(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049553
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ネットワーク障害復旧支援システム、ネットワーク障害復旧支援方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0654 20220101AFI20240403BHJP
【FI】
H04L41/0654
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155843
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】宮本 達史
(57)【要約】
【課題】通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を強化学習によって作成する際の効率の向上を図る。
【解決手段】過去に通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するタスク実行順序分類グループ判断部と、各タスクの所属度データを格納するタスクデータベースと、タスクデータベースに格納された所属度データに基づいてタスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行う強化学習部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を、強化学習を用いて作成するネットワーク障害復旧支援システムにおいて、
タスク実行手順におけるタスク実行順序を分類するタスク実行順序分類グループが複数定義されてあり、
過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するタスク実行順序分類グループ判断部と、
各タスクの前記所属度データを格納するタスクデータベースと、
前記タスクデータベースに格納された前記所属度データに基づいて、前記タスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行う強化学習部と、
を備えるネットワーク障害復旧支援システム。
【請求項2】
前記タスク実行順序分類グループは、タスク実行手順において、最初に実行される初手グループと、前記初手グループの次に実行される中手グループと、最後に実行される最終手グループとである、
請求項1に記載のネットワーク障害復旧支援システム。
【請求項3】
前記タスク実行順序分類グループ判断部は、
過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループの正解ラベルを付与する正解ラベル付与部と、
前記タスクデータベースに格納する各タスクの前記所属度データを算出する分類器と、を備え、
前記正解ラベルが付与されたタスクを用いてタスクの所属度データを算出するように前記分類器の機械学習を行う、
請求項1又は2のいずれか1項に記載のネットワーク障害復旧支援システム。
【請求項4】
前記強化学習によって作成されたタスク実行手順に対する評価データを取得する評価データ取得部をさらに備え、
前記タスク実行順序分類グループ判断部は、前記評価データに基づいて前記分類器の機械学習を制御する、
請求項3に記載のネットワーク障害復旧支援システム。
【請求項5】
通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を、強化学習を用いて作成するネットワーク障害復旧支援方法において、
タスク実行手順におけるタスク実行順序分類グループが複数定義されてあり、
タスク実行順序分類グループ判断部が、過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するステップと、
タスクデータベースが、各タスクの前記所属度データを格納するステップと、
強化学習部が、前記タスクデータベースに格納された前記所属度データに基づいて、前記タスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行うステップと、
を含むネットワーク障害復旧支援方法。
【請求項6】
通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を、強化学習を用いて作成するネットワーク障害復旧支援システムのコンピュータに、
タスク実行手順におけるタスク実行順序分類グループが複数定義されてあり、
過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するステップと、
各タスクの前記所属度データをタスクデータベースに格納するステップと、
