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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049492
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両の温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B60K11/02 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155736
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野 等
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
(57)【要約】
【課題】車両の温度調節システムにおいて、温調対象物の温度を応答性良く調節する。
【解決手段】車両に備えられた温調対象物の温度を調節する温調液を収容する第1収容部と、第1収容部に収容された温調液よりも低い温度の温調液を収容し、第1収容部とは異なる第2収容部と、第1収容部および第2収容部のそれぞれと連通し、第1収容部および第2収容部から温調対象物へと温調液を供給可能に構成された供給流路と、を備える。供給流路は、第1収容部内の温調液を第1収容部から温調対象物に向かって流す第1部分流路と、第2収容部内の温調液を第2収容部から温調対象物に向かって流し、第1部分流路とは異なる第2部分流路と、第1部分流路を流れる温調液の流量と、第2部分流路を流れる温調液の流量と、を調整可能に構成された調整部と、を有する。第1部分流路と第2部分流路とは、温調対象物よりも上流で合流する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられた温調対象物の温度を調節する温調液を収容する第1収容部と、
前記第1収容部に収容された前記温調液よりも低い温度の前記温調液を収容し、前記第1収容部とは異なる第2収容部と、
前記第1収容部および前記第2収容部のそれぞれと連通し、前記第1収容部および前記第2収容部から前記温調対象物へと前記温調液を供給可能に構成された供給流路と、を備え、
前記供給流路は、
前記第1収容部内の前記温調液を前記第1収容部から前記温調対象物に向かって流す第1部分流路と、
前記第2収容部内の前記温調液を前記第2収容部から前記温調対象物に向かって流し、前記第1部分流路とは異なる第2部分流路と、
前記第1部分流路を流れる前記温調液の流量と、前記第2部分流路を流れる前記温調液の流量と、を調整可能に構成された調整部と、を有し、
前記第1部分流路と前記第2部分流路とは、前記温調対象物よりも上流で合流する、車両の温度調節システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温度調節システムであって、
前記第1収容部は、前記第1収容部内の前記温調液を加熱するヒータを有する、温度調節システム。
【請求項3】
請求項1に記載の温度調節システムであって、
前記第1収容部と前記第2収容部とを内部に有するタンクを備え、
前記第1収容部と前記第2収容部とは、前記第1収容部と前記第2収容部とを断熱する断熱部を介して、互いに隣り合って配置されている、温度調節システム。
【請求項4】
請求項3に記載の温度調節システムであって、
前記断熱部は、前記第1収容部と前記第2収容部との間に配置された第1空気層を有する、温度調節システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の温度調節システムであって、
前記タンクは、前記タンクの内部を外部から断熱するための断熱壁を有する、温度調節システム。
【請求項6】
請求項5に記載の温度調節システムであって、
前記断熱壁は、前記タンクの周囲を囲むように形成されている、温度調節システム。
【請求項7】
請求項5に記載の温度調節システムであって、
前記断熱壁は、第2空気層を挟む一対の壁を有する二重壁構造を有する、温度調節システム。
【請求項8】
請求項1に記載の温度調節システムであって、
前記第1収容部に収容された前記温調液の温度、および、前記第2収容部に収容された前記温調液の温度とは異なる温度の前記温調液を収容し、前記第1収容部および前記第2収容部とは異なる第3収容部を備え、
前記供給流路は、
前記第3収容部と連通し、前記第3収容部から前記温調対象物へと前記温調液を供給可能に構成され、
前記第3収容部内の前記温調液を前記第3収容部から前記温調対象物に向かって流し、前記第1部分流路および前記第2部分流路とは異なる第3部分流路を有し、
前記調整部は、前記第3部分流路を流れる前記温調液の流量を調整可能に構成され、
前記第3部分流路は、前記第1部分流路および前記第2部分流路と、前記温調対象物よりも上流で合流する、車両の温度調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の温度調節システムに関して、特許文献1には、車両内の発熱機器と熱的に結合された温水回路に冷却水を流すことによって、発熱機器を冷却することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-79328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の温度調節システムでは、温調対象物(例えば、電動車両に搭載されたバッテリ等)を適温に調節するために、冷却水によって温調対象物を冷却するだけでなく加熱することが求められる場合がある。このような場合に、温調対象物の温度を応答性良く調節するための技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両の温度調節システムが提供される。この温度調節システムは、車両に備えられた温調対象物の温度を調節する温調液を収容する第1収容部と、前記第1収容部に収容された前記温調液より低い温度の前記温調液を収容し、前記第1収容部とは異なる第2収容部と、前記第1収容部および前記第2収容部のそれぞれと連通し、前記第1収容部および前記第2収容部から前記温調対象物へと前記温調液を供給可能に構成された供給流路と、を備える。前記供給流路は、前記第1収容部内の前記温調液を前記第1収容部から前記温調対象物に向かって流す第1部分流路と、前記第2収容部内の前記温調液を前記第2収容部から前記温調対象物に向かって流し、前記第1部分流路とは異なる第2部分流路と、前記第1部分流路を流れる前記温調液の流量と、前記第2部分流路を流れる前記温調液の流量と、を調整可能に構成された調整部と、を有する。前記第1部分流路と前記第2部分流路とは、前記温調対象物よりも上流で合流する、
このような形態であれば、第1部分流路や第2部分流路を流れる温調液の流量を調整部によって調整することで、供給流路内を温調対象物に向かって流れる温調液の温度を応答性良く調節できる。そのため、温調対象物の温度を応答性良く調節できる。
(2)上記形態において、前記第1収容部は、前記第1収容部内の前記温調液を加熱するヒータを有していてもよい。このような形態であれば、ヒータによって第1収容部内の温調液を加熱することで、第1収容部内の温調液の温度を、第2収容部内の温調液の温度よりも容易に高くできる。
