(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049499
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】車両、及び車両用部品
(51)【国際特許分類】
B62K 11/10 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B62K11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155751
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】沢崎 和也
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】中西 孝文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AF01
3D011AG01
3D011AH02
(57)【要約】
【課題】エンジンを回転可能に支持するガセットに加わる応力を分散し、車体剛性を向上させると共に、設計の自由度を向上させることができる車両、及び車両用部品を提供する。
【解決手段】本開示に係る車両(1)は、車体フレーム(F)に取り付けられるガセット(G)と、駆動源を含むパワーユニット(P)を回転可能に支持するリンク部材(L)と、を備える車両(1)において、ガセット(G)は、リンク部材(L)を回転可能に支持し、リンク部材(L)に当接して、リンク部材(L)の回転範囲を規制するストッパー部(G10)が設けられ、ストッパー部(G10)は、ガセット(G)に対して別体部品で設けられることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)に取り付けられるガセット(G)と、駆動源を含むパワーユニット(P)を回転可能に支持するリンク部材(L)と、を備える車両(1)において、
前記ガセット(G)は、前記リンク部材(L)を回転可能に支持し、前記リンク部材(L)に当接して、前記リンク部材(L)の回転範囲を規制するストッパー部(G10)が設けられ、
前記ストッパー部(G10)は、前記ガセット(G)に対して別体部品で設けられることを特徴とする車両(1)。
【請求項2】
前記ストッパー部(G10)は、車両前後方向における後方側において前記リンク部材(L)に当接する後壁(G11A、G12A)と、
前記後壁(G11A、G12A)から車両前後方向における前方側に延在し、前記ガセット(G)に当接する車幅方向に対し一対の側壁(G11B、G12B)を備え、
前記側壁(G11B、G12B)の車両前後方向における前方側の前縁(G11C、G12C)は、前記ガセット(G)に対して固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両(1)。
【請求項3】
前記ストッパー部(G10)は、一対の前記側壁(G11B、G12B)同士を結合する補強壁(G12D)を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両(1)。
【請求項4】
前記ガセット(G)は、前記リンク部材(L)を回転可能に接続するリンク接続部(L2)を備え、
前記ストッパー部(G10)は、
前記ガセット(G)における前記リンク接続部(L2)の上方に取り付けられていると共に、前記リンク部材(L)に当接する上部ストッパー部(G11)と、
前記ガセット(G)における前記リンク接続部(L2)の下方に取り付けられていると共に、前記リンク部材(L)に当接する下部ストッパー部(G12)とで構成され、
前記下部ストッパー部(G12)は、一対の前記側壁(G11B、G12B)の上縁同士を結合する補強壁(G12D)を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両(1)。
【請求項5】
前記後壁(G11A、G12A)は、車両側面視して、前記ガセット(G)の車両前後方向における後方側の後縁に比して後方側に突出する突出部(G11T、G12T)を備えることを特徴とする請求項3に記載の車両(1)。
【請求項6】
前記ガセット(G)は、
車幅方向内側に位置する内側ガセット(G1)と、
