IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光電式スポット型感知器 図1
  • 特開-光電式スポット型感知器 図2
  • 特開-光電式スポット型感知器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049506
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】光電式スポット型感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G08B17/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155760
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】内田 真道
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
(72)【発明者】
【氏名】水谷 顕治
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AB01
5C085BA33
5C085CA07
5C085CA14
5C085EA31
(57)【要約】
【課題】感度確認作業を効率的に実施することができる光電式スポット型感知器を得る。
【解決手段】光を出射する発光部と、発光部から出射された光が煙により乱反射した光を受光する受光部と、受光部による受光量があらかじめ設定された検出閾値以上となったことで煙の発生を感知する感知部とを備えた光電式スポット型感知器であって、外部から感度確認指令を受信した場合に、通常の感度確認期間よりも短い期間としてあらかじめ設定された仮感度確認期間において感知部による感度確認を実行し、感度確認指令に対する返答として感度確認結果を出力する感度確認部をさらに備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光部と、
前記発光部から出射された光が煙により乱反射した光を受光する受光部と、
前記受光部による受光量があらかじめ設定された検出閾値以上となったことで煙の発生を感知する感知部と
を備えた光電式スポット型感知器であって、
外部から感度確認指令を受信した場合に、通常の感度確認期間よりも短い期間であらかじめ設定された仮感度確認期間において前記感知部による感度確認を実行し、感度確認指令に対する返答として感度確認結果を出力する感度確認部
をさらに備える光電式スポット型感知器。
【請求項2】
前記感知部は、前記通常の感度確認期間において、実際の煙検出レベルよりは低い値として設定された感度故障検出レベル以上となる感知レベルの発生回数が、あらかじめ設定された判定回数以上となった場合には感度故障と判定し、
前記感度確認部は、前記感度確認指令を受信することで仮感度確認期間が設定された場合には、前記発生回数の初期値を0よりも大きく前記判定回数よりも小さい値に設定して前記感知部による感度確認を実行させ、前記仮感度確認期間において前記感度故障検出レベル以上となる感知レベルの発生回数が前記判定回数以上となった場合には感度故障と判定し、前記感度確認結果として出力する
請求項1に記載の光電式スポット型感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災感知器に関するものであり、特に、状況に応じた時間内で感度確認結果を得ることのできる光電式スポット型感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災報知システムにおいては、火災を検出するために、種々のタイプの火災感知器が用いられている。具体的なタイプとしては、熱感知器、炎感知器、煙感知器が挙げられる。また、煙感知器には、光電式分離型感知器および光電式スポット型感知器が含まれる。
【0003】
現場に設置された光電式スポット型感知器の光学台内部が埃で汚れた場合には、煙の発生を検出する感度が設置時当初からずれてしまい、正確な煙検出が保証されない。そこで、発生した汚れを除去するためには、掃除機、エアダスターなどにより掃除が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-156127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
光電式スポット型感知器は、設置現場における1日の温度変化、空調などの影響により光学台内部の埃が移動することを考慮して、例えば、12時間の出力値変化を確認して、感度設定に問題が生じないことを確認している。
【0006】
従って、清掃完了後において、清掃の効果により感度設定に問題が生じないかがわかるのは、12時間後となってしまい、昼間に清掃作業が完了した場合にも、清掃が不十分で感度に問題があれば、夜中に再び誤検出が発生してしまうことになる。
【0007】
また、清掃作業後に限らず、状況に応じて、簡易的な感度確認結果を決められた時間内で得たいことも考えられる。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、感度確認作業を効率的に実施することができる光電式スポット型感知器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る火災感知器は、光を出射する発光部と、発光部から出射された光が煙により乱反射した光を受光する受光部と、受光部による受光量があらかじめ設定された検出閾値以上となったことで煙の発生を感知する感知部とを備えた光電式スポット型感知器であって、外部から感度確認指令を受信した場合に、通常の感度確認期間よりも短い期間としてあらかじめ設定された仮感度確認期間において感知部による感度確認を実行し、感度確認指令に対する返答として感度確認結果を出力する感度確認部をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、感度確認作業を効率的に実施することができる光電式スポット型感知器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1における火災感知器を含む火災報知システムの全体構成図である。
図2】本開示の実施の形態1における光電式スポット型感知器の清掃作業に関する説明図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る光電式スポット型感知器において、感度確認作業の効率化を実現する構成を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の光電式スポット型感知器の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る光電式スポット型感知器は、状況に応じた時間内で、簡易的な感度確認結果を得ることができる構成を備えたことを技術的特徴とするものである。
【0013】
実施の形態1.
