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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004954
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 67/00 20060101AFI20240110BHJP
   A01D 75/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01D67/00 G
A01D75/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104872
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】立花 歩
【テーマコード(参考)】
2B076
2B085
【Fターム(参考)】
2B076AA04
2B076BA05
2B076BB02
2B076CA01
2B076CA11
2B076CA20
2B076CC02
2B076CD02
2B076CD05
2B076CD08
2B085AA03
2B085AC41
2B085BC19
2B085BE27
(57)【要約】
【課題】刈取部を付け替えてもリールの下降速度が変化しない収穫機を提供する。
【解決手段】機体に取り付けられると共に、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部を備え、刈取部は、横幅方向に沿ったリール軸芯周りに回転駆動しながら植立穀稈を掻き込むリールを有しており、リールを昇降可能なアクチュエータ4と、アクチュエータ4を制御する昇降制御部21と、を備え、機体は、機体に取り付けられている刈取部を、刈幅の異なる別の刈取部に付け替え可能に構成されており、昇降制御部21は、リールが下降するようにアクチュエータ4を制御する際、機体に取り付けられている刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度でリールが下降するようにアクチュエータ4を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に取り付けられると共に、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部を備え、
前記刈取部は、横幅方向に沿ったリール軸芯周りに回転駆動しながら前記植立穀稈を掻き込むリールを有しており、
前記リールを昇降可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する昇降制御部と、を備え、
前記機体は、前記機体に取り付けられている前記刈取部を、刈幅の異なる別の前記刈取部に付け替え可能に構成されており、
前記昇降制御部は、前記リールが下降するように前記アクチュエータを制御する際、前記機体に取り付けられている前記刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度で前記リールが下降するように前記アクチュエータを制御する収穫機。
【請求項2】
前記昇降制御部は、前記リールが上昇するように前記アクチュエータを制御する際、前記機体に取り付けられている前記刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度で前記リールが上昇するように前記アクチュエータを制御する請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記アクチュエータは、デューティー制御式の電磁油圧弁により駆動する油圧シリンダであり、
前記昇降制御部は、前記電磁油圧弁のデューティー比を制御することにより前記油圧シリンダを制御するように構成されており、
前記昇降制御部は、前記リールが下降するように前記油圧シリンダを制御する際、前記機体に取り付けられている前記刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度で前記リールが下降するように前記デューティー比を制御する請求項1または2に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に取り付けられると共に圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部を備える収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような収穫機として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この収穫機(特許文献1では「汎用コンバイン」)に備わる刈取部は、植立穀稈を掻き込むリール(特許文献1では「掻込リール」)を有している。このリールは昇降可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-83375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の収穫機において、機体に取り付けられている刈取部を、刈幅の異なる別の刈取部に付け替え可能に構成することが考えられる。これにより、収穫機の刈幅を変更することができる。
【0005】
しかしながら、刈取部の刈幅が長いほど、リールの重量が大きくなりがちである。そのため、刈取部の付け替えに伴い、リールの重量が変化しがちである。リールの重量が変化すると、リールを下降させる際のリールの下降速度が変化しがちである。
【0006】
