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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049505
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】磁性流体モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/10 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
H02K19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155759
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】吉地 輝朗
【テーマコード(参考)】
5H619
【Fターム(参考)】
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB15
5H619BB24
5H619PP02
(57)【要約】
【課題】鎖状クラスタをモータに適用可能な磁性流体モータを提供する。
【解決手段】磁性流体モータは、複数のティースのそれぞれに巻回されたコイルを有し、回転磁界を生成可能に設けられた第1磁界発生部と、複数のティースのそれぞれに巻回されたコイルを有し、回転磁界を生成可能であって、第1磁界発生部に対向するように設けられた第2磁界発生部と、第1磁界発生部と第2磁界発生部との間で、回転軸と共に回転可能に設けられたロータと、第1磁界発生部と第2磁界発生部との間の空間内であって、ロータの周囲に設けられた磁性流体と、を備える。ロータには、第1磁界発生部及び第2磁界発生部に対応する周方向の領域に、周期的に磁性体部が設けられ、回転磁界によって、第1磁界発生部と磁性体部との間、及び磁性体部と第2磁界発生部との間に、磁性流体の鎖状クラスタが生成され、鎖状クラスタが回転磁界と共に移動することによりロータを回転駆動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティース(1212)のそれぞれに巻回されたコイル(1213)を有し、回転磁界を生成可能に設けられた第1磁界発生部(121)と、
複数のティース(1222)のそれぞれに巻回されたコイル(1223)を有し、回転磁界を生成可能であって、前記第1磁界発生部(121)に対向するように設けられた第2磁界発生部(122)と、
前記第1磁界発生部(121)と前記第2磁界発生部(122)との間で、回転軸(110)と共に回転可能に設けられたロータ(160)と、
前記第1磁界発生部(121)と前記第2磁界発生部(122)との間の空間内であって前記ロータ(160)の周囲に設けられた磁性流体(150)と、
を備える磁性流体モータであって、
前記ロータ(160)には、前記第1磁界発生部(121)及び前記第2磁界発生部(122)に対応する周方向の領域に、周期的に磁性体部(161)が設けられ、
前記回転磁界によって、前記第1磁界発生部(121)と前記磁性体部(161)との間、及び前記磁性体部(161)と前記第2磁界発生部(122)との間に、前記磁性流体(150)の鎖状クラスタ(151)が生成され、
前記鎖状クラスタ(151)が前記回転磁界と共に移動することにより前記ロータ(160)を回転駆動する、
磁性流体モータ。
【請求項2】
前記ロータ(160)には、前記周方向の領域に、前記磁性体部(161)と非磁性体部(162)とが交互に設けられる、
請求項1に記載の磁性流体モータ。
【請求項3】
前記第1磁界発生部(121)の前記コイル(1213)と前記第2磁界発生部(122)の前記コイル(1223)とは、それぞれ3相に巻回され、3相交流電流を供給されると3相の回転磁界を生成する、
請求項1に記載の磁性流体モータ。
【請求項4】
前記第1磁界発生部(121)と前記第2磁界発生部(122)とに非回転磁界を形成し、前記鎖状クラスタ(151)により前記ロータ(160)の回転を停止させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性流体モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性流体モータに関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に磁性体粒子が分散された磁性流体に対して磁場を加えると、磁性体粒子が互いに引き合って凝集し、鎖状のクラスタ(以下、「鎖状クラスタ」と言う)を形成することが知られている。移動体と固定体との間に磁性流体を注入しておき、移動体と固定体との間に磁場を加えると、移動体と固定体との間で鎖状クラスタの崩壊と形成とが繰り返され、抵抗力を生じる。この抵抗力が磁性流体によるブレーキ力である。このような磁性流体の使用方法は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-180939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような磁性流体において、鎖状クラスタによる抵抗力はブレーキに利用されるのみであった。このため、磁性流体を能動的な用途、例えばモータの駆動に適用することが望まれていた。
