(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000495
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20231225BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068253
(22)【出願日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022098612
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】東城 裕介
(72)【発明者】
【氏名】梅津 秀之
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB02
4J029AB05
4J029AC01
4J029AD10
4J029AE01
4J029BA05
4J029CB06A
4J029FA02
4J029FA03
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB193
4J029JC073
4J029JC343
4J029JC573
4J029JD06
4J029KB02
4J029KD01
4J029KD02
4J029KD05
4J029KD07
4J029KD17
4J029KE03
4J029KE05
4J029KJ08
(57)【要約】
【課題】
エステル化反応時の発泡を低減し、重合速度を高めることで、生産速度と収率を両立しつつ、さらに誘電正接や異物量が低減されたポリブチレンテレフタレート樹脂を得る。
【解決手段】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ブタンジオールを主成分とするジオール成分とをエステル化する工程(エステル化工程)、その後、該エステル化工程で生成された生成物を重縮合する工程(重縮合工程)を有するポリブチレンテレフタレートの製造方法であって、前記エステル化工程において、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)の仕込みモル比((B)/(A))を1.6~2.0とし、かつ、炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)をテレフタル酸100mol%に対して0.1~2.0mol%添加してエステル化反応を行い、かつ、反応槽の攪拌翼の周速度を2.0m/s~4.0m/sの範囲とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ブタンジオールを主成分とするジオール成分とをエステル化する工程(エステル化工程)、その後、該エステル化工程で生成された生成物を重縮合する工程(重縮合工程)を有するポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法であって、前記エステル化工程において、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)の仕込みモル比((B)/(A))を1.6~2.0とし、かつ、炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)を、テレフタル酸のモル数を100mol%としたとき、0.1~2.0mol%添加してエステル化反応を行い、かつ、反応槽の攪拌翼の周速度を2.0m/s~4.0m/sの範囲とすることを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記エステル化工程において、反応槽の圧力を50~101kPaの範囲とし、かつ、160℃から225℃までの温度区間についてはその間の昇温速度を0.300~0.600℃/分として反応を行うことを特徴とする請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記エステル化工程および重縮合工程のいずれかまたは両方で、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対する濃度が0.01~0.20重量部となるようフェノール系酸化防止剤(D)を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その優れた射出成形性や機械物性などの諸特性を生かし、機械機構部品、電気・電子部品および自動車部品などの幅広い分野に利用されている。
【0003】
さらに、周波数が1GHz帯以上の高周波を利用した高速通信規格に基づいた携帯用通信末端や自動車用ミリ波センサーなどの高周波伝送部品への適用に対して、通信精度を高めるために誘電損失を低減した材料が求められている。
