(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049530
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】複数の材料の組み合わせを生成する方法、装置、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240403BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240403BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
H01F41/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155806
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】595181210
【氏名又は名称】株式会社ダイドー電子
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】塩井 亮介
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA01
3C100AA16
3C100BB05
3C100EE11
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】複数の材料の組み合わせによって構成される製品の製造工程において、材料の歩留まりを改善できる材料の組み合わせ方法を提供する。
【解決手段】材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記材料ごとの物理量の計測値を用いて、前記材料の組み合わせごとの評価値を算出する工程と、(i)前記全てのパターンについての前記評価値の分布が許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、(ii)前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定する工程と、を周期的に繰り返す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された複数の材料の集合から、既定の個数の前記材料の組み合わせを逐次的に生成する方法であって、
前記材料のそれぞれの所定の物理量を計測して記録する工程と、
前記集合の中から組み合わせられる候補となる複数の前記材料を集めて候補材料群を構成する工程と、
を備え、さらに、周期的に繰り返し実行される一連の工程として、
前記候補材料群における前記材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記材料ごとの前記物理量の計測値を用いて前記材料の組み合わせごとの評価値を算出する算出工程と、
前記全てのパターンについての、前記評価値ごとの前記材料の組み合わせ候補の数を表す前記評価値の分布が、前記評価値についての予め定められた許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、決定された今周期の前記材料の組み合わせを前記候補材料群から送り出す、組み合わせ工程と、
次周期の前記材料の組み合わせを生成するために、前記集合から前記候補材料群に新たな前記材料を補充する補充工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記算出工程は、前記全てのパターンごとの前記評価値の平均値を算出する工程を含み、
前記組み合わせ工程では、前記平均値が前記閾値より小さい場合に、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より小さい側に偏っていると判定し、前記平均値が前記閾値より大きい場合に、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っていると判定する、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の方法であって、
前記組み合わせ工程では、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より小さい側に偏っている場合には、前記評価値が、前記許容範囲内にあり、かつ、前記許容範囲の下限値に最も近い組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記評価値が、前記許容範囲内にあり、かつ、前記許容範囲の上限値に最も近い組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定する、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、
前記材料は、前記既定の個数が所定の方向に並べられて接着されることにより一体化されて板状の磁石を構成する磁石片であり、
前記物理量は、前記磁石片の前記所定の方向における寸法であり、前記評価値は、前記寸法の合計に相当する値である、方法。
【請求項5】
投入された複数の材料の集合から、既定の個数の前記材料の組み合わせを逐次的に生成する装置であって、
前記材料のそれぞれの所定の物理量を計測する測定部と、
前記測定部の計測結果を記憶する記憶部と、
前記集合に含まれる、組み合わせられる候補となる複数の前記材料によって構成された候補材料群を収容する候補収容部と、
(i)前記候補材料群における前記材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記記憶部に記憶された前記材料ごとの前記物理量の計測値を用いて、前記材料の組み合わせごとの評価値を算出する機能と、(ii)前記全てのパターンについての、前記評価値ごとの前記材料の組み合わせ候補の数を表す前記評価値の分布が、前記評価値についての予め定められた許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記候補収容部に、今周期の前記材料の組み合わせを前記候補材料群から送り出させる機能と、(iii)次周期の前記材料の組み合わせを生成するために、前記集合から、前記候補収容部の前記候補材料群に前記材料を補充させる機能と、を有する、組み合わせ処理部と、