【0005】
本発明は、磁性流体による鎖状クラスタをモータに適用可能な磁性流体モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の磁性流体モータは、複数のティースのそれぞれに巻回されたコイルを有し、回転磁界を生成可能に設けられた第1磁界発生部と、複数のティースのそれぞれに巻回されたコイルを有し、回転磁界を生成可能であって、第1磁界発生部に対向するように設けられた第2磁界発生部と、第1磁界発生部と第2磁界発生部との間で、回転軸と共に回転可能に設けられたロータと、第1磁界発生部と第2磁界発生部との間の空間内であって、ロータの周囲に設けられた磁性流体と、を備える磁性流体モータであって、ロータには、第1磁界発生部及び第2磁界発生部に対応する周方向の領域に、周期的に磁性体部が設けられ、回転磁界によって、第1磁界発生部と磁性体部との間、及び磁性体部と第2磁界発生部との間に、磁性流体の鎖状クラスタが生成され、鎖状クラスタが回転磁界と共に移動することによりロータを回転駆動する。
【0007】
ロータには、周方向の領域に、磁性体部と非磁性体部とが交互に設けられる構成であってもよい。
【0008】
第1磁界発生部のコイルと第2磁界発生部のコイルとは、それぞれ3相に巻回され、3相交流電流を供給されると3相の回転磁界を生成するものであってもよい。
【0009】
第1磁界発生部と第2磁界発生部とに非回転磁界を形成し、鎖状クラスタによりロータの回転を停止させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁性流体モータによれば、磁性流体の鎖状クラスタが回転磁界と共に移動することによりロータを回転駆動するため、磁性流体による鎖状クラスタをモータに適用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る磁性流体モータの概略構成を示す一部破断側面図である。
図2図1のII-II線における断面を示す断面図である。
図3図1のIII-III線における断面を示す断面図である。
図4図1のIV-IV線における断面を示す断面図である。
図5】実施の形態1に係る磁性流体モータに供給される3相交流電流を示す説明図である。
図6】実施の形態1に係る磁性流体モータに供給される3相交流電流による磁界発生部のコイルに生じる磁界の向きを示す説明図である。
図7】実施の形態1に係る磁性流体モータの断面図において鎖状クラスタを示す説明図である。
図8】実施の形態1に係る磁性流体モータに3相交流電流が供給された際の磁界発生部とロータの磁性体部と鎖状クラスタとの位置関係を展開した状態で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、磁性流体モータの実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
実施の形態1.
はじめに、図1図4を用いて、実施の形態1における磁性流体モータ100の基本的な構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る磁性流体モータの概略構成を示す一部破断側面図である。図2は、図1のII-II線における断面を示す断面図である。図3は、図1のIII-III線における断面を示す断面図である。図4は、図1のIV-IV線における断面を示す断面図である。
【0014】
図1及び図2において、磁性流体モータ100は、主に、ケース101と、回転軸110と、磁界発生部120と、シール部140と、磁性流体150と、ロータ160とを備えている。
【0015】
ケース101は、円筒形状の磁性流体モータ100の外周を覆うものであり、磁性流体モータ100の一方の端部を形成する円形の第1蓋部101aと、磁性流体モータ100の他方の端部を形成する円形の第2蓋部101bと、第1蓋部101aと第2蓋部101bとの間の外周面を覆う筒面部101cとにより構成されている。
【0016】
回転軸110は、軸受102及び103を介してケース101に対して回転可能に支持されている。回転軸110は、少なくとも一端が第2蓋部101bから突出するように構成され、磁性流体モータ100により生じた回転を外部に出力する。
【0017】
磁界発生部120は、第1磁界発生部121と、第2磁界発生部122とを備えている。
第1磁界発生部121は、ステータ1211と、ティース1212と、コイル1213を有し、回転磁界を生成可能に設けられている。ステータ1211は、第1蓋部101aに接するように設けられている。