【0004】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の誘電損失を低減する方法として、特定の脂肪族アルコールを導入することで、高周波下でエネルギー損失の大きい水酸基を低減し、これにより誘電損失の指標である誘電正接を低減する方法が開示されており、その製造方法としてポリブチレンテレフタレート樹脂の重合工程における、テレフタル酸とブタンジオールのエステル化工程で、炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコールを添加する方法が開示されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、重合工程の中のエステル化反応により生成する水やテトラヒドロフランの蒸気によって発泡することがあり、安定的にエステル化反応を進めるためには、温和な条件で実施することが必要とされ、このため重合時間が長くなって、生産速度が低下する傾向があった。また、生産速度の向上のためエステル化反応の条件として昇温速度を高めた場合や、減圧度を高めた場合では発泡が激しくなり、反応物が重合槽外に流出してしまって収率が低下することや、反応が不均一となりやすく、また、異物が発生しやすくなるといった課題があった。
【0007】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法として、エステル化反応時の発泡を低減し、重合速度を高めることで、生産速度と収率を両立しつつ、さらに誘電正接や異物量が低減されたポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した課題を解決するために検討を重ねた結果、エステル化工程において、テレフタル酸(A)を主成分とするジカルボン酸成分とブタンジオール(B)を主成分とするジオール成分、炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)を仕込み、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)の原料仕込みモル比や脂肪族アルコール(C)の添加量、攪拌速度を特定の範囲の周速度とすることで、上記した課題を解決できることを見出し、本発明に達した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
[1]テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ブタンジオールを主成分とするジオール成分とをエステル化する工程(エステル化工程)、その後、該エステル化工程で生成された生成物を重縮合する工程(重縮合工程)を有するポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法であって、前記エステル化工程において、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)の仕込みモル比((B)/(A))を1.6~2.0とし、かつ、炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)を、テレフタル酸のモル数を100mol%としたとき、0.1~2.0mol%添加してエステル化反応を行い、かつ、攪拌翼の周速度を2.0~4.0m/sの範囲とすることを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
[2]前記エステル化工程において、反応槽の圧力を50~101kPaの範囲とし、かつ、160℃から225℃までの温度区間についてはその間の昇温速度を0.300~0.600℃/分として反応を行うことを特徴とする前記[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
[3]前記エステル化工程および重縮合工程のいずれかまたは両方で、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対する濃度が0.01~0.1重量部となるようにフェノール系酸化防止剤(D)を添加することを特徴とする前記[1]または[2]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法によれば、エステル化反応時の発泡を低減し、重合速度を高めつつ、収率などの生産性を向上することができる。また、誘電正接や異物量が低減されたポリブチレンテレフタレート樹脂として得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法について、例をあげつつ、詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを用いてエステル化反応を行う工程(エステル化工程)で、炭素数10以上50以下の脂肪族アルコール(C)とを添加してエステル化反応を行い、その後に該エステル化工程で生成された生成物を重縮合する工程(重縮合工程)により製造する。ここで、「主成分とする」とは、ジカルボン酸成分とジオール成分のそれぞれについて、独立して、それぞれの成分中の50mol%を超えて占めていることをいい、好ましくは、80mol%以上を占め、さらに好ましくは、90mol%以上を占めることをいう。もちろん、他の成分が含まれなくても構わない。本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記の限りにおいて、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)以外の成分が共重合されたものであってもよく、そのような成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体や、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなどの炭素数2~20の脂肪族または脂環式グリコール、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量200~100000の長鎖グリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどの芳香族ジオキシ化合物およびこれらのエステル形成性誘導体などジオール化合物などが挙げられる。