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特開2024-49517位置測定システム、位置測定装置および位置測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049517
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】位置測定システム、位置測定装置および位置測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/16 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G01S11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155774
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江村 俊紀
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水中機器の大型化を回避する位置測定システム、位置測定装置および位置測定方法を得る。
【解決手段】水中に設けられた受波器3の位置を測定する位置測定システムであって、観測点に設けられ、陸上局1にトリガ信号を送信する送信器4と、観測点に設けられ、受波器3にパルス信号を送波する送波器8と、陸上局1に設けられ、トリガ信号を受信する受信器2と、トリガ信号が送信器4から受信器2に到達するまでの伝搬時間とパルス信号が送波器8から受波器3に到達するまでの伝搬時間との時間差を求める時間差測定部と、時間差測定部によって求められた時間差と水中における音速の値とを用いて、送波器8および受波3器間の距離Lを算出する位置測定部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設けられた受波器の位置を測定する位置測定システムであって、
観測点に設けられ、陸上局にトリガ信号を送信する送信器と、
前記観測点に設けられ、前記受波器にパルス信号を送波する送波器と、
前記陸上局に設けられ、前記トリガ信号を受信する受信器と、
前記トリガ信号が前記送信器から前記受信器に到達するまでの伝搬時間と前記パルス信号が前記送波器から前記受波器に到達するまでの伝搬時間との時間差を求める時間差測定部と、
前記時間差測定部によって求められた前記時間差と水中における音速の値とを用いて、前記送波器および前記受波器間の距離を算出する位置測定部と、
を有する位置測定システム。
【請求項2】
外部から受信する電波の信号を利用して、3つの前記観測点のそれぞれの前記送波器の位置を示す座標を求める座標解析部と、
前記3つの観測点のそれぞれにおいて求められた前記距離および前記送波器の座標に基づいて前記受波器の座標を求める座標測定部と、を有し、
前記3つの観測点のそれぞれは、前記送波器の深度において前記観測点を中心として前記距離を半径とした水平面の円が互いに他の2つの観測点の前記円の一部と重なり合う、
請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
水中に設けられた受波器の位置を測定する位置測定装置であって、
観測点に設けられた送信器から送信されたトリガ信号が陸上局に設けられた受信器に到達するまでの伝搬時間と前記観測点に設けられた送波器から送波されたパルス信号が前記受波器に到達するまでの伝搬時間との時間差を求める時間差測定部と、
前記時間差測定部によって求められた前記時間差と水中における音速の値とを用いて、前記送波器および前記受波器間の距離を算出する位置測定部と、
を有する位置測定装置。
【請求項4】
水中に設けられた受波器の位置を測定する位置測定方法であって、
観測点に設けられた送信器から送信されたトリガ信号が陸上局に設けられた受信器に到達するまでの伝搬時間と前記観測点に設けられた送波器から送波されたパルス信号が前記受波器に到達するまでの伝搬時間との時間差を求めるステップと、
求められた前記時間差と水中における音速の値とを用いて、前記送波器および前記受波器間の距離を算出するステップと、
を有する位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に設置された機器の位置を測定する位置測定システム、位置測定装置および位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来、発生する可能性のある大地震による被害を防ぐために、想定震源域の海底の地殻変動を観測することは重要である。海底の地殻変動について詳細な情報を得るためには、海底に観測地点を設置する必要がある。そのため、観測地点として、水中機器を海底に設置することが行われている。
【0003】
しかし、予め決められた経度および緯度の座標で特定される位置の海底に水中機器を設置しようとしても、潮流などの影響によって、水中機器が予定した位置に設置されない場合がある。また、水中機器が深い海底に設置されると、目視によって位置を確認することは困難である。
【0004】