を備える、装置。
【請求項6】
投入された複数の材料の集合から既定の個数の前記材料の組み合わせを逐次的に生成する装置が備えるコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、
前記集合における前記材料のそれぞれについて計測した所定の物理量の計測結果を記憶した記憶部から前記計測結果を読み出し、前記集合に含まれる、組み合わせられる候補となる複数の前記材料によって構成された候補材料群における前記材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記材料の組み合わせごとの評価値を、前記材料ごとの前記計測結果を用いて算出する処理と、
前記全てのパターンについての、前記評価値ごとの前記材料の組み合わせ候補の数を表す前記評価値の分布が、前記評価値についての予め定められた許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期の前記材料の組み合わせとして出力し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値に最も近い組み合わせを、今周期の前記材料の組み合わせとして出力する処理と、
を、前記コンピュータに繰り返し実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の材料の組み合わせを生成する方法、装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な技術分野において、複数の材料を自動的に組み合わせて1つの製品を連続して構成する種々の技術が知られている。例えば、電磁誘導を利用する技術分野においては、面積が大きい板状の磁石において渦電流が発生する領域を細かく分割するために、その板状の磁石を、複数の磁石片を組み合わせて繋ぎ合わせることによって製造する場合がある。そのような磁石の製造工程では、多くの場合、複数の磁石片を自動的に組み合わせて製品である磁石を精度よく連続して製造できるようにする技術が採用されている。
【0003】
通常、複数の材料を自動的に組み合わせる技術においては、組み合わせられる各材料の製造誤差等に起因して製品の品質にばらつきが生じないように、材料の組み合わせ方についての工夫がされる。例えば、下記の特許文献1の技術では、製品の質量にばらつきが生じないようにするために、製品の質量が目標値に最も近い最適組み合わせとなるように、材料の供給先をその質量の計測値に基づいて自動的に振り分けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の技術のように、目標値に最も近い最適組み合わせを採用する方法では、例えば、許容誤差範囲の臨界付近にあるような材料が、組み合わせに用いられないまま残留し、材料の歩留まりが悪化するという問題があった。このように、複数の材料の組み合わせによって構成される製品の製造工程では、製品に用いられないまま無駄になる材料を低減して、材料の歩留まりを改善することについて、依然として改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
[第1形態]本発明の第1形態は、投入された複数の材料の集合から、既定の個数の前記材料の組み合わせを逐次的に生成する方法として提供される。第1形態の方法は、前記材料のそれぞれの所定の物理量を計測して記録する工程と、前記集合の中から組み合わせられる候補となる複数の前記材料を集めて候補材料群を構成する工程と、を備え、さらに、周期的に繰り返し実行される一連の工程として、前記候補材料群における前記材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記材料ごとの前記物理量の計測値を用いて前記材料の組み合わせごとの評価値を算出する算出工程と、前記全てのパターンについての、前記評価値ごとの前記材料の組み合わせ候補の数を表す前記評価値の分布が、前記評価値についての予め定められた許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、決定された今周期の前記材料の組み合わせを前記候補材料群から送り出す、組み合わせ工程と、次周期の前記材料の組み合わせを生成するために、前記集合から前記候補材料群に新たな前記材料を補充する補充工程と、を備える。
第1形態の方法によれば、材料の組み合わせの全てのパターンについて求めた評価値の分布の、評価値の基準となる所定の閾値に対する偏りに基づいて材料の組み合わせが生成される。より具体的には、許容範囲内に評価値がある組み合わせのうちで、全てのパターンについての評価値の分布が偏っている側にある評価値を有する組み合わせが優先的に、候補材料群から送り出される。こうした材料の組み合わせの生成を繰り返していくことにより、候補材料群に、偏った評価値の原因となる物理量を有する材料が使用されないまま残留し続けることを抑制できるため、材料の歩留まりが悪化することを抑制できる。また、常に、評価値が許容範囲内にある材料の組み合わせが生成されるため、規格外の製品が製造されることを抑制することができる。
【0008】
[第2形態]上記第1形態の方法において、前記算出工程は、前記全てのパターンごとの前記評価値の平均値を算出する工程を含み、前記組み合わせ工程では、前記平均値が前記閾値より小さい場合に、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より小さい側に偏っていると判定し、前記平均値が前記閾値より大きい場合に、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っていると判定してよい。
第2形態の方法によれば、評価値の平均値と閾値との大小関係を用いることにより、材料の組み合わせの全てのパターンについての評価値の分布の偏りを容易に判定することができる。よって、今周期に出力する材料の組み合わせの決定を、さらに容易化することができる。
【0009】
[第3形態]上記第1形態、または、第2形態の方法において、前記組み合わせ工程では、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より小さい側に偏っている場合には、前記評価値が、前記許容範囲内にあり、かつ、前記許容範囲の下限値に最も近い組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記評価値が、前記許容範囲内にあり、かつ、前記許容範囲の上限値に最も近い組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定してよい。
