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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049494
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】動揺模擬システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155741
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】吉原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶太朗
(57)【要約】
【課題】船舶から洋上施設への移乗訓練、及び、各種装置の性能評価試験を陸上で行うことが可能な動揺模擬システムを提供する。
【解決手段】動揺模擬システム1は、第一模擬構造物21を有する第一構造物側動揺装置2と、第二模擬構造物31を有し、第一構造物側動揺装置に隣り合わせて設置された第二構造物側動揺装置3と、を備える。第一構造物側動揺装置及び第二構造物側動揺装置は、第一模擬構造物と第二模擬構造物とを相対的に移動させる移動機構22,32を備える。移動機構22,32は、第二模擬構造物を互いに直交する3つの直線方向に平行移動させる並進機構33、第一模擬構造物を互いに直交する2つの軸線回りに回転させる回転機構24、並びに、第二模擬構造物を互いに直交する3つの軸線回りに回転させる回転機構34、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一模擬構造物を有する第一構造物側動揺装置と、
第二模擬構造物を有し、前記第一構造物側動揺装置に隣り合わせて設置された第二構造物側動揺装置と、を備え、
前記第一構造物側動揺装置及び前記第二構造物側動揺装置の少なくとも一方は、前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物とを相対的に移動させる移動機構を備え、
前記移動機構は、
前記第一模擬構造物及び前記第二模擬構造物の少なくとも一方を、互いに直交する3つの直線方向のうち少なくとも1つの前記直線方向に平行移動させる並進機構、
及び/又は、
前記第一模擬構造物及び前記第二模擬構造物の少なくとも一方を、互いに直交する3つの軸線のうち少なくとも1つの前記軸線回りに回転させる回転機構、を含む動揺模擬システム。
【請求項2】
前記移動機構による前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物との相対的な動きを、波浪に伴う船舶及び洋上構造物の相対的な動揺として再現する請求項1に記載の動揺模擬システム。
【請求項3】
前記並進機構は、前記第一構造物側動揺装置又は前記第二構造物側動揺装置が有し、前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物とを相対的に上下方向に平行移動させる上下移動機構を有し、
前記回転機構は、前記第一構造物側動揺装置又は前記第二構造物側動揺装置が有し、前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物とを相対的に前記上下方向に直交し、かつ、互いに直交する2つの前記軸線回りに回転させる2軸回転機構を有する請求項1又は請求項2に記載の動揺模擬システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動揺模擬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船に対する航空機の発着訓練を行うための操縦訓練装置が開示されている。特許文献1には、航空機の発着対象である船の動揺を模擬する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-203189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、海上においては、船舶から洋上風力発電設備(例えば浮体式洋上風車)や海底鉱物掘削プラットホーム等のように海上に浮かぶ浮体式の洋上施設(洋上構造物)にアクセスして作業者が船舶から乗り移ることがある。船舶から洋上施設への移乗については、陸上において訓練できることが好ましい。