地上に設置される機器の位置を測定する場合、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を利用して座標を特定できるが、水中では電波の伝搬損失が大きい。そこで、水中機器の位置測定に、音波を利用する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1には、船上にトランスデューサーが設けられ、海底局としてミラートランスポンダーが海底に設置され、音響測距観測によってこれら2つの機器間の信号の往復時間を測定することで、船と海底局との距離を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】藤田雅之著、「海上保安庁の海底地殻変動観測」、水路、日本水路協会、平成15年10月24日発行、通巻第127号、Vol.32 No.3、p.2-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示された方法は、音響測距観測のために、水中機器にトランスポンダ機能を設ける必要がある。トランスポンダ機能を搭載する水中機器は送信用および受信用のそれぞれの回路が必要となり、製造コストが高くなるだけでなく、トランスポンダ機能を持たない水中機器に比べて大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、水中機器の大型化を回避する位置測定システム、位置測定装置および位置測定方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置測定システムは、水中に設けられた受波器の位置を測定する位置測定システムであって、観測点に設けられ、陸上局にトリガ信号を送信する送信器と、前記観測点に設けられ、前記受波器にパルス信号を送波する送波器と、前記陸上局に設けられ、前記トリガ信号を受信する受信器と、前記トリガ信号が前記送信器から前記受信器に到達するまでの伝搬時間と前記パルス信号が前記送波器から前記受波器に到達するまでの伝搬時間との時間差を求める時間差測定部と、前記時間差測定部によって求められた前記時間差と水中における音速の値とを用いて、前記送波器および前記受波器間の距離を算出する位置測定部と、を有するものである。
【0009】
本発明に係る位置測定装置は、水中に設けられた受波器の位置を測定する位置測定装置であって、観測点に設けられた送信器から送信されたトリガ信号が陸上局に設けられた受信器に到達するまでの伝搬時間と前記観測点に設けられた送波器から送波されたパルス信号が前記受波器に到達するまでの伝搬時間との時間差を求める時間差測定部と、前記時間差測定部によって求められた前記時間差と水中における音速の値とを用いて、前記送波器および前記受波器間の距離を算出する位置測定部と、を有するものである。
【0010】
本発明に係る位置測定方法は、水中に設けられた受波器の位置を測定する位置測定方法であって、観測点に設けられた送信器から送信されたトリガ信号が陸上局に設けられた受信器に到達するまでの伝搬時間と前記観測点に設けられた送波器から送波されたパルス信号が前記受波器に到達するまでの伝搬時間との時間差を求めるステップと、求められた前記時間差と水中における音速の値とを用いて、前記送波器および前記受波器間の距離を算出するステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送波器から受波器までの距離が、観測点から陸上局までの電波伝搬と観測点から受波器までの音波伝搬との時間差を用いて算出される。そのため、受波器がトランスポンダ機能を備えていなくても、受波器の位置を推定することが可能となり、水中機器の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る位置測定システムの運用例を示す概念図である。
図2】実施の形態1に係る位置測定システムの一構成例を示すブロック図である。
図3】比較例の位置測定システムの運用例を示す概念図である。
図4】比較例の位置測定システムの動作を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る位置測定システムによる位置測定方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、送波器の座標を求める方法を説明するための模式図である。
図7】実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、トリガ信号の送信および受信ならびにパルス信号の送波および受波のタイミングチャートの一例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、3つの観測点に基づいて受波器の座標を求める手順を説明するための模式図である。
図9】実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、3つの観測点に基づいて受波器の座標を求める手順を説明するための模式図である。
図10】実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、3つの観測点に基づいて受波器の座標を求める手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態の位置測定システムは、音響信号と電波信号とを用いることで、トランスポンダ機能を持たない水中受波器の位置測定を可能とするものである。以下に、本実施の形態の位置測定システムについて、図を参照して説明する。
【0014】
