(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049551
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】製茶揉乾方法及び製茶揉乾装置
(51)【国際特許分類】
A23F 3/12 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A23F3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155840
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】平野 智久
(72)【発明者】
【氏名】中村 守伸
(72)【発明者】
【氏名】久米 明
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FC10
4B027FP35
4B027FP56
4B027FR02
4B027FR09
4B027FR12
4B027FR13
4B027FR15
(57)【要約】
【課題】葉打機・粗揉機等の揉乾装置における茶渋取り作業を不要とでき、茶葉が所望の乾燥状態となるように調整し易く、茶葉の揉乾処理に係る熱効率も向上させることができる揉乾方法及び揉乾装置を提供する。
【解決手段】製茶揉乾方法は、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾方法であって、(i)被乾燥物を網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風により乾燥させるネット型乾燥機に、蒸熱された茶葉を供給し、茶葉をベルトコンベア上で天地返しするように撹拌しながら、茶葉を乾燥させる乾燥工程と、(ii)円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、このスクリューを回転させることにより揉胴の一端側に供給された被揉込み物を揉胴の他端側へ移送しながら揉込みするスクリュー型揉込み機に、(i)の乾燥工程を経た茶葉を供給し、スクリューを2~20rpmで回転させることにより、茶葉を揉込みする揉込み工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾方法であって、
(i)被乾燥物を網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風により乾燥させるネット型乾燥機に、蒸熱された茶葉を供給し、
前記茶葉を前記ベルトコンベア上で天地返しするように撹拌しながら、前記茶葉を乾燥させる乾燥工程と、
(ii)円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、該スクリューを回転させることにより該揉胴の一端側に供給された被揉込み物を該揉胴の他端側へ移送しながら揉込みするスクリュー型揉込み機に、前記乾燥工程を経た茶葉を供給し、
前記スクリューを2~20rpmで回転させることにより、前記茶葉を揉込みする揉込み工程と、
を有することを特徴とする製茶揉乾方法。
【請求項2】
前記スクリュー型揉込み機の前記揉胴の他端側の開口部の近傍に、該開口部方向に押付け力を付与する押圧手段を配置し、該押圧手段で前記開口部を押付けしながら、前記揉胴の他端側の開口部と前記押圧手段との隙間から揉込みされた茶葉を得ることを特徴とする請求項1に記載の製茶揉乾方法。
【請求項3】
前記スクリュー型揉込み機の前記スクリューシャフトは、前記スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の製茶揉乾方法。
【請求項4】
前記乾燥工程において、前記茶葉の乾量基準含水率が250~130%となるまで前記茶葉を乾燥させることを特徴とする請求項1又は2に記載の製茶揉乾方法。
【請求項5】
前記乾燥工程の途中に、茶葉をローラープレス機で加圧する加圧処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の製茶揉乾方法。
【請求項6】
前記乾燥工程における前記茶葉の撹拌は、前記ネット型乾燥機の前記ベルトコンベアを跨ぐように配置された回転軸の外周に放射状に複数配置されたブレードからなる天地返し手段により行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の製茶揉乾方法。
【請求項7】
蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾工程で用いられる製茶揉乾装置であって、
蒸熱された茶葉を網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風により乾燥させるネット型乾燥機と、
円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、該スクリューを回転させることにより該揉胴の一端側に供給された茶葉を該揉胴の他端側へ移送しながら揉込みするスクリュー型揉込み機と、を有し、
前記ネット型乾燥機には、前記ベルトコンベア上で搬送されている茶葉を天地返しするように撹拌する天地返し手段が備えられていることを特徴とする製茶揉乾装置。
【請求項8】
前記スクリュー型揉込み機には、前記揉胴の他端側の開口部方向に押付け力を付与可能な押圧手段が備えられており、
前記押圧手段は前記開口部の近傍に配置され、前記揉胴の他端側の開口部と前記押圧手段との隙間から揉込みされた茶葉が排出される排出部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の製茶揉乾装置。
【請求項9】
前記スクリュー型揉込み機のスクリューシャフトは、前記スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の製茶揉乾装置。
【請求項10】
さらに、ローラープレス機を有し、
前記ネット型乾燥機の前記ベルトコンベアの途中又は前記ネット型乾燥機の搬出部から前記ローラープレス機に茶葉が供給されるように構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の製茶揉乾装置。
【請求項11】
前記ネット型乾燥機の前記天地返し手段は、前記ネット型乾燥機の前記ベルトコンベアを跨ぐように配置された回転軸の外周に放射状に複数配置されたブレードを備え、該ブレードが前記茶葉を撹拌することを特徴とする請求項7又は8に記載の製茶揉乾装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる葉打・粗揉工程等の揉乾工程における製茶揉乾方法及びそれに用いられる製茶揉乾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