(3)上記形態において、前記第1収容部と前記第2収容部とを有するタンクを備え、前記第1収容部と前記第2収容部とは、前記第1収容部と前記第2収容部とを断熱する断熱部を介して、互いに隣り合って配置されていてもよい。このような形態であれば、第1収容部と第2収容部とをコンパクトに配置でき、かつ、第1収容部内の温調液や第2収容部内の温調液の温度が、第1収容部内の温調液と第2収容部内の温調液との熱交換によって意図せず変化することを抑制できる。
(4)上記形態において、前記断熱部は、前記第1収容部と前記第2収容部との間に配置された第1空気層を有していてもよい。このような形態であれば、第1空気層によって、第1温調液と第2温調液との間の熱交換をより簡易に抑制できる。
(5)上記形態において、前記タンクは、前記タンクの内部を外部から断熱するための断熱壁を有していてもよい。このような形態であれば、第1収容部内や第2収容部内の温調液の温度が、タンクの外部との熱交換によって意図せず変化することを抑制できる。
(6)上記形態において、前記断熱壁は、前記タンクの周囲を囲むように形成されていてもよい。このような形態であれば、タンク内の第1収容部内や第2収容部内の温調液の温度が意図せず変化することをより効果的に抑制できる。
(7)上記形態において、前記断熱壁は、第2空気層を挟む一対の壁を有する二重壁構造を有していてもよい。このような形態であれば、第2断熱壁をより簡易に構成できる。
(8)上記形態において、前記第1収容部に収容された前記温調液の温度、および、前記第2収容部に収容された前記温調液の温度とは異なる温度の前記温調液を収容し、前記第1収容部および前記第2収容部とは異なる第3収容部を備え、前記供給流路は、前記第3収容部と連通し、前記第3収容部から前記温調対象物へと前記温調液を供給可能に構成され、前記第3収容部内の前記温調液を前記第3収容部から前記温調対象物に向かって流し、前記第1部分流路および前記第2部分流路とは異なる第3部分流路を有し、前記調整部は、前記第3部分流路を流れる前記温調液の流量を調整可能に構成され、前記第3部分流路は、前記第1部分流路および前記第2部分流路と、前記温調対象物よりも上流で合流してもよい。このような形態であれば、第1部分流路および第2部分流路に加え、第3部分流路を流れる温調液の流量を調整部によって調整することで、供給流路内を温調対象物に向かって流れる温調液の温度を所望の温度により調節しやすい。そのため、温調対象物の温度をより適切に調節できる。
【0007】
本開示は、上述した車両の温度調節システムとしての形態以外にも、例えば、温度調節システムを備える車両などの種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における温度調節システムの概略構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態におけるタンクの概略構成を示す断面図である。
図3】第1制御モードを示す説明図である。
図4】第2制御モードを示す説明図である。
図5】第2実施形態における温度調節システムの概略構成を示す説明図である。
図6】第2実施形態におけるタンクの概略構成を示す断面図である。
図7】第3実施形態におけるタンクの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における温度調節システム100の概略構成を示す説明図である。温度調節システム100は、車両Vcに設けられ、温調液Lqによって、車両Vcに備えられた温調対象物OBの温度を調節する。温調液Lqとは、温調対象物OBの温度を調整するための液体のことを指す。
【0010】
本実施形態では、車両Vcは、駆動用バッテリによって駆動されるBEV(Battery Electric Vehicle)として構成されている。本実施形態における温調対象物OBは、車両Vcの電池パックであり、リチウムイオンバッテリとして構成された駆動用バッテリを有している。他の実施形態では、車両Vcは、例えば、ガソリン車やディーゼル車であってもよいし、HEV(Hybrid Electric Vehicle)や、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)であってもよい。また、温調対象物OBは、例えば、鉛バッテリとして構成されたバッテリや、車両Vcに搭載されたエンジン、モータ、インバータ、制御用コンピュータ等、任意であってよい。
【0011】
本実施形態における温度調節システム100は、タンク101と、循環回路150と、制御部300とを有する。循環回路150は、後述する供給流路155等を有し、タンク101と温調対象物OBとの間で、温調液Lqを循環可能に構成されている。図1では、循環回路150における温調液Lqの流れが、白抜き矢印によって模式的に示されている。
【0012】
図2は、本実施形態におけるタンク101の概略構成を示す断面図である。タンク101は、容器として構成されている。タンク101の内部は、タンク101の上端部であるタンク上端部102に形成された開口部Opを介して、外部と連通する。タンク101は、開口部Opを覆う蓋部108を脱着可能に構成されている。本実施形態では、タンク101は、開口部Opが鉛直上方に向かって開口するように配置されている。これにより、開口部Opに装着された蓋部108は、鉛直方向において、開口部Opの上側に位置する。タンク101のうち、開口部Opの開口方向に沿った方向におけるタンク上端部102と反対側の端部のことを、底部109とも呼ぶ。本実施形態では、底部109は、鉛直方向において、タンク上端部102の下方に位置する。
【0013】
タンク101は、その内部に、温調液Lqを収容する第1収容部110と、第2収容部120とを有する。第1収容部110は、第1収容部110内に形成された第1内部空間111内に温調液Lqを収容する。第2収容部120は、第2収容部120内に形成された第2内部空間121内に第1温調液Lq1よりも低い温度の温調液Lqを収容する。以下では、第1収容部110内に収容されている温調液Lqのことを、第1温調液Lq1とも呼び、第2収容部120内に収容されている温調液Lqのことを、第2温調液Lq2とも呼ぶ。
【0014】
本実施形態では、第1温調液Lq1の温度は、図1に示した第1ヒータ115や加熱用流路165により、例えば、50℃~80℃に保たれる。第2温調液Lq2の温度は、車両Vcが氷点下環境にある場合、例えば、-40℃~0℃に保たれる。氷点下環境とは、外気温が0℃以下である環境を指す。第1温調液Lq1や第2温調液Lq2の温度は、例えば、第1収容部110や第2収容部120に設けられた温度センサ(図示せず)を用いて、制御部300によって取得される。第1ヒータ115や加熱用流路165の詳細については後述する。
【0015】
第1内部空間111は、第1収容部110の上端部である第1上端部112に形成された第1開口部Op1を介して外部と連通する。第2内部空間121は、第2収容部120の上端部である第2上端部122に形成された第2開口部Op2を介して外部と連通する。第1開口部Op1と第2開口部Op2とは、それぞれ鉛直上方に向かって開口するように、タンク101の開口部Op内に配置されている。第1開口部Op1と第2開口部Op2とは、蓋部108の脱着によって開閉される。第1開口部Op1や第2開口部Op2は、例えば、第1開口部Op1や第2開口部Op2を介して第1収容部110や第2収容部120に温調液Lqが補充される際に開かれる。