実施の形態1.
本実施の形態1の位置測定システムの構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る位置測定システムの運用例を示す概念図である。図2は、実施の形態1に係る位置測定システムの一構成例を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、位置測定の対象となる受波器3が水中に設置されている。海上にある音源船5には、音波を受波器3に送波する音源となる送波器8が設けられている。送波器8は、水中にある受波器3の位置を測定するための観測点となる。送波器8は、図1に示すように、音源船5からケーブル51によって水中に吊り下げられている。送波器8には、海面からの深度dを計測する深度計7が取り付けられている。また、音源船5には、電波を陸上局1に送信する送信器4が設けられている。
【0016】
さらに、音源船5には、経度および緯度で特定される地球上の座標を求めるために、GPSデータを人工衛星(図示せず)から受信するGPS受信アンテナ6を有する。GPSデータは、人工衛星(図示せず)から送信される電波の送信時刻の情報を含むデータである。経度および緯度で特定される地球上の座標を、以下では単に座標と称し、(経度,緯度)で表す。
【0017】
なお、図1は、説明の便宜上、深度計7がケーブル51によって音源船5の甲板付近から吊り下げられた状態を示しているが、音源船5の海面近くの側面からケーブル51によって吊り下げられている。また、図1に示す状態の場合、d=(海面から深度計7までの深度+海面から音源船5の甲板までの高さ)としてもよい。また、外部から受信する電波の信号を利用して観測点の位置を示す座標を求める方法は、GPSを用いる方法に限らない。観測点の位置を示す座標を求める方法は、例えば、ロラン(LOng RAnge Navigation)等の双曲線航法を用いる方法であってもよい。
【0018】
陸上局1には、音源船5の送信器4から出力された電波を受信する受信器2が設けられている。陸上局1は、伝送ケーブル9を介して水中の受波器3と接続されている。伝送ケーブル9は、光ファイバと電線とを複合させた光電複合ケーブルである。
【0019】
図2に示すように、位置測定システム50は、送信部10と、座標解析部20と、受信部30と、位置測定装置40とを有する。受信部30は、受信器2および受波器3を有する。送信部10および座標解析部20は、図1に示した音源船5に設けられている。受信器2および位置測定装置40は、図1に示した陸上局1に設けられている。
【0020】
送信部10は、トリガ信号生成部11と、発振器12と、変調部13と、パワーアンプ14と、送信器4と、パルス信号生成部15と、パワーアンプ16と、送波器8とを有する。座標解析部20は、GPS解析部21を有する。GPS解析部21は、GPS受信アンテナ6および深度計7と接続されている。
【0021】
位置測定装置40は、トリガ信号復号部61と、パルス信号復号部62と、時間差測定部47と、受波器位置測定部48と、受波器座標測定部49とを有する。トリガ信号復号部61は、チューニング部41と、パワーアンプ42と、復調器43と、送信信号検出部44とを有する。パルス信号復号部62は、復調器45と、送波信号検出部46とを有する。
【0022】
トリガ信号生成部11は、GPS解析部21、変調部13およびパルス信号生成部15と接続されている。発振器12は変調部13と接続されている。変調部13はパワーアンプ14と接続されている。パワーアンプ14は送信器4と接続されている。パルス信号生成部15はパワーアンプ16と接続されている。パワーアンプ16は送波器8と接続されている。
【0023】
受信器2はチューニング部41と接続されている。チューニング部41はパワーアンプ42と接続されている。パワーアンプ42は復調器43と接続されている。復調器43は送信信号検出部44と接続されている。受波器3は図1に示した伝送ケーブル9を介して復調器45と接続されている。復調器45は送波信号検出部46と接続されている。時間差測定部47は、送信信号検出部44、送波信号検出部46および受波器位置測定部48と接続されている。受波器座標測定部49は、GPS解析部21および受波器位置測定部48と接続されている。
【0024】
次に、図2に示した各部の構成を説明する。トリガ信号生成部11は、電波によって陸上局1に送信するトリガ信号を生成する。トリガ信号生成部11は、生成したトリガ信号を変調部13およびパルス信号生成部15に出力する。また、トリガ信号生成部11は、トリガ信号を生成した時刻をGPS解析部21に通知する。発振器12は、無線の電波として陸上局1に送り出す高周波の元となる搬送波信号を生成し、搬送波信号を変調部13に供給する。
【0025】
変調部13は、トリガ信号生成部11からトリガ信号が入力されると、発振器12で生成された搬送波信号でトリガ信号を変調する。変調部13は、変調後のトリガ信号である変調信号をパワーアンプ14に出力する。パワーアンプ14は、変調部13によって生成された変調信号を必要な電力まで増幅させる。パワーアンプ14は、増幅後の変調信号を送信器4に出力する。送信器4は、パワーアンプ14から入力される変調信号を陸上局1に送信する。このようにして、トリガ信号生成部11によって生成されたトリガ信号が、電波によって図1に示した陸上局1の受信器2に送信される。