茶の製造にあたり、蒸熱工程を経た蒸し茶葉には、葉打・粗揉工程にて「熱風を送りながら茶葉に打圧を加えて揉みながら茶葉を乾燥させる」という揉乾処理が施される。これらの工程の揉乾処理に用いられる葉打機、粗揉機等の揉乾装置では、蒸熱直後の蒸し茶葉が装置内に供給されることから、茶葉の水分が多く柔らかいため、揉乾処理を行うと、装置内の葉浚い、揉み手及び装置の内壁(ダク付きの底板、底竹ともいう。)に大量のスラリー状の茶渋がびっしりと付着する。茶渋とは、茶葉が揉み手と内壁(底竹)に挟まれて擦られることにより、水分を多く含む茶葉から溶出した成分からなるところ、装置の運転に伴い、茶渋は内壁を構成する底竹の溝部に堆積し、底竹の溝部の凹凸を埋めながら徐々に乾燥を伴って厚い層と化していく。それゆえ、付着した茶渋をそのままにしていると、内壁が平滑化され、揉込みが不足したり、葉切れの原因となる等、製茶条件が不安定となり、得られる茶の品質が低下することから、1日に少なくとも1度(多い時には2度)は装置の中に入って茶渋取り作業を行う必要がある。この茶渋取り作業には大変な労力を要するため、製造者の大きな負担であると共に、茶渋取り作業を行っている間にはその装置を使用できないことから、茶の製造効率が下がるという問題を有している。
【0003】
そこで、特許文献1には、揉乾装置に付着した茶渋の除去方法として、茶葉の加工工程中、工程終了前の所定時間に所定量の水又は温水を粗揉機の揉胴内に散布して、工程の残り時間を継続して運転し、部材に付着した茶渋に水又は温水が浸潤し、軟らかくなった茶渋を加工中の茶葉で擦ることにより、茶渋を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された茶渋の除去方法では、粗揉工程中に水を粗揉機内に散布する必要があるため、茶渋だけでなく所定の含水率となるように見極めながら乾燥させていた茶葉にも水が散布されてしまい、茶葉の含水率の調整が困難になるという問題があった。
【0006】
さらに、従来の葉打機、粗揉機等の揉乾装置では、装置内に吹き込む風量が蒸し茶葉の乾燥状態に大きく影響し、初期の風量が不足するといわゆる「グシャ揉み」になり、また逆に、風量が多すぎると茶葉表面のみが乾いてしまう「上乾き」になり、どちらも茶葉の色の劣化等の品質低下の原因となるという問題を有している。
【0007】
また、従来の揉乾装置においては、排気口を有する揉乾室内に常に大量の熱風が供給され、その供給熱風は、茶葉と接触し茶葉の水分を奪った後、排気口から装置外に放出される構造となっている。このような従来の揉乾装置について、重油消費量から求めた供給熱風と、実際に水分を蒸発させるために作用した熱量とに基づき本願発明者が熱効率を試算・分析したところ、以下表1に示すように、従来の揉乾装置の熱効率は全体的に低い値であり、改善が望まれる値であった。
【0008】
【0009】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、葉打機・粗揉機等の揉乾装置における茶渋取り作業を不要とすることができる揉乾方法及び揉乾装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的としては、揉乾工程における茶葉の乾燥にあたり茶葉が所望の乾燥状態となるように調整し易い揉乾方法及び揉乾装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的としては、揉乾工程における茶葉の処理に係る熱効率を向上させることができる揉乾方法及び揉乾装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、従来の茶の製造工程における揉乾工程(葉打工程・粗揉工程)を機能的に分析し、揉乾処理における「熱風を送りながら茶葉に打圧を加えて揉みながら茶葉を乾燥させる」という機能を、「熱風を送って茶葉を乾燥させる」と「茶葉に打圧を加えて揉む」という異なる二つの機能に分解可能な点に着目した。そして、従来の揉乾工程においては、この二つの機能を同時に発揮させようとしているために、一方の機能が他方の処理によって阻害され、効率が悪化していることを見出した。これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の製茶揉乾方法は、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾方法であって、(i)被乾燥物を網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風により乾燥させるネット型乾燥機に、蒸熱された蒸茶葉を供給し、茶葉をベルトコンベア上で天地返しするように撹拌しながら、茶葉を乾燥させる乾燥工程と、(ii)円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、スクリューを回転させることにより揉胴の一端側に供給された被揉込み物を揉胴の他端側へ移送しながら揉込みするスクリュー型揉込み機に、乾燥工程を経た茶葉を供給し、スクリューを2~20rpmで回転させることにより、茶葉を揉込みする揉込み工程と、を有する。本発明の製茶揉乾方法に係る乾燥工程によれば、含水率が高い状態の茶葉を揉込みすることなく、網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風をあてて蒸露や茶葉の表面を乾燥させていくので、乾燥機内に茶渋が付着し難く、乾燥機のメンテナンスを容易とすることができる。また、茶葉をベルトコンベア上で天地返しするように撹拌させることにより、茶葉の上乾きを防ぎながら、所望の含水率まで恒率乾燥させることができる。そして、引き続いて行われる揉込み工程によれば、所望の含水率まで乾燥された茶葉をスクリュー型揉込み機に供給し、スクリューを2~20rpmと低速で回転させることにより、切れ葉の発生を防ぎつつ、揉胴内部で十分な圧縮を受けながら茶葉が移送されていくため、茶葉が捻じれ、茶葉によれ形がつけられる。さらに、揉込み機内で移送されている間に茶葉に圧力が加わるため、茶葉の各部分の水分が均一となり、茶葉の恒率乾燥を図ることができる。
【0014】
