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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049459
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】固定具識別装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/11 20170101AFI20240403BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240403BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20240403BHJP
【FI】
G06T7/11
G06T7/00 350B
G06V10/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155692
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA02
5L096DA01
5L096EA35
5L096EA43
5L096FA69
5L096FA77
5L096GA10
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、固定具の画像を精度良く識別することができる固定具識別装置を提供する。
【解決手段】固定具識別装置10は、コーナ検出画像GAを生成するコーナ検出画像生成部12と、二値化処理画像GBを生成する二値化処理画像生成部13と、コーナ検出画像GAと二値化処理画像GBとを対比し、コーナ検出画像GAで検出した複数のコーナ部分の画像gaのうち、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像gbと重複する位置にある重複部分の画像gcを残し、それ以外のコーナ部分の画像gdをマスク処理したマスキング処理画像GCを、コーナ検出画像GAから生成するマスキング処理画像生成部14と、マスキング処理画像GCに残された複数の重複部分の画像gcに基づいて、ビスの画像6を特定する固定具特定部15と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、前記固定具の画像を識別する固定具識別装置であって、
前記撮像画像にコーナ検出を行うことで、コーナ検出画像を生成するコーナ検出画像生成部と、
前記撮像画像に適応的二値化処理を行うことで、二値化処理画像を生成する二値化処理画像生成部と、
前記コーナ検出画像と前記二値化処理画像とを対比し、前記コーナ検出画像で検出した複数のコーナ部分の画像のうち、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像と重複する位置にある重複部分の画像を残し、それ以外のコーナ部分の画像を削除するようなマスク処理を行ったマスキング処理画像を、前記コーナ検出画像から生成するマスキング処理画像生成部と、
前記マスキング処理画像に残された複数の前記重複部分の画像に基づいて、前記固定具の画像を特定する固定具特定部と、を備えることを特徴とする固定具識別装置。
【請求項2】
前記固定具特定部は、前記固定具の形状に基づいて、前記固定具の特徴を機械学習した機械学習部であり、
前記機械学習部は、前記複数の重複部分の画像に基づいて前記固定具の画像を特定することを特徴とする請求項1に記載の固定具識別装置。
【請求項3】
前記機械学習部は、前記重複部分ごとに前記重複部分を含む一定範囲の画像を抽出し、抽出した抽出画像ごとに、前記抽出画像から前記固定具の画像を特定することを特徴とする請求項2に記載の固定具識別装置。
【請求項4】
前記マスキング処理画像生成部は、前記マスキング処理画像に対して、適応的二値化処理を行い、
前記固定具特定部は、適応的二値化処理した前記マスキング処理画像を用いて、前記固定具の画像を特定することを特徴とする請求項1に記載の固定具識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、前記固定具の画像を識別する固定具識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、内壁材または天井材等で使用される石膏ボードなどの板材は、ビスなどの複数の固定具を介して、下地に取付けられる。複数の固定具は、板材の少なくとも周縁に沿って、規定された間隔内で、板材に打ち込まれている。板材の施工後には、固定具の間隔が、規定された間隔内に収まっているか、点検される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-031241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような点検は、目視で行うことも可能であるが、固定具が打ち込まれた板材を撮影して、撮影した画像から固定具の間隔を測定することも想定される。