(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049513
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】棚装置及び空調エネルギー削減システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240403BHJP
A47F 3/04 20060101ALI20240403BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20240403BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240403BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240403BHJP
【FI】
F24F5/00 Z
A47F3/04 C
A47F5/00 Z
F24F7/007 101
F24F11/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155769
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】下町 浩二
【テーマコード(参考)】
3B110
3B118
3L054
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3B110AA03
3B118AA11
3B118BB04
3B118DA31
3L054BE10
3L056BG09
3L260BA41
3L260BA72
3L260FA07
3L260FC05
3L260FC35
3L260FC39
(57)【要約】
【課題】空調のエネルギーを削減可能な棚装置及び空調エネルギー削減システムを提供する。
【解決手段】商品を陳列可能な棚装置30~30Bであって、下部において開口する吸気口32aと、上部において上方に向けて開口する吹出口33aと、を接続する経路(第一経路32及び第二経路33)と、前記経路(第一経路32及び第二経路33)内に設けられ、前記吸気口32aから吸気した空気を前記吹出口33aから吹き出すように送風を行う棚側送風機34と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を陳列可能な棚装置であって、
下部において開口する吸気口と、上部において上方に向けて開口する吹出口と、を接続する経路と、
前記経路内に設けられ、前記吸気口から吸気した空気を前記吹出口から吹き出すように送風を行う棚側送風機と、
を具備する棚装置。
【請求項2】
請求項1に記載の棚装置と、
建物の内部空間の天井側に配置され、前記内部空間の温度の検出結果に基づいた空気調和が可能な空調装置と、
前記内部空間において、前記棚装置の前記吸気口と対向するように配置され、内部に陳列された商品を冷却するための冷気を放出するショーケースと、
を具備する空調エネルギー削減システム。
【請求項3】
前記内部空間の上部に配置され、水平方向に向けて送風を行うことで、前記棚装置により吹き出された冷気を拡散する上側送風機を具備する、
請求項2に記載の空調エネルギー削減システム。
【請求項4】
前記棚装置は、
前記棚装置と前記ショーケースとの対向方向に沿って複数配置され、
前記経路は、
前記対向方向に延びるように形成されると共に、一端側に前記吸気口が設けられ、他端側に前記吸気口からの空気を排気可能な排気口が設けられた第一経路と、
上下方向に延びるように形成されると共に、下側において前記第一経路に接続され、上端側に前記吹出口が形成された第二経路と、
を具備し、
前記棚側送風機は、
前記第一経路内に設けられ、前記吸気口から吸気した空気を、前記排気口側へ送風する第一送風機と、
前記第二経路内に設けられ、前記第一経路内を流通する空気の一部を前記吹出口側へ送風する第二送風機と、
を具備する、
請求項2又は請求項3に記載の空調エネルギー削減システム。
【請求項5】
前記棚装置は、
前記第一送風機の送風量と、前記第二送風機の送風量と、の比率を調整可能であり、
複数の前記棚装置は、
前記ショーケースから離間するに従い、前記第一送風機の送風量が小さくなるように設定されると共に、前記第二送風機の送風量が大きくなるように設定される、
請求項4に記載の空調エネルギー削減システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚装置、及び棚装置を用いた空調エネルギー削減システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風機を用いて空調に使用されるエネルギーを削減する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、室内の冷房等が可能な空気調和機を床面に設置し、室内空気を下方に向けて送風可能な送風機を天井面に設けた、室内空気の還流システムが開示されている。