前記タスクデータベースに格納された前記所属度データに基づいて、前記タスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行うステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク障害復旧支援システム、ネットワーク障害復旧支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクの実行手順(タスク実行手順)を強化学習により作成する技術として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に記載の従来技術では、ネットワーク障害復旧システムは、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクが登録されたタスクデータベースと、当該通信ネットワークの状態を示すネットワーク状態データを取得し、当該ネットワーク状態データに基づいて当該通信ネットワークに障害が発生しているか否かを判断するネットワーク状態取得部と、当該通信ネットワークに障害が発生していると判断された当該ネットワーク状態データに基づいて当該タスクデータベースから当該通信ネットワークに適用するタスクを選択する強化学習演算処理を実行する強化学習エンジンと、当該選択されたタスクを当該通信ネットワークに対して実行するタスク実行部と、を備えている。また、当該強化学習における報酬は、通信ネットワークの障害が復旧したか否かや、タスクの実行に要する時間や、タスクの実行が通信ネットワークに影響を及ぼした範囲などの評価結果に応じて決定される。例えば、通信ネットワークの障害が復旧しない場合に、負の報酬が決定される。例えば、タスクの実行に要する時間が長いほど、より大きい負の報酬が決定される。例えば、タスクの実行が通信ネットワークに影響を及ぼした範囲が大きいほど、より大きい負の報酬が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の技術では、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるまでに必要なタスク数が多くなるほど、強化学習の収束に時間がかかる。また、より大きな正の報酬が得られるように強化学習が行われるので、例えばタスクの実行に要する時間(タスク所要時間)がより短くなるようにタスク実行手順が作成されることによって、タスク所要時間が極端に短くなるように(過剰な報酬取得の状態で)タスク実行手順が作成されると、正解とは異なるタスク実行手順が作成されてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を強化学習によって作成する際の効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を、強化学習を用いて作成するネットワーク障害復旧支援システムにおいて、タスク実行手順におけるタスク実行順序を分類するタスク実行順序分類グループが複数定義されてあり、過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するタスク実行順序分類グループ判断部と、各タスクの前記所属度データを格納するタスクデータベースと、前記タスクデータベースに格納された前記所属度データに基づいて、前記タスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行う強化学習部と、を備えるネットワーク障害復旧支援システムである。
本発明の一態様は、上記のネットワーク障害復旧支援システムにおいて、前記タスク実行順序分類グループは、タスク実行手順において、最初に実行される初手グループと、前記初手グループの次に実行される中手グループと、最後に実行される最終手グループとである、ネットワーク障害復旧支援システムである。
本発明の一態様は、上記のネットワーク障害復旧支援システムにおいて、前記タスク実行順序分類グループ判断部は、過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループの正解ラベルを付与する正解ラベル付与部と、前記タスクデータベースに格納する各タスクの前記所属度データを算出する分類器と、を備え、前記正解ラベルが付与されたタスクを用いてタスクの所属度データを算出するように前記分類器の機械学習を行う、ネットワーク障害復旧支援システムである。
本発明の一態様は、上記のネットワーク障害復旧支援システムにおいて、前記強化学習によって作成されたタスク実行手順に対する評価データを取得する評価データ取得部をさらに備え、前記タスク実行順序分類グループ判断部は、前記評価データに基づいて前記分類器の機械学習を制御する、ネットワーク障害復旧支援システムである。
【0007】