また、本発明の製茶揉乾方法は、スクリュー型揉込み機の揉胴の他端側の開口部の近傍に、開口部方向に押付け力を付与する押圧手段を配置し、押圧手段で開口部を押付けしながら、揉胴の他端側の開口部と押圧手段との隙間から揉込みされた茶葉を得ることも好ましい。これにより、揉込み工程において、揉込み機内で移送された茶葉が排出される際にさらなる圧力が茶葉に加わるようになるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉込み処理が十分に行われる。
【0015】
また、本発明の製茶揉乾方法は、スクリュー型揉込み機のスクリューシャフトは、スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成されていることも好ましい。これにより、スクリューシャフトの外周面と揉胴の内壁との間隙が、スクリューの移送方向に向かって漸次狭くなるため、揉込み機内で茶葉が移送される際にさらなる圧力が茶葉に加わり、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉込み処理が十分に行われる。
【0016】
また、本発明の製茶揉乾方法は、乾燥工程において、茶葉の乾量基準含水率が250~130%となるまで茶葉を乾燥させることも好ましい。これにより、本発明に係る乾燥工程で乾燥された茶葉の含水率として、好適な含水率が選択される。茶葉の乾量基準含水率が250~130%となるまで、茶葉を乾燥させることにより、恒率乾燥を維持しながら、引き続いて行われる揉込み工程における揉込みの実効性を高めることができる。なお、本発明において、茶葉の含水率は乾量基準含水率(D.B)を意味している。茶葉の乾量基準含水率は、茶葉の乾燥重量に対する、乾燥前の茶葉に含まれる水分の重量の割合(%)であり、乾量基準含水率(%)=乾燥前の茶葉に含まれる水分の重量/乾燥後の茶葉の重量、で求められる。
【0017】
また、本発明の製茶揉乾方法は、乾燥工程の途中に、茶葉をローラープレス機で加圧する加圧処理を行うことも好ましい。ローラープレス機での加圧処理により、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなるため、茶葉の恒率乾燥を図ることができる。
【0018】
また、本発明の製茶揉乾方法は、乾燥工程における茶葉の撹拌は、ネット型乾燥機のベルトコンベアを跨ぐように配置された回転軸の外周に放射状に複数配置されたブレードからなる天地返し手段により行われることも好ましい。これにより、乾燥工程におけるベルトコンベア上で茶葉を撹拌させるための好適な天地返し手段が提供される。
【0019】
また、本発明の製茶揉乾装置は、蒸熱工程と揉捻工程との間に行われる製茶揉乾工程で用いられる製茶揉乾装置であって、蒸熱された茶葉を網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風により乾燥させるネット型乾燥機と、円筒状の揉胴内に、スクリューシャフトの外周面にスクリュー羽根がらせん状に設けられたスクリューが回転自在に配置され、スクリューを回転させることにより揉胴の一端側に供給された茶葉を揉胴の他端側へ移送しながら揉込みするスクリュー型揉込み機と、を有し、ネット型乾燥機には、ベルトコンベア上で搬送されている茶葉を天地返しするように撹拌する天地返し手段が備えられている。本発明の製茶揉乾装置を構成するネット型乾燥機は、含水率が高い状態の茶葉を揉込みすることなく、網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風をあてて蒸露や茶葉の表面を乾燥させていくので、乾燥機内に茶渋が付着し難く、装置のメンテナンスを容易とすることができる。また、乾燥機のベルトコンベアに備えられた天地返し手段により、ベルトコンベアで搬送されている茶葉が天地返しするように撹拌されるため、茶葉の上乾きを防ぎながら、所望の含水率まで恒率乾燥させることができる。そして、本発明の製茶揉乾装置を構成するスクリュー型揉込み機では、所望の含水率となった茶葉を揉胴内に供給し、スクリューを回転させると、揉胴内部で圧縮を受けながら茶葉が移送されていくため、茶葉が捻じれ、茶葉によれ形がつけられる。さらに、揉込み機内で移送されている間に茶葉に圧力が加わるため、茶葉の各部分の水分が均一となり、茶葉の恒率乾燥を図ることができる。
【0020】
また、本発明の製茶揉乾装置のスクリュー型揉込み機には、揉胴の他端側の開口部方向に押付け力を付与可能な押圧手段が備えられており、押圧手段は開口部の近傍に配置され、揉胴の他端側の開口部と押圧手段との隙間から揉込みされた茶葉が排出される排出部が形成されていることも好ましい。これにより、揉込み機内で移送された茶葉が排出される際にさらなる圧力が茶葉に加わるようになるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉込み処理が十分に行われる装置が得られる。
【0021】
また、本発明の製茶揉乾装置のスクリュー型揉込み機のスクリューシャフトは、スクリューによる茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成されていることも好ましい。これにより、スクリューシャフトの外周面と揉胴の内壁との間隙が、スクリューの移送方向に向かって漸次狭くなるため、揉込み機内で茶葉が移送される際にさらなる圧力が茶葉に加わり、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉込み処理が十分に行われる装置が得られる。
【0022】
また、本発明の製茶揉乾装置は、さらに、ローラープレス機を有し、ネット型乾燥機のベルトコンベアの途中又はネット型乾燥機の搬出部からローラープレス機に茶葉が供給されるように構成されていることも好ましい。ローラープレス機による茶葉の加圧により、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなるため、茶葉の恒率乾燥をより図ることができる装置が得られる。
【0023】
また、本発明の製茶揉乾装置のネット型乾燥機の天地返し手段は、ネット型乾燥機のベルトコンベアを跨ぐように配置された回転軸の外周に放射状に複数配置されたブレードを備え、ブレードが茶葉を撹拌することも好ましい。これにより、乾燥装置におけるベルトコンベア上で茶葉を撹拌させるための好適な天地返し手段が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する製茶揉乾方法及び製茶揉乾装置を提供することができる。
(1)ネット型乾燥機のベルトコンベアに茶葉を載せて搬送することで乾燥を行うため、乾燥機内に茶渋が付着しにくく、乾燥機のメンテナンスを容易とすることができる。
