(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049509
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】電圧測定装置及びこの電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G01R19/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155763
(22)【出願日】2022-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】515228287
【氏名又は名称】ゴイク電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 聡
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AB03
2G035AC01
2G035AD56
(57)【要約】
【課題】高電圧の微小変動を高精度で測定することを可能とすることである。
【解決手段】電圧測定装置10は、複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する電池パック12の電圧を測定する直流電圧計14と、所定の電圧よりも低い電圧を出力し、直流電圧計14の基準電位として出力電圧を供給するDC-DCコンバータ16と、を備えることを特徴とする。この際、電池パック12の開放電圧の90%以上~100%未満となるようにDC-DCコンバータ16の出力電圧を設定することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、
前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、
を備えることを特徴とする電圧測定装置。
【請求項2】
複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、
前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、
を備える電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法であって、
前記電池パックの開放電圧の90%以上~100%未満となるように前記電圧レギュレータの前記出力電圧を設定することを特徴とする電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法において、
前記電池パックの差電圧が前記所定の電圧の1%未満である場合に、
前記電圧レギュレータの出力電圧を前記電池パックの開放電圧の99%以上~100%未満に設定することを特徴とする電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧測定装置及びこの電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池などの二次電池を含む電池パックの劣化診断を行うために、電池パックの開放電圧と、この電池パックに電流を流した際の電池電圧との差電圧を測定することがある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、高電圧印加部と接地電位部との間に配置され、前記高電圧印加部および前記接地電位部の少なくとも一方と電気的に絶縁されたポッケルス素子と、このポッケルス素子の前記高電圧印加部と対向する面および前記接地電位部と対向する面にそれぞれ電極を備えた一対の電極と、この一対の電極に挟まれた前記ポッケルス素子の内部を透過する光を出射する光源と、この光源と前記ポッケルス素子との間に配置され、前記光源から出射された光を偏光する偏光子と、前記ポッケルス素子を透過した光の光強度を検出する光検出器と、この光検出器と前記ポッケルス素子との間に配置された検光子と、前記一対の電極に直流電圧を印加する直流電源と、前記光検出器および前記直流電源に接続され、前記光検出器で検出された光強度に基づいて前記直流電源の出力電圧を算出するフィードバック回路と、このフィードバック回路で算出された前記出力電圧から前記ポッケルス素子の電界強度を演算すると共に、前記高電圧印加部に印加された電圧を演算する演算部とを備えたことを特徴とする電圧測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にリチウムイオン電池の定格電圧は約3.7Vであり、満充電電圧が約4.2Vであり、終止電圧が約2.8Vとされている。電池パックは、例えば、リチウムイオン電池を96個直列にして使用することがあるため、300V~400Vとなることがある。
【0006】
