(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004955
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 63/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01D63/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104873
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】折坂 康介
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
2B081
【Fターム(参考)】
2B081AA01
2B081BB05
2B081CC48
2B081DA02
2B081DA11
2B081DD03
(57)【要約】
【課題】分草ガイドに生ずる振動を軽減し、振動による分草ガイドの破損を生じ難くすることができるコンバインを提供する。
【解決手段】刈取部4に、刈取部4の下部の先端部に設けられ、植立穀稈の株元側部分を分草する複数の分草具9と、機体左右方向に沿って並べられ、分草具9によって分草された植立穀稈を引き起こす複数の引起し装置と、分草具9に対応する機体左右方向位置において、植立穀稈の穂先よりも低い高さから植立穀稈の穂先よりも高い高さまで延び、引起し装置よりも先に植立穀稈に作用して植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草する分草ガイド40と、複数の引起し装置の上部に亘るように機体左右方向に沿って延び、複数の引起し装置を支持する支持フレーム25と、が備えられ、分草ガイド40の上端部は、支持フレーム25に連結されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられたコンバインであって、
前記刈取部に、前記刈取部の下部の先端部に設けられ、植立穀稈の株元側部分を分草する複数の分草具と、機体左右方向に沿って並べられ、前記分草具によって分草された植立穀稈を引き起こす複数の引起し装置と、前記分草具に対応する機体左右方向位置において、植立穀稈の穂先よりも低い高さから植立穀稈の穂先よりも高い高さまで延び、前記引起し装置よりも先に植立穀稈に作用して植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草する分草ガイドと、前記複数の引起し装置の上部に亘るように機体左右方向に沿って延び、前記複数の引起し装置を支持する支持フレームと、が備えられ、
前記分草ガイドの上端部は、前記支持フレームに連結されているコンバイン。
【請求項2】
前記引起し装置に、植立穀稈が通過する引起し経路を上昇移動して植立穀稈に引起し作用する複数の引起し爪が備えられ、
前記分草ガイドの上部に、正面視で上側ほど前記引起し経路側に位置するように傾く傾斜ガイド部が備えられている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記傾斜ガイド部は、正面視で、前記引起し経路と重複している請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記引起し装置に、前記引起し装置の上部に設けられた上回転体と、前記引起し装置の下部に設けられた下回転体と、前記上回転体と前記下回転体とに巻回され、前記複数の引起し爪が取り付けられた引起しチェーンと、が備えられ、
前記傾斜ガイド部は、正面視で、前記上回転体の回転軸芯よりも上側において、前記引起し経路と重複している請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記分草ガイドに、前記分草具に対応する機体左右方向位置において、正面視で植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びる縦ガイド部が備えられ、
前記傾斜ガイド部の下端部が、前記縦ガイド部の上端部に繋がっている請求項2に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記刈取部に、前記支持フレームを前方から覆うカバーが備えられ、
前記カバーのうち、植立穀稈が通過する引起し経路の上方に位置する部分が、正面視で上方に向けて凹入されて、凹部が形成されており、
前記分草ガイドの上端部は、前記凹部の範囲内を通されて、前記支持フレームに連結されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記刈取部の後方に運転部が備えられ、
前記分草ガイドに、前記分草具に対応する機体左右方向位置において、正面視で植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びる縦ガイド部が備えられ、
前記縦ガイド部は、前記分草具から上方に向けて延ばされている請求項1から6の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記分草具に、上下に貫通する貫通孔が形成され、