また、船舶から洋上施設への作業者の移乗を補助する洋上施設アクセスギャングウェイ(例えば特開2018-138722号公報に記載の「動揺補正装置」)などのように、船舶や洋上施設に設けられる各種装置の性能評価試験を、陸上において実施できることも求められている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、船舶から洋上施設への移乗訓練、及び、各種装置の性能評価試験を陸上で行うことが可能な動揺模擬システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による動揺模擬システムは、第一模擬構造物を有する第一構造物側動揺装置と、第二模擬構造物を有し、前記第一構造物側動揺装置に隣り合わせて設置された第二構造物側動揺装置と、を備える。前記第一構造物側動揺装置及び前記第二構造物側動揺装置の少なくとも一方は、前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物とを相対的に移動させる移動機構を備える。前記移動機構は、前記第一模擬構造物及び前記第二模擬構造物の少なくとも一方を、互いに直交する3つの直線方向のうち少なくとも1つの前記直線方向に平行移動させる並進機構、及び/又は、前記第一模擬構造物及び前記第二模擬構造物の少なくとも一方を、互いに直交する3つの軸線のうち少なくとも1つの前記軸線回りに回転させる回転機構、を含む。
【0007】
上記構成の動揺模擬システムでは、移動機構により、第一模擬構造物及び第二模擬構造物を相対的に移動(平行移動及び/又は回転移動)させることで、海上環境における船舶と洋上構造物との相対的な動揺を再現することができる。これにより、第一模擬構造物から第二模擬構造物への作業者の移乗を、船舶から洋上構造物への移乗訓練として行うことができる。また、各種装置を第一模擬構造物や第二模擬構造物に設けることで、各種装置の性能評価試験を行うこともできる。したがって、船舶から洋上構造物への移乗訓練、及び、各種装置の性能評価試験を陸上で行うことができる。
【0008】
前記動揺模擬システムにおいては、前記移動機構による前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物との相対的な動きを、波浪に伴う船舶及び洋上構造物の相対的な動揺として再現してよい。
【0009】
また、前記動揺模擬システムにおいて、前記並進機構は、前記第一構造物側動揺装置又は前記第二構造物側動揺装置が有し、前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物とを相対的に上下方向に平行移動させる上下移動機構を有してよい。前記回転機構は、前記第一構造物側動揺装置又は前記第二構造物側動揺装置が有し、前記第一模擬構造物と前記第二模擬構造物とを相対的に前記上下方向に直交し、かつ、互いに直交する2つの前記軸線回りに回転させる2軸回転機構を有してよい。
【0010】
上下移動機構は、6軸モーションベースと比較して、簡素な構造で、第一模擬構造物と第二模擬構造物とを大きなストロークで相対的に上下方向に移動させることができる。また、2軸回転機構は、6軸モーションベースと比較して、簡素な構造で、第一模擬構造物と第二模擬構造物とを大きな角度で相対的に回転させることができる。
【0011】
また、上下移動機構よる第一模擬構造物と第二模擬構造物との相対的な上下運動、並びに、2軸回転機構による第一模擬構造物と第二模擬構造物との相対的な2軸回転運動(ロール運動、ピッチ運動)は、海上における船体と洋上構造物との相対的な動きのうち支配的な動きの要素である。このため、動揺模擬システムにおいて、他の運動(左右運動、前後運動、ヨー運動)が含まれていなくても、海上における船体と洋上構造物との相対的な動きを十分に再現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、船舶から洋上施設への移乗訓練、及び、各種装置の性能評価試験を陸上で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る動揺模擬システムを示す概念図である。
図2図1の動揺模擬システムの具体例を示す斜視図である。
図3図1の動揺模擬システムの具体例を示す側面図である。
図4図1の動揺模擬システムの第一使用例を示す側面図である。
図5図1の動揺模擬システムの第二使用例を示す側面図である。
図6図1の動揺模擬システムの第三使用例を示す側面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る動揺模擬システムを示す概念図である。
図8】本発明の第三実施形態に係る動揺模擬システムを示す概念図である。
図9】本発明の第四実施形態に係る動揺模擬システムを示す概念図である。
図10】本発明の第五実施形態に係る動揺模擬システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第一実施形態〕
以下、図1~6を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