例えば、電池パックの開放電圧が400Vの場合、電池パックに10Aの電流を流すと電池電圧が約400.6Vとなり、この時の差電圧ΔVは0.6Vとなる。0.6V/400=0.15%となるため、ΔVを精度よく測定する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、高電圧の微小変動を高精度で測定することを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電圧測定装置は、複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法は、複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、を備える電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法であって、前記電池パックの開放電圧の90%以上~100%未満となるように前記電圧レギュレータの前記出力電圧を設定することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法において、前記電池パックの差電圧が前記所定の電圧の1%未満である場合に、前記電圧レギュレータの出力電圧を前記電池パックの開放電圧の99%以上~100%未満に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高電圧の微小変動を高精度で測定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態の電圧測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態の電圧測定装置10を示す図である。電圧測定装置10は、電池パック12の電圧を測定するための装置である。電圧測定装置10は、直流電圧計14と、DC-DCコンバータ16と、電源装置18とを備える。
【0015】
電池パック12は、リチウムイオン電池12aを96個直列に接続して形成される。リチウムイオン電池12aは、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。
【0016】
リチウムイオン電池12aの定格電圧は約3.7Vであり、満充電電圧が約4.2Vであり、終止電圧が約2.8Vとされている。このため、リチウムイオン電池12aを96個直列にした電池パック12は、300V~400Vとなることがある。
【0017】
直流電圧計14は、電池パック12の両端に電気的に接続されて電池パック12の電圧を測定する機能を有するA/Dコンバータを含んで構成される。
【0018】
A/Dコンバータは、高電圧側基準電圧が供給されるリファレンストップ端子と、高電圧側基準電圧よりも低い低電圧側基準電圧が供給されるリファレンスボトム端子と、高電圧側基準電圧と低電圧側基準電圧との間の入力電圧が供給されるアナログ入力端子と、出力端子とを備えている。
【0019】
リファレンスボトム端子は、DC-DCコンバータ16に接続されている。即ち、低電圧側基準電圧は、DC-DCコンバータ16の出力電圧に一致する。
【0020】
A/Dコンバータは、入力電圧に応じて、高電圧側基準電圧の値と入力電圧の値との比較結果としてデジタル出力値を生成し、その出力端子を介して出力する。
【0021】
電池パック12は、その正極が直流電圧計14のA/Dコンバータのリファレンストップ端子に接続され、その負極が接地され、高電圧側基準電圧としてバッテリー電圧をA/Dコンバータに供給する。
【0022】
図示しない電源は、その正極が直流電圧計14のA/Dコンバータのアナログ入力端子に接続され、その負極が接地され、入力電圧として基準電圧をA/Dコンバータに供給する。
【0023】
この場合、A/Dコンバータは、基準電圧に応じて、バッテリー電圧の値と基準電圧の値との比較結果としてデジタル出力値を生成し、出力する。
【0024】
これにより、電圧測定装置10では、直流電圧計14のA/Dコンバータから出力されたデジタル出力値によりバッテリー電圧を検出する。
【0025】
DC-DCコンバータ16は、レギュレータ(安定化電源)の一つであり、スイッチングレギュレータとも呼ばれる。スイッチングレギュレータは、入力の直流(DC)電圧を所望の直流(DC)電圧に変換して出力する。
【0026】
スイッチングレギュレータを用いることで、入力の電源電圧よりも高い電圧(昇圧)や低い電圧(降圧)、また、入力電圧の極性を反転した電圧(反転)などを出力電圧とすることが出来る。
【0027】
ここでは、DC-DCコンバータ16は、電源装置18から供給される直流電圧を昇圧して直流電圧計14に供給する。
【0028】
ここでは、DC-DCコンバータ16の出力電圧は、電池パック12の開放電圧の90%以上~100%未満となるように設定することが好ましく、より好適には、開放電圧の99%以上~100%未満に設定することである。
【0029】
例えば、電池パック12の開放電圧が400Vである場合には、DC-DCコンバータ16の出力電圧を398Vに設定することが好ましい。
【0030】
電源装置18は、正極側が直流電圧計14及び電池パック12の正極に接続され、負極側が接地される電源であり、例えば、AC-DCコンバータやバッテリパックを用いて構成することが出来る。
【0031】
AC-DCコンバータは、入力の直流(AC)電圧を所望の直流(DC)電圧に変換して出力する機能を有する電源回路である。バッテリパックは、リチウムイオン電池などを含んで構成されてる電源である。
【0032】
続いて、上記構成の電圧測定装置10の作用について説明する。最初に、
図2を用いて、従来技術で電池パック12の電圧を測定する場合について詳説する。
【0033】
電池パック12は、リチウムイオン電池が96個直列接続されているため、開放電圧を測定すると400Vとなることがある。ここで、電源装置10から供給される電力を用いて電池パック12に10Aの電流を流すと電池電圧は約400.6Vになる。
【0034】