本発明の一態様は、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を、強化学習を用いて作成するネットワーク障害復旧支援方法において、タスク実行手順におけるタスク実行順序分類グループが複数定義されてあり、タスク実行順序分類グループ判断部が、過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するステップと、タスクデータベースが、各タスクの前記所属度データを格納するステップと、強化学習部が、前記タスクデータベースに格納された前記所属度データに基づいて、前記タスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行うステップと、を含むネットワーク障害復旧支援方法である。
【0008】
本発明の一態様は、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を、強化学習を用いて作成するネットワーク障害復旧支援システムのコンピュータに、タスク実行手順におけるタスク実行順序分類グループが複数定義されてあり、過去に前記通信ネットワークに適用されて障害が復旧したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎にタスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出するステップと、各タスクの前記所属度データをタスクデータベースに格納するステップと、前記タスクデータベースに格納された前記所属度データに基づいて、前記タスクデータベースに登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する強化学習を行うステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を強化学習によって作成する際の効率の向上を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るネットワーク障害復旧支援システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係るタスク実行順序分類グループを説明するための説明図である。
【
図3】一実施形態に係るタスク実行順序分類グループ判断部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る手順実行履歴の構成例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る正解ラベル付き学習データベクトルの構成例を示す図である。
【
図6】一実施形態に係るネットワーク障害復旧支援方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係るネットワーク障害復旧支援システムの構成例を示すブロック図である。
図1において、ネットワーク障害復旧支援システムは、手順実行履歴データベース10と、タスク実行順序分類グループ判断部11と、タスクデータベース12と、強化学習部13と、評価データ取得部14とを備える。ネットワーク障害復旧支援システムは、通信ネットワークNWに発生した障害を復旧させるためのタスクの実行手順(タスク実行手順)を、強化学習を用いて作成する。以下、通信ネットワークNWに発生した障害を復旧させるためのタスクを、単にタスクと称する。
【0012】
手順実行履歴データベース10は、手順実行履歴を格納するデータベースである。手順実行履歴は、障害が発生した通信ネットワークNWに対して実行されたタスクの履歴である。手順実行履歴は、通信ネットワークNWに適用されて障害が復旧したタスク実行手順を含む。手順実行履歴データベース10には、障害が発生した通信ネットワークNWに対して実行されたタスクの履歴(手順実行履歴)が随時、追加される。
【0013】
タスク実行順序分類グループ判断部11は、手順実行履歴データベース10内の手順実行履歴から、過去に通信ネットワークNWに適用されて障害が復旧したタスク実行手順を取得する。タスク実行順序分類グループ判断部11は、当該取得したタスク実行手順に基づいて、当該タスク実行手順に含まれるタスク毎に、タスク実行順序分類グループへの所属度合いを示す所属度データを算出する。タスク実行順序分類グループは、タスク実行手順におけるタスク実行順序を分類するグループである。タスク実行順序分類グループは、予め、複数定義されている。
【0014】
図2は、本実施形態に係るタスク実行順序分類グループを説明するための説明図である。
図2の例では、タスク実行順序分類グループとして、タスク実行手順において、最初に実行される初手グループと、初手グループの次に実行される中手グループと、最後に実行される最終手グループとが定義されている。
図2の例では、タスク実行手順において、最初に実行されるタスク1は初手グループ、最後に実行されるタスク4は最終手グループ、タスク1,4以外の他のタスク2,3は中手グループである。
【0015】
なお、
図2の例では、タスク実行順序分類グループとして3つのグループ(初手グループ、中手グループ、最終手グループ)が設けられているが、タスク実行順序分類グループとして2つ以上のグループが設けられていればよい。例えば、タスク実行順序分類グループとして、初手グループと最終手グループの2つのみが設けられてもよい。例えば、タスク実行順序分類グループとして、初手グループと2つ以上の中手グループと最終手グループの合計4つ以上が設けられてもよい。