第3形態の方法によれば、候補材料群における全ての組み合わせのパターンの中から、許容範囲内において最も偏った評価値を有する組み合わせが優先的に選ばれる。よって、候補材料群に、偏った評価値の原因となる物理量を有する材料が使用されないまま残留し続けることを、より効果的に抑制することができる。
【0010】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか1つに記載の方法において、前記材料は、前記既定の個数が所定の方向に並べられて接着されることにより一体化されて板状の磁石を構成する磁石片であり、前記物理量は、前記磁石片の前記所定の方向における寸法であり、前記評価値は、前記寸法の合計に相当する値としてよい。
第4形態の方法によれば、複数の磁石片を組み合わせて製造され、渦電流の発生領域が細かく分割された板状の磁石を、磁石片の歩留まりの低下を抑制しつつ、効率よく製造することができる。
【0011】
[第5形態]第5形態は、投入された複数の材料の集合から、既定の個数の前記材料の組み合わせを逐次的に生成する装置として提供される。第5形態の装置は、前記材料のそれぞれの所定の物理量を計測する測定部と、前記測定部の計測結果を記憶する記憶部と、前記集合に含まれる、組み合わせられる候補となる複数の前記材料によって構成された候補材料群を収容する候補収容部と、(i)前記候補材料群における前記材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記記憶部に記憶された前記物理量の計測値を用いて、前記材料の組み合わせごとの評価値を算出する機能と、(ii)前記全てのパターンについての、前記評価値ごとの前記材料の組み合わせ候補の数を表す前記評価値の分布が、前記評価値についての予め定められた許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が、前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値側にある評価値を有する組み合わせを、今周期に出力する前記材料の組み合わせとして決定し、前記候補収容部に、今周期の前記材料の組み合わせを前記候補材料群から送り出させる機能と、(iii)次周期の前記材料の組み合わせを生成するために、前記集合から、前記候補収容部の前記候補材料群に前記材料を補充させる機能と、を有する、組み合わせ処理部と、を備える。
第5形態の装置では、許容範囲内に評価値がある組み合わせのうちで、材料の組み合わせの全てのパターンについての評価値の分布が偏っている側にある評価値を有する組み合わせが優先的に、候補材料群から送り出される。このような材料の組み合わせを生成する処理が周期的に繰り返し実行されることにより、候補材料群に、偏った評価値の原因となる物理量を有する材料が使用されないまま残留し続けることを抑制でき、材料の歩留まりが悪化することを抑制できる。また、常に、評価値が許容範囲内の組み合わせが生成されるため、評価値が規格外となる製品が製造されることを抑制することができる。
【0012】
[第6形態]第6形態は、投入された複数の材料の集合から、既定の個数の前記材料の組み合わせを逐次的に生成する装置が備えるコンピュータにおいて実行されるプログラムとして提供される。第6形態のプログラムは、前記集合における前記材料のそれぞれについて計測した所定の物理量の計測結果を記憶した記憶部から前記計測結果を読み出し、前記集合に含まれる、組み合わせられる候補となる前記材料によって構成された候補材料群における前記材料の組み合わせの全てのパターンについて、前記材料の組み合わせごとの評価値を、前記計測結果を用いて算出する処理と、前記全てのパターンについての、前記評価値ごとの前記材料の組み合わせの数を表す前記評価値の分布が、前記評価値についての予め定められた許容範囲内の所定の閾値より小さい側に偏っている場合には、前記許容範囲内の前記評価値の分布において前記許容範囲の下限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期の前記材料の組み合わせとして出力し、前記全てのパターンについての前記評価値の分布が前記閾値より大きい側に偏っている場合には、前記許容範囲内での前記評価値の分布において前記許容範囲の上限値側にある前記評価値を有する組み合わせを、今周期の前記材料の組み合わせとして出力する処理と、を、前記コンピュータに繰り返し実行させる。
第6形態のプログラムによれば、コンピュータに材料の組み合わせを生成するための一連の処理を繰り返し実行させることができる。その一連の処理によれば、許容範囲内に評価値がある組み合わせのうちで、評価値の分布が偏っている側にある評価値を有する組み合わせが優先的に生成される。この処理が繰り返されれば、候補材料群に、偏った評価値の原因となる物理量を有する材料が使用されないまま残留し続けることを抑制できるため、材料の歩留まりが悪化することを抑制できる。また、常に、評価値が許容範囲内の組み合わせが生成されるため、評価値が規格外となる製品が製造されることを抑制することができる。
【0013】
本発明は、複数の材料の組み合わせを生成する方法や、装置、プログラム以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、複数の材料を組み合わせて製品を製造する製造装置や製造方法、磁石の製造装置や製造方法、それら製造装置を制御する制御装置や制御プログラム、プログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】候補材料群における組み合わせ候補の分布の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施形態:
図1は、本実施形態の材料組み合わせ装置100の構成を示す概略図である。材料組み合わせ装置100は、投入された複数の材料MTの集合から、既定の個数の材料MTの組み合わせを逐次的に自動で生成して送り出す。材料組み合わせ装置100の構成を説明する前に、
図2を参照して、本実施形態での処理対象である材料MTについて説明する。
【0016】