【0004】
上記特許文献1に記載された還流システムでは、送風機による送風を行うことで、室内空気の還流を促すことができる。これにより、室内温度の均一化を図り、多大な消費電力を要することなく効率的な空気調和を行うことができる。
【0005】
しかしながら、上述のような還流システムを、商品を冷蔵可能なショーケースが設置される商業施設等に適用した場合、天井の送風機により上部から吹き降ろされた空気(室内の上部に滞留した暖気)が、ショーケース内に侵入することが想定される。このような場合、ショーケース内の温度が上昇してしまうおそれがある。このため、さらなる改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、空調のエネルギーを削減可能な棚装置及び空調エネルギー削減システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、商品を陳列可能な棚装置であって、下部において開口する吸気口と、上部において上方に向けて開口する吹出口と、を接続する経路と、前記経路内に設けられ、前記吸気口から吸気した空気を前記吹出口から吹き出すように送風を行う棚側送風機と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、請求項1に記載の棚装置と、建物の内部空間の天井側に配置され、前記内部空間の温度の検出結果に基づいた空気調和が可能な空調装置と、前記内部空間において、前記棚装置の前記吸気口と対向するように配置され、内部に陳列された商品を冷却するための冷気を放出するショーケースと、を具備するものである。
【0011】
請求項3においては、前記内部空間の上部に配置され、水平方向に向けて送風を行うことで、前記棚装置により吹き出された冷気を拡散する上側送風機を具備するものである。
【0012】
請求項4においては、前記棚装置は、前記棚装置と前記ショーケースとの対向方向に沿って複数配置され、前記経路は、前記対向方向に延びるように形成されると共に、一端側に前記吸気口が設けられ、他端側に前記吸気口からの空気を排気可能な排気口が設けられた第一経路と、上下方向に延びるように形成されると共に、下側において前記第一経路に接続され、上端側に前記吹出口が形成された第二経路と、を具備し、前記棚側送風機は、前記第一経路内に設けられ、前記吸気口から吸気した空気を、前記排気口側へ送風する第一送風機と、前記第二経路内に設けられ、前記第一経路内を流通する空気の一部を前記吹出口側へ送風する第二送風機と、を具備するものである。
【0013】
請求項5においては、前記棚装置は、前記第一送風機の送風量と、前記第二送風機の送風量と、の比率を調整可能であり、複数の前記棚装置は、前記ショーケースから離間するに従い、前記第一送風機の送風量が小さくなるように設定されると共に、前記第二送風機の送風量が大きくなるように設定されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、空調のエネルギーを削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る空調エネルギー削減システムを模式的に示した側断面図。
【
図2】(a)棚装置を模式的に示した平面図。(b)
図2(a)におけるX‐X断面図。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る空調エネルギー削減システムを模式的に示した側断面図。
【
図4】本発明の第三実施形態に係る空調エネルギー削減システムを模式的に示した側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。まず、本発明の一実施形態に係る空調エネルギー削減システム1について説明する。
【0017】
本実施形態に係る空調エネルギー削減システム1は、建物2の空調に使用されるエネルギーを削減可能なものである。本実施形態では、建物2の一例として、スーパーマーケットやドラッグストア等の商業施設を想定している。
【0018】
以下では、まず、
図1を用いて、建物2について説明する。建物2は、壁3や天井、床によって区画された内部空間を有する。本実施形態に係る建物2の内部空間の高さ(床から天井までの高さ)は、4m程度である。建物2の内部空間には、商品の陳列に用いられる陳列棚4が配置されている。
【0019】
陳列棚4は、商品を出し入れ可能な開口を有している。陳列棚4には、常温保存可能な(特に冷蔵の必要がない)商品が陳列される。本実施形態では、
図1に示すように、前後に一対の陳列棚4を、開口の反対側(背面側)を対向させるようにして(背中合わせで)配置している。また、本実施形態では、一対の陳列棚4を、建物2の利用者(スーパーマーケット等の顧客)が通行可能な通路を開けて、複数配置している。また、陳列棚4は、壁3から比較的離れた位置に設置される。
【0020】