まず始めに、火災感知器を含むシステムの全体像について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1における火災感知器を含む火災報知システムの全体構成図である。具体的には、図1に示した火災報知システムは、火災受信機10および複数の火災感知器を主な構成要素として含んでいる。
【0014】
火災受信機10は、信号線SGを介して、アドレッサブル発信機20、火災感知器31、32、感知器用中継器40、および防排煙制御用中継器50と接続されている。
【0015】
感知器用中継器40には、火災感知器が、複数台接続されている。図1では、4台の火災感知器41~44を例示している。また、防排煙制御用中継器50には、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54が接続されている。
【0016】
ここで、火災感知器31、32、および火災感知器41~44は、あらかじめ設定されたそれぞれの火災監視エリアにおいて火災の発生を感知する複数の火災感知器に相当する。複数の火災感知器により感知器群が構成される。
【0017】
なお、火災感知器41~44は、いわゆる一般型の感知器としてもよく、感知器用中継器40にアドレスが付与されており、火災受信機10と感知器用中継器40とで通信を行っている。
【0018】
また、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果と連動して動作し、火災、煙等の拡散を防止するために機能する複数の端末設備に相当する。複数の端末設備により、端末設備群が構成される。
【0019】
複数の火災感知器のそれぞれは、個々の火災感知器を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。そして、複数の火災感知器のそれぞれは、自身に割り付けられたアドレス情報を含めた情報として、火災関連情報を火災受信機10に対して送信することができる。一方、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の火災感知器に対して必要な情報を送信することができる。
【0020】
また、複数の端末設備のそれぞれにも、個々の端末設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の端末設備を稼働させる指令を送信することができる。
【0021】
このような構成により、火災受信機10は、あらかじめ決められた種々の火災監視エリアに設置されている複数の火災感知器、およびアドレッサブル発信機20から火災関連情報を収集する。そして、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、火災警報を行い、端末設備群を作動させることができる。
【0022】
なお、端末設備群に含まれているそれぞれの端末設備は、どの火災感知器の感知結果と連動して動作するかがあらかじめ規定されている。例えば、複数の火災感知器と複数の端末設備との連動動作の対応関係を連動表としてあらかじめ設定しておくことで、火災受信機10は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果に基づいて、連動表から適切な端末設備を特定し、連動動作させることができる。
【0023】
また、図示は省略しているが、火災受信機10は、収集した火災関連情報に基づいて、移報信号を出力し、消火設備を起動して消火作業を開始したり、非常放送装置により火災報知あるいは避難誘導を行ったり、ネットワークを介して上位装置に対して火災関連情報を伝送したりすることができる。
【0024】
火災感知器において、検出精度の劣化を防止し、非火災報および失報が発生することをなくす目的で、清掃が行われる。そこで、以下では、火災感知器の具体例として、光電式スポット型感知器100を挙げ、光電式スポット型感知器100固有の感度確認作業に関する効率改善策について詳細に説明する。
【0025】
図2は、本開示の実施の形態1における光電式スポット型感知器100の清掃作業に関する説明図である。図2に示すように、既存の光電式スポット型感知器100では、光学台内部の発光部101から照射された光が煙による散乱光として受光部102で受光される受光量に基づいて火災判定を行っている。
【0026】