【0016】
本実施形態では、第1収容部110と第2収容部120とは、第1収容部110と第2収容部120とを断熱する第1断熱部140を介して、互いに隣り合って配置されている。より詳細には、本実施形態では、第1収容部110と第1断熱部140と第2収容部120とは、水平方向に沿って並んで配置されている。本実施形態における第1断熱部140は、第1収容部110と第2収容部120との間に配置された第1空気層AL1を有し、第1空気層AL1によって第1収容部110と第2収容部120とを断熱する。以下では、第1断熱部140のことを、単に断熱部とも呼ぶ。
【0017】
本実施形態では、タンク101は、タンク101の内部を外部から断熱するための断熱壁103を有している。本実施形態における断熱壁103は、タンク101の周囲を囲むように形成されている。より詳細には、断熱壁103は、タンク101のうち、タンク上端部102を除く部分を囲うように形成されている。
【0018】
本実施形態では、断熱壁103は、間に第2空気層AL2を挟む一対の壁を有する二重壁構造を有している。より詳細には、断熱壁103は、第1内部空間111に面する第1壁104と、第2内部空間121に面する第2壁105と、第1壁104および第2壁105の外側に配置された外壁106とを有している。第1壁104および第2壁105は、外壁106から、外壁106の厚み方向に隙間を空けて配置されている。これによって、第1壁104と外壁106との間、および、第2壁105と外壁106との間に第2空気層AL2が形成されている。また、これによって、本実施形態では、断熱壁103の少なくとも一部は、第1収容部110の少なくとも一部、および、第2収容部120の少なくとも一部を区画している。より詳細には、断熱壁103は、第1収容部110のうち、第1上端部112を除く部分を区画し、第2収容部120のうち、第2上端部122を除く部分を区画している。本実施形態では、第1上端部112は、第1壁104のみによって区画されている。第2上端部122は、第2壁105のみによって区画されている。
【0019】
なお、本実施形態における外壁106は、折り返し部107を有している。折り返し部107とは、タンク101の底部109からタンク上端部102に向かって延びた後、タンク上端部102から底部109に向かって再び延びるように折り返された部分である。本実施形態では、折り返し部107は、第1収容部110と第2収容部120との間に配置されている。折り返し部107を形成する外壁106同士の間には、空気層が形成されている。そのため、本実施形態では、第1収容部110と第2収容部120との間には、2層の第2空気層AL2と、折り返し部107を形成する外壁106同士に挟まれた空気層とが配置されている。つまり、本実施形態では、第1収容部110と第2収容部120との間には、3層の第1空気層AL1が配置されているとも言える。また、本実施形態では、折り返し部107が、第1断熱部140として機能するとも言える。
【0020】
第1収容部110は、第1温調液Lq1を加熱する第1ヒータ115を有する。本実施形態では、第1ヒータ115は、シート状のラバーヒータとして構成され、第1壁104と第2壁105との間に配置されている。より詳細には、第1ヒータ115は、第1内部空間111の鉛直方向における三分の一~半分程度を底部109側から覆うように、第1壁104の外側に貼り付けられている。第1ヒータ115の温度は、制御部300によって制御される。他の実施形態では、第1ヒータ115は、例えば、ニクロム線ヒータ等の電熱線ヒータとして構成されてもよい。この場合、例えば、第1壁104内に電熱線が埋め込まれてもよい。また、第1ヒータ115は、第1内部空間111を底部109側から覆うように配置されていなくてもよく、第1温調液Lq1を加熱できれば、任意の態様で配置されてよい。以下では、第1ヒータ115のことを、単にヒータとも呼ぶ。
【0021】
タンク101は、例えば、ポリプロピレン(PP)や、ガラス繊維強化ポリプロピレン、ナイロン66、ガラス繊維強化ナイロン66等の樹脂材料によって形成される。本実施形態のように二重壁構造を有するタンク101は、例えば、タンク101を構成する複数の部位を接合することによって製造される。より詳細には、例えば、まず、タンク101のタンク上端部102側を形成するためのアッパ部として、第1壁104を形成するための部分と、第2壁105を形成するための部分と、外壁106を形成するための部分とを射出成形によって個別に成形する。また、タンク101のアッパ部より底部109側を形成するためのロア部を、アッパ部と同様に、各部ごとに個別に成形する。次に、例えば、ロア部のうち、第1壁104を形成するための部分に第1ヒータ115を貼り付ける。そして、アッパ部およびロア部それぞれの、第1壁104を形成するための部分同士、第2壁105を形成するための部分同士、および、外壁106を形成するための部分同士を溶着によって接合する。なお、タンク101の形状によっては、アッパ部とロア部とを接合する前に、アッパ部の各部同士を溶着や接着等によって予め接合してもよい。また、同様に、ロア部の各部同士を予め接合してもよい。
【0022】
図1に示すように、循環回路150は、供給流路155と、回収流路180とを有している。供給流路155は、第1収容部110および第2収容部120のそれぞれと連通しており、その内部に温調液Lqを流すことで、第1収容部110および第2収容部120から温調対象物OBへと温調液Lqを供給可能に構成されている。回収流路180は、第1収容部110および第2収容部120のそれぞれと連通しており、その内部に温調液Lqを流すことで、温調対象物OBから第1収容部110および第2収容部120へと温調液Lqを回収可能に構成されている。供給流路155や回収流路180は、例えば、パイプやホースによって形成される。供給流路155や回収流路180は、例えば、金属によって形成されてもよいし、樹脂やゴムによって形成されてもよい。本実施形態では、供給流路155および回収流路180は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)によって形成された内層および外層と、繊維によって形成された補強層とを有する3層構造のゴムホースによって形成されている。
【0023】
供給流路155は、第1部分流路156と、第1部分流路156とは異なる第2部分流路157と、調整部160とを有している。第1部分流路156は、第1温調液Lq1を第1収容部110から温調対象物OBに向かって流す流路である。第2部分流路157は、第2温調液Lq2を第2収容部120から温調対象物OBに向かって流す流路である。第1部分流路156と第2部分流路157とは、供給流路155において、温調対象物OBよりも上流で合流する。以下では、供給流路155のうち、第1部分流路156と第2部分流路157とが合流する地点よりも下流の部分を、合流部158とも呼ぶ。そのため、合流部158内には、第1温調液Lq1と第2温調液Lq2との両方が流れ得る。
【0024】