これらは2種以上を用いてもよい。また、ブタンジオール(B)としては、1,4-ブタンジオールが通常用いられる。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究の結果、エステル化工程において、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)の仕込みモル比((B)/(A))を1.6~2.0とし、添加する炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)を、テレフタル酸のモル数を100mol%としたとき、0.1~2.0mol%とし、また、攪拌速度を特定の範囲に制御することで、生成する気泡の安定性を下げ、発泡を抑えることができ、収率の低下を抑制することができることを見出した。
【0013】
さらに、その上で昇温速度と圧力条件の減圧度を高めることで、収率の低下を抑制しつつ、早期に反応を完結でき、誘電正接などの諸特性を損なうことなく、生産性を向上できることを見出した。
【0014】
本発明に用いられる炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)は、炭素原子および水素原子からなる炭化水素を主骨格とし、水酸基を一つ有する単官能のアルコール化合物であり、炭素原子が鎖状につながった構造において直鎖もしくは分岐、環状構造を有していてよい。その例として、デシル基(C10)、ウンデシル基(C11)、ドデシル基(C12)、トリデシル基(C13)、テトラデシル基(C14)、ペンタデシル基(C15)、ヘキサデシル基(C16)、ヘプタデシル基(C17)、オクタデシル基(C18)、ノナデシル基(C19)、イコシル基(C20)、ヘンイコシル基(C21)、ドコシル基(C22)、トリコシル基(C23)、テトラコシル基(C24)、ペンタコシル基(C25)、ヘキサコシル基(C26)、ヘプタコシル基(C27)、オクタコシル基(C28)、トリアコンチル基(C30)、テトラコンチル基(C40)などの直鎖の飽和脂肪族基を有するアルコール化合物、ブチルヘキシル基(C10)、ブチルオクチル基(C12)、ヘキシルオクチル基(C14)、ヘキシルデシル基(C16)、オクチルデシル基(C18)、ヘキシルドデシル基(C18)、トリメチルブチルトリメチルオクチル基(C18)、ブチルテトラデシル基(C18)、ヘキシルテトラデシル基(C20)、オクチルテトラデシル基(C22)、オクチルヘキサデシル基(C24)、デシルテトラデシル基(C24)、ドデシルテトラデシル基(C26)、ドデシルヘキサデシル基(C28)、ドデシルヘキサデシル基(C28)、テトラデシルオクタデシル基(C32)、ヘキサデシルイコサシル基(C36)などの分岐を有する飽和脂肪族基を有するアルコール化合物、パルミトレイル基(C16)、オレイル基(C18)、リノレイル基(C18)、エルシル基(C22)などの不飽和脂肪族基を有するアルコールが挙げられる。なお、上記の「C」の後の数字はその基に含まれる炭素の数を表す。これらの中で、色調の点から直鎖や分岐を有する飽和脂肪族炭化水素に水酸基が結合したアルコールが好ましく、さらに流動性の点から分岐を有する飽和脂肪族炭化水素に水酸基が結合したアルコールであることが好ましい。脂肪族基の炭素数は10以上50以下であれば流動性向上効果が得られ、さらに流動性を向上できる点で、炭素数の下限は16以上であることが好ましく、20以上であることがさらに好ましい。炭素数の上限は36以下であることが好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
【0015】
炭素数が10以上50以下の脂肪族アルコール(C)は、単にエステル化工程の進行を助けるに止まらず、本発明に係るポリブチレンテレフタレート中において、カルボキシ末端を封鎖する成分として働いていると推察され、水酸基末端の生成を抑制し、これによって、低誘電正接化がはかられていると考えられる。
【0016】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は水酸基濃度が0.050mmol/g以下であることが望ましい。水酸基濃度は、さらに誘電正接を低減できる点で、より好ましくは0.040mmol/g以下、さらに好ましくは0.030mmol/g以下、特に好ましくは0.020mmol/g以下である。なお、水酸基濃度の下限は0mmol/gである。ポリブチレンテレフタレート樹脂の水酸基濃度は、重ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として1H-NMRによって測定した末端基由来のピークの積分比により求めた値である。