(2)茶葉がベルトコンベアに載置された状態で乾燥されるため、茶葉の乾燥状態を容易に確認することができ、風量、熱風温度及び排気温度等の乾燥条件を適宜調整できるため、所定の含水率となるまで恒率乾燥を維持し易い。
(3)茶葉を所定の含水率となるまで乾燥してから揉込みを行うため、揉乾処理に係る熱効率を向上させることができる。
(4)スクリュー型揉込み機から排出された茶葉は、複数の茶葉がまとまってよれた状態で得られるため、後工程(揉捻工程)における揉込みが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】本実施形態に係る揉乾装置を構成する(a)ネット型乾燥機及び(b)
図3(a)中のI-I線矢視図である。
【
図4】
図3に示すネット型乾燥機に備えられた(a)天地返し手段(
図3(a)のA部の要部拡大図)及び(b)均し手段(
図3(a)のB部の要部拡大図)を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る揉乾装置を構成するスクリュー型揉込み機を示す(a)分解斜視図及び(b)平面図である。
【
図6】
図5に示すスクリュー型揉込み機の断面図であって、
図5(b)のII-II線断面図である。
【
図7】本実施形態に係るスクリュー型揉込み機の使用状態を示す説明図である。
【
図9】実施例1で製造された緑茶を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る製茶揉乾方法及び製茶揉乾装置について詳細に説明する。本実施形態に係る製茶揉乾方法は、(i)蒸熱された茶葉をネット型乾燥機で乾燥させる乾燥工程と、(ii)乾燥工程を経た茶葉をスクリュー型揉込み機で揉込みする揉込み工程とから概略構成されている。また、本実施形態に係る製茶揉乾装置1は、
図1に示すように、蒸熱された茶葉を所定の含水率まで乾燥させるネット型乾燥機2と、乾燥された茶葉を揉込みするスクリュー型揉込み機4とから概略構成されている。
【0027】
[乾燥工程]
まず、(i)の茶葉をネット型乾燥機で乾燥させる乾燥工程について説明する。この乾燥工程では、蒸熱工程で蒸熱された茶葉を所定の含水率となるまで乾燥させることが行われる。蒸し機で蒸された茶葉は含水率が300%を超えるほど水分量が多く、それが装置内への茶渋の付着や葉打工程における熱効率の低下、グシャ揉みによる製茶品質の低下をもたらしている。そこで、本発明においては、所定の含水率となるまでは茶葉の揉込みは行わず、通風型のネット型乾燥機を採用して茶葉を乾燥させる処理を行う。このように、含水率が高い状態の茶葉を揉込みすることなく、網状のベルトコンベア上に載せて搬送しながら熱風をあてて水分量が多い茶葉の表面を乾燥させていくので、乾燥機に茶渋が付着し難く、乾燥機のメンテナンスを容易とすることができる。
【0028】
本実施形態に係る乾燥工程においては、ネット型乾燥機に蒸し茶葉を供給し、乾燥機の設定条件である風量、乾燥時間(工程時間)及び熱風温度を自在に調整して茶葉を乾燥させることができる。このとき、ネット型乾燥機は乾燥能力が高いため、ベルトコンベア上で茶葉の表面のみが乾かないよう、茶葉をベルトコンベア上で天地返しするように撹拌させながら乾燥させることが重要である。これによって、茶葉の上乾きを防ぎながら、所望の含水率まで恒率乾燥を維持させることができる。茶葉をベルトコンベア上で天地返しする方法としては、後述する本実施形態に係るネット型乾燥機に搭載された天地返し手段による方法のほか、ベルトコンベア上で搬送されていく茶葉の一表面のみを乾燥し続けることを回避可能な方法であれば、どのような方法又はどのような構成の手段も採用することが可能である。
【0029】
本実施形態に係る乾燥工程においては、次工程の揉込み工程における茶葉の揉込みの実効性を高める観点から、本工程により乾燥させた茶葉の乾量基準含水率(D.B)が100%未満とならないよう、茶葉の含水率に留意することが好ましく、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が130%未満とならないよう留意することがより好ましい。より詳細には、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程に替えて行い、通常の粗揉機による粗揉工程は別途実施する場合には、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が250~130%となるまで乾燥させることが好ましく、220~160%となるまで乾燥させることがより好ましく、210~180%となるまで乾燥させることがさらに好ましい。また、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程と通常の粗揉機による粗揉工程とを兼ねた方法として行う場合には、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が200~100%となるまで乾燥させることが好ましく、160~100%となるまで乾燥させることがより好ましく、130~100%となるまで乾燥させることがさらに好ましい。
【0030】
また、茶葉の乾燥にあたっては、
図2に示す製茶における乾燥曲線に沿うように、風量、排気温度及び熱風温度等の乾燥条件を適宜調整して乾燥を行うことが好ましい。この曲線に沿って乾燥させることで、茶葉表面からの蒸散速度と内部拡散の速度が平衡して乾燥が行われるため、恒率乾燥を維持することができる。なお、乾燥にあたって茶葉の表面温度が36℃を超えると、茶葉が上乾きの状態となりやすく、減率乾燥となって茶葉の表面温度が上昇し、クロロフィルが黄褐色のフェオフィチンに変化して茶葉の色が退色し、茶の品質が低下するおそれを有する。そのため、茶葉の表面温度が36℃を超えないように乾燥条件を調整することが好ましい。
【0031】
<ネット型乾燥機>
上述した乾燥工程を行うにあたっては、例えば、
図3及び
図4に示すネット型乾燥機を用いて行うことができる。以下、本実施形態に係るネット型乾燥機2について説明する。
【0032】
図3(a)に示すように、本実施形態に係るネット型乾燥機2は、蒸した茶葉が供給される供給部21と、茶葉をベルトコンベア24上で搬送しながら熱風により乾燥させる乾燥部22と、所定の含水率となるまで乾燥された茶葉を搬出する搬出部23から概略構成されている。また、
図3(b)に示すように、乾燥部22には、内部に加熱手段を有して熱風を発生し得る熱風発生手段28が備えられており、ダクト28aを介して給気ダクト29に接続されている。
【0033】