また、建物2には、内部空間の空気調和(空調)が可能な空調装置10や、商品を冷蔵可能なショーケース20が配置される。
【0021】
図1に示す空調装置10は、電力を消費して建物2の内部空間の空調(冷房や暖房)を実行可能なものである。空調装置10は、建物2の天井に配置される。図例では、複数の空調装置10を配置した例を示している。空調装置10は、内部空間の空気を吸込み可能な吸込口(不図示)や、内部空間へ空気を吹き出し可能な吹出口(不図示)を有する。上記吸込口及び吹出口は、天井において露出するように形成される。
【0022】
本実施形態に係る空調装置10は、吸込口の温度を検出する温度センサ(不図示)を有すると共に、温度センサの検出結果に基づいて運転の制御が行われる。具体的には、空調装置10は、温度センサの検出結果が所定の設定温度(閾値)を上回った場合に、所定の設定温度となるように冷房の運転を実行する。
【0023】
ショーケース20は、内部に商品が陳列されると共に、陳列された商品の冷蔵(冷凍)を行うものである。ショーケース20は、冷熱(冷気)を発生させるためのコンプレッサ(不図示)等を具備する。ショーケース20は、商品を出し入れ可能な開口を有している。本実施形態では、ショーケース20として、水平方向(図例では前方)に向けて開口する縦型のショーケースを採用している。ショーケース20は、開口が常時開放されている。ショーケース20は、開口の反対側(背面側)が、壁3に近接するように配置されている。
【0024】
上述の如きショーケース20は、開口が常時開放されているため、陳列された商品を冷却するための冷気が開口から漏れ出る。これにより、建物2の内部空間においては、下部(例えば床から2m程度の高さの部分)に冷気が滞留し、上部と下部とで温度差が生じることが想定される。このような場合、建物2の内部空間の下部においては空調装置10の設定温度を下回っているにも関わらず、建物2の内部空間の上部においては設定温度を上回り、空調装置10による冷房の運転が開始されるおそれがある。このような非効率的な空調装置10の運転が行われた場合、空調のために使用されるエネルギーが増大する。
【0025】
空調エネルギー削減システム1は、上述のような内部空間の温度差を解消し、空調のためのエネルギーの増大を抑制可能なものである。以下では、
図1及び
図2を用いて、空調エネルギー削減システム1について説明する。空調エネルギー削減システム1は、空調装置10、ショーケース20、棚装置30及び上側送風機40を具備する。なお、空調装置10及びショーケース20の構成については上述したため、以下では説明を省略する。
【0026】
図1及び
図2に示す棚装置30は、商品を陳列可能であると共に、ショーケース20から漏れ出た冷気を上昇させることができるものである。棚装置30は、棚部31、第一経路32、第二経路33、棚側送風機34及び仕切板35を具備する。
【0027】
図2に示す棚部31は、商品を陳列する部分である。棚部31は複数(本実施形態では4つ)設けられる。棚部31は、陳列棚4と概ね同様、商品を出し入れ可能な開口を有する棚である。棚部31には、常温保存可能な商品が陳列される。
【0028】
図2(a)に示すように、本実施形態では、4つの棚部31を背中合わせで配置している。また、本実施形態では、幅寸法の異なる2種類の棚部31を組み合わせるように配置している。具体的には、比較的幅寸法(左右寸法)が大きい前後に一対の棚部31(以下では「棚部31A」と称する)を、互いの背面(開口の反対側の面)同士を対向させるように配置している。本実施形態では、隙間Aを開けて、上記一対の棚部31Aを配置している。本実施形態では、隙間Aの寸法を、100mm~120mm程度に設定している。
【0029】
また、本実施形態では、
図2(a)に示すように、一対の棚部31Aの左右方向両側に、比較的幅寸法(前後寸法)が小さい左右に一対の棚部31(以下では「棚部31B」と称する)を配置している。上記一対の棚部31Bは、背面が一対の棚部31Aの側面に当接するように配置される。
【0030】
また、本実施形態では、
図2(b)に示すように、一対の棚部31Aの下面と、床面と、の間に隙間Bを形成している。本実施形態では、隙間Bの寸法を、隙間Aの寸法と概ね同寸法(100mm~120mm程度)に設定している。なお、隙間Bの寸法を、隙間Aの寸法とは異なる寸法に設定してもよい。
【0031】
また、上記複数の棚部31は、ショーケース20の前方において、当該ショーケース20と前後方向に対向するようにして配置される。具体的には、複数の棚部31及びショーケース20は、前後方向に見て少なくとも一部が重複するように配置される。
【0032】
図2(b)に示す第一経路32は、ショーケース20からの冷気を吸気すると共に、水平方向に流通させるための経路である。第一経路32は、棚部31Aが、床面から隙間Bを開けて配置されたことで形成される。具体的には、第一経路32は、一対の棚部31Aの下面と、一対の棚部31Bの背面と、床面と、によって区画されることで形成される。第一経路32は、前後方向に開口している。本実施形態では、第一経路32の後端部に形成された開口である吸気口32aを介して、ショーケース20からの冷気を吸気する。