本実施形態に係る動揺模擬システムは、船舶と海上に浮かぶ浮体式の洋上構造物(例えば浮体式洋上風車)などとの相対的な動きを想定したシステムである。図1~3に示すように、動揺模擬システム1は、互いに隣り合わせて設置された船体側動揺装置2(第一構造物側動揺装置)及び洋上構造物側動揺装置3(第二構造物側動揺装置)を備える。また、動揺模擬システム1は、これら船体側動揺装置2及び洋上構造物側動揺装置3の動作を制御する制御装置4を備える。
【0015】
本実施形態において、船体側動揺装置2と洋上構造物側動揺装置3とは、1つの平坦面である設置面Gにおいて隣り合わせて配置される(特に図3参照)。なお、設置面Gは、1つの平坦面に限られない。例えば、設置面Gのうち、船体側動揺装置2が配置される第一領域面と、洋上構造物側動揺装置3が配置される第二領域面とが、互いに異なる高さに位置してもよいし、互いに傾斜してもよい。また、設置面Gの第一領域面と第二領域面とが、構造的に分離されていてもよい。
【0016】
船体側動揺装置2は、模擬船体部21(第一模擬構造物)と、移動機構22(船体側移動機構22)と、を有する。模擬船体部21は、船舶の一部又は全体を模したものであってよい。図2,3に例示する模擬船体部21は、船舶の甲板の一部を模した模擬甲板211、及び、手摺を模した模擬手摺212を有する。模擬手摺212は模擬甲板211の左右方向の両端に設けられている。船体側移動機構22は、模擬船体部21を後述する洋上構造物側動揺装置3の模擬洋上構造物31に対して移動させるものである。
【0017】
本実施形態の船体側移動機構22は、模擬船体部21を互いに直交する3つの軸線のうち所定の軸線回りに回転させる回転機構24(船体側回転機構24)を有する。本実施形態において、船体側回転機構24は、模擬船体部21を上下方向に直交し、かつ、互いに直交する2つの軸線回りに回転させる2軸回転機構110である。すなわち、2軸回転機構110は、模擬船体部21にロール、ピッチの回転運動をさせる。
【0018】
前述した「上下方向」は、鉛直方向であり、本実施形態では設置面Gに直交する方向である。また、本実施形態において上下方向に直交する「2つの軸線」は、前後方向及び左右方向のそれぞれに平行する2つの軸線である。前後方向及び左右方向は、上下方向に直交する方向であり、本実施形態では設置面Gに平行する水平方向である。前後方向は、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とが並ぶ方向である。左右方向は、前後方向に対して直交する方向である。
なお、回転機構24において模擬船体部21を回転させるための軸線は、例えば上下方向、前後方向、左右方向に対して傾斜してもよい。
【0019】
図1~3に示す船体側動揺装置2において、2軸回転機構110は、台座117上に設けられた、支持柱118と、ユニバーサルジョイント119と、2つの回転アクチュエータ111,112と、リンク部113,114と、を備える。台座117は、設置面Gに載置される。支持柱118は、台座117から上方に延びている。ユニバーサルジョイント119は、支持柱118の先端と模擬船体部21との間に設けられている。これにより、模擬船体部21は、台座117及び支持柱118に対して、前後方向及び左右方向のそれぞれに平行する2つの軸線回りに回転可能となっている。
【0020】
各リンク部113,114は、各回転アクチュエータ111,112と模擬船体部21とを連結する。各リンク部113,114は、回転可能に連結された2つのリンク115によって構成されている。
2つの回転アクチュエータ111,112のうち第一回転アクチュエータ111は、支持柱118に対して前後方向に延びる第一軸線A1回りに回転可能となっている。第一回転アクチュエータ111と模擬船体部21とを連結する第一リンク部113は、左右方向において支持柱118からずれた位置において、模擬船体部21に連結されている。これにより、第一回転アクチュエータ111が回転することに伴って、第一リンク部113によって支持された模擬船体部21の部位が上下する。これにより、模擬船体部21を前後方向に平行する軸線回りに回転させることができる。
【0021】
2つの回転アクチュエータ111,112のうち第二回転アクチュエータ112は、支持柱118に対して左右方向に延びる第二軸線A2回りに回転可能となっている。第二回転アクチュエータ112と模擬船体部21とを連結する第二リンク部114は、前後方向において支持柱118からずれた位置において、模擬船体部21に連結されている。これにより、第二回転アクチュエータ112が回転することに伴って、第二リンク部114によって支持された模擬船体部21の部位が上下する。これにより、模擬船体部21を前後方向に平行する軸線回りに回転させることができる。