車幅方向外側に位置する外側ガセット(G2)と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の車両(1)。
【請求項7】
前記ガセット(G)は、長手方向に沿って延在する補強部材(G2S)を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両(1)。
【請求項8】
車両(1)の車体フレーム(F)に取り付けられる車両用部品であって、
駆動源を含むパワーユニット(P)を支持するリンク部材(L)を回転可能に支持するガセット(G)と、
前記ガセット(G)に設けられ、前記リンク部材(L)に当接して、前記リンク部材(L)の回転範囲を規制するストッパー部(G10)と、を備え、
前記ストッパー部(G10)は、前記ガセット(G)に対して別体部品で設けられることを特徴とする、
車両用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、及び車両用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の発生の大幅な削減に向けた取り組みが活発化している。この取り組みを実現するため、車両に用いられる部品に加わる応力を低減し耐久性を向上する研究開発が行われている。スクーター等の鞍乗り型車両は、駆動源となるエンジンと、サスペンションのスイングアームと、駆動輪を駆動する駆動系とが一体となったモジュールエンジン構造(パワーユニットとも呼ぶ)を備えている。このようなパワーユニットは、車体フレームに対して回転支持されるリンク部材を介して取り付けられている。車体フレーム側には、リンク部材を回転支持するガセットが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたガセットは、金属板を折り曲げて一体に形成されている。特許文献1に記載されたガセットは、リンク部材が当接するストッパー部を一体に形成しているため、設計の都合上、ストッパー部の付近を切り欠く必要があり、切り欠いた部分の剛性を高めるために肉厚を厚くしていたが、その分の重量が生じてしまうことがあった。また、特許文献1に記載されたガセットは、ストッパー部が一体形成のため、設計の自由度に制限が生じる場合があった。
【0005】
本発明は、エンジンを回転可能に支持するガセットに加わる応力を分散し、車体剛性を向上させると共に、設計の自由度を向上させることができる車両、及び車両用部品を提供することを目的とする。そして、本発明は、廃棄物の大幅な低減に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、車体フレーム(F)に取り付けられるガセット(G)と、駆動源を含むパワーユニット(P)を回転可能に支持するリンク部材(L)と、を備える車両(1)において、前記ガセット(G)は、前記リンク部材(L)を回転可能に支持し、前記リンク部材(L)に当接して、前記リンク部材(L)の回転範囲を規制するストッパー部(G10)が設けられ、前記ストッパー部(G10)は、前記ガセット(G)に対して別体部品で設けられることを特徴とする車両(1)である。
【0007】
この構成によれば、ストッパー部がガセットに対して別体部品により設けられているため、ガセットに加わる応力を分散し、設計の自由度を向上させることができる。
【0008】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記ストッパー部(G10)は、車両前後方向における後方側において前記リンク部材(L)に当接する後壁(G11A、G12A)と、前記後壁(G11A、G12A)から車両前後方向における前方側に延在し、前記ガセット(G)に当接する車幅方向に対し一対の側壁(G11B、G12B)を備え、前記側壁(G11B、G12B)の車両前後方向における前方側の前縁(G11C、G12C)は、前記ガセット(G)に対して固定されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、固定箇所となる側壁の前縁が後壁に対して前方に離間するため、ガセットに加わる応力を効率的に分散することができる。
【0010】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、前記ストッパー部(G10)は、一対の前記側壁(G11B、G12B)同士を結合する補強壁(G12D)を備えていてもよい。