調整部160は、第1部分流路156を流れる温調液の流量と、第2部分流路157を流れる温調液Lqの流量とを調整可能に構成されている。なお、本明細書において「流量を調整可能」と言う場合、流量を段階的に、または、無段階に調整可能であることのみならず、流量がゼロである状態と流量がゼロより大きい状態とを単に切り替え可能であることをも含む。
【0025】
本実施形態における調整部160は、第1部分流路156に設けられた第1弁部161と、第2部分流路157に設けられた第2弁部162と、合流部158に設けられたポンプ部163とを有している。第1弁部161は、制御部300による制御下で第1部分流路156を開閉する電磁開閉弁として構成されている。第2弁部162は、制御部300による制御下で第2部分流路157を開閉する電磁開閉弁として構成されている。第1部分流路156および第2部分流路157には、それぞれ、第1収容部110や第2収容部120に向かって温調液Lqが流れることを防止する逆止弁(図示せず)が配置されている。ポンプ部163は、制御部300による制御下で駆動する電動ウォータポンプとして構成されている。
【0026】
回収流路180は、その途中の第1分岐点190において2つに分岐する流路として構成されている。回収流路180は、温調対象物OBから第1分岐点190に向かって延びる共通流路181と、第1収容部110に温調液Lqを回収するための第1回収流路182と、第2収容部120に温調液Lqを回収するための第2回収流路183とを有している。本実施形態では、第1回収流路182は、第1分岐点190と第1収容部110とを繋ぐ流路に相当する。第2回収流路183は、第1分岐点190と第2収容部120とを繋ぐ流路に相当する。
【0027】
共通流路181には、温調液Lqを冷却するための冷却部195が配置されている。本実施形態では、冷却部195は、ラジエータとして構成されている。冷却部195の冷却能力は、ラジエータファンの回転数が制御部300の制御下で制御されることによって制御される。他の実施形態では、冷却部195は、例えば、第2回収流路183や、第2収容部120の近傍、合流部158のうち温調対象物OBの近傍等に配置されてもよい。また、冷却部195は、例えば、チラーとして構成されてもよい。
【0028】
第1回収流路182には、第3弁部186が配置されている。第3弁部186は、制御部300による制御下で第1回収流路182を開閉する電磁開閉弁として構成されている。第2回収流路183には、第4弁部187が配置されている。第4弁部187は、制御部300による制御下で第2回収流路183を開閉する電磁開閉弁として構成されている。第1回収流路182および第2回収流路183には、第1部分流路156等と同様に逆止弁(図示せず)が設けられている。
【0029】
第1回収流路182のうち、第3弁部186および逆止弁より下流には、加熱用流路165が接続されている。加熱用流路165は、車両Vcの車室内やシートを暖房するための暖房用ヒータ(図示せず)と熱的に結合されており、暖房用ヒータの熱によって加熱された温調液Lqを第1収容部110へと供給する。従って、本実施形態では、第1温調液Lq1には、このように加熱用流路165を介して第1収容部110に供給される温調液Lqも含まれる。加熱用流路165には、第5弁部166が配置されている。第5弁部166は、制御部300による制御下で加熱用流路165を開閉する電磁開閉弁として構成されている。加熱用流路165には、第1部分流路156等と同様に逆止弁(図示せず)が配置されている。加熱用流路165を流れる温調液Lqは、第1回収流路182を流れ、第1収容部110へと供給される。加熱用流路165を流れる温調液Lqの温度は、例えば、加熱用流路165に設けられた温度センサ(図示せず)を用いて、制御部300によって取得される。
【0030】
第1回収流路182のうち、第3弁部186および逆止弁より上流には、バイパス流路BPが接続されている。バイパス流路BPには、バイパス弁部BVが配置されている。バイパス弁部BVは、制御部300による制御下でバイパス流路BPを開閉する電磁開閉弁として構成されている。バイパス流路BPには、第1部分流路156等と同様に逆止弁(図示せず)が配置されている。制御部300は、例えば、循環回路150内の温調液Lqの量が過多となった場合に、適宜、バイパス弁部BVを開閉することによって、循環回路150内の温調液Lqを、バイパス流路BPを介して他の回路等へとバイパスする。
【0031】
制御部300は、1つまたは複数のプロセッサーと、記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピュータによって構成されている。制御部300は、循環回路150に設けられたポンプ部163や各種弁部を制御することによって、温調液Lqをタンク101と温調対象物OBとの間で循環させる機能を有する。他の実施形態では、制御部300は、例えば、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。また、例えば、車両Vcの制御用コンピュータが、制御部300として機能してもよい。
【0032】
図3は、温度調節システム100の第1制御モードを示す説明図である。本実施形態では、制御部300は、車両Vcが走行状態である場合、温度調節システム100を第1制御モードで制御する。「走行状態」とは、車両Vcが駆動バッテリの駆動によって走行している状態を指す。図3には、温調対象物OBの温度状態と、その温度状態において実行される第1弁部161等の各部の制御とが示されている。
【0033】
図3に示した状態DNは、車両Vcの走行状態において、温調対象物OBの温度が適温範囲にある状態を表す。適温範囲は、温調対象物OBにとって特に好ましい温度範囲のことを指す。本実施形態では、温調対象物OBは、例えば、20℃以上かつ25℃以下の温度範囲である。状態DH1、DH2およびDH3は、走行状態において、温調対象物OBの温度が、適温範囲よりも高い温度範囲にある状態を表す。状態DH2では、温調対象物OBは、状態DH1よりも高い温度範囲にある。状態DH3では、温調対象物OBは、状態DH2および状態DH1よりも高い温度範囲にある。状態DL1、DL2およびDL3は、走行状態において、温調対象物OBの温度が、適温範囲よりも低い温度範囲にある状態を表す。状態DL2では、温調対象物OBは、状態DL1よりも低い温度範囲にある。状態DL3では、温調対象物OBは、状態DL2および状態DL1よりも低い温度範囲にある。なお、本実施形態では、温調対象物OBの温度は、図1に示した電池パックの筐体に取り付けられた温度センサ201を用いて、制御部300によって取得される。つまり、制御部300は、この温度センサ201の値に基づいて第1弁部161等の各部を制御することによって、温調対象物OBの温度をフィードバック制御する。
【0034】