なお、2軸回転機構110の具体的な構成は、上記した回転アクチュエータ111,112及びリンク部113,114に限られない。
【0022】
洋上構造物側動揺装置3は、模擬洋上構造物31(第二模擬構造物)と、移動機構32(構造物側移動機構32)と、を有する。模擬洋上構造物31は、洋上風力発電設備や海底鉱物掘削プラットホーム等の洋上構造物(洋上施設)の一部又は全体を模したものであってよい。模擬洋上構造物31は、例えば作業者が乗ったり、観測装置7(図6参照)等を設置したりするための構造物(例えば床や柱)であってよい。図2,3に例示する模擬洋上構造物31は、洋上構造物に設けられる梯子を模した模擬梯子311及びボートランディングを模した模擬ボートランディング312を有する。模擬ボートランディング312(ボートランディング)は、模擬船体部21(船体)が押し当てられる部分であり、模擬梯子311(梯子)を保護するように設けられている。
構造物側移動機構32は、模擬洋上構造物31を船体側動揺装置2の模擬船体部21に対して移動させるものである。
【0023】
本実施形態において、構造物側移動機構32は、並進機構33(構造物側並進機構33)と、回転機構34(構造物側回転機構34)と、を有する。構造物側並進機構33は、模擬洋上構造物31を互いに直交する3つの直線方向に平行移動させる。構造物側回転機構34は、模擬洋上構造物31を互いに直交する3つの軸線回りに回転させる。
【0024】
本実施形態における「3つの直線方向」は、上下方向、前後方向及び左右方向である。また、本実施形態において、「3つの軸線」は、前述した「3つの直線方向」のそれぞれに平行する3つの軸線である。なお、「3つの直線方向」は、例えば、上下方向、前後方向及び左右方向に対して傾斜する直線方向であってもよい。
【0025】
具体的に、前述した構造物側並進機構33及び構造物側回転機構34は、6つの自由度を有する6軸モーションベース120によって構成されている。6軸モーションベース120は、模擬洋上構造物31を互いに直交する3つの直線方向にそれぞれ平行移動させる、すなわち、模擬洋上構造物31に前後方向、左右方向、上下方向の並進運動をさせる。また、6軸モーションベース120は、模擬洋上構造物31を互いに直交する3つの軸線回りに回転させる、すなわち、模擬洋上構造物31にロール、ピッチ、ヨーの回転運動をさせる。
【0026】
図1~3に示す6軸モーションベース120は、設置面G上に載置される台座123と、台座123上に設置される複数の伸縮可能な伸縮アクチュエータ121と、複数の伸縮アクチュエータ121の上部に設けられたテーブル122と、を有する。6軸モーションベース120では、複数の伸縮アクチュエータ121が適宜伸縮することで、テーブル122が互い直交する3つの直線方向にそれぞれ平行移動することができ、また、互いに直交する3つの軸線回りにそれぞれ回転移動することができる。なお、6軸モーションベース120の具体的な構成は、これに限られない。
【0027】
また、本実施形態において、構造物側並進機構33は、6軸モーションベース120の他に、上下移動機構130によっても構成されている。上下移動機構130は、模擬洋上構造物31を上下方向に平行移動させる。
図1~3の構造物側移動機構32において、上下移動機構130は、6軸モーションベース120のテーブル122に取り付けられて上下方向に延びるレール131と、レール131に対して上下方向に移動可能に取り付けられたスライダ132と、を有する。スライダ132には、模擬洋上構造物31が固定されている。上下移動機構130では、レール131の長さに応じて模擬洋上構造物31の上下方向の移動長さを設定できる。このため、上下移動機構130では、6軸モーションベース120と比較して、模擬洋上構造物31を上下方向に大きく移動させることができる。
【0028】
制御装置4は、任意の動作パターン、あるいは、波浪などの実海象の時系列データによって移動機構22,32を制御する。制御装置4は、任意の動作パターン、あるいは、波浪による船舶及び洋上構造物の動きを示す時系列データが、船体側移動機構22及び構造物側移動機構32に入力されることで、船体側移動機構22及び構造物側移動機構32による模擬船体部21及び模擬洋上構造物31の相対的な動きを同期して制御する。具体的に、制御装置4は、船体側移動機構22の回転アクチュエータ111,112や構造物側移動機構32の伸縮アクチュエータ121などの動作を制御する。これにより、動揺模擬システム1では、移動機構22,32(船体側移動機構22及び構造物側移動機構32)による模擬船体部21と模擬洋上構造物31との相対的な動きを、波浪に伴う船舶及び洋上構造物の相対的な動揺として再現することができる。
【0029】
次に、図4~6を参照して、本実施形態の動揺模擬システム1の3つの使用例について説明する。