ステータ1211には、図3に示すように、UVWの3相に対応して、U1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相のそれぞれに、1対のティース1212(1212U,1212V,1212W)が設けられている。
そして、U1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相の1対のティース1212(1212U,1212V,1212W)には、それぞれにコイル1213(1213U,1213V,1213W)が巻回されている。
【0018】
第2磁界発生部122は、ステータ1221と、ティース1222と、コイル1223を有し、回転磁界を生成可能に設けられている。ステータ1221は、第2蓋部101bに接するように設けられている。
ステータ1221には、図3と同様に、UVWの3相に対応して、U1相,V1相,W1相,U2相,V2相,W2相のそれぞれに1対のティース1222が設けられている。そして、1対のティース1222には、図3と同様に、それぞれにコイル1223が巻回されている。
【0019】
シール部140は、第1磁界発生部121と第2磁界発生部122との間の空間内に磁性流体150を収容すると共に、磁性流体150を外部に漏出させないようにするもので、第1磁界発生部121側のシール部140aと、第2磁界発生部122側のシール部140bを備えている。
【0020】
磁性流体150は、液体中に分散状態の磁性体粒子を有するもので、磁場に応じて磁性体粒子が互いに引き合って凝集することで鎖状クラスタを形成する性質を有している。磁性流体150は、シール部140aとシール部140bと筒面部101cとにより囲まれた空間内に収容され、ロータ160を覆っている。
【0021】
ロータ160は、第1磁界発生部121と第2磁界発生部122との間で磁性流体150に囲まれた状態で、回転軸110と共に回転可能に設けられている。ロータ160には、図4の(a)及び(b)及びに示すように、第1磁界発生部121及び第2磁界発生部122に対応する周方向の領域に、所定の角度間隔で磁性体部161と非磁性体部162とが交互に設けられている。なお、ロータ160の回転方向に沿う方向を「周方向」とする。
ロータ160において、磁性体部161と非磁性体部162とが交互に存在する領域以外の領域は、図4の(a)のように磁性体であってもよいし、図4の(b)のように非磁性体であってもよい。
【0022】
図5を参照して、磁性流体モータ100の磁界発生部120に供給される3相交流電流を説明する。図5は、実施の形態1に係る磁性流体モータ100に供給される3相交流電流を示す説明図である。
【0023】
図5において、横軸は電流の位相角(0°~360°)を示し、縦軸は電流の最大値を1及び-1に正規化して示している。U相、V相、W相のそれぞれの電流は、120°の位相差を有し、正弦波状に増減する3相交流電流である。
実施の形態1の磁性流体モータ100において、ロータ160の周囲の磁性流体150は、電流の正負の向きに関係なく、電流値が最大となるタイミングで磁性体粒子が最も凝集し、鎖状クラスタを形成する。
このため、図5の3相交流電流の場合、位相角0°でU(図5の(a))、位相角60°で-W(図5の(b))、位相角120°でV(図5の(c))、位相角180°で-U(図5の(d))、位相角240°でW(図5の(e))、位相角300°で-V(図5の(f))で、鎖状クラスタが最も強力に形成される。
【0024】
図6を参照して、磁性流体モータ100に供給される3相交流電流によって第1磁界発生部121の各コイルに生じる磁界の向きを説明する。
図6は、実施の形態1に係る磁性流体モータ100に供給される3相交流電流による第1磁界発生部121のコイルに生じる磁界の向きを示す説明図である。なお、図6には示していないが、第2磁界発生部122のコイルに生じる磁界の向きは、第1磁界発生部121のコイルに生じる磁界の向きと逆、すなわち相補的に構成されている。
【0025】
図6において、丸の中に黒丸の記号は紙面垂直方向手前向きの磁界を示し、丸の中にXの記号は紙面垂直方向奥向きの磁界を示している。ここで、記号の大きさは、図5の電流値に応じた磁界の強さを示している。なお、図6の(a)~(f)に示す磁界は、図5の(a)~(f)に示した電流にそれぞれ対応している。
【0026】
図6の(a)は、3相交流電流の位相角0°において電流値U最大(図5の(a))における、U1相及びU2相で最大となる磁界を表している。図6の(b)は、3相交流電流の位相角60°において電流値-W最大(図5の(b))における、W1相及びW2相で最大となる磁界を表している。図6の(c)は、3相交流電流の位相角120°において電流値V最大(図5の(c))における、V1相及びV2相で最大となる磁界を表している。図6の(d)は、3相交流電流の位相角180°において電流値-U最大(図5の(d))における、U1相及びU2相で最大となる磁界を表している。図6の(e)は、3相交流電流の位相角240°において電流値W最大(図5の(e))における、W1相及びW2相で最大となる磁界を表している。図6の(f)は、3相交流電流の位相角300°において電流値-V最大(図5の(f))における、V1相及びV2相で最大となる磁界を表している。