図2は、本実施形態において、材料組み合わせ装置100に投入される材料MTの一例を説明するための説明図である。
図2(a)には、一枚の板状の基材BMが図示されており、
図2(b)には、基材BMから切り出された複数の材料MTが図示されている。また、
図2(c)には、複数の材料MTが組み合わされて製造された製品PDが図示されている。
【0017】
本実施形態での材料MTは、
図2(b)に示す細長い板状の磁石片によって構成される。材料MTは、
図2(a)に示す一枚の板状の磁石である基材BMを細かく切断することによって作製される。各材料MTは、長さLと、幅Wと、厚みTのそれぞれの寸法が一致するように切り出される。基材BMから切り出された各材料MTには、材料組み合わせ装置100に投入される前に、全体に絶縁被膜が塗装される。
【0018】
材料MTは、既定の個数が組み合わされて、所定の方向に並べられて、接着剤ADによって互いが接着されて一体化されることにより、
図2(c)に示す製品PDを構成する。本実施形態の例では、
図2(b),(c)に示すように、2つの材料MTが組み合わされて、幅方向に並べられて一体化される。
【0019】
本実施形態の材料MTの組み合わせによって製造される製品PDは、1枚の板状の磁石である。この磁石によれば、渦電流が発生する領域が複数に分割されるため、電磁誘導を利用する機器に使用されたときに、大きな渦電流が発生することによる発熱やエネルギー損失を抑制することができる。
【0020】
図1を参照して、材料組み合わせ装置100の構成を説明する。
図1では、材料組み合わせ装置100内での材料MTの流れを示す矢印MF1~MF6が実線で示されており、材料組み合わせ装置100内での信号線を介した情報の流れを示す矢印が破線で示されている。
【0021】
本実施形態の材料組み合わせ装置100は、供給部10と、測定部20と、記憶部30と、材料保留部40と、候補収容部50と、組み合わせ処理部60と、集材部70と、を備える。
【0022】
供給部10は、矢印MF1で示すように、複数の基材BMから切り出された材料MTが混在する複数の材料MTを測定部20に供給する。供給部10は、例えば、複数の材料MTを搬送する台車によって構成される。供給部10は、複数の材料MTを搬送するベルトコンベアによって構成されてもよい。
【0023】
測定部20は、供給部10によって投入された複数の材料MTのそれぞれの所定の物理量を計測する。この物理量は、物理的手段により計測可能な、材料MTを組み合わせるときの基準となるパラメータである。本実施形態では、測定部20は、物理量として、材料MTの寸法を計測する。本実施形態では、測定部20は、寸法のうち、少なくとも、材料MTが製品PDを構成する際に並べられる方向における寸法である幅Wを計測する。本実施形態では、測定部20は、接触式手段により材料MTの寸法を計測する。
【0024】
測定部20は、材料MTが配置されるターンテーブル21と、ターンテーブル21に対して固定された位置に設置されている接触式の測長センサ23と、を備える。また、測定部20は、測長センサ23とターンテーブル21の駆動を制御し、測長センサ23によって得た計測結果の情報を処理する機能を有する測定制御部25を備える。測定制御部25は、例えば、中央処理装置(CPU)と、主記憶装置(RAM)とを有するコンピュータによって構成される。
【0025】
測定部20は、ターンテーブル21上で材料MTが回転し、所定の部位に測長センサ23が接触することにより材料MTの寸法を計測する。測定部20は、材料MTごとの物理量の計測結果MDを記憶部30に記憶させることにより記録する。なお、本実施形態では、ターンテーブル21には、重量計測機能が備えられており、測定部20は、寸法と同時に、材料MTの重量を計測することも可能である。ターンテーブル21の重量計測機能は省略されてもよい。また、他の実施形態では、測定部20は、光学的手段により、材料MTの寸法を測定してもよい。この場合には、例えば、ターンテーブル21上で回転する材料MTを撮像部により撮影した撮影画像を解析することにより、材料MTの寸法を計測するものとしてもよい。
【0026】
本実施形態では、測定制御部25は、物理量の測定結果MDを用いて材料MTの合否判定を実行する。測定制御部25は、材料MTの物理量の製造誤差が予め定められた許容範囲内のものであるか否かを判定する。本実施形態では、測定制御部25は、少なくとも、材料MTの幅Wについて、許容範囲内であるか否かを判定する。測定制御部25は、幅W以外の寸法や、重量、体積密度等についても判定してもよい。測定制御部25は、製造誤差が許容範囲内の材料MTについては、合格品として、矢印MF2に示すように、材料保留部40に送り出す。
【0027】
測定制御部25は、製造誤差が許容範囲外の材料MTについては、矢印MF3に示すように廃棄する。これにより、製造誤差が大きい材料MTが混入することによって製品PDの仕上がり精度が低下することを抑制できる。また、製造誤差が大きい材料MTが混入することにより、後述する組み合わせ処理において許容範囲外に属する材料MTの組み合わせが増加することを抑制できる。
【0028】
記憶部30は、外部から入力された情報を不揮発的に記憶する。記憶部30は、例えば、ハードディスク等によって構成される。上述したように、記憶部30は、測定部20が出力する材料MTの計測結果MDを記憶する。記憶部30には、材料MTごとに一意に付与された識別情報にその計測結果MDが紐づけられて記憶される。記憶部30は、組み合わせ処理部60からの要求に応じて、材料MTの計測結果MDを組み合わせ処理部60に出力する。
【0029】
また、本実施形態では、記憶部30は、組み合わせ処理部60から材料MTのステータス情報SDを受け取り、そのステータス情報SDを材料MTごとに紐づけて記憶する。ステータス情報SDには、組み合わせ処理での組み合わせ結果や、材料組み合わせ装置100内での各材料MTの所在を示す情報等が含まれる。
【0030】
材料保留部40は、測定部20から送り出された材料MTを保留する。材料保留部40は、最大N個の材料MTの集合を個々に区別された状態で収容する。Nは、例えば、1000以上の任意の自然数である。材料保留部40は、それぞれの材料MTを候補収容部50に搬出する搬送機構を備える。材料保留部40は、組み合わせ処理部60の制御下において、矢印MF4に示すように、収容している材料MTを候補収容部50に搬出する。材料保留部40は、例えば、材料MTを、先入れ先出しにより候補収容部50に搬出してもよいし、ランダムに抽出した材料MTを順に搬出してもよい。材料保留部40は、矢印MF5に示すように、候補収容部50から戻された材料MTを受け入れて、測定部20から受け入れた材料MTとともに保留する。