図3では、第1弁部161~第5弁部166の各弁部の制御状態が、「ON」や「OFF」によって表されている。「ある弁部がOFFである」状態とは、その弁部によって、その弁部が設けられた流路が全閉している状態を指す。「ある弁部がONである」状態とは、その弁部が設けられた流路が全開していることを指す。また、図3では、ポンプ部163の駆動量の大きさの程度が、0~10の数値によって表されている。この数値が大きいほど、ポンプ部163の駆動量がより大きいことを表す。図3において、ポンプ部163の駆動量が0であることは、ポンプ部163が停止していることを表す。また、図3では、昇温制御による第1温調液Lq1の昇温の程度が、0~10の数値によって表されている。昇温制御とは、制御部300による、第1温調液Lq1の温度を高める制御のことを指す。この数値が大きいほど、第1温調液Lq1の昇温がより促進されることを表す。本実施形態では、制御部300は、昇温制御において、第1ヒータ115をONにすることと、第1温調液Lq1の温度が加熱用流路165内の温調液Lqの温度よりも低い場合に第5弁部166をONにすることとのうち、少なくともいずれか一方を実行する。図3において、昇温制御における昇温の程度が0であることは、昇温制御が実行されていないこと、つまり、第1ヒータ115がOFFであり、かつ、第5弁部166がOFFであることを表す。
【0035】
図3に示すように、状態DNでは、制御部300は、第2弁部162および第4弁部187をONにし、第1弁部161および第3弁部186をOFFにする。また、制御部300は、例えば、駆動用バッテリから車両Vcの駆動部への供給電力の大きさに応じて、ポンプ部163の駆動量をゼロ、または、ゼロよりやや大きい駆動量とする。上記の制御により、状態DNでは、循環回路150内を第2温調液Lq2のみが循環する。なお、状態DNにおいて、例えば、第1温調液Lq1の温度が予め定められた基準温度よりも低い場合、制御部300は、昇温制御を実行してもよい。これによって、第1温調液Lq1の温度を、基準温度に近付くように高めることができる。基準温度は、例えば、温度が低下した温調対象物OBを第1温調液Lq1によって効果的に加熱できる温度として、外気温等に基づいて定められる。
【0036】
状態DH1~DH3では、制御部300は、状態DNと同様に各弁部を制御する。また、制御部300は、ポンプ部163の駆動量を、状態DNにおける駆動量よりも大きくする。より詳細には、制御部300は、ポンプ部163の駆動量を、状態DH1、DH2、DH3の順に大きくなるように制御する。制御部300は、例えば、冷却部195の冷却能力を、状態DH1、DH2、DH3の順に高くなるように制御してもよい。状態DH1~DH3におけるポンプ部163の駆動量や、冷却部195の冷却能力は、各状態DH1~DH3において温調対象物OBを適切に冷却できるように制御されると好ましい。これにより、状態DH1~DH3では、状態DNと同様に、循環回路150内を第2温調液Lq2のみが循環する。また、上記のポンプ部163や冷却部195の制御によって、温調対象物OBの温度が高いほど、温調対象物OBにより多くの第2温調液Lq2が供給されるとともに、冷却部195による第2温調液Lq2の冷却がより促進される。そのため、温調対象物OBの温度が高いほど、第2温調液Lq2による温調対象物OBの冷却がより促進される。なお、状態DH1~DH3において、制御部300は、状態DNにおける場合と同様に、昇温制御を実行してもよい。
【0037】
状態DL1~DL3では、制御部300は、第1弁部161をON、かつ、第3弁部186と第5弁部166との少なくともいずれか一方をONにし、その他の弁部をOFFにする。また、制御部300は、第1温調液Lq1の加熱量を、状態DL1、DL2、DL3の順に大きくする。より詳細には、制御部300は、昇温制御において第5弁部166をONにしない場合には、第3弁部186をONにする。制御部300は、昇温制御において第5弁部166をONにする場合は、第3弁部186をONにしてもよいし、OFFにしてもよい。なお、第5弁部166をONにする場合、第3弁部186をOFFにすることで、第1回収流路182を介して第1収容部110に温調液Lqが流れ込まないので、第1温調液Lq1の温度をより高くできる。また、制御部300は、状態DL1~DL3では、ポンプ部163の駆動量を、状態DNにおける駆動量よりも大きくする。より詳細には、制御部300は、ポンプ部163の駆動量を、状態DL1、DL2、DL3の順に大きくする。これにより、状態DL1~DL3では、供給流路155内を、第1温調液Lq1のみが流れる。また、昇温制御により、第1温調液Lq1が加熱される。また、上記のポンプ部163の制御によって、温調対象物OBの温度が低いほど、温調対象物OBにより多くの第1温調液Lq1が供給される。そのため、温調対象物OBの温度が低いほど、第1温調液Lq1による温調対象物OBの加熱がより促進される。状態DL1~DL3では、特に、第3弁部186をONにする場合、冷却部195の冷却能力が状態DH1~DH3における場合よりも低くなるように制御されると好ましい。例えば、状態DL1~DL3では、冷却部195のラジエータファンの駆動が停止されてもよい。
【0038】
図4は、温度調節システム100の第2制御モードを示す説明図である。本実施形態では、制御部300は、車両Vcが停止状態である場合、温度調節システム100を第2制御モードで制御する。停止状態とは、車両Vcの主電源がONである状態において、車両Vcが走行せず停止している状態を表し、例えば、走行が開始される前の状態や、走行中に車両Vcが一時的に停止している状態、電池パックの駆動用バッテリが充電されている充電状態等を含む。図4には、図3と同様に、温調対象物OBの温度状態と、その温度状態において実行される第1弁部161等の各部の制御とが示されている。
【0039】
図4に示した状態SNは、車両Vcの停止状態において、温調対象物OBの温度が適温範囲にある状態を表す。状態SH1、SH2およびSH3は、走行状態において、温調対象物OBの温度が、適温範囲よりも高い温度範囲にある状態を表す。状態SH2では、温調対象物OBは、状態SH1よりも高い温度範囲にある。状態SH3では、温調対象物OBは、状態SH2および状態SH1よりも高い温度範囲にある。状態SL1、SL2およびSL3は、停止状態において、温調対象物OBの温度が、適温範囲よりも低い温度範囲にある状態を表す。状態SL2では、温調対象物OBは、状態SL1よりも低い温度範囲にある。状態SL3では、温調対象物OBは、状態SL2および状態SL1よりも低い温度範囲にある。本実施形態では、状態SH1~SH3における温調対象物OBの温度範囲は、それぞれ、状態DH1~DH3における温調対象物OBの温度範囲とそれぞれ同じであるが、それぞれ異なっていてもよい。また、状態SL1~SL3における温調対象物OBの温度範囲は、それぞれ、状態DL1~DL3における温調対象物OBの温度範囲と同じであるが、それぞれ異なっていてもよい。
【0040】
図4に示すように、状態SNでは、制御部300は、第1弁部161~第4弁部187をOFFにする。また、制御部300は、ポンプ部163の駆動量をゼロとする。なお、状態SNにおいて、制御部300は、状態DNにおける場合と同様に、第1温調液Lq1の温度が基準温度よりも低い場合、昇温制御を実行してもよい。ただし、状態SNにおいて、第1温調液Lq1の温度が基準温度よりも低い場合であっても昇温制御を実行しないことにより、停止状態における駆動用バッテリの電力消費を低減できる。
【0041】
