(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004947
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】結露抑制パネル及びこれを用いた結露抑制金属屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E04D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104862
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】599015250
【氏名又は名称】株式会社明光建商
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 武志
(72)【発明者】
【氏名】小林 則男
(72)【発明者】
【氏名】山田 展也
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN01
2E108BN02
2E108BN06
2E108CC01
2E108CC02
2E108CC07
2E108CC08
2E108DD05
2E108EE02
2E108FF03
2E108FG04
2E108GG01
2E108GG08
2E108GG20
(57)【要約】
【課題】金属屋根4の室内側面における結露の発生を有効に抑制することができる構造簡素で安価な結露抑制パネル10と、既設の金属屋根4に対しても低コストで施工可能な結露抑制金属屋根構造20を提供すること。
【解決手段】板状の支持部材1と、この支持部材1の上面側に積層され、支持部材1よりも高い反射率を有する上部反射層2と、支持部材1の下面側に積層され、支持部材1よりも高い反射率を有する下部反射層3とから結露抑制パネル10を構成し、この結露抑制パネル10を、その上部反射層2を上向きにして取付部材を介して金属屋根4上に設置することによって結露抑制金属屋根構造20を構成した。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属屋根上に設置される結露抑制パネルであって、
板状の支持部材と、
前記支持部材の上面側に積層され、当該支持部材よりも高い反射率を有する上部反射層と、
前記支持部材の下面側に積層され、当該支持部材よりも高い反射率を有する下部反射層と、
を備え、
前記上部反射層を上向きにして前記金属屋根上に当該金属屋根に対し間隔をあけて設置したとき、前記上部反射層によって日射を反射させる一方、前記下部反射層によって前記金属屋根からの赤外放射を反射させて当該金属屋根に吸収させることを特徴とした結露抑制パネル。
【請求項2】
前記支持部材が鋼材から成ることを特徴とした請求項1に記載の結露抑制パネル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の結露抑制パネルを、前記上部反射層を上向きにして金属屋根に設けた取付部材を介して前記金属屋根上に当該金属屋根に対し間隔をあけて設置したことを特徴とする結露抑制金属屋根構造。
【請求項4】
前記金属屋根が折板屋根であることを特徴とした請求項3に記載の結露抑制金属屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露抑制パネル及びこれを用いた結露抑制金属屋根構造、より詳しくは、金属屋根の室内側面における結露の発生を抑制する結露抑制パネルと、この結露抑制パネルを用いた金属屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、例えば工場、倉庫、体育館等の大規模建築物においては、比較的に低コストで施工可能な折板屋根等の金属屋根が多用されている。
【0003】
ところが、この金属屋根には、特に冬期間における放射冷却現象により金属屋根の室内側面に結露が発生し易い難点があった。
【0004】
従来、省エネルギー化対策として、金属屋根の室内側面にポリエチレンフォーム等の断熱材を貼設することが行われている。しかしながら、この対策では、放射冷却による室内側面の結露を十分に抑制することができず、長期間の使用によって断熱材が結露水により徐々に腐食したり、断熱材が金属屋根から剥離したりする問題があった。
【0005】
また、上下一対の金属屋根材で断熱材を挟んだ二重金属屋根も実施されているが、設置コストがかかり過ぎる問題があった。
【0006】
また、現在までに、結露対策として、折板屋根等の金属屋根上に合成樹脂製のネットカバーを設置したり、金属製、合成樹脂製又は木質材製の遮熱部材を格子状又はすだれ状に設置することが提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの結露対策にしても、放射冷却時の結露を十分に抑制することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭57-159924号公報
【特許文献2】特開昭60-73948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の金属屋根に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、金属屋根の室内側面における結露の発生を有効に抑制することができ、しかも、構造簡素で安価な結露抑制パネルと、既設の金属屋根に対しても低コストで施工することができる結露抑制金属屋根構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属屋根上に設置される結露抑制パネルであって、