【0017】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル基濃度は、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、0.070mmol/g以下であることが好ましい。カルボキシル基濃度は、より好ましくは0.060mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.50mmol/g以下である。カルボキシル基濃度の下限値は、0mmol/gである。ここで、ポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル基濃度は、ポリブチレンテレフタレート樹脂をo-クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し、測定した値である。
【0018】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は180℃以上であることが好ましい。融点が180℃以上であることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。融点は耐熱性の点で、好ましくは190℃以上であり、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上である。ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は、DSC(示差走査熱量測定)にて、25℃から20℃/minで昇温した時に得られる吸熱融解ピークのピーク温度の値である。
【0019】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械物性をより向上させる点で、重量平均分子量(Mw)が8,000以上であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは9,000以上、さらに好ましくは10,000以上である。また、重量平均分子量(Mw)が500,000以下の場合、流動性が向上するため、好ましい。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは300,000以下であり、さらに好ましくは250,000以下である。本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0020】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械物性をより向上させる点で、固有粘度(IV)が0.60dl/g以上であることが好ましい。固有粘度は、より好ましくは0.65dl/g以上、さらに好ましくは0.70dl/g以上である。また、固有粘度が2.00dl/g以下の場合、流動性が向上するため、好ましい。固有粘度は、より好ましくは1.70dl/g以下であり、さらに好ましくは1.40dl/g以下である。本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、オルトクロロフェノールを溶媒にし、25℃における測定により求められる値である。
【0021】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶融加工時に外観不良となる異物の発生が抑制されることから、溶液ヘイズは10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下である。溶液ヘイズは、フェノールとテトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶液40mLに溶解させ、10mm厚みの光学セルに入れ、日本電色製濁度計300A(日本電色製)にて、測定した溶液ヘイズとして評価することができる。
【0022】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法によれば、23℃で円筒型空洞共振器摂動法にて測定した5.8GHzでの誘電正接は、0.0060以下とすることができる。誘電正接が0.0060以下であれば、誘電損失を低減することができ、高周波信号の劣化を抑えることができるため、アンテナの利得やレーダーの精度などに優れるため、高周波伝送部品に好適に用いられる。より好ましくは0.0055以下であり、さらに好ましくは0.0050以下である。
【0023】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の誘電正接は、自由空間Sパラ法、コルゲート円形導波管Sパラ法などのSパラメータ法や平衡型円板共振器法、ファブリーペロー開放型共振器法、スプリットシリンダー空洞共振器法、スプリットポスト誘電体共振器法、円筒型空洞共振器摂動法、遮断円筒導波管法などの空洞共振法から求められるが、測定値の精度の観点から、本発明においては空洞共振法により求めるものとする。また、本発明においては、空洞共振法のうち円筒型空洞共振器摂動法により求めるものとする。
【0024】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法としては、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸およびブタンジオールを主成分とするジオール成分とをエステル化する工程(エステル化工程)と、その後、エステル化工程で生成された生成物を重縮合する工程(重縮合工程)により得ることができる。そして、エステル化工程では、特定量の炭素数10以上50以下の脂肪族アルコール(C)が添加されている。