状態SH1~SH3では、制御部300は、状態DH1~DH3における場合と略同様に、第2弁部162および第4弁部187をONにし、第1弁部161および第3弁部186をOFFにする。また、制御部300は、ポンプ部163の駆動量を、状態SH1、SH2、SH3の順に大きくする。これにより、状態SH1~SH3では、状態DH1~DH3と同様に、第2温調液Lq2によって温調対象物OBが冷却される。なお、本実施形態では、状態SH1におけるポンプ部163の駆動量は、ゼロである。また、図3および図4に示すように、状態SH2におけるポンプ部163の駆動量は、状態DH2におけるポンプ部163の駆動量よりも小さく、状態SH3におけるポンプ部163の駆動量は、状態DH3におけるポンプ部163の駆動量よりも小さい。これにより、停止状態における、ポンプ部163の駆動による駆動用バッテリの電力消費を低減できる。他の実施形態では、例えば、状態SH2におけるポンプ部163の駆動量は、状態DH2におけるポンプ部163の駆動量以上であってもよい。また、状態SH3におけるポンプ部163の駆動量は、状態DH3におけるポンプ部163の駆動量以上であってもよい。
【0042】
状態SL1~SL3では、制御部300は、状態DL1~DL3における場合と略同様に、第1弁部161、および、第3弁部186と第5弁部166との少なくともいずれか一方をONにし、その他の弁部をOFFにする。また、制御部300は、第1温調液Lq1の加熱量を、状態SL1、SL2、SL3の順に大きくなるように制御する。また、制御部300は、ポンプ部163の駆動量を、状態DL1、DL2、DL3の順に大きくなるように制御する。これにより、状態SL1~SL3では、状態DL1~DL3と同様に、第1温調液Lq1によって温調対象物OBが加熱される。なお、本実施形態では、状態SL1におけるポンプ部163の駆動量は、ゼロである。また、図3および図4に示すように、状態SL2におけるポンプ部163の駆動量は、状態DL2におけるポンプ部163の駆動量よりも小さく、状態SL3におけるポンプ部163の駆動量は、状態DL3におけるポンプ部163の駆動量よりも小さい。これにより、停止状態における、ポンプ部163の駆動による駆動用バッテリの電力消費を低減できる。他の実施形態では、例えば、状態SL2におけるポンプ部163の駆動量は、状態DL2におけるポンプ部163の駆動量以上であってもよい。また、状態SL3におけるポンプ部163の駆動量は、状態DL3におけるポンプ部163の駆動量以上であってもよい。
【0043】
上記の第1制御モードおよび第2制御モードは、それぞれ、温度調節システム100の制御の一例である。そのため、例えば、制御部300は、第1制御モードや第2制御モードに加えて、あるいは、第1制御モードや第2制御モードに加えて、他の制御モードを有していてもよい。例えば、制御部300は、車両Vcの走行速度が予め定められた基準速度(例えば、80km/h)未満である通常運転時と、車両Vcの走行速度が基準速度以上である高速運転時とで、それぞれ異なる制御モードで温度調節システム100を制御してもよい。また、制御部300は、車両Vcが停止状態から走行状態へと切り替わる「始動時」に対応する制御モードを有していてもよい。また、制御部300は、例えば、停止状態のうち、車両Vcが一時的に停止している状態と充電状態とで、それぞれ異なる制御モードを用いるように構成されていてもよい。
【0044】
以上で説明した本実施形態における車両Vcの温度調節システム100によれば、供給流路155は、第1温調液Lq1を第1収容部110から温調対象物OBに向かって流す第1部分流路156と、第2温調液Lq2を第2収容部120から温調対象物OBに向かって流す第2部分流路157と、第1部分流路156を流れる温調液の流量と、第2部分流路157を流れる温調液の流量とを調整可能に構成された調整部160とを有する。第1部分流路156と第2部分流路157とは、供給流路155において、温調対象物OBよりも上流で合流する。これによって、第1部分流路156や第2部分流路157を流れる温調液Lqの流量を調整部160によって調整することで、供給流路155内を温調対象物OBに向かって流れる温調液Lqの温度を応答性良く調節できる。そのため、温調対象物OBの温度を応答性良く調節できる。
【0045】
また、本実施形態では、第1部分流路156と第2部分流路157とが合流するので、例えば、第1温調液Lq1を温調対象物OBに向かって流す流路と、第2温調液Lq2を温調対象物OBに向かって流す流路とが、それぞれ合流しない別個の流路として構成されている場合と比較して、温調液Lqの流路を形成する配管の全長を短くすることや、流路に配置されるポンプ等の部材の個数を削減することができる。そのため、温度調節システム100の省スペース化や構成のシンプル化を実現しやすくなる。
【0046】
また、本実施形態では、第1収容部110は、第1温調液Lq1を加熱する第1ヒータ115を有している。そのため、第1ヒータ115によって第1温調液Lq1を加熱することで、第1温調液Lq1の温度を、第2温調液Lq2の温度よりも容易に高くできる。
【0047】
また、本実施形態では、第1収容部110と第2収容部120とを有するタンク101を備え、第1収容部110と第2収容部120とは、第1断熱部140を介して互いに隣り合って配置されている。そのため、第1収容部110と第2収容部120とをコンパクトに配置でき、かつ、第1温調液Lq1や第2温調液Lq2の温度が、第1温調液Lq1と第2温調液Lq2との熱交換によって意図せず変化することを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、第1断熱部140は、第1収容部110と第2収容部120との間に配置された第1空気層AL1を有する。そのため、第1空気層AL1によって、第1温調液Lq1と第2温調液Lq2との間の熱交換をより簡易に抑制できる。
【0049】
また、本実施形態では、タンク101は、タンク101の内部を外部から断熱するための断熱壁103を有する。そのため、タンク101内の第1温調液Lq1や第2温調液Lq2の温度が、タンク101の外部との熱交換によって意図せず変化することを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、断熱壁103は、タンク101の周囲を囲むように形成されている。そのため、タンク101内の第1温調液Lq1や第2温調液Lq2の温度が、タンク101の外部との熱交換によって意図せず変化することをより効果的に抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、断熱壁103の少なくとも一部は、第1収容部110の少なくとも一部を区画する。そのため、タンク101をよりコンパクトに構成でき、かつ、第1温調液Lq1の温度が外部との熱交換によって意図せず変化することを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態では、断熱壁103は、第2空気層AL2を挟む一対の壁を有する二重壁構造を有する。そのため、断熱壁103をより簡易に構成できる。
【0053】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態における温度調節システム100bの概略構成を示す説明図である。図5では、図1と同様に、温調液Lqの流れが白抜き矢印によって模式的に示されている。本実施形態における温度調節システム100bは、第1実施形態とは異なり、第3収容部130を備える。また、本実施形態における供給流路155bは、第3部分流路159を有する。第2実施形態における温度調節システム100bの構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0054】