以下、本実施形態の一例として、タスク実行順序分類グループとして、初手グループと中手グループと最終手グループの3つが定義されている場合を挙げて説明する。
【0016】
ある一のタスクは、例えば障害内容によって、通信ネットワークNWに対して実行される順序が異なる場合がある。したがって、同じタスクであっても、手順実行履歴に含まれるタスク実行手順毎に当該タスクの実行順序が異なる場合がある。このことから、タスク実行順序分類グループ判断部11は、タスク実行手順に含まれるタスク毎に、タスク実行順序分類グループ「初手グループ」、「中手グループ」、「最終手グループ」への所属度合いを示す所属度データを算出する。
【0017】
ある一のタスクに関する所属度データの構成例は、「タスク識別情報:初手グループの所属度、中手グループの所属度、最終手グループの所属度」である。例えば「タスク#1」の所属度データが「タスク#1:0.82、0.10、0.08」である場合、タスク#1は、初手グループの所属度が「0.82」であり、中手グループの所属度が「0.10」であり、最終手グループの所属度が「0.08」である。この場合、タスク#1は、初手グループへの所属度合いが最も大きく、次に初手グループへの所属度合いが大きく、最終手グループへの所属度合いが最も小さい。
【0018】
タスクデータベース12には、通信ネットワークNWに用いられる様々なタスクが登録されている。タスクデータベース12は、タスク実行順序分類グループ判断部11が算出した各タスクの所属度データを格納する。
【0019】
強化学習部13は、障害が発生した通信ネットワークNWに適用するタスクをタスクデータベース12から選択し、タスク実行手順を作成する強化学習演算処理を実行する。この強化学習において、強化学習部13は、タスクデータベース12に格納された所属度データに基づいて、タスクデータベース12に登録されたタスクの中からタスク実行順序分類グループ「初手グループ」、「中手グループ」、「最終手グループ」毎にタスクを選択してタスク実行手順を作成する。
【0020】
評価データ取得部14は、強化学習部13の強化学習によって作成されたタスク実行手順に対する評価データを取得する。タスク実行順序分類グループ判断部11は、当該評価データに基づいて、所属度データの算出に関する制御を行う。
【0021】
図3は、本実施形態に係るタスク実行順序分類グループ判断部11の構成例を示すブロック図である。
図1において、タスク実行順序分類グループ判断部11は、ベクトル変換部111と、正解ラベル付与部112と、分類器113とを備える。
【0022】
タスク実行順序分類グループ判断部11は、手順実行履歴データベース10から手順実行履歴Aを取得する。手順実行履歴Aは、過去に通信ネットワークNWに適用されて障害が復旧したタスク実行手順のみを含むものである。
【0023】
図4は、本実施形態に係る手順実行履歴Aの構成例を示す図である。
図4の例では、手順実行履歴Aは、タスク実行手順毎に、障害発生日時、障害内容、タスク実行手順の対象ノード、n番目に実行されたタスク(実施タスク、nは1以上の整数)、タスク実行手順の実施者などの情報を有する。例えば、障害発生日時「2022-01-20」の障害内容「AMF down」に対して実施者「A」が対象ノード「AMF」に対して実行したタスク実行手順は、1番目に「タスク#16」が実行され、2番目に「タスク#2」が実行され、3番目に「タスク#15」が実行されたことにより、障害が復旧したことが示される。
【0024】
ベクトル変換部111は、手順実行履歴Aに含まれる情報をベクトルに変換する。このベクトル変換では、手順実行履歴Aに含まれる各項目がそれぞれベクトル要素に用いられる。
図4の例では、「障害発生日時」が第1ベクトル要素に用いられ、「障害内容」が第2ベクトル要素に用いられ、「対象ノード」が第3ベクトル要素に用いられ、「実施タスク」が第4ベクトル要素に用いられ、「実施者」が第5ベクトル要素に用いられる。これにより、学習データベクトル[第1ベクトル要素「障害発生日時」、第2ベクトル要素「障害内容」、第3ベクトル要素「対象ノード」、第4ベクトル要素「実施タスク」、第5ベクトル要素「実施者」]が生成される。なお、ベクトル要素に用いられる項目は、予め設定される。例えば、「実施者」はベクトル要素に用いられなくてもよい。
【0025】
図5に、本実施形態に係る学習データベクトルの構成例を示す。
図5において、各行が各学習データベクトルであり、各列がベクトル要素である。
図5の例では、学習データベクトルは、第1ベクトル要素「障害発生日時」、第2ベクトル要素「障害内容」、第3ベクトル要素「実施タスク」及び第4ベクトル要素「対象レイヤー」から構成される。対象レイヤーは、