【0033】
図2(a)、(b)に示す第二経路33は、第一経路32を流通する冷気を上昇させるための経路である。第二経路33は、一対の棚部31Aが、隙間Aを開けて配置されたことで形成される。具体的には、第二経路33は、一対の棚部31Aの背面と、一対の棚部31Bの背面と、によって区画されることで形成される。第二経路33の下端部は、第一経路32と接続されている。また、第二経路33の上端部は、上方に向けて開口している。本実施形態では、第二経路33の上端部に形成された開口である吹出口33aを介して、第二経路33を流通する冷気を吹き出す。
【0034】
棚側送風機34は、第一経路32及び第二経路33内の空気を上方に向けて送風するものである。棚側送風機34としては、左右方向に長尺な形状に形成されたラインフローファン(登録商標)、クロスフローファンを採用可能である。棚側送風機34は、出力の調整により送風量(送風能力)を調整可能である。送風量の調整は、棚側送風機34の本体側の操作、又は遠隔操作等により行うことができる。
【0035】
本実施形態では、
図2(b)に示すように、棚側送風機34を、第二経路33の下端側に配置している。
図2(a)に示すように、棚側送風機34は、長手方向を左右方向に向けて配置されている。また、棚側送風機34は、左右方向に間隔を開けて複数(図例では3つ)配置されている。
【0036】
図2(b)に示す仕切板35は、第一経路32の一部を閉塞するものである。具体的には、仕切板35は、第一経路32において、第二経路33よりも前側の部分を閉塞するように形成される。仕切板35を設けたことで、棚側送風機34を駆動させた場合に、第一経路32のうちショーケース20とは反対側の開口から吸気されることを規制することができる。これにより、効果的にショーケース20からの冷気を吸気することができる。図例では、一対の棚部31Aのうち、前側の棚部31Aの背面を構成する部分(背板)を下方に向けて延長させることで、仕切板35を形成した例を示している。
【0037】
上述の如き棚装置30によれば、棚側送風機34を駆動させることで、ショーケース20から漏れ出た冷気を上昇させることができる。すなわち、棚側送風機34を駆動し、第一経路32及び第二経路33内の空気を上方に向けて送風することで、第一経路32の吸気口32aを介して、ショーケース20から漏れ出た冷気を第一経路32に取り入れることができる。
【0038】
上記吸気された冷気は、前方に向かって第一経路32を流通する。第一経路32を流通する冷気は、仕切板35及び第二経路33に沿って上方へ導かれる。第二経路33に沿って上昇する冷気は、第二経路33の吹出口33aを介して、棚装置30の上方側へ吹き出される。
【0039】
上側送風機40は、建物2の内部空間の空気を、水平方向(例えば前後方向)に送風するものである。上側送風機40としては、棚側送風機34と同様なラインフローファン(登録商標)を採用してもよく、シロッコファンやプロペラファン等を採用してもよい。また、上側送風機40は、送風方向を調整可能な構成を採用可能である。
【0040】
上側送風機40は、内部空間の上側に設けられる。本実施形態では、上側送風機40を、ショーケース20の上端部に設けている。本実施形態では、上側送風機40の送風による気流が、内部空間の天井面に達するように、上側送風機40の送風方向を斜め上方に(例えば水平方向に対して上方に30°~40°程度傾斜するように)向けている。このように、上側送風機40による気流を天井側に向けることで、上側送風機40による送風が陳列棚4等により遮られることを抑制することができる。
【0041】
上述の如き空調エネルギー削減システム1によれば、建物2の内部空間の空気の攪拌を行うことで、内部空間の温度差を解消することができる。すなわち、
図1に示すように、ショーケース20から漏れ出た冷気を、棚装置30に取り入れると共に、上方に吹き出すことで、建物2の内部空間において、冷気を含む空気を攪拌することができる。
【0042】
また、棚装置30から吹き出された空気を、上側送風機40により水平方向(後方側)に送風することができる。これにより、棚装置30により上昇させた冷気を、内部空間の概ね全体に効率よく拡散することができ、内部空間の概ね全体の温度差を解消することができる。
【0043】
これにより、内部空間の下部には冷気が滞留し、上部には暖気が滞留することで、内部空間の下部においては空調装置10の設定温度を下回っているにも関わらず、建物2の内部空間の上部においては設定温度を上回り、空調装置10による冷房の運転が開始されるという非効率的な運転を抑制することができる。これにより、空調のために使用されるエネルギーの低減を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、例えば天井に設けた送風機により、上部から空気を吹き降ろすことで空気の攪拌を図るようなものとは異なり、吹き降ろされた空気(内部空間の上部に滞留した暖気)がショーケース20内に侵入し、ショーケース20の温度が上昇してしまうようなことを回避することができる。また、吹き降ろされた空気が建物2の利用者に直接当たることで、快適性を損なうようなことを回避することができる。