【0026】
トリガ信号生成部11、変調部13およびパワーアンプ14は送信部10内に設けられているため、トリガ信号がトリガ信号生成部11で生成されてから送信器4に到達するまでの時間は無視できるほど小さい。そのため、トリガ信号がトリガ信号生成部11で生成される時刻は、変調および増幅されたトリガ信号が送信器4から送信される時刻と同等である。
【0027】
パルス信号生成部15は、トリガ信号生成部11からトリガ信号が入力されると、トリガ信号と同期するパルス波形の信号であるパルス信号を生成する。パルス信号生成部15は、生成したパルス信号をパワーアンプ16に出力する。パワーアンプ16は、パルス信号生成部15から入力されるパルス信号を必要な電力まで増幅させる。パワーアンプ16は、増幅後のパルス信号を送波器8に出力する。送波器8は、パワーアンプ16から入力されるパルス信号を図1に示した受波器3に送波する。このようにして、パルス信号生成部15によって生成されたパルス信号が音波によって受波器3に送波される。
【0028】
パルス信号生成部15およびパワーアンプ16は送信部10内に設けられているため、パルス信号がパルス信号生成部15で生成されてから送波器8に到達するまでの時間は無視できるほど小さい。そのため、パルス信号がパルス信号生成部15で生成される時刻は、増幅されたパルス信号が送波器8から送波される時刻と同等である。
【0029】
GPS解析部21は、少なくとも4つの人工衛星(図示せず)から受信するGPSデータを時系列で記録する。GPS解析部21は、トリガ信号生成部11からトリガ信号が生成された時刻の情報を受信すると、その時刻に記録したGPSデータを読み出し、GPS受信アンテナ6の座標を求める。
【0030】
GPS解析部21は、トリガ信号が生成された時刻における、GPS受信アンテナ6の座標および深度計7から取得された送波器8の深度dの情報を用いて、送波器8の座標を求める。GPS解析部21は、求めた、送波器8の座標を記録する。その後、GPS解析部21は、図に示さないネットワークを介して、記録した、送波器8の座標の情報を受波器座標測定部49に送信する。なお、GPS解析部21に記録された、送波器8の座標の情報は、記録媒体を介して受波器座標測定部49に入力されてもよい。
【0031】
受信器2は、送信器4から送信されたトリガ信号を受信する。そして、受信器2は、位置測定装置40のチューニング部41に接続される。チューニング部41は、受信器2で受信した信号のうち不要となる信号を除去する。そして、チューニング部41はパワーアンプ42に接続される。
【0032】
パワーアンプ42は、チューニング部41で抽出されたトリガ信号を増幅させる。そして、パワーアンプ42は復調器43に接続される。復調器43は受信信号から送信器4のトリガ信号を取り出す。そして、復調器43は送信信号検出部44に接続される。送信信号検出部44は、目的信号であるトリガ信号を検出する。そして、送信信号検出部44は時間差測定部47に接続される。
【0033】
受波器3は、送波器8から送波されたパルス信号を含む音波を受波する。受波器3は、受波した音波を復調器45に出力する。復調器45は、復調器45から音波が入力されると、音波から目的信号であるパルス信号を取り出す。復調器45は、取り出したパルス信号を送波信号検出部46に出力する。送波信号検出部46は、復調器45から入力される信号から目的信号であるパルス信号を検出する。送波信号検出部46は、検出したパルス信号を時間差測定部47に出力する。
【0034】
時間差測定部47は、トリガ信号を受信した時刻およびパルス信号を受信した時刻からトリガ信号の電波伝搬とパルス信号の音波伝搬との時間差ΔTを求める。具体的な方法は、後で説明する。時間差測定部47は、求めた時間差ΔTの情報を受波器位置測定部48に送信する。
【0035】
受波器位置測定部48は、時間差測定部47から時間差ΔTの情報を受信すると、時間差ΔTと水中の音速cの値とを用いて、送波器8と受波器3と間の距離Lを算出する。受波器位置測定部48は、算出した距離Lの情報を受波器座標測定部49に送信する。受波器座標測定部49は、複数の観測点について、GPS解析部21によって解析された送波器8の座標および受波器位置測定部48によって算出された距離Lを基に受波器3の座標を求める。本実施の形態1では、観測点の数が3つの場合で説明する。
【0036】
ここで、図2に示す送信部10、座標解析部20および位置測定装置40のハードウェア構成の一例を説明する。送信部10における、トリガ信号生成部11、パルス信号生成部15および変調部13は、プログラムを記憶するメモリ(図示せず)およびプログラムにしたがって処理を実行するプロセッサ(図示せず)を有する構成によって実現されてもよく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路(図示せず)によって実現されてもよい。座標解析部20におけるGPS解析部21は、プログラムを記憶するメモリ(図示せず)およびプログラムにしたがって処理を実行するプロセッサ(図示せず)を有する構成によって実現されてもよく、ASIC等の専用回路(図示せず)によって実現されてもよい。
【0037】