しかしながら、板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、固定具の画像を目視で行うには時間を要し、固定具の形状を機械学習し、これを利用したとしても、その識別精度は高いものであるとは言い難い。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、固定具の画像を精度良く識別することができる固定具識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑みて、本発明に係る固定具識別装置は、板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、前記固定具の画像を識別する固定具識別装置であって、前記撮像画像にコーナ検出を行うことで、コーナ検出画像を生成するコーナ検出画像生成部と、前記撮像画像に適応的二値化処理を行うことで、二値化処理画像を生成する二値化処理画像生成部と、前記コーナ検出画像と前記二値化処理画像とを対比し、前記コーナ検出画像で検出した複数のコーナ部分の画像のうち、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像と重複する位置にある重複部分の画像を残し、それ以外のコーナ部分の画像を削除するようなマスク処理を行ったマスキング処理画像を、前記コーナ検出画像から生成するマスキング処理画像生成部と、前記マスキング処理画像に残された複数の前記重複部分の画像に基づいて、前記固定具の画像を特定する固定具特定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、コーナ検出画像生成部は、撮像装置で撮像した撮像画像にコーナ検出を行うことで、コーナ検出画像を生成する。生成されたコーナ部分の画像には、固定具の画像ばかりでなく、板材の隅部のなどの画像、板材以外の点状の模様、汚れなどの画像等を、コーナ部分の画像として検出することができる。
【0008】
二値化処理画像生成部は、撮像画像に適応的二値化処理を行うことで、二値化処理画像を生成する。適応的二値化処理には、画像の濃度等の閾値を固定せず、その周りの画像に応じて画素ごとに閾値を変化させる処理であるため、撮像画像内の濃淡差に応じて識別された識別部分の画像を特定することができる。したがって、これにより得られた識別部分の画像には、固定具の画像ばかりでなく、板材の縁部の画像、および板材の罫書線の画像などが、含まれる。
【0009】
ここで、発明者らは、コーナ検出画像と二値化処理画像とを対比すると、いずれも、固定具の画像が含まれると考えた。そこで、コーナ検出画像で検出したコーナ部分の画像と、適応的二値化処理で識別された識別部分の画像とを対比し、画像全体領域において、コーナ部分の画像と識別部分の画像との共通する位置に存在する画像が、固定具の画像の可能性が高いという新たな知見を得た。
【0010】
このような知見から、マスキング処理画像生成部は、コーナ検出画像と二値化処理画像とを対比し、コーナ検出画像で検出した複数のコーナ部分の画像のうち、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像と重複する位置にある重複部分の画像を残し、それ以外のコーナ部分の画像をマスク処理したマスキング処理画像を、コーナ検出画像から生成する。
【0011】
これにより、マスキング処理画像は、コーナ部分の画像から、固定具の画像以外の画像(具体的には、板材の縁部の画像、板材の罫書線の画像、および、細長い汚れなどの画像、小さな点状の模様の画像)が削除された画像となる。このマスキング処理画像には、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像のうち、板材の縁部の画像、板材の罫書線の画像、および、細長い汚れなどの画像、小さな点状の模様の画像は、反映されることはない。このようにして、マスキング処理画像に含まれる複数の重複部分の画像は、固定具の画像である可能性が高い。ただし、マスキング処理画像には、丸またはそれに近い形状の汚れなどや、板材の隅部は削除できないことがある。
【0012】
そこで、固定具特定部は、マスキング処理画像に残された複数の重複部分に基づいて、固定具の画像を特定する。これにより、撮像画像を用いて、固定具の画像を精度良く識別することができる。
【0013】
ここで、固定具特定部は、たとえば、重複部分の画像数と、重複部分の縦横の配列数(または重複部分の縦横比)とが、所定の範囲内にある場合に、固定具の画像であると特定(判別)してもよい。しかしながら、より好ましい態様としては、前記固定具特定部は、前記固定具の形状に基づいて、前記固定具の特徴を機械学習した機械学習部であり、前記機械学習部は、前記複数の重複部分に基づいて前記固定具の画像を特定する。具体的には、機械学習部は、マスキング処理画像の重複部分から直接的に固定具の画像を特定してもよいが、たとえば、複数の重複部分の位置に該当する元画像(撮像画像)を切り出して(抽出して)、この抽出した抽出画像を入力画像に利用し、抽出画像に固定具の画像が含まれるかどうかを判別してもよい。