【0045】
また、空気を吹き降ろす送風機を天井に設置する構成を採用した場合には、内部空間の概ね全体の空気を攪拌するために、比較的多くの送風機を天井に設置する必要があることが想定される。本実施形態によれば、上述のような構成とは異なり、ショーケース20の付近のみに配置された、比較的少数の送風機(棚側送風機34及び上側送風機40)を用いて、内部空間の概ね全体の空気を攪拌することができる。
【0046】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0047】
以下では、
図3及び
図4を参照して、本発明の別実施形態(第二、第三実施形態)について説明する。なお、以下の別実施形態の説明では、各実施形態の相違点について説明し、共通する構成については、適宜説明を省略する。
【0048】
まず、
図3を用いて、第二実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Aについて説明する。本実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Aは、平型のショーケース20Aを配置した点で、第一実施形態に係る空調エネルギー削減システム1と異なる。
【0049】
ショーケース20Aは、比較的高さ寸法が小さく形成され、商品を出し入れ可能な開口が上方に向けて開口している。また、ショーケース20Aは、壁3とは離間して配置されている。ショーケース20Aにおいても、開口が常時開放されているため、陳列された商品を冷却するための冷気が開口から漏れ出る。
【0050】
本実施形態では、ショーケース20Aの前方に棚装置30を配置し、後方に棚装置30Aを配置している。なお、ショーケース20Aの前方に位置する棚装置30は、第一実施形態において説明した構成と同一であるので、説明を省略する。
【0051】
ショーケース20Aの後方に位置する棚装置30Aは、壁3に近接するように配置されている。棚装置30Aは、第二経路33が、棚部31の背面と壁3との間の隙間により形成されている。棚装置30Aとしては、例えば、3つの棚部31を背中合わせに配置したもの(
図2(a)に示す各棚部31のうち、1つの棚部31Aを除いたもの)を採用可能である。
【0052】
また、本実施形態では、上側送風機40を、天井側に設置している。この場合は、上側送風機40を天井に吊るすようにして固定する固定方法を採用可能である。
【0053】
上述の如き第二実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Aにおいても、第一実施形態で説明した効果と概ね同様な効果を奏する。すなわち、平型のショーケース20Aが設置されている場合でも、ショーケース20Aから漏れ出た冷気を、棚装置30及び棚装置30Aにより上方に吹き出し、上側送風機40により拡散することで、建物2の内部空間の概ね全体の温度差を解消することができる。
【0054】
次に、
図4を用いて、第三実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Bについて説明する。本実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Bは、棚装置30Bの構成が、第一実施形態に係る空調エネルギー削減システム1と異なる。
【0055】
棚装置30Bは、第一経路32及び第二経路33のそれぞれに、棚側送風機34が設けられている。以下では、各棚側送風機34のうち、第一経路32に設けられているものを「第一送風機34A」、第二経路33に設けられているものを「第二送風機34B」と称して説明する。
【0056】
第一送風機34A及び第二送風機34Bは、互いに同様な構成に形成されている。第一送風機34Aは、第一経路32のうち、第二経路33よりも前方側に配置されている。第一送風機34Aは、第一経路32内の空気を、後方から前方へ送風する。第二送風機34Bは、第一実施形態で説明した棚側送風機34と同様な位置に配置されている。また、本実施形態では、第一送風機34A及び第二送風機34Bの送風量の比率を設定可能である。
【0057】
また、本実施形態では、第一経路32に仕切板35を設けていない。このため、第二経路33は、前後方向に連通している。以下では、第一経路32の前端部の開口(吸気口32aの反対側の開口)を、「排気口32b」と称して説明する。
【0058】
本実施形態に係る棚装置30Bにおいては、第一送風機34A及び第二送風機34Bの両方を駆動させることで、ショーケース20からの冷気を、前方及び上方へ送風することができる。