図4に示す第一使用例は、動揺模擬システム1を、作業者Wの船舶から洋上構造物への移乗の訓練として使用する例である。この使用例では、模擬船体部21から模擬洋上構造物31への作業者Wの移乗を、船舶から洋上構造物への移乗訓練として行っている。なお、動揺模擬システム1は、例えば、洋上構造物から船舶への移乗訓練として使用されてもよい。
【0030】
図5に示す第二使用例は、動揺模擬システム1を、船舶に設けられて、船舶から洋上構造物(洋上施設)への作業者の移乗を補助する洋上施設アクセスギャングウェイ6の性能評価試験として使用する例である。
図5に例示する洋上施設アクセスギャングウェイ6は、船舶(模擬船体部21)上に設置されるベース部601と、ベース部601に対して回動可能に連結された桟橋部602と、ベース部601に対する桟橋部602の回動角度を補正する補正機構(不図示)と、を備える。洋上施設アクセスギャングウェイ6では、船舶が波浪によって動揺しても、桟橋部602の先端が洋上構造物の近くに位置するように補正機構によって桟橋部602の回転角度を調整することで、船舶から洋上構造物への作業者の移乗を容易とする。
第二使用例では、この洋上施設アクセスギャングウェイ6を、船舶を模した模擬船体部21に設置することで、作業者の移乗のしやすさなどの性能評価試験を行うことができる。また、洋上施設アクセスギャングウェイ6を用いた作業者の移乗訓練を行うこともできる。
【0031】
図6に示す第三使用例は、動揺模擬システム1を、洋上構造物に設けられる観測装置7の性能評価試験として使用する例である。
観測装置7は、例えば、洋上構造物に接近した船舶の位置や速度、及び、波浪による船舶の動揺量(洋上構造物を基準とした船舶の上下移動量や傾斜角度)、を非接触で観測する機能を有する。
第三使用例では、この観測装置7が、洋上構造物を模した模擬洋上構造物31に設置される。そして、船舶を模した模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを相対的に動かしながら、観測装置7が、模擬船体部21の位置や速度、及び、模擬船体部21の動揺量を観測することで、観測装置7の性能評価試験を行うことができる。
【0032】
図示しないが、動揺模擬システム1は、例えば、洋上構造物に設けられる通信装置の性能評価試験として使用されてもよい。
通信装置は、例えば、洋上構造物に接近した船舶に搭載された他の通信装置との間で相互通信を行うことで、海象の観測データを他の通信装置に送信したり、船舶の洋上構造物への着岸指示を行ったりする機能を有する。
動揺模擬システム1によって当該通信装置の性能評価試験を行うためには、洋上構造物を模した模擬洋上構造物31に、評価対象である通信装置を設置すればよい。そして、船舶を模した模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを相対的に動かしながら、模擬洋上構造物31に設置した通信装置と模擬船体部21に設置した他の通信装置との間の相互通信の試験を行うことで、模擬洋上構造物31に設置した通信装置の性能評価試験を行うことができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の動揺模擬システム1では、移動機構22,32によって、模擬船体部21及び模擬洋上構造物31を相対的に移動させることで、海上環境における船舶と洋上構造物との相対的な動揺を再現することができる。これにより、模擬船体部21から模擬洋上構造物31への作業者の移乗を、船舶から洋上構造物への移乗訓練として行うことができる。また、洋上施設アクセスギャングウェイ6や観測装置7などの各種装置を模擬船体部21や模擬洋上構造物31に設けることで、各種装置の性能評価試験を行うこともできる。したがって、船舶から洋上構造物への移乗訓練、及び、各種装置の性能評価試験を陸上で行うことができる。
【0034】
第一実施形態において、構造物側移動機構32は、例えば6軸モーションベース120のみによって構成されてもよい。この場合、洋上構造物側動揺装置3の模擬洋上構造物31は、例えば6軸モーションベース120のテーブル122によって構成されてよい。
【0035】
〔第二実施形態〕
次に、図7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図7に示すように、第二実施形態の動揺模擬システム1Aでは、第一実施形態と同様に、洋上構造物側動揺装置3の構造物側移動機構32が、6軸モーションベース120及び上下移動機構130を備える。一方、船体側動揺装置2の船体側移動機構22は、船体側回転機構24としての2軸回転機構110に加え、並進機構23(船体側並進機構23)としての上下移動機構140をさらに備える。船体側移動機構22に備える上下移動機構140は、模擬船体部21を上下方向に平行移動させる。