図6は、本実施形態におけるタンク101bの概略構成を示す断面図である。本実施形態では、第3収容部130は、第1収容部110および第2収容部120と同様に、タンク101b内に配置されている。第3収容部130は、第1収容部110および第2収容部120とは異なる収容部である。第3収容部130は、第3収容部130内に形成された第3内部空間131内に、第1温調液Lq1の温度、および、第2温調液Lq2の温度とは異なる温度の温調液Lqを収容する。以下では、第3収容部130に収容されている温調液Lqのことを、第3温調液Lq3とも呼ぶ。
【0055】
本実施形態では、第2温調液Lq2の温度は、第2収容部120に設けられた第2ヒータ125によって、第1実施形態における第2温調液Lq2の温度よりも高く保たれる。第2ヒータ125は、例えば、第1ヒータ115と同様のヒータによって構成される。本実施形態では、第3温調液Lq3の温度は、第2温調液Lq2の温度よりも低い。より詳細には、第3温調液Lq3の温度は、第1実施形態における第2温調液Lq2と同程度の温度に保たれる。
【0056】
第3内部空間131は、第3収容部130の上端部である第3上端部132に形成された第3開口部Op3を介して外部と連通する。第3開口部Op3は、鉛直上方に向かって開口するように、タンク101の開口部Op内に配置されている。第3開口部Op3は、蓋部108の脱着によって開閉される。第3開口部Op3は、例えば、第3開口部Op3を介して第3収容部130に温調液Lqが補充される際に開かれる。
【0057】
本実施形態では、第3収容部130は、第2収容部120を挟んで、第1収容部110と反対側に配置されている。第3収容部130と第2収容部120とは、第3収容部130と第2収容部120とを断熱する第2断熱部145を介して、互いに隣り合って配置されている。つまり、本実施形態では、第1収容部110と第1断熱部140と第2収容部120と第2断熱部145と第3収容部130とが、水平方向に沿って、直線状に並んで配置されている。本実施形態では、タンク101bは、第1収容部110と第2収容部120との間に加え、第2収容部120と第3収容部130との間にも折り返し部107を有している。本実施形態では、この第2収容部120と第3収容部130との間の折り返し部107が、空気層を有する第2断熱部145として機能する。また、本実施形態における断熱壁103bは、第3内部空間131に面する第3壁133を有している。第3壁133と外壁106bとの間には、第2空気層AL2が形成されている。タンク101bは、例えば、第1実施形態で説明したタンク101と同様に、タンク101bを構成する複数の部位を溶着等によって接合することで製造される。
【0058】
図5に示すように、本実施形態における循環回路150bの供給流路155bは、第1収容部110および第2収容部120に加え第3収容部130とも連通しており、第3収容部130から温調対象物OBへと温調液Lqを供給可能に構成されている。また、回収流路180bは、第1収容部110および第2収容部120に加え第3収容部130とも連通しており、温調対象物OBから第3収容部130へと温調液Lqを回収可能に構成されている。
【0059】
より詳細には、供給流路155bは、第1部分流路156と第2部分流路157とに加え、第3部分流路159を有している。第3部分流路159は、第1部分流路156および第2部分流路157とは異なる流路であり、第3温調液Lq3を第3収容部130から温調対象物OBに向かって流す流路である。第3部分流路159は、供給流路155bにおいて、第1部分流路156および第2部分流路157と、温調対象物OBよりも上流で合流する。より詳細には、本実施形態では、第3部分流路159は、第2部分流路157と合流した後に第1部分流路156と合流する。そのため、本実施形態では、合流部158b内には、第1温調液Lq1と第2温調液Lq2と第3温調液Lq3とが流れ得る。
【0060】
調整部160bは、第1部分流路156や第2部分流路157を流れる温調液Lqの流量に加え、第3部分流路159を流れる温調液Lqの流量を調整可能に構成されている。調整部160bは、第1実施形態で説明した第1弁部161と第2弁部162とポンプ部163とに加え、第3部分流路159に設けられた第6弁部164を有している。第6弁部188は、制御部300による制御下で第3部分流路159を開閉する電磁開閉弁として構成されている。第3部分流路159には、逆止弁(図示せず)が配置されている。
【0061】
本実施形態における回収流路180bは、第1分岐点190において分岐した後、第2分岐点191において更に分岐する流路として構成されている。本実施形態では、回収流路180bは、共通流路181と、第1回収流路182と、第2回収流路183bとに加え、第1分岐点190と第2分岐点191とを接続する接続流路185と、第3収容部130に温調液Lqを回収するための第3回収流路184とを有している。本実施形態では、第2回収流路183bは、第2分岐点191と第2収容部120とを繋ぐ流路に相当する。第3回収流路184は、第2分岐点191と第3収容部130とを繋ぐ流路に相当する。第3回収流路184には、第7弁部189が配置されている。第7弁部189は、制御部300による制御下で第3回収流路184を開閉する電磁開閉弁として構成されている。第3回収流路184には、逆止弁(図示せず)が配置されている。
【0062】
以上で説明した第2実施形態における温度調節システム100bによれば、第3収容部130を備え、供給流路155bは、第3温調液Lq3を第3収容部130から温調対象物OBに向かって流す第3部分流路159を有する。調整部160bは、第3部分流路159を流れる温調液Lqの流量を調整可能に構成されている。第3部分流路159は、供給流路155bにおいて、第1部分流路156および第2部分流路157と、温調対象物OBよりも上流で合流する。そのため、第1部分流路156および第2部分流路157に加え、第3部分流路159を流れる温調液Lqの流量を調整部160bによって調整することで、供給流路155b内を温調対象物OBに向かって流れる温調液Lqの温度を所望の温度により調節しやすい。例えば、本実施形態では、第3温調液Lq3の温度が第2温調液Lq2の温度よりも低いため、温調対象物OBの温度が急速に高まった場合等に第3部分流路159を流れる温調液Lqの流量をより多くすることで、温調対象物OBの温度をより急速に低くできる。このようにすれば、温調対象物OBの温度をより適切に調節できる。
【0063】
なお、他の実施形態では、第3温調液Lq3の温度は、例えば、第1温調液Lq1の温度より高くてもよいし、第1温調液Lq1の温度より低く、かつ、第2温調液Lq2の温度よりも高い温度であってもよい。なお、本実施形態のように、第1収容部110~第3収容部130を直線状に並んで配置する場合、より高温の温調液Lqを収容する収容部と、より低温の温調液Lqを収容する収容部とで、中間の温度の温調液Lqを収容する収容部を挟むように、第1収容部110~第3収容部130を配置すると好ましい。また、第1収容部110~第3収容部130は、直線状に並んで配置されなくてもよく、例えば、1つの収容部が他の2つの収容部と隣り合うように配置されてもよい。また、温度調節システム100は、例えば、内部に収容される温調液Lqの温度がそれぞれ異なる4以上の収容部を備えていてもよい。