図4の手順実行履歴Aの例では図示されていない。対象レイヤーは、タスク実行手順の対象のソフトウェアレイヤーである。なお、正解ラベルは後述する正解ラベル付与部112が付与する。
【0026】
正解ラベル付与部112は、ベクトル変換部111が生成した学習データベクトルに対して、手順実行履歴Aのタスク実行手順に基づいてタスク実行順序分類グループ「初手グループ」、「中手グループ」及び「最終手グループ」の中から正解のグループを示す正解ラベルを付与する。
【0027】
例えば、
図4の手順実行履歴Aにおいて、障害発生日時「2022-01-20」の障害内容「AMF down」に対して実施者「A」が対象ノード「AMF」に対して実行したタスク実行手順は、1番目(最初)が「タスク#16」であり、2番目が「タスク#2」であり、3番目(最後)が「タスク#15」である。これにより、それぞれの実施タスクに対応する
図5の各学習データベクトルに対して、「タスク#16」の学習データベクトル(
図5中の1行目(表項目の行を除く))には初手グループを示す正解ラベル「初手」が付与され、「タスク#2」の学習データベクトル(
図5中の2行目(表項目の行を除く))には中手グループを示す正解ラベル「中手」が付与され、「タスク#15」の学習データベクトル(
図5中の3行目(表項目の行を除く))には最終手グループを示す正解ラベル「最終手」が付与される。
【0028】
分類器113は、タスクデータベース12に格納する各タスクの所属度データを算出する。タスク実行順序分類グループ判断部11は、正解ラベル付与部112によって正解ラベルが付与された学習データベクトルを用いて、タスクの所属度データを算出するように分類器113の機械学習(教師あり学習)を行う。分類器113は、例えば、「Random Forest」や深層学習(例えば、「Convolutional Neural Network:CNN」等)などの学習モデルである。
【0029】
タスク実行順序分類グループ判断部11は、分類器113が算出した各タスクの所属度データBをタスクデータベース12へ送信する。タスクデータベース12は、タスク実行順序分類グループ判断部11から受信した各タスクの所属度データBを格納する。
【0030】
強化学習部13は、強化学習に用いるタスク情報Cをタスクデータベース12から取得する。タスク情報Cは、タスクデータベース12に登録された全てのタスクを特定する情報と、各タスクの所属度データBとを含む。
【0031】
強化学習部13は、タスク情報Cを用いて、障害が発生した通信ネットワークNWに適用するタスクを選択し、タスク実行手順を作成する強化学習演算処理を実行する。この強化学習において、強化学習部13は、各タスクの所属度データBに基づいて、タスク情報Cに含まれるタスクの中からタスク実行順序分類グループ「初手グループ」、「中手グループ」、「最終手グループ」毎にタスクを選択してタスク実行手順Dを作成する。
【0032】
具体的には、強化学習部13は、「初手グループ」に属するタスク群の中から、障害が発生した通信ネットワークNWに適用するタスクを選択し、選択したタスクが実行される順序を決定し、決定した順序を最初に実行される初手グループ実行順序にする。また、「中手グループ」に属するタスク群の中から、障害が発生した通信ネットワークNWに適用するタスクを選択し、選択したタスクが実行される順序を決定し、決定した順序を初手グループ実行順序の次に実行される中手グループ実行順序にする。また、「最終手グループ」に属するタスク群の中から、障害が発生した通信ネットワークNWに適用するタスクを選択し、選択したタスクが実行される順序を決定し、決定した順序を最後に実行される最終手グループ実行順序にする。その最初に初手グループ実行順序、次いで中手グループ実行順序、最後に最終手グループ実行順序が連結された結果がタスク実行手順Dである。
【0033】
評価データ取得部14は、強化学習部13によって作成されたタスク実行手順Dを取得する。評価データ取得部14は、当該タスク実行手順Dを実際に通信ネットワークNWに対して実行し、当該タスク実行手順Dによって通信ネットワークNWの障害が復旧したか否かを判定する。評価データ取得部14は、当該判定の結果「復旧の成功又は失敗」を示す評価データEをタスク実行順序分類グループ判断部11へ送信する。
【0034】
なお、タスク実行手順Dは、評価データ取得部14が自動的に通信ネットワークNWに対して実行してもよく、又は運用者の操作に従って通信ネットワークNWに対して実行されてもよい。
【0035】
タスク実行順序分類グループ判断部11は、評価データEに基づいて分類器113の機械学習を制御する。例えば、タスク実行順序分類グループ判断部11は、評価データEに基づいて通信ネットワークNWの障害の復旧率を算出する。タスク実行順序分類グループ判断部11は、通信ネットワークNWの障害の復旧率が分類器113の機械学習に関する所定の終了条件を満足する場合に分類器113の機械学習を終了し、そうではない場合に分類器113の機械学習を継続する。
【0036】