前記縦ガイド部の下端部が、前記貫通孔に差し込まれている請求項7に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記刈取部の下部に、前記分草具を支持する分草フレームが備えられ、
前記分草具は、縦向きの揺動軸芯回りで左右揺動可能に前記分草フレームに支持され、
前記貫通孔は、前記揺動軸芯に沿って前記分草具を上下に貫通している請求項8に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記分草ガイドは、丸パイプ材によって構成され、
前記縦ガイド部の下端部は、前記丸パイプ材を圧し潰した形状に形成されて前記貫通孔に差し込まれている請求項9に記載のコンバイン。
【請求項11】
前記分草ガイドは、前記分草具の前端よりも後側に配置されている請求項1から6の何れか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインとして、例えば、特許文献1に記載されているように、植立穀稈の株元側部分を分草する分草具と、植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草する分草ガイドと、が備えられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、棒状のフレームの前端部には、エンジンの駆動や刈取作業等による大きな振動が生じ易い。そして、従来のコンバインは、特許文献1に記載されているように、刈取部の前端側において、前方に向けて延出した棒状の分草支持フレームの前端部に分草ガイドが支持されていたものがあった。分草支持フレームの前端部に支持された分草ガイドは大きな振動が生じ易く、この振動により分草ガイドが破損してしまう虞があった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、分草ガイドに生ずる振動を軽減し、振動による分草ガイドの破損が生じ難くすることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンバインは、植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられたコンバインであって、前記刈取部に、前記刈取部の下部の先端部に設けられ、植立穀稈の株元側部分を分草する複数の分草具と、機体左右方向に沿って並べられ、前記分草具によって分草された植立穀稈を引き起こす複数の引起し装置と、前記分草具に対応する機体左右方向位置において、植立穀稈の穂先よりも低い高さから植立穀稈の穂先よりも高い高さまで延び、前記引起し装置よりも先に植立穀稈に作用して植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草する分草ガイドと、前記複数の引起し装置の上部に亘るように機体左右方向に沿って延び、前記複数の引起し装置を支持する支持フレームと、が備えられ、前記分草ガイドの上端部は、前記支持フレームに連結されている。
【0007】
この発明によれば、複数の引起し装置を支持するために強固に構成された支持フレームに、分草ガイドが連結される。一般に、強固に構成された支持フレームは、エンジンの駆動や刈取作業等による大きな振動は生じ難い。このような支持フレームに連結された分草ガイドは大きな振動が生じ難くなる。その結果、分草ガイドは、振動による破損が生じ難くなる。
【0008】
本発明においては、前記引起し装置に、植立穀稈が通過する引起し経路を上昇移動して植立穀稈に引起し作用する複数の引起し爪が備えられ、前記分草ガイドの上部に、正面視で上側ほど前記引起し経路側に位置するように傾く傾斜ガイド部が備えられていると好適である。
【0009】
この構成によれば、傾斜ガイド部は、上側ほど引起し経路側に位置するように傾く構成となっていることから、分草ガイドのうちの傾斜ガイド部よりも下側部分は、引起し経路から離れた位置に配置される。その結果、分草ガイドにより分草された植立穀稈は、引起し経路から離れた位置に案内されることとなるため、植立穀稈の穂先が引起し経路に入り込んでしまうことを軽減することができる。
【0010】
本発明においては、前記傾斜ガイド部は、正面視で、前記引起し経路と重複していると好適である。
【0011】
この構成によれば、引起し経路、つまり、植立穀稈が通過するための空間を利用して、傾斜ガイド部を支持フレームに向かうように配置することができため、分草ガイドを支持フレームに連結させるための設計変更が不要となる。
【0012】
本発明においては、前記引起し装置に、前記引起し装置の上部に設けられた上回転体と、前記引起し装置の下部に設けられた下回転体と、前記上回転体と前記下回転体とに巻回され、前記複数の引起し爪が取り付けられた引起しチェーンと、が備えられ、前記傾斜ガイド部は、正面視で、前記上回転体の回転軸芯よりも上側において、前記引起し経路と重複していると好適である。
【0013】
この構成によれば、傾斜ガイド部は、引起しチェーンが巻き付けられる上回転体の回転軸芯よりも上側において引起し経路と重複しているため、引起し経路のうち引起し爪による引起し作用が及ぶ範囲の上方に傾斜ガイド部が位置することとなる。その結果、引起し装置により引起された植立穀稈が、傾斜ガイド部に衝突してしまうことを軽減することができる。