【0031】
候補収容部50は、組み合わせられる候補となる材料MTを集めた候補材料群MGを収容する。候補収容部50は、候補材料群MGを構成する材料MTが個々に区別された状態で配列されるトレー51を有する。トレー51には、n個の材料MTが、候補材料群MGとして収容される。nは、2より大きく、N以下の任意の自然数である。nは、組み合わせを構成する材料MTの個数より大きい数であればよく、例えば、10~500の範囲内の任意の自然数としてよい。なお、候補材料群MGにおける材料MTの個数nの決め方については後に詳述する。候補収容部50は、材料保留部40から送り出された材料MTを、順にトレー51上に配列する。材料組み合わせ装置100は、候補材料群MGを構成する材料MTの個数nを任意に設定可能であるとしてもよい。
【0032】
候補収容部50は、組み合わせ処理部60の制御下において、候補材料群MGの材料MTを、集材部70、または、材料保留部40に送り出す。候補収容部50は、組み合わせ処理部60から、後述する組み合わせ結果の出力を受け取ると、その結果に従って、候補材料群MGの中でその組み合わせを構成する材料MTを、矢印MF6に示すように、トレー51から集材部70に送り出す。また、候補収容部50は、組み合わせ処理部60から、候補材料群MGの入れ替え指示を受け取ると、矢印MF5に示すように、トレー51における候補材料群MGの全ての材料MTを材料保留部40へと戻す。
【0033】
組み合わせ処理部60は、CPU61とRAM63とを有するコンピュータによって構成される。組み合わせ処理部60では、CPU61がRAM63上に読み込まれたプログラムを実行することによって、後述する組み合わせ処理において、材料MTの組み合わせを逐次的に生成するための種々の機能が実現される。
【0034】
組み合わせ処理部60は、組み合わせ処理において、材料保留部40、候補収容部50、および、集材部70における材料MTの管理を実行する。組み合わせ処理部60は、材料保留部40から候補材料群MGとして候補収容部50に送り出された材料MTを特定する候補情報CDを取得する。また、組み合わせ処理部60は、その候補情報CDに基づいて、候補材料群MGの各材料MTの物理量の計測結果MDを記憶部30に要求して読み込む。
【0035】
組み合わせ処理部60は、その計測結果MDを用いて、製品PDを構成する既定の個数の材料MTの組み合わせを生成し、その組み合わせ結果を候補収容部50に出力する。本実施形態では、組み合わせ処理部60は、2つの材料MTの組み合わせを生成する。材料組み合わせ装置100は、組み合わせ処理部60によって組み合わせられる材料MTの個数を予め任意に設定可能であるとしてもよい。材料MTの組み合わせを生成する方法については後述する。
【0036】
上述したように、候補収容部50が組み合わせ結果を受け取ると、その組み合わせを構成する材料MTが候補収容部50から集材部70に送り出される。その後、組み合わせ処理部60は、材料保留部40に対して、候補材料群MGの材料MTの補充を指令する。組み合わせ処理部60は、材料MTの組み合わせを生成できないときには、候補材料群MGの入れ替えを候補収容部50に指令する。
【0037】
その他に、組み合わせ処理部60は、記憶部30に対して上述したステータス情報SDを出力する。組み合わせ処理部60が前述の指令を発行するタイミングやステータス情報SDを出力するタイミングについては後述する。
【0038】
集材部70は、候補収容部50から送り出された材料MTの組み合わせを、その組み合わせごとに収容する。集材部70に収容された材料MTの組み合わせのそれぞれは、組み合わせ処理部60によって個々の識別情報が付与されて管理される。集材部70は、各組み合わせの材料MTを接着剤で繋ぎ合わせる機構を備えていてもよい。
【0039】
図3を参照して、材料組み合わせ装置100において実行される組み合わせ処理のフローを説明する。
【0040】
ステップS10は、材料MTの物理量を計測する測定工程に相当する。ステップS10では、測定部20が、供給部10から供給された材料MTの物理量を計測する。上述したように、本実施形態では、物理量として、少なくとも、材料MTの幅Wが計測される。上述したように、測定部20による材料MTごとの物理量の計測結果MDは、記憶部30に記録される。
【0041】
また、本実施形態では、物理量の計測後、各材料MTについて、計測結果MDに基づく上述の合否判定がされる。合否判定において、合格した材料MTについては材料保留部40に搬出されて材料保留部40に保留される。合格判定がされなかった材料MTについては不良材料として廃棄される。
【0042】
ステップS20は、材料MTの集合の中から組み合わせられる候補となる複数の材料MTを集めて候補材料群MGを構成する工程に相当する。候補材料群MGは、候補収容部50に収容されている材料MTの集まりに相当する。ステップS20では、組み合わせ処理部60からの指令によって、材料保留部40に保留されているN個の材料MTの集合から組み合わせの候補となる所定の個数nの材料MTが候補収容部50に送り出される。このとき、材料保留部40は、候補材料群MGとして候補収容部50に送り出された各材料MTの識別情報を含む候補情報CDを組み合わせ処理部60に出力する。
【0043】
ステップS30以降の処理は、組み合わせ処理が終了するまで、周期的に繰り返し実行される。
【0044】
ステップS30は、組み合わせ処理部60が材料MTの計測結果MDを用いた算出処理を実行する工程に相当する。組み合わせ処理部60は、まず、記憶部30から、候補材料群MGを構成する各材料MTの測定結果MDを読み込む。続いて、組み合わせ処理部60は、候補材料群MGを構成する材料MTの全ての組み合わせのパターンを生成する。この組み合わせのパターンの1つずつが、候補材料群MGにおける材料MTの組み合わせ候補に相当する。
【0045】
次に、組み合わせ処理部60は、読み出した測定結果MDに含まれる材料MTごとの物理量の計測値を用いて、全てのパターンごとの評価値Xiを算出する。「評価値」は、材料MTの組み合わせ候補の評価を示す指標値であり、所定の数式に材料MTごとの物理量の計測値を代入することにより導出される。Xの添え字のiは、各組み合わせ候補に一意に付与される数字を示す。本実施形態では、評価値Xiは、材料MTの寸法の合計に相当する。より具体的には、評価値Xiは、材料MTの幅の合計に相当する。