【0014】
この態様によれば、固定具特定部は、固定具の形状に基づいて、固定具の特定を機械学習した機械学習部を利活用することにより、複数の重複部分から固定具の画像をより正確かつ迅速に特定することができる。
【0015】
さらに好ましい態様として、前記機械学習部は、前記重複部分ごとに前記重複部分を含む一定範囲の画像を抽出し、抽出した抽出画像ごとに、前記抽出画像から前記固定具の画像を特定する。なお、「重複部分を含む一定範囲の画像を抽出」とは、マスキング処理画像からこれを抽出してもよいが、ここでは、元画像である撮像画像から、重複部分を含む一定範囲の画像を抽出することが好ましい。
【0016】
この態様によれば、機械学習部が、画像全体に対して、固定具の画像を特定せず、抽出画像ごとに、固定具の画像を特定するので、演算の負荷を抑えて、迅速に固定具の画像を特定することができる。元画像である撮像画像に対して抽出した抽出画像を利用すれば、より正確かつ迅速に固定具を特定することができる。
【0017】
さらに好ましい態様としては、前記マスキング処理画像生成部は、前記マスキング処理画像に対して、適応的二値化処理を行い、前記固定具特定部は、適応的二値化処理した前記マスキング処理画像を用いて、前記固定具の画像を特定する。
【0018】
この態様によれば、マスキング処理画像生成部で生成されたマスキング処理画像は、コーナ検出画像をマスキング処理した画像である。したがって、マスキング処理画像に含まれるコーナ部分の画像の画素には、コーナらしさに応じて濃淡が付与される。固定具の画像を構成する画素は、他の点状の重複画像の画素に比べて濃淡の差が大きいため、マスキング処理画像に、適応的二値化処理を行うと、他の点状の重複画像を取り除くことができる。したがって、固定具特定部は、適応的二値化処理したマスキング処理画像を用いて、固定具の画像をより正確に特定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、板材に打ち込まれた複数の固定具を含む撮像画像から、固定具の画像を精度良く識別する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の識別対象となるビス(固定具)を石膏ボードに打ち付けた状態の模式図である。
図2】本実施形態に係るビスピッチの識別装置の模式図である。
図3図1に示す識別装置の制御ブロック図である。
図4】コーナ検出画像の全体を示した概念図である。
図5】二値化処理画像の全体を示した概念図である。
図6】マスキング処理を説明するための概念図であり、(a)は、コーナ検出画像の部分的な画像であり、(b)は、二値化処理画像の部分的な画像であり、(c)は、マスキング処理画像の部分的な画像である。
図7】マスキング処理画像の全体を示した概念図である。
図8】(a)は、図3に示す固定具特定部による適応的二値化処理前の重複部分の画像を説明する図であり、(b)は、適応的二値化処理後の重複部分の画像を説明する図である。
図9】(a)は、図3に示す固定具特定部(機械学習部)による固定具特定前の画像を説明する図であり、(b)は、固定具特定後の画像を説明する図である。
図10】ビスを特定した後の全体画像である。
図11図3に示す識別装置を用いた演算フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図1図11を参照しながら、本実施形態に係る識別装置10を説明する。
【0022】
1.板材と固定具について
本実施形態では、固定具識別装置10(以下「識別装置10」という)は、矩形状の板材に打ち込まれた複数の固定具を識別する装置である。識別装置10は、複数の固定具のうち、隣り合う固定具同士の距離を測定する。ここで、板材の少なくとも周縁に沿って、固定具が所定の間隔で打ち込まれている。板材と固定具の組み合わせとしては、軒天材(軒下の化粧材)とそれを固定する釘、木造住宅等における構造用合板とそれを固定する釘、床の下地材とそれを固定する釘・ビスなどを挙げることができる。
【0023】
以下の実施形態では、図1に示すように、板材として、石膏ボード5を例示し、固定具として、ビス6Aを例示する。したがって、石膏ボード5が、本発明でいうところの「板材」に相当し、ビス6Aが、本発明でいうところの「固定具」に相当する。したがって、ビス6Aのピッチ(ビスピッチ)が、「固定具の間隔」に相当することになる。
【0024】
なお、石膏ボード5を固定する固定具は、釘またはステープルであってもよい。石膏ボード5は、内壁材または天井材等で使用される。石膏ボード5は、法令等で規定されたピッチ以下の条件で、石膏ボード5の長辺方向および短辺方向に沿ってビス6Aで固定されている。ここでいう、ビスピッチは、石膏ボード5の長辺方向および短辺方向に沿って隣接したビス6A、6A同士の間隔である。
【0025】