本実施形態に係るベルトコンベア24は、上述した供給部21、乾燥部22及び搬出部23をめぐるように配置されており、駆動部25を駆動させることにより供給部21、乾燥部22及び搬出部23の順に往路を回動するように構成されている。ここで、
図3(a)中の矢印アはベルトコンベア24の搬送方向を示している。なお、本実施形態に係るベルトコンベア24は無端状に形成されており、それゆえ、供給部21、乾燥部22及び搬出部23を回動した後、復路を回動し、供給部21に至って循環する。
【0034】
供給部21でベルトコンベア24上に供給された蒸し茶葉は、乾燥部22でベルトコンベア24上を搬送されながら乾燥される。乾燥部22において、熱風が供給される給気ダクト29は、往路方向のベルトコンベア24の下方に配置されており、それゆえ、この給気ダクト29からの熱風をベルトコンベア24上に通過させることができるよう、ベルトコンベア24は網状に形成されている。ベルトコンベア24を形成する材料としては、例えば耐熱性の合成樹脂やステンレス等の金属などが挙げられる。また、乾燥部22において、ベルトコンベア24の外周は箱状部材で覆われており、両側方には側壁が形成されるとともに上方にはパンチングメタルが取り付けられ、下方から噴出された熱風がパンチングメタルの網目を通過して上方に放出されるようになっている。
【0035】
ここで、
図3及び
図4(a)に示すように、乾燥部22の往路方向のベルトコンベア24には、ベルトコンベア24上で搬送されている茶葉をかき上げて天地返し(積層された茶葉の表裏を反転)するための天地返し手段26が等間隔に複数設けられている。天地返し手段26はモーター262の駆動により回転可能な回転軸260と、この回転軸260の外周に放射状に円周等配に固定されたブレード261とから構成されており、回転軸260はベルトコンベア24を跨ぐように、ベルトコンベア24の上方に配置されており、モーター262の駆動力を受けて
図3(a)の矢印方向に回転可能とされている。ブレード261は、回転軸260に対して複数枚(本実施形態においては4枚)取り付けられた羽根状部材から成り、
図4(a)に示すように、回転軸260の径方向に向かって延設された延設部261aと、延設部261aの先端から所定角度折れ曲がって延設された先端部261bとを有している。先端部261bは、延設部261aに対して回転軸260の回転方向に向かって折れ曲がって延設されるとともに、先端が鋸刃状に形成され、その刃先とベルトコンベア24の搬送面との隙間は微小寸法に設定されている。
【0036】
上述した天地返し手段26により、ベルトコンベア24により茶葉の搬送が行われた状態においてモーター262を駆動して回転軸260を回転させると、ブレード261によってベルトコンベア24上の茶葉を掻き上げて天地返しすることができ、ベルトコンベア24上の茶葉の表裏を反転させることができる。具体的には、ベルトコンベア24上に一定の厚さで積層された茶葉の表裏が反転され、ベルトコンベア24の表面全体にすきまなく積層された状態で再び均一に載置される。茶葉はこれらの天地返し手段26を順次通過することにより、天地返しされながら乾燥処理され、搬出部23側に搬送される。なお、本実施形態に係る天地返し手段26は4枚のブレード261を有しているが、ブレードの枚数は限定されない。また、本実施形態におけるブレード261の先端は鋸刃状に形成されているが、異なる形状であってもよい。
【0037】
また、本実施形態に係るネット型乾燥機2の供給部21は、蒸熱工程を経た後の蒸し茶葉が供給されるところ、ベルトコンベア24は所定角度傾斜して配設されるとともに、乾燥部22への手前にベルトコンベア24に供給された茶葉を一定の厚さに揃えるための均し手段27が設けられている。なお、供給部21の前には、蒸した茶葉の蒸露を除去するための散茶機3を備えることも可能である。
【0038】
均し手段27はモーターの駆動により回転可能な回転軸270と、この回転軸270の外周に放射状に円周等配に固定されたブレード271とから構成されており、回転軸270はベルトコンベア24を跨ぐように、ベルトコンベア24の上方に配置されており、モーターの駆動力を受けて
図4(b)の矢印方向に回転可能とされている。ブレード271は、回転軸270に対して複数枚(本実施形態においては4枚)取り付けられた羽根状部材から成り、
図4(b)に示すように、回転軸270の径方向に向かって延設された延設部271aと、延設部271aの先端から所定角度折れ曲がって延設された先端部271bとを有して構成されている。先端部271bは、延設部271aに対して回転軸270の回転方向に向かって折れ曲がって延設されるとともに、先端が鋸刃状に形成され、その刃先とベルトコンベア24の搬送面との隙間は2~3枚の茶葉が重なる程度の寸法に設定されている。
【0039】
上述した均し手段27により、ベルトコンベア24上に供給された蒸茶葉がブレード271によってかき均されるため、ベルトコンベア24上に広く略均一に積層された状態で乾燥部22へ搬送することができる。それゆえ、乾燥部22において、ベルトコンベア24の下方から吹き込まれる熱風によって茶葉間のすきまから熱風が逃げることがなくなり、茶葉を効率良く、かつ安定的に乾燥させることができる。また、茶葉間のすきまから熱風が逃げ、乾燥効率が低下するのを抑制して茶葉の処理量を増大させることができ、生産コストを低減させることができる。なお、本実施形態に係る均し手段27は、4枚のブレード271を有しているが、ブレードの枚数は限定されない。また、本実施形態におけるブレード271の先端は鋸刃状に形成されているが、異なる形状であってもよい。
【0040】
茶葉をベルトコンベア24上で天地返しする手段としては、本実施形態に係る天地返し手段26のほか、ベルトコンベア24上で搬送されていく茶葉の一表面のみを乾燥し続けることを回避可能な手段であれば、上述した天地返し手段26に限らず、どのような構成の手段をも採用することが可能である。また、均し手段27についても同様である。
【0041】
さらに、他の実施形態として、上述した乾燥工程の途中に、茶葉をローラープレス機等の加圧手段で加圧する加圧処理を行うことも可能である。例えば、乾燥工程を複数の工程に分けて、その工程間にローラープレス機により加圧処理を行うことが挙げられる。これにより、茶葉の内部水分が茶葉の外側に移行しやすくなるため、更に恒率乾燥を継続させることができ、より一層乾燥効率を上昇させることができる。
【0042】