図2に示すトリガ信号復号部61の復調器43および送信信号検出部44は、プログラムを記憶するメモリ(図示せず)およびプログラムにしたがって処理を実行するプロセッサ(図示せず)を有する構成によって実現されてもよく、ASIC等の専用回路(図示せず)によって実現されてもよい。パルス信号復号部62の復調器45、送波信号検出部46は、プログラムを記憶するメモリ(図示せず)およびプログラムにしたがって処理を実行するプロセッサ(図示せず)を有する構成によって実現されてもよく、ASIC等の専用回路(図示せず)によって実現されてもよい。時間差測定部47、受波器位置測定部48および受波器座標測定部49は、プログラムを記憶するメモリ(図示せず)およびプログラムにしたがって処理を実行するプロセッサ(図示せず)を有する構成によって実現されてもよく、ASIC等の専用回路(図示せず)によって実現されてもよい。また、位置測定装置40が受信器2を有していてもよい。
【0038】
次に、本実施の形態1の位置測定システム50の動作を説明する前に、比較例の位置測定システムの構成および動作を説明する。図3は、比較例の位置測定システムの運用例を示す概念図である。図4は、比較例の位置測定システムの動作を説明するための図である。
【0039】
図3に示すように、比較例の位置測定システム100は、海底に設置された水中機器101と、測量船110とを有する。測量船110は、送受波器111と、GPS受信アンテナ112と、動揺計測装置113と、情報処理装置115とを有する。送受波器111は、測量船110とケーブルによって接続され、水中に設けられている。水中機器101は、トランスポンダ102を備えている。GPS受信アンテナ112は測量船110の支柱に取り付けられている。動揺計測装置113は、測量船110への波浪によって刻々と変化する支柱の刻々の傾きおよび方位を計測する。計測される傾きおよび方位のデータを動揺データと称する。情報処理装置115は、例えば、パーソナルコンピュータである。
【0040】
次に、比較例の位置測定システム100の動作を説明する。情報処理装置115は、音響解析、GPS解析および機器位置解析を行って、水中機器101の位置を測定する。図4を参照して、各解析処理の内容を説明する。
【0041】
音響解析は、音響測距観測によって、送受波器111と水中機器101との間の信号の往復時間を求める解析である。その際、相関波形処理技術を用いる。音響解析について、具体的に説明する。測量船110の送受波器111がパルス信号を海底に向けて送信する。トランスポンダ102は、送受波器111から送信されたパルス信号を受信すると、そのままの波形で送受波器111に返信する。送受波器111は、トランスポンダ102が返信したパルス信号を受信する。これらの音響測距観測によって得られる送信波形および受信波形の音響測距データから、送受波器111と水中機器101との間の信号の往復時間を求める。
【0042】
GPS解析は、動揺する測量船110のGPS受信アンテナ112の位置を、キネマティックGPS測位(陸上基準点から船までをGPS衛星による測位技術)によって求める解析である。
【0043】
機器位置解析は、音響解析の結果およびGPS解析の結果を基に、水中機器101の位置を求める解析である。具体的には、GPS解析によって求められる刻々のGPS受信アンテナ112の位置を、動揺データを用いて補正することで、送受波器111の位置の情報に変換する。求められた送受波器111の位置の情報と、音響解析によって解析された音波の信号の往復時間とから、水中機器101の位置を決定する。水中機器101の位置とは、送受波器111を中心として海底に描かれる円周上の位置である。解析処理には、音波の信号の往復時間を距離に換算するため、海中の音速の値が必要になる。
【0044】
比較例の位置測定システム100の場合、非特許文献1に開示された方法と同様に、水中機器101にトランスポンダ機能が必要になるため、水中機器101が高価になるだけでなく、大型化してしまう。これに対して、本実施の形態1の位置測定システム100は、水中に設置される受波器3にトランスポンダ機能を設ける必要がないので、水中機器の低コスト化および小型化を図ることができる。本実施の形態1において、受波器3がトランスポンダ機能を備えていなくても、位置測定システム50が受波器3の位置を測定することができることを説明する。
【0045】
本実施の形態1の位置測定システム50の動作を、図5を参照して説明する。図5は、実施の形態1に係る位置測定システムによる位置測定方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0046】
送信部10は、トリガ信号を生成して送信器4から陸上局1の受信器2に送信する(ステップS1-1)。以下に、具体的に説明する。トリガ信号生成部11は、位置測定の基準となるトリガ信号を生成する。トリガ信号生成部11は、トリガ信号を生成した時刻を記録し、記録した時刻をGPS解析部21に通知する。トリガ信号生成部11で生成されたトリガ信号は、発振器12で生成された搬送波信号と変調部13で変調される。変調部13で変調された変調信号は、パワーアンプ14で増幅された後、送信器4から受信器2に送信される。
【0047】
受信器2は、送信器4から送信された変調信号を受信する。受信器2は、受信した変調信号を位置測定装置40のチューニング部41に出力する。チューニング部41は、変調信号からトリガ信号の復調に必要な周波数成分を抽出してパワーアンプ42に出力する。パワーアンプ42は、チューニング部41から入力された信号を増幅して復調器43に出力する。復調器43は、パワーアンプ42から入力された信号をトリガ信号の周波数の信号に復調する。復調器43は、復調した信号を送信信号検出部44に出力する。送信信号検出部44は、復調された信号からトリガ信号を取り出して時間差測定部47に出力する。時間差測定部47は、トリガ信号の受信時刻を計測する(ステップS2-1)。