【0046】
本実施形態では、組み合わせ処理部60は、さらに、全てのパターンについての評価値Xiの平均値Xavgを算出する。本実施形態では、平均値Xavgは、組み合わせ候補ごとの寸法の合計の平均値である。
【0047】
ステップS40では、組み合わせ処理部60は、材料MTの組み合わせの全てのパターンの中に、予め定められた許容範囲内にある評価値Xiを有する組み合わせ候補が存在するか否かを判定する。ここでの許容範囲は、評価値Xiについて予め定められたものであり、例えば、評価値Xiの目標値Xcに対して、許容される製造誤差の範囲に相当する。許容範囲は、例えば、目標値Xcの±5%の範囲としてもよい。
【0048】
材料MTの組み合わせの全てのパターンの中に、許容範囲内にある評価値Xiを有する組み合わせ候補が存在しないときには、組み合わせ処理部60は、ステップS45において、候補収容部50に、候補材料群MGの入れ替えを指令する。候補収容部50は、トレー51に配置されている候補材料群MGの全ての材料MTを材料保留部40に戻す。組み合わせ処理部60は、候補材料群MGを構成していた材料MTのステータス情報SDとして、材料保留部40に戻されたことを記録する。
【0049】
その後、再び、ステップS20の抽出工程が実行され、材料保留部40によって、新たに候補材料群MGを構成する材料MTが候補収容部50に送り出され、ステップS30以降の処理が再度実行される。これによって、評価値Xiが許容範囲内にある組み合わせが存在しないことにより、組み合わせ処理が継続できなくなることが抑制される。
【0050】
ステップS50では、組み合わせ処理部60が、ステップS30で算出した、各組み合わせ候補の評価値Xiを用いて今周期の材料MTの組み合わせを決定する組み合わせ決定処理を実行する。組み合わせ決定処理では、以下に説明するように、評価値Xiの分布に基づいて、材料MTの組み合わせの全てのパターンの中から、今周期の材料MTの組み合わせが決定されて出力される。
【0051】
図4を参照して、ステップS50の組み合わせ決定処理のフローを説明する。ステップS100では、組み合わせ処理部60は、材料MTの組み合わせの全てのパターンについての評価値Xiの分布に関して、その偏りを判定する。評価値Xiの分布は、評価値Xiごとの材料MTの組み合わせ候補の数を表す。評価値Xiの分布は、後に参照する
図5(a),(b),(c)において例示されているようなヒストグラムによって表すことができる。
【0052】
材料MTの組み合わせの全てのパターンについての評価値Xiの分布の偏りは、評価値Xiの予め定められた許容範囲内の所定の閾値を基準として、その閾値より許容範囲の下限値側に偏っているか、上限値側に偏っているかによって判定される。本実施形態では、所定の閾値は、評価値の目標値Xcであり、許容範囲の中央の値に相当する。
【0053】
本実施形態では、組み合わせ処理部60は、平均値Xavgが閾値以下である場合に、評価値Xiの分布の重心が許容範囲の下限値側に偏っていると判定する。一方、平均値Xavgが閾値より大きい場合に、評価値Xiの分布の重心が許容範囲の上限値側に偏っていると判定する。このように、平均値Xavgを用いれば、評価値Xiの分布の偏りの評価を数値の大小判定によって容易に行うことができる。
【0054】
なお、他の実施形態では、評価値Xiの分布の偏りの判定には、平均値Xavgが用いられなくてもよい。評価値Xiの分布の偏りは、材料MTの組み合わせの全てのパターンについての評価値Xiの中央値と許容範囲内の閾値との大小比較によって判定されてもよい。
【0055】
評価値Xiの分布が許容範囲の下限値側に偏っている場合、つまり、平均値Xavgが閾値以下である場合には、組み合わせ処理部60は、ステップS110を実行する。ステップS110では、組み合わせ処理部60は、許容範囲内での評価値Xiの分布において、その分布の重心より許容範囲の下限値側にある評価値Xiを有する組み合わせ候補を、今周期に出力する材料MTの組み合わせに決定する。「許容範囲内での評価値Xiの分布」とは、材料MTの組み合わせの全てのパターンについての評価値Xiの分布を全体分布とするとき、その全体分布の中で、評価値Xiが許容範囲内にあるものに限られたものの分布を意味する。また、許容範囲内での評価値Xiの分布の重心は、例えば、評価値Xiが許容範囲内にある組み合わせ候補の評価値Xiの平均値や中央値として求めることができる。
【0056】
本実施形態では、組み合わせ処理部60は、評価値Xiが、許容範囲の下限値に最も近い組み合わせ候補を、今周期に出力する材料MTの組み合わせに決定する。評価値Xiが許容範囲の下限値に最も近い組み合わせが複数ある場合には、組み合わせ処理部60は、例えば、その組み合わせを構成する材料MT間の物理量の差が最も大きい組み合わせを採用してもよい。
【0057】
一方、評価値Xiの分布が許容範囲の上限値側に偏っている場合、つまり、平均値Xavgが閾値より大きい場合には、組み合わせ処理部60は、ステップS120の処理を実行する。ステップS120では、組み合わせ処理部60は、許容範囲内での評価値Xiの分布において、許容範囲の上限値側にある評価値Xiを有する組み合わせ候補を、今周期に出力する材料MTの組み合わせに決定する。
【0058】
本実施形態では、組み合わせ処理部60は、評価値Xiが、許容範囲の上限値に最も近い組み合わせ候補を、今周期に出力する材料MTの組み合わせに決定する。評価値Xiが許容範囲の上限値に最も近い組み合わせが複数ある場合には、組み合わせ処理部60は、例えば、その組み合わせを構成する材料MT間の物理量の差が最も大きい組み合わせを採用してもよい。
【0059】
図3のステップS60では、組み合わせ処理部60は、候補収容部50に、
図4の組み合わせ決定処理において決定された組み合わせ結果を候補収容部50に出力する。候補収容部50は、その組み合わせ結果に従って、候補材料群MGの中から、今周期に出力する材料MTの組み合わせを集材部70に送り出す。本実施形態では、今周期の組み合わせを構成する2つの材料MTが集材部70に送り出される。組み合わせ処理部60は、集材部70に送り出され材料MTについて、他の材料MTと組み合わされ、集材部70に送り出されたことをステータス情報SDに記録する。