【0025】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法において、エステル化工程でのテレフタル酸(A)とブタンジオール(B)の仕込みモル比((B)/(A))は1.6~2.0である。仕込みモル比((B)/(A))を1.6以上では、エステル化反応時の昇温速度を高めた場合や減圧度を高めた場合でも発泡を抑えられ、収率が向上できる。好ましくは1.7以上である。一方で、2.0より多いと重縮合工程での反応時間が長化して生産性が低下してしまう。好ましくは1.9以下であり、より好ましくは1.8以下である。
【0026】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法における、エステル化工程における炭素数10以上50以下の脂肪族アルコール(C)の添加量は、テレフタル酸のモル数を100mol%としたときに、0.1~2.0mol%である。誘電正接を低減できる点で脂肪族アルコール(C)の添加量は好ましくは0.5mol%以上であり、より好ましくは0.7mol%以上である。一方で、エステル化反応時の発泡を抑え、収率を向上できる点で脂肪族アルコール(C)の添加量は好ましくは1.8mol%以下であり、より好ましくは1.6mol%以下である。
【0027】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法における、エステル化反応時の攪拌翼の周速度は2.0~4.0m/s(meter per second)の範囲である。攪拌翼の周速度を2.0m/s以上とすることで、発泡を抑制し、収率を向上することができ、好ましくは2.2m/s以上、より好ましくは2.4m/s以上である。一方で、攪拌翼の周速度は、4.0m/s以下とすることで、モノマーの飛散を抑え、不均一な反応を抑制することで、異物量を低減することができ、好ましくは3.5m/s以下であり、より好ましくは3.2m/s以下である。攪拌翼の周速度(m/s)は、攪拌翼の直径(m)および回転速度(r/s(round per second))および円周率を掛け合わせて求めることができる。なお一般的なポリブチレンテレフタレート樹脂のエステル化反応における攪拌翼の周速度は、特開平1-149825号公報などを参考にすると、攪拌翼の回転数は20~200rpmとしており、攪拌翼の直径の記載はないものの、実施例の原料仕込み総量1.5kgから4L程度のフラスコ反応槽で実施していると仮定して、攪拌翼直径は反応槽内径の180mm以下と推定すれば、周速度は0.2~1.9m/sの範囲である。
【0028】
本発明における攪拌翼としてはパドル型、傾斜パドル型、タービン型、ディスクタービン型、アンカー型、ゲート型、フルゾーン型、ダブルヘリカルリボン型など公知の攪拌翼を使用することができ、一つの攪拌軸に対して複数取り付けられたものでも良いし、反応槽と攪拌翼のクリアランスを低減するために攪拌軸の先端にさらに攪拌翼が追加されていても良い。
【0029】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法における、エステル化反応時の反応槽内の圧力は50~101kPaであることが好ましい。圧力が50kPa以上では、反応物の発泡をさらに抑制し、収率をより向上することができる。エステル化反応時の反応槽内の圧力の下限としては、より好ましくは65kPa以上である。一方で、エステル化反応時の反応槽内の圧力を101kPa以下とすることで、反応で生成する水やテトロヒドロフランの留出を促進し、反応速度を高められ、さらに生産性を向上できる。エステル化反応時の反応槽内の圧力の上限としては、より好ましくは95kPa以下であり、さらに好ましくは80kPa以下である。
【0030】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法のエステル化工程において、エステル化反応の温度条件として、160℃から225℃までの温度区間についてはその間の昇温速度は0.300~0.600℃/分であることが好ましい。前記の温度区間での昇温速度を0.300℃/分以上とすることで、反応速度を高められ、さらに生産性を向上できる。160℃から225℃までの温度区間についてはその間の昇温速度の下限としては、より好ましくは0.310℃/分以上であり、さらに好ましくは0.320℃/分以上である。一方で、160℃から225℃までの温度区間についてはその間の昇温速度を0.600℃/分以下とすることで、未反応のブタンジオール(B)の突沸を抑制し、さらに収率を高めることができる。160℃から225℃までの温度区間についてはその間の昇温速度の上限としては、より好ましくは0.500℃/分以下であり、さらに好ましくは0.400℃/分以下である。