【0048】
また、送信部10は、トリガ信号に同期したパルス信号を生成して送波器8から水中の受波器3に送波する(ステップS1-2)。以下に、具体的に説明する。パルス信号生成部15は、トリガ信号に同期したパルス信号を生成する。パルス信号生成部15で生成されたパルス信号は、パワーアンプ16で増幅された後、送波器8から受波器3に送波される。
【0049】
受波器3は、送波器8から送波されたパルス信号を受波する。受波器3は、受波したパルス信号を、伝送ケーブル9を介して位置測定装置40の復調器45に出力する。復調器45は、受波器3で受波された音波をパルス信号の周波数の信号に復調する。復調器45は、復調した信号を送波信号検出部46に出力する。送波信号検出部46は、復調された信号からパルス信号を取り出して時間差測定部47に出力する。時間差測定部47は、パルス信号の受波時刻を計測する(ステップS2-2)。
【0050】
一方、GPS解析部21は、人工衛星(図示せず)からGPS受信アンテナ6を介して受信するGPSデータを時系列に記録する。そして、GPS解析部21は、トリガ信号が生成された時刻に記録されたGPSデータを基にGPS受信アンテナ6の座標を求める(ステップS1-3)。GPS受信アンテナ6の座標(経度,緯度)を(XGPS,YGPS)とする。
【0051】
続いて、GPS解析部21は、トリガ信号生成部11によってトリガ信号が生成された時刻の送波器8の座標を、次のようにして求める。送波器8に取り付けられた深度計7が計測する深度をdとし、ケーブル51の長さをlとする。送波器8の吊下深度dを一定とする。GPS解析部21は、GPS受信アンテナ6と深度計7との水平距離Ahを、深度計7の深度dおよびケーブル51の長さlと、A=(l-d1/2の式とを用いて算出する。
【0052】
その後、GPS解析部21は、GPS受信アンテナ6の座標(XGPS,YGPS)を基準として送波器8の位置を求める。図6は、実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、送波器の座標を求める方法を説明するための模式図である。送波器8の座標(経度,緯度)を(Xobp,Yobp)とする。
【0053】
送波器8がGPS受信アンテナ6の位置から経線に対して角度δだけ緯線側に傾いているとする。角度δは、一般的に船に搭載される羅針盤(図示せず)が音源船5に設けられ、羅針盤によって計測される。送波器8の位置は、GPS受信アンテナ6の座標(XGPS,YGPS)からX軸方向にΔX移動し、Y軸方向にΔY移動した位置である。GPS解析部21は、ΔX=Acosδの式を用いてΔXを求め、ΔY=Asinδの式を用いてΔYを求める。さらに、GPS解析部21は、Xobp=XGPS+ΔXの式、およびYobp=YGPS+ΔYの式を用いて、送波器8の座標(Xobp,Yobp)を求める(ステップS2-3)。GPS解析部21は、求めた、送波器8の座標(Xobp,Yobp)の情報を、ネットワーク(図示せず)を介して、受波器座標測定部49に送信する。
【0054】
時間差測定部47は、トリガ信号の受信時刻およびパルス信号の受波時刻を基に、トリガ信号の伝搬時間およびパルス信号の伝搬時間の時間差ΔTを求める(ステップS3)。時間差測定部47が時間差ΔTを求める方法の一例を、図7を参照して説明する。図7は、実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、トリガ信号の送信および受信ならびにパルス信号の送波および受波のタイミングチャートの一例を示す図である。
【0055】
図7の横軸は時間である。図7(a)は送信器4から送信されるトリガ信号を示し、図7(b)は送波器8から送波されるパルス信号を示す。図7(c)は受信器2が受信するトリガ信号を示し、図7(d)は受波器3が受波するパルス信号を示す。送信器4がトリガ信号を送信した時刻および送波器8がパルス信号を送波した時刻をTとする。受信器2がトリガ信号を受信した時刻をTとし、受波器3がパルス信号を受波した時刻をTとする。
【0056】
電波の伝搬速度は水中を伝搬する音波の速度に比べて非常に高速なので、T≒Tと近似できる。また、電波の伝搬速度を考慮すると、送信器4の位置は観測点である送波器8の位置に近似できる。時間差ΔTは、電波によるトリガ信号の伝搬時間と音波によるパルス信号の伝搬時間との時間差であるが、音波の水中伝搬の時間と同等になる。よって、時間差ΔT=(パルス信号の伝搬時間)-(トリガ信号の伝搬時間)=(T-T)-(T-T)=(T-T)となる。つまり、トリガ信号の受信時刻Tとパルス信号の受波時刻Tとの時間差ΔTがパルス信号の音波伝搬時間となる。時間差測定部47は、求めた時間差ΔTの情報を受波器位置測定部48に送信する。
【0057】
なお、同じ観測点で、送信器4によるトリガ信号の送信および送波器8によるパルス信号の送波を複数回行ってもよい。この場合、位置測定装置40は、同じ観測点で複数回、時間差ΔTの測定を行い、測定した複数の時間差ΔTの平均値を算出し、その結果を受波器位置測定部48に送信する。これにより、波浪による送波器8の揺れがパルス信号の送波に与える影響を抑えることができる。