【0014】
本発明においては、前記分草ガイドに、前記分草具に対応する機体左右方向位置において、正面視で植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びる縦ガイド部が備えられ、前記傾斜ガイド部の下端部が、前記縦ガイド部の上端部に繋がっていると好適である。
【0015】
この構成によれば、縦ガイド部が植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びていることにより、背低の植立穀稈を刈取る場合でも、好適に植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草することができる。また、傾斜ガイド部の下端部が縦ガイド部の上端部に繋がっているため、傾斜ガイド部と縦ガイド部とは、一つの部材から構成することが可能となる。その結果、傾斜ガイド部と縦ガイド部とを別部材から構成されている場合と比べ、取付工程を削減することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記刈取部に、前記支持フレームを前方から覆うカバーが備えられ、前記カバーのうち、植立穀稈が通過する引起し経路の上方に位置する部分が、正面視で上方に向けて凹入されて、凹部が形成されており、前記分草ガイドの上端部は、前記凹部の範囲内を通されて、前記支持フレームに連結されていると好適である。
【0017】
この構成によれば、カバーのうち引起し経路に対応する部分に、上方に向かって凹入する凹部が備えられていることにより、背高の植立穀稈を刈取る場合でも、植立穀稈の穂先がカバーに衝突してしまうことを軽減することができる。さらに、分草ガイドの上端部が凹部の範囲内を通されることにより、凹部を利用して、分草ガイドの上端部を支持フレームに連結することが可能となる。
【0018】
本発明においては、前記刈取部の後方に運転部が備えられ、前記分草ガイドに、前記分草具に対応する機体左右方向位置において、正面視で植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びる縦ガイド部が備えられ、前記縦ガイド部は、前記分草具から上方に向けて延ばされていると好適である。
【0019】
この構成によれば、縦ガイド部が植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びていることにより、より好適に植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草することができる。また、分草具から上方に向けて分草ガイドの縦ガイド部が延びていることから、刈取部の後方に位置する運転部に搭乗する操縦者は、縦ガイド部を確認することで、分草具の左右位置を容易に確認することができる。
【0020】
本発明においては、前記分草具に、上下に貫通する貫通孔が形成され、前記縦ガイド部の下端部が、前記貫通孔に差し込まれていると好適である。
【0021】
この構成によれば、エンジン等の振動により分草具に振動が生じたとしても、縦ガイド部の下端部が貫通孔の縁に当接することにより、振動が抑えられる。また、分草具と分草ガイドの間には隙間が無い構成となるため、分草ガイドによって分草されるべき植立穀稈が隙間を通過して分草ガイドによって案内されないという不都合を防ぐことが可能となる。
【0022】
本発明においては、前記刈取部の下部に、前記分草具を支持する分草フレームが備えられ、前記分草具は、縦向きの揺動軸芯回りで左右揺動可能に前記分草フレームに支持され、前記貫通孔は、前記揺動軸芯に沿って前記分草具を上下に貫通していると好適である。
【0023】
この構成によれば、貫通孔は、揺動軸芯に沿って分草具を上下に貫通していることにより、分草具の揺動角度を変更するとき、貫通孔は、揺動軸芯との相対位置が変わらない状態で回転する。その結果、貫通孔に貫通している分草ガイドの下端部と貫通孔とが干渉することなく、分草具の揺動角度を変更することが可能となる。
【0024】
本発明においては、前記分草ガイドは、丸パイプ材によって構成され、前記縦ガイド部の下端部は、前記丸パイプ材を圧し潰した形状に形成されて前記貫通孔に差し込まれていると好適である。
【0025】
この構成によれば、分草ガイドは、丸パイプ材によって丈夫に構成しつつ、縦ガイド部の下端部は、丸パイプ材を圧し潰した形状に形成されていることから、丸パイプ材は、貫通孔の大きさよりも小さく構成することが可能となり、分草ガイドは、例えば、貫通孔の径よりも大きな径を有する丸パイプ材によって構成されることが可能となる。その結果、分草ガイドの強度を高めるために、大きな径を有する丸パイプ材によって構成されたとしても、分草具の貫通孔の径を大きくするような設計変更をする必要がなくなる。
【0026】
本発明においては、前記分草ガイドは、前記分草具の前端よりも後側に配置されていると好適である。
【0027】