【0031】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法のエステル化工程において、前記のジオール成分は、仕込む全ジオール成分の量を100mol%としたとき、そのうち5~30mol%を、エステル化工程の途中で反応槽内に添加することで、反応物の液面近傍における炭素数10以上50以下の脂肪族アルコール(C)の濃度を局所的に低くすることができ、これにより発泡を低減し、生産性をさらにいっそう向上できる。エステル化工程の途中から添加する量としては、ジオール成分の総量を100mol%として、より好ましくは8mol%以上であり、さらに好ましくは10mol%以上である。一方、上限としては、重縮合工程の反応時間を短縮できる点で、より好ましくは25mol%以下であり、さらに好ましくは20mol%以下である。エステル化工程の途中で添加するタイミングとしては、特に気泡の発生が活発となるエステル化反応時間15分から130分の間が好ましく、添加する速度は前記の時間内に添加できるのであれば任意の速度で良い。
【0032】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法におけるエステル化工程後の反応生成物の収率は98.0%以上であると、生産性の観点で好ましい。収率はより好ましくは98.5%以上であり、さらに好ましくは99.0%以上であり、特に好ましくは99.5%以上である。収率は、反応槽内に仕込んだ原料の重量の合計値に対して、反応物重量と留出液重量の合計値を百分率とした値として求める。収率の上限は100%である。
【0033】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法における、エステル化工程での反応時間と重縮合工程での反応時間の合計は350分以下であることが生産性の観点で好ましい。より好ましくは340分以下であり、さらに好ましくは320分以下である。
【0034】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法において、エステル化工程および重縮合工程のいずれかまたは両方の工程において、フェノール系酸化防止剤(D)を添加することが脂肪族アルコール(C)の熱分解を抑制し、ポリブチレンテレフタレート樹脂の水酸基末端をより低減できる点で好ましい。
【0035】
本発明に用いることができるフェノール系酸化防止剤(D)としては、好ましくは、t―ブチル基を有するフェノール化合物であり、具体的にはトリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビスもしくはトリス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、N,N’-トリメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)などが挙げられる。
【0036】
本発明に用いられるフェノール系酸化防止剤(D)の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.01~0.20重量部が好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂の水酸基末端を低減できる点で、より好ましくは0.02重量部以上であり、さらに好ましくは0.03重量部以上である。添加量の上限は、分子量を向上できる点でより好ましくは0.15重量部以下であり、さらに好ましくは0.10重量部以下である。
【0037】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂のエステル化反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に反応触媒(E)を添加することが好ましい。反応触媒(E)の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ-n-プロピルエステル、テトラ-n-ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ-tert-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモンおよび酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0038】
これらの反応触媒(E)の中でも、有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、チタン酸のテトラ-n-ブチルエステルがさらに好ましく用いられる。反応触媒(E)の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.01~0.2重量部の範囲が好ましい。反応触媒(E)の添加量は0.01重量部以上であれば重合を短時間で完結できるため好ましく、より好ましくは0.03重量部以上であり、さらに好ましくは0.04重量部以上である。一方、反応触媒(E)の添加量は0.2重量部以下であれば色調を向上できることから好ましく、より好ましくは0.15重量部以下であり、さらに好ましくは0.1重量部以下である。
【0039】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法としてはバッチ重合および連続重合のいずれでもよく、水酸基をより低減する観点からはバッチ重合が好ましい。
【0040】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法においては、テレフタル酸(A)とブタンジオール(B)を混合してスラリーを形成する工程、触媒溶液を調整する工程、エステル化後の反応物を金属製のメッシュ等からなるフィルターにてフィルタリングする工程、溶融樹脂を水浴に吐出しストランドカッターなどでカッティングする工程など、エステル化反応と重縮合反応以外の公知のポリエステル樹脂の製造工程を含んでいてもよい。