本発明の目的は、刈取部を付け替えてもリールの下降速度が変化しない収穫機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、機体に取り付けられると共に、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部を備え、前記刈取部は、横幅方向に沿ったリール軸芯周りに回転駆動しながら前記植立穀稈を掻き込むリールを有しており、前記リールを昇降可能なアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する昇降制御部と、を備え、前記機体は、前記機体に取り付けられている前記刈取部を、刈幅の異なる別の前記刈取部に付け替え可能に構成されており、前記昇降制御部は、前記リールが下降するように前記アクチュエータを制御する際、前記機体に取り付けられている前記刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度で前記リールが下降するように前記アクチュエータを制御することにある。
【0008】
本構成によれば、機体に取り付けられている刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度でリールが下降するようにアクチュエータが制御される。これにより、刈取部を付け替えてもリールの下降速度が変化しない収穫機を実現できる。
【0009】
その結果、例えば収穫機が自動走行する場合、機体に取り付けられている刈取部の刈幅に応じて、リールの下降開始タイミング、走行速度、走行位置等を調節(変更)する必要がない。即ち、機体に取り付けられている刈取部の刈幅によらず、画一的な制御が可能となる。
【0010】
さらに、本発明において、前記昇降制御部は、前記リールが上昇するように前記アクチュエータを制御する際、前記機体に取り付けられている前記刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度で前記リールが上昇するように前記アクチュエータを制御すると好適である。
【0011】
本構成によれば、機体に取り付けられている刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度でリールが上昇するようにアクチュエータが制御される。これにより、刈取部を付け替えてもリールの上昇速度が変化しない収穫機を実現できる。
【0012】
さらに、本発明において、前記アクチュエータは、デューティー制御式の電磁油圧弁により駆動する油圧シリンダであり、前記昇降制御部は、前記電磁油圧弁のデューティー比を制御することにより前記油圧シリンダを制御するように構成されており、前記昇降制御部は、前記リールが下降するように前記油圧シリンダを制御する際、前記機体に取り付けられている前記刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度で前記リールが下降するように前記デューティー比を制御すると好適である。
【0013】
本構成によれば、機体に取り付けられている刈取部の刈幅にかかわらず一定の速度でリールが下降するようにアクチュエータが制御される構成を確実に実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】第1刈取部及び第2刈取部の平面図である。
図3】制御部等の構成を示すブロック図である。
図4】リールの昇降用の油圧回路を示す図である。
図5】デューティー制御の制御信号を示す図である。
図6】搬送部の底面図である。
図7図6のVII-VII断面矢視図である。
図8図6のVIII-VIII断面矢視図である。
図9】タインの構成を示す平面図である。
図10】タインの構成を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図中の矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0016】
〔コンバインの構成〕
図1に示すように、本実施形態におけるコンバイン1(本発明に係る「収穫機」に相当)の機体10は、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18を備えている。
【0017】
走行装置11は、機体10における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0018】
運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、作業者が搭乗可能である。尚、作業者は、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0019】
図1に示すように、穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。
【0020】
コンバイン1は、刈取部Hを備えている。刈取部Hは、搬送部16の前端部に取り付けられている。これにより、刈取部Hは、コンバイン1の前部に設けられている。また、刈取部Hは、ヘッダ6、刈刃15、リール17を含んでいる。
【0021】
刈刃15は、圃場の植立穀稈を刈り取る。刈り取られた穀稈は、ヘッダ6に受け入れられる。また、リール17は、機体10の横幅方向(左右方向)に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。
【0022】
即ち、刈取部Hは、横幅方向に沿ったリール軸芯17b周りに回転駆動しながら植立穀稈を掻き込むリール17を有している。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、刈取部Hは、オーガ2を有している。オーガ2は、機体左右方向に延びる円筒状に構成されている。オーガ2は、機体左右方向に延びる軸芯周りに回転駆動する。ヘッダ6に受け入れられた刈取穀稈は、オーガ2によって搬送部16へ送られる。
【0024】