【0011】
この構成によれば、ガセット及びストッパー部の剛性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第四の態様は、上記第二又は第三の態様において、前記ガセット(G)は、前記リンク部材(L)を回転可能に接続するリンク接続部(L2)を備え、前記ストッパー部(G10)は、前記ガセット(G)における前記リンク接続部(L2)の上方に取り付けられていると共に、前記リンク部材(L)に当接する上部ストッパー部(G11)と、前記ガセット(G)における前記リンク接続部(L2)の下方に取り付けられていると共に、前記リンク部材(L)に当接する下部ストッパー部(G12)とで構成され、前記下部ストッパー部(G12)は、一対の前記側壁(G11B、G12B)の上縁同士を結合する補強壁(G12D)を備えていてもよい。
【0013】
この構成によれば、ガセットにおけるリンク接続部(L2)付近の剛性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第五の態様は、上記第二から第四の態様の何れか一つにおいて、前記後壁(G11A、G12A)は、車両側面視して、前記ガセット(G)の車両前後方向における後方側の後縁に比して後方側に突出する突出部(G11T、G12T)を備えていてもよい。
【0015】
この構成によれば、突出部の突出量や角度を任意に調整することでリンク部材に対してストッパー部を確実に当接させることができる。
【0016】
本発明の第六の態様は、上記第一から第五の態様の何れか一つにおいて、前記ガセット(G)は、車幅方向内側に位置する内側ガセット(G1)と、車幅方向外側に位置する外側ガセット(G2)と、を備えていてもよい。
【0017】
この構成によれば、ガセットが別体に形成されるため、設計自由度が向上する。
【0018】
本発明の第七の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、前記ガセット(G)は、長手方向に沿って延在する補強部材(G2S)を備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、ガセットの強度を向上させることができる。
【0020】
本発明の第八の態様は、車両(1)の車体フレーム(F)に取り付けられる車両用部品であって、駆動源を含むパワーユニット(P)を支持するリンク部材(L)を回転可能に支持するガセット(G)と、前記ガセット(G)に設けられ、前記リンク部材(L)に当接して、前記リンク部材(L)の回転範囲を規制するストッパー部(G10)と、を備え、前記ストッパー部(G10)は、前記ガセット(G)に対して別体部品で設けられることを特徴とする車両用部品である。
【0021】
この構成によれば、ストッパー部がガセットに対して別体部品により設けられているため、ガセットに加わる応力を分散し、設計の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エンジンを回転可能に支持するガセットに加わる応力を分散し、車体剛性を向上させると共に、設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】上部ストッパー部の構成を示す斜視図である。
【
図4】下部ストッパー部の構成を示す斜視図である。
【
図5】ガセット及びリンク部材の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示されるように車両1は、例えば、自動二輪車或いは自動三輪車である。車両1は、鞍乗り型の自動二輪車である。車両1は、前輪或いは後輪に2個の車輪を有する自動三輪車であってもよい。以下の説明において、車両1の進行方向に沿って運転者から見て前方を前側、後方を後側とする車両前後方向、車両左右方向(車幅方向ともいう)、車両上下方向が適宜設定される。車両1は、適宜車体ともいう。車両1は、例えば、前輪WF及び後輪WRを支持する車体フレームFと、車体フレームFに支持されたパワーユニットPとを備える。
【0025】