【0027】
磁界発生部120のいずれかコイルにおいて3相交流電流の電流値が最大となり、かつそのコイルに挟まれた位置においてロータ160が磁性体部161であった場合、磁性流体150において図7のような鎖状クラスタ151が形成される。図7は、実施の形態1に係る磁性流体モータ100の断面図において鎖状クラスタ151を示す説明図である。
実施の形態1の磁性流体モータ100において、磁界発生部120に3相交流電流が供給されて3相の回転磁界が発生するため、鎖状クラスタ151も回転磁界と共に回転移動する。
【0028】
以下、図8を参照して、回転磁界と共に移動する鎖状クラスタ151により、ロータ160が回転駆動される様子を説明する。図8は、実施の形態1に係る磁性流体モータ100に3相交流電流が供給された際の磁界発生部120(第1磁界発生部121と第2磁界発生部122)とロータ160の磁性体部161と鎖状クラスタ151との位置関係を展開した状態で示す説明図である。ここで、展開とは、磁界発生部120とロータ160とを外周360°から見た様子を平面に表した状態を意味する。
【0029】
以下の図8の説明において、第1磁界発生部121と第2磁界発生部122のU相、V相、及びW相の位置を、単に、U相位置、V相位置、及びW相位置と呼ぶ。ロータ160において、図4に示した周方向に存在する4つの磁性体部161を、磁性体R1~磁性体R4と呼ぶ。U,V,W相位置のコイル1213及び1223を、U,V,W相のコイルと呼ぶ。図8において、第1磁界発生部121と第2磁界発生部122とのいずれかの相に最大の電流が供給された部分をクロスハッチングで示す。
【0030】
図8の(a)において、U相位置に磁性体R1と磁性体R3とが存在し、V相位置とW相位置との両方に掛かる中間の位置に磁性体R2と磁性体R4とが存在している。
図8の(a)において、U相位置のコイルに3相交流電流の最大の電流が供給される(図5及び図6の(a)参照)と、U相位置において第1磁界発生部121と磁性体R1及び磁性体R3と間、並びに、第2磁界発生部122と磁性体R1及び磁性体R3と間に鎖状クラスタ151が発生する。なお、この状態を、U相位置において磁性体R1と磁性体R3とに鎖状クラスタ151が発生すると言う。以下、V相領域とW相領域についても同様である。
【0031】
図8の(b1)において、ロータ160は、図8の(a)と同じ位置にある。図8の(b1)において、W相位置のコイルに3相交流電流の最大の電流が供給される(図5及び図6の(b)参照)と、W相位置において磁性体R2の半分と磁性体R4の半分の領域に鎖状クラスタ151が発生する。ここで、鎖状クラスタ151がW相位置の全領域で発生しようとするため、磁性体R2と磁性体R4をW相位置に引き寄せようとする図中右向きの力が発生する。
この結果、ロータ160が回転し、図8の(b2)においてW相位置に磁性体R2と磁性体R4とが存在するようになり、W相位置の全領域において磁性体R2と磁性体R4とに鎖状クラスタ151が発生する。なお、ロータ160の回転に伴い、U相位置とV相位置との両方に掛かる中間の位置に磁性体R1と磁性体R3とが存在するようになる。
【0032】
図8の(c1)において、ロータ160は、図8の(b2)と同じ位置にある。図8の(c1)において、V相位置のコイルに3相交流電流の最大の電流が供給される(図5及び図6の(c)参照)と、V相位置において磁性体R1の半分と磁性体R3の半分の領域に鎖状クラスタ151が発生する。ここで、鎖状クラスタ151がV相位置の全領域で発生しようとするため、磁性体R1と磁性体R3をV相位置に引き寄せようとする図中右向きの力が発生する。
この結果、ロータ160が回転し、図8の(c2)においてV相位置に磁性体R1と磁性体R3とが存在するようになり、V相位置の全領域において磁性体R1と磁性体R3とに鎖状クラスタ151が発生する。なお、ロータ160の回転に伴い、W相位置とU相位置との両方に掛かる中間の位置に磁性体R2と磁性体R4とが存在するようになる。
【0033】
図8の(d1)において、ロータ160は、図8の(c2)と同じ位置にある。図8の(d1)において、U相位置のコイルに3相交流電流の最大の電流が供給される(図5及び図6の(d)参照)と、U相位置において磁性体R4の半分と磁性体R2の半分の領域に鎖状クラスタ151が発生する。ここで、鎖状クラスタ151がU相位置の全領域で発生しようとするため、磁性体R2と磁性体R4をU相位置に引き寄せようとする図中右向きの力が発生する。
この結果、ロータ160が回転し、図8の(d2)においてU相位置に磁性体R4と磁性体R2とが存在するようになり、U相位置の全領域において磁性体R4と磁性体R2とに鎖状クラスタ151が発生する。なお、ロータ160の回転に伴い、V相位置とW相位置との両方に掛かる中間の位置に磁性体R1と磁性体R3とが存在するようになる。
【0034】