【0037】
図7の船体側移動機構22において、上下移動機構140は、台座117(あるいは設置面G)と2軸回転機構110との間に設けられている。当該上下移動機構140は、互いに回転可能に連結された複数のリンク141と、伸縮可能な伸縮アクチュエータ142と、によって構成されている。伸縮アクチュエータ142が伸縮することで、2軸回転機構110及び模擬船体部21が上下方向に平行移動する。当該上下移動機構140は、6軸モーションベース120と比較して、模擬船体部21を上下方向に大きく移動させることができる。上下移動機構140の伸縮アクチュエータ142の動作は、制御装置4によって制御される。
【0038】
第二実施形態の動揺模擬システム1Aによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の動揺模擬システム1Aでは、模擬船体部21が上下移動機構140によって上下方向に移動する。これにより、移乗訓練のために模擬船体部21に乗った作業者が、船舶が海上において上下する感覚を直接的に得ることができる。
【0039】
〔第三実施形態〕
次に、図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、第三実施形態の動揺模擬システム1Bでは、第一実施形態と同様に、船体側動揺装置2の船体側移動機構22が、船体側回転機構24としての2軸回転機構110のみを備える。
一方、洋上構造物側動揺装置3の構造物側移動機構32は、構造物側並進機構33としての上下移動機構130のみを備える。当該上下移動機構130は、第一実施形態と同様のレール131及びスライダ132を備える。上下移動機構130のレール131は、固定フレーム35によって台座123(あるいは設置面G)に固定されている。
【0041】
図8の動揺模擬システム1Bでは、模擬船体部21が、2軸回転機構110によって設置面Gに平行して互いに直交する2つの軸線回りに回転可能である。また、模擬洋上構造物31が、上下移動機構130によって上下方向にのみ移動可能である。
【0042】
第三実施形態の動揺模擬システム1Bによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第三実施形態の動揺模擬システム1Bでは、移動機構22,32として、上下移動機構130と2軸回転機構110とが採用され、6軸モーションベース120は採用されていない。前述したように、上下移動機構130は、6軸モーションベース120と比較して、簡素な構造で、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを大きなストロークで相対的に上下方向に移動させることができる。また、2軸回転機構110は、6軸モーションベース120と比較して、簡素な構造で、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを大きな角度で相対的に回転させることができる。すなわち、動揺模擬システム1Bでは、6軸モーションベース120よりも簡素な構造でありながら、より大きな波浪に伴う、海上における船体と洋上構造物との相対的な大きい動きを再現することができる。
【0043】
また、上下移動機構130よる模擬船体部21と模擬洋上構造物31との相対的な上下方向の並進運動、並びに、2軸回転機構110による模擬船体部21と模擬洋上構造物31との相対的な2軸回転運動(ロール及びピッチの回転運動)は、海上における船体と洋上構造物との相対的な動きのうち支配的な動きの要素である。このため、動揺模擬システム1Bにおいて、他の運動(左右方向の並進運動、前後方向の並進運動、ヨーの回転運動)が含まれていなくても、海上における船体と洋上構造物との相対的な動きを十分に再現することができる。
【0044】
また、第三実施形態の動揺模擬システム1Bでは、上下移動機構130と2軸回転機構110とが、洋上構造物側動揺装置3と船体側動揺装置2とに分けて設けられている。このため、上下移動機構130及び2軸回転機構110が洋上構造物側動揺装置3及び船体側動揺装置2の一方にまとめて設けられる場合と比較して、洋上構造物側動揺装置3及び船体側動揺装置2の各装置の簡素化を図ることができる。
【0045】
第三実施形態においては、例えば、洋上構造物側動揺装置3の構造物側移動機構32が、構造物側回転機構34としての2軸回転機構110のみを備え、船体側動揺装置2の船体側移動機構22が、船体側並進機構23としての上下移動機構130のみを備えてもよい。このような構成であっても、前述と同様の効果を奏する。
【0046】