この構成によれば、植立穀稈の株元側部分する分草具と植立穀稈の穂先側部分を分草する分草ガイドによって、植立穀稈は、植立穀稈の低い位置からより高い位置に向けて円滑に分草作用されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図6】分草具の本体部と支持部(調節機構)との構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0030】
〔コンバインの全体構成〕
図1から
図3には、自脱型コンバイン(本発明に係る「コンバイン」に相当)を示している。
図1から
図3に示すように、本コンバインには、走行機体1が備えられている。走行機体1には、クローラ走行装置2と、クローラ走行装置2に支持される機体フレーム3と、が備えられている。走行機体1の前方には、植立穀稈を刈り取る刈取部4が設けられている。刈取部4の後方には、運転キャビン5が設けられている。
【0031】
〔運転キャビン〕
図2及び
図3に示すように、運転キャビン5には、運転者が搭乗する運転部5Aと、運転部5Aを覆うキャビン部5Bと、が備えられている。運転部5Aには、運転者が着座する運転座席28が備えられている。
【0032】
運転キャビン5の下方には、エンジン(図示省略)が設けられている。運転キャビン5の後方には、脱穀処理後の穀粒を貯留する穀粒貯留タンク6が設けられている。刈取部4の後方には、刈取部4からの刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置7が設けられている。穀粒貯留タンク6には、穀粒貯留タンク6内の穀粒を排出する穀粒排出装置8が接続されている。
【0033】
〔刈取部〕
刈取部4は、植立穀稈の刈り取り作業を行う下降作業位置と、植立穀稈の刈り取り作業を行なわない上昇非作業位置とに亘って上下揺動可能に構成されている。以下の説明では、刈取部4が下降作業位置にある場合について説明する。
【0034】
図1から
図3に示すように、刈取部4は、複数刈り仕様(本実施形態では、七条刈り仕様)に構成されている。刈取部4には、刈取部4の下部の先端部に設けられ、植立穀稈の株元側部分を分草する複数(本実施形態では、八つ)の分草具9と、分草具9によって分草された植立穀稈を引き起こす引起し部10と、引起し部10によって引き起こされた植立穀稈を切断する刈刃装置11と、刈刃装置11によって切断された刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する穀稈搬送部12と、が備えられている。刈取部4の左右両側部には、夫々、サイドカバー13が設けられている。各分草具9は、夫々、刈取部4の下部に設けられた分草フレーム14に支持されている。なお、以下の説明では、八つの分草具9について、左側から順に、第一から第八の分草具9と称する。
【0035】
ここで、
図5に示すように、穀稈搬送部12は、刈取穀稈の株元を挟持して後方に向けて搬送する搬送装置60を有する。搬送装置60は、穀稈掻込み用のパッカー61A、及び、穀稈掻込み用の突起付きベルト61Bを備えている。また、搬送装置60は、株元搬送機構62と、穂先搬送機構63と、を備えている。株元搬送機構62は、刈取穀稈の株元を挟持搬送する。穂先搬送機構63は、刈取穀稈の穂先を係止搬送する。
【0036】
〔引起し部〕
図2から
図4に示すように、引起し部10には、機体左右方向に沿って並べられ、分草具9によって分草された植立穀稈を引き起こす複数(本実施形態では、七つ)の引起し装置16と、引起し部10を引き起こし駆動する駆動力が伝達される引起し駆動軸17と、引起し装置16によって引き起こされる植立穀稈が通過する複数(本実施形態では、四つ)の引起し経路18と、が備えられている。
【0037】
引起し部10には、複数の引起し装置16の上部に亘るように機体左右方向に沿って延びる支持フレーム25が備えられている。支持フレーム25は、板材がアングル状に折り曲げられて構成されており、引起し駆動軸17の上方に位置する上面部と、引起し駆動軸17の後方に位置する縦面部とを有する。夫々の引起し装置16は、その上端部分が支持フレーム25に支持されている。なお、以下の説明では、七つの引起し装置16について、左側から順に、第一から第七の引起し装置16と称する。
【0038】
引起し経路18は、機体左右方向で隣り合う引起し装置16同士の間に形成されている。なお、四つの引起し経路18について、左側から順に、第一から第四の引起し経路18と称する。
【0039】
引起し装置16は、側面視で後倒れに傾斜する姿勢で設けられている。引起し装置16には、引起しチェーン19と、引起しチェーン19に取り付けられ、植立穀稈に引起し作用する多数の引起し爪20と、が備えられている。また、引起し装置16は、引起し装置16の上部に設けられた駆動スプロケット21(本発明に係る「上回転体」に相当)と、テンションスプロケット22と、引起し装置16の下部に設けられたローラ23(本発明に係る「下回転体」に相当)と、が備えられ、これらに引起しチェーン19が巻き付けられている。さらに、引起しチェーン19、駆動スプロケット21、テンションスプロケット22、及びローラ23を前方から覆う引起しカバー24が備えられている。
【0040】