上述したローラープレス機としては、一例として、実開昭54-101000号公報に記載されたような装置が用いられる。このローラープレス機は一対のローラーから構成され、一方のローラーを駆動ローラー、他方を従動ローラーとし、この従動ローラーの軸受を左右移動自在とすることにより、一対のローラー間隙が調節自在とされている。本実施形態では、ローラープレス機により、茶葉の厚みのある部分(主に茎部)を押圧して偏平形状にすることで、茶葉の各部分の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、恒率乾燥を維持することができる。また、上述した構成のローラープレス機の他に、茶葉を搬送するコンベアの上側に、コンベアの搬送方向に駆動する1つ以上のローラーが配設されたローラープレス機を用いることも可能である。ローラーとコンベアとの間隙及びローラー荷重等を適宜調節することで、コンベア上に茶葉を供給すると、ローラーで押圧されながら茶葉が間隙を通過する。これにより茶葉がローラーで加圧され、茶葉の各部分の内部水分を茶葉の表面側に移行させることができる。
【0043】
なお、上述した乾燥工程の途中に行われる加圧処理は、茶葉の内部水分を茶葉の表面側に移行させることができる装置であれば、ローラープレス機以外のどのような装置を用いてもよく、例えば、回転打圧機(製品名「スーパーグリーン」、カワサキ機工株式会社製品;特開2021-114908号公報参照)等を用いることも可能である。
【0044】
また、ネット型乾燥機2には、上述した構成以外にも他の構成が備えられていてもよい。例えば、ネット型乾燥機2の風量、排気温度及び熱風温度等の制御手段や計測手段、茶葉の含水率や表面温度の測定手段等を設けることが可能であり、これにより、容易にネット型乾燥機2の条件設定を行うことができる。なお、本実施形態に係る乾燥工程において使用されるネット型乾燥機としては、上述した構成のネット型乾燥機2に限定されず、本実施形態に係る乾燥工程及びその作用効果を実現できるものであれば、どのような構成のネット型乾燥機であってもよい。
【0045】
上述した乾燥工程を経た茶葉は、引き続き、後述する揉込み工程による揉込みが行われる。
【0046】
[揉込み工程]
次に、(ii)乾燥工程を経た茶葉をスクリュー型揉込み機で揉込みする揉込み工程について説明する。前述した乾燥工程では、ベルトコンベア上に供給された蒸し茶葉を天地返しするように撹拌しながら茶葉を乾燥しているが、従来の葉打工程や粗揉工程といった揉乾工程と比較すると、茶葉の揉込みが十分ではない。茶葉の揉込みが不足すると茶葉が赤みを帯びやすくなり、茶の品質が低下する上、後工程での揉込みがし難くなって処理時間が長くなるという問題も生じる。そのため、この揉込み工程では、上述した乾燥工程を経た茶葉への揉込みを補うべく、スクリュー型揉込み機での揉込みが行われる。
【0047】
本実施形態に係る揉込み工程においては、スクリュー型揉込み機に上述した乾燥工程を経た茶葉を供給し、スクリューを回転させて茶葉を揉込み機の揉胴内で移送させることにより、茶葉の揉込みを行う。揉込み機に供給された茶葉は、揉胴の内壁とスクリューの外周面との間の空間をスクリュー羽根で押されながら移送されるところ、その際に茶葉が圧縮されて揉圧される。茶葉に圧力が加わることにより、茶葉の各部分の水分が均一化されるため、茶葉の恒率乾燥が図られると共に茶葉によれ形を付けることができる。
【0048】
本実施形態に係る揉込み工程においては、茶葉の揉込みの実効性を高める観点、すなわち、茶葉によれ形を付け、茶葉の各部分の水分を均一化させる観点から、スクリューの回転数を2~20rpmと低速に調整することが好ましく、5~15rpmとすることがより好ましく、5~10rpmとすることが特に好ましい。このように、スクリューの回転数を低速とすることにより、揉胴内部において茶葉がゆっくりと移送されるため、茶葉が切断されて切れ葉が生じるのを防ぐことができ、さらに、揉胴内部での茶葉への揉圧時間も十分に取ることができるため、揉込みが好適になされる。
【0049】
また、本実施形態に係る揉込み工程においては、揉込み機の揉胴において、茶葉が移送される側の開口部からそのまま茶葉を押し出して排出するのではなく、移送方向の開口部近傍に所定の間隙が形成されるように押圧手段を配置して、この間隙を排出部とし、押圧手段で開口部方向に押付け力を付与しながら、揉込みされた茶葉をこの排出部から排出させることが好ましい。これにより、揉込み工程において、揉込み機内で移送される茶葉が排出される際にさらなる圧力が茶葉に加わるようになるため、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉込み処理が十分に行われる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る揉込み工程においては、揉込み機の揉胴内に配置されたスクリューシャフトが、茶葉が移送される方向に向かって、そのスクリューシャフトの径が漸次拡大する形状に形成された揉込み機を使用することも好ましい。これにより、スクリューシャフトの外周面と揉胴の内壁との間隙が、スクリューの移送方向に向かって漸次狭くなり容積が減少するため、揉込み機内で茶葉が移送される際にさらなる圧力が茶葉に加わり、茶葉のよれ形がより確実に形成されると共に、茶葉の内部水分が茶葉の表面側に移行し易くなり、揉込み処理が十分に行われる。
【0051】
本実施形態に係る揉込み工程においては、茶葉にある程度の水分量が含まれていることが後工程の揉込みに影響するため、揉込み機から排出される茶葉の乾量基準含水率(D.B)が80%未満とならないよう、茶葉の含水率に留意することが好ましく、茶葉の乾量基準含水率(D.B)が100%未満とならないよう留意することがより好ましい。この値を下回ると、後工程において茶葉によれ形が付きにくくなり、荒茶段階での形状が従来の葉打機を使用したものに対し劣ってしまうためである。より詳細には、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程に替えて行い、通常の粗揉機による粗揉工程は実施する場合には、揉込み機から排出される茶葉の乾量基準含水率(D.B)が230~130%となるように調整することが好ましく、210~150%となるように調整することがより好ましく、200~160%となるように調整することがさらに好ましい。また、本実施形態に係る製茶揉乾方法を、通常の葉打機等による葉打工程と通常の粗揉機による粗揉工程とを兼ねた方法として行う場合には、揉込み機から排出される茶葉の含水率が180~80%となるように調整することが好ましく、150~90%となるように調整することがより好ましく、120~90%となるように調整することがさらに好ましい。
【0052】
<スクリュー型揉込み機>
上述した揉込み工程を行うにあたっては、例えば、
図5~
図7に示すスクリュー型揉込み機を用いて行うことができる。以下、本実施形態に係るスクリュー型揉込み機4について説明する。
