【0044】
これにより、図7(a)に示すように、10個の白色LED31の白色光は水平線Hを含むその上側において水平方向に並んだ投影パターンとして投影される。投影された各白色LED31の投影パターンPAHi(1)~PAHi(10)は水平方向の両側部が互いに重なるため、各投影パターンは水平方向に連続した配光とされ、この配光がいわゆるHi付加配光PAHiとされる。図示及び説明は省略するが、左ヘッドランプL-HLのHi光源ユニットにおいては、これと左右対称のHi付加配光PAHiが形成される。したがって、Lo配光PLo1,PLo2と、その上側の左右のHi付加配光PAHiが合成されることにより、図7(b)に示すHi配光PHiが形成される。
【0045】
この構成では、10個の白色LED31は、光軸Lxに近い白色LED31(1)側が水平方向に密に配置されているので、投影されたHi付加配光PAHiは光軸Lxに近い側の照度が光軸Lxから水平方向に離れた側よりも高くなる。これにより、Hi付加配光PAHiをLo配光PLoと合成したときに、Lo配光PLoのホットゾーンに連なる領域の照度が周辺領域よりも高くされたHi配光PHiが得られる
【0046】
前記したように左右のヘッドランプのHi光源ユニット31は左右対称であり、それぞれ10個の白色LED31の配置も左右対称とされている。したがって、左右のヘッドランプの各Hi光源ユニット31によるHi付加配光PAHiを合成することにより、光軸に近い側の照度はさらに高められ、同時に光軸Lxを中心にした水平方向の左右に広い領域が照射されるHi配光PHiが得られる。
【0047】
このHi光源ユニット3では、ADB配光制御時には、10個の白色LED31は選択的に発光あるいは消光される。したがって、Hi配光時に一部の白色LEDが消光されると、この白色LEDの投影パターンの領域は遮光領域として形成される。したがって、対向車等が存在するときに、当該対向車の存在する領域を遮光領域とするように白色LED31を選択的に消光することにより、当該対向車に対するグレアを防止したADB配光制御が実現できる。
【0048】
ところで、光軸Lxから離れて配置された白色LED31の白色光について、Hiレンズ部43でのレンズ収差、いわゆる結像ボケを利用して投影する配光の拡大幅を大きくしているが、このレンズ収差による好ましくない影響も無視できなくなる。すなわち、光軸に対する白色光の入射角が大きくなるとレンズ収差の一つであるコマ収差が顕著になり、このコマ収差により各白色光の投影パターンの境界が不鮮明になる。
【0049】
投影パターンの境界が不鮮明になると、ADB配光制御を実行したときにグレア防止効果が低下するおそれが生じる。図9はグレア防止効果の概念図であり、ADB制御を実行したときには、図9(a)のように、例えば対向車Oが存在する領域の白色LEDが消光され、この領域が遮光領域Dとなってグレア防止効果が得られる。しかし、この遮光領域Dに隣接する照明領域Lにコマ収差が生じていると、図9(b)のように、当該隣接する照明領域Lの境界が遮光領域Dに進出される状態となり、遮光領域Dの境界が不鮮明となり、対向車Oに対するグレア防止効果が低下するおそれが生じる。
【0050】
この実施形態1では、Hi光源ユニット3に補正レンズ32を備えており、この補正レンズ32の正の屈折力によって白色LEDから出射された白色光の発散が抑制される。すなわち、図8にHi光源ユニット3の一部を拡大した模式図を示すように、白色LED31から発散状態に出射された白色光の光束(光の束)は、補正レンズ32によって同図の鎖線から実線に示すように収束され、絞り効果が得られる。これにより、補正レンズ32を透過して投影レンズ4のHiレンズ部43に入射される白色光の入射角が抑制され、コマ収差が抑制される。また、この実施形態1では、Hiレンズ部43は、白色光が入射する後面の曲率が前面の曲率よりも大きな凸球面であるので、この点からもコマ収差が抑制される。したがって、ADB配光制御を実行したときの照明領域Lの境界が不鮮明になることを抑制し、精度の高いADB配光制御が実現できる。
【0051】
以上のように、実施形態1の照明ランプユニットLLUは、Hi光源ユニット3に補正レンズ32を備えることにより、Hiレンズ部43により生じるコマ収差が抑制され、白色光による投影パターンの境界が鮮明なものとされADB配光制御が高められる。また、実施形態1の照明ランプユニットLLUは、投影レンズ4の前面が一様な曲面で構成されているので、アウターレンズ102を透して観察したときの外観がシンプルなものになり、照明ランプユニットLLUの意匠性を高めることができる。
【0052】
(実施形態2)