この差電圧(0.6V)をΔVと言う。差電圧が生じるのは、リチウムイオン電池の劣化により内部抵抗が大きくなることによる。これにより、リチウムイオン電池の劣化を診断することが可能となる。
図2に示されるように、従来技術である電圧測定装置1では直流電圧計14のみで電池パック12の電源電圧を測定している。
【0035】
ここでは、電池パック12の全体の電圧を測定しているため、0.15%(0.6V/400V)のΔVを精度良く測定する必要がある。このためには、測定素子であるA/Dコンバータの高ビット化が必要であり、高ビット化してもノイズが多ければ、それに埋もれて誤差が大きくなるという課題がある。このような課題に対し、本発明に係る実施形態の電圧測定装置10は顕著な効果を発揮する。
【0036】
従来技術の電圧測定装置1では、直流電圧計14として例えば12bitのA/Dコンバータを用いるとすると、400Vの電圧を212=4096で分割することになる。具体的には、400V÷4096=0.0976V=97.6mVステップで検知する。このようなステップでは、微小変動を検知することができない。
【0037】
これに対し、本発明の実施形態に係る電圧測定装置10によれば、DC-DCコンバータ16の出力電圧が398Vであるため、直流電圧計14の測定範囲は399V~400.6Vとなる。すなわち、ΔVは2V(400V-398V)に対する0.6Vの変化となるため、測定範囲に対する差電圧の割合が60%(0.6V/2V)となり、0.15%に比べて大幅に拡大される。これにより、一般的なビット数のA/Dコンバータを使用することができ、ノイズの影響も抑えることが出来る。
【0038】
また、2Vの電圧を212=4096で分割する場合、2V÷4096=0.00049V=0.49mVステップで検知することができるため、微小変動を検知することが出来る。このように、電圧測定装置10によれば、電池パック12の開放電圧が400Vであるような高電圧の場合であっても高精度に測定することが出来るという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0039】
10 電圧測定装置、12 電池パック、12a リチウムイオン電池、14 直流電圧計、16 DC-DCコンバータ、18 電源装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する高電圧電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、
前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、
を備える電圧測定装置を用いて高電圧電池パックの電圧を測定する方法であって、
前記高電圧電池パックの開放電圧の90%以上~100%未満となるように前記電圧レギュレータの前記出力電圧を設定することを特徴とする電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る電圧測定装置を用いて電池パックの電圧を測定する方法は、複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する高電圧電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、を備える電圧測定装置を用いて高電圧電池パックの電圧を測定する方法であって、前記高電圧電池パックの開放電圧の90%以上~100%未満となるように前記電圧レギュレータの前記出力電圧を設定することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
直流電圧計14は、一方端が電池パック12の正極に接続され、他方端がDC-DCコンバータ16を介して電池パック12の負極に電気的に接続されて電池パック12の電圧を測定する機能を有するA/Dコンバータを含んで構成される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
電池パック12は、その正極が直流電圧計14のA/Dコンバータのリファレンストップ端子に接続され、高電圧側基準電圧としてバッテリー電圧をA/Dコンバータに供給し、負極が接地される。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する高電圧電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、
前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、
を備える電圧測定装置を用いて高電圧電池パックの電圧を測定する方法であって、
前記高電圧電池パックの開放電圧の90%以上~100%未満となるように前記電圧レギュレータの前記出力電圧を設定することを特徴とする電圧測定装置を用いて高電圧電池パックの電圧を測定する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る電圧測定装置を用いて高電圧電池パックの電圧を測定する方法は、複数の二次電池を直列に接続して形成され、所定の電圧を有する高電圧電池パックの電圧を測定する直流電圧計と、前記所定の電圧よりも低い電圧を出力し、前記直流電圧計の基準電位として出力電圧を供給する電圧レギュレータと、を備える電圧測定装置を用いて高電圧電池パックの電圧を測定する方法であって、前記高電圧電池パックの開放電圧の90%以上~100%未満となるように前記電圧レギュレータの前記出力電圧を設定することを特徴とする。