車体フレームFは、例えば、鋼管を組み合わせて高い剛性を有するように形成されている。前輪WFは、例えば、ディスクホイール、ワイヤーホイール、一体成型のスポークホイールである。前輪WFは、左右一対のフロントフォークRの下端部により回転自在に支持されている。フロントフォークRは、前輪WFをステア方向(左右方向)に回転自在とするステアリングステムSに取り付けられている。ステアリングステムSは、車体フレームFに左右方向に回転自在に支持されている。ステアリングステムSの上部には、左右方向に延在するハンドルバーHが固定されている。ハンドルバーHには、更に左右一対の前側バックミラーMが固定されている。
【0026】
車体フレームFの下部には、駆動力を発生するパワーユニットPが回転自在に固定されている。パワーユニットPは、車体フレームに設けられたガセットGを介して車体フレームに対して回転可能に支持されている。ガセットGについては後述する。パワーユニットPは、駆動源となるエンジンと、エンジンの回転を減速して出力する変速機Tを有する駆動系と、サスペンションのスイングアームとが一体に構成されたモジュールエンジン構造である。変速機Tの内部には、例えば、変速操作を不要とする機械式の無段変速装置が設けられている。
【0027】
変速機Tは、車体左右方向の左側に設けられている。変速機Tは、無段変速装置を覆うケースT1を有している。このケースT1は、サスペンションのスイングアームとして機能する。ケースT1は、車体フレームFに接続されたダンパー装置Dに支持されている。パワーユニットPには、後輪を駆動する機構を収容すると共に、懸架装置を兼ねるスイングアームユニット(不図示)が一体に設けられている。スイングアームユニットは、例えば、車両1の左側において後輪WRを回転自在に片持ちにより支持している。スイングアームユニットは、ダンパー装置Dにより車体フレームFに支持されている。
【0028】
パワーユニットPの後方には、排気ガスが流通する排気管に接続されたマフラー(不図示)が設けられている。マフラーは、車体左右方向の右側に設けられている。マフラーは、パワーユニットPに固定されており、パワーユニットPと連動して車体フレームFに対して回転する。パワーユニットPは、エンジンの回転動力を利用する強制空冷方式、或いは水冷方式の冷却装置(不図示)を有する。
【0029】
このケースT1の後端には、後輪WRが回転自在に軸支されている。後輪WRは、例えば、ディスクホイール、ワイヤーホイール、一体成型のスポークホイールである。後輪WRには、前輪WFと同サイズ或いは異なるサイズのタイヤが取り付けられている。後輪WRは、ケースT1内部に設けられた無段変速装置に設けられたドライブベルトに基づいて駆動される。ドライブベルトは、スイングアームユニット内部に設けられた自動遠心クラッチ(不図示)を介してパワーユニットPにおいて発生する回転駆動力を後輪WRに伝達する。
【0030】
車体フレームFには、運転者が着座する車両用シート10が設けられている。車両用シート10は、車体フレームFの着座位置に配置されている。車両用シート10の下方とステアリングステムSとの間において、車体フレームFを覆う車体カバー2が設けられている。車両用シート10とステアリングステムSとの間の下方には、運転者の足裏を載置するステップ20が設けられている。車両用シート10の下方には、車両用シート10の後方に着座するタンデム搭乗者の足裏を載置するタンデムステップSTが設けられている。
【0031】
図2及び
図3に示されるように、車体フレームFには、左右一対のガセットGとリンク部材Lとが取り付けられている。
図2の例では、車幅方向において左側に配置されたガセットGとリンク部材Lとを斜め後方から見た状態が示されている。以下、左側に配置されたガセットG及びリンク部材Lについて説明する。右側に配置されたガセットG及びリンク部材Lは、車幅方向に関して左側に配置されたガセットG及びリンク部材Lと面対象に構成されている。ガセットGは、リンク部材Lを回転可能に支持している。
【0032】
リンク部材Lは、駆動源を含むパワーユニットPを回転可能に支持する部材である。リンク部材Lは、例えば、車幅方向に左右一対の押圧部L3と、パワーユニットPを回転可能に支持する車幅方向に左右一対のパワーユニット支持部L10とを備えている。押圧部L3は、車体フレームFにおいて車幅方向内側に位置する内側押圧板L4と、車幅方向外側に位置する外側押圧板L5と、内側押圧板L4及び外側押圧板L5に設けられた押圧ブッシュL6とを備えている。
【0033】