【0060】
ステップS70において、組み合わせ処理の終了条件が満たされた場合には、組み合わせ処理は完了する。組み合わせ処理の終了条件は、例えば、材料保留部40に保留されている材料MTの個数が既定の個数より小さい場合や、集材部70に必要な数の材料MTの組み合わせが送り出された場合、材料組み合わせ装置100の駆動停止が指令された場合等に満たされる。組み合わせ処理の終了条件は、ステップS45において候補材料群MGが材料保留部40に戻された回数が既定の回数を超えた場合に満たされるものとしてもよい。
【0061】
組み合わせ処理部60は、組み合わせ処理の終了条件が満たされていない場合には、ステップS75において、次周期の材料MTの組み合わせを生成するために、材料保留部40に、候補収容部50の候補材料群MGへの新たな材料MTの補充を指令する。これにより、材料保留部40から候補収容部50に、ステップS60で集材部70に送り出された材料MTの個数と同じ数の材料MTが送り出され、次周期の候補材料群MGが構成される。組み合わせ処理部60は、補充された材料MTを特定する候補情報CDを取得する。その後、ステップS30以降の一連の処理が再び実行される。
【0062】
図5を参照して、組み合わせ処理を実行している間の候補材料群MGにおける材料MTの組み合わせ候補の分布の変化を説明する。
図5(a),(b),(c)にはそれぞれ、横軸を評価値Xiとし、縦軸を、その評価値Xiを有する材料MTの組み合わせ候補の数を示す相対度数とするヒストグラムの一例が図示されている。
図5(a),(b),(c)のヒストグラムの横軸には、許容範囲の上限値X
Uおよび下限値X
Lと、評価値の目標値Xcとが図示されている。
図5(a),(b),(c)では、材料MTの組み合わせの全てのパターンについての分布である全体分布Daと、許容範囲内での評価値Xiの分布である許容範囲内分布Dbと、を図示してある。
図5(a)のヒストグラムは、平均値Xavgが目標値Xcより小さい場合の一例であり、
図5(b)のヒストグラムは、平均値Xavgが目標値Xcより大きい場合の一例である。
図5(c)のヒストグラムは、平均値Xavgが、目標値よりも大きく、かつ、許容範囲の外にある場合の一例である。
【0063】
図5(a)に示すように、平均値Xavgが所定の閾値である目標値Xcより小さい場合には、評価値Xiが目標値Xcよりも小さい材料MTの組み合わせ候補が多く存在し、全体分布Daは許容範囲の下限値X
L側に偏る傾向にある。この場合には、
図4を参照して説明した組み合わせ決定処理では、許容範囲内分布Dbの重心より許容範囲の下限値X
L側にある評価値Xiを有する組み合わせ候補が、今周期に出力される材料MTの組み合わせとして決定される。本実施形態では、上述したように、評価値Xiが、許容範囲の下限値X
L以上であり、かつ、下限値X
Lに最も近い組み合わせ候補が、今周期に出力される材料MTの組み合わせとして決定される。
【0064】
一方、
図5(b)に示すように、平均値Xavgが所定の閾値である目標値Xcより大きい場合には、評価値Xiが目標値Xcよりも大きい材料MTの組み合わせ候補が多く存在し、全体分布Daは許容範囲の上限値X
U側に偏る傾向にある。この場合には、組み合わせ決定処理では、許容範囲内分布Dbの重心より許容範囲の上限値X
U側にある評価値Xiを有する組み合わせ候補が、今周期に出力される材料MTの組み合わせとして決定される。本実施形態では、上述したように、評価値Xiが、許容範囲の上限値X
U以下であり、かつ、上限値X
Uに最も近い組み合わせ候補が、今周期に出力される材料MTの組み合わせとして決定される。
【0065】
図5(c)に示すように、許容範囲内分布Dbが、目標値Xcに対して、全体分布Daが偏っている許容範囲の臨界値X
L,X
U側とは反対側に分布している場合がある。この場合でも、本実施形態の組み合わせ決定処理では、許容範囲内分布Dbのうちで、許容範囲内分布Dbの重心より、全体分布Daが偏っている臨界値X
L,X
U側にある評価値Xiを有する組み合わせ候補が、今周期に出力される材料MTの組み合わせとして決定される。
図5(c)の例では、許容範囲の上限値X
Uに最も近い評価値Xiを有する組み合わせ候補が今周期に出力される材料MTの組み合わせとして決定される。
【0066】
このように、各周期の組み合わせ決定処理では、許容範囲内分布Dbの重心より全体分布Daが偏っている臨界値XL,XU側にある、許容範囲内の評価値Xiを有する組み合わせ候補の材料MTが優先的に候補群材料MGから除かれていく。よって、組み合わせ決定処理が繰り返し実行されていったときに、候補材料群MGに、偏った評価値Xiの原因となる物理量を有する材料MTが使用されないまま残留し続けることが抑制され、材料MTの歩留まりが悪化することが抑制される。また、候補材料群MGから抜き出される材料MTの組み合わせの評価値Xiは、常に、許容範囲内にあるため、規格外の製品PDが製造されることが抑制される。
【0067】
上述したように、本実施形態の組み合わせ決定処理では、現在の候補材料群MGにおける全ての組み合わせ候補の中から、許容範囲の下限値XL、または、上限値XUに最も近い評価値Xiを有する組み合わせが優先的に選ばれる。よって、候補材料群MGに、偏った評価値の原因となる物理量を有する材料MTが使用されないまま残留し続けることが、より効果的に抑制される。
【0068】
なお、上記のように、組み合わせ処理では、候補材料群MGの材料MTの全ての組み合わせのパターンについての評価値Xiを求め、その評価値Xiの分布に基づいて今周期の材料MTの組み合わせを決定している。そのため、候補収容部50に収容されている候補材料群MGの材料MTの個数nが小さい方が、組み合わせ処理におけるステップS30~S60の1周期分の処理の処理時間を短縮することができる。よって、計算負荷を軽減するためには、材料収容部50に収容される材料MTの個数nは小さい方が好ましい。ただし、その一方で、nが大きいほど、候補材料群MGにおいて候補となる組み合わせパターンの数が指数関数的に増大し、より多くの候補の中から出力する組み合わせを選択できるというメリットもある。材料収容部50に収容される材料MTの個数nは、組み合わせ処理部60の処理能力や、材料組み合わせ装置100のサイズの制約に応じて適切に設定されればよい。
【0069】