【0059】
具体的には、第一送風機34A及び第二送風機34Bを駆動させることで、ショーケース20から漏れ出た冷気を吸気口32aから吸気して、第一経路32に取り入れる。第一経路32を流通する冷気の一部は、排気口32bから前方へ排気される。
【0060】
また、第二送風機34Bを駆動させることで、第一経路32を流通する冷気の一部(排気口32bから排気されないもの)を、第二経路33に沿って上昇させ、吹出口33aを介して、棚装置30Bの上方側へ吹き出すことができる。
【0061】
本実施形態では、上述の如き棚装置30Bを、前後方向に複数配置している。より詳細には、陳列棚4に代えて、通路を開けて3つの棚装置30Bを配置している。また、本実施形態では、各棚装置30Bにおける第一送風機34A及び第二送風機34Bの送風量を、それぞれ異ならせている。より詳細には、各棚装置30Bの第一送風機34Aの送風量を、ショーケース20から離間するに従い小さくなるように設定している。また、各棚装置30Bの第二送風機34Bの送風量を、ショーケース20から離間するに従い大きくなるように設定している。
【0062】
具体的には、ショーケース20に対して最も近くに配置された棚装置30Bについては、第一送風機34A及び第二送風機34Bの送風量の比率を、7対3に設定している。また、次にショーケース20の近くに配置された(3つのうち中央の)棚装置30Bについては、第一送風機34A及び第二送風機34Bの送風量の比率を、5対5に設定している。また、ショーケース20に対して最も遠くに配置された棚装置30Bについては、第一送風機34A及び第二送風機34Bの送風量の比率を、3対7に設定している。
【0063】
本実施形態では、各棚装置30Bの第一送風機34A及び第二送風機34Bとして、それぞれ性能(定格出力等)が同じものを採用し、送風量の比率が上述した値になるように、各第一送風機34A及び各第二送風機34Bの出力を設定している。なお、上記送風量の比率の設定方法としては、上述した例に限定されず、種々の方法を採用可能である。
【0064】
上述の如く、各棚装置30Bの第一送風機34A及び第二送風機34Bの送風量を設定したことで、ショーケース20からの冷気をバランスよく拡散することができる。すなわち、比較的ショーケース20に近い棚装置30Bについては、冷気を上昇させるよりも、前方側に位置する棚装置30B側に冷気を送ることを優先させ、比較的ショーケース20から遠い棚装置30Bについては、冷気を前方に送るよりも上昇させることを優先させている。これにより、ショーケース20からの冷気をバランスよく拡散することができる。
【0065】
以上、各実施形態に係る空調エネルギー削減システム1~1Bについて説明した。なお、上記説明で例示した具体的な数値(部材の個数や寸法等)は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0066】
以上の如く、各実施形態に係る棚装置30~30Bは、
商品を陳列可能な棚装置30~30Bであって、
下部において開口する吸気口32aと、上部において上方に向けて開口する吹出口33aと、を接続する経路(第一経路32及び第二経路33)と、
前記経路(第一経路32及び第二経路33)内に設けられ、前記吸気口32aから吸気した空気を前記吹出口33aから吹き出すように送風を行う棚側送風機34と、
を具備するものである。
【0067】
このように構成することによって、空調のエネルギーを削減することができる。すなわち、冷気を放出するショーケース20、20Aが配置された内部空間に、棚装置30~30Bを設置することで、ショーケース20、20Aからの冷気を棚装置30~30Bに吸気させると共に、上方へ吹き出して上昇させることができる。これにより、内部空間において冷気を含む空気を攪拌し、温度差を解消することで、空調のために使用されるエネルギーの低減を図ることができる。
【0068】
また、各実施形態に係る空調エネルギー削減システム1~1Bは、
各実施形態に係る棚装置30~30Bと、
建物2の内部空間の天井側に配置され、前記内部空間の温度の検出結果に基づいた空気調和が可能な空調装置10と、
前記内部空間において、前記棚装置30~30Bの前記吸気口32aと対向するように配置され、内部に陳列された商品を冷却するための冷気を放出するショーケース20、20Aと、
を具備するものである。
【0069】
このように構成することによって、空調のエネルギーを削減することができる。すなわち、棚装置30~30Bにより冷気を含む空気を攪拌することで、内部空間の下部においては、ショーケース20、20Aから漏れ出た冷気により室内温度が低くなっているにも関わらず、上部においては滞留した暖気により比較的高くなった温度を検出し、空調装置10が冷房の運転を開始するという非効率的な運転を抑制することができ、空調のために使用されるエネルギーの低減を図ることができる。
【0070】
また、各実施形態に係る空調エネルギー削減システム1~1Bは、