また、第三実施形態においては、例えば、洋上構造物側動揺装置3及び船体側動揺装置2の一方が、並進機構としての上下移動機構130、及び、回転機構としての2軸回転機構110を有してもよい。そして、洋上構造物側動揺装置3及び船体側動揺装置2の他方は、移動機構を備えなくてもよい。すなわち、洋上構造物側動揺装置3及び船体側動揺装置2の他方では、模擬船体部21あるいは模擬洋上構造物31が設置面Gに対して固定されてよい。このような構成であっても、前述した効果、すなわち、簡素な構造でありながら海上における船体と洋上構造物との相対的な動きを十分に再現することができる、という効果を奏する。
【0047】
〔第四実施形態〕
次に、図9を参照して本発明の第四実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
図9に示すように、第四実施形態の動揺模擬システム1Cでは、第三実施形態と同様に、船体側動揺装置2の船体側移動機構22が、船体側回転機構24としての2軸回転機構110のみを備える。一方、洋上構造物側動揺装置3の構造物側移動機構32は、構造物側並進機構33として、上下移動機構130の他に、水平方向移動機構150を備える。
【0049】
水平方向移動機構150は、模擬洋上構造物31を、水平方向(上下方向に直交する方向)に移動させる。なお、「水平方向」には、上下方向に直交する平面(例えば設置面G)に沿って互いに直交する2つの直線方向(すなわち、前述した前後方向、左右方向)の少なくとも一方が含まれる。
【0050】
図9に示す水平方向移動機構150は、模擬洋上構造物31を前後方向及び左右方向に移動させる。水平方向移動機構150は、前後方向移動機構151と、左右方向移動機構152と、を含む。前後方向移動機構151は、前後方向に延びるレール1511と、レール1511に対して前後方向に移動可能に取り付けられたスライダ1512と、を有する。左右方向移動機構152は、左右方向に延びるレール1521と、レール1521に対して左右方向に移動可能に取り付けられたスライダ1522と、を有する。左右方向移動機構152は、前後方向移動機構151の上側に設けられている。具体的には、前後方向移動機構151のスライダ1512に、左右方向移動機構152のレール1521が固定されている。そして、左右方向移動機構152のスライダ1522に上下移動機構130のレール131が固定されている。
【0051】
これにより、水平方向移動機構150は、模擬洋上構造物31を前後方向及び左右方向の両方に移動させるように構成されている。なお、水平方向移動機構150は、例えば模擬洋上構造物31を左右方向にのみ移動させるように構成されてもよいし、模擬洋上構造物31を前後方向にのみ移動させるように構成されてもよい。また、水平方向移動機構150は、例えば模擬洋上構造物31を水平方向のうち前後方向及び左右方向の両方に傾斜する方向にのみ移動させるように構成されてもよい。
【0052】
上記した水平方向移動機構150では、レール1511,1521の長さに応じて模擬洋上構造物31の水平方向への移動長さを設定できる。このため、水平方向移動機構150では、6軸モーションベース120と比較して、模擬洋上構造物31を水平方向に大きく移動させることができる。
【0053】
第四実施形態の動揺模擬システム1Cによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第四実施形態の動揺模擬システム1Cでは、移動機構22,32として、上下移動機構130と水平方向移動機構150と2軸回転機構110とが採用され、6軸モーションベース120は採用されていない。前述したように、上下移動機構130は、6軸モーションベース120と比較して、簡素な構造で、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを大きなストロークで相対的に上下方向に移動させることができる。また、水平方向移動機構150は、6軸モーションベース120と比較して、簡素な構造で、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを大きなストロークで相対的に水平方向に移動させることができる。さらに、2軸回転機構110も、6軸モーションベース120と比較して、簡素な構造で、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とを大きな角度で相対的に回転させることができる。すなわち、動揺模擬システム1Cでは、6軸モーションベース120よりも簡素な構造でありながら、より大きな波浪に伴う、海上における船体と洋上構造物との相対的な大きい動きを再現することができる。
【0054】
第四実施形態においては、例えば、水平方向移動機構150が船体側動揺装置2に設けられてもよい。この場合、水平方向移動機構150は、例えば台座117(あるいは設置面G)と2軸回転機構110との間に設けられてよい。
