(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049466
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】燻製装置
(51)【国際特許分類】
A23L 3/00 20060101AFI20240403BHJP
B05B 5/043 20060101ALI20240403BHJP
A23B 4/044 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A23L3/00 103
B05B5/043
A23B4/044
A23B4/044 503A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155702
(22)【出願日】2022-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】394017284
【氏名又は名称】株式会社金虎
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【弁理士】
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺 尾 啓
【テーマコード(参考)】
4B021
4F034
【Fターム(参考)】
4B021LA42
4B021LP10
4B021LW07
4B021LW10
4B021MC10
4B021MP01
4B021MQ07
4F034AA10
4F034BA32
4F034BB04
4F034BB07
4F034BB15
(57)【要約】
【課題】 効率よく均一に良質な燻製を液体にかけることができる燻製装置及びその方法を提供する。
【解決手段】 貯液タンク110に燻製処理を施す対象である醤油などの液体LSを投入し、定量送液ポンプ112を運転すると、液体LSが、送液管114と燻製槽120との間を循環する。直流電源150によって液体LSと通電網130の間に、放電現象が生じない程度、例えば2000V程度の直流電圧を印加するとともに、煙発生器142で煙を発生して、送煙ダクト144から煙道140に煙を送り込む。すると、煙粒子が帯電するようになる。帯電した煙粒子は、燻製槽120の液体LSの表面に吸着するようになる。これにより、通常の電気を帯びない煙を使用した場合よりも、効率よく液体LSの燻製を行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙発生手段が発生した煙で液体を燻製する燻製装置であって、
前記液体を収容する燻製槽,
前記液体を循環させる循環手段,
前記燻製槽の液体の表面上に設けられた電極,
前記燻製槽と前記電極との間に設けられた煙道,
前記液体と前記電極との間に電圧を印加する電源,
を備えており、
前記電源で前記電圧を印加して前記煙道に電界を形成するとともに、前記煙道に煙を供給して煙粒子を帯電し、前記循環手段で前記液体を循環させつつ、前記液体表面に燻製をかけることを特徴とする燻製装置。
【請求項2】
前記循環手段は、前記燻製槽内の液体を攪拌する攪拌手段であることを特徴とする請求項1記載の燻製装置。
【請求項3】
前記液体の貯液手段を設け、
前記循環手段は、前記燻製槽と前記貯液手段との間で、前記液体を循環させるポンプ手段を含むことを特徴とする請求項1記載の燻製装置。
【請求項4】
前記循環手段は、前記燻製槽の表面の液体を前記貯液手段に送る送出手段を含むことを特徴とする請求項3記載の燻製装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の燻製装置で液体の燻製を行う燻製方法であって、
前記電源で前記電圧を印加して前記煙道に電界を形成する工程,
前記煙道に煙を供給して前記煙粒子を帯電する工程,
前記循環手段で前記液体を循環する工程,
前記帯電した煙粒子によって前記液体表面に燻製をかけることを特徴とする燻製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を燻製するための燻製装置及びその方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を燻製にかけると、例えば醤油をはじめとした液体調味料に香ばしい風味を与えることができ、燻製醤油として商品化されている。例えば、下記特許文献1には、燻煙発生装置が発生した燻煙を、食品が収容された回転ドラムに供給するとともに、高電圧発生装置から出力された高電圧を回転ドラム内の食品と電極バーとの間に印加するようにした食品の燻製装置及び燻製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液体を燻製するためには、水槽に液体を一定量入れて燻製するが、表面積を多くして煙との接触面積を多くとろうとすると、液体の蒸発量が多くなってしまい、醤油などの場合、塩分の結晶化などにより均質性が阻害され、歩留も著しく低下すなどの弊害がある。