前記内部空間の上部に配置され、水平方向に向けて送風を行うことで、前記棚装置30~30Bにより吹き出された冷気を拡散する上側送風機40を具備するものである。
【0071】
このように構成することによって、効果的に内部空間全体の温度差を解消することができる。すなわち、上側送風機40により水平方向の送風を行うことで、棚装置30~30Bにより上昇させた冷気を内部空間の概ね全体に効率よく拡散することができ、効果的に内部空間全体の温度差を解消することができる。
【0072】
また、第三実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Bにおいては、
前記棚装置30Bは、
前記棚装置と前記ショーケース20との対向方向に沿って複数配置され、
前記経路は、
前記対向方向に延びるように形成されると共に、一端側に前記吸気口32aが設けられ、他端側に前記吸気口32aからの空気を排気可能な排気口32bが設けられた第一経路32と、
上下方向に延びるように形成されると共に、下側において前記第一経路32に接続され、上端側に前記吹出口33aが形成された第二経路33と、
を具備し、
前記棚側送風機34は、
前記第一経路32内に設けられ、前記吸気口32aから吸気した空気を、前記排気口32b側へ送風する第一送風機34Aと、
前記第二経路33内に設けられ、前記第一経路32内を流通する空気の一部を前記吹出口33a側へ送風する第二送風機34Bと、
を具備するものである。
【0073】
このように構成することにより、効果的に内部空間の温度差を解消することができる。すなわち、複数の棚装置30Bを用いて、対向方向(前後方向)にショーケース20からの冷気を送ると共に、当該冷気を上昇させることで、効率的に冷気を含む空気を攪拌し、内部空間の温度差を解消することができる。
【0074】
また、前記棚装置30Bは、
前記第一送風機34Aの送風量と、前記第二送風機34Bの送風量と、の比率を調整可能であり、
複数の前記棚装置30Bは、
前記ショーケース20から離間するに従い、前記第一送風機34Aの送風量が小さくなるように設定されると共に、前記第二送風機34Bの送風量が大きくなるように設定されるものである。
【0075】
このように構成することにより、ショーケース20からの冷気をバランスよく拡散することができる。すなわち、比較的ショーケース20に近い棚装置30Bについては、冷気を上昇させるよりも、対向方向(前後方向)に冷気を送ることを優先させ、比較的ショーケース20から遠い棚装置30Bについては、冷気を対向方向(前後方向)に送るよりも上昇させることを優先させている。これにより、ショーケース20からの冷気をバランスよく拡散することができる。
【0076】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、上記各実施形態の構成を、適宜入れ替えたり、組み合わせたりする等の変更が可能である。具体的には、建物2の内部空間に、縦型のショーケース20及び平型のショーケース20Aの両方を配置し、これらに応じて、棚装置30~30Bを適宜配置してもよい。
【0078】
また、例えば、第三実施形態に係る空調エネルギー削減システム1Bの複数の棚装置30Bのうち、ショーケース20から最も遠いものを、第一実施形態に係る棚装置30に変更してもよい。
【0079】
また、各実施形態で説明した棚装置30~30Bの形状等は一例であり、上記例に限定されない。例えば、上述した例では、第一経路32や第二経路33を、一対の棚部31Aの幅方向の全体に形成したが、上記例に限定されず、第一経路32や第二経路33の幅寸法を、棚部31Aよりも小さく形成してもよい。
【0080】
また、第一実施形態に係る棚装置30では、一対の棚部31Aのうち、前側の棚部31Aの背板を下方に向けて延長させることで、仕切板35を形成した例を示したが、仕切板35の構成としては上述した例に限定されない。例えば、背板と別体に形成された仕切板35を第一経路32内に設けるようにしてもよい。また例えば、一対の棚部31Aのうち、前側の棚部31Aを床に載置する(隙間Bを開けずに載置する)ことで、仕切板35を形成するようにしてもよい。
【0081】
また、上記各実施形態では、上側送風機40を設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、上側送風機40を設けないようにしてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、空調エネルギー削減システム1~1Bが適用される建物2を、スーパーマーケットやドラッグストア等の商業施設とした例を示したが、このような態様に限られない。建物2としては、空調装置10及びショーケース20が配置される種々の建物を採用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 空調エネルギー削減システム
10 空調装置
20 ショーケース
30 棚装置
40 上側送風機