この構成により、刈取部Hは、圃場の作物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0025】
即ち、コンバイン1は、機体10に取り付けられると共に、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部Hを備えている。
【0026】
刈取部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0027】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0028】
また、機体10は、昇降シリンダ3を有している。昇降シリンダ3は、油圧によって伸縮するように構成されている。昇降シリンダ3は、搬送部16の下方に設けられている。昇降シリンダ3が伸びると、搬送部16及び刈取部Hが上昇する。また、昇降シリンダ3が縮むと、搬送部16及び刈取部Hが下降する。
【0029】
図2に示すように、機体10は、機体10に取り付けられている刈取部Hを、刈幅の異なる別の刈取部Hに付け替え可能に構成されている。例えば、図2には、第1刈取部H1及び第2刈取部H2が示されている。第1刈取部H1及び第2刈取部H2は、何れも、刈取部Hである。第1刈取部H1の刈幅は、第2刈取部H2の刈幅よりも広い。そして、機体10は、機体10に取り付けられている第1刈取部H1を、第2刈取部H2に付け替え可能に構成されている。また、機体10は、機体10に取り付けられている第2刈取部H2を、第1刈取部H1に付け替え可能に構成されている。
【0030】
尚、第1刈取部H1の重量は、第2刈取部H2の重量よりも大きい。また、第1刈取部H1のリール17の重量は、第2刈取部H2のリール17の重量よりも大きい。
【0031】
〔油圧シリンダ〕
図1に示すように、機体10は、アクチュエータ4を有している。アクチュエータ4は、具体的には、油圧シリンダ5によって構成されている。油圧シリンダ5は、油圧によって伸縮するように構成されている。油圧シリンダ5は、刈取部Hに設けられている。油圧シリンダ5が伸びると、リール17がヘッダ6に対して上昇する。また、油圧シリンダ5が縮むと、リール17がヘッダ6に対して下降する。
【0032】
即ち、コンバイン1は、リール17を昇降可能なアクチュエータ4を備えている。
【0033】
図3に示すように、コンバイン1は、操作具7、制御部20、バルブ機構30を備えている。操作具7は、運転部12(図1参照)に設けられている。作業者は、操作具7を操作可能である。特に限定されないが、操作具7は、例えば、前後に揺動操作可能なレバーであっても良いし、一つまたは複数の押しボタンにより構成されていても良い。
【0034】
制御部20は、昇降制御部21を有している。また、バルブ機構30は、油圧シリンダ5に与えられる油圧を変更可能に構成されている。昇降制御部21は、バルブ機構30を制御することにより、油圧シリンダ5の伸縮を制御可能に構成されている。
【0035】
即ち、コンバイン1は、アクチュエータ4を制御する昇降制御部21を備えている。
【0036】
操作具7が操作されると、操作具7の操作に応じた信号が昇降制御部21へ送られる。昇降制御部21は、この信号に応じて、油圧シリンダ5の伸縮を制御する。例えば、操作具7が前後に揺動操作可能なレバーである場合、操作具7が後側へ揺動操作されると、昇降制御部21は、油圧シリンダ5が伸びるように、油圧シリンダ5の伸縮を制御する。その結果、リール17がヘッダ6に対して上昇する。また、操作具7が前側へ揺動操作されると、昇降制御部21は、油圧シリンダ5が縮むように、油圧シリンダ5の伸縮を制御する。その結果、リール17がヘッダ6に対して下降する。
【0037】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる昇降制御部21等の各機能部は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。例えば、制御部20に含まれる各機能部に対応するプログラムを図示しないROMや不揮発性メモリに記憶しておき、それらプログラムをCPUにロードして実行することにより、各機能部に対応するプロセスが実行される構成であっても良い。
【0038】
〔バルブ機構〕
図4に示すように、コンバイン1は、第1ポンプ41及び第2ポンプ42を備えている。第1ポンプ41及び第2ポンプ42は、何れも、コンバイン1に備わるエンジン(図示せず)の動力によって駆動する。第1ポンプ41及び第2ポンプ42は、バルブ機構30に圧油を供給する。
【0039】
バルブ機構30は、主スプール31、上昇用デューティー弁32(本発明に係る「電磁油圧弁」に相当)、下降用デューティー弁33(本発明に係る「電磁油圧弁」に相当)、パイロット式逆止弁34を有している。上昇用デューティー弁32及び下降用デューティー弁33は、何れもデューティー制御式の油圧弁である。
【0040】
主スプール31は、パイロット圧の供給を受けて正又は逆に作動する中立復帰型に構成されている。主スプール31の一端に、第1制御油室35が設けられている。主スプール31の他端に、第2制御油室36が設けられている。上昇用デューティー弁32は、第1制御油室35に上昇用のパイロット油圧を供給する。下降用デューティー弁33は、第2制御油室36に下降用のパイロット油圧を供給する。
【0041】
図4に示された主スプール31は、中立状態(図4の符号「N」)である。第1制御油室35及び第2制御油室36の何れにもパイロット圧が供給されていないとき、主スプール31は中立状態で維持される。
【0042】
油圧シリンダ5には、リール17にかかる重力によって負荷圧が作用している。しかしながら、主スプール31が中立状態であるとき、パイロット式逆止弁34の自閉作用によって油圧シリンダ5からの作動油の流出が阻止される。そのため、刈取部H及び搬送部16は現状の高さ位置に維持される。
【0043】