ここで、複数のビス6A、6A、…は、石膏ボード5の周縁よりも内側において、周縁に沿って、規定されたピッチ内で、石膏ボード5に打ち込まれている。さらに、本実施形態では、複数のビス6A、6A、…は、石膏ボード5の幅方向の中央において、石膏ボード5の長辺方向に沿って、規定されたピッチ内で、石膏ボード5に打ち込まれている。石膏ボード5の取付け施工後には、ビスピッチが、規定されたピッチ内に収まっているか、ビスピッチが点検される。ビスピッチは、石膏ボード5を正面視した際に、長辺方向および短辺方向に沿って隣接するビス6Aの中心間距離である。
【0026】
本実施形態に係るビス6Aの識別装置10は、石膏ボード5の取付け施工後には、石膏ボード5に打ち込まれたビス6Aを識別する装置である。識別装置10は、撮像装置20で撮像された石膏ボード5を含む画像G1から、最終的には、ビス6Aの画像6(以下「ビスの画像6」と表記する)を抽出し、隣接するビス6Aのピッチを推定する。
【0027】
2.識別装置10のハードウエア構成について
図2に示すように、識別装置10は、ハードウエアとして、ROM、RAM等で構成され、石膏ボード5の条件、ビスピッチの推定プログラム等が記録された記憶装置10Aと、ビスピッチの推定プログラムを実行する演算装置10Bと、を備えている。
【0028】
識別装置10には、入力装置31と出力装置32とが接続されている。本実施形態では、入力装置31と出力装置32とが一体となったタッチパネルディスプレイであってもよい。入力装置31は、石膏ボード5の仕様条件、ビスピッチの推定プログラム等のデータが入力される。本実施形態では、入力装置31は、撮像装置20で撮像した画像データが入力される。入力装置31で入力されたデータは、記憶装置10Aに記憶される。出力装置32は、撮像装置20で撮像された画像データ、演算装置10Bで演算された演算結果等が、表示される。
【0029】
本実施形態では、識別装置10は、記憶装置10Aおよび演算装置10Bで構成されていたが、例えば、入力装置31および出力装置32を備えたものであってもよい。識別装置10は、入力装置31および出力装置32に加えて、撮像装置20をさらに備え、これらが一体となったスマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末であってもよい。
【0030】
3.識別装置10のソフトウエア構成について
本実施形態では、図3に示すように、識別装置10は、明度均一化処理部11と、コーナ検出画像生成部12と、二値化処理画像生成部13と、マスキング処理画像生成部14と、固定具特定部15と、を少なくとも備えている。
【0031】
3-1.明度均一化処理部11について
明度均一化処理部11は、撮像装置20で撮像した撮像画像を構成する各画素に対して、明度差の均一化を行う。たとえば、明度均一化処理部11は、各画素の明度を所定の範囲内に収まるように、各画素の明度の均一化処理を行う。具体的には、明度均一化処理部11は、撮像装置20の画素の明度の最大値と最小値との差分に応じた補正係数を、各画素の明度に乗じてもよい。
【0032】
この明度均一化処理部11により明度が均一化された撮像画像を用いることで、撮像条件により変化するビスの画像の画素を均一化することができる。さらに、後述するコーナ検出画像GAにおいて、コーナ部分の画像gaをビスの画像6として検出し易く、二値化処理画像GBにおいて、ビス6Aを識別部分の画像として識別し易くなる。これにより、ビスの画像6の識別の精度を高めることができる。なお、以下の一連の工程により、ビス6Aを識別することができるのであれば、明度均一化処理部11は省略してもよく、さらに、明度均一化処理の前に、メディアンフィルタなどを用いて、撮像画像に対してノイズ除去を行ってもよい。
【0033】
3-2.コーナ検出画像生成部12について
コーナ検出画像生成部12は、撮像画像にコーナ検出を行うことで、図4に示すように、コーナ検出画像GAを生成する。コーナ検出画像生成部12が、明度が均一化処理された撮像画像からコーナ検出画像GAを生成する。コーナ検出画像GAにおいて、生成されたコーナ部分の画像には、ビスの画像6ばかりでなく、石膏ボード5の隅部の画像、石膏ボード5以外の点状の模様、汚れなど画像など、ビスの画像6を除く画像7aも含まれており、これら、コーナ部分の画像ga(6、7a)として検出することができる。
【0034】
コーナ検出画像生成部12によるコーナ検出法としては、Harrisコーナ検出器またはMoravecコーナ検出器などを用いた一般的な検出法であり、コーナ検出されなかった画像(たとえば平面の画像や縁部の画像(線状の画像))の画素には、一定色(たとえば黒色)が付与され、コーナ検出された画像を含む画素に対しては、その画像がどの程度、コーナとして妥当であるか、画素に色が付与される。より具体的に説明すると、この検出法では、各画素にコーナらしさを示す値が付与され、平面や縁部を構成する画素ではゼロ付近の値または負の値が付与され、また、特に、ビスの画像6を構成する画素などでは正の大きな値が付与される。濃淡として付与する場合は、この値に対して、0以下の値をゼロ(黒色)にし、さらに、それ以上の正の値に対して、最大値が255(白色)となるように値をスケール調整したグレースケール画像とする方法が考えられる。