引起し爪20は、引起しチェーン19に対して起伏可能なように、引起しチェーン19に取り付けられている。引起し装置16は、植立穀稈を引き起こす引起し経路18において、引起し爪20が引起しチェーン19に対して起立する起立姿勢となり、植立穀稈を引き起こさない非引起し経路において、引起し爪20が引起しチェーン19に対して倒伏する倒伏姿勢となるように構成されている。引起し爪20が、植立穀稈が通過する引起し経路18を上昇移動して、引起し爪20が植立穀稈に引き起こし作用することにより、植立穀稈が引起し経路18に導入されることになる。
【0041】
第一の引起し経路18は、第一の引起し装置16の引起し経路側部分と第二の引起し装置16の引起し経路側部分との間に形成されている。第一の引起し経路18には、第一の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈と第二の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈とが通過する。
【0042】
第二の引起し経路18は、第二の引起し装置16の非引起し経路側部分と第三の引起し経路側部分との間に形成されている。第二の引起し経路18には、第三の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈が通過する。
【0043】
第三の引起し経路18は、第四の引起し装置16の引起し経路側部分と第五の引起し装置16の引起し経路側部分との間に形成されている。第三の引起し経路18には、第四の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈と第五の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈とが通過する。
【0044】
第四の引起し経路18は、第六の引起し装置16の引起し経路側部分と第七の引起し装置16の引起し経路側部分との間に形成されている。第四の引起し経路18には、第六の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈と第七の引起し装置16によって引き起こされた植立穀稈とが通過する。
【0045】
引起し駆動軸17は、各引起し装置16に駆動力を伝達可能なように、第一から第七の引起し装置16の上端部に亘って設けられている。すなわち、引起し駆動軸17は、引起し部10の上端部に機体左右方向に沿って延びる状態で設けられている。引起し駆動軸17は、機体左右方向に沿って延びる回転軸芯X1回りで回転可能に構成されている。引起し駆動軸17と各引起し装置16との間には、引起し駆動軸17の動力を引起し装置16に伝達する伝動ケース27が夫々設けられている。引起し駆動軸17の動力は、各伝動ケース27等を介して各引起し装置16(各駆動スプロケット21)に伝達されることになる。
【0046】
引起し部10は、引起し駆動軸17及び支持フレーム25を前方から覆う上部カバー26(本発明に係る「カバー」に相当)を有している。上部カバー26には、上部カバー26のうち植立穀稈が通過する引起し経路18の上方に位置する部分が、正面視で上方に向けて凹入される凹部26aが形成されている。
【0047】
〔分草具〕
図2及び
図3に示すように、第一、第三、第四、第六、第八の分草具9は、大型の分草具9によって構成されている。第二、第五、第七の分草具9は、小型の分草具9によって構成されている。刈り取り作業を行うとき、分草具9は、植立穀稈の株元に対応する高さ位置に位置し、側面視で引起し部10の前方に位置する。
【0048】
図5に示すように、分草具9に、刈取対象の植立穀稈を分草する本体部9aと、本体部9aを支持し、分草フレーム14に取り付けられる支持部9bが備えられている。支持部9bの前方には、本体部9aと支持部9bとを連結する連結部9cが備えられている。
【0049】
図6に示すように、複数の分草具9のうち最外端に位置する第一、第八の分草具9の支持部9bには、縦向きの揺動軸芯X3回りに揺動角度を調節可能にする調節機構30が備えられている。つまり、調節機構30を備える支持部9bにより、分草具9は、縦向きの揺動軸芯X3回りで左右揺動可能に分草フレーム14に支持される。
【0050】
調節機構30は、分草フレーム14の上面部分に当接する当接部分31と、縦向きに延び、分草具9の調節用の揺動軸芯X3となる揺動軸部材32と、縦向きに延び、分草具9を所定の揺動角度で固定する調整固定部材33と、を備える。
【0051】
当接部分31に、揺動軸部材32が挿通する揺動軸孔31aと、揺動軸孔31aよりも後側に形成された第一調整孔31bと、第一調整孔31bよりも機体左右方向外側に形成された第二調整孔31cと、が形成されている。
【0052】
揺動軸部材32は、締め付け固定可能なボルトである。揺動軸部材32は、当接部分31に形成された揺動軸孔31aに挿通され、分草フレーム14の上面に形成された締付孔(図示せず)に締付固定される。
【0053】
調整固定部材33は、締め付け固定可能なボルトである。調整固定部材33は、当接部分31に形成された第一調整孔31b又は第二調整孔31cに挿通され、分草フレーム14の上面に形成された締付孔に締付固定される。