また、高温にさらされることにより、酸化による風味の劣化がみられ、均一で良質な燻製をかけることが難しい。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、効率よく均一に良質な燻製を液体にかけることができる燻製装置及びその方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、煙発生手段が発生した煙で液体を燻製するにあたって、
前記液体を収容する燻製槽,
前記液体を循環させる循環手段,
前記燻製槽の液体の表面上に設けられた電極,
前記燻製槽と前記電極との間に設けられた煙道,
前記液体と前記電極との間に電圧を印加する電源,
を備えており、
前記電源で前記電圧を印加して前記煙道に電界を形成する工程,
前記煙道に煙を供給して前記煙粒子を帯電する工程,
前記循環手段で前記液体を循環する工程,
により、前記帯電した煙粒子によって前記液体表面に燻製をかけることを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つによれば、前記循環手段は、前記燻製槽内の液体を攪拌する攪拌手段であることを特徴とする。他の形態によれば、前記液体の貯液手段を設け、前記循環手段は、前記燻製槽と前記貯液手段との間で、前記液体を循環させるポンプ手段を含むことを特徴とする。更に他の形態によれば、前記循環手段は、前記燻製槽の表面の液体を前記貯液手段に送る送出手段を含むことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電圧を印加して煙道に電界を形成するとともに、煙道に煙を供給して煙粒子を帯電し、これによって、液体を循環させつつその表面に燻製をかけることとしたので、効率よく均一に良質な燻製を液体に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1の装置構成を示す図である。
【
図2】(A)は通電網の絶縁具及び仕切り板を平面から見た図、(B)はは燻製槽の液体表面を送出する様子を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2の装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0011】
図1には、本発明の燻製装置100の一実施例が示されている。同図において、燻製対象の液体LSは、貯液タンク110に収容されている。貯液タンク110の液体は、定量送液ポンプ112により、送液管114を介して燻製槽120に送られるようになっている。燻製槽120には、送出管122が設けられており、この送出管122から貯液タンク110に排出されるようになっている。すなわち、貯液タンク110→定量送液ポンプ112→送液管114→燻製槽120→送出管122の経路で液体LSが循環するようになっている。貯液タンク110,燻製槽120には、それぞれ排液用のバルブ116,126が設けられている。排液バルブ116,126は、燻製を終了して液体LSを排出する場合などに使用される。
【0012】
次に、燻製槽120の上側には、通電網130が配置されている。通電網130は、絶縁具132によって無通電板134に吊下げられており、絶縁具132の間には、仕切り板136が設けられている。通電網130の絶縁具132及び仕切り板136を平面から見ると、
図2(A)のようになる。この通電網130と、上述した燻製層120との間には、例えば5cm程度の空間が設けられており、これが煙道140となっている。煙発生器142で生成した煙は、送煙ダクト144によって煙道140に導入されるようになっている。
【0013】
以上の各部のうち、貯液タンク110から燻製槽120に対しては、定量送液ポンプ112によって一定量の液体LSが供給されている。このため、燻製槽120では、一定の水位が保たれ、それ以上の液体LSが、送出管122から貯液タンク110に送出されて戻るようになっている。
図2(B)には、上述した燻製槽120の送出管122の部分が拡大して示されており、送出管122の吸入口122Mは、燻製槽120の液面位置となっている。すなわち、燻製槽120の液体LSの燻製された表面部分LSKが、送出管122から貯液タンク110に送出されるようになっている。
【0014】