【0035】
3-3.二値化処理画像生成部13について
二値化処理画像生成部13は、撮像画像に適応的二値化処理を行うことで、二値化処理画像GBを生成する。本実施形態では、図5に示すように、二値化処理画像生成部13が、明度が均一化処理された撮像画像から二値化処理画像GBを生成する。適応的二値化処理には、画像の濃度等の閾値を固定せず、その周りの画像に応じて画素ごとに閾値を変化させる処理であるため、撮像画像内の濃淡差に応じて識別された識別部分の画像gbを特定することができる。
【0036】
ビスの画像6を含む画像領域の大きさ応じて、適応的二値化処理を行ってもよい。図5では、白色部分が、識別されなかった部分の画像であり、黒色部分が、適応的二値化処理により識別された部分の画像である。したがって、適応的二値化処理は、二値化しきい値を画素ごとに求める手法で、部分的に明るさが変化するような画像でも最適に二値化処理をすることができる。したがって、この識別部分の画像gbには、ビスの画像6ばかりでなく、石膏ボード5の輪郭線7bの画像、および石膏ボード5の罫書線の画像7cなどが、含まれる。
【0037】
3-4.マスキング処理画像生成部14について
マスキング処理画像生成部14は、コーナ検出画像GA(図6(a)参照)と二値化処理画像GB(図6(b)参照)とを対比する。具体的には、コーナ検出画像GAで検出した複数のコーナ部分の画像ga(6、7a)のうち、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像gb(6、7b、7c)と重複する位置にある重複部分の画像gc(具体的には重複する画素)を残し、それ以外のコーナ部分の画像gdを削除するようなマスク処理を行ったマスキング処理画像GCを、コーナ検出画像GAから生成する。
【0038】
このようにコーナ検出画像GAと二値化処理画像GBとを対比すると、いずれも、ビスの画像6が含まれる。コーナ検出画像GAで検出したコーナ部分の画像ga(6、7a)と、適応的二値化処理で識別された識別部分の画像gb(6、7b、7c)と、を対比したとき、画像全体領域において、コーナ部分の画像gaと識別部分の画像gbとの共通する位置に存在する画像が、ビスの画像6の可能性が高い。そこで、具体的には、マスキング処理画像生成部14は、コーナ検出画像GAを、元(ベース)画像、適応的二値化処理の画像に対するマスク画像として、マスク画像が白(255)の画素は元画像の同じ位置の画素をそのまま残し、マスク画像が黒(0)の画素は元画像の同じ位置の画素を黒(0)にする処理を行う。
【0039】
このように、図6(c)に示すように、マスキング処理画像GCは、コーナ部分の画像ga(6、7a)から、ビスの画像以外の画像(具体的には、石膏ボード5の縁部の画像、石膏ボード5の一部の罫書線の画像、細長い汚れの画像、小さな点状の模様の画像)が削除された画像となる。このマスキング処理画像GCには、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像gbのうち、石膏ボード5の縁部の画像、石膏ボード5の一部の罫書線の画像、細長い汚れの画像、小さな天井の模様の画像は、おおむね反映されることはない。ただし、図7に示すように、マスキング処理画像GCには、複数の重複部分の画像gcとして、ビスの画像6の割合が多いが、それ以外の画像7aとして、丸またはそれに近い形状の汚れなどや、石膏ボード5の隅部は削除できないことがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、マスキング処理画像生成部14は、マスキング処理画像GCに対して、上述した適応的二値化処理をさらに行ってもよい。マスキング処理画像生成部14で生成されたマスキング処理画像GCは、コーナ検出画像GAをマスキング処理した画像である。したがって、マスキング処理画像GCに含まれるコーナ部分の画像ga(6、7a)の画素には、コーナらしさに応じて濃淡が付与される。図8(a)に示すように、ビスの画像6を構成する画素は、他の点状の重複画像の画素に比べて濃淡の差が大きいため、マスキング処理画像GCに、適応的二値化処理を行うと、図8(b)に示すように、他の点状の重複画像7aを取り除くことができる。このような結果、後述する固定具特定部15は、適応的二値化処理したマスキング処理画像GCを用いて、ビスの画像6をより正確に特定することができる。
【0041】
3-5.固定具特定部(ビス特定部)15について