【0053】
図7に示すように、本実施形態に係るスクリュー型揉込み機4は、上述した乾燥工程を経た茶葉が投入される投入部41と、円筒状の揉胴44内に配置されたスクリュー45を回転させることにより揉胴44内に供給された茶葉を揉胴44の他端側に移送しながら揉込みする揉込み部42と、揉込みされた茶葉を揉胴44から排出する排出部43から概略構成されている。
図5~
図7に示すように、本実施形態の揉込み機4は、円筒状の揉胴44と、この揉胴44内に配置されたスクリュー45と、このスクリュー45を回転駆動させる駆動モーター46とを備えている。揉胴44の一端側の上方は開口しており、この開口と連続して投入部41を構成するホッパー48が設けられている。上述した乾燥工程を経た茶葉がホッパー48内に投入されると、揉胴44内に茶葉が受入される。他方、円筒状の揉胴44の他端側には開口部440を有している。本実施形態においては、この揉胴44の開口部440に向かって押付け力を付与可能に構成された押圧手段47が備えられている。
【0054】
まず、揉込み機4内に配置されたスクリュー45について説明する。揉込み機4の揉胴44の内部には、スクリューシャフト450の外周面にスクリュー羽根451がらせん状に設けられたスクリュー45が回転自在に配置されている。本実施形態においては、スクリューシャフト450は、ホッパー48が設けられている揉胴44の一端側からスクリュー45による移送方向の他端側に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成された拡径部450aと、拡径部450aの径大部分の先端に設けられた同径部450bとから構成されている。スクリューシャフト450の径を漸次拡大する形状に形成することにより、スクリューシャフト450の外周面と揉胴44の内壁との間隙が、スクリュー45の移送方向に向かって漸次狭くなり容積が減少するため、揉込み機4内で茶葉が移送される際にさらなる圧力が茶葉に加わるようになっている。そのため、揉胴44内部を移送される茶葉が十分に圧縮されて茶葉によれ形がつき、茶葉の表面側に茶葉の内部水分が移行しやすくなるため、十分な揉込み処理を行うことができる。それゆえ、本実施形態に係る揉込み機4によれば、従来製法と比較しても同等の茶葉形状の荒茶に仕上げることができる。なお、本実施形態においては、スクリューシャフト450の径を漸次拡大する形状に形成しているが、これに限定されず、全て同径のストレート形状とすることも可能である。但し、「理想的なよれ形をつける」という点においては、
図7に示されているスクリューシャフト450のように、スクリュー45による茶葉の移送方向に向かって、その径が漸次拡大する形状に形成されている本実施形態のスクリューシャフト450の方が、全て同径のストレート形状に形成されたスクリューシャフトよりも望ましい。
【0055】
スクリューシャフト450の一端は駆動モーター46と接続されており、駆動モーター46の駆動によってスクリュー45は所定の回転数で回転できるように構成されている。また、このスクリューシャフト450の他端側の同径部450bは、揉胴44の他端側の開口部440よりも突出するように配置されており、この突出した同径部450bの外周面には、このスクリューシャフトの同径部450bと同心状に、後述する押圧手段47の排出部形成プレート470が移動可能に外嵌される。また、本実施形態におけるスクリュー450に設けられたスクリュー羽根451は、その外径が揉胴44の内径と略同程度の大きさとなるように形成されている。具体的には、例えば、揉胴44の内径Dcに対し、スクリュー羽根451の外径Dwは、Dc-Dw=10mm以下となるように形成することが好ましく、Dc-Dw=7mm以下となるように形成することがより好ましい。これにより、揉胴44の内壁とスクリュー羽根451の外側との間に移送される茶葉が入り込み、スクリュー羽根451のエッジで茶葉が切断されて切れ葉が生じるのを防ぐことができる。
【0056】
次に、本実施形態における押圧手段47について説明する。押圧手段47は、円錐台状に形成されてテーパー状の側面470aを有する排出部形成プレート470と、この排出部形成プレート470を支持する支持プレート471と、支持プレート471に接続され、支持プレート471を介して排出部形成プレート470を押圧するように作用する圧縮ばね472と、圧縮ばね472による押圧レベルを調整可能な圧調整ハンドル473とから構成されている。押圧手段47の排出部形成プレート470は、揉胴44の開口部440の開口部近傍に、所定の間隙が形成されるように配置され、排出部形成プレート470のテーパー面470aと揉胴44の開口部440との間に形成される隙間によって排出部43が形成される。排出部形成プレート470の位置は、揉胴44の開口部440に近づきすぎると排出部43が小さくなるため茶葉が排出され難くなり、揉胴44の開口部440から離れすぎると排出部43が大きくなるため茶葉の揉圧が弱くなる。そのため、揉胴44内に投入される茶葉の量やスクリュー45の回転数、押圧手段47による押付け力のレベル等に応じて調整することが好ましい。
【0057】
本実施形態において、排出部形成プレート470は、揉胴44の開口部440との位置が可変となるように、スクリューシャフト450の拡径側先端の同径部450bに移動可能に外嵌されている。それゆえ、排出部形成プレート470は、スクリューシャフトの同径部450bを挿通させるための孔部を備えており、この孔部の内壁はスクリューシャフト450の同径部450bの外周面を摺動可能な摺動面470aとして形成されている。押圧手段47の圧調整ハンドル473を回して圧縮ばね472を圧縮させることにより、支持プレート471を介し、排出部形成プレート470が揉胴44の他端側の開口部440に向けて押付けされる。このとき、押圧手段47の支持プレート471は揉胴44の両側方に平行に配置された2本のレール49に係止されて案内されるように構成されているので、排出部形成プレート470の移動方向、すなわち、排出部形成プレート470の押付け方向が固定される。
【0058】
本実施形態に係るスクリュー型揉込み機4においては、