燻製槽120内の液体LSと、通電網130との間には、直流電源150から、直流電圧が印加されている。図示の例では、液体LS側がプラス,通電網130側がマイナスとなっている。液体LSに対する電圧の印加は、電極棒や電極網を燻製槽120内に投入しこれに電圧を印加するようにしてもよいし、燻製槽120を金属製としてこれに電圧を印加するようにしてもよい。また、循環に伴う送液ポンプ112の正常な稼働を維持するため、貯液タンク110内の液体LSと燻製槽120内の液体LSとの間に適宜の絶縁処理が施される。
装置全体は、金属枠300上に設けられている。金属枠300の中間部分には貯液タンク110が保持されており、金属枠300の上部には絶縁レンガ302が設けられている。そして、この絶縁レンガ302によって、燻煙槽120の外周が支えられてている。また、絶縁レンガ302の上部には、絶縁レンガ304が設けられており、この絶縁レンガ304によって、上述した無通電板134が支えられている。無通電板134には、上述したように、絶縁具132によって通電網130が吊下げられている。これにより、絶縁レンガ302,304によって、燻煙槽120と通電網130との間に煙道140が形成されている。そして、この煙道140の一端(図の左端)に、煙発生器142の開口側が接合されている。
【0015】
次に、上記実施例による燻製動作について説明する。貯液タンク110に燻製処理を施す対象である醤油などの液体LSを投入し、定量送液ポンプ112を運転すると、液体LSが、送液管114から燻製槽120に送られ(
図1(A)矢印FA参照)、燻製槽120は液体LSで満たされるようになる。一方、この状態で、直流電源150によって液体LSと通電網130の間に、放電現象が生じない程度、例えば、液体LSの液面と通電網130との間隔が10cmあれば2000V程度の直流電圧を印加するとともに、煙発生器142で煙を発生して、送煙ダクト144から煙道140に煙を送り込む(矢印FB参照)。
【0016】
煙道140内に高電圧による電界が形成された状態で、この中に煙が送り込まれると、煙粒子が帯電するようになる。このような現象は、電気塗装や集塵システムに利用されている。更に、本実施例では、上述したように、仕切り板136が設けられており、これによって煙の流れが遮蔽され、通電網130の方向に誘導される。このため、煙粒子の帯電がより効果的に行われるようになる。帯電した煙粒子は、燻製槽120の液体LSの表面に吸着するようになる(矢印FC参照)。これにより、通常の電気を帯びない煙を使用した場合よりも、効率よく液体LSの燻製を行うことができる。
【0017】
次に、
図2(B)に示したように、燻製された液体LSの表面部分LSKは、送出管122から貯液タンク110に送出される。貯液タンク110からは、定量送液ポンプ112によって一定量の液体LSが燻製槽120に供給され、液体LSの燻製処理が繰り返し行われる。なお、液体LSの濃度が上昇する場合は、適度に貯液タンク110内に加水し、濃度を均一にする。
【0018】
以上のように、本実施例によれば、
a,液体LSを燻製するため、液体LSを循環させることとしたので、均一で効率的な燻製をかけることができる。
b,高電圧による電界を煙に印加し、帯電した煙粒子が液体に吸着するようにしたので、効率的に燻製処理を行うことができ、燻製時間の大幅な短縮を図ることができる。
c,燻製時間が単修されることから、液体の蒸発を抑え、再結晶化を防ぎ、品質の劣化を防ぐことができる。
本実施例によれば、前記実施例と同様に、燻製槽220の液体LSの表面が、帯電した煙粒子により燻製処理される。燻製槽220は、液体LSが撹拌装置228によって撹拌されているため、その表面も入れ替わるようになり、液体LSは順次燻製処理されるようになる。
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、貯液タンク110が燻製槽120の下側に位置する場合を説明したが、逆に、貯液タンク110が燻製槽120の上側に位置してもよい。この場合、燻製槽120内に送液ポンプを設け、送出管122に流れ込んだ液体を貯液タンク110に送るようにする。
(2)電界を形成する電極として通電網130を用いたが、板状のものとしてもよい。
(3)より効率的に燻製をかけるために、煙を上下左右に仕切られた煙道に誘導し、この煙道上部に電極を配置することで、煙粒子の帯電を促すようにしてもよい。
(4)前記実施例では、送液管114は、燻製槽120の上側から液体LSを供給するようにしたが、燻製槽120の底側から液体LSを吐出するようにすると、燻製槽120内の液体LSが攪拌されるようになり、好都合である。燻製槽120に攪拌装置を設けるようにしてもよい。
(5)前記実施例では、直流電源150によって液体LS側がプラス,通電網130側がマイナスとなるように電圧を印加したが、その逆の極性であってもよいし、交流電源を使用してもよい。
(6)燻製する液体LSとしては、醤油が代表的な例であるが、他の各種の液体に適用してよい。