内側押圧板L4及び外側押圧板L5は、同型の板状体に形成されている。内側押圧板L4及び外側押圧板L5は、車体前後方向の前方側の中央部に設けられ、ガセットGに回転支持される回転軸部LHを備えている。回転軸部LHは、例えば、車幅方向の回転中心を有する。回転軸部LHは、例えば、内側押圧板L4及び外側押圧板L5に設けられた管状部材LH1と、管状部材LH1に圧入された柱状のブッシュLH2とを備えている。
【0034】
管状部材LH1は、内側押圧板L4及び外側押圧板L5に溶接されている。ブッシュLH2は、弾性部材により形成されている。ブッシュLH2には、車幅方向に沿った貫通孔(不図示)が形成されている。貫通孔には、ガセットGに対してリンク部材Lを回転可能に支持するボルトL1が挿入されている。ブッシュLH2は、パワーユニットPからボルトL1に伝達される力を弾性変形に基づいて吸収する。
【0035】
押圧ブッシュL6は、回転軸部LHに比して上方に配置される上部押圧ブッシュL7と、回転軸部LHに比して下方に配置される下部押圧ブッシュL8とを備えている。上部押圧ブッシュL7及び下部押圧ブッシュL8は、弾性部材により円柱状に形成されている。上部押圧ブッシュL7及び下部押圧ブッシュL8は、パワーユニットPからガセットGに伝達される力を弾性変形に基づいて吸収する。
【0036】
上部押圧ブッシュL7は、ガセットGに設けられた後述の上部ストッパー部G11に当接する。上部押圧ブッシュL7の押圧力は、パワーユニットPの回転状態に応じて変化する。下部押圧ブッシュL8は、ガセットGに設けられた後述の下部ストッパー部G12に当接する。下部押圧ブッシュL8の押圧力は、パワーユニットPの回転状態に応じて変化する。
【0037】
パワーユニット支持部L10は、内側押圧板L4及び外側押圧板L5に固定されたパワーユニットPを回転支持するパワーユニット回転軸部L11と、パワーユニット回転軸部L11を支持する回転軸支持部材L12とを備えている。パワーユニット回転軸部L11は、管状部材により形成されている。パワーユニット回転軸部L11には、パワーユニットPを回転支持するロングボルトLBが挿入されている。
【0038】
上記構成によりリンク部材Lは、ボルトL1及びロングボルトLBにより構成される回転軸に基づいてパワーユニットPを回転支持すると共に、パワーユニットPから車体フレームF側に伝達される力を減少させる。
【0039】
ガセットGは、例えば、車体フレームFにおいて車幅方向内側に位置する内側ガセットG1と、車幅方向外側に位置する外側ガセットG2と、内側ガセットG1と外側ガセットG2との間に設けられたストッパー部G10と、を備えている。車幅方向一対の内側ガセットG1と、外側ガセットG2とは、例えば、車体フレームFに設けられた傾斜部F1の下面側に設けられている。
【0040】
傾斜部F1は、例えば、車体フレームFにおいて車両1ステップ20と車両用シート10との間の位置に設けられている。傾斜部F1は、側面視して車両上下方向に比して後方に傾斜して設けられている。一対の内側ガセットG1と外側ガセットG2とは、例えば、同形状の板状体に形成されている。一対の内側ガセットG1及び外側ガセットG2は、鋼板により形成されている。内側ガセットG1及び外側ガセットG2は、傾斜部F1に沿って延在して形成されている。内側ガセットG1及び外側ガセットG2は、傾斜部F1に溶接されている。
【0041】
外側ガセットG2の下方には、タンデムステップST(
図1参照)を支持する支持部材ST1が設けられている。支持部材ST1は、円形断面の管状部材により形成されている。外側ガセットG2の下方には、支持部材ST1を支持するための円形の第1貫通孔G2Hが形成されている。支持部材ST1は、例えば、第1貫通孔G2Hに溶接されている。外側ガセットG2の中央部には、リンク部材Lの回転軸を支持するための第2貫通孔(不図示)が形成されている。第2貫通孔の周囲には、補強用の補強板Jが設けられる。補強板Jは、外側ガセットG2の第2貫通孔の周囲の強度を向上させる。補強板Jには、第2貫通孔と同径の第3貫通孔(不図示)が形成されている。第2貫通孔及び第3貫通孔には、リンク部材Lの回転軸となるボルトL1が挿入されている。これにより第2貫通孔は、リンク部材Lを回転可能に接続するリンク接続部L2を構成する。
【0042】