固定具特定部15は、マスキング処理画像CGに残された複数の重複部分の画像gcから、ビスの画像6を特定する。固定具特定部15は、ビス6Aの形状に基づいて、ビス6Aの特徴を機械学習した機械学習部15Aであり、機械学習部15Aは、複数の重複部分の画像gc(図9(a)参照)に基づいて、ビスの画像6(図9(b)参照)を特定する。機械学習部15Aは、重複部分ごとに重複部分を含む一定範囲の画像を抽出し、抽出した抽出画像geごとに、抽出画像geからビスの画像6を特定する。具体的には、機械学習部15Aは、図9(a)、(b)に示すように、マスキング処理画像CGの重複部分から直接的に、ビスの画像6を特定してもよいが、しかしながら、後述するように、複数の重複部分の位置に該当する元画像(撮像画像)を切り出して(抽出して)、この抽出した抽出画像を入力画像に利用し、切り出した抽出画像にビスの画像6が含まれるかを判定することが好ましい。
【0042】
機械学習部15Aは、サポートベクターマシーン(SVM)などを利用して、撮像装置20で撮像したビスの画像6と、この画像におけるビスの画像6の形状の特徴量(例えば、ビスの画像6の外縁である円周に沿った複数の点)を、教師データとし、撮像画像からビスの画像6の特徴量を学習したものであってもよい。これにより、ビスの画像6の画像を含む任意の全体画像から、ビスの画像6を抽出することができる。また、Haar-like特徴量などの特徴量を用いたカスケード分類器を用いて、石膏ボード自体を識別した後に、その識別範囲の画像から、上述した機械学習されたものを用いて、ビスの画像6を抽出してもよい。
【0043】
このようにビスの形状に基づいて、ビスの特定を機械学習した機械学習部15Aを利活用することにより、複数の重複部分からビスの画像6をより正確かつ迅速に特定することができる。特に、機械学習部15Aが、元画像である撮像画像に対して、ビスの画像6の特定を行うのではなく、元画像から抽出した抽出画像ごとに、ビスの画像6を特定するので、演算の負荷を抑えて、迅速にビスの画像6を特定することができる。このようにして、図10に示すように、ビスの画像6を特定した全体画像GDを取得し、この全体画像GDから、ビスピッチを算出することができる。
【0044】
以下に、図11を参照して、識別装置10を用いたフロー図を説明する。まず、ステップS1では、撮像装置20で、検査対象範囲として、石膏ボード5を含む範囲を撮影し、全体画像を取得する。
【0045】
次に、ステップS2では、メディアンフィルタなどを用いて、撮像画像に対してノイズ除去を行う。次に、ステップS3では、明度均一化処理部11は、撮像画像を構成する各画素に対して、明度差の均一化を行う。
【0046】
次に、ステップS4では、撮像画像にコーナ検出を行うことで、明度が均一化処理された撮像画像からコーナ検出画像GAを生成する。ステップS4と並行して、ステップS5では、明度が均一化処理された撮像画像から、マスク処理用の二値化処理画像GBを生成する。なお、ステップS4およびS5は、どちらのステップを先に行ってもよい。
【0047】
次に、ステップS6では、マスキング処理画像生成部14は、コーナ検出画像GAで検出した複数のコーナ部分の画像ga(6、7a)のうち、適応的二値化処理により識別された識別部分の画像gb(6、7b、7c)と重複する位置にある重複部分の画像gcを残し、それ以外のコーナ部分の画像gdをマスク処理したマスキング処理画像GCを、コーナ検出画像GAから生成する。
【0048】
さらに、ステップS7では、マスキング処理画像GCに対して、上述した適応的二値化処理をさらに行うことにより、ビス候補部分の画像を強調し、それ以外の部分の画像を除去する。さらに、ステップS8では、固定具特定部15は、複部分ごとに重複部分を含む一定範囲となる抽出画像を生成し、ステップS9では、固定具特定部15(機械学習部15A)は、複数の重複部分の画像gcからビスの画像6を特定する。
【0049】
ステップS10では、ビスの画像6が特定されたマスキング処理画像GCに対して、ビスの位置を特定し、ビスのピッチを算出する。この際、撮像装置20で撮像された石膏ボード5を含む全体画像から、石膏ボード5の画像およびビスの画像6を抽出し、抽出した石膏ボード5の画像から、エッジ処理などを用いて、石膏ボード5の輪郭の推定線を抽出する。ここで、全体画像Gに対するビス6Aの位置を特定する。この際、石膏ボード5の法線方向からみた画像に、石膏ボード5およびビス6Aの画像を射影変換してもよい。得られた画像に対して、縦列のビス6Aの群を特定し、隣り合うビス6Aのビスピッチを算出する。最後に、ステップS11では、算出したビスピッチが、規定の範囲に収まっているかを判定する。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0051】
5:板材(石膏ボード)、6A:固定具(ビス)、6:固定具の画像(ビスの画像)、10:固定具識別装置、11:明度均一化処理部、12:コーナ検出画像生成部、13:二値化処理画像生成部、14:マスキング処理画像生成部、15:固定具特定部、GA:コーナ検出画像、ga:コーナ部分の画像、GB:二値化処理画像、gb:識別部分の画像、GC:マスキング処理画像、gc:重複部分の画像、ge:抽出画像
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