図2を参照して説明したように、本実施形態の各材料MTである磁石片の表面には製品PDを構成する前に絶縁被膜が塗装される。本実施形態の材料組み合わせ装置100によって生成された材料MTの組み合わせによって製品PDを構成すれば、製品PDが規格から外れることが抑制される。よって、製品PDの構成後に、製品PDの寸法精度を出すための研削加工等の仕上げ加工を省略できる。また、そのような仕上げ加工により絶縁被膜が劣化することを抑制できる。なお、各材料MTの表面に絶縁被膜が塗装されない場合であっても、上記のように、本実施形態の材料組み合わせ装置100によって生成された材料MTの組み合わせを用いれば、製品PDの構成後の製品PDの寸法精度を出すための仕上げ加工を省略できる。よって、製品PDの製造効率を高めることができる。
【0070】
以上のように、本実施形態の材料組み合わせ装置100が実行する組み合わせ処理によれば、規格外の物理量を有する製品PDの製造を抑制しつつ、製品PDに用いられないまま無駄になる材料MTを低減して、材料MTの歩留まりを改善することができる。
【0071】
2.他の実施形態:
本発明は、上述の各実施形態の構成に限定されることはなく、例えば、以下のような形態で実現することもできる。本明細書において、他の実施形態として説明されている構成はいずれも、上述の各実施形態と同様に、本発明を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0072】
2-1.他の実施形態1:
材料MTは、上記各実施形態で説明した磁石片には限定されない。材料MTは、例えば、工業製品に用いられる様々な部品であってもよいし、既定の個数が組み合わされて梱包された製品PDを構成する農作物や薬剤、その他の物品であってもよい。
【0073】
2-2.他の実施形態2:
材料MTを組み合わせるときの基準となる物理量は、上記実施形態で説明した材料MTの幅には限定されない。材料MTの物理量は、例えば、長さや厚み、径など、幅以外の材料MTにおける所定の方向の寸法でもよいし、面積や体積、重量であっても良い。材料MTの物理量は、その他に、例えば、密度や硬度、電気抵抗、表面粗さ等でもよい。材料MTの物理量は、物理的手段によって計測可能な物性値であるとしてもよい。この場合には、評価値Xiは、物理量の積算による合計として求められなくてもよく、例えば、材料MTの組み合わせ全体における物理量の平均値として導出されてもよい。物理量が電気抵抗である場合、評価値Xiは、材料MTの組み合わせにおける合成抵抗として導出されてもよい。
【0074】
2-3.他の実施形態3:
製品PDを構成するために組み合わせられる材料MTの個数は特に限定されない。材料組み合わせ装置100では、3個以上の材料MTが組み合わせられるものとしてもよい。
【0075】
2-4.他の実施形態4:
組み合わせ決定処理では、平均値Xavgと比較される所定の閾値は、許容範囲の中央の値である目標値Xcでなくてもよく、許容範囲内で予め定められた任意の値でよい。また、組み合わせ決定処理において、許容範囲に対する評価値Xiの分布の偏りを判定する方法は、上記実施形態で説明した平均値Xavgを用いる方法には限定されない。組み合わせ決定処理では、上記実施形態中でも説明したように、平均値Xavgの代わりに、全てのパターンの評価値Xiの中央値が用いられてもよい。この方法では、評価値Xiが閾値より小さい組み合わせ候補の数が、評価値Xiが閾値より小さい組み合わせ候補の数より大きい場合に、評価値Xiの分布が許容範囲の下限値側に偏っていると判定される。同様に、評価値Xiが閾値より大きい組み合わせ候補の数が、評価値Xiが閾値より小さい組み合わせ候補の数より大きい場合に、評価値Xiの分布が、許容範囲の上限値側に偏っていると判定される。組み合わせ決定処理では、評価値Xiの分布が、予め準備された第1の分布パターンに適合する場合に、許容範囲の下限値側に偏っていると判定し、予め準備された第2の分布パターンに適合する場合に、許容範囲の上限値側に偏っていると判定してもよい。
【0076】
2-5.他の実施形態5:
上記実施形態において、
図4のステップS110,S120では、評価値の分布が閾値に対して偏っている側の許容範囲の臨界値に最も近い評価値Xiを有する組み合わせに決定する代わりに、他の評価値Xiを有する組み合わせに決定されてもよい。例えば、平均値Xavgが許容範囲内にあるのであれば、ステップS110では、評価値Xiが、平均値Xavgより小さく、許容範囲の下限値以上である組み合わせに決定されてもよい。また、ステップS120では、評価値Xiが、平均値Xavgより大きく、許容範囲の上限値以下である組み合わせに決定されてもよい。なお、
図5(c)に示すように、平均値Xavgが許容範囲外にある場合には、上記実施形態と同様に、評価値の分布が閾値に対して偏っている側の許容範囲の臨界値に最も近い評価値Xiを有する組み合わせに決定されてもよい。また、ステップS110では、許容範囲内分布Dbにおいて許容範囲の下限値側にあり、度数が最も高い評価値Xiを有する組み合わせに決定され、ステップS120では、許容範囲内分布Dbにおいて許容範囲の上限値側にあり、度数が最も高い評価値Xiを有する組み合わせに決定されてもよい。
【0077】
2-6.他の実施形態6:
組み合わせ決定処理は、1周期に1組の材料MTの組み合わせを出力する構成には限定されない。組み合わせ決定処理では、1周期に複数組の材料MTの組み合わせが出力されてもよい。この場合には、材料組み合わせ装置100では、組み合わせ処理の1周期ごとに、候補収容部50から、複数の材料MTの組み合わせが集材部70に送り出される。
【0078】
2-7.他の実施形態7:
上記実施形態の材料組み合わせ装置100において、材料保留部40を候補収容部50に統合して、候補収容部50と一体化してもよい。この場合には、その候補収容部50には、材料保留部40に収容可能であった材料MTの個数Nに等しい個数nの材料MTが、測定部20から供給されて収容される。
【符号の説明】
【0079】
10…供給部、20…測定部、21…ターンテーブル、23…測長センサ、25…測定制御部、30…記憶部、40…材料保留部、50…候補収容部、51…トレー、60…組み合わせ処理部、61…中央処理装置(CPU)、63…主記憶装置(RAM)、70…集材部、100…材料組み合わせ装置、AD…接着剤、BM…基材、CD…候補情報、Da…全体分布、Db…許容範囲内分布、MD…計測結果、MG…候補材料群、MT…材料、PD…製品、SD…ステータス情報