【0064】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態におけるタンク101cの概略構成を示す断面図である。本実施形態では、断熱壁103cの外壁106cは、第1実施形態とは異なり、折り返し部107を有していない。これにより、本実施形態では、タンク101cの底部109bは、水平面に沿って一様に延びるように形成されている。また、本実施形態では、第1収容部110と第2収容部120との間に形成された空気層、より詳細には、互いに向かい合う第1壁104と第2壁105との間に形成された空気層が、第1断熱部140bの第1空気層AL1を形成している。第3実施形態における温度調節システム100の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0065】
以上で説明した第3実施形態によっても、第1断熱部140bの第1空気層AL1によって、第1温調液Lq1と第2温調液Lq2との間の熱交換をより簡易に抑制できる。
【0066】
D.他の実施形態:
(D1)上記実施形態では、第1弁部161は、第1部分流路156を単に開閉する開閉弁として構成されている。これに対して、第1弁部161は、例えば、第1部分流路156の開度を段階的に、または、無段階に調整可能な弁として構成されていてもよい。同様に、第2弁部162~第7弁部189の各弁部が、各弁部が設けられた流路の開度を調整可能な弁として構成されていてもよい。この場合、制御部300は、温調対象物OBの温度調節を行う際に、各弁部の開閉を切り替えるだけでなく、各弁部が設けられた流路の開度を調整してもよい。また、供給流路155に第1弁部161と第2弁部162とが設けられていなくてもよく、例えば、第1部分流路156と第2部分流路157との合流地点に、第1部分流路156を閉じるとともに第2部分流路157を開くことが可能に、かつ、第1部分流路156を開くとともに第2部分流路157を閉じることが可能に構成された1つの弁部が配置されてもよい。このように、各弁部は、1又は複数の他の弁部として機能するように構成されていてもよい。また、例えば、2以上の弁部同士の動作が連動するように構成されていてもよい。
【0067】
(D2)上記実施形態では、第1収容部110には、第1ヒータ115が設けられている。これに対して、第1温調液Lq1の温度を第2温調液Lq2の温度よりも高くできれば、第1収容部110にヒータが設けられていなくてもよい。例えば、第1回収流路182や加熱用流路165に、各流路内の温調液Lqを加熱するヒータが設けられてもよい。また、例えば、第1温調液Lq1の昇温が、加熱用流路165のみによって実現されてもよい。また、同様に、第1温調液Lq1の温度を第2温調液Lq2の温度よりも高くできれば、加熱用流路165が設けられていなくてもよい。
【0068】
(D3)上記実施形態では、第1収容部110と第2収容部120とは、水平方向に沿って並んで配置されているが、このように配置されなくてもよい。例えば、第1収容部110と第2収容部120とは、鉛直方向に沿って並んで配置されてもよい。この場合、例えば、第1開口部Op1や第2開口部Op2は、第1収容部110や第2収容部120からの温調液Lqの意図しない流出を抑制できる位置に配置されると好ましい。
【0069】
(D4)上記実施形態では、第1収容部110と第2収容部120とは、同一のタンク101の内部に配置されている。これに対して、第1収容部110と第2収容部120とが同一のタンク101内に配置されなくてもよく、例えば、第1収容部110と第2収容部120とがそれぞれ別体のタンクとして構成されてもよい。この場合、少なくとも第1収容部110が、第1収容部110の内部と外部とを断熱する断熱壁を有していると好ましい。また、この場合、第1収容部110と第2収容部120との間に第1断熱部140が配置されていなくてもよい。同様に、第3収容部130が設けられている形態において、第3収容部130は、第1収容部110や第2収容部120と同一のタンク内に配置されなくてもよい。また、第3収容部130と、第1収容部110や第2収容部120との間に第2断熱部145が配置されなくてもよい。
【0070】
(D5)上記実施形態では、第1断熱部140は、第1空気層AL1を有しているが、第1空気層AL1を有していなくてもよい。例えば、第1断熱部140は、断熱材によって第1収容部110と第2収容部120とを断熱するように構成されていてもよい。同様に、第2断熱部145は、空気層を有していなくてもよい。
【0071】
(D6)上記実施形態では、断熱壁103は、タンク101の周囲を囲むように形成されているが、このように形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、断熱壁103の少なくとも一部が第1収容部110の少なくとも一部を区画しているが、断熱壁103がこのように形成されていなくてもよい。例えば、断熱壁103は、第3収容部130が設けられている形態において、断熱壁103の少なくとも一部が第3収容部130の少なくとも一部のみを区画するように形成されていてもよい。
【0072】
(D7)上記実施形態では、断熱壁103は、第2空気層AL2を挟む一対の壁を有する二重壁構造を有しているが、このような二重壁構造を有していなくてもよい。例えば、断熱壁103は、断熱材によって形成された壁であってもよい。
【0073】
(D8)上記実施形態では、タンク101は、断熱壁103を有しているが、断熱壁103を有していなくてもよい。
【0074】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
100,100b…温度調節システム、101,101b,101c…タンク、102…タンク上端部、103,103b,103c…断熱壁、104…第1壁、105…第2壁、106,106b,106c…外壁、107…折り返し部、108…蓋部、109,109b…底部、110…第1収容部、111…第1内部空間、112…第1上端部、115…第1ヒータ、120…第2収容部、121…第2内部空間、122…第2上端部、125…第2ヒータ、130…第3収容部、131…第3内部空間、132…第3上端部、133…第3壁、140,140b…第1断熱部、145…第2断熱部、150,150b…循環回路、155,155b…供給流路、156…第1部分流路、157…第2部分流路、158…合流部、159…第3部分流路、160,160b…調整部、161…第1弁部、162…第2弁部、163…ポンプ部、164…第6弁部、165…加熱用流路、166…第5弁部、180,180b…回収流路、181…共通流路、182…第1回収流路、183…第2回収流路、183b…第2回収流路、184…第3回収流路、185…接続流路、186…第3弁部、187…第4弁部、188…第6弁部、189…第7弁部、190…第1分岐点、191…第2分岐点、195…冷却部、201…温度センサ、300…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7