光電式スポット型感知器100では、無煙状態における、工場設定時あるいは現場設置時の受光レベルと、監視時の受光レベルとを比較することで、発光部101、受光部102、および光学台内部の汚れを判定している。
【0027】
掃除機やエアースプレーで光学台内部の埃を除去することで、清掃作業が行われているが、このような清掃作業の際に、光学台内部の埃が舞い、散乱光が増加するおそれがある。
【0028】
また、上述したように、光電式スポット型感知器100は、設置現場における1日の温度変化、空調などの影響により光学台内部の埃が移動することを考慮して、例えば12時間の出力値変化を確認して、感度設定に問題が生じないことを確認しているのが現状である。従って、清掃完了後において、清掃の効果により感度設定に問題が生じないかがわかるのは12時間後となってしまう。
【0029】
本実施の形態1に係る光電式スポット型感知器100は、より短時間で、簡易的に感度確認を実施でき、感度に問題がある場合には、清掃作業を再度、迅速に実施し、感度確認作業の効率化を実現する構成を備えている点に技術的特徴を有している。そこで、このような技術的特徴を備えた本実施の形態1に係る光電式スポット型感知器100について、図3を用いて詳細に説明する。
【0030】
図3は、本開示の実施の形態1に係る光電式スポット型感知器100において、感度確認作業の効率化を実現する構成を示した機能ブロック図である。本実施の形態1に係る光電式スポット型感知器100は、発光部101、受光部102、および感知部103を備えるとともに、さらに感度確認部104を備えている。感度確認部104には、後述する感度確認期間を計時(カウント)するためのタイマが設けられる。
【0031】
発光部101は、先の図2に示したように、光学台内部に設置され、煙の発生を検知する目的で光を出射する。一方、受光部102は、先の図2に示したように、光学台内部に設置され、発光部101から出射された光が煙により乱反射した光を受光する。
【0032】
感知部103は、受光部102による受光量が、あらかじめ設定された検出閾値以上となったことで煙の発生を感知する。
【0033】
本実施の形態1における感度確認部104は、外部から感度確認指令を受信した場合に、通常の感度確認期間よりも短い期間としてあらかじめ設定された仮感度確認期間において、感知部による感度確認を簡易的に実行する機能を備えている。すなわち、本実施の形態1に係る光電式スポット型感知器100は、このような機能を備えた感度確認部104をさらに備えている点に技術的特徴を有している。
【0034】
現状では、1日の温度変化、空調の影響による光学台内部の埃の移動、などを考慮して、「通常の感度確認期間」内において、感知部103によって感知レベル(センサ出力ともいう)をモニタする。そして、感知部103は、「通常の感度確認期間」内において、実際の煙検出レベルよりは低い値として設定された「感度故障検出レベル」以上となる感知レベルの発生回数が、あらかじめ設定された判定回数以上となった場合には、感度故障と判定している。
【0035】
通常マイコンは電源投入時にRAMがクリアされるため、感度故障を判定するためのカウンタも0からスタートする。従って、感知器の清掃作業後の感度確認においても、現状では、「通常の感度確認期間」内にあらかじめ設定された判定回数以上の感知レベルとならないかが判定されている。この結果、「通常の感度確認期間」が12時間として設定されている場合であって、1時間に1回、センサの出力値が、故障レベルに達しているかを判定し、判定回数が12回とされている場合には清掃作業による効果が12時間後にならないと判明しないこととなる。
【0036】
そこで、感知器の清掃作業を行う際には、感知器の電源を切っているので、感知器清掃終了後の電源投入時に次のようにすることが考えられる。感知器の電源投入時には、感度故障検出レベルに達した回数をカウントする発生回数の初期値を、0よりも大きく、かつ、判定の閾値である12回よりわずかに少ない回数、例えば11回になるように設定し、感度確認部104により、仮感度確認期間における感知部で簡易的に実行される感度確認結果を監視する。
【0037】
換言すると、感度確認部104は、外部から感度確認指令を受信することで仮感度確認期間が設定された場合には、発生回数の初期値を0よりも大きく判定回数よりも小さい値に設定して感知部103による感度確認を実行させる。そして、感度確認部104は、仮感度確認期間において感度故障検出レベル以上となる感知レベルの発生回数が判定回数以上となった場合には感度故障と判定し、判定した感度確認結果を感度確認指令に対する返答として出力する。