【0058】
受波器位置測定部48は、時間差ΔTの情報を時間差測定部47から受信すると、音速をcとすると、音速cおよび時間差ΔTを用いて、図1に示した送波器8と受波器3との間の距離Lを算出する(ステップS4)。距離Lは、音速cおよび時間差ΔTを用いて、式(1)によって算出される。
L=c×ΔT ・・・(1)
【0059】
ここで、音速cは、海水の温度K、深度Dおよび塩分濃度Sによって変化する。受波器位置測定部48は、事前に測定された温度K、深度Dおよび塩分濃度Sを用いて、式(2)によって、音速cを求める。
c=1448.96+4.591K-0.05304K+2.374×10-4+1.340(S-35)+1.630×10-2D+1.675×10-7-1.025×10-2K(S-35)-7.139×10-13KD ・・・(2)
【0060】
また、送波器8および受波器3のそれぞれの深度が異なるので、事前に深度方向に対する海水の温度を測定しておいてもよい。この場合、受波器位置測定部48は、深度方向に対する温度の違いを基に音速cを補正してもよい。受波器位置測定部48は、距離Lを算出すると、算出した距離Lの情報を受波器座標測定部49に送信する。
【0061】
受波器位置測定部48によって距離Lが算出されることで、観測点である送波器8から距離Lに受波器3が位置することが求められる。このようにして、本実施の形態1の位置測定システム50は、受波器3がトランスポンダ機能を備えていなくても、受波器3の位置を測定することができる。
【0062】
なお、図1に示す概念図において、海面から鉛直方向(図1のZ軸矢印の反対方向)に対してケーブル51の傾きの角度を計測する角度センサ(図示せず)が音源船5に設けられていてもよい。この場合、潮流によるケーブル51の傾きの角度をθとすると、GPS解析部21は、水平距離Aについて、角度θおよびケーブル51の長さlを用いて、A=l×sinθの式を用いて算出してもよい。
【0063】
次に、受波器座標測定部49は、1つの観測点の測定結果として、受波器位置測定部48から距離Lの情報を受信し、GPS解析部21から送波器8の座標(Xobp,Yobp)を受信する。受波器座標測定部49は、3つの観測点の測定結果を受信したか否かを判定する(ステップS5)。受波器座標測定部49が3つの観測点の測定結果を受信していない場合、位置測定システム50は、ステップS1-1~S1-3に戻る。一方、受波器座標測定部49は、ステップS5において、3つの観測点の測定結果を受信すると、3つの観測点における距離Lおよび送波器8の座標(Xobp,Yobp)を用いて受波器3の座標を求める(ステップS6)。以下に、受波器座標測定部49が実行するステップS6の具体的な処理内容を説明する。
【0064】
3つの観測点(Xobp,Yobp)の識別子および座標を、観測点A(A,A,A)、観測点B(B,B,B)および観測点C(C,C,C)とする。観測点Aと受波器3との距離LをRとし、観測点Bと受波器3との距離LをRとし、観測点Cと受波器3との距離LをRとする。受波器3の座標を目的座標(X,Y)とする。
【0065】
図8図10は、実施の形態1に係る位置測定システムにおいて、3つの観測点に基づいて受波器の座標を求める手順を説明するための模式図である。図8図10において、観測面は、海面ではなく、海中における深度dの水平面である。図8は、観測点Aに基づく受波器の位置が推定される範囲を示す図である。
【0066】
まず、図8において、観測点Aを中心に、測定結果から算出された距離L=Rを半径として球を描写する。このとき、Z軸方向において、観測点AのZ軸座標より受波器3の座標が高いことはないので、図8に示すように、受波器3の座標測定方法には半球を描写する。観測点Aを中心とする球は式(3)で表される。
(X-A+(Y-A+(Y-A=R ・・・(3)
半球面は送波器8から等しい距離にあるため、目的座標(X,Y)はこの半球面上のいずれかに存在することとなる。
【0067】
次に、図9に示すように、別の観測点Bを中心に、求めた距離L=Rを半径として半球を海中に描写する。図9は、観測点Aおよび観測点Bのそれぞれに基づく受波器の位置が推定される範囲を示す図である。観測点Bを中心とする球は式(4)で表される。
(X-B+(Y-B+(Y-B=R ・・・(4)
【0068】
図9に示すように、式(3)および式(4)による2つの半球面は、直線OPの真下にできる弧OPで交わる。弧OPは2つの観測点AおよびBからそれぞれ測定距離RおよびRだけ離れているため、受波器3はこの弧OP上に存在する。ここで、式(3)と式(4)との交点を、O(O,O)、P(P,P)とする。
【0069】
この交点Oおよび交点Pを繋ぐ直線は、式(5)で表される。
Y-O={(P-O)/(P-O)}(X-O) ・・・(5)
受波器3の座標が海面上の交点の座標と一致することから、海面上の交点の座標を目的座標(X,Y)とすると、目的座標(X,Y)は弧の真上の直線OP上にあることになる。
【0070】
そこで、図10に示すように、観測点をもう1つ増やし、図上で、観測点Cを中心に測定距離Rを半径とした円を描写する。図10は、観測点A、観測点Bおよび観測点Cのそれぞれに基づく受波器の位置が推定される範囲を示す図である。観測点Cを中心とする球は式(6)で表される。
(X-C+(Y-C+(Y-C=R ・・・(6)