【0055】
また、第四実施形態においては、例えば上下移動機構130、水平方向移動機構150及び2軸回転機構110が洋上構造物側動揺装置3及び船体側動揺装置2の一方にまとめて設けられてもよい。
【0056】
〔第五実施形態〕
次に、図10を参照して本発明の第五実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、第五実施形態の動揺模擬システム1Dでは、船体側動揺装置2の船体側移動機構22が、船体側並進機構23及び船体側回転機構24としての6軸モーションベース120のみを備える。そして、模擬船体部21は、6軸モーションベース120のテーブル122によって構成されている。一方、洋上構造物側動揺装置3は、移動機構(構造物側移動機構)を備えない。このため、洋上構造物側動揺装置3の模擬洋上構造物31は、固定フレーム36によって設置面G上に固定されている。
【0058】
第五実施形態の動揺模擬システム1Dでは、模擬船体部21が6軸モーションベース120によって設置面G上で平行移動したり回転移動したりすることで、模擬船体部21と模擬洋上構造物31とが相対的に動く。
【0059】
第五実施形態の動揺模擬システム1Dにおいて、制御装置4は、船体側移動機構22による模擬船体部21の動きのみを制御する。制御装置4は、任意の動作パターン、あるいは、波浪による船舶及び洋上構造物の動きを示す時系列データが、船体側移動機構22に入力されることで、船体側移動機構22による模擬船体部21と模擬洋上構造物31との相対的な動きを制御する。これにより、動揺模擬システム1Dでは、波浪に伴う船舶及び洋上構造物の相対的な動揺として再現することができる。
【0060】
第五実施形態の動揺模擬システム1Dによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
第五実施形態においては、例えば、洋上構造物側動揺装置3の構造物側移動機構32が、構造物側並進機構33及び構造物側回転機構34としての6軸モーションベース120のみを備え、船体側動揺装置2は移動機構(船体側移動機構)を備えなくてもよい。すなわち、船体側動揺装置2の模擬船体部21が、設置面G上に固定されてもよい。
【0062】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0063】
本発明において、船体側動揺装置2及び洋上構造物側動揺装置3は、設置面Gに設置されることに限らず、例えば移動台車に載せられるように設置されてもよい。船体側動揺装置2及び洋上構造物側動揺装置3は、同一の移動台車に載せられてもよいし、互いに異なる移動台車に載せられてもよい。また、船体側動揺装置2及び洋上構造物側動揺装置3は、例えば壁面や天井から宙吊りされるように設置されてもよい。
【0064】
本発明の動揺模擬システムは、少なくとも模擬船体部21及び模擬洋上構造物31の一方を、互いに直交する3つの直線方向のうち少なくとも1つの直線方向に平行移動させる、及び/又は、互いに直交する3つの軸線のうち少なくとも1つの軸線回りに回転させる、ように構成されていればよい。模擬船体部21及び模擬洋上構造物31を相対的に1つの直線方向のみに平行移動させるだけでも、あるいは、模擬船体部21及び模擬洋上構造物31を相対的に1つの軸線回りに回転移動させるだけでも、船舶と洋上構造物との相対的な動揺を部分的に再現することができる。このため、簡易な移乗訓練や各種装置の性能評価試験を陸上で行うことができる。
【0065】
本発明の動揺模擬システムは、船舶を想定した船体側動揺装置2と、洋上構造物を想定した洋上構造物側動揺装置3と、によって構成されることに限らず、例えば、船舶を想定した2つの船体側動揺装置2(第一、第二構造物側動揺装置)によって構成されてよい。また、本発明の動揺模擬システムは、例えば、洋上構造物を想定した2つの洋上構造物側動揺装置3(第一、第二構造物側動揺装置)によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B,1C,1D 動揺模擬システム
2 船体側動揺装置(第一構造物側動揺装置)
3 洋上構造物側動揺装置(第二構造物側動揺装置)
4 制御装置
21 模擬船体部(第一模擬構造物)
22 船体側移動機構(移動機構)
23 船体側並進機構(並進機構)
24 船体側回転機構(回転機構)
31 模擬洋上構造物(第二模擬構造物)
32 構造物側移動機構(移動機構)
33 構造物側並進機構(並進機構)
34 構造物側回転機構(回転機構)
110 2軸回転機構
130,140 上下移動機構
G 設置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10