図10は実施形態2の照明ランプユニットLLUの概略構成を示す外観図であり、実施形態1と比較してHi光源ユニット3Aの構成のみが相違しているので、その他の構成については説明を省略する。実施形態2のHi光源ユニット3Aは、補正レンズを備える代わりに補正リフレクタ35を備えている。すなわち、10個の白色LED31を搭載しているベース壁34の前面に、これら白色LED31を囲むように前方を開口した補正リフレクタ35が取り付けられている。そして、各白色LED31から出射される白色光の一部を、この補正リフレクタ35で反射して投影レンズ4のHiレンズ部43に入射させる構成とされている。
【0053】
補正リフレクタ35は、図11(a)に拡大斜視図を示すように、前面方向から見たときに10個の白色LED31の周囲を囲む四角枠壁あるいは長円枠壁として構成されている。そして、少なくとも左右の枠壁35aの内側面がそれぞれ光反射面として構成されている。ここでは、上下、左右の各枠壁の内側面が光反射面として構成されている。ここでは各枠壁35aの内面は、鉛直方向及び水平方向にそれぞれ傾きを有する平面、放物面ないしはこれに近い凹面形状の光反射面に形成されている。
【0054】
したがって、図11(b)に示すように、各白色LED31から出射された光のうち、Hiレンズ部43の光軸Lxに対して相対的に大きな角度で出射された白色光は、補正リフレクタ35で光軸Lx寄りの方向に偏向されてHiレンズ部43に入射される。特に、光軸Lxからの距離が大きな左右の白色LED31の光が左右の枠壁35aにより光軸Lx側に偏向される。これにより、実施形態1に比較すると改善度は低いが、Hiレンズ部43において生じるコマ収差が抑制され、ADB配光制御の精度が改善される。
【0055】
(実施形態3)
図12は実施形態3の照明ランプユニットLLUの概略構成を示す外観図であり、実施形態1とは投影レンズの構成が相違している。Lo光源ユニット1,2とHi光源ユニット3の構成は実施形態1と同じであるので説明は省略する。実施形態3では、投影レンズ4Aは、Hiレンズ部43Aの後面の凸球面の曲率が実施形態1よりも小さくされて平面もしくは平面に近い曲面に形成されている。その一方で、Hiレンズ部43Aの前面は2つのLoレンズ部41,42よりも前方に突出された球面もしくは非球面に形成されている。このように、Hiレンズ部43Aについては前面が所定の曲面に形成するという制約が解除されるので、当該Hiレンズ部43Aの前面の設計の自由度が高められ、レンズ収差を低減した投影レンズ4Aが得られる。
【0056】
また、Hiレンズ部43Aの前面はLoレンズ部41,42の前面とは形状が相違しているが、Hiレンズ部43Aの鉛直方向の寸法はLoレンズ部41,42と同じである。したがって、投影レンズ4Aを正面から観察したときには、投影レンズ4Aの全体が横長の長方形の外観を呈していることから、投影レンズ4Aは全体としての一体感が得られる。このように、実施形態3の照明ランプユニットLLUでは、Hi光源ユニット3Aにおけるレンズ収差を抑制し、高精度のADB制御が実現できる一方で、投影レンズ4Aの外観上の意匠性についても十分な意匠性が得られる。
【0057】
以上説明した実施形態1~3において、照明ランプユニットを構成するLo光源ユニットとHi光源ユニットの構成や個数については適宜に変更することが可能である。例えば、実施形態1,3においては、補正レンズは複数のレンズで構成されてもよい。また、実施形態2においては、補正リフレクタは白色LEDの車幅方向(水平方向)の両側ないし片側にのみ配設される構成であってもよい。
【0058】
本発明において、Hi光源ユニットを構成する白色LEDは、上下方向に複数の列で配列されてもよい。また、Lo光源ユニットの構成は実施形態の構成に限定されるものではない。さらに、投影レンズの構成、特にHi配光とLo配光を得るための各レンズ部の構成についても、各レンズ部において要求される屈折力、特に鉛直方向と水平方向の屈折力について要求を満たしていれば、レンズ形状については種々の変形が考えられる。また、投影レンズの前面は平面であってもよく、この場合には各レンズ部において所要の屈折力を得るために投影レンズの後面を凸曲面に形成すればよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ロービーム光源ユニット(集光Lo光源ユニット)
2 ロービーム光源ユニット(拡散Lo光源ユニット)
3,3A,3B ハイビーム光源ユニット(Hi光源ユニット)
4,4A,4B 投影レンズ
11,21 白色LED
12,22 リフレクタ
14,24 シェード
31 白色LED
32 補正レンズ(補正光学部)
33,36 リフレクタ
35 補正リフレクタ(補正光学部)
41 Loレンズ部(集光Loレンズ部)
42 Loレンズ部(拡散Loレンズ部)
43,43A Hiレンズ部
100 ランプハウジング
LLU 照明ランプユニット
IlU 表示ランプユニット

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12