上昇用デューティー弁32が間欠駆動されると、第1制御油室35に上昇作動用のパイロット圧が供給される。これにより、主スプール31は、上昇側(図4の符号「S1」側)に変位する。その結果、パイロット式逆止弁34が開状態となると共に、油圧シリンダ5は圧油供給を受ける。これにより、油圧シリンダ5が伸びる。即ち、リール17がヘッダ6に対して上昇する。
【0044】
下降用デューティー弁33が間欠駆動されると、第2制御油室36に下降作動用のパイロット圧が供給される。これにより、主スプール31は、下降側(図4の符号「S2」側)に変位する。その結果、パイロット式逆止弁34が開状態となると共に、油圧シリンダ5から作動油が流出する。これにより、油圧シリンダ5が縮む。即ち、リール17がヘッダ6に対して下降する。
【0045】
以上の構成により、油圧シリンダ5は、上昇用デューティー弁32及び下降用デューティー弁33により駆動する。即ち、アクチュエータ4は、デューティー制御式の上昇用デューティー弁32及び下降用デューティー弁33により駆動する油圧シリンダ5である。
【0046】
〔デューティー比の制御〕
図3に示すように、制御部20は、取得部22を有している。取得部22は、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅を示す情報を取得する。特に限定されないが、例えば、取得部22が複数種類の刈取部Hの刈幅を記憶していると共に、機体10に取り付けられている刈取部Hの種類を取得部22が自動的に認識するように構成されていても良い。あるいは、機体10に取り付けられている刈取部Hの種類または刈幅を示す情報が作業者によって入力されると共に、当該情報を取得部22が取得するように構成されていても良い。また、取得部22は、例えば、機体10に取り付けられている刈取部Hが第1刈取部H1と第2刈取部H2との何れであるかを自動的に認識するように構成されていても良い。
【0047】
取得部22は、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅を示す情報を、昇降制御部21へ送る。昇降制御部21は、当該情報に基づいて、上昇用デューティー弁32及び下降用デューティー弁33のデューティー比を制御する。これにより、昇降制御部21は、油圧シリンダ5を制御する。
【0048】
即ち、昇降制御部21は、上昇用デューティー弁32及び下降用デューティー弁33のデューティー比を制御することにより油圧シリンダ5を制御するように構成されている。
【0049】
より具体的には、昇降制御部21は、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅を示す情報に基づいて、上昇用デューティー弁32または下降用デューティー弁33のデューティー比を、図5に示す大小二つのデューティー比のうちの何れか一方に決定する。
【0050】
図5の上側に示されているデューティー制御のデューティー比は、第1デューティー比D1である。第1デューティー比D1は、例えば80%であっても良い。デューティー比が80%であるとき、上昇用デューティー弁32または下降用デューティー弁33は、1周期Tのうち80%の時間に亘ってON状態(パイロット圧を供給する状態)となり、1周期Tのうち20%の時間に亘ってOFF状態(パイロット圧を供給しない状態)となる。
【0051】
図5の下側に示されているデューティー制御のデューティー比は、第2デューティー比D2である。第2デューティー比D2は、第1デューティー比D1よりも小さい。第2デューティー比D2は、例えば40%であっても良い。デューティー比が40%であるとき、上昇用デューティー弁32または下降用デューティー弁33は、1周期Tのうち40%の時間に亘ってON状態(パイロット圧を供給する状態)となり、1周期Tのうち60%の時間に亘ってOFF状態(パイロット圧を供給しない状態)となる。
【0052】
〔リールの下降時の制御〕
図3に示した昇降制御部21は、リール17が下降するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅が長いほど、下降用デューティー弁33のデューティー比を小さくするように構成されていると好適である。これにより、刈取部Hの刈幅と下降用デューティー弁33のデューティー比との関係を適宜定めれば、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅にかかわらず一定の速度でリール17が下降することとなる。
【0053】
例えば、昇降制御部21は、リール17が下降するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に第1刈取部H1が取り付けられている場合は、下降用デューティー弁33のデューティー比を、第2デューティー比D2に決定する。
【0054】
また、昇降制御部21は、リール17が下降するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に第2刈取部H2が取り付けられている場合は、下降用デューティー弁33のデューティー比を、第1デューティー比D1に決定する。
【0055】
これにより、第1デューティー比D1及び第2デューティー比D2が適宜定められていれば、機体10に第1刈取部H1が取り付けられている場合のリール17の下降速度と、機体10に第2刈取部H2が取り付けられている場合のリール17の下降速度と、が同一となる。
【0056】
即ち、昇降制御部21は、リール17が下降するようにアクチュエータ4を制御する際、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅にかかわらず一定の速度でリール17が下降するようにアクチュエータ4を制御する。より具体的には、昇降制御部21は、リール17が下降するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅にかかわらず一定の速度でリール17が下降するようにデューティー比を制御する。