【0054】
揺動軸部材32の締付を緩め、さらに調整固定部材33を外すと、分草具9は、揺動軸部材32を揺動軸芯X3として、揺動可能状態になる。この状態で、第一調整孔31b又は第二調整孔31cを分草フレーム14の上面に形成された締付孔に合わせ、調整固定部材33を用いて締め付け固定し、さらに、揺動軸部材32を締め付け固定する。このとき、第一調整孔31b又は第二調整孔31cのいずれかを選択することによって、分草具9の揺動角度を調節することができる。なお、第二調整孔31cを選択すると、第一調整孔31bを選択したときと比べて、分草具9の前側端部が機体左右方向外側に傾いた状態で固定される。
【0055】
〔分草ガイド〕
図2及び
図3に示すように、刈取部4に、引起し装置16よりも先に植立穀稈に作用して植立穀稈の穂先側部分を左右へ分草する分草ガイド40が備えられている。分草ガイド40は、丸パイプ材によって構成されている。分草ガイド40は、分草具9に対応する機体左右方向位置に備えられている。
図5に示すように、分草ガイド40は、第一の分草具9の前端よりも後側に配置され、植立穀稈の穂先よりも低い高さから植立穀稈の穂先よりも高い高さまで延びている。本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、複数の分草具9のうち最左端に位置する第一の分草具9に対応する機体左右方向位置に分草ガイド40が備えられている。分草ガイド40の上端部は、上部カバー26の凹部26aの範囲内を通されて、支持フレーム25に連結されている。
【0056】
図4及び
図5に示すように、分草ガイド40には、第一の分草具9に対応する機体左右方向位置において、正面視で植立穀稈の穂先よりも低い高さから上方に向けて延びる縦ガイド部41と、分草ガイド40の上部に、正面視で上側ほど第一の引起し経路18側に位置するように傾く傾斜ガイド部42と、傾斜ガイド部42から後方に向けて延びる前後方向延伸部43と、分草ガイド40の上端部に設けられ、分草ガイド40を支持フレーム25に取り付けられる取付部44と、を有する。
【0057】
なお、分草ガイド40は、分草具9に固定されずに、支持フレーム25のみに支持されている。
【0058】
縦ガイド部41は、第一の分草具9のから上方に向けて延ばされている。縦ガイド部41には、分草ガイド40の下端に位置し、第一の分草具9の後側部分から上右方に向けて延びる第一縦ガイド部41aと、第一縦ガイド部41aの上端部から上後方にむけて延びる第二縦ガイド部41bと、第二縦ガイド部41bの上端部分から上方に向けて延びる第三縦ガイド部41cと、を有する。
【0059】
また、第一縦ガイド部41aと第二縦ガイド部41bとの間と、第二縦ガイド部41bと第三縦ガイド部41cとの間と、第三縦ガイド部41cと傾斜ガイド部42との間と、傾斜ガイド部42と前後方向延伸部43との間とには、夫々、屈曲部が形成されている。
【0060】
第一縦ガイド部41aは、正面視で下側ほど横外方に位置するように構成されており、側面視で下側ほど前方に位置するように構成されている。ここで、第一の分草具9には、支持部9bの上方に配置され、揺動軸芯X3に沿って第一の分草具9を上下に貫通する貫通孔34が形成されている。分草ガイド40の下端部となる第一縦ガイド部41aは、直線状に延びており、丸パイプ材を圧し潰した形状に形成されて貫通孔34に差し込まれている。具体的には、第一の分草具9の本体部9aの後側部分に貫通孔34が設けられている。貫通孔34は、長径及び短径を有する長孔形状に形成されている。第一縦ガイド部41aは、左右から圧し潰され、長径及び短径を有する断面形状を有している。第一縦ガイド部41aの断面形状の長径に沿った方向に貫通孔34の長径が延びる状態で、第一縦ガイド部41aは貫通孔34を貫通するように配置されている。
【0061】
第二縦ガイド部41bは、正面視で、第七の引起し装置16の引起しカバー24の左側縁に対応する位置において、機体上下方向に沿うように直線状に延びている。また、側面視では、第二縦ガイド部41bは、上側ほど後方に位置する傾斜となるように構成されている。
【0062】
第三縦ガイド部41cは、正面視で、第七の引起し装置16の引起しカバー24の左側縁に対応する位置において、第二縦ガイド部41bが延びる方向と同じ方向に直線状に延びている。また、側面視では、第三縦ガイド部41cは、上側ほど後方に位置するように傾斜しており、第二縦ガイド部41bよりも急傾斜に構成されている。
【0063】
傾斜ガイド部42の下端部は、縦ガイド部41の上端部に繋がっている。傾斜ガイド部42は、正面視で、第三縦ガイド部41cの上端部から上側ほど機体横内側に位置するように傾斜状に延びており、駆動スプロケット21の回転軸芯X2よりも上側において、第一の引起し経路18と重複している。また、傾斜ガイド部42は、側面視では、後側ほど上方に位置するように傾斜し、直線状に延びている。
【0064】
前後方向延伸部43は、傾斜ガイド部42の上端部から後方に向けて延びている。前後方向延伸部43は、引起し駆動軸17の下方を通過し、支持フレーム25の下端縁に対応する位置まで直線状に延びている。
【0065】