外側ガセットG2の車幅方向外側の面の上方には、長手方向に沿って延在する補強部材G2Sが設けられている。補強部材G2Sは、外側ガセットG2の強度を向上させるように形成されている。具体的に補強部材G2Sは、例えば、外側ガセットG2の曲げ剛性、せん断剛性を向上させるように形成されている。補強部材G2Sは、例えば、外側ガセットG2をプレス加工して車幅方向外側に盛り上がるように形成されている。補強部材G2Sは、溶接ビードにより形成されていてもよいし、鋼棒や帯状の鋼板が溶接されて形成されていてもよい。補強部材G2Sは、ストッパー部G10から伝達される応力に基づいて外側ガセットG2に生じる変形を低減する。
【0043】
内側ガセットG1は、外側ガセットG2と車両左右方向に関して面対象(鏡像対象)に形成されている。内側ガセットG1は、外側ガセットG2と同様の構成を有している。内側ガセットG1と外側ガセットG2と、を別体に形成することにより、内側ガセットG1と、外側ガセットG2との形状や、ストッパー部G10の配置位置を自由に設定可能となり、ガセットGの設計自由度が向上する。
【0044】
内側ガセットG1と外側ガセットG2との間には、ストッパー部G10が設けられている。ストッパー部G10は、リンク部材Lに当接して、リンク部材Lの回転範囲を規制する部材である。ストッパー部G10は、内側ガセットG1及び外側ガセットG2に対して別体部品で設けられている。ガセットGと、ストッパー部G10とが別体に設けられていることにより、ストッパー部G10にリンク部材Lが当接して力が伝達された際に、ガセットGにかかる応力を効率よく分散できる。また、ガセットGと、ストッパー部G10とが別体に設けられていることにより、ストッパー部G10の位置や角度の変更が容易になり、設計自由度が向上する。
【0045】
ストッパー部G10は、リンク接続部の上方に取り付けられている上部ストッパー部G11と、リンク接続部の下方に取り付けられている下部ストッパー部G12とにより構成されている。上部ストッパー部G11は、リンク部材Lの上部押圧ブッシュL7に当接している。下部ストッパー部G12は、リンク部材Lの下部押圧ブッシュL8に当接している。
【0046】
上部ストッパー部G11は、鋼板を折り曲げることにより形成されている。上部ストッパー部G11には、車両前後方向における後方側においてリンク部材Lに当接する後壁G11Aが形成されている。後壁G11Aは、矩形の板状体に形成されている。後壁G11Aの左右方向の両端には、車幅方向に対し一対の側壁G11Bが設けられている。一対の側壁G11Bは、板状体に形成されている。一対の側壁G11Bは、後壁G11Aの左右方向の両端から車両前後方向における前方側に延在して形成されている。一対の側壁G11Bは、内側ガセットG1と外側ガセットG2との対向する一対の面にそれぞれ当接している。
【0047】
側壁G11Bの車両前後方向における前方側の前縁G11Cは、内側ガセットG1と外側ガセットG2との対向する一対の面に対してそれぞれ固定手段に基づいて固定されている。固定手段は、例えば、溶接である。固定手段は、ロウ付け、ねじ止め等ガセットGに対して固定可能であれば、溶接以外の手法が用いられてもよい。前縁G11Cは、傾斜部F1に対して固定手段に基づいて固定されていてもよい。前縁G11Cが後壁に対して車両前方に離間した位置においてガセットGに固定されているため、ガセットGにかかる応力は、より効率よく分散される。
【0048】
図4に示されるように、下部ストッパー部G12は、鋼板を折り曲げることにより形成されている。下部ストッパー部G12には、車両前後方向における後方側においてリンク部材Lに当接する後壁G12Aが形成されている。後壁G12Aは、矩形の板状体に形成されている。後壁G12Aの左右方向の両端には、車幅方向に対し一対の側壁G12Bが設けられている。一対の側壁G12Bは、板状体に形成されている。一対の側壁G12Bは、後壁G12Aの左右方向の両端から車両前後方向における前方側に延在して形成されている。一対の側壁G12Bは、内側ガセットG1と外側ガセットG2との対向する一対の面にそれぞれ当接している。
【0049】
側壁G12Bの車両前後方向における前方側の前縁G12Cは、内側ガセットG1と外側ガセットG2との対向する一対の面に対してそれぞれ固定手段に基づいて固定されている。固定手段は、例えば、溶接である。固定手段は、ロウ付け、ねじ止め等ガセットGに対して固定可能であれば、溶接以外の手法が用いられてもよい。前縁G12Cは、傾斜部F1に対して固定されていてもよい。前縁G12Cが後壁に対して車両前方に離間した位置においてガセットGに固定されているため、ガセットGにかかる応力は、より効率よく分散される。