【0038】
このようにすることで、1時間に1回、センサ出力を監視する場合であれば、疑似的に11時間分の出力値の監視を済ませておくことが可能となり、残り1回、センサ出力が感度故障検出レベルに達していることを判定できれば、直ちに感度故障を示す異常信号を出力することが可能となる。
【0039】
そこで、本実施の形態1に係る光電式スポット型感知器100は、上述したように、少なくとも通常の感度確認期間よりも短い期間としてあらかじめ設定された仮感度確認期間において、感知部103による感度確認を簡易的に実行することができる感度確認部104をさらに備えている。
【0040】
感度確認部104は、外部から感度確認指令を受信したタイミングをトリガとして、簡易的な感度確認を実行する機能を有している。例えば、清掃作業者は、清掃作業が完了した際に、この感度確認指令を感度確認部104に与えることで、感度確認を実行することができる。
【0041】
清掃作業者は、光電式スポット型感知器100に設けられた専用のスイッチを手動操作することで感度確認指令を生成することができる。あるいは、清掃作業者は、火災受信機10または図示しない試験器から光電式スポット型感知器100に対して送信される信号として、感度確認指令を生成することができる。
【0042】
感度確認部104には、通常の感度確認期間よりも短い期間である仮感度確認期間、および通常の判定回数よりも少ない回数である仮判定回数が、あらかじめ設定されている。例えば、仮感度確認期間として1時間、仮判定回数として1回を設定することができる。
【0043】
感度確認部104は、感度確認指令を受信した場合には、仮感度設定期間内において、感知部103による感知レベルをモニタする。そして、感知部103は、仮感度確認期間」内において、感度故障検出レベル以上となる感知レベルが仮判定回数以上となった場合には、感度故障と判定する。
【0044】
さらに、感度確認部104は、感度確認指令を受信した際の判定結果を、感度確認指令に対する返答である感度確認結果として出力する。例えば、感度確認部104は、感度故障と判定した場合には、感知器本体の確認灯に対して感度故障と判定したことを示す感度確認結果を識別表示する、あるいは、火災受信機10に対して感度故障と判定したことを示す感度確認結果を送信することができる。
【0045】
なお、上述した一例では、通常の感度確認期間の12分の1の値として仮感度確認期間を設定し、通常の判定回数の12分の1の値として仮判定回数を設定したが、仮感度確認期間および仮判定回数の設定値はこれに限定されない。光電式スポット型感知器100の設置環境、清掃作業により停止させることができる時間などに応じて適切な値として仮感度確認期間および仮判定回数を個別に設定することが可能である。
【0046】
また、感度確認部104は、感度故障検出レベルの代わりに、清掃作業後の感度確認用として、仮感度故障検出レベルを用いることもできる。仮感度故障検出レベルの設定値に関しても、光電式スポット型感知器100の設置環境、清掃作業により停止させることができる時間などに応じて適切な値を用いることができる。
【0047】
また、図3の構成を用いることで、清掃作業後に限らず、所望のタイミングで感度確認指令を外部から与えることで、簡易的に感度確認を行うことができる。さらに、仮感度確認期間、仮判定回数、および仮感度故障検出レベルを適切な値として設定することで、状況に応じた時間内で、簡易的な感度確認結果を得ることができる。
【0048】
以上のように、実施の形態1によれば、外部から感度確認指令を受信した場合に、通常の感度確認期間よりも短い期間としてあらかじめ設定された仮感度確認期間において、感知部による感度確認を実行することができる感度確認部を備えている。この結果、状況に応じた時間内で、簡易的な感度確認結果を得ることができる光電式スポット型感知器を実現することができる。
【0049】
本実施形態では、火災感知器として、光電式の煙感知器を例に説明したが、それ以外の火災感知器、例えば、熱感知器や炎感知器に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 火災受信機、100 光電式スポット型感知器、101 発光部、102 受光部、103 感知部、104 感度確認部。
図1
図2
図3