図8図10を参照して考えたように、3つの円の交わる点を結んだ直線上に目的座標がある。ここで、式(4)と式(6)との交点を、R(R,R)、Q(Q,Q)とする。この交点Rと交点Qとを繋ぐ直線は、式(7)で表される。
Y-R={(Q-R)/(Q-R)}(X-R) ・・・(7)
【0071】
また、式(6)と式(3)との交点を、S(S,S)、U(U,U)とする。この交点Sと交点Uとを繋ぐ直線は、式(8)で表される。
Y-S={(U-S)/(U-S)}(X-S) ・・・(8)
【0072】
図10に示すように、観測点Aおよび観測点Bのそれぞれを円の中心として、2つの円の2箇所の交点を結ぶ直線をO-Pとして引く。観測点Bおよび観測点Cのそれぞれを円の中心として、2つの円の2箇所の交点を結ぶ直線をS-Uとして引く。観測点Cおよび観測点Aのそれぞれを円の中心として、2つの円の2箇所の交点を結ぶ直線をR-Qとして引く。これら3つの直線の交点が目的座標(X,Y)となる。
【0073】
目的座標(X,Y)は、式(5)、式(7)および式(8)を解いて、式(9)で表される。式(9)において、A={(P-O)/(P-O)},B={(Q-R)/(Q-R)}である。
【0074】
(X,Y)=[{AO-O-BR+R}/(A-B),A{AO-O-BR+R/(A-B)}-AO+O] ・・・(9)
【0075】
このようにして、3つの観測点における距離Lおよび送波器8の座標(Xobp,Yobp)を用いて受波器3の座標を求めることができる。
【0076】
本実施の形態1の位置測定システム50は、観測点に設けられた送信器4と、観測点に設けられた送波器8と、陸上局1に設けられた受信器2と、時間差測定部47と、受波器位置測定部48とを有する。送信器4は、陸上局1にトリガ信号を送信する。送波器8は、受波器3にパルス信号を送波する。受信器2は、トリガ信号を受信する。時間差測定部47は、トリガ信号が送信器4から受信器2に到達するまでの伝搬時間とパルス信号が送波器8から受波器3に到達するまでの伝搬時間との時間差ΔTを求める。受波器位置測定部48は、時間差測定部47によって求められた時間差ΔTと水中における音速cの値とを用いて、送波器8および受波器3間の距離Lを算出する。
【0077】
本実施の形態1によれば、トランスポンダ機能を持たない受波器3に対して、送波器8から受波器3までの距離Lが、観測点から陸上局1までの電波伝搬と観測点から受波器3までの音波伝搬との時間差ΔTを用いて算出される。そのため、受波器3がトランスポンダ機能を備えていなくても、受波器3の位置を推定することが可能となり、水中機器の低コスト化および小型化を実現することができる。
【0078】
また、本実施の形態1において、3つの観測点で測定し、図8図10を参照して説明した手順を行うことで受波器3の位置を示す座標を求めることができる。そのため、トランスポンダ機能を持たない受波器3の位置測定が可能となり、水中機器の低コスト化および小型化を実現することができる。
【0079】
(他の利用形態)
(変形例1)
上述の実施の形態1においては、受波器3が1個の場合を説明したが、受波器3がアレイ型で複数の受波器3が一体に構成されていてもよい。この場合、1箇所の受波器3を観測点として受波するパルス信号と、アレイ型の他の受波器3が受波するパルス信号との時間差から距離Lを算出する。そして、実施の形態1において、図8図10を参照して説明した座標決定と同様の手順により、観測点の受波器3の位置を測定することができる。
【0080】
(変形例2)
上述の実施の形態1においては、一隻の音源船5が観測点A~観測点Cの3つの観測点で測定する方法を説明したが、3隻の音源船5を用いて3つの観測点から同時に測定を行ってもよい。この場合においても、実施の形態1において、図8図10を参照して説明した座標決定と同様の手順により、受波器3の位置を測定することができる。
【0081】
(変形例3)
上述の実施の形態1においては、海底に設置した受波器3の位置を測定する方法を説明したが、3隻の音源船5を用いて一定時間ごとに測定を行い、陸上局1で一定時間ごとの受波器3の位置を測定してもよい。この場合、ソノブイまたはUUV(Unmanned Undersea Vehicle)のように水中を移動する機器の移動の軌跡を確認することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 陸上局
2 受信器
3 受波器
4 送信器
5 音源船
6 GPS受信アンテナ
7 深度計
8 送波器
9 伝送ケーブル
10 送信部
11 トリガ信号生成部
12 発振器
13 変調部
14 パワーアンプ
15 パルス信号生成部
16 パワーアンプ
20 座標解析部
21 GPS解析部
30 受信部
40 位置測定装置
41 チューニング部
42 パワーアンプ
43 復調器
44 送信信号検出部
45 復調器
46 送波信号検出部
47 時間差測定部
48 受波器位置測定部
49 受波器座標測定部
50 位置測定システム
51 ケーブル
61 トリガ信号復号部
62 パルス信号復号部
100 位置測定システム
101 水中機器
102 トランスポンダ
110 測量船
111 送受波器
112 GPS受信アンテナ
113 動揺計測装置
115 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10