【実施例0041】
次に、実施例により本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法について例を挙げて具体的に説明する。ここで%および部とは、すべて重量%および重量部を表す。なお、本発明はここに挙げた具体的な例に限定して解釈されるものではない。
【0042】
[各特性や物性の測定方法]
各実施例および比較例においては、次に記載する測定方法によって、その特性や物性を評価した。
【0043】
1.固有粘度
ウベローデ型粘度計とoークロロフェノールを用い、25℃において、試料とする樹脂の濃度が1.0g/dl、0.5g/dlおよび0.25g/dlの場合の溶液粘度を測定し、得られた溶液粘度の値を濃度0に外挿して固有粘度(dl/g)を求めた。
【0044】
2.官能基濃度(水酸基、脂肪族基)
試料2gをヘキサフルオロイソプロパノール5mLに溶解させ、エタノール50mLにより再沈殿させ、沈殿物を捕集して真空乾燥機にて真空下80℃で乾燥し、精製した。精製物30mgを重ヘキサフルオロイソプロパノール0.7mLに溶解させて、日本電子(株)製JNM-ECZ500Rにて、1H-NMR測定を行った。得られた1H-NMRスペクトルを、Macromol.Chem.Phys.2014,215,2138-2160に記載の方法でスペクトルのピークを帰属し、テレフタル酸の残基のピークの積分値Saとその水素原子数Ha、および官能基由来のピークの積分値Sbとその水素原子数Hbを求め、以下の式(1)から官能基濃度を求めた。
官能基濃度(mmol/g)={(Sb/Sa)×(Ha/Hb)}/ユニット平均分子量×1000 ・・・(1)。
【0045】
ここで、ユニット平均分子量は、テレフタル酸(A)の残基とブタンジオール(B)の残基の分子量を合わせた合計値(220)である。
【0046】
3.異物量(溶液ヘイズ)
試料5.4gをフェノールとテトラクロロエタンの重量比が6/4の混合溶液40mLに溶解させ、10mm厚みの光学セルに入れ、日本電色製濁度計300A(日本電色製)にて、溶液ヘイズを測定した。溶液ヘイズは10%以下であると異物量が少なく優れていると判断し、8%以下がより優れ、6%以下が特に優れていると判断した。
【0047】
4.高周波誘電特性(比誘電率、誘電正接)
試料を、ソディック製TR30EHA射出成形機を用いて、金型温度80℃の温度条件で、射出時間と保圧時間は合わせて3秒、冷却時間15秒の成形サイクル条件で射出成形し、厚み0.5mmの30mm×30mm角板を得た。得られた角板から樹脂の流れ方向に平行に1mm幅で切削し、30mm×1mm×0.5mm厚の誘電特性評価用試験片を得た。誘電特性評価用試験片を使用して、アジレント・テクノロジー(株)製ネットワークアナライザE5071Cおよび(株)関東電子応用開発製空洞共振器CP521を用いた円筒型空洞共振器摂動法によって23℃、5.8GHzにおける比誘電率および誘電正接を求めた。ポリブチレンテレフタレート樹脂の5.8GHzにおける比誘電率は3.1以下だと優れ、3.0以下だとより優れると判断した。ポリブチレンテレフタレート樹脂の5.8GHzにおける誘電正接は0.0060以下だと優れ、0.0055以下だとより優れ、0.0050以下だとさらにより優れると判断した。
【0048】
5.発泡の大きさ
エステル化反応中の発泡はフラスコ反応器から分留管に流出するところ、エステル化反応の終了後、フラスコ反応器から分留管を取り外し、該分留管のフラスコ反応器との接続部から該接続部からみて反応物が付着している最も遠い位置までの長さを測り、発泡の大きさとして求めた。
【0049】
実施例および比較例に用いられる原料を次に示す。
【0050】
[原料]
(A)テレフタル酸:三井化学株式会社製
(B)ブタンジオール(1,4-ブタンジオール):三菱ケミカル株式会社製
(C)炭素数10以上50以下の脂肪族アルコール
(C-1)2-デシル-1-テトラデカノール:東京化成工業社製,炭素数24
(C-2)1-オクタデカノール:東京化成工業社製,炭素数18
(D)フェノール系酸化防止剤
(D-1)ペンタエリスリチルーテトラキス[3ー(3,5ージーtーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオネート]:BASF社製Irganox(商標)1010
(E)反応触媒
(E-1)テトラブチルチタネート(チタン酸のテトラ-n-ブチルエステル):東京化成工業株式会社製
[実施例1]