図7に示すように茶葉の揉込みが行われる。図中の白矢印は茶葉の移送方向を示し、黒矢印は押圧手段47による押付け力が付与される方向を示している。駆動モーター46を駆動し、スクリュー45を2~20rpmと低速で回転させた状態でホッパー48にネット型乾燥機2で乾燥させた茶葉を投入すると、茶葉はスクリュー羽根451に押されてゆっくりと移送されながら、揉胴44の内壁とスクリュー45の外周面との間で圧縮されて、更に茶葉どうしがスクリューの回転作用により捻じれ合った状態を保ちながら茶葉の揉込みが行われる。揉胴44内を移送した茶葉は、揉胴44の開口部440近傍で、排出部形成プレート470のテーパー面470aに強制的に押し付けられ、排出部形成プレート470のテーパー面470aを揉胴44の内部から押すように作用する。ここで、茶葉が排出部形成プレート470のテーパー面470aを押す力が、押圧手段47による排出部形成プレート470の押付け力を超えると、排出部形成プレート470が揉胴44の開口部440から後退して排出部43が広がり、茶葉が排出部43から排出される。本実施形態のスクリュー型揉込み機4によって、排出部43から排出される茶葉は、一枚一枚の茶葉は切断されておらず、複数の茶葉がまとまってよれた状態で排出される。そのため、後工程の揉捻工程においては、従来の葉打機を経た茶葉のような玉状の茶葉よりも揉み込みがしやすいという利点を有する。このようにして、本実施形態に係るスクリュー型揉込み機4によれば、茶葉表面と茶葉内部の水分量を均一化させながら、理想的なよれ形をつけることができ、適切な茶葉揉込みを行うことができる。
【0059】
上述した本発明に係る揉乾方法及び揉乾装置によれば、揉乾工程を「乾燥工程」と「揉込み工程」に分離し、「乾燥工程」をネット型乾燥機で行い、「揉込み工程」をスクリュー型揉込み機で行うことで、揉乾装置への茶渋付着の問題は解決される上、従来製法と同等以上の形状を有する茶葉を製造することが可能となる。さらに、「乾燥工程」をネット型乾燥機によりベルトコンベア上を天地返しさせながら所定の含水率となるまで乾燥することで、後述する実施例に示すように熱効率も向上させることができる(表3参照)。
【0060】
また、上述した本発明に係る揉乾装置、すなわち、ネット型乾燥機とスクリュー型揉込み機とから構成される揉乾装置は主に葉打機又は葉打機及びワイド粗揉機の代替として使用されるが、ネット型乾燥機で乾燥させた茶葉の含水率を
図2に示す乾燥曲線に従って適宜設定することにより、葉打機と粗揉機を兼ねた装置として使用することも可能である。さらに、本発明に係る揉乾装置は、葉打機・粗揉機だけでなく、揉乾機能を有する中揉機や揉捻機等にも転用することも可能である。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
図8のフロー図に示すように、従来の葉打機及びワイド粗揉機の替わりに、上述した本実施形態に係るネット型乾燥機2及びスクリュー型揉込み機4からなる揉乾装置1を用いて、実施例1に係る茶を製造した。製茶工程は、「蒸熱」、「蒸葉処理」、「本発明の揉乾装置による揉乾」、「粗揉」、「揉捻」、「中揉」、「精揉」及び「乾燥」の順に行った(
図8参照)。より具体的には、生茶葉50kgを蒸機に投入し、蒸熱処理を行った。蒸し茶葉の乾量基準含水率は315%であった。この蒸し茶葉をネット型乾燥機に供給し、ベルトコンベア上で天地返ししながら乾燥させた。ネット型乾燥機による乾燥工程の途中には、ローラープレス機による加圧処理を行った。乾燥機の設定条件及び乾量基準含水率は以下表2の通りである。その後、スクリュー型揉込み機に投入し、スクリュー回転数7rpm、押圧手段47による圧縮強さ100mmの条件にて揉込みを行った。なお、押圧手段47による圧縮強さは、
図5(a)及び(b)に示されているように、圧調整ハンドル473を回して圧縮ばね472による押圧レベルを調整した後の圧縮ばね472の長さにて表記している。揉込み後の茶葉の乾量基準含水率は174%であった。後工程として、常法及び従来の処理装置を用いて粗揉、揉捻、中揉、精揉及び乾燥処理を行った。本実施例に係る揉乾処理における熱効率(%)と重油消費量(L/h)を以下表3に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
上述した製茶工程において、蒸し茶葉を供給したネット型乾燥機及びその後のスクリュー型揉込み機には茶渋は付着せず、茶渋取りの作業にかかる手間を省くことができた。また、表3に示すように、本実施例に係る揉乾処理により、表1に示した従来の揉乾工程に相当する回分葉打機と比較しても熱効率が大きく向上することが明らかとなった。
【0066】
さらに、得られた茶の外観写真を
図9に示す。本実施例によって得られた緑茶は、色、香り、味は従来製法のものと遜色がなく、
図9に示すように、形状については従来の葉打機を用いて製造したもの以上に整っていた。この結果より、本発明の揉乾方法及び揉乾装置によれば、従来の揉乾工程では同時に行われていた乾燥処理及び揉込み処理を分離し、乾燥処理後に揉込み処理を行っても、色、香り、味、形状のすべての面で影響がない茶葉を製造できることがわかった。特にスクリュー型揉込み機による揉込み処理への貢献は大きく、従来以上に揉込み処理が適正化されているということが立証された。
【0067】
[比較例1]
上述した実施例1で使用した揉乾装置1のうち、スクリュー型揉込み機4をローターバンに替え、揉込み工程をこのローターバンで行った以外は、上記実施例1と同様の方法にて比較例に係る茶を製造した。本比較例によって得られた緑茶は、揉込み工程において、ローターバンの刃によって茶葉が剪断及び破砕されたために、砕けた茶葉が多く含まれており、茶葉の形が整っておらず、揉込みも不十分であった。
【0068】
[比較例2]
また、上述した実施例1で使用した揉乾装置1のうち、スクリュー型揉込み機4を従来の揉捻工程で通常用いられる揉捻機に替え、実施例1における「本発明の揉乾装置による揉乾」、「粗揉」及び「揉捻」の工程に替えて、「本発明の揉乾装置を構成するネット型乾燥機2による乾燥と従来の揉捻機による揉込み」工程を行った以外は、実施例1と同様の方法にて比較例2に係る茶を製造した。本比較例において、揉捻機では約30分間揉捻処理を行い、乾量基準含水率が10%程度減少したところで処理を終了した。本比較例2によって得られた緑茶は、従来の葉打機や粗揉機のような前工程での揉込み処理が行われないため、従来製法で得られた茶と比較すると揉込み不足による茶葉の色落ちが顕著であった。また、スクリュー型揉込み機のように茶葉の含水率の変化に対応できる幅が大きくないために、揉捻機の揉捻盤がグシャ付いてしまい、その点からも、本発明に係る揉乾装置を構成するスクリュー型揉込み機を、揉捻機で代用することは困難であることが判明した。
【0069】
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
本発明は、従来製法における製茶装置のメンテナンスを容易とし、茶の安定的な品質維持を図ると共に、製造に要するエネルギー効率も向上する新たな製茶方法及び製茶装置を提供するものであり、製茶分野の産業において幅広く役立つものである。