なお、学習データベクトルに使用するタスク実行手順は、所定の条件を満たすタスク実行手順のみに限定されてもよい。例えば、タスク実行順序分類グループ判断部11は、手順実行履歴データベース10内の手順実行履歴に基づいて、同一の実施者が連続して実施した一又は複数のタスク実行手順が所定の閾値を超える回数実施された場合に、当該タスク実行手順群を学習データベクトルに使用するタスク実行手順に決定してもよい。
【0037】
次に
図6を参照して本実施形態に係るネットワーク障害復旧支援方法を説明する。
図6は、本実施形態に係るネットワーク障害復旧支援方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0038】
タスク実行順序分類グループ判断部11には、予め、タスク実行順序分類グループ「初手グループ」、「中手グループ」及び「最終手グループ」が定義されている。
【0039】
(ステップS1) タスク実行順序分類グループ判断部11は、手順実行履歴データベース10から手順実行履歴Aを取得する。次いで、タスク実行順序分類グループ判断部11は、取得した手順実行履歴Aから、正解ラベル付の学習データベクトルを作成する(前処理)。
【0040】
(ステップS2) タスク実行順序分類グループ判断部11は、正解ラベル付の学習データベクトルを用いて、タスクの所属度データを算出するように分類器113の機械学習(教師あり学習)を行う。これにより、分類器113は、各タスクの所属度データBを算出する。タスク実行順序分類グループ判断部11は、分類器113が算出した各タスクの所属度データBをタスクデータベース12へ送信する。
【0041】
(ステップS3) タスクデータベース12は、タスク実行順序分類グループ判断部11から受信した各タスクの所属度データBを格納する。
【0042】
(ステップS4) 強化学習部13は、強化学習に用いるタスク情報Cをタスクデータベース12から取得する。タスク情報Cは、タスクデータベース12に登録された全てのタスクを特定する情報と、各タスクの所属度データBとを含む。次いで、強化学習部13は、タスク情報Cを用いて、障害が発生した通信ネットワークNWに適用するタスクを選択し、タスク実行手順を作成する強化学習演算処理を実行する。この強化学習において、強化学習部13は、各タスクの所属度データBに基づいて、タスク情報Cに含まれるタスクの中からタスク実行順序分類グループ「初手グループ」、「中手グループ」、「最終手グループ」毎にタスクを選択してタスク実行手順Dを作成する。
【0043】
(ステップS5) 評価データ取得部14は、強化学習部13によって作成されたタスク実行手順Dに対する評価データEを取得する。評価データ取得部14は、評価データEをタスク実行順序分類グループ判断部11へ送信する。
【0044】
(ステップS6) タスク実行順序分類グループ判断部11は、評価データEに基づいて、分類器113の機械学習の終了か継続かを判定する。この結果、分類器113の機械学習の終了の場合は
図6の処理を終了する。一方、分類器113の機械学習の継続の場合はステップS1に戻る。
【0045】
本実施形態によれば、強化学習部13は、各タスクの所属度データBに基づいて、タスク情報Cに含まれるタスクの中からタスク実行順序分類グループ(例えば「初手グループ」、「中手グループ」、「最終手グループ」)毎にタスクを選択してタスク実行手順Dを作成することができる。これにより、通信ネットワークに発生した障害を復旧させるためのタスクのタスク実行手順を強化学習によって作成する際の効率の向上を図る効果が得られる。
【0046】
例えば、各タスク実行順序分類グループの強化学習に用いられるタスク数を減らすことができるので、強化学習の収束にかかる時間を短縮する効果が得られる。
【0047】
また、タスク実行順序分類グループ(例えば「初手グループ」、「中手グループ」、「最終手グループ」)に分割して強化学習が行われるので、より大きな正の報酬が得られるように例えばタスクの実行に要する時間(タスク所要時間)がより短くなるようにタスク実行手順が作成されても、各タスク実行順序分類グループの強化学習ではタスク所要時間が極端に短くなること(過剰な報酬取得の状態)が防止され、正解とは異なるタスク実行手順が作成されることを抑制する効果が得られる。
【0048】
なお、これにより、例えば無線通信ネットワークにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0050】
また、上述したネットワーク障害復旧支援システムの各機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0051】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…手順実行履歴データベース、11…タスク実行順序分類グループ判断部、12…タスクデータベース、13…強化学習部、14…評価データ取得部、111…ベクトル変換部、112…正解ラベル付与部、113…分類器、NW…通信ネットワーク