取付部44は、前後方向延伸部43の後方端部に形成されている。取付部44は、矩形形状に形成されており、前後方向延伸部43との接続箇所より上側部分にボルト孔が形成されている。分草ガイド40は、当該ボルト孔に挿通されたボルトにより、支持フレーム25のうち引起し駆動軸17の後方に位置する縦面部に固定されている。取付部44は、正面視で、上部カバー26のうち第一の引起し経路18に対応する部分に形成された凹部26a内に配置されている。
【0066】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0067】
(1)上記実施形態では、分草ガイド40は、第一の分草具9に対応する機体左右方向位置に設けられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、分草ガイド40は、複数の分草具9のうち、いずれの分草具9に対応する機体左右方向位置に設けられていてもよく、また、分草ガイド40は、複数設けられている構成としてもよい。
【0068】
(2)上記実施形態では、分草ガイド40は、引起し経路側に位置するように傾く傾斜ガイド部42が備えられている構成を例に説明したが、傾斜ガイド部42を備えず、正面視で、引起し経路18と重複しない構成としてもよい。このとき、例えば、第七の引起し装置16の引起しカバー24の上方において、分草ガイド40は支持フレーム25に取り付けられている構成としてもよい。
【0069】
(3)上記実施形態では、傾斜ガイド部42は、駆動スプロケット21の回転軸芯X2よりも上側において、第一の引起し経路18と重複している構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、傾斜ガイド部42は、駆動スプロケット21の回転軸芯X2よりも下側において、第一の引起し経路18と重複している構成としてもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、第一縦ガイド部41a、第二縦ガイド部41b、第三縦ガイド部41c、及び傾斜ガイド部42は、直線状に延びている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、曲線状に構成されていてもよい。
【0071】
(5)上記実施形態では、上部カバー26を備える構成を例に説明したが、上部カバー26を備えない構成としてもよい。また、上記実施形態では、上部カバー26は、凹部26aを備える構成を例に説明したが、上部カバー26は、凹部26aを備えない構成としてもよい。
【0072】
(6)上記実施形態では、縦ガイド部41は、正面視で分草具9の上方に配置されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、正面視で分草具9よりも横外側に配置されていてもよい。
【0073】
(7)上記実施形態では、縦ガイド部41は、分草具9の前端よりも後側に配置されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、縦ガイド部41は、分草具9の前端に対応する位置に配置されていてもよい。
【0074】
(8)上記実施形態では、貫通孔34は、揺動軸芯X3に沿って分草具9を上下に貫通するように形成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、貫通孔34は、揺動軸芯X3に沿った位置とは異なる位置に形成されていてもよい。また、分草具9には、貫通孔34が形成されていない構成としてもよい。
【0075】
(9)上記実施形態では、縦ガイド部41の下端部が、貫通孔34に差し込まれている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、縦ガイド部41の下端部が分草具9よりも上側に位置し、貫通孔34に差し込まれていない構成としてもよい。
【0076】
(10)上記実施形態では、第一、第八の分草具9の支持部9bに、調節機構30が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、すべての分草具9の支持部9bに、調節機構30が備えられている構成としてもよく、また、分草具9の支持部9bに、調節機構30が備えられていない構成としてもよい。
【0077】
(11)上記実施形態では、分草ガイド40は、丸パイプ材によって構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、棒状材等他の部材によって構成されていてもよい。
【0078】
なお、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、自脱型コンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
4 :刈取部
5A :運転部
9 :分草具
14 :分草フレーム
16 :引起し装置
18 :引起し経路
19 :引起しチェーン
20 :引起し爪
25 :支持フレーム
26 :上部カバー(カバー)
26a :凹部
34 :貫通孔
40 :分草ガイド
41 :縦ガイド部
42 :傾斜ガイド部
X2 :回転軸芯
X3 :揺動軸芯