【0057】
尚、第1デューティー比D1及び第2デューティー比D2は、例えば、機体10に第1刈取部H1が取り付けられている場合のリール17の下降速度と、機体10に第2刈取部H2が取り付けられている場合のリール17の下降速度と、が同一となるように、実験的に定められても良い。
【0058】
また、リール17が下降するように油圧シリンダ5が制御される場合において、仮に、下降用デューティー弁33のデューティー比が、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅(リール17の重量)にかかわらず一定である場合、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅が長いほど(リール17の重量が大きいほど)、リール17の下降速度は速くなる。
【0059】
〔リールの上昇時の制御〕
図3に示した昇降制御部21は、リール17が上昇するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅が長いほど、上昇用デューティー弁32のデューティー比を大きくするように構成されていると好適である。これにより、刈取部Hの刈幅と上昇用デューティー弁32のデューティー比との関係を適宜定めれば、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅にかかわらず一定の速度でリール17が上昇することとなる。
【0060】
例えば、昇降制御部21は、リール17が上昇するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に第1刈取部H1が取り付けられている場合は、上昇用デューティー弁32のデューティー比を、第1デューティー比D1に決定する。
【0061】
また、昇降制御部21は、リール17が上昇するように油圧シリンダ5を制御する際、機体10に第2刈取部H2が取り付けられている場合は、上昇用デューティー弁32のデューティー比を、第2デューティー比D2に決定する。
【0062】
これにより、第1デューティー比D1及び第2デューティー比D2が適宜定められていれば、機体10に第1刈取部H1が取り付けられている場合のリール17の上昇速度と、機体10に第2刈取部H2が取り付けられている場合のリール17の上昇速度と、が同一となる。
【0063】
即ち、昇降制御部21は、リール17が上昇するようにアクチュエータ4を制御する際、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅にかかわらず一定の速度でリール17が上昇するようにアクチュエータ4を制御する。
【0064】
尚、第1デューティー比D1及び第2デューティー比D2は、例えば、機体10に第1刈取部H1が取り付けられている場合のリール17の上昇速度と、機体10に第2刈取部H2が取り付けられている場合のリール17の上昇速度と、が同一となるように、実験的に定められても良い。
【0065】
また、リール17が上昇するように油圧シリンダ5が制御される場合において、仮に、上昇用デューティー弁32のデューティー比が、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅(リール17の重量)にかかわらず一定である場合、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅が長いほど(リール17の重量が大きいほど)、リール17の上昇速度は遅くなる。
【0066】
〔第1開口部〕
図6及び図7に示すように、搬送部16の前部における下部に、第1開口部44が設けられている。第1開口部44は、第1板状部45により下側から塞がれている。第1板状部45は、水平姿勢の板状の部材である。
【0067】
第1板状部45は、第1支持フレーム46によって支持されている。第1支持フレーム46は、搬送部16の延びる方向(前後方向)に沿う揺動軸芯P周りに揺動可能な状態で、搬送部16の下部に支持されている。揺動軸芯Pは、第1支持フレーム46の右端部に位置している。第1支持フレーム46の左端部は、複数の第1ボルトb1により、着脱可能な状態で搬送部16の下部に締結されている。
【0068】
複数の第1ボルトb1を取り外して、第1支持フレーム46を下側へ揺動させることにより、第1板状部45を取り外すことができる。これにより、作業者は、第1開口部44を介した搬送部16の内部のメンテナンス作業を行うことができる。
【0069】
また、これにより、第1板状部45を別の部材に交換することができる。例えば、図6及び図7に示した第1板状部45は、第1開口部44の全体を塞ぐように構成されている。この第1板状部45を、一つまたは複数の孔が形成された板状部材(図示せず)に交換することができる。その結果、搬送部16の内部の砂が当該孔を介して排出される構成を実現できる。
【0070】
尚、図6に示すように、第1開口部44、第1板状部45、第1支持フレーム46は、何れも、昇降シリンダ3の前端よりも前側に位置している。
【0071】
また、図7及び図8に示すように、搬送部16は、搬送フレーム16aと、複数の搬送体16bと、を有している。搬送フレーム16aは、機体前後方向に延びる筒状に形成されている。複数の搬送体16bは、搬送フレーム16aに収容されている。複数の搬送体16bは、エンジン(図示せず)の動力によって回動する。搬送フレーム16aの内側の刈取穀稈は、複数の搬送体16bにより、後方へ搬送される。尚、このような搬送体16bは公知であるため、搬送体16bについての詳細な説明は省略する。
【0072】
〔第2開口部〕