板状の支持部材と、前記支持部材の上面側に積層され、当該支持部材よりも高い反射率を有する上部反射層と、前記支持部材の下面側に積層され、当該支持部材よりも高い反射率を有する下部反射層と、を備え、
前記上部反射層を上向きにして前記金属屋根上に当該金属屋根に対し間隔をあけて設置したとき、前記上部反射層によって日射を反射させる一方、前記下部反射層によって前記金属屋根からの赤外放射を反射させて当該金属屋根に吸収させることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記支持部材が鋼材から成ることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、上述した結露抑制パネルを、その上部反射層を上向きにして金属屋根に設けた取付部材を介して前記金属屋根上に当該金属屋根に対し間隔をあけて設置したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記金属屋根が折板屋根であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る結露抑制パネル及びこれを用いた結露抑制金属屋根構造によれば、支持部材の下面に、支持部材よりも高い反射率を有する下部反射層が設けられているので、夜間時に金属屋根からの赤外放射を下部反射層によって下方へ反射させ、再び金属屋根に吸収させることができる。したがって、特に冬期間における放射冷却時の金属屋根の急激な温度低下を防ぐことができ、金属屋根の室内側面における結露の発生を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の結露抑制パネルの平面図である。
【
図4】
図2中のC部分の部分拡大模式断面図である。
【
図5】本実施形態の結露抑制金属屋根構造の側面図である。
【
図6】本実施形態の結露抑制金属屋根構造の日射の反射作用を説明する模式断面図である。
【
図7】本実施形態の結露抑制金属屋根構造の赤外放射の反射作用を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図4に示すように、本実施形態の結露抑制パネル10は、板状の支持部材1と、支持部材1の上面側に積層された上部反射層2と、支持部材の下面側に積層された下部反射層3とから構成されている。
【0016】
支持部材1は、
図1~
図3に示すように、矩形平板形状を成す厚み約1mmの鋼材製の平板部11と、この平板部11の長辺部を曲げ加工して形成した長辺リブ部12と、この長辺リブ部12の端部を曲げ加工して形成した長辺リップ部13と、平板部11の短辺部を曲げ加工して形成した短辺リブ部14とから構成されている。本実施形態の支持部材1は、これら長辺リブ部12、長辺リップ部13及び短辺リブ部14によって強度を高めている。
【0017】
上部反射層2は、
図4に示すように、支持部材1の上面に積層され、鋼材製の支持部材1よりも高い反射率を有している。本実施形態では、上部反射層2として、鋼材(反射率約50~60%)よりも高い反射率(約80~90%)を有する遮熱塗料を使用しており、この遮熱塗料が支持部材1の上面全面に塗工されている。
【0018】
下部反射層3は、
図4に示すように、支持部材1の下面に積層され、上部反射層2と同様に、鋼材製の支持部材1よりも高い反射率を有している。本実施形態では、下部反射層3として、上部反射層2と同じ遮熱塗料を使用しており、この遮熱塗料が支持部材1の下面全面に塗工されている。
【0019】
また、本実施形態では、支持部材1の上面及び下面の他、長辺リブ部12の内外面、長辺リップ部13の上下面、及び短辺リブ部14の内外面を含む支持部材1の全表面に、上部反射層2と同じ遮熱塗料が塗工されている。このことで、支持部材1全表面の腐食等を防ぐことができ、結露抑制パネル10の耐久性を大幅に高めることができる。また、支持部材1の全表面に遮熱塗料を浸漬塗工することによって、結露抑制パネル10をより安価に生産することができる。
【0020】
図5に示すように、本実施形態の結露抑制金属屋根構造20は、従来公知の折板屋根等から成る金属屋根4と、この金属屋根4上に設けられた取付部材5と、この取付部材5に固定された結露抑制パネル10とから成り、結露抑制パネル10を、その上部反射層2を上向きにして、取付部材5を介して金属屋根4上に当該金属屋根4に対して所定の間隔をあけて設置することによって構成されている。
【0021】
本実施形態の金属屋根4は、重ね型折板屋根から成り、折板同士を接合する接合ボルト41及び他のボルト42を利用して複数の取付部材5を金属屋根4に固定している。なお、金属屋根4がはぜ締め型折板屋根である場合、そのはぜ締め部に取付部材5を嵌合固定してもよく、金属屋根4が瓦棒葺き金属屋根である場合、その瓦棒に取付部材5をビス止めするようにしてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、取付部材5と結露抑制パネル10の周縁部とを不図示のボルト及びナットにより固定しているが、結露抑制パネル10の周縁部以外の位置に取付部材5を固定することによって、結露抑制パネル10の中程を支えるようにしてもよい。また、本実施形態では、金属屋根4上に、複数の結露抑制パネル10を互いに間隔をあけて設置しているが、複数の結露抑制パネル10同士をほぼ隙間なく設置してもよい。
【0023】
このように本実施形態の結露抑制パネル10及び結露抑制金属屋根構造20は、支持部材1の上面に、支持部材1よりも高い反射率を有する上部反射層2が設けられているので、