【0050】
下部ストッパー部G12において、一対の側壁G12Bには、タンデムステップSTの支持部材ST1(
図2参照)を回避するための切欠き部G12Eが形成されている。切欠き部G12Eは、ガセットGの第1貫通孔G2Hの外周に比して径方向に外側となる位置に形成されている。下部ストッパー部G12には、一対の側壁G12B同士を結合する補強壁G12Dが設けられている。補強壁G12Dは、矩形の板状体に形成されている。補強壁G12Dは、一対の側壁G11Bの上縁同士を結合している。
【0051】
補強壁G12Dと側壁G11Bの上縁とが一体でない場合は、補強壁G12Dと側壁G11Bの上縁とは溶接等の固定手段を用いて固定される。補強壁G12Dが設けられていることにより、ガセットGおよび下部ストッパー部G12の剛性が向上する。補強壁G12Dが設けられていることにより、ガセットGにおけるリンク部材Lの支持部分を含む領域の剛性が向上する。
【0052】
図5に示されるように、車両側面視して、上部ストッパー部G11の後壁G11Aは、内側ガセットG1の車両前後方向における後方側の後縁(不図示)及び外側ガセットG2の車両前後方向における後方側の後縁G2Kに比して後方側に突出する位置に配置され、突出部G11Tが形成されている。同様に、車両側面視して、下部ストッパー部G12の後壁G12Aは、内側ガセットG1の車両前後方向における後方側の後縁(不図示)及び外側ガセットG2の車両前後方向における後方側の後縁G2Kに比して後方側に突出する位置に配置され、突出部G12Tが形成されている。上部ストッパー部G11及び下部ストッパー部G12は、内側ガセットG1及び外側ガセットG2に対して自由に配置可能であり、突出部G11T,G12Tの突出量や角度を任意に調節できるため、ガセットGは、リンク部材Lに対して、ストッパー部G10を確実に当接させることができる。
【0053】
上述したストッパー部G10を含むガセットGは、鞍乗り型の車両1の車体フレームFに取り付けられる車両用部品として構成されてもよい。車両用部品は、例えば、補修用に流通する交換用の部品である。車両用部品は、ガセットGと、ストッパー部G10と、を備える。ガセットGは、駆動源を含むパワーユニットPを支持するリンク部材Lを回転可能に支持する。ストッパー部G10は、ガセットGに設けられ、リンク部材Lに当接して、リンク部材Lの回転範囲を規制する。ストッパー部G10は、ガセットに対して別体部品で設けられている。
【0054】
上述したように、車両1及び車両用部品において、上部ストッパー部G11及び下部ストッパー部G12は、内側ガセットG1及び外側ガセットG2に対して別体部品で設けられているため、エンジンを回転可能に支持する内側ガセットG1及び外側ガセットG2に加わる応力を分散し、車体剛性を向上させると共に、設計の自由度を向上させることができる。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、車両1は、自動二輪車、自動三輪車だけでなく、4輪バギー等の他の自走車両、非自走車両等に適用されてもよい。原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。ストッパー部G10は、中実のブロックにより形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 車両、2 車体カバー、10 車両用シート、20 ステップ、D ダンパー装置、F 車体フレーム、F1 傾斜部、G ガセット、G1 内側ガセット、G2 外側ガセット、G2H 第1貫通孔、G2K 後縁、G2S 補強部材、G10 ストッパー部、G11 上部ストッパー部、G11A 後壁、G11B 側壁、G11C 前縁、G11T 突出部、G12 下部ストッパー部、G12A 後壁、G12B 側壁、G12C 前縁、G12D 補強壁、G12E 切欠き部、G12T 突出部、H ハンドルバー、J 補強板、L リンク部材、L1 ボルト、L2 リンク接続部、M 前側バックミラー、P パワーユニット、R フロントフォーク、S ステアリングステム、ST1 支持部材、T 変速機、T1 ケース、WF 前輪、WR 後輪