図6及び図8に示すように、搬送部16の後部における下部に、第2開口部48が設けられている。第2開口部48は、第2板状部49により下側から塞がれている。第2板状部49は、水平姿勢の板状の部材である。
【0073】
搬送部16の右端部における下端部に、第2支持フレーム50が設けられている。図8に示すように、第2支持フレーム50は、正面視でL字状断面を有している。第2板状部49の右端部は、第2支持フレーム50に支持されている。第2板状部49の左端部は、複数の第2ボルトb2により、着脱可能な状態で搬送部16の左端部における下端部に締結されている。
【0074】
複数の第2ボルトb2を取り外すことにより、第2板状部49を取り外すことができる。これにより、作業者は、第2開口部48を介した搬送部16の内部のメンテナンス作業を行うことができる。
【0075】
また、これにより、第2板状部49を別の部材に交換することができる。例えば、図6及び図8に示した第2板状部49は、第2開口部48の全体を塞ぐように構成されている。この第2板状部49を、一つまたは複数の孔が形成された板状部材(図示せず)に交換することができる。その結果、搬送部16の内部の砂が当該孔を介して排出される構成を実現できる。
【0076】
尚、図6に示すように、第2開口部48及び第2板状部49は、何れも、昇降シリンダ3の上方に位置している。言い換えれば、第2開口部48及び第2板状部49は、何れも、底面視(平面視)において昇降シリンダ3と重複している。
【0077】
〔タイン〕
図1及び図2に示すように、リール17は、複数のタイン支持バー52及び複数のタイン60を有している。一つのタイン支持バー52に、複数のタイン60が、機体左右方向に並ぶ状態で支持されている。
【0078】
図9及び図10に示すように、タイン支持バー52は、機体左右方向に延びる筒状の部材である。タイン60は樹脂製であり、可撓性を有している。また、タイン60の上端部に、挟み込み部61が形成されている。挟み込み部61は、タイン支持バー52の外形に沿う形状を有しており、タイン支持バー52を挟み込むように構成されている。
【0079】
タイン60は、タイン60の上端部における前端部から後方向に延びると共に挟み込み部61に連通する切れ込み部62を有している。切れ込み部62は、第1部位63と第2部位64との間に形成されている。第1部位63は、第2部位64の上側に位置している。第1部位63と第2部位64とを繋ぐ状態で、固定ボルトGが取り付けられている。固定ボルトGにより、第1部位63と第2部位64とが互いに離間するようにタイン60が変形することが阻止されている。
【0080】
挟み込み部61の下端部に、上方に突出する突出部65が形成されている。タイン支持バー52の下端部に、嵌合孔53が形成されている。突出部65は、嵌合孔53に下側から嵌合している。
【0081】
タイン60は、左右の板状部66を有している。各板状部66は、略垂直姿勢の板状であり、左右方向に延びている。右側の板状部66の右端部には、右方に突出する凸部67が設けられている。左側の板状部66の左端部における上端部及び下端部には、右方に凹入する凹部68が設けられている。凸部67は、凹部68に嵌合可能な形状を有している。
【0082】
これにより、タイン60の凸部67は、当該タイン60の右側に隣接する別のタイン60の凹部68に嵌合する。
【0083】
以上で説明した構成によれば、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅にかかわらず一定の速度でリール17が下降するようにアクチュエータ4が制御される。これにより、刈取部Hを付け替えてもリール17の下降速度が変化しないコンバイン1を実現できる。
【0084】
その結果、例えばコンバイン1が自動走行する場合、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅に応じて、リール17の下降開始タイミング、走行速度、走行位置等を調節(変更)する必要がない。即ち、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅によらず、画一的な制御が可能となる。
【0085】
〔その他の実施形態〕
(1)アクチュエータ4は、油圧シリンダ5でなくても良い。例えば、アクチュエータ4は、電動モータであっても良い。
【0086】
(2)昇降制御部21は、リール17が上昇するようにアクチュエータ4を制御する際、機体10に取り付けられている刈取部Hの刈幅に応じてリール17の上昇速度が変化するようにアクチュエータ4を制御するように構成されていても良い。
【0087】
(3)油圧シリンダ5は、デューティー制御式の電磁油圧弁により駆動するものでなくても良い。
【0088】
(4)機体10に取り付け可能な刈取部Hの種類は、三種類以上であっても良い。
【0089】
(5)昇降制御部21は、上昇用デューティー弁32または下降用デューティー弁33のデューティー比を、三つ以上の異なるデューティー比のうちの何れか一つに決定するように構成されていても良いし、無段階(連続的)に変更可能に構成されていても良い。
【0090】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、機体に取り付けられると共に圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部を備える収穫機に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 :コンバイン(収穫機)
4 :アクチュエータ
5 :油圧シリンダ
10 :機体
17 :リール
17b :リール軸芯
21 :昇降制御部
32 :上昇用デューティー弁(電磁油圧弁)
33 :下降用デューティー弁(電磁油圧弁)
H :刈取部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10