図6に示すように、昼間時に、日射RSの大部分を上部反射層2によって反射させることができ、金属屋根4の温度上昇を抑制することができる。また、金属屋根4と結露抑制パネル10との隙間や、結露抑制パネル10同士の隙間を通過する気流Fによっても、金属屋根4の温度上昇を抑制することができる。
【0024】
しかも、支持部材1の下面には、支持部材1よりも高い反射率を有する下部反射層3が設けられているので、
図7に示すように、夜間時に、金属屋根4からの赤外放射R4を下部反射層3によって下方へ反射させ、再び金属屋根4に吸収させることができる。したがって、特に冬期間における放射冷却時の金属屋根4の急激な温度低下を防ぐことができ、金属屋根4の室内側面における結露の発生を有効に抑制することができる。
【0025】
なお、従来品のように、支持部材の下面側に下部反射層が設けられていない場合、金属屋根4からの赤外放射R4は、その大部分が支持部材に吸収され、支持部材は、金属屋根4からの吸収分だけ多く、その周囲に赤外放射することになる。このとき、支持部材から下方へ放射される赤外放射は、再び金属屋根4に吸収されるため、金属屋根4の温度低下の抑制に多少寄与するが、支持部材は、その下方のみならず、上方へも赤外放射するため、金属屋根4から受けた赤外放射エネルギーを、金属屋根4の温度低下の抑制に有効に利用することができない。
【0026】
これに対し、本実施形態の結露抑制パネル10及び結露抑制金属屋根構造20によれば、金属屋根4からの赤外放射エネルギーの殆どを下部反射層3で反射させて金属屋根4に戻すことができるので、放射冷却による金属屋根4の急激な温度低下をより有効に抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態の結露抑制パネル10及び結露抑制金属屋根構造20によれば、金属屋根4の日射による急激な温度上昇や、放射冷却による急激な温度低下を抑制することができるので、金属屋根4の熱伸縮による音鳴りを抑制することができ、また、金属屋根4上に設置した結露抑制パネル10によって、降雨時の雨滴が直接、金属屋根4に衝突するのを防ぐことができるので、降雨時の騒音も大幅に抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態の結露抑制パネル10は、支持部材1の上下面に積層した上部反射層2及び下部反射層3によって、パネル上下面において結露抑制等に必要な高反射率を得ることができるので、支持部材1自体の材質については種々の設計変更が可能であり、鋼材の他、アルミニウム材、合成樹脂材、木質材等の種々の材質を選択することができる。例えば、結露抑制パネル10に、冬季の積雪荷重に耐え得る強度や、結露抑制パネル10上における安全歩行に耐え得る強度を持たせたりすることも容易に行うことができ、その設計自由度は頗る大きい。上記実施形態のように支持部材1を鋼材で構成すれば、強度に優れた結露抑制パネル10を比較的安価に生産することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態の結露抑制金属屋根構造20は、金属屋根4上に板状の結露抑制パネル10を設置して構成されているので、たとえ金属屋根4が多数の凹凸を有する折板屋根であっても、この金属屋根4上にフラットなスペースを確保することができ、金属屋根4上の有効活用を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態の結露抑制パネル10は、構造簡素に構成されているので、安価に生産することができる他、大幅な軽量化を図ることができる。したがって、結露抑制パネル10の設置作業性にも優れており、結露抑制金属屋根構造20を低コストで施工することが可能である。
【0031】
以上、本実施形態の結露抑制パネル10及び結露抑制金属屋根構造20について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0032】
例えば、上記実施形態では、支持部材1の上面側の上部反射層2と下面側の下部反射層3とを同じ遮熱塗料を塗工して形成しているが、本発明は勿論これに限定されるものではなく、上部反射層2と下部反射層3とを異なる遮熱塗料を塗工して形成するようにしてもよい。また、上部反射層2や下部反射層3を、高反射率を有する例えばアルミニウム箔や、アルミニウム蒸着した合成樹脂フィルムやシートを貼着積層することによって形成するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、支持部材1の上下面に直接、上部反射層2と下部反射層3とを積層しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、支持部材1の上面側に、断熱層を介して上部反射層2を積層してもよく、また、支持部材1の下面側に、他の断熱層を介して下部反射層3を積層するようにしてもよい。これらの断熱層によって、昼間時や放射冷却時の遮熱性をより高めることが可能となる。
【0034】
また、支持部材1に、その上面と下面とを貫通する複数の通気孔を設けてもよく、この通気孔を通過する気流を利用して日射による金属屋根4の温度上昇を抑制するようにしてもよい。
【0035】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 結露抑制パネル
20 結露抑制金属屋根構造
1 支持部材
2 上部反射層
3 下部反射層
4 金属屋根
5 取付部材
RS 日射
R4(金属屋根からの)赤外放射