図8の(e1)において、ロータ160は、図8の(d2)と同じ位置にある。図8の(e1)において、W相位置のコイルに3相交流電流の最大の電流が供給される(図5及び図6の(e)参照)と、W相位置において磁性体R1の半分と磁性体R3の半分の領域に鎖状クラスタ151が発生する。ここで、鎖状クラスタ151がW相位置の全領域で発生しようとするため、磁性体R1と磁性体R3をW相位置に引き寄せようとする図中右向きの力が発生する。
この結果、ロータ160が回転し、図8の(e2)においてW相位置に磁性体R1と磁性体R3とが存在するようになり、W相位置の全領域において磁性体R1と磁性体R3とに鎖状クラスタ151が発生する。なお、ロータ160の回転に伴い、U相位置とV相位置との両方に掛かる中間の位置に磁性体R2と磁性体R4とが存在するようになる。
【0035】
図8の(f1)において、ロータ160は、図8の(e2)と同じ位置にある。図8の(f1)において、V相位置のコイルに3相交流電流の最大の電流が供給される(図5及び図6の(f)参照)と、V相位置において磁性体R4の半分と磁性体R2の半分の領域に鎖状クラスタ151が発生する。ここで、鎖状クラスタ151がV相位置の全領域で発生しようとするため、磁性体R2と磁性体R4をV相位置に引き寄せようとする図中右向きの力が発生する。
この結果、ロータ160が回転し、図8の(f2)においてV相位置に磁性体R4と磁性体R2とが存在するようになり、V相位置の全領域において磁性体R4と磁性体R2とに鎖状クラスタ151が発生する。なお、ロータ160の回転に伴い、W相位置とU相位置との両方に掛かる中間の位置に磁性体R1と磁性体R3とが存在するようになる。
【0036】
以上のようにして、磁性流体モータ100の磁界発生部120に3相交流電流を供給することで、回転磁界と共に移動する鎖状クラスタ151がロータ160の周囲に発生し、ロータ160を回転駆動する。すなわち、実施形態1の磁性流体モータ100によれば、鎖状クラスタ151をモータに適用することが可能になる。
【0037】
磁性流体モータ100において、磁界発生部120への3相交流の供給を停止し、UVWのうちのいずれかの相にのみ直流電流を供給することで、磁界発生部120に非回転磁界を形成し、鎖状クラスタ151を同一の場所に留め、ロータ160の回転を停止させることができる。
【0038】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1に説明した磁性流体モータ100は、複数のティース1212,1222のそれぞれに巻回されたコイル1213,1223を有し、回転磁界を生成可能に設けられた第1磁界発生部121と、複数のティース1212,1222のそれぞれに巻回されたコイル1213,1223を有し、回転磁界を生成可能であって、第1磁界発生部121に対向するように設けられた第2磁界発生部122と、第1磁界発生部121と第2磁界発生部122との間で、回転軸110と共に回転可能に設けられたロータ160と、第1磁界発生部121と第2磁界発生部122との間の空間内であって、ロータ160の周囲に設けられた磁性流体150と、を備える。ここで、ロータ160には、第1磁界発生部121及び第2磁界発生部122に対応する周方向の領域に、周期的に磁性体部161が設けられ、回転磁界によって、第1磁界発生部121と磁性体部161との間、及び磁性体部161と第2磁界発生部122との間に、磁性流体150の鎖状クラスタ151が生成され、鎖状クラスタ151が回転磁界と共に移動することによりロータ160を回転駆動する。よって、鎖状クラスタ151を磁性流体モータ100に適用することが可能になる。
【0039】
ロータ160には、周方向の領域に磁性体部161と非磁性体部162とが交互に設けられる。このため、鎖状クラスタ151が生じる領域と鎖状クラスタ151が生じない領域とが形成され、鎖状クラスタ151が効果的にロータ160を回転駆動することができる。
【0040】
第1磁界発生部121のコイル1213と第2磁界発生部122のコイル1223とは、それぞれ3相に巻回され、3相交流電流を供給されると3相の回転磁界を生成する。このため、回転磁界と共に鎖状クラスタ151が移動することにより、ロータ160を回転駆動することができる。
【0041】
第1磁界発生部121と第2磁界発生部122とに非回転磁界を形成すると、非回転磁界と共に鎖状クラスタ151が停止することにより、ロータ160の回転を停止させることができる。
【符号の説明】
【0042】
100 磁性流体モータ、101 ケース、101a 第1蓋部、101b 第2蓋部、101c 筒面部、102,103 軸受、110 回転軸、121 第1磁界発生部、122 第2磁界発生部、140,140a,140b シール部、150 磁性流体、151 鎖状クラスタ、160 ロータ、161 磁性体部、162 非磁性体部、
1211,1221 ステータ、1212,1212U,1212V,1212W,1222 ティース、1213,1213U,1213V,1213W,1223 コイル。
図1
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