エステル化反応におけるテレフタル酸(A)とブタンジオール(B)のモル比((B)/(A))を1.8とし、テレフタル酸(A):500g、ブタンジオール(B):488g、脂肪族アルコール(C)として2-デシル-1-テトラデカノール:16g(テレフタル酸100mol%に対して1.5mol%)、反応触媒(E)としてテトラブチルチタネート:0.16g(生成するポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.025重量部)を、高さ300mmの旭製作所製の分留管(型番3522‐300‐4L)を接続した2L容量の4つ口フラスコ反応器に仕込み、攪拌翼直径が80mmの二枚パドル型サンプラテック社製PTFE攪拌翼を用い、攪拌翼をHEIDON社製スリーワンモーターBL1200で500rpm(周速度2.1m/s)の速度で回転させつつ、大科電器社製マントルヒーターで温度160℃、分留管の留出先からULVAC社製油回転真空ポンプによって内部を80kPaに減圧してから、エステル化反応を開始した。その後、0.350℃/分で昇温し、最終的に温度225℃とし、反応中に生成した水やテトロヒドロフランを留出液として留出させながら、エステル化反応を実施し、反応時間を185分とした。発泡の大きさは、10mmであった。収率は、フラスコ内に仕込んだ原料の重量の合計値に対して、反応物重量と留出液重量の合計値を百分率とした値として求め、98.1%であった。なお、反応物の重量は、反応物の入っているフラスコの重量からフラスコ単体の重量を差し引いて求めた。得られた反応物に、反応触媒(E)としてテトラブチルチタネート:0.16g(生成するポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.025重量部)を添加し、温度260℃、圧力100Paの条件で重縮合反応を行った。反応物の粘度により重縮合反応の終了を確認し、重縮合反応の反応時間を165分間とし、合計325分間反応を実施し、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0051】
[実施例2~14、16~20、比較例1~3]
表1ないし3に記載された組成および反応条件に従い、原料、攪拌翼の周速度、エステル化反応の昇温時間、圧力条件、エステル化反応時間、および重縮合時間を変更した以外は実施例1に記載の条件と同じ条件にて重合反応を実施し、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0052】
[実施例15]
エステル化工程の途中にブタンジオール(B)を添加するために、4つ口フラスコに桐山製作所製の100ml容量の等圧滴下ロートを接続し、ブタンジオール(B)の仕込み総量488gのうち73g(仕込み総量に対して15mol%)を等圧滴下ロートに仕込み、エステル化反応の反応時間30分~120分の間に0.8g/分の滴下速度で添加し、表3に記載された組成および反応条件に従い、攪拌翼の周速度、エステル化反応時間、および重縮合時間を変更した以外は実施例1に記載の条件と同じ条件にて重合反応を実施し、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0053】
[実施例21]
100ml容量の等圧滴下ロートに仕込むブタンジオール(B)の量をブタンジオール(B)の仕込み総量488gのうち24g(仕込み総量に対して5mol%)とし、エステル化反応の反応時間30分~120分の間に0.3g/分の滴下速度で添加した以外は、実施例15に記載の条件と同じ条件にて重合反応を実施し、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0054】
[実施例22]
4つ口フラスコに接続する等圧滴下ロートを200ml容量のものに変更し、等圧滴下ロートに仕込むブタンジオール(B)の量をブタンジオール(B)の仕込み総量488gのうち146g(仕込み総量に対して30mol%)とし、エステル化反応の反応時間30分~120分の間に1.6g/分の滴下速度で添加した以外は、実施例15に記載の条件と同じ条件にて重合反応を実施し、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0055】
得られたペレットを110℃の温度の熱風乾燥機で6時間乾燥後、前記方法で評価し、表1~3にその結果を示した。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
実施例1~8と比較例1~3の比較により、原料仕込みモル比((B)/(A))および脂肪族アルコール(C)の添加量、攪拌翼の周速度を特定の範囲とすることで、エステル化反応時の発泡を抑えることができ、ポリブチレンテレフタレート樹脂を短い反応時間で高収率に得ることができた。また、本発明の製造法で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂は誘電正接が低いことに加えて、異物量が低く、溶融加工時の外観不良の要因となる異物の発生を抑えられることが分かった。
【0060】
実施例3、9~13と実施例14の比較により、圧力条件、昇温速度を特定の範囲とすることで、エステル化反応時の発泡を抑えることができ、ポリブチレンテレフタレート樹脂をより短い反応時間で高収率に得ることができることが分かった。
【0061】
実施例15、21、22と実施例3の比較により、エステル化工程において仕込むジオール成分の量(100mol%)のうち5~30mol%の範囲のいずれかの量を、エステル化工程の途中から反応槽に添加することで、より収率を高めつつ、さらに異物量の少ないポリブチレンテレフタレート樹脂が得られることが分かった。
【0062】
実施例16~19と実施例3の比較により、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、さらにフェノール系酸化防止剤(D)0.01~0.2重量部を添加ことで、重縮合反応時間を短縮することができ、より短い反応時間でポリブチレンテレフタレート樹脂が得られることが分かった。